経皮ドラッグデリバリーのための電気的に活性化されたゲル配列
人間又は他の動物の表皮を通じて制御された投薬量を提供するための経皮ドラッグデリバリーシステム(100)は開示される。1実施例において、経皮ドラッグデリバリーシステム(100)は、基板に置かれた1以上の電極対の配列(140)を有する基板(110)及び基板(110)に置かれ1以上の電極対(140)の各電極(142,144)と電気的に接触するゲル(130)を含む。ゲル(130)は、少なくとも第1の医薬関連品を含み、電極対(140)により与えられた電圧又は電流の少なくとも1つに基づき第1医薬関連品の投薬速度を変化させるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮ドラッグデリバリーのための電気的に活性化されたゲル配列に関する。
【背景技術】
【0002】
広く定義されて、経皮ドラッグデリバリーシステムは、従来の皮下注射針の使用なしに直接に皮膚を通じてある薬のかなりの服用量を投与するように設計されたシステムである。経皮ドラッグデリバリーシステムの例は、「パッチ」(例えば、ニコチンをたばこ中毒の人に配るように設計された付着性パッチ)、アスピリンの混じった鎮痛性香油及び非常に効く鎮痛剤を投与するように設計された付着性パッチを含む。
【0003】
薬の皮下又は経口投与は、たびたびドラッグデリバリーの好ましい方法であるが、経皮ドラッグデリバリーは、長い期間に亘る投薬及び好ましい患者のフィードバックを含む多くの利点を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許番号US2005/0109105A1
【特許文献2】米国特許番号US2003/0159588A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不幸にして、既存の経皮パッチは、多用途性を欠き、それらの効果は、使用された薬の力学、皮膚相互作用及び薬の溶解性により邪魔され得る。更に、既存の経皮パッチは、周期投薬又は必要時の投薬が提供できない。更に、人間の皮膚に容易に浸透しない多くの種類の薬がある。従って、経皮ドラッグデリバリーシステムに関する新しい技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
経皮ドラッグデリバリーシステムは、人間又は他の動物の皮膚を通じて制御された投薬を提供するために開示される。経皮ドラッグデリバリーシステムは、1以上の電極対の配列を持った基板及びその上に置かれたゲルを含み、ゲルは1以上の電極対の各電極と電気的に接触して置かれ、ゲルは少なくとも第1の医薬関連品を含む。
【0007】
開示された方法及びシステムにより提供された種々の利点は、従来の経皮パッチとは反対に、投薬量が如何なる数の所定スケジュールに従っても投与可能である「必要時の投薬」システムを提供する事を含む。更に、全体の投薬量は、異なる体重と代謝を考慮して1人の患者からもう一人の患者へその場で調整可能である。
【0008】
以下の詳細な記載は、添付図面と共に読むときに最良に理解される。種々の特徴は、必ずしも原寸で描かれていない事は強調される。事実、寸法は、記述の明瞭性のため任意に増加又は減少される。適用可能で実際的で有る限り、類似の参照番号は、類似の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】例示的経皮ドラッグデリバリーシステムの断側図を示す。
【図1B】例示的電極対の上から見下ろした図を示す。
【図2A】図1Aのデリバリーシステムを用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される例示的プロセスを描く。
【図2B】図1Aのデリバリーシステムを用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される例示的プロセスを描く。
【図2C】図1Aのデリバリーシステムの変形を用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される第2の例示的プロセスを描く。
【図2D】図1Aのデリバリーシステムの変形を用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される第2の例示的プロセスを描く。
【図3A】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対を示す。
【図3B】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対を示す。
【図3C】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対を示す。
【図4A】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対配列を示す。
【図4B】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対配列を示す。
【図4C】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対配列を示す。
【図5】経皮ドラッグデリバリーシステムの略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な記述において、制限のためではなく説明のために、実施例の特定の詳細は、本発明の完全な理解を提供するために説明される。しかし、本開示の利益を得た当業者にとってここに開示された特定の詳細から離れた本発明に従う他の実施例は、付随する特許請求の範囲内に残る事は明らかである。更に、良く知られた装置及び方法の記述は、実施例の記述を曖昧にしないように省略可能である。そのような方法及び装置は、明らかに本発明の範囲内である。
【0011】
図1Aは、例示的経皮ドラッグデリバリーシステム100を示す。経皮ドラッグデリバリーシステム100は、ユーザーインターフェース116を有する基板110、基板110の上面に(直接的に又は間接的に)置かれたコントローラ114及びバッテリー112及び基板110の下面に(直接的に又は間接的に)置かれた電極142及び144を含む電極対を含む。溶剤及び1以上の医薬関連品、例えば麻酔薬、ホルモン、ビタミン等は、ゲル130が電極対と直接接するように基板の底に置かれる。選択的センサー170は、ゲル130内に置かれる。選択的障壁接着剤120は、環境暴露を制限するため、人間の皮膚により良く付着するため及び/又は経皮ドラッグデリバリーを助けることができる種々のセンサー又は他の装置を埋め込むための場所を提供するために、ゲル130を囲むように配置される。第2電極配列160は、選択的障壁接着剤120内に配置される。
