説明

経皮吸収促進方法、経皮吸収促進装置及び有用物質含有物

【課題】 微細気泡を用いることにより有用物質の経皮吸収を促進することができる経皮吸収促進方法、経皮吸収促進装置及び有用物質含有物を提供する。
【解決手段】 経皮吸収促進装置としての微細気泡発生装置搭載風呂10は、有用物質を含有する液体(湯水)を収容する容器(浴槽30)と、浴槽30内の液体(湯水)中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置20とを備え、微細気泡発生装置20により浴槽30内の湯水中に微細気泡を発生させる。この微細気泡を利用することにより、湯水中の有用物質の経皮吸収を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡を用いて物質の経皮吸収を促進する経皮吸収促進方法、経皮吸収促進装置及び有用物質含有物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚はケラチン層があり、外部からの物質の吸収性は非常に悪い。このため、薬剤等の物質の経皮吸収を促進するための方法がいくつか開発されており、機械的経皮吸収促進方法としてはイオントフォレーシスやフォノフォレーシスが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。イオントフォレーシスは、所望部位の皮膚の上に配置されたイオン性薬剤を駆動させる起電力を皮膚に与え、皮膚を介してイオン性薬剤を体内に導入する方法である。フォノフォレーシスは、超音波により、皮膚を介して体内に薬剤を導入する方法である。
【0003】
一方、近年、気泡径がマイクロオーダーの微細気泡であるマイクロバブルが注目を集めている。マイクロバブルは、養殖に用いたり、オゾンをマイクロバブルにして殺菌を行ったり、船舶の下で発生させて抵抗を軽減したりと、様々な方面で利用されている。
【特許文献1】特開2000−229129号公報(第2−9頁)
【特許文献2】特開2002−520101号公報(第28−32頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、L−アスコルビン酸(ビタミンC)等の有用物質を含有する入浴剤が販売されているが、上述のように、ケラチン層における物質の吸収性が非常に悪いため、入浴剤に含まれる有用物質の皮膚から取り込みは、通常、ほとんど行われていない。上述のイオントフォレーシスやフォノフォレーシスは、それぞれ電流や超音波を使用することから、安全性を確保するために、美容、医療用でのみ利用されている。これらの方法を用いた機器では、美容用に市販されているものもあるが、安全性を確保するため使用方法が限定される。このため、これらが家庭用の浴槽で用いられることはなく、入浴剤に含まれる有用物質を皮膚から取り込むことは、実際には、ほとんどできなかった。
【0005】
一方、微細気泡であるマイクロバブルは上述のように様々な方面で利用されているが、有用物質の経皮吸収のための利用に関して開示しているものはない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、微細気泡を用いることにより有用物質の経皮吸収を促進することができる経皮吸収促進方法、経皮吸収促進装置及び有用物質含有物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、微細気泡発生装置により容器内の液体中に発生させた微細気泡を利用することにより、前記液体中に含有される有用物質の経皮吸収を促進することを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の経皮吸収促進方法において、前記微細気泡は、気泡径が50μm以下であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の経皮吸収促進方法において、前記微細気泡は、前記微細気泡発生装置による微細気泡の発生を停止した場合にも、少なくとも1分間、微細気泡が発生した状態が持続するものであることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の経皮吸収促進方法において、前記有用物質は、水溶性物質であることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の経皮吸収促進方法において、前記有用物質は、生薬エキス、ハーブエキス、ビタミン類、繊維性タンパク質、ムコ多糖、保湿成分の少なくともいずれか1つを含むことを要旨とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