説明

組電池

【課題】 電池内圧が上昇して各単電池が膨張するようになっても、隣接する単電池の封口体の先端部と金属製外装缶の底部が接触しないような構造にして、組電池に変形が生じなく、かつ圧力弁が所定の圧力で動作するようにして、信頼性が損なわれないようにする。
【解決手段】 本発明の組電池100は、一方の単電池Eの封口体18の先端部18aと他方の単電池Dの金属製外装缶16の底部との間に間隔(W)が形成されるように、一方の単電池Eの封口体18と他方の単電池Dの金属製外装缶16とが接続部材20により溶接されている。そして、単電池に弁開放が生じるまで電池内圧が上昇して電池膨れが生じても、一方の単電池Eの封口体18の先端部18aと他方の単電池Dの金属製外装缶16の底部とが接触しないようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極がセパレータを介して積層された電極群と電解液からなる発電要素を備えた単電池の複数個が直列接続された組電池に係り、特に、発電要素を収容した一方極の端子を兼ねる金属製外装缶の開口部に絶縁体を介して他方極の端子を兼ねる封口体を備えた単電池の複数個が直列接続された組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池などのアルカリ蓄電池あるいはリチウム二次電池は、正極および負極の間にセパレータを介在させ、これらを渦巻状に巻回した後、正極および負極の端部に集電体を接続して電極体を形成し、この電極体を金属製外装缶に収納して集電体から延伸するリード部を封口体に溶接した後、封口体を外装缶の開口部に絶縁ガスケットを介在させて装着することにより密閉して構成されている。このようなアルカリ蓄電池がHEV(Hybrid Electric Vehicles)やPEV(Pure Electric Vehicles)などの電気自動車の用途に用いられる場合、高出力が要求されるため、複数の単電池を直列に接続して組電池にして使用されるのが一般的である。
【0003】
このような組電池においては、複数の単電池を直列に接続する必要があり、種々の接続法が提案されている。例えば、特許文献1にて提案された組電池においては、図4(a)に示すように、単電池30a,30bが接続体31によって直列接続されている。この場合、接続体31は、金属製外装缶36に嵌合する円筒部34と、金属電極(封口体)37に当接する平面部35とを備えている。円筒部34には嵌合する金属製外装缶36方向に突出する4か所のプロジェクション突起33が形成されており、平面部35には当接する金属電極37方向に突出する4か所のプロジョクション突起32が形成されている。
【0004】
そして、接続体31を溶接する場合、まず、平面部35が単電池30aの金属電極(封口体)37に溶接される。即ち、平面部35を金属電極(封口体)37の上に載置し、平面部35を金属電極(封口体)37側に加圧しつつ、接続体31と金属電極(封口体)37との間に溶接電流を流すようにする。これにより、プロジェクション突起32の4か所で接続体31は金属電極(封口体)37に溶接される。ついで、単電池30aの金属電極(封口体)37に溶接された接続体31の円筒部34を、単電池30bの金属製外装缶36に嵌合させ、金属製外装缶36と接続体31との間に溶接電流を流すようにする。すると、プロジェクション突起33の4か所で接続体31は金属製外装缶36に溶接される。これにより、単電池30aと単電池30bとは、接続体31により直列接続されたことになる。このような電池間接続を、所望の出力電圧が得られる数だけ連結することにより、組電池を構成することができる。
【特許文献1】特開平10−106533
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように複数の単電池を直列接続する場合、隣接する単電池の封口体37の先端部と金属製外装缶36の底部との間の間隔(W)が短いと、充電時に電池内圧が上昇して各単電池が膨張すると、隣接する単電池の封口体37の先端部と金属製外装缶36の底部が接触するようになる。この場合、図4(b)に示すように、隣接する単電池の封口体37の先端部と金属製外装缶36の底部が接触すると、接触点Xで接触抵抗が生じるようになる。このため、通常の電流経路Y以外に、この接触点Xに異常電流経路Zが形成されて、接触点Xにおける接触抵抗によりジュール熱が発生して、接触点Xが発熱するようになる。この場合、接触点Xに大電流が流れる場合においては、この接触点Xが異常に発熱して、この種の組電池に変形が生じたり、信頼性が損なわれる恐れが生じた。
【0006】