【0012】
図1Aの基板110は、如何なる数の金属及び非金属箔又は織物、セラミック材、プラスチック又は布裏打ち、又はそれらの複合材から作ることができる。プラスチックの例は、ポリイミド(polymides)、ポリノーボネネ(polynorbonene)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリエーテルスルフォン(polyethersulfone)、ポリエチレンテレフタレート(poly-ethylene therephthalate)を含む。基板110は付加的に、ゲルの乾燥を防ぐために水拡散障壁層を提供可能である。種々の実施例において、そのような拡散障壁(図示せず)は、アルミ又はアルミ酸化物、シリコン酸化物、シリコンオキシニトライド(oxinitrides)及びそれらの複数層のような薄い金属層から作ることができる。
【0013】
図1Bは、図1Aの電極対の上から見下ろした図を示す。その電極対は、直径50ミクロンから5ミリメータに亘る2つの電極142及び外側の電極144を含む。その電極対の全体の構成は、電極142及び144間の最適電界(一様?)を作るために形作られるが、勿論、他の電極構成が代替的に、実施例から実施例に使われ得る事は評価しても良い。
【0014】
電極142及び144は、種々の金属箔の形を含む多くの形を取る事ができる。例示的な金属箔は:銅、銀又は金、白金、モリブデン及びクロム(及びそれらの多層組み合わせ)に限られないが、それらを含む。金属箔は又、基板110上又は中に堆積される導電インク又は他の導電媒体の形を取ることもできる。金属箔は、基板110上又は基板を覆うように与えられる。しかし、与えられた電極対の特定の構成は、必要性又は利点に鑑み実施例から実施例に変化し得る事は評価されなければならない。
【0015】
図1Aのゲル130は、電界の存在において、水のような溶剤を排出するように構成された高分子電解質物質である。ゲル130は、如何なる1以上のポリアクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール、カルボン酸共重合体又は電界又は電流印加の結果溶媒の形を排出できる如何なる他のゼラチン又は一般固体でもあり得る。種々の実施例において、ゲル130が弱ポリ酸(例えばポリアクリル酸)、強ポリ酸(例えばスルホン酸ポリステレン(polysterene sulfonate)、弱ポリ塩基(例えばアミン基)強ポリ塩基(「ポリ」はここでは、重合単位、ポリマーゲルネットワークの部分に言及する)のようなイオン化単量体単位を含むことは有用であり得る。
【0016】
ゲル130の溶剤は、水又は他の如何なる数の溶剤、例えばアルコール又はある種の形の一般的に中毒性のない物質が可能で、医薬関連品のその溶剤での溶解度のような種々の条件により使用可能である。種々の溶剤は又、水性処方において脂溶性化合物の可溶化を可能にするミセル剤を含むことができる。
【0017】
ゲル130の医薬関連品は、如何なる数の薬、鎮痛剤、ホルモン(例えばコーチゾン)刺激剤又は医療的に有益な目的のために使用可能で、人間又は他の皮膚から吸収可能である他の物質でもあり得る。
【0018】
ゲル130の1機能は、溶剤又は医薬関連品の有る形を維持する事であるが、ゲル130の補助機能は、コントローラ114の命令で医薬関連品のキャリアー(carrier)として活動できる溶剤を制御可能に排出する事である。この機能は、コントローラ114を介して電極対(でんきょくつい)間に電圧を(又は電極対を通る電流を)形成することにより完遂可能である。図2A及び2Bは、溶剤を持ったゲルのこの機能の「前及び後」の例を描く。図2Aに示される通り初期ゲル体130は、図2Bの溶剤枯渇ゲル体131より大きい体積を有する。ゲル体131中の溶剤は、初期ゲル体130の電気的活動に対する反応の結果として枯渇する。スイッチ210を閉じることは、バッテリー112が電極間に電圧V1を作ることを可能にし、電流I1を初期ゲル体130に通す事を可能にする。この電気的活動の結果、ゲル体は文字通り歪み、溶剤をその体から引きはがし、溶剤枯渇ゲル体131を作る事である。そのようなゲルとそれらに関連する反応の詳細は、ここに引用された:
Osada Yoshihito & Gong Jian Ping. "Polymer gels and networks", A.Khoklov & Y. Osada (eds.), pp. 177-217 (Marcel Dekker, New York Basel (2002) herein incorporated by reference.
に発見される。
【0019】
図2A及び2Bに類似して、図2C及び2Dは、図1Aのデリバリーシステムの変形を用い電界の印加に応答してゲルから薬及び溶剤を制御可能に排出できるプロセスを描く。図2Cに示すとおり、図1Aのシステム100は変化するので、ゲル130は、基板110の一番上に置かれ、カバー/シール240は、外部環境からゲルを保護し且つ密封するためにゲル130の上に置かれる。剥くことができる第2シール222を接着剤220の下に置くことができる。
【0020】
操作中(第2シール222の除去後と仮定する)、スイッチ210を閉じることは、バッテリー112が電極間に電圧V1を作ることを可能にし、電流I1をゲル130に通す事を可能にする。この電気的活動の結果は、ゲル体は文字通り歪み、溶剤をその体から引きはがす事である。しかし、皮膚表面に直接に通るよりも、溶剤及び医薬関連品は、基板110の多くの孔250を通り、基板下の皮膚表面に通る。カバー/シール240は、収縮ゲル体に接触するようにこのプロセス又は選択的収縮の間その形を保持する。図2C―2Dの図示実施例の利点は、ゲル130が皮膚に直接接触する必要が無く、それにより特定ゲル形成(例えば塩基性が強すぎる又は酸性が強すぎる)により引き起こされる炎症の危険を減少させる事である。更に、相対的に高い直流電圧がゲル130に印加(例えば>2V)されるとき、やや速く電極近くで加水分解が起き、それにより水素又は他の望ましくない気体を作る。図2C―2Dの「反対」幾何学を使うことにより、望ましくない気体は、パッケージからより簡単に拡散され得る。
【0021】
図1―2Dの図示実施例について、使用中と同様に貯蔵中にゲル脱水を和らげるために選択的に密封層をゲル130に加えることができる。そのような密封層(図示せず)は、アルミニウム又はアルミ酸化物、シリコン酸化物、シリコンオキシニトライド又はそれらの多層のような薄い金属層でできた拡散障壁を塗装した薄いポリマー膜(例えばポリエチレン又はPET)を含んでもよい。
【0022】
