説明

経口腸内環境調整剤および経口正常腸内細菌叢育成キット

腸内の有害菌を排除し有用菌の増殖能を調整するための経口組成物および腸内細菌叢を正常化するキットを提供する。難消化性デキストリン、ポリエチレングリコールのような膠質浸透圧調整剤および/または電解質や糖類のような晶質浸透圧調整剤を含有する組成物を経口腸内環境調整剤とし、これを腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤と組み合せて用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、腸内における有用菌の増殖を促進し、有害菌の増殖を抑制して腸内の細菌叢を正常化するための経口組成物に関する。
【背景技術】
ヒトの大腸内には多様な細菌が常在し、複雑な大腸内細菌叢(Fecal Microbiota)を形成している。腸内細菌には、いわゆる善玉菌である有用菌と悪玉菌である有害菌があり、有用菌が優勢な細菌叢を保持することが大切である。有用菌には、コレステロール低下作用、抗腫瘍作用、免疫増強作用、ピロリ菌の抑制作用等がある。大昔から食用とされているヨーグルトは、有用な腸内細菌を増やし、維持する効果がある。近年では新たに開発された乳酸菌、ビフィズス菌等がそれ自身の有用菌としての働きを利用し、さらに有用菌を増殖する目的で摂取されている。また、有用腸内細菌の増殖、維持を助ける目的で乾燥酵母、難消化性オリゴ糖類、食物繊維、短鎖脂肪酸などが服用されている。さらに、乳酸菌と多糖類を併用することによって、腸内環境を改善する組成物も提案されている(例えば、特開2000−60483)。
近年、寝たきり老人や人工肛門ストーマ使用者等排便が困難な人に、肛門から洗浄液を入れて腸管洗浄を行うことが提案されている。その際、腸管洗浄による腸内細菌の変化に対し、ビフィズス菌やオリゴ等を健康支援液として腸管内に注入することも提案されている(例えば、特開平11−276579)。しかし、これは積極的に腸内細菌叢のバランスを改善し、また長期間腸内有用菌の優勢な環境を維持するためのものではない。
成人病という呼称から、生活習慣病と呼ばれるようになった、糖尿病、高脂血症、高血圧症及び肥満症にも、腸内細菌叢が関与している。生活習慣病は、偏食、過食、アルコール性飲料の過摂取、喫煙、運動不足等の好ましくない生活習慣が原因である。その生活習慣は善玉菌には住みにくく、悪玉菌がはびこり易い腸内環境を作り上げ、その有害菌の増加が肝臓障害、胃腸障害、動脈硬化、高血圧、癌、老化などをひきおこす。このような生活習慣病の患者のバランスの崩れた腸内細菌叢を効果的に改善することができる製剤等が求められている。しかし、有用菌優勢の腸内細菌叢を作り維持する目的で、単に有用菌やその増殖促進剤を服用しても、腸内細菌叢のバランスを確実に改善、維持することは難しい。
【発明の開示】
本発明の目的は、腸内細菌叢を改善するのに適した、経口腸内環境調整剤および経口正常腸内細菌叢育成キットを提供することである。
本発明者らは、これまで大腸内視鏡検査や大腸手術前に腸管内容物を排除する目的で使用されてきた経口腸管洗浄剤の服用が、腸内に定着した有害菌を一旦激減させ、有用菌の定着に適しかつ有害菌の増殖を抑制する腸内環境を整えることができることを見出した。さらに、そのように腸内環境を整えた上で、乳酸菌などの有用菌を摂取すれば有用菌優勢の腸内菌叢を整え得ること、および食物繊維のような腸内有用菌増殖促進剤を併用するとさらに効果のあることを見出し本発明を完成した。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を含有することを特徴とする、腸内の有害菌を排除し有用菌の増殖環境を調整するための経口腸内環境調整剤である。本発明の経口腸内環境調整剤は、有害菌の優勢な人の腸管内容物の排泄を促進し有害菌を減少して、有用菌の生育に適した環境整えるものである。
本発明の経口腸内環境調整剤に含有される膠質浸透圧調整剤としては、難消化性デキストリン、ポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、を挙げることができる。特に難消化性デキストリン、ポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチンから選ばれる高分子を浸透圧調整剤として含有させることが好ましい。中でも難消化性デキストリンは、ポリエチレングリコールと比べて安定性が良い点、服用し易い点および香料等の添加物との組合せが自在である点で優れている。また、大量に摂取した場合にも下痢などの副作用が少なく、極めて低カロリーであるので優れている。
本発明の経口腸内環境調整剤に含有される晶質浸透圧調整剤としては、電解質または電解質と糖類の混合物が用いられる。電解質とは、溶液中で解離してイオンとなる物質を言い、Na、K、Ca++、Mg++、Cl、HCO、SO−−、HPO−−、有機酸基、有機塩基を挙げることができる。より具体的には、静脈投与される電解質輸液などに用いられる化合物と同様のものを使用できる。ナトリウム源としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が、カリウム源としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム等が、カルシウム源としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム等が、マグネシウム源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム等が、リン源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム等が、塩素源としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が、また重炭酸イオン源としては、炭酸水素ナトリウム等がそれぞれ例示され、これらの化合物は水和物の形態であってもよい。電解質に混合する糖類には、糖のほか糖アルコールも含む。具体的な例として、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノース、グリセリンを挙げることができる。特に、キシリトール、ソルビトール、ラクチュロース、ラクチトール、ラフィノースが好ましい。
