説明

経口投与用吸着剤及びその製造方法並びにそれを用いた薬剤

【課題】インドキシル硫酸、インドール酢酸及びインドールに対する吸着能が高い経口投与用吸着剤と、それを容易に且つ有利に製造し得る方法並びにそれを用いた薬剤を提供すること。
【解決手段】フルフリルアルコールの自己縮合反応による樹脂化と硬化によって得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を炭素化、賦活化して、形成された球状活性炭粒子から、経口投与用吸着剤を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与用吸着剤及びその製造方法並びにそれを用いた薬剤に係り、特に、球状フルフリルアルコール樹脂粒子を用いて得られる球状活性炭粒子からなる経口投与用吸着剤と、その有利な製造方法と、それを用いてなる経口服用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、経口投与用吸着剤は、尿毒素を吸着し、腎不全の進行を予防する等という目的をもって、腎疾患の患者等において経口的に服用されてきているが、それは、また、ピッチ原料を用いて、製造されているものであった。しかし、そのような従来のピッチ由来の経口投与用吸着剤には、尿毒素と共に、消化酵素等をも吸着してしまうという問題があったために、近年、フェノール樹脂の如き熱硬化性樹脂やイオン交換樹脂を原料として、β−アミノイソ酪酸等の小さな分子サイズの尿毒素を選択的に吸着する経口投与用吸着剤を製造する技術が開発され(特許文献1〜5)、そのような吸着剤は、また、市販も為されている。
【0003】
しかしながら、それら従来の経口投与用吸着剤は、未だ、尿毒素の主要成分に対する吸着特性において充分でなく、特に、最も良く用いられる尿毒症関連マーカーであるインドキシル硫酸に対する吸着特性については、何等明らかにされてはいない。また、「第4回ジェネリック医薬品品質情報検討会資料4−1−2」(非特許文献1)には、市販されている熱硬化性樹脂(フェノール樹脂)由来の経口投与用吸着剤は、インドキシル硫酸吸着能において劣ることが明らかにされて、それを改善しなければならないという問題があることが指摘されている。
【0004】
また、上記した特許文献1〜5において提案されている経口投与用吸着剤は、何れも、原料として化石資源を用いて製造されるものであって、このため、近年における二酸化炭素の排出量削減の要請に対しても、充分に応え得るものでもなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−73542号公報
【特許文献2】特開2004−244414号公報
【特許文献3】特開2006−15334号公報
【特許文献4】特許第3672200号公報
【特許文献5】特許第3835698号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ジェネリック医薬品品質情報検討会資料4−1−2(球形吸着炭製剤の品質等に係る報告書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、上述の如き、従来の経口投与用吸着剤に内在する問題に鑑みて為されたものであって、その解決課題とするところは、尿毒素の中で、インドール骨格を化学式に有する化合物である、インドキシル硫酸、インドール酢酸及びインドールの吸着能が高い経口投与用吸着剤と、それを容易に且つ有利に製造し得る方法を提供することにあり、また、バイオマス由来原料を用いることが出来るようにすることにより、二酸化炭素の排出量削減の要請にも合致し得る、球状の経口投与用吸着剤と、その製造方法と、それを用いた経口服用剤を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明者は、上記した課題を克服するために鋭意研究した結果、熱硬化性樹脂の中でも、トウモロコシの芯等から製造されるフルフリルアルコールを原料として、それを、自己縮合反応にて樹脂化し、更に硬化せしめて得られる、フルフリルアルコール樹脂を用い、その球状粒子から形成される球状活性炭粒子が、インドキシル硫酸、インドール酢酸及びインドールに対する吸着能に優れていることを見出し、そして、その知見を元にして更に研究を重ねて、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、フルフリルアルコールの自己縮合反応による樹脂化と硬化によって得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を炭素化、賦活化して、形成された球状活性炭粒子からなることを特徴とする経口投与用吸着剤を、その要旨とするものである。
【0010】
なお、かかる本発明に従う経口投与用吸着剤の望ましい態様の一つによれば、平均粒子径が150μm以上1000μm以下であり、且つBET法によって求められる比表面積が1000〜1800m2 /gであるものである。
【0011】
また、本発明にあっては、そのような経口投与用吸着剤を容易に且つ有利に製造するために、(a)フルフリルアルコールを自己縮合反応せしめ、更に硬化させて得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を準備する工程と、(b)かかる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を400〜900℃の温度で炭素化して、球状炭素粒子を得る工程と、(c)該得られた球状炭素粒子を700〜1000℃の温度で賦活して、球状活性炭粒子を形成する工程とを含むことを特徴とする経口投与用吸着剤の製造方法をも、その要旨とするものである。
【0012】
そして、この本発明に従う製造方法にあっては、有利には、前記(a)の工程において準備される球状フルフリルアルコール樹脂粒子は、フルフリルアルコールを酸触媒及び保護コロイドの存在下に反応させて、製造されることとなる。
【0013】
さらに、かくの如き経口投与用吸着剤の製造方法において、望ましくは、前記保護コロイドは、水溶性高分子化合物であり、また、酸触媒は、1.5未満のpKa値を有しているものである。そして、酸触媒としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸が、有利に用いられる。