図1―2Dは、円形を持った単一電極対140の使用を描くが、図3A(1対の並行電極A,B)、図3B(中に挿入された「歯」を持つ1対の並行電極A,B)又は図3C(1対の曲げられ、中に挿入された電極A,B)の何れかに示されるものを含む他の電極構成を使用できる。図3A−3Cの電極対A/Bは、電極対が容易に作成可能で一般的に均一な電界を形成可能である事において共通の性質を有する。
【0023】
加えて、複数の電極対を使うことに恩恵がある。複数の電極対の種々の例は、図4A−4Cに発見できる。
【0024】
図4Aは、電極A,B,C及びX,Y,Zの2セットにより制御可能な3対3電極対配列400を描く。というのは各円形電極対領域402は、独立的に活性化可能で、電極A,B,C及びX,Y,Zを制御するコントローラは、よりバラエティにー富んだ薬物投与操作を実行できるからである。例えば、円形電極対領域402の9つ全てが、共通医薬関連品の均一分布を有するゲル中に浸されていると仮定すると、種々の円形電極対領域402を制御するコントローラは、別々に且つ独立に医薬関連品の9つの異なる投与量を前もってプログラムされた時間間隔で、又はある外からのリクエストに応えて投与できる。
【0025】
図4Aの電極対配列400を用いるもう1つの利点は、種々の異なる医薬関連品が独立に投与可能な事である。例えば、もし第1の医薬関連品が右側の3つの電極対領域402をカバーし、第2の医薬関連品が左側の6つの電極対領域402をカバーするなら、配列400を制御するコントローラは、如何なる与えられた時間においても医薬関連品の一方又は両方を自由に投与する。図4Aに示されるような種々の電極構成について、適切な数のスイッチを持った活性行列アドレススキーム(addressing scheme)の使用は、最小量のハードウエアで最大の使用用途を提供する。
【0026】
図4Bは、各3つの電極対A−B,B−C,及びC−Dが1以上の医薬関連品の別々の投与量を投与する事ができる3つの電極対A−B,B−C,及びC−Dを形成するために使用される複数の電極対概念の変形を描く。
【0027】
図4Cは、3つの電極A,B,Cが、1以上の医薬関連品の2つの別々の投与量を投与するために使用可能な2つの電極対A−B及びB−Cを形成するもう1つの変形を示す。
【0028】
複数の電極対を持つ実施例について、図2A―2Dの単一スイッチに対して、選択実施例における各電極のために別々のスイッチを用いることは利点がある。例えば、図4Cの配列は、電極A及びC(電極Bは接地される)のために2つのスイッチのみが必要であるが、6つの別々のスイッチ(3つが接地で3つが異なる電圧に接続)は、9つの別個の投与量を独立に投与するために図4Aの3対3配列400に必要である。
【0029】
更に、操作性を改良するために、配列400の各電極A,B,C及びX,Y,Zは、異なる電圧のために複数のスイッチを使うことができ、又、投薬速度を変化させるために、デジタルアナログ変換器のような電圧/電流制御のある他の形を使う事ができる。
【0030】
続いて図5に、経皮ドラッグデリバリーシステム500の機能ブロック図が提供される。追加センサー570(接着層120に埋められた)並びにタイマー520、スイッチ配列510、電流センサー512(電極の特定対を通る電流を感知するため)及びセンサー170及び570を監視するためのアナログデジタル変換器514を含むコントローラ114の種々の内部構成部品と同様に、図1Aの要素110−170の大部分が示される。
【0031】
操作中及びバッテリー112により提供された電力下、コントローラ114は、ユーザーインターフェース160を介し初期化される。本実施例において、ユーザーインターフェース116は、活性化ボタン及び多色発光ダイオードの組み合わせで、活性化ボタンは薬投与の初期化又は時間薬投与の続きの開始のためで、ダイオードは例えば、活性/不活性/枯渇、良/不良/故障等システムの状態を指し示すためである。選択的に、ユーザーインターフェース116は、ファイアワイヤ(Firewire)、USB又は有る特殊なRFID基礎システムのようなコンピュータ間インターフェースを含む、又はコンピュータ間インターフェースの形を取る。そのような例において、経皮ドラッグデリバリーシステム500は、正確な間隔で及び/又は特定の時にある投薬量を提供するために活性化され且つプログラムされ得る。
【0032】
経皮ドラッグデリバリーシステム500は、適切にプログラムされ活性化されたコントローラ114で患者の皮膚に適用されると仮定すると、コントローラ114は、その基本プログラミングを実行し、それはタイマー520を適切に設定及び再設定すること、並びに処方された時間に1以上の医薬関連品を投与するため及び、フィードバックのために種々のセンサー512,170及び570を監視するために、ゲル130に埋め込まれた電極配列140を適切に活性化させることを含む。
【0033】
フィードバックの第1の形は、ゲル130に埋め込まれた電極配列140の1対の電極を通る電流を監視するセンサー512から得られる。センサー512は、与えられた電極対間の電圧を監視するため等しく装備可能である。そうすることによりコントローラ114は、効率的に電極対の基本機能を監視でき、及び/又はゲル中に存在する溶剤量の関数として変化し得るゲルインピーダンスを監視する事ができる。そのような情報は、投薬量が投与される時間継続又は投薬間の断続的時間のような基本操作パラメータを変えるために使用可能である。そのような情報は又、ユーザーインターフェース116を介し患者にとって又は居合わせた医療スタッフにとって利用可能である。
【0034】
フィードバックの第2の形は、コントローラ114に対し生物学的情報を提供するために皮膚抵抗が決定される接着層120に置かれた第2電極配列160を通じ利用可能である。電極配列160を用い得られた情報の他の可能な形は、患者の皮膚とゲル130の間の抵抗を決定する事を含んでもよく、経皮ドラッグデリバリーシステム500が患者の皮膚に適切に固定されているというある種の指示と同様に、その情報は又、有用な操作パラメータを提供することができる。
【0035】
センサーとしての使用に加えて、第2電極配列160は又、有用な非感知機能を提供する。例えば、第1電極配列140からゲル130と患者の皮膚とを通り第2電極配列160へ電流を通すことにより、経皮ドラッグデリバリーシステム500は、ある種の分子物理化学パラメータを有する薬の皮膚浸透をより良く促進するためにイオン導入(iontophoresis)(即ち、電動薬投与(electromotive Drug Administration(DMA))を活用する。
【0036】
