説明

経皮投与装置

【課題】イオントフォレーシスやマイクロニードルによって薬物を経皮投与する際に、引張って平面状とされた皮膚に、イオントフォレーシス装置やマイクロニードル装置の前端面を密着させるようにした経皮投与装置を提供する。
【解決手段】経皮投与装置10は、イオントフォレーシス装置11と、これに取り付けられた引張り装置60とを有し、引張り装置60が、作用側電極構造体20、非作用側電極構造体40の前端面20A、40Aの両側から、モータ66A、66Bにより駆動されるローラ64A、64Bによって皮膚を引張って平面状とし、ここにイオントフォレーシス装置11の前端面20A、40Aを密着させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントフォレーシスあるいはマイクロニードルにより薬物を経皮投与するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような経皮投与装置の1つとして、例えば特許文献1に記載されるようなイオントフォレーシス装置がある。又、マイクロニードルデバイスとして、例えば特許文献2に記載されるようなものがある。
【0003】
特許文献1のイオントフォレーシス装置は、作用側電極構造体及び非作用側電極構造を有し、作用側電極構造体の前端面のイオン交換膜から薬液イオンを皮膚や粘膜に投与させるものである。
【0004】
このとき、作用側電極構造体の前端面と皮膚との密着度は、前端面から皮膚に流れる電流密度の均一性に影響し、不均一な場合は薬物送達効率を低下させる。
【0005】
従って、作用側電極構造体の前端面を皮膚の表面に高い密着度で接触させる必要があるが、皮膚の表面は種々の凹凸があり、密着性が不完全となることがあった。
【0006】
特に、美容目的で皺部分に薬物イオンを導入する際、皺は、最大で数ミリの深さがあり、例えば、ゲル等を皺部分に塗布して、その上から作用側電極構造体を押し付けても、目的とする皺の深部には電流が流れていない、即ち薬物イオンが導入されていないという問題点が生じる。
【0007】
同様に、特許文献2に開示されるようなマイクロニードルデバイスによって皮膚に、薬物を投与する場合も、皮膚に凹凸があるため、マイクロニードルを均一に刺し込むことができないという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】WO0303742号公報
【特許文献2】特表2005−533625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、イオントフォレーシスあるいはマイクロニードルにより薬物を経皮投与する際に、皮膚を引張って平面状態とし、これに作用電極構造体の前端面やマイクロニードルアレイを均一に密着できるようにした経皮投与装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意研究の結果、経皮投与装置の前端面を皮膚に接触する際に、ローラ等によって皮膚を引張って平面状にすると、前端面を均一に密着させて確実に皮膚に薬物を投与できることを見出した。
【0011】
即ち、以下のような実施例により上記課題を解決することができる。
【0012】
(1)投与部の前端面を皮膚に接触させて、イオントフォレーシス及びマイクロニードルの一方により、前記前端面から薬物イオン又は薬物を、皮膚を介して、生体に投与するための経皮投与装置であって、前記前端面と平行に、皮膚を引張り可能な引張装置を、前記投与部と連結して設けたことを特徴とする経皮投与装置。
【0013】
(2)前記引張装置は、前記投与部における前記前端面の両側に配設され、外周が皮膚と接触して、これを引張り可能な一対のローラと、皮膚を前記前端面の両側に引張る方向に、前記一対のローラを回転させる駆動部と、を有してなることを特徴とする(1)に記載の経皮投与装置。
【0014】
(3)前記引張装置は、前記投与部における前記前端面の一方の側方に配設され、外周が皮膚と接触して回転することにより皮膚を引張り可能なローラと、このローラを、皮膚を引張る方向に回転するように駆動する駆動部と、前記前端面を間にして、前記ローラと反対側に配設され、皮膚に密着する粘着部と、を有してなることを特徴とする(1)に記載の経皮投与装置。
【0015】
(4)前記引張装置は、前記前端面を囲んで、回転軸がほぼ環状に連続するように配置された複数個のローラと、前記ローラを回転させる駆動部と、を有することを特徴とする(1)に記載の経皮投与装置。
【0016】
(5)前記環状に配置されたローラを、回転軸方向の両端部において回転を伝達するように連結する可撓性連結部材を設けたことを特徴とする(4)に記載の経皮投与装置。