また、電池内圧が上昇して各単電池が膨張して隣接する単電池の封口体37の先端部と金属製外装缶36の底部が接触するようになると、封口体37内に配設された圧力弁38の作動圧が上昇するようになる。ここで、圧力弁38の作動圧が上昇するようになると、予め設定された作動圧よりも高い圧力にならないと圧力弁38が作動しなくなるため、各単電池が破裂する恐れが生じるようになる。
【0007】
一方、このような接続体31を用いずに、単電池30aの金属電極37と、単電池30bの金属製外装缶36の缶底とをダイレクトに溶接したものも知られている。この構造の場合、もともと両者が溶接されているので、各単電池の膨れに起因する接触により異常発熱を招くことはないが、膨れによって単電池の全長が長くなる。その結果、組電池の全長が長くなってしまい、組電池をケースに収納して保持している構造では、ケースを破壊してしまったり、組電池が折れ曲がってしまい、単電池間や組電池間の連結が外れてしまうという問題があった。さらに、金属電極である封口体の表面に直接溶接を行うために、単電池の膨れの際、封口体が圧迫されて、内蔵する安全弁38の作動圧が変化してしまうという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、電池内圧が上昇して各単電池が膨張するようになっても、隣接する単電池の封口体の先端部と金属製外装缶の底部が接触しないような構造にして、この種の組電池に変形が生じないようにしたり、圧力弁が所定の圧力で動作するようにして、信頼性が損なわれないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の組電池は、一方の単電池の封口体の先端部と他方の単電池の金属製外装缶の底部との間に間隔(W)が形成されるように、一方の単電池の封口体と他方の単電池の金属製外装缶とが接続部材により溶接されている。そして、単電池に弁開放が生じるまで電池内圧が上昇して電池膨れが生じても、一方の単電池の封口体の先端部と他方の単電池の金属製外装缶の底部とが接触しないようになされていることを特徴とする。このように、電池内圧が上昇して電池膨れが生じても、一方の単電池の封口体の先端部と他方の単電池の外装缶底部の先端部とが接触しないようになされていると、単電池間は接続部材を通してのみ電流が流れることとなる。このため、いたずらに電池温度が上昇することもなくなることから、組電池に変形が生じたり、圧力弁が所定の圧力で動作しなかったりすることがなくなり、信頼性が損なわれることもない。
【0010】
この場合、単電池に弁開放が生じるまで電池内圧が上昇して電池膨れが生じた際の最大の膨れ量をwとすると、間隔(W)が1.1w〜1.5w(1.1w≦W≦1.5w)になるように設定されているのが好ましい。これは、間隔(W)が1.1wより短い場合は、電池内圧が上昇して電池膨れが生じた場合に、一方の単電池の封口体の先端部と他方の単電池の外装缶底部の先端部とが接触するようになって、その接触点での接触抵抗に起因するジュール熱により高温となって、変形が生じやすくなるからである。
【0011】
一方、間隔(W)が1.5wより大きい場合は、電池内圧が上昇して電池膨れが生じても、隣接する単電池の封口体の先端部と外装缶底部の先端部とが接触することはない。ところが、組電池の長さが長くなるため、一定の容積内に収納する必要がある場合には収容しきれなくなって、電池本数を少なくする必要が生じる。さらに、隣接する単電池間を接続する接続部材を大きくする必要が生じるため、この接続部材の抵抗値が増大して、高出力が得られなくなることや、組電池としての曲げ強度が弱くなるといった新たな問題が生じるようになるからである。
【0012】
また、金属製外装缶に使用される材質のヤング率は15×1010〜25×1010Paであるのが好ましい。これは、ヤング率が15×1010Paより低い金属製外装缶は変形しやすいために、電池内圧上昇に伴う電池膨れ量が大きくなって、隣接する単電池の封口体の先端部と金属製外装缶の底部の先端部とが接触し易くなるためである。一方、ヤング率が25×1010Paより大きい金属製外装缶は電池内圧上昇に伴う電池膨れ量が少なくなる反面、加工が難しいために金属製外装缶の材料としては不向きである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用した場合の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。なお、図1はニッケル−水素蓄電池(単電池)の断面を模式的に示す断面図である。図2は5個のニッケル−水素蓄電池(単電池)を接続して組電池とした状態を示す図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部を拡大して示す断面図であり、図2(c)は単電池間を接続して組電池とするための接続部材の一例を示す斜視図である。図3は単電池が膨張した場合の膨れ量と単電池間の距離との関係を説明する平面図である。
【0014】