センサー170及び570の片方又は両方を通じて得られたフィードバックの他の形は、経皮ドラッグデリバリーシステム500が皮膚抵抗を介して適切に付着されているか決定すること、皮膚温を監視する事、脈拍数及び/又は血中酸素(パルス酸素濃度計で)を監視すること、皮膚炎症、はれ等を監視する事、及び特定の電極が機能的か又はゲルが枯渇したかどうかをコントローラが決定できるような基本的自己試験機能を提供することを含む。
【0037】
又、センサー170及び570の一方又は両方は、特定の薬の投与を調整するために使用可能である。例えば、赤外線パルス酸素濃度計が脈拍数を測定するために採用されると仮定すると、種々の刺激剤が、患者の脈拍数が一定レベル以下に下がったときにはいつでも展開される。
【0038】
上記実施例は、如何なる従来のドラッグデリバリーシステムに対しても異なる利点を有する。高度に携帯型で人間工学的なドラッグデリバリーシステムは、正確な投与量を投与するために正確に時間測定可能である。皮膚吸収しやすい分子構造を持つ薬は、皮膚貼り付けの形で投与可能である。更に、適切なコントローラ及びユーザーインターフェースの採用は、医療専門家が患者の使用、例えば、患者が何回及びどんな時間間隔で自己投与したかを監視する事を可能にする。最後に、コントローラの使用は、それが証拠の形で行為と同様に詳細な使用の追跡を提供できるので、研究者が臨床試験中の装置の性能を追跡する事を可能にする。
【0039】
上記のシステム及び方法は、「C」、「C++」、「フォートラン」、「パスカル」、「VHDL」等のような如何なる種々の既知の又は後に開発されたプログラム言語を用いて実施可能である。
【0040】
従って、磁気コンピュータディスク、光学的ディスク、電子メモリー等のような種々の記憶媒体は、上記のシステム及び/又は方法を実施するためのコンピュータのような装置に命令を与えることができる情報を含むことができる。ひとたび適切な装置が情報と記憶媒体に含まれるプログラムにアクセスを持つと、その記憶媒体は、その装置に対し情報及びプログラムを提供でき、そのシステムが上記のシステム及び/又は方法を実行する事を可能にする。
【0041】
例えば、ソースファイル、オブジェクトファイル、実行形式ファイル等のような適切な材料を含むコンピュータディスクを有するコンピュータは、構成され、種々の機能を実行するため上記略図及びフローチャートに概説された種々のシステム及び方法の機能を実行することができる。即ち、個々のシステム及び/又は方法を実施し、上記の個々のシステム及び/又は方法の機能を連携させるために、コンピュータは、上記のシステム及び/又は方法の異なる要素に関係するディスクからの情報の種々の部分を使用する。
【0042】
ここに記述された種々の方法及び装置は、ハードウエア及びソフトウエアで実施可能である。更に、種々の方法及びパラメータは、例示のみで如何なる制限的な意味をも持たない。本記述の見方において、付随の特許請求の範囲内で、当業者は、これらの技術を効果あらしめるため彼ら自身の技術及び必要とされる機器を決定するにあたり本発明を実施できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮ドラッグデリバリーのための電気的に活性化されたゲル配列に関する。
【背景技術】
【0002】
広く定義されて、経皮ドラッグデリバリーシステムは、従来の皮下注射針の使用なしに直接に皮膚を通じてある薬のかなりの服用量を投与するように設計されたシステムである。経皮ドラッグデリバリーシステムの例は、「パッチ」(例えば、ニコチンをたばこ中毒の人に配るように設計された付着性パッチ)、アスピリンの混じった鎮痛性香油及び非常に効く鎮痛剤を投与するように設計された付着性パッチを含む。
【0003】
薬の皮下又は経口投与は、たびたびドラッグデリバリーの好ましい方法であるが、経皮ドラッグデリバリーは、長い期間に亘る投薬及び好ましい患者のフィードバックを含む多くの利点を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許番号US2005/0109105A1
【特許文献2】米国特許番号US2003/0159588A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不幸にして、既存の経皮パッチは、多用途性を欠き、それらの効果は、使用された薬の力学、皮膚相互作用及び薬の溶解性により邪魔され得る。更に、既存の経皮パッチは、周期投薬又は必要時の投薬が提供できない。更に、人間の皮膚に容易に浸透しない多くの種類の薬がある。従って、経皮ドラッグデリバリーシステムに関する新しい技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
経皮ドラッグデリバリーシステムは、人間又は他の動物の皮膚を通じて制御された投薬を提供するために開示される。経皮ドラッグデリバリーシステムは、1以上の電極対の配列を持った基板及びその上に置かれたゲルを含み、ゲルは1以上の電極対の各電極と電気的に接触して置かれ、ゲルは少なくとも第1の医薬関連品を含む。
【0007】
開示された方法及びシステムにより提供された種々の利点は、従来の経皮パッチとは反対に、投薬量が如何なる数の所定スケジュールに従っても投与可能である「必要時の投薬」システムを提供する事を含む。更に、全体の投薬量は、異なる体重と代謝を考慮して1人の患者からもう一人の患者へその場で調整可能である。
【0008】
以下の詳細な記載は、添付図面と共に読むときに最良に理解される。種々の特徴は、必ずしも原寸で描かれていない事は強調される。事実、寸法は、記述の明瞭性のため任意に増加又は減少される。適用可能で実際的で有る限り、類似の参照番号は、類似の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】例示的経皮ドラッグデリバリーシステムの断側図を示す。
【図1B】例示的電極対の上から見下ろした図を示す。
【図2A】図1Aのデリバリーシステムを用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される例示的プロセスを描く。
【図2B】図1Aのデリバリーシステムを用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される例示的プロセスを描く。
【図2C】図1Aのデリバリーシステムの変形を用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される第2の例示的プロセスを描く。
【図2D】図1Aのデリバリーシステムの変形を用い電界の適用に応じて薬及び溶剤がゲルから制御可能に排出される第2の例示的プロセスを描く。
【図3A】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対を示す。
【図3B】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対を示す。