【0014】
加えて、本発明に従う経口投与用吸着剤を有効成分とする経口服用剤にあっては、上記した経口投与用吸着剤を、消化器官内の毒素吸着に用いるものであり、特に、そのような経口投与用吸着剤を腎疾患の治療又は予防剤として有利に用いるものである。なお、そこで、腎疾患としては、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎炎症候群、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、再発性・持続性血尿、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、尿細管・間質性腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、腎血管性高血圧症、又は続発性糸球体腎炎が対象とされるのである。
【発明の効果】
【0015】
従って、かかる本発明によれば、球状フルフリルアルコール樹脂粒子から得られる球状活性炭粒子にて構成されることにより、インドキシル硫酸、インドール酢酸及びインドールの吸着能が著しく高められた経口投与用吸着剤が、有利に提供され得ることとなったのであり、また、そのような優れた特性を有する経口投与用吸着剤は、本発明に従って、容易に且つ有利に製造され得ることとなるのである。
【0016】
なお、そのような本発明に従う経口投与用吸着剤は、バイオマス由来の原料であるフルフリルアルコールを用いることにより、製造され得るものであるところから、近年における二酸化炭素の排出量削減の要請に対しても、充分に応え得るものとなるのであり、この点において、環境保護にも寄与し得る経口投与用吸着剤や、その製造方法、経口服用剤を実現し得たのである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
要するに、本発明に係る経口投与用吸着剤は、フルフリルアルコールの自己縮合反応による樹脂化と硬化によって得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を用い、それを炭素化及び賦活化して形成された、球状活性炭粒子からなるものであって、有利には、その平均粒子径が150μm以上1000μm以下であるものであり、また、そのBET法によって求められる比表面積(BET比表面積)が1000〜1800m2 /gであるものである。そのような平均粒子径やBET比表面積を有するように調製することによって、毒性物質の吸着性を、より一層向上させることが可能となる。
【0018】
そして、そのような本発明に従う経口投与用吸着剤を製造するには、先ず、その原料となる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を得るべく、フルフリルアルコールが、水を反応媒体として、酸触媒及び保護コロイドの存在下に自己縮合反応させられて、樹脂化せしめられ、更に、加熱して硬化させられることとなる。更にその後、その形成された樹脂粒子を含む反応生成液を濾過、洗浄することによって、平均粒子径が、一般に、150μm〜1000μm程度の微細な球状粒子として、取り出される。なお、ここで、そのような樹脂粒子を与えるフルフリルアルコールとしては、有利には、二酸化炭素排出量の削減を図り、環境保全に寄与すべく、トウモロコシの芯等を原料として得られる、バイオマス由来のものが、好適に用いられることとなる。
【0019】
また、そこにおいて、そのようなフルフリルアルコールの反応系に存在せしめられる保護コロイドは、生成したフルフリルアルコール樹脂を微小な球状粒子の形態にて得る目的で添加されるものであって、その種類としては、特に限定されるものではなく、従来より公知の各種の保護コロイドを使用することが出来る。ここで、本発明の目的をより一層有利に達成せしめるものとしては、アラビアゴム、ガッチゴム、ヒドロキシアルキルグアルゴム、部分加水分解ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子化合物を例示することが出来、それらの中でも、特に、アラビアゴムが好適に用いられ得る。
【0020】
なお、このような保護コロイドは、単独で用いることも、又は2種以上を組み合わせて用いることも、可能である。また、かかる保護コロイドと共に、適当な界面活性剤を併用することも、可能である。更に、その使用量は、用いられる保護コロイドの種類等に応じて適宜に決定されることとなるが、一般的には、フルフリルアルコールに対して0.1〜10質量%程度の割合となるように、好ましくは0.5〜5質量%程度の割合となるように、更に好ましくは1〜3質量%程度の割合となるような量において、使用されることとなる。
【0021】
そして、本発明においては、上記した保護コロイドと共に、フルフリルアルコールの自己縮合反応(樹脂化)や硬化のための触媒として、適当な酸触媒、有利には、pKa値が1.5未満の酸触媒が用いられ、これによって、生成するフルフリルアルコール樹脂の微細化が効果的に実現せしめられ得て、平均粒子径が150μm〜1000μm程度の球状微粒子が、効果的に形成され得るのである。なお、そのような酸触媒のpKa値が高くなると、フルフリルアルコールの自己縮合反応(樹脂化)や硬化を充分に進行させ得なくなったり、生成する樹脂粒子の有効な微細化が困難となったりする等の問題を惹起するようになる。
【0022】
ここで、そのような酸触媒としては、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸等を挙げることが出来、そしてこれらが、単独で又は組み合わせて、用いられることとなるが、それらの中でも、有利には、アルキルベンゼンスルホン酸、特に、炭素数が10以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸が、好適に用いられ得、更に望ましくは、経済性や入手容易性、そして触媒機能等の観点から、ドデシルベンゼンスルホン酸の使用が、特に推奨される。
【0023】