【0017】
(6)前記ローラと前記駆動部とはモータローラから構成され、前記ローラは、前記モータローラの回転可能な外殻から構成されていることを特徴とする(2)乃至(4)のいずれかに記載の経皮投与装置。
【0018】
(7)投与部の前端面を皮膚に接触させて、イオントフォレーシス及びマイクロニードルの一方により、前記前端面から薬物イオン又は薬物を、皮膚を介して、生体に投与する経皮投与装置であって、前端が開閉自在となるように連結された第1のレバー及び第2のレバーからなる引張装置を有してなり、前記第1のレバー及び第2のレバーの一方は、前記投与部に連結され、前記第1のレバー及び第2のレバーは、各々の前端において、皮膚に粘性をもって接触する接触部を有し、前記投与部は、前記前端面が、前記第1のレバー及び第2のレバーの前端の接触部間にあるように配置され、前記第2のレバーを第1のレバーに対して拡開することにより、前記第1のレバーの前端の接触部と第2のレバーの前端の接触部間において、皮膚を引張り可能としたことを特徴とする経皮投与装置。
【0019】
(8)前記引張装置は、前記第1のレバー及び第2のレバーの前端が拡開する方向に、これらを付勢する弾性部材を有することを特徴とする(7)に記載の経皮投与装置。
【0020】
(9)前記投与部が、前記引張装置に対して着脱自在に構成されたことを特徴とする(1)乃至(8)のいずれかに記載の経皮投与装置。
【0021】
(10)イオントフォレーシスにより、薬物イオンを、皮膚又は粘膜を介して、生体に投与するために使用される作用側電極構造体及び非作用側電極構造体と、これらの作用側電極構造体及び非作用側電極構造体に接続される直流電源と、を有してなる経皮投与装置であって、前記作用側電極構造体は、弾性連結部材により相互に一定範囲で相対変位可能に連結された、ほぼ球形の複数個の球状作用側電極構造体からなり、各球状作用側電極構造体は、前側に皮膚又は粘膜への接触球面を有し、後側に球面電極を有してなり、前記複数の球状態作用側電極構造体の球面電極に同時に接触して、この複数の球状作用側電極構造体を前記直流電源の一方の電極に電気的に接続させつつ、一定範囲で揺動させる駆動装置を設けたことを特徴とする経皮投与装置。
【0022】
(11)前記非作用側電極構造体は、弾性連結部材により相互に一定範囲で相対変位可能に連結された、前記球状作用側電極構造体と同一直径の複数個の球状非作用側電極構造体からなり、各球状非作用側電極構造体は、前側に皮膚又は粘膜への接触球面を有し、後側に球面電極を有してなり、且つ、前記複数個の球状作用側電極構造体の間にこれと交互に、又は、隣接して配置され、前記駆動装置は、前記複数の球状非作用側電極構造体の球面電極に同時に接触して、この複数の球状非作用側電極構造体の球面電極を前記直流電源の他方の電極に電気的に接続させつつ、一定範囲で揺動させるようにされたことを特徴とする(10)に記載の経皮投与装置。
【発明の効果】
【0023】
イオントフォレーシス装置やマイクロニードルデバイス等の経皮投与装置では、皮膚に均一に装置を密着させることが薬物の送達効率を確実なものとするために必須である。本発明によると、ただ塗布するだけのパッシブな経皮吸収装置とは異なり、前端面に対応する皮膚を引張ることにより、該前端面を皮膚に均一に密着させて、薬物を確実に投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態としての実施例について説明する。
【実施例1】
【0025】
以下図1乃至図3を参照して本発明の実施例1に係る経皮投与装置10について詳細に説明する。
【0026】
この実施例に係る経皮投与装置10は、イオントフォレーシス装置11と、引張り装置60とから構成されている。
【0027】
イオントフォレーシス装置11は、作用側電極構造体20と、非作用側電極構造体40と、これらに接続される直流電源12とを備えて構成されている。
【0028】
作用側電極構造体20は、その前端面20Aから薬物イオンを皮膚に投与する投与部を構成している。又、非作用側電極構造体40における前端面40Aは、作用側電極構造体20の対極として、前端面20Aの近傍で皮膚に接触されるようになっている。
【0029】
引張り装置60は、イオントフォレーシス装置11を囲む形状の枠体62と、この枠体62によって回転自在に支持された一対のローラ64A、64Bと、これらローラ64A、64Bをそれぞれ駆動するための駆動部であるモータ66A、66Bから構成されている。
【0030】