【図3C】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対を示す。
【図4A】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対配列を示す。
【図4B】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対配列を示す。
【図4C】開示された方法及びシステムを用いて使用するための種々の例示的電極対配列を示す。
【図5】経皮ドラッグデリバリーシステムの略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な記述において、制限のためではなく説明のために、実施例の特定の詳細は、本発明の完全な理解を提供するために説明される。しかし、本開示の利益を得た当業者にとってここに開示された特定の詳細から離れた本発明に従う他の実施例は、付随する特許請求の範囲内に残る事は明らかである。更に、良く知られた装置及び方法の記述は、実施例の記述を曖昧にしないように省略可能である。そのような方法及び装置は、明らかに本発明の範囲内である。
【0011】
図1Aは、例示的経皮ドラッグデリバリーシステム100を示す。経皮ドラッグデリバリーシステム100は、ユーザーインターフェース116を有する基板110、基板110の上面に(直接的に又は間接的に)置かれたコントローラ114及びバッテリー112及び基板110の下面に(直接的に又は間接的に)置かれた電極142及び144を含む電極対を含む。溶剤及び1以上の医薬関連品、例えば麻酔薬、ホルモン、ビタミン等は、ゲル130が電極対と直接接するように基板の底に置かれる。選択的センサー170は、ゲル130内に置かれる。選択的障壁接着剤120は、環境暴露を制限するため、人間の皮膚により良く付着するため及び/又は経皮ドラッグデリバリーを助けることができる種々のセンサー又は他の装置を埋め込むための場所を提供するために、ゲル130を囲むように配置される。第2電極配列160は、選択的障壁接着剤120内に配置される。
【0012】
図1Aの基板110は、如何なる数の金属及び非金属箔又は織物、セラミック材、プラスチック又は布裏打ち、又はそれらの複合材から作ることができる。プラスチックの例は、ポリイミド(polymides)、ポリノーボネネ(polynorbonene)、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリエーテルスルフォン(polyethersulfone)、ポリエチレンテレフタレート(poly-ethylene therephthalate)を含む。基板110は付加的に、ゲルの乾燥を防ぐために水拡散障壁層を提供可能である。種々の実施例において、そのような拡散障壁(図示せず)は、アルミ又はアルミ酸化物、シリコン酸化物、シリコンオキシニトライド(oxinitrides)及びそれらの複数層のような薄い金属層から作ることができる。
【0013】
図1Bは、図1Aの電極対の上から見下ろした図を示す。その電極対は、直径50ミクロンから5ミリメータに亘る2つの電極142及び外側の電極144を含む。その電極対の全体の構成は、電極142及び144間の最適電界(一様?)を作るために形作られるが、勿論、他の電極構成が代替的に、実施例から実施例に使われ得る事は評価しても良い。
【0014】
電極142及び144は、種々の金属箔の形を含む多くの形を取る事ができる。例示的な金属箔は:銅、銀又は金、白金、モリブデン及びクロム(及びそれらの多層組み合わせ)に限られないが、それらを含む。金属箔は又、基板110上又は中に堆積される導電インク又は他の導電媒体の形を取ることもできる。金属箔は、基板110上又は基板を覆うように与えられる。しかし、与えられた電極対の特定の構成は、必要性又は利点に鑑み実施例から実施例に変化し得る事は評価されなければならない。
【0015】
図1Aのゲル130は、電界の存在において、水のような溶剤を排出するように構成された高分子電解質物質である。ゲル130は、如何なる1以上のポリアクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール、カルボン酸共重合体又は電界又は電流印加の結果溶媒の形を排出できる如何なる他のゼラチン又は一般固体でもあり得る。種々の実施例において、ゲル130が弱ポリ酸(例えばポリアクリル酸)、強ポリ酸(例えばスルホン酸ポリステレン(polysterene sulfonate)、弱ポリ塩基(例えばアミン基)強ポリ塩基(「ポリ」はここでは、重合単位、ポリマーゲルネットワークの部分に言及する)のようなイオン化単量体単位を含むことは有用であり得る。
【0016】
ゲル130の溶剤は、水又は他の如何なる数の溶剤、例えばアルコール又はある種の形の一般的に中毒性のない物質が可能で、医薬関連品のその溶剤での溶解度のような種々の条件により使用可能である。種々の溶剤は又、水性処方において脂溶性化合物の可溶化を可能にするミセル剤を含むことができる。
【0017】
ゲル130の医薬関連品は、如何なる数の薬、鎮痛剤、ホルモン(例えばコーチゾン)刺激剤又は医療的に有益な目的のために使用可能で、人間又は他の皮膚から吸収可能である他の物質でもあり得る。
【0018】
ゲル130の1機能は、溶剤又は医薬関連品の有る形を維持する事であるが、ゲル130の補助機能は、コントローラ114の命令で医薬関連品のキャリアー(carrier)として活動できる溶剤を制御可能に排出する事である。この機能は、コントローラ114を介して電極対(でんきょくつい)間に電圧を(又は電極対を通る電流を)形成することにより完遂可能である。図2A及び2Bは、溶剤を持ったゲルのこの機能の「前及び後」の例を描く。図2Aに示される通り初期ゲル体130は、図2Bの溶剤枯渇ゲル体131より大きい体積を有する。ゲル体131中の溶剤は、初期ゲル体130の電気的活動に対する反応の結果として枯渇する。スイッチ210を閉じることは、バッテリー112が電極間に電圧V1を作ることを可能にし、電流I1を初期ゲル体130に通す事を可能にする。この電気的活動の結果、ゲル体は文字通り歪み、溶剤をその体から引きはがし、溶剤枯渇ゲル体131を作る事である。そのようなゲルとそれらに関連する反応の詳細は、ここに引用された:
Osada Yoshihito & Gong Jian Ping. "Polymer gels and networks", A.Khoklov & Y. Osada (eds.), pp. 177-217 (Marcel Dekker, New York Basel (2002) herein incorporated by reference.