本発明の経口腸内環境調整剤において、上述の膠質浸透圧調整剤と晶質浸透圧調整剤は、生体内の血清電解質バランスと浸透圧の変動を最小限に抑えるために重要な成分である。浸透圧調整剤として、膠質浸透圧調整剤、晶質浸透圧調整剤もしくはその両者を配合して用いる。その量は、患者の病状や腸内残留物量等により調整するが、水に溶解して浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として使用することが好ましい。より好ましくは、280〜320mOsm/Lの等張、もしくは等張に近い浸透圧範囲に調整可能なように各成分の種類と配合量を選択するのがよい。
膠質浸透圧調整剤の使用量は、水1リットルに溶解する製剤中に5〜100グラム、好ましくは10〜60グラムである。腸管から吸収される電解質量と腸管内に分泌される電解質量を相殺させて血清電解質バランスを維持するため、経口腸内環境調整剤を水に溶解したとき、Na:30〜150mEq/L、K:3〜20mEq/L、Cl:20〜70mEq/L、HCO:10〜50mEq/Lとなるように電解質を添加するのが好ましい。水に溶解した経口腸内環境調整剤の腸管での水分および電解質の吸収を抑制し、腸管洗浄効率を上げるためにマグネシウムイオン、硫酸イオンのような難吸収性イオンを添加する。マグネシウムイオンの場合は、経口腸内環境調整剤を水に溶解したとき、40〜120mEq/Lとなるよう調整する。硫酸イオンの場合は、経口腸内環境調整剤を水に溶解したとき、40〜120mEq/Lとなるよう調整する。晶質浸透圧調整剤として糖類を用いる場合の使用量は、水1リットルに溶解する製剤中に5〜80グラム、好ましくは10〜60グラムである。好ましい処方は、膠質浸透圧調整剤と電解質の混合、晶質浸透圧調整剤としての電解質と糖類の混合もしくは膠質浸透圧調整剤としての難消化性デキストリンと晶質浸透圧調整剤としての電解質と糖類の混合である。
好ましい経口腸内環境調整剤の処方は、水に溶解したとき、Naが30〜150mEq/L、Kが3〜20mEq/L、Clが20〜70mEq/L、HCOが10〜50mEq/Lとなるように電解質を含み、難消化性デキストリン、ポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチン、アルブミン、カルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種類の膠質浸透圧調整剤および/またはソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノース、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の糖類を含むものである。中でも、膠質浸透圧調整剤として難消化性デキストリンを用いることが推奨される。難消化性デキストリンは、晶質浸透圧調整剤としての糖類と比較して低カロリーである点および下痢を起こしにくいという点で優れている。しかし、1L当たりの総量が30gを超えると溶解性が不十分となる場合があるので、晶質浸透圧調整剤としての糖類と組み合わせることが好ましい。その場合、難消化性デキストリン/糖類の総量(重量比)が0.7〜4の範囲であることが好ましく、特には1.5〜3の範囲であることが好ましい。難消化性デキストリンは、加熱処理したデンプンをアミラーゼで加水分解し、未分解物より難消化性成分を分離して調製される水溶性食物繊維である。難消化性デキストリンは、例えば松谷化学工業株式会社からパインファイバー、ファイバーソル2、ファイバーソル2H等の商品名で販売されている。
本発明の経口腸内環境調整剤に含有される膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤はそれぞれ混合可能なように粒子径を調整したうえで、気密性の容器に充填、密封されることが好ましい。包装品1個が、水250mLあるいは1Lもしくは2Lに溶解して使用されるよう内容量を調整するのが使用目的に適している。
この経口腸内環境調整剤には、腸内有用菌増殖促進剤を添加することができる。腸内有用菌増殖促進剤を添加することにより、腸管洗浄に役立ち、有用菌の早期の生育に効果がある。膠質浸透圧調整剤として難消化性デキストリンを用いる場合にはそれが腸内有用細菌増殖促進剤としても働く点で特に好都合である。
本発明の別の態様は、上記の経口腸内環境調整剤に、腸内有用菌組成物と腸内有用菌増殖促進剤の一方もしくは両者を組合せた経口正常腸内細菌叢育成キットである。腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤は、経口腸内環境調整剤とは別途に包装して組み合せる。腸内有用菌組成物と腸内有用菌増殖促進剤は、別々に包装するか一緒に包装することができる。