の経皮吸収促進方法において、前記容器は浴槽であり、前記有用物質を含有する液体は前記有用物質を含有する入浴剤を混入した湯水であることを要旨とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、有用物質を含有する液体を収容する容器と、前記容器内の前記液体中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置とを備え、前記微細気泡発生装置により前記容器内の前記液体中に発生させた微細気泡を利用することにより、前記有用物質の経皮吸収を促進することを要旨とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の経皮吸収促進装置において、前記微細気泡は、気泡径が50μm以下であることを要旨とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の経皮吸収促進装置において、前記微細気泡は、前記微細気泡発生装置による微細気泡の発生を停止した場合にも、少なくとも1分間、微細気泡が発生した状態が持続するものであることを要旨とする。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9のいずれか1つに記載の経皮吸収促進装置において、前記容器は浴槽であり、前記有用物質を含有する液体は前記有用物質を含有する入浴剤を混入した湯水であることを要旨とする。
【0013】
請求項11に記載の発明は、液体中で微細気泡を用いることにより経皮吸収が促進される有用物質を含有することを要旨とする。
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の有用物質含有物において、前記有用物質は、水溶性物質であることを要旨とする。
【0014】
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載の有用物質含有物において、前記有用物質は、生薬エキス、ハーブエキス、ビタミン類、繊維性タンパク質、ムコ多糖、保湿成分の少なくともいずれか1つを含むことを要旨とする。
【0015】
請求項14に記載の発明は、請求項11〜13のいずれか1つに記載の有用物質含有物において、前記有用物質含有物は、入浴剤であることを要旨とする。
(作用)
請求項1又は7に記載の発明によれば、微細気泡を利用することにより、液体中に含有される有用物質の経皮吸収を促進することができる。
【0016】
請求項2又は8に記載の発明によれば、気泡径が50μm以下の微細気泡を利用することにより、液体中に含有される有用物質の経皮吸収を促進することができる。
請求項3又は9に記載の発明によれば、前記微細気泡発生装置による微細気泡の発生を停止した場合にも、少なくとも1分間、微細気泡が発生した状態が持続する。このため、微細気泡発生装置により微細気泡を発生させ続けなくても、発生した微細気泡を利用して、有用物質の経皮吸収を促進することができる。また、発生させた微細気泡を移動させて利用することができ、これにより、微細気泡を発生させた容器内に経皮吸収させたい部位を入れなくても、微細気泡を利用して経皮吸収を促進することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、前記有用物質を、水溶性物質とすることができる。水
溶性物質は、微細気泡を利用しなかった場合には経皮浸透しにくいが、微細気泡を利用することにより、初めて有効な浸透が得られる。このため、微細気泡を利用することにより、初めて水溶性の有用物質を有効に経皮吸収させることができる。また、水溶性の有用物質は、湯水に溶けるため、扱いやすい。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、前記有用物質は、生薬エキス、ハーブエキス、ビタミン類、繊維性タンパク質、ムコ多糖、保湿成分の少なくともいずれか1つを含むとすることができ、これらの経皮吸収を促進することができる。
【0019】
請求項6又は10に記載の発明によれば、入浴剤に含まれる有用物質の経皮吸収を促進することができる。
請求項11に記載の発明によれば、有用物質含有物を液体に混入し、微細気泡を利用することにより、液体に混入された有用物質含有物に含有される有用物質の経皮吸収を促進することができる。
【0020】
請求項12に記載の発明によれば、前記有用物質を、水溶性物質とすることができる。水溶性物質は、微細気泡を利用しなかった場合には経皮浸透しないが、微細気泡を利用することにより、初めて有効な浸透が得られる。このため、微細気泡を利用することにより、初めて水溶性の有用物質を有効に経皮吸収させることができる。また、水溶性の有用物質は、湯水に溶けるため、扱いやすい。