一対のローラ64A、64Bは、イオントフォレーシス装置11における作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40の前端面20A、40Aの両側(図2において左右)に平行に配置され、図1に示されるように、相互に反対方向に、且つ、前端面20A、40Aの両側から皮膚Sを引張るように、モータ66A、66Bによりそれぞれ駆動されるようになっている。なお、ローラ64A、64Bの、皮膚Sとの接触側端部(前端部)と前端面20A、40Aとは、ほぼ面一となるようにされている。
【0031】
又、ローラ64A、64Bの外周面は、皮膚Sに対して、これを擦ったりすることなく粘性をもって引張るように軟質ゴム、ポリウレタン等で構成されている。図1の符号68は前記モータ66A、66Bのための電源を示す。この電源68は枠体62の外側に配置されている。
【0032】
次に、イオントフォレーシス装置11の構成について図3を参照して説明する。
【0033】
このイオントフォレーシス装置11において、作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40は、薬液保持部等の構成部材を、重ね合わせた、いずれも樹脂シートからなる基端支持体16と中間支持体17との間に挟持し、あるいは中間支持体17及び先端支持体部18に形成される貫通孔に収納して構成されている。基端支持体16と中間支持体17と先端支持体18とはほぼ同一の大きさで形成されている。
【0034】
基端支持体16、中間支持体17及び先端支持体18は、いずれも図4において下側面に粘着層が設けられていて、相互に粘着されるとともに、先端支持体18の粘着層は、皮膚又は粘膜に粘着するようにされている。
【0035】
ここで、中間支持体17は、作用側電極構造体20の一部、及び、非作用側電極構造体40の一部を構成する一枚のシート状部材とされている。
【0036】
同様に、先端支持体18は、作用側電極構造体20の一部、及び、非作用側電極構造体40の一部を構成する一枚のシート状部材とさしたれている。
【0037】
支持体15は、中間支持体17及び先端側支持体18と基端支持体16を重ねて構成されている。
【0038】
作用側電極構造体20は、直流電源12における薬物イオンと同種の極性の、陽極又は陰極に接続された作用側電極24と、この作用側電極24の前面に配置されたセパレータ26と、このセパレータ26の前面に配置され、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させる電極側イオン選択性膜28と、この電極側イオン選択性膜28の前面に配置され、薬物イオンとなる薬物を保持する薬液保持部30と、薬液保持部30の前面に配置され、薬物イオンと同種のイオンを選択的に通過させる先端側イオン選択性膜32と、この先端側イオン選択性膜32の前面に、薬物と同一の薬物を含む粘性液体を塗布して形成された作用側生体接触部34とを、この順で積層して構成されている。この作用側生体接触部34の表面が前端面20Aを構成している。
【0039】
直流電源12は、重ね合わせた基端支持体16と中間支持体17を貫通した穴14内に収納されていて、その上端は、通電状態表示器70により覆われている。
【0040】
作用側電極24は、直流電源12に接続され、且つ、樹脂シート36の前面に印刷により形成された炭素からなる作用側集電体24Aと、この作用側集電体24Aの前面に電気的に接続して配置された作用側分極性電極24Bとから構成されている。
【0041】
なお、「電気的に接続」とは、直接接触している場合のみでなく、導電体、例えば導電性接着剤等を介して接続する場合も含むものである(以下同じ)。
【0042】
中間支持体17は、作用側分極性電極24Bとほぼ等しい厚さの樹脂材料からなり、且つ、この作用側分極性電極24Bの平面形状における外形とほぼ同一形状の作用側中間貫通孔21Aを有し、作用側分極性電極24Bは、作用側中間貫通孔21A内に収納されている。
【0043】
又、先端支持体18は、薬液保持部30とほぼ等しい厚さの樹脂材料からなり、作用側分極性電極24Bの平面形状における外形とほぼ同一形状の作用側先端貫通孔22Aを有し、この作用側先端貫通孔22A内に、薬液保持部30が収納されている。
【0044】
非作用側電極構造体40は、基端支持体16側から、直流電源12における、薬物イオンと反対の極性の、陽極又は陰極に接続された非作用側電極44と、この非作用側電極44の前面に配置されたセパレータ46と、電解液を保持する電解液保持部48と、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させる非作用側イオン選択性膜50と、電解液保持部48に保持されている電解液と同一の電解液を含む粘性液体を塗布して形成された非作用側生体接触部52とを、この順で積層して構成されている。この非作用側生体接触部52の表面が前端面40Aを構成している。