1.ニッケル−水素蓄電池(単電池)
まず、パンチングメタルからなる極板芯体の表面にニッケル焼結多孔体を形成した後、化学含浸法により水酸化ニッケルを主体とする活物質を同ニッケル焼結多孔体内に充填する。ついで、これを乾燥させた後、所定の厚みになるまで圧延し、所定の寸法になるように切断してニッケル正極板11を作製する。また、パンチングメタルからなる極板芯体の表面に水素吸蔵合金からなるペースト状負極活物質を充填し、乾燥させた後、所定の厚みになるまで圧延し、所定の寸法になるように切断して水素吸蔵合金負極板12を作製する。
【0015】
これらのニッケル正極板11と水素吸蔵合金負極板12との間にセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群を作製する。この後、この渦巻状電極群の上端面に露出するニッケル正極板11の極板芯体に正極集電体14を溶接する。また、渦巻状電極群の下端面に露出する水素吸蔵合金負極板12の極板芯体に負極集電体15を溶接して電極体とする。得られた電極体の正極集電体14の上部に円筒状の正極用リード17を溶接した後、鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装缶(底面の外面は負極外部端子となる)16内に収納し、水素吸蔵合金負極板12に溶接された負極集電体15を外装缶16の内底面に溶接する。なお、外装缶16に用いる材質のヤング率は20×1010Paとした。
【0016】
ついで、外装缶16の上 部内周側に防振リング19aを挿入し、外装缶16の上部外周側に溝入れ加工を施して防振リング19aの上端部に凹部16aを形成した。この後、外装缶16内に30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液からなる電解液を注入する。ついで、この外装缶16の開口部の上部に、封口板18aの底面が正極用リード17の円筒部分に接触するように配置する。ここで、封口板18aの上部には正極キャップ(正極外部端子)18bが設けられており、この正極キャップ18b内には弁板18cとスプリング18dからなる弁体を備えており、封口板18aの中央にはガス抜き孔が形成されており、封口板18aと正極キャップ18bとで封口体18が形成される。なお、封口体18の封口板18aの周縁には、予め絶縁ガスケット19bが嵌着されている。
【0017】
ついで、正極キャップ(正極外部端子)18bの上面に一方の溶接電極(図示せず)を配置するとともに、外装缶16の底面(負極外部端子)の下面に他方の溶接電極(図示せず)を配置する。この後、これらの一対の溶接電極間に所定の圧力を加えながら、これらの溶接電極間に電池の放電方向に所定の電圧を印加し、所定のパルス電流を流す通電処理を施した。この通電処理により、封口板18aの底面と正極用リード17の周側縁との接触部分が溶接されることとなる。
【0018】
このように、一対の溶接電極間に所定の圧力を加えながら、これらの溶接電極間に電圧を印加して、通電処理を施すことにより、円筒状の正極用リード17の高さ寸法にばらつきがあっても、円筒状の正極用リード17の周側縁と封口板18aの底面との間に接触点を形成することが可能となる。これにより、溶接強度に優れた溶接部を形成することができるようになる。なお、封口板18aの下面に小突起部を設けるか、あるいは円筒状の正極用リード17の下面に接触する周側縁に小突起部を設けると、この小突起部に電流が集中するようになるため、一層溶接強度が大きい溶接部が形成されるようになる。
【0019】
ついで、プレス機を用いて封口体18に加圧力を加えて、絶縁ガスケット19bの下端が外装缶16の上部外周に設けられた凹部16aの位置になるまで封口体18を外装缶16内に押し込む。この後、外装缶16の開口端縁を内方にかしめて電池を封口することによりニッケル−水素蓄電池10(単電池A,B,C,D,E)が得られる。なお、この封口時の加圧力により、円筒状の正極用リード17は押しつぶされ、その断面形状は円形が押しつぶされた楕円形状となる。
【0020】
2.組電池
ついで、上述のように作製されたニッケル−水素蓄電池10(単電池A,B,C,D,E)を用いて、図2(a)に示すように、これらの各単電池A,B,C,D,Eの間に接続部材20を介在させて、各単電池A,B,C,D,Eを直列に接続して組電池とする。ここで、接続部材20は、図2(c)に示すように、段状の平面部21の外周に円筒部22を連結した形状になるように、鉄、銅、ニッケルやそれらの合金などの導電性が良好な金属板のプレス成形により形成されている。
【0021】