【0021】
請求項13に記載の発明によれば、前記有用物質は、生薬エキス、ハーブエキス、ビタミン類、繊維性タンパク質、ムコ多糖、保湿成分の少なくともいずれか1つを含むとすることができ、これらの経皮吸収を促進することができる。
【0022】
請求項14に記載の発明によれば、入浴剤に含まれる有用物質の経皮吸収を促進することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、微細気泡を用いることにより有用物質の経皮吸収を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、微細気泡を利用して、有用物質の経皮吸収を促進する。
本発明の経皮吸収促進装置は、有用物質を含有する液体を収容する容器と、この容器内の液体中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置とを備える。そして、微細気泡発生装置により容器内の液体中に発生させた微細気泡を利用することにより、前記有用物質の経皮吸収を促進する。
【0025】
微細気泡により経皮吸収を促進する有用物質は、水溶性物質でもよいし、油溶性物質でもよい。水溶性物質は、微細気泡を利用しなかった場合には経皮浸透しにくいが、微細気泡を利用することにより、初めて有効な浸透が得られる。このため、微細気泡を利用することにより、初めて水溶性の有用物質を有効に経皮吸収させることができる。また、水溶性の有用物質は、湯水に溶けるため、扱いやすい。
【0026】
有用物質としては、例えば、生薬エキス、ハーブエキス、ビタミン類、繊維性タンパク質、ムコ多糖、保湿成分等が挙げられる。生薬エキスに含まれている有効成分には水溶性のものと油溶性のものがある。ハーブエキスに含まれている有効成分には水溶性のものと油溶性のものがある。ビタミン類としては、L−アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体
等が挙げられる。L−アスコルビン酸は水溶性である。アスコルビン酸誘導体は水溶性のものと油溶性のもとがある。繊維性タンパク質としては、コラーゲン等が挙げられる。コラーゲンは難溶性であるが薬品処理により水溶性となり、湯に溶ける。ムコ多糖としては、ヒアルロン酸等が挙げられる。ヒアルロン酸は水溶性である。このように、経皮吸収を促進しようとする有用物質には水溶性のものと油溶性のものとがあるが、上述のように、水溶性の有用物質は微細気泡により初めて有効に経皮吸収させることができる。
【0027】
有用物質を含有する液体は、有用物質を液体に混入したものでもよいし、有用物質を含有する有用物質含有物を液体に混入したものでもよい。有用物質含有物としては、例えば、入浴剤や洗顔剤、医療品等が挙げられる。有用物質含有物は、固形、粉末、エマルジョン、コロイド、溶液等、状態は限定されない。また、有用物質又は有用物質含有物がそれぞれ混入された液体中の有用物質は、溶解した状態でもよいし、分散した状態でもよい。
【0028】
微細気泡発生装置は、微細気泡を発生させる装置であり、容器側に吸入口と吐出口とを備えており、吸入口により容器内の液体を吸入し、この液体を微細気泡発生装置の本体で空気と混和し、これを吐出口から容器に吐出する。微細気泡発生装置における液体と空気との混和による微細気泡を発生させる方法としては、様々な方法が公知となっている。これらの方法は、それぞれ若干異なっているが、微細気泡を発生させるものであれば、その方法は限定されない。
【0029】
微細気泡発生装置は、気体を液体に溶解させる気体溶解液発生手段を備えるとともに、容器内の液体を気体溶解液発生手段に導く吸入部、空気を吸入する空気吸入部、及び、気体溶解液発生手段により発生させた気体溶解液を容器中に吐出する吐出部を備えている。そして、吸入部により液体を吸入するとともに空気吸入部により空気を吸入し、気体溶解液発生手段により、液体に気体を溶解させる。気体溶解液発生手段は、例えば、液体に気体(空気)を混合攪拌したり、液体と気体(空気)とを混合して加圧したりすることにより、気体溶解液を発生させる。そして、微細気泡発生装置は、発生した気体溶解液を吐出部により容器中に吐出する。
【0030】
このような構成で、微細気泡発生装置に備えられた吸入部と吐出部とを介して、微細気泡発生装置と液体を収容した容器との間で液体を循環させ、かつ微細気泡発生装置において空気を溶解して状態にある気体溶解液を吐出部から容器内へ吐出すると、この気体溶解液において溶解した状態にある空気が、微細気泡となって発生する。これにより、例えば、容器内の透明な液体が白濁(乳白色化)する。