腸内有用菌増殖促進剤は、有用菌の栄養原となるもの、有用菌の生育を助長するもの、腸内腐敗物生成を抑制するものおよび有害菌の生育を抑制するもの等であり、これまで腸内有用菌の増殖に有効とされるあらゆる物質を用いることができる。食物繊維は腸管内で生成した有害物を吸着し、排便を促し、腸内細菌の発育を促進する。難消化性糖類は有用菌の栄養原となる。有用菌の生育を助長するものとしては、酵母、タンニン類等が挙げられる。短鎖脂肪酸、脂肪酸以外の有機酸、例えば乳酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸は、有害菌の生育を抑制し、有用菌の生育を促進する。
本発明の腸内有用菌増殖促進剤として使用される食物繊維としては、水に可溶な水溶性繊維と水に不溶な不溶性繊維のいずれを用いてもよい。水溶性繊維としては、例えば難消化性デキストリン、ペクチン、メトキシペクチン、ガラクトマンナン、アルギン酸およびその塩、テングサ、オゴノリ等のガラクタン(galactan)を含む海藻より抽出された寒天、カルボキシメチルセルロースおよびその塩を挙げることができる。水不溶性繊維としては、リンゴファイバー、コーンファイバーなどの植物から得られた繊維や、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、ほうれん草などの野菜乾燥物、セルロース、ヘミセルロース、カラギーナン、リグニンなどを構成成分とする大豆や小麦のふすまなどを挙げることができる。
食物繊維の1日当たりの目標摂取量は20〜25グラムとされている。食事によって平均17グラムが摂取されていると言われているので、1日当たり5〜15グラム、好ましくは3〜8グラムを補充すれば足りる。場合によって更に多くすることもできる。
糖類としては、キシリトール、ソルビトール、ラクチュロース、パラチノース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、スタキオース、キシロオリゴ糖などの種々の難消化性糖類が有用菌の増殖にとって有効である。短鎖脂肪酸としては2〜5個の炭素鎖長を有する脂肪酸であり、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸が好ましい。酵母としては、ビール酵母やパン酵母があげられる。タンニン類としてはカテキン、ガロカテキン、エピカテキン等が好ましい。糖類、短鎖脂肪酸、酵母、タンニン類、その他に有機酸の量は、適宜設定することができる。1日当たり0.1〜10グラム、好ましくは0.5〜5グラムとするが場合によっては更に多くすることもできる。
本発明の腸内有用菌組成物に使用される有用菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・インファティス、ビフィドバクテリウム・ロンガムなどのビフィドバウテリウム属菌;ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・デルブルッキィー、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ゼアエ等のラクトバチルス属菌;ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属菌;エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウム等のエンテロコッカス属菌;ラクトコッカス・ラクチス等のラクトコッカス属菌等が好適である。特に、風味や食経験に基づく安全性などの点から、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトコッカス・ラクチス、ラクトバチルス・ガセリ、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシウムが好ましい。
なお、経口腸内環境調整剤、腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤には、その目的を損なわない範囲において、香味料、補助剤、増量剤等を加えることができる。
本発明の経口腸内環境調整剤を使用するに当たっては、所定量を水に溶解して溶解液とする。成人の場合は、この溶解液を0.2〜4L、好ましくは1〜2L経口で服用する。服用は1時間当たり約1Lの速度とするのが好ましい。そのように服用することによって、腸管内容物は排泄される。1週間の排便回数が平均4回未満の便秘がある場合には、便通改善を目的として溶解液200〜300mLを3〜5日間連続服用して便通を改善した後、1〜2L経口で服用することによって腸管内容物を排泄させることが好ましい。
腸管内容物を排泄させるための経口腸内環境調整剤の服用回数は、1回から複数回とすることができる。2回目の服用は、初回の服用から1週間〜2ヶ月後とするのが望ましい。腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤は、経口腸内環境調整剤と同時に服用することもできるが、好ましくは、経口腸内環境調整剤の服用によって腸管内容物が排泄された後に、1日1〜3回を毎日継続して服用するのが望ましい。1回目の経口腸内環境調整剤を服用し、その後1週間〜2ヶ月間腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤を継続的に服用する。これを1サイクルとし、1サイクル終了後、症状に応じて同じサイクルを繰り返すことによって、腸内細菌叢が有用菌優勢の環境に大幅に改善される。腸内有用菌組成物と腸内有用菌増殖促進剤は併用することが望ましい。しかし、経口腸内環境調整剤服用後1週間〜1ケ月間、腸内有用菌組成物と腸内有用菌増殖促進剤を併用し、その後は腸内有用菌増殖促進剤のみを服用することもできる。したがって、服用者の病状により、次回の経口腸内環境調整剤の服用までの期間に必要とされる腸内有用菌組成物と腸内有用菌増殖促進剤の一方もしくはその両者の包装品を、経口腸内環境調整剤の包装品1つと組み合せて1つの包装内に収容することが好ましい。また、便通改善用の200〜300ml用の小包装3〜5つを前記包装内に収容することもできる。なお、経口腸内環境調整剤は0.4〜4L用の包装品の代わりに便通改善用の小包装と同じもの2〜20個を収容することもできる。