なお、かかる酸触媒は、フルフリルアルコールの反応条件、更には、保護コロイドの種類等により、その使用量が適宜に決定されることとなるが、一般に、フルフリルアルコールに対して、0.1〜10質量%程度の割合において、好ましくは0.5〜7質量%程度の割合において、更に好ましくは1〜5質量%程度の割合において、用いられる。この酸触媒の使用量が少なくなると、本発明の目的を充分に達成し難くなる恐れがあるからであり、また、その使用量が多くなると、反応途中に多量に泡が発生して均一攪拌が困難となって、微小な粒子を得ることが困難となる等という問題を惹起するようになる。
【0024】
また、フルフリルアルコールを自己縮合反応(樹脂化)せしめ、更に硬化反応を進行させるために用いられる、反応媒体としての水の量にあっても、反応条件等に応じて、適宜に選定されるところであるが、一般に、仕込みフルフリルアルコール量に対して、0.5質量倍〜25質量倍程度の割合において、好ましくは1質量倍〜20質量倍程度の割合において、更に好ましくは5質量倍〜15質量倍程度の割合において、用いられることが、望ましい。なお、この水の使用量が、仕込みフルフリルアルコールに対して、0.5質量倍よりも少なくなると、反応生成物が塊状化する等の問題が惹起されるようになるからであり、また、25質量倍よりも多くなると、反応時間が長くなり過ぎて、経済的でない等の問題が惹起されるようになる。
【0025】
そして、本発明に従うフルフリルアルコールの自己縮合反応(樹脂化)や硬化(架橋)の反応に際して採用される反応温度としては、反応効率の観点から、一般に、50℃以上の温度が選定され、好ましくは70℃以上の温度、より好ましくは80℃以上の温度において反応せしめられて、生成する樹脂の微粒子化が図られることとなる。なお、かかる自己縮合反応(樹脂化)と硬化(架橋)の反応は、それぞれ別個の工程において実施することも可能ではあるが、本発明においては、有利には、自己縮合反応に続いて、連続的に硬化反応が進行せしめられることとなり、また、それら2つの反応工程は、同一の温度にて行なわれ得る他、自己縮合反応(樹脂化)に採用される温度よりも高い温度において、硬化(架橋)反応を進行せしめるようにすることも、有利に採用されるのである。更に、反応時間は、それら反応温度や反応系の含水量、生成物の縮合状況や硬化の状況等を考慮しながら、適宜に決定されるものであるが、それら2つの反応に必要とされる合計の反応時間としては、一般的には、1〜50時間程度が採用されることとなる。
【0026】
そして、本発明に用いられる球状フルフリルアルコール樹脂粒子は、上述の如くしてフルフリルアルコールを反応せしめることによって生じた樹脂粒子を含む反応生成液を、濾過、洗浄することによって、その平均粒子径が、一般に、150μm以上1000μm以下程度の球状の樹脂粒子として、取り出されるのである。
【0027】
次いで、このようにして取り出された球状フルフリルアルコール樹脂粒子は、ロータリーキルン等の装置を用いて、窒素、ヘリウム、アルゴン等の非酸化性雰囲気下において、常法に従って、炭素化せしめられるのであるが、有利には、400〜900℃の温度で焼成されて、炭素化されることとなる。なお、この炭素化温度が低くなり過ぎると、樹脂粒子の有効な炭素化が困難となるからであり、また、この炭素化温度が高くなり過ぎると、炭素化が進み過ぎて、球状形状の劣化や物性の低下等の問題を惹起するようになるからである。
【0028】
そして、かかる得られた球状炭素粒子には、適当な賦活処理が施されることによって、目的とする球状活性炭粒子が形成され、これが、本発明に従う経口投与用吸着剤として、用いられることとなるのである。なお、そのような球状炭素粒子の賦活処理は、常法に従って実施することが出来、例えば、スチームや炭酸ガス等の炭素と反応性を有する気流中において、700℃〜1000℃の温度で賦活処理を実施することにより、目的とする活性炭粒子が有利に形成せしめられ得るのである。なお、この賦活工程は、上記した炭素化工程に引き続いて、連続して行なうことが出来る他、別個の工程として独立して実施することも、可能である。
【0029】
また、かかる賦活工程の後に、得られた球状活性炭粒子に対して、その表面の官能基の調整や選択吸着性の調整等のために、酸化処理や還元処理を、単独で、或いはそれらを組み合わせて、実施することも出来る。その際、酸化処理は、一般に、酸化性雰囲気中で、400〜550℃の温度で酸化せしめることによって実施され、また、還元処理は、例えば、窒素ガスのような不活性ガス雰囲気中において、700〜900℃の温度で処理することにより、実施されることとなる。このような酸化処理や還元処理にて表面改質された球状活性炭粒子は、その表面に、酸性点と塩基性点とがバランス良く付加せしめられたものとなり、経口投与されて、腸管内の有毒物質の吸着特性が、有利に高められ得たものとなるのである。
【0030】
そして、かかる球状活性炭粒子からなる経口投与用吸着剤は、その投与目的に応じて、腎疾患の患者等に対して経口投与されることとなるが、その投与形態としては、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁剤、スティック剤、分封包装体、乳剤、ゼリー剤等の、従来と同様な形態が採用されることとなる。なお、カプセル剤とされる場合には、従来のゼラチンの他に、必要に応じて、腸溶性のカプセルを用いることも出来、また、錠剤として用いる場合には、体内で元の微小粒体に解錠されるようにすることが必要であり、更に、他の薬剤や電解質調節剤等と配合した複合剤の形態において用いることも、可能である。
【0031】
かくの如くして得られた、本発明に従う経口投与用吸着剤は、球状フルフリルアルコール樹脂粒子を原料として得られる球状活性炭粒子にて、構成されるものであるところから、尿毒症関連マーカーとして重要なインドキシル硫酸を始め、インドール酢酸やインドールのような毒性物質の吸着能が高いという特徴を発揮するものであるが、その理由は、未だ定かではない。しかし、本発明者の推測によれば、本発明にて原料とされるフルフリルアルコール樹脂は、炭素と水素と酸素の原子から構成される五員環を有する樹脂であるため、従来のフェノール樹脂の如く、炭素と水素と酸素の原子から構成される六員環(ベンゼン環)を主体とした樹脂を原料とするものではないために、焼成した際に生成する炭素の構造が、従来のものとは異なるものとなり、それが、従来の経口投与用吸着剤よりも優れた作用・効果をもたらしているものと考えられている。