【0031】
微細気泡は、気泡径がマイクロオーダーのものはマイクロバブルとも呼ばれ、一般に、気泡径が50μm以下の微細気泡がマイクロバブルと呼ばれている。このような微細気泡(マイクロバブル)が肌に接することにより肌が刺激されることが期待される。発明者らは、このことから微細気泡により有用物質の経皮吸収が促進される可能性を予測し、微細気泡による有用物質の経皮吸収の促進を検証した。
【0032】
微細気泡(マイクロバブル)を容器内の液体中に発生させると、微細気泡発生装置の起動を停止して微細気泡の発生を停止した場合にも、1分間以上、液体が白濁した状態が持続する。つまり、微細気泡の発生を停止した場合にも、1分間以上、微細気泡が発生した状態が持続する。
【0033】
経皮吸収促進装置としては、具体的には、例えば、微細気泡発生装置を搭載した浴槽、微細気泡発生装置を搭載した洗顔器、微細気泡発生装置を搭載した医療機器が挙げられる。以下、経皮吸収促進装置の具体例を説明するが、本発明の経皮吸収促進装置はこれらに限定されるものではない。
【0034】
<微細気泡発生装置を搭載した浴槽>
図1に示すように、経皮吸収促進装置としての微細気泡発生装置を搭載した浴槽(微細気泡発生装置搭載風呂10)は、微細気泡発生装置20と容器としての浴槽30とを備えている。微細気泡発生装置20は、微細気泡発生装置20の本体21の吸入口に吸入管24により接続された吸入部22と、本体21の吐出口に吐出管25により接続された吐出部23とを備えている。吸入部22及び吐出部23は、それぞれノズルを有している。吸入部22及び吐出部23は、浴槽30の内壁に設けられ、内の湯水(有用物質を含有する入浴剤を混入した湯水)中に浸されている。微細気泡発生装置20の本体21は、吸入部22から液体を吸入し、吸入管24を介してこの液体を取り込み、微細気泡を発生させて、吐出管25を介して吐出部23から微細気泡を吐出する。
【0035】
これにより、浴槽30内に微細気泡が発生し、発生した微細気泡によって浴槽30内の湯水が白濁する。
このような状態で入浴すると、微細気泡により、浴槽30内の湯水に混入した入浴剤に含まれる有用物質の経皮吸収が促進される。
【0036】
また、例えば、L−アスコルビン酸(ビタミンC)を入浴剤として用いる場合、湯水を入れた浴槽に、粉末の状態のL−アスコルビン酸を投入してもよい。粉末の状態のL−アスコルビン酸は安定性が高いため、この状態のまま保存できる。すなわち、天然のL−アスコルビン酸を粉末の状態で入浴剤として用いることができる。なお、L−アスコルビン酸は、粉末の状態でないと酸化されやすいため、浴槽内の湯水に混入した場合、酸化されやすくなるが、微細気泡により経皮吸収が促進されるため、L−アスコルビン酸が酸化される前に、経皮吸収が行われる。すなわち、湯水に混入してからL−アスコルビン酸は、約1〜2時間で酸化されるが、微細気泡を用いた場合、これより短い時間で経皮吸収が行われるため、酸化される前にL−アスコルビン酸を経皮吸収することができる。
【0037】
また、上述のように、微細気泡を浴槽30内の湯水中に発生させると、浴槽30内の湯水が発生した微細気泡によって白濁し、微細気泡発生装置の起動を停止して微細気泡の発生を停止した場合でも、1分間以上、白濁した状態が持続する。このため、微細気泡を利用する場合、一旦、浴槽30内に微細気泡を発生させた場合、微細気泡発生装置20を継続して起動している必要はない。
【0038】
<微細気泡発生装置を搭載した洗顔器>
上述のように、一旦、微細気泡を発生させると、微細気泡が発生した状態が、1分間以上持続する。このため、容器内で微細気泡を発生させた後、微細気泡が発生している液体を移動させて用いることが可能となる。例えば、微細気泡発生装置を搭載した洗顔器では、洗顔器(容器)内で微細気泡を発生させた後、この洗顔器内の液体を掬って洗顔に用いた場合でも、微細気泡による有用物質の経皮吸収促進の効果を得ることができる。
【0039】
以上、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
・ 上記実施形態では、微細気泡発生装置により容器内の液体中に発生させた微細気泡を利用することにより、前記液体中に含有される有用物質の経皮吸収を促進する。このため、微細気泡を利用することにより、液体中に含有される有用物質を、効率的に経皮吸収することができる。
【0040】
・ 上記実施形態では、例えば、浴槽中の湯水にL−アスコルビン酸等の有用物質を含有する入浴剤を混入する。そして、この入浴剤を混入した湯水内に、微細気泡を発生させる。これにより、入浴剤に含まれるL−アスコルビン酸等の有用物質の経皮吸収を促進することができる。
【0041】