以下に実施例および試験例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
実施例1 経口腸内環境調整剤−1
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37gをポリエチレングリコール118gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは2Lの水に溶解して服用するものである。
実施例2 経口腸内環境調整剤−2
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37gをラクチュロース65gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは2Lの水に溶解して服用するものである。
実施例3 経口腸内環境調整剤−3
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37gをラクチトール65gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは2Lの水に溶解して服用するものである。
実施例4 経口腸内環境調整剤−4
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37gをキシリトール29gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは2Lの水に溶解して服用するものである。
実施例5 経口腸内環境調整剤−5
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37gをD−ソルビトール35gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは2Lの水に溶解して服用するものである。
実施例6 経口腸内環境調整剤−6
塩化ナトリウム1.465g、塩化カリウム0.7425g、炭酸水素ナトリウム1.685g、無水硫酸ナトリウム5.685gをラクチトール29gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは1Lの水に溶解して服用するものである。
実施例7 経口腸内環境調整剤−7
塩化ナトリウム1.465g、塩化カリウム0.7425g、炭酸水素ナトリウム1.685g、無水硫酸ナトリウム5.685gを還元性難消化性デキストリン(商品名ファイバーソル2H、松谷化学工業株式会社)22g、キシリトール10gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは1Lの水に溶解して服用するものである。
実施例8 経口腸内環境調整剤−8
塩化ナトリウム1.465g、塩化カリウム0.7425g、炭酸水素ナトリウム1.685g、無水硫酸ナトリウム5.685gを還元性難消化性デキストリン(商品名ファイバーソル2H、松谷化学工業株式会社)30g、キシリトール4gおよびソルビトール6gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは1Lの水に溶解して服用するものである。
実施例9 経口腸内環境調整剤−9
塩化ナトリウム1.465g、塩化カリウム0.7425g、炭酸水素ナトリウム1.685g、無水硫酸ナトリウム5.685gを還元性難消化性デキストリン(商品名ファイバーソル2H、松谷化学工業株式会社)20g、キシリトール4gおよびソルビトール7gと混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは1Lの水に溶解して服用するものである。
実施例10 腸内有用菌増殖促進剤を含む経口腸内環境調整剤
塩化ナトリウム2.93g、塩化カリウム1.49g、炭酸水素ナトリウム3.37g、無水硫酸ナトリウム11.37gをポリエチレングリコール118gと混合し、微粉末状寒天2.0gとともに水分不透過性フィルムの袋に密封包装する。この包装品1つは2Lの水に溶解して服用するものである。
実施例11 腸内有用菌組成物−1
エンテロコッカス フェシウムを4.0×10個含有する培養物の乾燥粉末0.1gに澱粉0.9gおよび微量の甘味料、香料を混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
実施例12 腸内有用菌組成物−2
ビフィドバクテリウム ビフィダムを1.0×1010個含有する培養物の乾燥粉末0.1gに澱粉0.9gおよび微量の甘味料、香料を混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
実施例13 腸内有用菌組成物−3
ビフィドバクテリウム ビフィダムを1.0×1010個含有する培養物の乾燥粉末0.1g、エンテロコッカス フェシウムを4.0×10個含有する培養物の乾燥粉末0.1g、ラクトバチルス カゼイを4.0×10個含有する培養物の乾燥粉末0.1gに澱粉0.7gおよび微量の甘味料、香料を混合し、水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