【0045】
非作用側電極44は、樹脂シート36の前面に、作用側電極24の作用側集電体24Aと離間して印刷された炭素印刷電極からなる非作用側集電体44Aと、この非作用側集電体44Aに接触して設けられた非作用側分極性電極44Bとから構成されている。
【0046】
非作用側分極性電極44Bは、中間支持体17と等しい厚さとされ、これに形成された非作用側中間貫通孔41Aに収納されている。又、電解液保持部48は、先端支持体18と等しい厚さとされ、先端支持体18に形成された非作用側先端貫通孔42Aに収納されている。
【0047】
この実施例において、貫通孔22A、21A、41A、42Aはいずれも円形とされ、更に、作用側電極24、セパレータ26、電極側イオン選択性膜28、薬液保持部30、先端側イオン選択性膜32及び作用側生体接触部34も、円形膜状あるいはシート状とされている。
【0048】
同様に、非作用側電極44、セパレータ46、電解液保持部48、非作用側イオン選択性膜50及び非作用側生体接触部52も、円形の膜あるいはシート状とされている。
【0049】
作用側電極24における作用側集電体24A及び非作用側電極44における非作用側集電体44Aには、導線(図示省略)が電気的に接続され、この導線は、直流電源12に接続されている。
【0050】
直流電源12としては、ボタン電池、あるいは、例えば特開平11−067236号公報、米国特許公開公報2004/0185667A1号公報、米国特許第6855441号公報等に開示される薄型の電池を使用することができ、本実施形態の構造に限定されるものでない。
【0051】
この実施形態においては、円形の各部材を作用側電極構造体20と非作用側電極構造体40のそれぞれにおいて厚さ方向に重ねて配置し、図1に示されるように一体的にして、イオントフォレーシス装置11が構成されている。
【0052】
図4の符号56は接着剤を示し、この接着剤56は、作用側及び非作用側集電体24A、44Aの間の中間部分を横断して配置され、中間支持体17の後側面に接着し、樹脂シート36と中間支持体17との間の前面を作用側と非作用側とに隔絶させるものである。
【0053】
又、図4の符号58は作用側生体接触部34及び非作用側生体接触部52を覆って先端支持体18の前面に剥離可能に取り付けられたリリースライナーを示す。
【0054】
次に、上記各構成要素の材料、成分等について説明する。
【0055】
この実施形態において、薬液保持部30は、PP(ポリプロピレン)不織布に薬物を含む粘性液体を含浸させて構成されている。又、薬液保持部30に含浸された薬物は、水等の溶媒に溶解するなどにより薬効成分が陽又は陰のイオン(薬物イオンに解離する薬剤(薬剤の前駆体を含む))を含有し、薬効成分が陽のイオンに解離する薬剤としては、麻酔薬である塩酸リドカイン、麻酔薬である塩酸モルヒネ等を例示することができ、薬効成分がマイナスのイオンに解離する薬剤としては、ビタミン剤であるアスコルビン酸等を例示することができる。
【0056】
又、上記の他に、ホルモン、DNA、RNA、蛋白質、アミノ酸、ミネラル類、リポソーム、ヒアルロン酸などの糖類も含むものとする。
【0057】
非作用側電極構造体40におけるセパレータ46は、PP不織布に電解液(詳細後述)を含む粘性液体を含浸させたものである。又、電解液保持部48も、PP不織布に同様の電解液を含む粘性液体を含浸させたものである。
【0058】
セパレータ46及び電解液保持部48に用いられる電解液は電解質を主成分とし、この電解質は、水の電解反応(陽極での酸化及び陰極での還元)よりも酸化又は還元され易い電解質、例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸ナトリウム等の医薬剤、乳酸、シュウ酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸及び/又はその塩を使用することが特に好ましく、これにより酸素ガスや水素ガスの発生を抑制することが可能であり、又、溶媒に溶解した際に緩衝電解液となる組合せの複数種の電解質を配合することにより、通電中におけるpHの変動を抑制することができる。
【0059】
上記のような薬物あるいは電解液を含む粘性液体は、例えば水(イオン交換水)に、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)(例えば日本曹達(株)のH−Type)、あるいは、水に溶けないセルロースを化学的に処理して水溶性の高分子としたメトローズ(例えば信越化学工業(株)の90SH−10000SR)等の粘着性材料を2質量%以上混合して製造することができる。