【0032】
このように、本発明に従う経口投与用吸着剤は、医薬用として使用され、特に、腎疾患の治療乃至は予防用の経口服用剤として、好適に用いられ得るものである。即ち、腎疾患になると、腎臓の機能が低下するために、インドキシル硫酸や、インドール酢酸、インドール等の体内の有害物質を尿から体外へ十分に排泄できなくなって、尿毒症を引き起こすこととなるが、そのとき、本発明に従う経口投与用吸着剤を有効成分として用いた経口服用剤を投与して、腸内で有害物質を吸着させて、便と共に、排泄させることによって、有害物質の体内への吸収を効果的に抑えることができるのである。そして、これにより、尿毒症が改善されるため、本発明の経口投与用吸着剤を、腎疾患の治療乃至は予防のための経口服用剤として有利に用いることができるのである。なお、本発明の経口投与用吸着剤は、腎疾患以外の疾病でも、消化器官内で毒素を吸着することで、症状を抑え、又は解消することができるものであれば、何れの用途に用いても、何等差支えない。
【0033】
なお、上記の腎疾患としては、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎炎症候群、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、再発性・持続性血尿、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、尿細管・間質性腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、腎血管性高血圧症、又は続発性糸球体腎炎などが、挙げられる。また、腎疾患を原因とした疾患や腎疾患と併発される疾患も、本発明に係る経口投与用吸着剤の用途の対象とすることが出来る。これらのうち、尿毒症の症状を発生する腎不全の治療又は予防用の経口服用剤として、好適に用いられるのである。
【0034】
ところで、腎不全とは、様々な原因から、腎臓の働き(腎機能)が低下した状態のことをいい、通常であれば、尿として排泄される老廃物や水分が血液中にたまり、これが進行すると、尿毒症など、種々の症状を呈する。また、腎機能が急激に低下した場合を、急性腎不全といい、長期にわたって徐々に低下した場合を、慢性腎不全という。
【0035】
そして、慢性腎不全になると、腎臓の糸球体および尿細管機能が次第に低下して、腎臓による内部環境の維持が不可能となっていくのである。この慢性腎不全の初期の症状として、高血圧、高血糖などがある。長期間の高血圧により腎臓の糸球体高血圧が続くと、腎臓の細動脈の動脈硬化、即ち糸球体硬化を生じるとされる。更に、糸球体硬化は蛋白尿を生じ、その蛋白尿が尿細管への負荷となり、炎症による線維化も加わることで、腎臓組織が次第に硬くなり、腎硬化症をきたすことになる。この症状が進行すると、腎臓を流れる血液の量が減って、老廃物や水分のろ過にも障害をきたし、高血圧の症状も悪化する悪循環となる。また、高血圧による動脈硬化症、線維筋性異形成、大動脈炎症候群などから、腎動脈が狭くなり、腎血管性高血圧症を発症することもある。高血糖においては、血糖コントロールの悪い状態が長期間続くと、腎臓の障害から、糖尿病性腎症を生じる。糖尿病性腎症は、長期間糖尿病を患うと、発症し易くなり、徐々に蛋白尿が現れ、やがてネフローゼ症候群となって浮腫を生じ、腎臓の機能が悪化していく。また、糖尿病を発症すると、活性酸素がインシュリンの産出を阻害して、ミトコンドリアを変化させ、血液中のブドウ糖を増加させる。その後、増えたブドウ糖がタンパク質などと反応すると、活性酸素が反応箇所の組織・臓器を攻撃するために、腎不全・神経障害などの合併症へ発展する。この活性酸素の増加により、酸化ストレスが増加し、腎不全、循環系疾患、脳卒中、動脈硬化などの原因となる。
【0036】
また、かかる慢性腎不全の症状が更に進むと、腎性貧血、代謝性アシドーシス、高リン血症、低カルシウム血症、高カリウム血症などが生じる。腎性貧血は、腎機能の低下により、赤血球の産生を促進させて成熟させる働きのあるホルモンとして分泌されるエリスロポエチンが出なくなって、造血能力が低下することによるものである。代謝性アシドーシスは、体内の酸・塩基平衡が塩基の喪失或いは重炭酸以外の無機酸や有機酸(不揮発性)の増加により、酸性に傾いた状態である。高リン血症は、腎臓からのリンの排泄が低下することで、血中にリンが残留した状態になるもので、高リン血症になると、リンが血液に溶けなくなり、カルシウムと結合して、関節などで、石灰化が起こる。この石灰化は、虚血性心疾患を引き起こし、心筋梗塞や狭心症になる危険性がある。高リン状態が持続すると、骨に直接作用する副甲状腺ホルモンの分泌を促し続け、二次性副甲状腺亢進症を引き起こし、骨のゆがみ、骨折、骨痛などの合併症が現れる。低カルシウム血症は、カルシウムイオンの骨や腎臓からの再吸収減少、消化管からの吸収減少、血清カルシウムのキレート化現象などにより、血漿中のカルシウムイオン濃度が低下した状態である。低カルシウム血症が持続すると、副甲状腺の主細胞の過形成による続発性副甲状腺機能亢進症が生じる。高カリウム血症は、血中のカリウムの濃度があがってしまう電解質代謝異常症のひとつである。
【0037】
さらに、慢性腎不全の症状が末期まで進むと、消化器系、神経系、循環器系の多彩な尿毒症の症状を引き起こす。消化器系では、口臭、嘔吐、胃炎、消化管出血、胃潰瘍、膵炎などの症状のほか、腎臓と相互の関係のある肝臓への影響は大きく、腎臓の機能の低下により、腎臓で排出できなかった毒素が、血管を通って肝臓にまわることで、肝疾患に繋がることもある。また、腎疾患から併発する場合以外にも、消化器内の毒素の影響で肝疾患になることもある。このため、本発明の経口投与用吸着剤は、肝疾患の治療や予防にも有効である。神経系では、中枢神経系、精神系、末梢神経系の異常の症状があり、循環器系では、血圧、心膜炎、心筋炎、貧血、尿毒症性肺などの症状がある。その他にも、内分泌、代謝異常症状や 網膜症や角膜症などの眼症状、貧血症状、色素沈着、皮膚掻痒感、皮下出血などの皮膚症状などが生じる。
【0038】