に発見される。
【0019】
図2A及び2Bに類似して、図2C及び2Dは、図1Aのデリバリーシステムの変形を用い電界の印加に応答してゲルから薬及び溶剤を制御可能に排出できるプロセスを描く。図2Cに示すとおり、図1Aのシステム100は変化するので、ゲル130は、基板110の一番上に置かれ、カバー/シール240は、外部環境からゲルを保護し且つ密封するためにゲル130の上に置かれる。剥くことができる第2シール222を接着剤220の下に置くことができる。
【0020】
操作中(第2シール222の除去後と仮定する)、スイッチ210を閉じることは、バッテリー112が電極間に電圧V1を作ることを可能にし、電流I1をゲル130に通す事を可能にする。この電気的活動の結果は、ゲル体は文字通り歪み、溶剤をその体から引きはがす事である。しかし、皮膚表面に直接に通るよりも、溶剤及び医薬関連品は、基板110の多くの孔250を通り、基板下の皮膚表面に通る。カバー/シール240は、収縮ゲル体に接触するようにこのプロセス又は選択的収縮の間その形を保持する。図2C―2Dの図示実施例の利点は、ゲル130が皮膚に直接接触する必要が無く、それにより特定ゲル形成(例えば塩基性が強すぎる又は酸性が強すぎる)により引き起こされる炎症の危険を減少させる事である。更に、相対的に高い直流電圧がゲル130に印加(例えば>2V)されるとき、やや速く電極近くで加水分解が起き、それにより水素又は他の望ましくない気体を作る。図2C―2Dの「反対」幾何学を使うことにより、望ましくない気体は、パッケージからより簡単に拡散され得る。
【0021】
図1―2Dの図示実施例について、使用中と同様に貯蔵中にゲル脱水を和らげるために選択的に密封層をゲル130に加えることができる。そのような密封層(図示せず)は、アルミニウム又はアルミ酸化物、シリコン酸化物、シリコンオキシニトライド又はそれらの多層のような薄い金属層でできた拡散障壁を塗装した薄いポリマー膜(例えばポリエチレン又はPET)を含んでもよい。
【0022】
図1―2Dは、円形を持った単一電極対140の使用を描くが、図3A(1対の並行電極A,B)、図3B(中に挿入された「歯」を持つ1対の並行電極A,B)又は図3C(1対の曲げられ、中に挿入された電極A,B)の何れかに示されるものを含む他の電極構成を使用できる。図3A−3Cの電極対A/Bは、電極対が容易に作成可能で一般的に均一な電界を形成可能である事において共通の性質を有する。
【0023】
加えて、複数の電極対を使うことに恩恵がある。複数の電極対の種々の例は、図4A−4Cに発見できる。
【0024】
図4Aは、電極A,B,C及びX,Y,Zの2セットにより制御可能な3対3電極対配列400を描く。というのは各円形電極対領域402は、独立的に活性化可能で、電極A,B,C及びX,Y,Zを制御するコントローラは、よりバラエティにー富んだ薬物投与操作を実行できるからである。例えば、円形電極対領域402の9つ全てが、共通医薬関連品の均一分布を有するゲル中に浸されていると仮定すると、種々の円形電極対領域402を制御するコントローラは、別々に且つ独立に医薬関連品の9つの異なる投与量を前もってプログラムされた時間間隔で、又はある外からのリクエストに応えて投与できる。
【0025】
図4Aの電極対配列400を用いるもう1つの利点は、種々の異なる医薬関連品が独立に投与可能な事である。例えば、もし第1の医薬関連品が右側の3つの電極対領域402をカバーし、第2の医薬関連品が左側の6つの電極対領域402をカバーするなら、配列400を制御するコントローラは、如何なる与えられた時間においても医薬関連品の一方又は両方を自由に投与する。図4Aに示されるような種々の電極構成について、適切な数のスイッチを持った活性行列アドレススキーム(addressing scheme)の使用は、最小量のハードウエアで最大の使用用途を提供する。
【0026】
図4Bは、各3つの電極対A−B,B−C,及びC−Dが1以上の医薬関連品の別々の投与量を投与する事ができる3つの電極対A−B,B−C,及びC−Dを形成するために使用される複数の電極対概念の変形を描く。
【0027】
図4Cは、3つの電極A,B,Cが、1以上の医薬関連品の2つの別々の投与量を投与するために使用可能な2つの電極対A−B及びB−Cを形成するもう1つの変形を示す。
【0028】
複数の電極対を持つ実施例について、図2A―2Dの単一スイッチに対して、選択実施例における各電極のために別々のスイッチを用いることは利点がある。例えば、図4Cの配列は、電極A及びC(電極Bは接地される)のために2つのスイッチのみが必要であるが、6つの別々のスイッチ(3つが接地で3つが異なる電圧に接続)は、9つの別個の投与量を独立に投与するために図4Aの3対3配列400に必要である。
【0029】
更に、操作性を改良するために、配列400の各電極A,B,C及びX,Y,Zは、異なる電圧のために複数のスイッチを使うことができ、又、投薬速度を変化させるために、デジタルアナログ変換器のような電圧/電流制御のある他の形を使う事ができる。
【0030】
続いて図5に、経皮ドラッグデリバリーシステム500の機能ブロック図が提供される。追加センサー570(接着層120に埋められた)並びにタイマー520、スイッチ配列510、電流センサー512(電極の特定対を通る電流を感知するため)及びセンサー170及び570を監視するためのアナログデジタル変換器514を含むコントローラ114の種々の内部構成部品と同様に、図1Aの要素110−170の大部分が示される。
【0031】
操作中及びバッテリー112により提供された電力下、コントローラ114は、ユーザーインターフェース160を介し初期化される。本実施例において、ユーザーインターフェース116は、活性化ボタン及び多色発光ダイオードの組み合わせで、活性化ボタンは薬投与の初期化又は時間薬投与の続きの開始のためで、ダイオードは例えば、活性/不活性/枯渇、良/不良/故障等システムの状態を指し示すためである。選択的に、ユーザーインターフェース116は、ファイアワイヤ(Firewire)、USB又は有る特殊なRFID基礎システムのようなコンピュータ間インターフェースを含む、又はコンピュータ間インターフェースの形を取る。そのような例において、経皮ドラッグデリバリーシステム500は、正確な間隔で及び/又は特定の時にある投薬量を提供するために活性化され且つプログラムされ得る。
【0032】
経皮ドラッグデリバリーシステム500は、適切にプログラムされ活性化されたコントローラ114で患者の皮膚に適用されると仮定すると、コントローラ114は、その基本プログラミングを実行し、それはタイマー520を適切に設定及び再設定すること、並びに処方された時間に1以上の医薬関連品を投与するため及び、フィードバックのために種々のセンサー512,170及び570を監視するために、ゲル130に埋め込まれた電極配列140を適切に活性化させることを含む。
【0033】
フィードバックの第1の形は、ゲル130に埋め込まれた電極配列140の1対の電極を通る電流を監視するセンサー512から得られる。センサー512は、与えられた電極対間の電圧を監視するため等しく装備可能である。そうすることによりコントローラ114は、効率的に電極対の基本機能を監視でき、及び/又はゲル中に存在する溶剤量の関数として変化し得るゲルインピーダンスを監視する事ができる。そのような情報は、投薬量が投与される時間継続又は投薬間の断続的時間のような基本操作パラメータを変えるために使用可能である。そのような情報は又、ユーザーインターフェース116を介し患者にとって又は居合わせた医療スタッフにとって利用可能である。
【0034】
フィードバックの第2の形は、コントローラ114に対し生物学的情報を提供するために皮膚抵抗が決定される接着層120に置かれた第2電極配列160を通じ利用可能である。電極配列160を用い得られた情報の他の可能な形は、患者の皮膚とゲル130の間の抵抗を決定する事を含んでもよく、経皮ドラッグデリバリーシステム500が患者の皮膚に適切に固定されているというある種の指示と同様に、その情報は又、有用な操作パラメータを提供することができる。
【0035】