・ 上記実施形態では、微細気泡が発生した状態が微細気泡発生装置の起動停止後も1分間以上持続することを利用して、例えば、微細気泡発生装置を搭載した洗顔器等で発生させた微細気泡を移動させて利用する。これにより、経皮吸収させたい部位を経皮吸収促進装置の容器内に入れなくても、微細気泡を利用して経皮吸収を促進することができる。
【実施例】
【0042】
以下、前記実施形態における効果の検討のために行った実験における実施例及び比較例について説明する。この実験では、微細気泡により有用物質としてのL−アスコルビン酸(ビタミンC)の皮膚透過率が増加するかどうかを確認した。経皮吸収評価方法としては、拡散セル法を用いた。
【0043】
(実験システム)
実験システムは、図2に示すように、微細気泡発生装置40と、L−アスコルビン酸溶液を収容した容器50と、後述する皮膚70を介して第1容器61及び第2容器62にそれぞれ液体を収容可能な拡散セル装置60と、恒温槽90とを用いて構成した。
【0044】
微細気泡発生装置40は、資源開発製の超微細気泡発生装置A−1型を用いた。この微細気泡発生装置40は、気泡径20μm以下の微細気泡を発生させる。
微細気泡発生装置40は、微細気泡発生装置40の本体41の吸入口に吸入管44により接続された吸入部42と、本体41の吐出口に吐出管45により接続された吐出部43とを備えている。吸入部42及び吐出部43は、それぞれノズルを有している。吸入部42及び吐出部43は、容器50内のL−アスコルビン酸溶液中に浸されている。微細気泡発生装置40の本体41は、吸入部42から液体を吸入し吸入管44を介してこの液体を取り込み、微細気泡を発生させて、吐出管45を介して吐出部43から微細気泡を吐出する。
【0045】
容器50には、1%L−アスコルビン酸溶液を10L収容した。このL−アスコルビン酸溶液は、純水(ミリポア社製の純水製造装置を使用)にL−アスコルビン酸を溶かして調整した。実験中、容器50中のこのL−アスコルビン酸溶液の温度は25℃に調整した。
【0046】
拡散セル装置60は、皮膚70を介して第1容器61と第2容器62とが重ねられた構成となっている。第1容器61には、上記L−アスコルビン酸溶液が収容され、このL−アスコルビン酸溶液に、ポンプ付チューブ81及びチューブ83の各々の一方の端が浸されている。ポンプ付チューブ81及びチューブ83の各々の他方の端は、それぞれ容器50内のL−アスコルビン酸溶液に浸されている。ポンプ付チューブ81にはポンプ82が備えられており、このポンプ82により、容器50内の微細気泡を含むL−アスコルビン酸溶液が第1容器61内に汲み入れられる。また、これと反対に、チューブ83を介して、第1容器61内の微細気泡を含むL−アスコルビン酸溶液が容器50に汲み出される。第2容器62は、サンプリングアーム63を備えている。第2容器62には、PBSバッファー溶液(pH7.35〜7.65)20mlを収容した。
【0047】
皮膚70は、5週齢のオスのICRヌードマウスの皮膚を用いた。第1容器61内の微細気泡を含むL−アスコルビン酸溶液中のL−アスコルビン酸が、この皮膚70を透過して第2容器62内に移動するが、本実験では、後述するように、第2容器62内のL−アスコルビン酸の濃度を測定することにより、皮膚70を透過して第2容器62に移動したL−アスコルビン酸量を測定した。
【0048】
恒温槽90は、温度35℃に保たれ、この恒温槽90により皮膚70の温度を保持した

(L−アスコルビン酸の透過量の測定)
有用物質(L−アスコルビン酸)の透過量の測定は、以下のようにして行った。
【0049】
すなわち、上述の実験装置をセットし、微細気泡発生装置40の運転を開始してから、0.5時間後、1時間後、2時間後にそれぞれ、第2容器62から2mlをサンプリングした。なお、サンプリング後、この第2容器62にPBSを2ml加えた。
【0050】
そして、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン法により、第2容器62からサンプリングしたPBS溶液中のL−アスコルビン酸濃度を測定した。
(比較例)比較例として、微細気泡発生装置40による微細気泡の発生を行わない実験装置を用意した。すなわち、微細気泡発生装置40を用いない事以外は上記の微細気泡を発生させる場合(実施例)と同様の実験装置を用意した。この比較例において、上記の微細気泡を発生させる場合(実施例)と同様にして、第2容器62からPBS溶液をサンプリングし、サンプリングされたPBS溶液中のL−アスコルビン酸濃度を測定した。
【0051】
(測定結果)