ここで、腎炎とは、腎臓の炎症である。炎症の首座がどこにあるかで、分類されており、腎臓を大きく分けると、尿を漉しとる糸球体組織、その周りの尿細管や間質、腎臓と尿管の接続部の腎盂から成り立っており、糸球体腎炎、尿細管・間質性腎炎、および腎盂腎炎に分類される。尿細管とは微細な管であり、糸球体で血液から取り除かれた体液と老廃物は、尿細管を通って、尿を腎盂に排出する管へと運ばれる。
【0039】
その中で、糸球体腎炎には、原発性と続発性がある。原発性糸球体腎炎としては、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、再発性・持続性血尿の型がある。急性腎炎症候群は、短時間で発症する血尿、蛋白尿などの腎不全と、それに伴う浮腫や高血圧を呈する症候群である。慢性腎炎症候群は、徐々に発症して進行したり、急性腎炎症が慢性化した症候群である。そして、慢性腎炎症候群には、微小変化群、巣状(分節性)糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、高密度沈着物性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、IgA腎症などの型がある。急速進行性腎炎症候群は、急速に腎機能障害が進行して、大規模な糸球体半月体形成が認められるものであり、未治療のままだと、数週間から数カ月で末期腎不全へと進行するものである。再発性・持続性血尿の多くは、非活動性のIgA腎症や慢性化した急性腎炎などである。ネフローゼ症候群は、高度の蛋白尿により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称である。ネフローゼ症候群には、微小変化型疾患、巣状分節性糸球体硬化症、膜性糸球体腎炎、先天性・乳児ネフローゼ症候群、膜性増殖性糸球体腎炎、メサンギウム増殖性糸球体腎炎などがあり、腎臓機能の低下が進むと、尿毒症の症状が生じる。次に、続発性糸球体腎炎としては、ル−プス腎炎、紫斑病性腎炎、肝臓病に伴う腎炎などがあり、様々な病気に伴って、糸球体に病変が起こるものである。この肝臓病に伴う腎炎とは、ウイルス性肝炎や肝硬変などに伴うIgA腎症や膜性腎症などをいう。なお、糸球体腎炎の症状として、血尿や蛋白尿を生じるが、これから発生する無症候性血尿・タンパク尿症候群は、症状が進行すると、慢性腎炎となることがある。
【0040】
また、尿細管・間質性腎炎とは、尿細管と間質の炎症であり、尿細管と尿細管間質組織が炎症により損傷を受けると、腎臓は尿を濃縮できなくなり、代謝性老廃物の排出がうまく行われなくなって、ナトリウムやカリウムなど電解質の排出のバランスが取れなくなる。この尿細管・間質性腎炎には、急性尿細管・間質性腎炎と慢性尿細管・間質性腎炎とがある。そこで、急性尿細管間質性腎炎は、薬剤の副作用が主な原因であり、急性腎盂腎炎の感染症、膠原病の合併症として起こる場合もある。慢性尿細管間質性腎炎は、慢性腎盂腎炎による慢性感染症が主な原因である。急性、慢性の何れも、腎不全の症状を呈する。また、腎炎では、腎臓内の血管にも炎症が起こることがあり、この場合を血管炎という。
【0041】
さらに、腎盂腎炎とは、腎臓から尿管につながる腎盂に細菌感染症が起きて、そこから腎臓内部に炎症が及んだものであり、慢性腎盂腎炎と急性腎盂腎炎がある。慢性腎盂腎炎は、尿路結石、前立腺肥大症、尿路奇形など基礎疾患があることが多い。急性腎盂腎炎は、大腸菌が膀胱から尿管をさかのぼり、腎盂へ達することで、発生することが多い。このような腎盂腎炎を何度も繰り返したり、慢性化させると、腎不全になり易いのである。
【0042】
本発明にあっては、上記の如き腎疾患や腎疾患から発症する疾患において、本発明に従う経口投与用吸着剤を有効成分とする経口服用剤を投与することで、腸内の毒素などの有害物質を吸着して、便と共に、排泄させることができるのであって、これにより、腎機能の低下によって尿から排出されずに体内に溜まった有害物質を、有利に取り除くことができるのである。そして、これによって、有害物質による症状の悪化を抑えることで、腎疾患の治療薬として用いることができる。また、腎疾患から発症する上記の症状を発生させる前に抑える抑制剤乃至は予防剤として、用いることができる。
【0043】
また、本発明に係る経口投与用吸着剤は、腎疾患を要因として併発する疾患に対する治療・予防剤としても、用いられ得る。腎疾患から併発される症状としては、腎性骨異栄養症がある。尿毒症により腎機能低下に伴う高リン血症や、腸管でのカルシウム吸収の低下や、副甲状腺ホルモンに対する骨の反応性の低下を招くことで、低カルシウム血症を生ずる。この低カルシウム血症や副甲状腺ホルモンの抑制作用の低下などから、二次性副甲状腺機能亢進症が惹起され、更には代謝性アシドーシスも加わって、腎性骨異栄養症が発生する。腎性骨異栄養症とは、慢性腎不全に合併する、すべての代謝性の骨変化の総称であり、骨軟化症、骨粗鬆症、骨硬化症、線維性骨炎などが挙げられる。本発明の経口投与用吸着剤の投与により、腎臓機能を回復させて、腸内でのカルシウム吸収の低下が抑えられるようにすることで、骨量の減少を抑制することができ、腎性骨異栄養症の予防・改善剤として、用いることができるのである。
【0044】
さらに、腎疾患により尿酸の排泄が低下することで、高尿酸血症になることがある。この高尿酸血症が進行すると、体内で尿酸が溶解せずに、関節などで結晶化して、痛風などの障害を引き起こし、心筋梗塞などの虚血性心疾患の原因にもなる。そのため、本発明の経口投与用吸着剤の経口服用剤としての投与により、腎疾患の改善により高尿酸血症や痛風などの予防・改善剤として用いることができる。
【0045】
なお、本発明に係る経口投与用吸着剤を有効成分とする経口服用剤は、人間の他、消化器官内の毒素吸着を必要とする疾患を発症させる犬や猫などの動物に用いて良く、その投与量は、投与対象が、人間か、その他の動物であるか、また年令、身長、体重、又は病状などに影響されるので、場合によっては下記範囲外の投与量が適当なこともあるが、一般に、人間を対象とする場合の経口投与量は1日当り1〜20gを3〜4回に分けて服用し、更に症状によって、適宜に増減することが可能である。
【実施例】
【0046】
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下の実施例において、部及び百分率は、特に断りのない限りにおいて、質量基準にて示されるものである。
【0047】