【0060】
作用側電極24における作用側分極性電極24B及び非作用側電極44における非作用側分極性電極44Bは、共に、活性炭、好ましくは炭素繊維又は炭素繊維紙により形成されている導電性基材を主成分として構成されている。作用側及び非作用側分極性電極24B、44Bとして、活性炭繊維のみを用いる場合は、活性炭繊維からなる布及びフェルトを組み合わせて層を形成すると良い。この場合、電解液を含む粘性液体を活性炭繊維層に含浸させると良い。又、導電性基材に対して、例えばバインダーポリマー中に活性炭を分散させた層を積層させても良い。上記活性炭は比表面積が10m/g以上のものを用いてもよい。
【0061】
作用側分極性電極24Bには、薬液保持部30に保持されている薬物と同一の薬物を含む粘性液体が含浸され、又、非作用側分極性電極44Bには、セパレータ46に保持される電解液と同一の電解液を含む粘性液体が含浸されている。
【0062】
作用側電極24における作用側集電体24A及び非作用側電極44における非作用側集電体44Aは、共に、PET(ポリエチレンテレフタレート)素材に炭素と接着剤とを混ぜたものを印刷してなる印刷電極とされている。
【0063】
なお、印刷電極の材料としては、炭素以外に、金、白金、銀、銅、亜鉛等の導電性の金属を用いても良い。又、印刷によることなく、炭素、金等の導電性素材そのものを集電体としても良い。又、集電体に接続される導線も集電体と同様である。
【0064】
セパレータ26は、PP不織布に、薬液保持部30に保持された薬物と同一の薬物を含有する粘性液体を含浸させたものであり、作用側分極性電極24Bと電極側イオン選択性膜28との間に介在させることによって、両者の物理的な接触を防止するものである。
【0065】
先端側イオン選択性膜32は、薬物イオンと同一符号のイオンを選択的に通過させるようにイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含んで構成されている。即ち、先端側イオン選択性膜32は、薬液保持部30の薬液がカチオンに解離するときは陽イオン交換樹脂を含み、アニオンに解離するときは陰イオン交換樹脂を含んでいる。
【0066】
電極側イオン選択性膜28は、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させるようにイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含有して構成されている。即ち、電極側イオン選択性膜28は、薬液保持部30の薬液がカチオンに解離するときは陰イオン交換樹脂を含み、アニオンに解離するときは陽イオン交換樹脂を含んでいる。
【0067】
非作用側イオン選択性膜50は、電極側イオン選択性膜28と同様に、薬物イオンと反対符号のイオンを選択的に通過させるようにイオン交換基が導入されたイオン交換樹脂を含んで構成されている。即ち、非作用側イオン選択性膜50は、薬液保持部30の薬液がカチオンに解離するときは陰イオン交換樹脂を含み、アニオンに解離するときは陽イオン交換樹脂を含んでいる。
【0068】
上記陽イオン交換樹脂としては、ポリスチレン樹脂やアクリル酸系樹脂等の炭化水素系樹脂やパーフルオロカーボン骨格を有するフッ素系樹脂等の3次元的な網目構造を持つ高分子に、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等の陽イオン交換基(対イオンが陽イオンである交換基)が導入されたイオン交換樹脂が制限無く使用することができる。
【0069】
又、上記陰イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂と同様の3次元的な網目構造を持つ高分子に、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピルジル基、イミダゾール基、4級ピリジウム基、4級イミダゾリウム基等の陽イオン交換基(対イオンが陰イオンである交換基)が導入されたイオン交換樹脂が制限無く使用できる。
【0070】
作用側生体接触部34は、薬液保持部30に含浸されているものと同一の粘性液体を、先端側イオン選択性膜32の前面に塗布して構成されている。又、非作用側生体接触部52は、電解液保持部48に用いられた電解液と同一の電解液を含有する粘性液体を非作用側イオン選択性膜50の前面に塗布して構成されている。なお、これらの塗布された粘性液体の上に、リリースライナー58を貼り付けることによって、粘性液体が拡がってしまうことを抑制するため、塗布量は各々7μLと少な目にするのが良い。