そして、平面部21の中心部には正極キャップ18bの外径よりも大径の開孔23が形成されているとともに、この開孔23の周囲には、正極キャップ18bに向けて突出する複数のプロジェクション突起24が形成されている。一方、円筒部22は外装缶16の底部に嵌合されるように、その内径は外装缶16の外径よりも若干大きく形成されており、その側壁には外装缶16に向けて突出する複数のプロジェクション突起25が形成されている。この場合、図2(b)に示すように、単電池Eの封口板18aの上に段状の平面部21載置し、平面部21を封口板18a側に加圧しつつ、接続部材20と封口板18aとの間に溶接電流を流すと、プロジェクション突起(この場合は4か所)24で接続部材20は封口板18aに溶接される。
【0022】
なお、接続部材20が金属製外装缶16のかしめ部16bに接触すると短絡が生じるため、このかしめ部16bと接続部材20との間に円筒状絶縁体26を配設するようにしている。ついで、単電池Eに溶接された接続部材20の円筒部22内に単電池Dの金属製外装缶16を嵌合させた後、単電池Dの金属製外装缶16と接続部材20との間に溶接電流を流すと、プロジェクション突起(この場合は4か所)25で接続部材20は金属製外装缶16に溶接される。このような接続を所定の個数(この実施例の場合は5個とする)の単電池について行うことにより、図2(a)に示すよな5個の単電池A,B,C,D,Eが直列接続された組電池100が得られる。
【0023】
ここで、単電池間距離W(図3(a)参照)が、後述するように電池内圧が上昇して最大に膨張したときの単電池の最大長さwに対して、1.0倍(W=1.0w)になるように形成した組電池100を組電池A1とした。同様に、単電池間距離Wを最大長さwに対して、1.1倍(W=1.1w)になるように形成した組電池100を組電池A2とし、1.3倍(W=1.3w)になるように形成した組電池100を組電池A3とし、1.5倍(W=1.5w)になるように形成した組電池100を組電池A4とし、1.6倍(W=1.6w)になるように形成した組電池100を組電池A5とし、2.0倍(W=2.0w)になるように形成した組電池100を組電池A6とした。
【0024】
ここで、電池の内圧が上昇して電池が最大に膨張したときの単電池の最大長さwは、図3(b)に示すように、封口体18側の膨れ量w1と、外装缶16の底部側の膨れ量w2との和(w=w1+w2)として、以下のようにして求めた。
この場合、まず、単電池10の外装缶16の底部の中央部に直径が1mmの孔を開けた後、この孔にガス注入口を接続する。そして、このガス注入口から窒素ガスを注入して、弁板18cとスプリング18dからなる弁体が作動する圧力を予め求める。ついで、ガス注入口から窒素ガスを注入して、上述のようにして予め求めた弁体が作動する圧力に達してから1分経過後の正極キャップ18bの先端部の位置を求めて、加圧する前の位置との差を求めて、封口体18側の膨れ量(w1)を求める。
【0025】
一方、単電池10の封口体18の封口板18aに直径が1mmの孔を開けた後、この孔にガス注入口を接続する。そして、このガス注入口から窒素ガスを注入して、上述のようにして予め求めた弁体が作動する圧力に達してから1分経過後の外装缶16の底部の先端部の位置を求めて、加圧する前の位置との差を求めて、外装缶16側の膨れ量(w2)を求める。得られた封口体18側の膨れ量w1と、外装缶16の底部側の膨れ量w2との和(w=w1+w2)を求めることにより、電池の内圧が上昇して電池が最大に膨張したときの単電池の最大長さwを求めることができる。
【0026】
3.組電池の充放電試験
ついで、上述のような組電池A1〜A6をそれぞれ10個ずつ作製して、これらの10個ずつの各組電池A1〜A6を用いて、1Itの充電電流で16時間充電した後、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vになるまで放電させて、放電時間から各組電池A1〜A6の初期放電容量C1を求めた。ついで、1Itの電流値で上述のように充放電を10回繰り返した後、1Itの充電電流で16時間充電を行い、その後、10Itの放電電流で電池電圧が0.9Vになるまで放電させて、放電時間から各組電池A1〜A6の10It放電後の放電容量C10を求めた。この試験において、単電池が温度上昇した組電池の個数を求めると、下記の表1に示すような結果となった。ついで、求めた放電容量C10から初期放電容量C1に対する割合((C10/C1)×100%)を出力特性(この場合は、10個の組電池の平均値)として求めると、下記の表1に示すような結果が得られた。ただし、組電池A1においては、温度上昇する電池が認められ信頼性が損なわれることから出力特性の評価に対して除外した。
【表1】

【0027】