また、以下の実施例及び比較例において得られた経口投与用吸着剤(試料)の、BET比表面積及び体積平均粒子径、更にはインドール、インドール酢酸及びインドキシル硫酸の吸着能は、それぞれ、以下に示す方法に従って、評価されたものである。
【0048】
(1)BET比表面積
日本ベル株式会社製BELSORP−miniを用いて、各吸着剤試料の比表面積をBET法によって測定した。
【0049】
(2)体積平均粒子径
日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置:MT3200IIを用いて、各吸着剤試料の体積平均粒子径(D50)を測定した。
【0050】
(3)インドールの吸着試験
インドールの30mgを、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水の300mLに溶解せしめて、インドール水溶液を調製した。その後、100mLの共栓付き三角フラスコに、各吸着剤試料の0.02gを収容し、更に上記のインドール水溶液を50mL加えて、暗所において、温度:37℃、振とう速度:120回/分、振幅:約3cmの条件下で、振とうを行なった。そして、その振とうが終了した後、0.45μmメンブレンフィルタで、三角フラスコ内の内容物の濾過を行なった。更に、その濾過操作において、始めに流出する濾液の約15mLを除き、その後に流出する濾液の約15mLを、試験溶液として、採取した。
【0051】
次いで、かかる得られた試験溶液を、先のインドール水溶液と共に用いて、それら2種類の溶液を、それぞれ、水で4倍に希釈した後、全有機体炭素計にて、全炭素濃度と無機体炭素濃度を、それぞれ測定した。そして、その得られた各溶液についての全炭素濃度から無機体炭素濃度を差し引いた値に4を乗じ、前記2種類の溶液中の有機体炭素濃度を、それぞれ求めた。
【0052】
その後、その求められた2種類の溶液の有機体炭素濃度から、下記の式(1)に従って、インドール水溶液と試験溶液のそれぞれのインドール量を求め、更に、下式(2)に従って、インドール吸着能(%)を算出した。
インドール量(mg)
=有機体炭素濃度(mg/L)×50(mL)/1000(mL)×117/(12×8)
・・・(1) インドール吸着能(%)
=[(インドール水溶液中のインドール量 − 試験溶液中のインドール量)/( インドール水溶液中のインドール量)]×100 ・・・(2)
【0053】
(4)インドール酢酸の吸着試験
3−インドール酢酸の30mgを、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水の300mLに溶解せしめて、3−インドール酢酸水溶液を調製した。その後、100mLの共栓付き三角フラスコに、各吸着剤試料の0.05gを収容し、更に上記の3−インドール酢酸水溶液を50mL加えて、暗所において、温度:37℃、振とう速度:120回/分、振幅:約3cmの条件下で、振とうを行なった。次いで、その振とうが終了した後、0.45μmメンブレンフィルタで、三角フラスコ内の内容物の濾過を行なった。そして、その濾過操作において、始めに流出する濾液の約15mLを除き、その後に流出する濾液の約15mLを、試験溶液として、採取した。
【0054】
続いて、かかる得られた試験溶液を、先の3−インドール酢酸水溶液と共に用いて、それら2種類の溶液を、それぞれ、水で2倍に希釈した後、全有機体炭素計にて、全炭素濃度と無機体炭素濃度を、それぞれ測定した。そして、その得られた各溶液についての全炭素濃度から無機体炭素濃度を差し引いた値に2を乗じ、前記2種類の溶液中の有機体炭素濃度を、それぞれ求めた。
【0055】
その後、かかる求められた2種類の溶液の有機体炭素濃度から、下記の式(3)に従って、3−インドール酢酸水溶液と試験溶液のそれぞれの3−インドール酢酸量を求め、更に、下式(4)に従って、3−インドール酢酸吸着能(%)を算出した。
3−インドール酢酸量(mg)
=有機体炭素濃度(mg/L)×50(mL)/1000(mL)×175/(12×10)
・・・(3) 3−インドール酢酸吸着能(%)
=[(3−インドール酢酸水溶液中の3−インドール酢酸量 − 試験溶液中の3− インドール酢酸量)/(3−インドール酢酸水溶液中の3−インドール酢酸量 )]×100 ・・・(4)
【0056】
(5)インドキシル硫酸の吸着試験
インドキシル硫酸カリウムの30mgを、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水の300mLに溶解せしめて、インドキシル硫酸カリウム水溶液を調製した。その後、100mLの共栓付き三角フラスコに、各吸着剤試料の0.02gを収容し、更に、上記のインドキシル硫酸カリウム水溶液を50mL加えて、暗所において、温度:37℃、振とう速度:120回/分、振幅:約3cmの条件下で、振とうを行なった。次いで、その振とうが終了した後、0.45μmメンブレンフィルタで、三角フラスコ内の内容物の濾過を行なった。そして、その濾過操作において、始めに流出する濾液の約15mLを除き、その後に流出する濾液の約15mLを、試験溶液として、採取した。
【0057】
続いて、かかる得られた試験溶液を、先のインドキシル硫酸カリウム水溶液と共に用いて、それら2種類の溶液を、それぞれ、水で2倍に希釈した後、全有機体炭素計にて、全炭素濃度と無機体炭素濃度を、それぞれ測定した。そして、その得られた各溶液についての全炭素濃度から無機体炭素濃度を差し引いた値に2を乗じ、前記2種類の溶液中の有機体炭素濃度を、それぞれ求めた。
【0058】
その後、それら求められた2種類の溶液の有機体炭素濃度から、下記の式(5)に従って、インドキシル硫酸カリウム水溶液と試験溶液のそれぞれのインドキシル硫酸カリウム量を求め、更に、下式(6)に従って、インドキシル硫酸カリウム吸着能(%)を算出した。
インドキシル硫酸カリウム量(mg)
=有機体炭素濃度(mg/L)×50(mL)/1000(mL)×251/(12×8)
・・・(5) インドキシル硫酸カリウム吸着能(%)
=[(インドキシル硫酸カリウム水溶液中のインドキシル硫酸カリウム量 − 試験 溶液中のインドキシル硫酸カリウム量)/(インドキシル硫酸カリウム水溶液 中のインドキシル硫酸カリウム量 )]×100 ・・・(6)
【0059】