センサーとしての使用に加えて、第2電極配列160は又、有用な非感知機能を提供する。例えば、第1電極配列140からゲル130と患者の皮膚とを通り第2電極配列160へ電流を通すことにより、経皮ドラッグデリバリーシステム500は、ある種の分子物理化学パラメータを有する薬の皮膚浸透をより良く促進するためにイオン導入(iontophoresis)(即ち、電動薬投与(electromotive Drug Administration(DMA))を活用する。
【0036】
センサー170及び570の片方又は両方を通じて得られたフィードバックの他の形は、経皮ドラッグデリバリーシステム500が皮膚抵抗を介して適切に付着されているか決定すること、皮膚温を監視する事、脈拍数及び/又は血中酸素(パルス酸素濃度計で)を監視すること、皮膚炎症、はれ等を監視する事、及び特定の電極が機能的か又はゲルが枯渇したかどうかをコントローラが決定できるような基本的自己試験機能を提供することを含む。
【0037】
又、センサー170及び570の一方又は両方は、特定の薬の投与を調整するために使用可能である。例えば、赤外線パルス酸素濃度計が脈拍数を測定するために採用されると仮定すると、種々の刺激剤が、患者の脈拍数が一定レベル以下に下がったときにはいつでも展開される。
【0038】
上記実施例は、如何なる従来のドラッグデリバリーシステムに対しても異なる利点を有する。高度に携帯型で人間工学的なドラッグデリバリーシステムは、正確な投与量を投与するために正確に時間測定可能である。皮膚吸収しやすい分子構造を持つ薬は、皮膚貼り付けの形で投与可能である。更に、適切なコントローラ及びユーザーインターフェースの採用は、医療専門家が患者の使用、例えば、患者が何回及びどんな時間間隔で自己投与したかを監視する事を可能にする。最後に、コントローラの使用は、それが証拠の形で行為と同様に詳細な使用の追跡を提供できるので、研究者が臨床試験中の装置の性能を追跡する事を可能にする。
【0039】
上記のシステム及び方法は、「C」、「C++」、「フォートラン」、「パスカル」、「VHDL」等のような如何なる種々の既知の又は後に開発されたプログラム言語を用いて実施可能である。
【0040】
従って、磁気コンピュータディスク、光学的ディスク、電子メモリー等のような種々の記憶媒体は、上記のシステム及び/又は方法を実施するためのコンピュータのような装置に命令を与えることができる情報を含むことができる。ひとたび適切な装置が情報と記憶媒体に含まれるプログラムにアクセスを持つと、その記憶媒体は、その装置に対し情報及びプログラムを提供でき、そのシステムが上記のシステム及び/又は方法を実行する事を可能にする。
【0041】
例えば、ソースファイル、オブジェクトファイル、実行形式ファイル等のような適切な材料を含むコンピュータディスクを有するコンピュータは、構成され、種々の機能を実行するため上記略図及びフローチャートに概説された種々のシステム及び方法の機能を実行することができる。即ち、個々のシステム及び/又は方法を実施し、上記の個々のシステム及び/又は方法の機能を連携させるために、コンピュータは、上記のシステム及び/又は方法の異なる要素に関係するディスクからの情報の種々の部分を使用する。
【0042】
ここに記述された種々の方法及び装置は、ハードウエア及びソフトウエアで実施可能である。更に、種々の方法及びパラメータは、例示のみで如何なる制限的な意味をも持たない。本記述の見方において、付随の特許請求の範囲内で、当業者は、これらの技術を効果あらしめるため彼ら自身の技術及び必要とされる機器を決定するにあたり本発明を実施できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間又は他の動物の表皮を通じて制御された投薬量を提供するための経皮ドラッグデリバリーシステムであって:
基板に置かれた1以上の電極対を有する基板;及び
前記基板に置かれ、前記1以上の電極対の各電極と電気的に接触するゲルを含み、
前記ゲルは、少なくとも第1の医薬関連品を含み、前記電極対により提供される電圧又は電流の少なくとも1に基づき第1の医薬関連品の投薬速度を変化させるように構成された経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項2】
各電極対間の電圧又は各電極対を通る電流を選択的に提供するように構成された前記1以上の電極対の各電極に結合されたコントローラを更に含む請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項3】
前記基板に配置されたほぼ平らなバッテリーを更に含む請求項2の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項4】
前記基板に配置されたユーザーインターフェースを更に含む請求項3の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項5】
前記ユーザーインターフェースは、少なくとも1以上の活性化装置及び目視指示計を含む請求項4の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項6】
前記ユーザーインターフェースは、少なくとも1の活性化装置を含み、前記コントローラは、前記活性化装置のトリガーに対する応答として医薬関連品の投薬速度の変化を引き起こすように構成された請求項5の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項7】
前記ユーザーインターフェースは、医薬関連品の投与に関し、コンピュータがコントローラに命令を与える事を可能にする通信ポートを含む請求項4の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項8】
前記第1活性剤の制御された投与のために有益な情報を提供するためのコントローラと通信するセンサーを更に含む請求項2の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項9】
電極対の前記配列は、前記ゲルの異なる部分の投薬を制御できる各電極対を持った2以上の電極対を含む請求項8の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項10】
前記ゲルは、少なくとも2つの異なる医薬関連品を有し、各医薬関連品の投与は異なる電極対により制御可能である請求項9の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、所定の時間プロファイルに従い前記医薬関連品の投与に変化を引き起こすように構成された請求項2の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項12】
前記ゲルは、イオン導入に頼ることなしに電界の存在下溶剤を排出するように構成された高分子電解質ゲルである請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項13】
前記ゲルは、ポリアクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール及びカルボン酸共重合体の少なくとも1つを含む請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項14】
前記ゲルは、重合プロセスを用い硬化前ゲル混合の複数層からなる請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項15】
人間又は他の動物の表皮を通じて制御された投薬量を提供するための経皮ドラッグデリバリーシステムであって:
基板に置かれ、少なくとも第1の医薬関連品を含むゲルを持つ基板;
前記ゲルから前記第1の医薬関連品の投薬速度を能動的に操作するための操作手段;及び
前記操作手段を制御するための制御手段
を含む経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項16】
前記操作手段は、前記ゲルに電界を与えることができる少なくとも1対の電極を含み、前記ゲルは、電界に応答して溶剤を排出する速度を変化するように構成された請求項15の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項17】