【0071】
イオントフォレーシス装置11の組立時には、各構成部材を配置して積層し、あるいは、貫通孔に収納し、リリースライナー58上に、基端支持体16、中間支持体17、先端支持体18を順次重ねて、これらを粘着層により粘着して固定し、組立を完了する。
【0072】
このようにして、組立を完了したイオントフォレーシス装置11を、引張り装置60における枠体62内下側から挿入して取り付け、経皮投与装置10とする。
【0073】
経皮投与装置10の使用に際しては、ローラ64A、64Bを、モータ66A、66Bにより、図2に示されるように、前端面20A、40Bの両側から皮膚Sが引張られるように相互に反対方向に回転駆動させる。
【0074】
このようにすると、皮膚Sが引張られて平面状態となり、ここに、枠体62とともにイオントフォレーシス装置11を押して、作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40の前端面20A、40Aを接触させると、共に平面であるので、高い密着度を確保することができ、従って、イオントフォレーシス装置11を作動させたときに、接触面における均一な電流密度を得ることができる。
【0075】
即ち、ローラ64A、64Bにより皮膚Sを引張ると、本来皺の深部に相当する部分も前端面20A、40Aに接触し、ここに、薬物イオンを確実に投与することができるので、効率的な薬物送達を実現することができる。
【実施例2】
【0076】
次に、図4を参照して、本発明の実施例2に係る経皮投与装置70について説明する。
【0077】
この経皮投与装置70は、実施例1に係る経皮投与装置10における一対のローラ64A、64Bのうち、一方のローラ64Aに相当する部分を粘着部74に置き替えた構成の引張装置72を備えたものである。
【0078】
なお、図4において、実施例1の経皮投与装置10の構成と同一の構成部分には、図1と同一の符号を付することにより説明を省略するものとする。
【0079】
この経皮投与装置70は、イオントフォレーシス装置11と引張り装置72とを有してなり、この引張り装置72は、イオントフォレーシス装置11の外周を囲む枠体62と、この枠体62に回転自在に支持されたローラ64Bと、このローラ64Bを回転駆動させるモータ66Bと、前端面20A、40Aを間にして、ローラ64Bと反対側に配設され、皮膚に密着する粘着部74と、を備えて構成されている。粘着部74は、前端面20A、40Aとほぼ面一とされている。
【0080】
この実施例2に係る経皮投与装置70においては、皮膚Sを、前端面20A、40Aの一方側で粘着部74により固定した状態で、反対側から、ローラ64Bの回転により引張ると、皮膚Sは、前端面20A、40Aと平行な平面状になり、作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40の前端面20A、40Aは、皮膚Sに容易に密着することになる。
【実施例3】
【0081】
次に、図5、図6を参照して実施例3に係る経皮投与装置80について説明する。
【0082】
この実施例3においても、実施例1の経皮投与装置10の構成と同一構成部分には同一符号を付することによって説明を省略するものとする。
【0083】
この実施例3に係る経皮投与装置80は、イオントフォレーシス装置11と、引張装置82とからなり、この引張装置82は、イオントフォレーシス装置11における作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40の前端面20A、40Aを囲んで、回転軸がほぼ環状に連続するように配置された複数個(図5においては6個)のローラ82A〜82Fと、これらローラ82A〜82Fを回転させる駆動部であるモータ84とを備えて構成されている。ローラ82A〜82Fの前端部と前端面20A、40Aとは、ほぼ面一とされている。
【0084】
環状に配置されたローラ82A〜82Fは、回転軸方向の両端部において回転を伝達するように、例えばピアノ線、ねじりコイルばね等からなる可撓性連結部材86により順次連結されている。モータ84は、最終端のローラ82Fに設けられた可撓性連結部材86にその出力軸が連結されている。
【0085】
図6において符号88は、ローラ82Aと82Bの間、ローラ82Bと82Cの間、ローラ82Cと82Dの間、ローラ82Dと82Eの間、ローラ82Eと82Fの間における可撓性連結部材86を回転自在に支持する軸受部を示す。軸受部86及びモータ84は円形の枠体89から放射方向に突出して設けられたステー89Aの先端に支持されている。
【0086】