(実施例1)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの1000部、水の1000部、アラビアゴムの1.5部、及びドデシルベンゼンスルホン酸の10%水溶液の15部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で4時間反応させた(硬化反応)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄することにより、硬化球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。
【0060】
続いて、この得られた硬化球状フルフリルアルコール樹脂粒子の300部を、ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で30分間加熱(焼成)して、炭化を行ない、球状炭素粒子を得た。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、窒素雰囲気下、900℃で4時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。その後、その得られた活性炭粒子を、空気雰囲気下、475℃で3時間15分、酸化処理を行なった後、更に800℃で5分間、還元処理を行なうことで、経口投与用吸着剤を得た。
【0061】
かくして得られた経口投与用吸着剤について、その特性(BET比表面積;平均粒子径;インドール、インドール酢酸及びインドキシル硫酸の吸着能)を評価し、その結果を、下記表1に示した。
【0062】
(実施例2)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの1000部、水の1000部、アラビアゴムの1.5部、及びドデシルベンゼンスルホン酸の10%水溶液の15部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で4時間反応させた(硬化反応)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄することにより、硬化球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。
【0063】
続いて、この得られた硬化球状フルフリルアルコール樹脂粒子の300部を、ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で30分間加熱(焼成)して、炭化を行ない、球状炭素粒子を得た。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、窒素雰囲気下、800℃で14時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。その後、その得られた活性炭粒子を、空気雰囲気下、475℃で3時間15分、酸化処理を行なった後、更に800℃で5分間、還元処理を行なうことで、経口投与用吸着剤を得た。
【0064】
かくして得られた経口投与用吸着剤について、その特性(BET比表面積;平均粒子径;インドール、インドール酢酸及びインドキシル硫酸の吸着能)を評価し、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0065】
(実施例3)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの1000部、水の1000部、ヒドロキシエチルセルロースの1.5部、及びドデシルベンゼンスルホン酸の10%水溶液の15部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、2時間反応させた(自己縮合反応)。その後、100℃で4時間反応させた(硬化反応)。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄することにより、硬化球状フルフリルアルコール樹脂粒子を製造した。
【0066】
続いて、この得られた硬化球状フルフリルアルコール樹脂粒子の300部を、ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で30分間加熱(焼成)して、炭化を行ない、球状炭素粒子を得た。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、窒素雰囲気下、900℃で4時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。その後、その得られた活性炭粒子を、空気雰囲気下、475℃で3時間15分、酸化処理を行なった後、更に800℃で5分間、還元処理を行なうことで、経口投与用吸着剤を得た。
【0067】
かくして得られた経口投与用吸着剤について、その特性(BET比表面積;平均粒子径;インドール、インドール酢酸及びインドキシル硫酸の吸着能)を評価し、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0068】
(比較例1)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フルフリルアルコールの1000質量部、37%ホルマリンの1240質量部、水の700質量部、ヒドロキシエチルセルロースの10質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸の10%水溶液の25質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、2時間反応させた。その後、100℃で4時間反応させた。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄することにより、硬化球状フラン樹脂粒子を製造した。
【0069】