上記表1の結果から明らかなように、単電池の間隔(W)を電池膨れ量(w)の1.0倍(W=1.0w)とした組電池A1においては、温度上昇した組電池が2組あることから、組電池の信頼性に問題があると考えられる。また、単電池の間隔(W)を電池膨れ量(w)の1.6倍(W=1.6w)とした組電池A5、および2.0倍(W=2.0w)とした組電池A6においては、出力特性が低下していることが分かる。これは、単電池の間隔(W)を長くすることで、接続部材20の長さ(円筒部22の長さ)を長くする必要が生じて、接続部材20での抵抗値が増大して出力特性が低下したと考えられる。また、単電池間の間隔(W)が長くなることで組電池としての曲げ強度も低下していることが分かった。
【0028】
一方、単電池の間隔(W)を電池膨れ量(w)の1.1倍(W=1.1w)〜1.5倍(W=1.5w)とした組電池A2〜A4においては、温度上昇が生じることはなく、また、出力特性も良好であることが分かる。このことから、単電池の間隔(W)は、電池膨れ量(w)の1.1倍(W=1.1w)〜1.5倍(W=1.5w)とするのが好ましいということができる。
【0029】
4.外装缶のヤング率の検討
ついで、外装缶に用いる材質のヤング率について検討した。そこで、ヤング率が10×1010Paの材質の外装缶16を用いて上述と同様に単電池10を作製するとともに、この単電池10を用いて上述と同様に組電池B1を作製した。同様に、ヤング率が12×1010Paの材質の外装缶16を用いて組電池B2を作製し、ヤング率が15×1010Paの材質の外装缶16を用いて組電池B3を作製し、ヤング率が20×1010Paの材質の外装缶16を用いて組電池B4(上述したA3と同様である)を作製し、ヤング率が23×1010Paの材質の外装缶16を用いて組電池B5を作製し、ヤング率が25×1010Paの材質の外装缶16を用いて組電池B6を作製し、ヤング率が28×1010Paの材質の外装缶16を用いて組電池B7を作製した。
【0030】
この場合、外装缶16の材質は表面にニッケルメッキを施した鉄100%であるが、鉄素材には互いにヤング率の異なる素材を複数種類混合して使用し、その混合比率を変化させてヤング率を調整した。尚、外装缶16にステンレスなどのような複数の金属が含まれる合金を用いる場合には、それらの金属の合金比率を変化させることによってもヤング率を調整することができる。
【0031】
ついで、これらの各組電池B1〜B7を用いて、1Itの充電電流で16時間充電した後、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vになるまで放電させて、放電時間から各組電池B1〜B7の初期放電容量C1を求めた。ついで、1Itの電流値で上述のように充放電を10回繰り返した後、1Itの充電電流で16時間充電を行い、その後、10Itの放電電流で電池電圧が0.9Vになるまで放電させて、放電時間から各組電池B1〜B7の10It放電後の放電容量C10を求めた。
【0032】
ついで、求めた放電容量C10から初期放電容量C1に対する割合((C10/C1)×100%)を出力特性(この場合は、10個の組電池の平均値)として求めると、下記の表2に示すような結果が得られた。また、この試験において、各組電池B1〜B7の総膨れ量を求め、組電池B4(A3)の総膨れ量を100とし、他の組電池の総膨れ量をそれとの比率で表すと、下記の表2に示すような結果が得られた。
【表2】

【0033】
上記表2の結果から明らかなように、ヤング率が15×1010Pa以上の材質の外装缶16を用いて作製された組電池B3〜B7においては、総膨れ量も少なく、出力特性も向上していることが分かる。ただし、ヤング率が28×1010Paと大きい材質は外装缶16の加工が困難で、生産性が低下する。このため、電池用外装缶の材質としては不適であるので、ヤング率が25×1010Pa以下の材質から選択して用いる必要がある。この場合、ヤング率が10×1010Paの材質の外装缶16を用いて作製された組電池B1およびヤング率が12×1010Paの材質の外装缶16を用いて作製された組電池B2の総膨れ量が大きく、その出力特性が低下していることが分かる。
【0034】
これは、ヤング率が15×1010Pa未満の材質で形成された外装缶は、電池内圧が上昇することにより膨れ量が大きいために、隣接する単電池の正極キャップと外装缶の底部との間が接触するようになる。このため、この接触部が局所的に高温となって、その抵抗値が増大し、抵抗電圧降下により出力特性が低下したと考えられる。この場合、隣接する単電池間の距離Wを広く取るようにすれば、隣接する単電池の正極キャップと外装缶の底部とが接触することを防止できるようになるが、隣接する単電池間の距離Wが大きくなると、一定の容積内に収容できる単電池の個数を減少させる必要が生じるため、好ましいことではない。
【0035】