実施例14 腸内有用菌増殖促進剤−1
寒天1.5g、大豆黄な粉1.5g、アップルファイバー0.5gに少量の黒糖、岩塩を加え、1包3.9gを水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
実施例15 腸内有用菌増殖促進剤−2
顆粒状にした乳果オリゴ糖2.5gに、アップルファイバー0.5gを加え、1包3.0gを水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
実施例16 腸内有用菌組成物と腸内有用菌増殖促進剤の配合剤−1
エンテロコッカス フェシウムを4.0×10個含有する培養物の乾燥粉末0.1g、寒天1.5g、大豆黄な粉1.5g、アップルファイバー0.5gに少量の黒糖、岩塩を加え、1包4.0gを水分不透過性フィルムの袋に密封包装した。
実施例17 経口正常腸内細菌叢育成キット−1
実施例1の経口腸内環境調整剤の包装物1個を実施例11の腸内有用菌組成物の包装品43個(1日3個、4週間分)および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤の包装品85個を組み合せて経口正常腸内細菌叢育成キットとした。
実施例18 経口正常腸内細菌叢育成キット−2
実施例1の経口腸内環境調整剤の包装物1個を実施例11の腸内有用菌組成物の包装品43個(1日3個、4週間分)および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤の包装品85個と組み合せて、さらに便通改善用として実施例1の1/10量(200mL溶解液調製用)を収容した分包5個を組み合せて経口正常腸内細菌叢育成キットとした。
実施例19 経口正常腸内細菌叢育成キット−3
実施例9の経口腸内環境調整剤の包装物1個を実施例11の腸内有用菌組成物の包装品43個(1日3個、4週間分)および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤の包装品85個を組み合せて経口正常腸内細菌叢育成キットとした。
実施例20 経口正常腸内細菌叢育成キット−4
実施例19の経口腸内環境調整剤の包装物1個を実施例11の腸内有用菌組成物の包装品43個(1日3個、4週間分)および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤の包装品85個と組み合せて、さらに便通改善用として実施例19の1/10量(200mL溶解液調製用)を収容した分包5個を組み合せて経口正常腸内細菌叢育成キットとした。
試験例
生活習慣病予備軍と目される成人男子10人を選択し、7人をA群、3人をB群とした。A群は、試験実施第1日目の朝、実施例1の経口腸内環境調整剤を服用した。服用3時間後に実施例11の腸内有用菌組成物2包および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤2包を服用した(昼食抜き)。通常に夕食を摂った直後に実施例11の腸内有用菌組成物2包および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤2包を服用した。試験第2日目から第14日目までは、毎食後実施例11の腸内有用菌組成物1包および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤1包を服用した。試験第15日目から第28日目までは、毎食後実施例14の腸内有用菌増殖促進剤1包を服用した。
B群は経口腸内環境調整剤を服用しない外は、A群と同じように実施例11の腸内有用菌組成物および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤を服用した。
第1日目(経口腸内環境調整剤服用前)、2日目、3日目、14日目、21日目、28日目の朝食の前あるいは後に便を採取し、光岡の方法に従って、糞便1gを滅菌リン酸緩衝液にて10倍段階希釈を行い、各希釈液を寒天平板培地に塗布し、スチールウール嫌気培養法あるいは炭酸ガス加嫌気培養法で37℃48時間培養し、ビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、ユウバクテリウム、エンテロコッカス、クロストリジウムの生菌数を測定した。
ビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、ユウバクテリウム、エンテロコッカスを有用菌、クロストリジウムを有害菌として、有害菌率[有害菌数/(有害菌数+有用菌数)]を算出した。結果を表1および図1に示す。

実施例1の経口腸内環境調整剤を服用したA群では、実施例11の腸内有用菌組成物および実施例14の腸内有用菌増殖促進剤の服用開始と同時に有害菌比率が低下し、腸内環境が改善した。一方、実施例1の経口腸内環境調整剤を服用しなかったB群では、実施例11の腸内有用菌組成物と実施例14の腸内有用菌増殖促進剤の服用を開始しても有害菌比率は低下せず、腸内環境は改善しなかった。
【図面の簡単な説明】
図1は試験例で測定された有害菌率の推移を示すグラフである。
【産業上の利用可能性】
本発明の経口腸内環境調整剤は、生体に過度の負担をかけることなく腸内有害菌を除いて有用菌の生育に適した環境を創出することができる。また、腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤を併用することによって、有用菌優勢、有害菌劣勢の好ましい腸内細菌叢に変化させることができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を含有することを特徴とする、腸内の有害菌を排除し有用菌の増殖環境を調整するための経口腸内環境調整剤。