続いて、この得られた硬化球状フラン樹脂粒子の300質量部を、ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で30分間加熱(焼成)して、炭化を行ない、球状炭素粒子を得た。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、窒素雰囲気下、900℃で4時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。その後、その得られた活性炭粒子を、空気雰囲気下、475℃で3時間15分、酸化処理を行なった後、更に800℃で5分間、還元処理を行なうことで、経口投与用吸着剤を得た。
【0070】
かくして得られた経口投与用吸着剤について、その特性(BET比表面積;平均粒子径;インドール、インドール酢酸及びインドキシル硫酸の吸着能)を評価し、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0071】
(比較例2)
温度計、攪拌装置及び還流冷却器を備えた反応容器内に、フェノールの1000質量部、37%ホルマリンの1035質量部、水の758質量部、ヒドロキシエチルセルロースの10.5質量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸の10%水溶液の100質量部を仕込んだ後、内容物を攪拌混合しながら、80℃まで加熱し、6時間反応させた。かかる反応の後、反応容器内を室温まで冷却し、次いで、濾過、洗浄することにより、硬化球状フェノール樹脂粒子を製造した。
【0072】
続いて、この得られた硬化球状フェノール樹脂粒子の300質量部を、ロータリーキルンを用いて、窒素雰囲気下において、800℃で30分間加熱(焼成)して、炭化を行ない、球状炭素粒子を得た。更に続いて、かかる得られた球状炭素粒子を、窒素雰囲気下、900℃で4時間、水蒸気賦活して、球状活性炭粒子を得た。その後、その得られた活性炭粒子を、空気雰囲気下、475℃で3時間15分、酸化処理を行なった後、更に800℃で5分間、還元処理を行なうことで、経口投与用吸着剤を得た。
【0073】
かくして得られた経口投与用吸着剤について、その特性(BET比表面積;平均粒子径;インドール、インドール酢酸及びインドキシル硫酸の吸着能)を評価し、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0074】
(比較例3)
フェノール樹脂を原料として製造されている市販の球状吸着炭製剤:メルクメジン(マイラン製薬株式会社製品)について、上記と同様な特性評価を行ない、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0075】
【表1】

【0076】
かかる表1の結果より明らかな如く、本発明に従う実施例1〜3にて得られた球状活性炭粒子からなる吸着剤にあっては、何れも、インドキシル硫酸、インドール酢酸及びインドールのそれぞれに対して、極めて優れた吸着力を示した。
【0077】
これに対して、比較例1〜3に係る吸着剤は、何れも、インドキシル硫酸、インドール酢酸及びインドールに対する吸着能が充分でなく、その中で、本発明において用いられる原料樹脂に近い比較例1の球状フラン樹脂粒子を用いた場合にあっても、インドキシル硫酸に対する吸着能において劣るものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルフリルアルコールの自己縮合反応による樹脂化と硬化によって得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を炭素化、賦活化して、形成された球状活性炭粒子からなることを特徴とする経口投与用吸着剤。
【請求項2】
平均粒子径が150μm以上1000μm以下であり、且つBET法によって求められる比表面積が1000〜1800m2 /gであることを特徴とする請求項1に記載の経口投与用吸着剤。
【請求項3】
フルフリルアルコールを自己縮合反応せしめ、更に硬化させて得られる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を準備する工程と、
かかる球状フルフリルアルコール樹脂粒子を400〜900℃の温度で炭素化して、球状炭素粒子を得る工程と、
該得られた球状炭素粒子を700〜1000℃の温度で賦活して、球状活性炭粒子を形成する工程と、
を含むことを特徴とする経口投与用吸着剤の製造方法。
【請求項4】
前記球状フルフリルアルコール樹脂粒子は、フルフリルアルコールを酸触媒及び保護コロイドの存在下に反応させて、製造されることを特徴とする請求項3に記載の経口投与用吸着剤の製造方法。
【請求項5】
前記保護コロイドが、水溶性高分子化合物である請求項4に記載の経口投与用吸着剤の製造方法。
【請求項6】
前記酸触媒が、1.5未満のpKa値を有している請求項4又は請求項5に記載の経口投与用吸着剤の製造方法。
【請求項7】
前記酸触媒が、アルキルベンゼンスルホン酸であることを特徴とする請求項6に記載の経口投与用吸着剤の製造方法。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の経口投与用吸着剤を、有効成分として含有する消化器官内の毒素吸着用経口服用剤。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の経口投与用吸着剤を、有効成分として含有する腎疾患の治療乃至は予防用経口服用剤。
【請求項10】
前記腎疾患が、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎炎症候群、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、再発性・持続性血尿、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、尿細管・間質性腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、腎血管性高血圧症、又は続発性糸球体腎炎であることを特徴とする請求項9に記載の腎疾患の治療乃至は予防用経口服用剤。


【公開番号】特開2012−51870(P2012−51870A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42042(P2011−42042)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】