前記制御手段は、タイマーを有するマイクロコントローラを含む請求項15の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項18】
人間に前記経皮ドラッグデリバリーシステムの状態についての情報を伝えるために前記マイクロコントローラに結合された目視指示計を更に含む請求項17の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項19】
人間又は他の動物の表皮を通じて制御された投薬量を提供するための経皮ドラッグデリバリーシステムであって:
基板に置かれた1以上の第1電極の第1配列と1以上の第2電極の第2配列とを有する基板;
前記基板に置かれ、各第1電極と電気的に接触する高分子電解質ゲル;
前記ゲルに対し前記ゲルに含まれた医薬関連品を能動的に非イオン導入プロセスを用い前記患者の皮膚に投与させ、更にイオン導入を用い前記医薬関連品を前記患者の皮膚に浸透させるように、1以上の第1電極から前記ゲルと患者の皮膚とを通り1以上の第2電極に通る前記電流を制御でき、前記基板に置かれたコントローラ
を含む経皮ドラッグデリバリーシステム
【請求項20】
前記コントローラは又、かなりの量の電流を2つの第1電極間に流すことができる請求項19の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項1】
人間又は他の動物の表皮を通じて制御された投薬量を提供するための経皮ドラッグデリバリーシステムであって:
基板に置かれた1以上の電極対を有する基板;及び
前記基板に置かれ、前記1以上の電極対の各電極と電気的に接触するゲルを含み、
前記ゲルは、少なくとも第1の医薬関連品を含み、前記電極対により提供される電圧又は電流の少なくとも1に基づき第1の医薬関連品の投薬速度を変化させるように構成された経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項2】
各電極対間の電圧又は各電極対を通る電流を選択的に提供するように構成された前記1以上の電極対の各電極に結合されたコントローラを更に含む請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項3】
前記基板に配置されたほぼ平らなバッテリーを更に含む請求項2の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項4】
前記基板に配置されたユーザーインターフェースを更に含む請求項3の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項5】
前記ユーザーインターフェースは、少なくとも1以上の活性化装置及び目視指示計を含む請求項4の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項6】
前記ユーザーインターフェースは、少なくとも1の活性化装置を含み、前記コントローラは、前記活性化装置のトリガーに対する応答として医薬関連品の投薬速度の変化を引き起こすように構成された請求項5の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項7】
前記ユーザーインターフェースは、医薬関連品の投与に関し、コンピュータがコントローラに命令を与える事を可能にする通信ポートを含む請求項4の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項8】
前記第1活性剤の制御された投与のために有益な情報を提供するためのコントローラと通信するセンサーを更に含む請求項2の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項9】
電極対の前記配列は、前記ゲルの異なる部分の投薬を制御できる各電極対を持った2以上の電極対を含む請求項8の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項10】
前記ゲルは、少なくとも2つの異なる医薬関連品を有し、各医薬関連品の投与は異なる電極対により制御可能である請求項9の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、所定の時間プロファイルに従い前記医薬関連品の投与に変化を引き起こすように構成された請求項2の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項12】
前記ゲルは、イオン導入に頼ることなしに電界の存在下溶剤を排出するように構成された高分子電解質ゲルである請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項13】
前記ゲルは、ポリアクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール及びカルボン酸共重合体の少なくとも1つを含む請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項14】
前記ゲルは、重合プロセスを用い硬化前ゲル混合の複数層からなる請求項1の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項15】
人間又は他の動物の表皮を通じて制御された投薬量を提供するための経皮ドラッグデリバリーシステムであって:
基板に置かれ、少なくとも第1の医薬関連品を含むゲルを持つ基板;
前記ゲルから前記第1の医薬関連品の投薬速度を能動的に操作するための操作手段;及び
前記操作手段を制御するための制御手段
を含む経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項16】
前記操作手段は、前記ゲルに電界を与えることができる少なくとも1対の電極を含み、前記ゲルは、電界に応答して溶剤を排出する速度を変化するように構成された請求項15の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項17】
前記制御手段は、タイマーを有するマイクロコントローラを含む請求項15の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項18】
人間に前記経皮ドラッグデリバリーシステムの状態についての情報を伝えるために前記マイクロコントローラに結合された目視指示計を更に含む請求項17の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【請求項19】
人間又は他の動物の表皮を通じて制御された投薬量を提供するための経皮ドラッグデリバリーシステムであって:
基板に置かれた1以上の第1電極の第1配列と1以上の第2電極の第2配列とを有する基板;
前記基板に置かれ、各第1電極と電気的に接触する高分子電解質ゲル;
前記ゲルに対し前記ゲルに含まれた医薬関連品を能動的に非イオン導入プロセスを用い前記患者の皮膚に投与させ、更にイオン導入を用い前記医薬関連品を前記患者の皮膚に浸透させるように、1以上の第1電極から前記ゲルと患者の皮膚とを通り1以上の第2電極に通る前記電流を制御でき、前記基板に置かれたコントローラ
を含む経皮ドラッグデリバリーシステム
【請求項20】
前記コントローラは又、かなりの量の電流を2つの第1電極間に流すことができる請求項19の経皮ドラッグデリバリーシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【公表番号】特表2010−504798(P2010−504798A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529832(P2009−529832)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053918
【国際公開番号】WO2008/038241
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053918
【国際公開番号】WO2008/038241
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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