イオントフォレーシス装置11は、実施例1と異なり外形が円形であるが構成は同一であるので実施例1と同一の符号で示すものとする。
【0087】
この実施例3においては、モータ84の出力軸を、図6に示されるように時計回りに回転させると、全てのローラ82A〜82Fが、イオントフォレーシス装置11の中心から外側に皮膚Sを引張る方向に回転されることになるので、皮膚Sは、前端面20A、40Aの前面位置では平面状となる。
【実施例4】
【0088】
次に、図7及び8に示される本発明の実施例4に係る経皮投与装置90について説明する。
【0089】
この経皮投与装置90は、イオントフォレーシス装置11と、前端が開閉自在となるように連結された第1のレバー92及び第2のレバー94からなる引張り装置91を備えて構成されている。
【0090】
第1のレバー92及び第2のレバー94は、図9において上端で連結された火挟み形状であって、第1のレバー92は、枠体62に連結されると共に、前端に、枠体62の図7、図8において左側位置で接触部材92Aを支持している。接触部材92は、その前端面(図7において下端面)が、前端面20A、40Aとほぼ面一となるように第1のレバー92に取付けられている。第2のレバー94の前端にも、前記接触部材92Aと同様の接触部材94Aが前端面20A、40Aとほぼ面一に取付けられている。
【0091】
接触部材92A、94Aは、少なくともその皮膚S側の端面が皮膚に対して粘着性を有している。図7、図8の符号96は第1のレバー92及び第2のレバー94の間に設けられ、これらを拡開方向に付勢する圧縮コイルばねである弾性部材96を示す。
【0092】
この実施例4に係る経皮投与装置90は、操作者が、第1のレバー92及び第2のレバー94を、その前端が閉じる方向に、弾性部材96の拡開方向の力に抗して、付勢しておいて、イオントフォレーシス装置11の前端面20A、40Aを皮膚Sに密着させる際に、接触部材92A、94Aを皮膚Sに接触させて第1のレバー92と第2のレバー94間が開くようにこれらを開放すると、接触部材92A、94A間も開き、これらに接触している皮膚Sは引張られて平面状となる。従って、この平面状となった皮膚Sに前端面20A、40Aを押し付けることができる。
【0093】
なお、この実施例4において、引張り装置91は火挟み状に連結された第1のレバー92と第2のレバー94とから構成されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば図9に示されるように、第1のレバー93と第2のレバー95とをヒンジ97で交差させて鋏形状とし、接触部材92A、94Aが開閉できるようにしてもよい。
【実施例5】
【0094】
上記実施例1〜実施例4は、いずれもイオントフォレーシスによって薬物イオンを経皮投与するものであるが、本発明はこれに限定されるものでなく、前記イオントフォレーシス装置11に代えて、例えば図10に示されるようなマイクロニードル装置98と、前出の引張装置60、72、82あるいは91とから経皮投与装置100を構成してもよい。
【0095】
マイクロニードル装置98は、マイクロニードル基材102の表面に設けられた多数のマイクロニードル104からなるマイクロニードルアレイを有し、マイクロニードル104の前端が皮膚Sの角質層を貫通して入り込んだときに、その前端あるいは側面に形成された溝から薬液が投入されるものである。
【0096】
本発明に適用する場合は、上記引張り装置60、72、82又は91により皮膚Sを引張ってからマイクロニードル基材102を押し込んだとき、マイクロニードル104が皮膚Sの角質層を通って刺し込むように構成する。
【実施例6】
【0097】
次に、図11〜図13に示される実施例6に係る経皮投与装置110について説明する。
【0098】
この経皮投与装置110は、イオントフォレーシス装置であって、複数(実施例5においては9個)の球状作用側電極構造体112から構成されている作用側電極構造体111と、これらの球状作用側電極構造体112の上端部に同時に接触して、これらを直流電源12に電気的に接続させつつ、一定範囲で揺動させる駆動装置113と、非作用側電極構造体114とを備えて構成されていて、球状作用側電極構造体112の前面(球面の一部)を、皮膚Sに押しつけて前面との接触範囲で皮膚Sを引張るようにしたものである。
【0099】
各球状作用側電極構造体112は、前側(図11、図13において下側)に、円錐角にして約90°の球面の一部の形状であり、皮膚又は粘膜に接触可能な接触球面116を有し、又、後側(図11、図13において上側)には、円錐角にして約90°の球面の一部の形状である球面電極118を備えて構成されている。
【0100】