【請求項2】
難消化性デキストリン、ポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチン、アルブミン、カルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種類の膠質浸透圧調整剤を含有することを特徴とする請求項1記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項3】
電解質または電解質と糖類を晶質浸透圧調整剤として含有することを特徴とする請求項1記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項4】
ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノース、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の糖類を晶質浸透圧調整剤として含有することを特徴とする請求項3記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項5】
水に溶解して浸透圧が200〜440mOsm/Lの水溶液として使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項6】
水に溶解したとき、Naが30〜150mEq/L、Kが3〜20mEq/L、Clが20〜70mEq/L、HCOが10〜50mEq/Lとなるように電解質を含み、難消化性デキストリン、ポリエチレングリコール、ポリデキストロース、デキストラン、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ、アラビアゴム、プルラン、ペクチン、アルブミン、カルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種類の膠質浸透圧調整剤および/またはソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノース、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の糖類を含む請求項5記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項7】
難消化性デキストリンおよびソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マンニトール、トレハロース、ラクチトール、ラクチュロース、マルチトール、パラチノース、ラフィノース、グリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の糖類を含む請求項6記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項8】
難消化性デキストリン/糖類の総量(重量比)が0.7〜4である請求項7記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項9】
腸内有用菌増殖促進剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項10】
食物繊維、糖類、短鎖脂肪酸、酵母、タンニン類、脂肪酸以外の有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類の腸内有用菌増殖促進剤を含有することを特徴とする請求項9記載の経口腸内環境調整剤。
【請求項11】
膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を含有することを特徴とする、腸内の有害菌を排除し有用菌の増殖環境を調整するための経口腸内環境調整剤の包装物と(1)腸内有用菌組成物および(2)腸内有用菌増殖促進剤のいずれか一方もしくはその両者を一緒にもしくは別々に包装した包装物を組み合せてなる経口正常腸内細菌叢育成キット。
【請求項12】
膠質浸透圧調整剤および/または晶質浸透圧調整剤を含有することを特徴とする、腸内の有害菌を排除し有用菌の増殖環境を調整するための経口腸内環境調整剤の包装物と(1)ビフィドバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属から選ばれる少なくとも1種類を含有する腸内有用菌組成物および(2)食物繊維、糖類、短鎖脂肪酸、酵母、タンニン類、脂肪酸以外の有機酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有する腸内有用菌増殖促進剤のいずれか一方もしくはその両者を一緒にもしくは別々に包装した包装物を組み合せてなる請求項11記載の経口正常腸内細菌叢育成キット。
【請求項13】
経口腸内環境調整剤の包装品1個に対し、腸内有用菌組成物および腸内有用菌増殖促進剤のいずれか一方もしくはその両者の包装品を複数個組み合せてなる請求項11または12記載の経口正常腸内細菌叢育成キット。

【国際公開番号】WO2004/067037
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504737(P2005−504737)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000798
【国際出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】