測定結果を図3に示す。図3では、微細気泡を発生させた場合(実施例)(微細気泡(+))と、微細気泡を発生させなかった場合(比較例)(微細気泡(−))についてのそれぞれの1%L−アスコルビン酸の経皮吸収の経時変化を示す。図3に示すように、微細気泡を発生させた場合(実施例)、実験開始0.5時間後、1時間後、2時間後とも、微細気泡を発生させない場合(比較例)に対し、総L−アスコルビン酸濃度が高くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態における経皮吸収促進装置の概要図。
【図2】実施例における実験装置の説明図。
【図3】実施例における実験結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0053】
10…経皮吸収促進装置としての微細気泡発生装置搭載風呂、20…微細気泡発生装置、30…容器としての浴槽、40…微細気泡発生装置、50…容器、70…皮膚。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細気泡発生装置により容器内の液体中に発生させた微細気泡を利用することにより、前記液体中に含有される有用物質の経皮吸収を促進することを特徴とする経皮吸収促進方法。
【請求項2】
前記微細気泡は、気泡径が50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の経皮吸収促進方法。
【請求項3】
前記微細気泡は、前記微細気泡発生装置による微細気泡の発生を停止した場合にも、少なくとも1分間、微細気泡が発生した状態が持続するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の経皮吸収促進方法。
【請求項4】
前記有用物質は、水溶性物質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の経皮吸収促進方法。
【請求項5】
前記有用物質は、生薬エキス、ハーブエキス、ビタミン類、繊維性タンパク質、ムコ多糖、保湿成分の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の経皮吸収促進方法。
【請求項6】
前記容器は浴槽であり、前記有用物質を含有する液体は前記有用物質を含有する入浴剤を混入した湯水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の経皮吸収促進方法。
【請求項7】
有用物質を含有する液体を収容する容器と、前記容器内の前記液体中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置とを備え、前記微細気泡発生装置により前記容器内の前記液体中に発生させた微細気泡を利用することにより、前記有用物質の経皮吸収を促進することを特徴とする経皮吸収促進装置。
【請求項8】
前記微細気泡は、気泡径が50μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の経皮吸収促進装置。
【請求項9】
前記微細気泡は、前記微細気泡発生装置による微細気泡の発生を停止した場合にも、少なくとも1分間、微細気泡が発生した状態が持続するものであることを特徴とする請求項7又は8に記載の経皮吸収促進装置。
【請求項10】
前記容器は浴槽であり、前記有用物質を含有する液体は前記有用物質を含有する入浴剤を混入した湯水であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の経皮吸収促進装置。
【請求項11】
液体中で微細気泡を用いることにより経皮吸収が促進される有用物質を含有することを特徴とする有用物質含有物。
【請求項12】
前記有用物質は、水溶性物質であることを特徴とする請求項11に記載の有用物質含有物。
【請求項13】
前記有用物質は、生薬エキス、ハーブエキス、ビタミン類、繊維性タンパク質、ムコ多糖、保湿成分の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項11に記載の有用物質含有物。
【請求項14】
前記有用物質含有物は、入浴剤であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1つに記載の有用物質含有物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−305158(P2006−305158A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132918(P2005−132918)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】