上述したように、本発明においては、電池内圧が上昇して各単電池が膨張するようになっても、隣接する単電池の封口体の先端部と金属製外装缶の底部とが接触しないように、隣接する単電池の一方の封口体と他方の金属製外装缶とが接続部材により溶接されている。このため、電池内圧が上昇して各単電池が膨張しても、単電池間は接続部材を通してのみ電流が流れることとなる。この結果、いたずらに電池温度が上昇することもなくなることから、組電池に変形が生じたり、圧力弁が所定の圧力で動作しなかったりすることがなくなり、信頼性が損なわれることもない。
【0036】
なお、上述した実施の形態においては、単電池を5個だけ用いて組電池にする例を説明したが、本発明を適用すれば何個の単電池を接続しても組電池を製造できることは明らかである。また、上述した実施の形態においては、封口体を正極端子とし、外装缶を負極端子とした例について説明したが、封口体を負極端子とし、外装缶を正極端子としてもよい。さらに、上述した実施の形態においては、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用する例について説明したが、本発明はニッケル−水素蓄電池に限らず、ニッケル−カドミウム蓄電池やリチウム二次電池等の他の蓄電池にも本発明を適用できることは明らかである。
【0037】
さらに、接続部材20の形状についても変更することができる。例えば、円筒部22をなくして、平面部21の表裏各面からプロジェクション突起を互いに逆向きに突出させた接続部材を単電池間に挟むような構造のものでも良い。この場合、プロジェクション突起の突出高さによって、単電池間の間隔を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ニッケル−水素蓄電池(単電池)の断面を模式的に示す断面図である。
【図2】5個のニッケル−水素蓄電池(単電池)を接続して組電池とした状態を示す図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部を拡大して示す断面図であり、図2(c)は単電池間を接続して組電池とするための接続部材の一例を示す斜視図である。
【図3】単電池が膨張した場合の膨れ量と単電池間の距離との関係を説明する平面図である。
【図4】従来例の組電池の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10(A,A,C,D,E)…単電池、11…正極板、12…負極板、13…セパレータ、14…正極集電体、15…負極集電体、16…金属製外装缶、16a…凹部、16b…かしめ部、17…正極用リード、18…封口体、18a…封口板、18b…正極キャップ、18c…弁板、18d…スプリング、19a…防振リング、19b…絶縁ガスケット、20…接続部材、21…平面部、22…円筒部、23…開孔、24…プロジェクション突起、25…プロジェクション突起、26…円筒状絶縁体、100…組電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素を収容した一方極の端子を兼ねる金属製外装缶の開口部に絶縁体を介して他方極の端子を兼ねる封口体を備えた単電池の複数個が直列接続された組電池であって、
一方の単電池の封口体の先端部と他方の単電池の金属製外装缶の底部との間に間隔(W)が形成されるように前記一方の単電池の封口体と前記他方の単電池の金属製外装缶とが接続部材により溶接されており、
前記単電池に弁開放が生じるまで電池内圧が上昇して電池膨れが生じても、前記一方の単電池の封口体の先端部と前記他方の単電池の金属製外装缶の底部とが接触しないようになされていることを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記接続部材と前記一方の単電池の封口体との接触部、および前記接続部材と前記他方の単電池の外装缶の接触部がそれぞれ溶接接続されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記単電池に弁開放が生じるまで電池内圧が上昇して電池膨れが生じた際の最大の膨れ量をwとすると、
前記間隔(W)は1.1w〜1.5w(1.1w≦W≦1.5w)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
前記外装缶に使用される材質のヤング率は15×1010〜25×1010Paであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の組電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−92828(P2006−92828A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274743(P2004−274743)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】