球状作用側電極構造体112は、全体が中空の球状であって、例えば樹脂からなる球状殻112Aの内側空間は、電極側イオン選択性膜120によって図において上下に二等分されている。又、接触球面116の部分は、例えば多孔性樹脂層122と、その外側を覆って皮膚又は粘膜に接触する前端側イオン選択性膜124とから構成されている。球面電極118は、球殻112Aの内周面にまで延在され、電極側イオン選択性膜120の、図において上側の空間は電解液を保持する電解液保持部126とされ、又電極側イオン選択性膜120と多孔性樹脂層122との間の半球状の空間は、投与される薬物イオンとなる薬物を保持する薬液保持部128とされている。
【0101】
9個の球状作用側電極構造体112は、図12に示されるように、四角形枠状のガイド部材126の内側に配置されて、それぞれの下側面である接触球面116が皮膚又は粘膜に接触できるようにされている。又、これら球状作用側電極構造体112は、それぞれが、一定範囲で変位可能となるように弾性部材128によって相互に連結されている。
【0102】
駆動装置114は、前記ガイド部材126によって囲まれた領域に配置された9個の球状作用側電極構造体112の上端面の球面電極118に同時に接触可能な駆動板114Aと、この駆動板114Aを、その板面と平行な面内で2次元方向に駆動する駆動部114Bとから構成されている。駆動部114Bは、例えば揺動モータから構成されている。
【0103】
この実施例5に係る経皮投与装置110は、9つの球状作用側電極構造体112が、各々接触球面116が皮膚Sに接触するように配置され、皮膚Sに接触した状態で、駆動部114Bにより駆動板114Aを2次元方向に駆動すると、球状作用側電極構造体112は相互に一定距離を保ちつつ僅かに転がり、そのとき、皮膚に接触球面116が食い込んで、少なくともこの接触球面116に接触した部分での皮膚Sは、皺があっても引き伸ばされて、接触球面116の前端側イオン選択性膜124が皮膚Sに密着されることになる。なお、接触球面116により引き伸ばされた部分は皺状態となって、各接触球面116の間に偏ることになる。
【0104】
図11及び図12に示される経皮投与装置110は、作用側電極構造体を、球状作用側電極構造体112から構成し、非作用側電極構造体40は、球状作用側電極構造体112の近傍位置で皮膚Sに接触される構成となっているが、これは、例えば、図14に示される実施例6の変形例のように、非作用側電極構造体を、複数の、球状非作用側電極構造体132から構成し、これらを、球状作用側電極構造体112と交互にあるいは隣接して並べて配置するようにしてもよい。
【0105】
球状非作用側電極構造体132は、球状作用側電極構造体112と、直径及び構造がほぼ同一とされ、図15に示されるように、接触球面134及び球面電極136とを、その前端及び後端に備えた中空球状とされ、内部は、電極側イオン選択性膜138によって2分割され、その電極側は電極側電解液保持部140、前側は先端側電解液保持部142とされ、接触球面134は、先端側イオン選択性膜144の外側面から構成され、このイオン選択性膜144は、球殻132Aの一部を構成する多孔性樹脂層148によって支持されている。
【0106】
又、この変形例における駆動板150は、前記球状作用側電極構造体112と球状非作用側電極構造体132の配置に合わせて、それぞれの球面電極118と136とが直流電源12の異なる電極に接続されるように構成されている。
【0107】
上記実施例1〜5において、各引張り装置60、72、82、91は、作用側電極構造体20及び非作用側電極構造体40の前端面20A、40Aの両側から皮膚Sを引張るように構成されているが、本発明はこれに限定されるものでなく、引張り装置は、少なくとも作用側電極構造体の前端面40Aの両側から皮膚Sを引張るものであればよい。
【0108】
又、上記実施例1〜3における引張り装置は、ローラをこのローラと別体として設けられたモータによって駆動される構成であるが、本発明はこれに限定されるものでなく、ローラは、内部に回転子を有し、ローラ状の外殻が回転するモータローラとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実施例1に係る経皮投与装置を示す斜視図
【図2】図1のII−II線に沿う側面図
【図3】同実施例1におけるイオントフォレーシス装置を拡大して示す断面図
【図4】同実施例2に係る経皮投与装置を示す図1と同様の断面図
【図5】同実施例3に係る経皮投与装置を示す平面図
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図
【図7】同実施例4に係る経皮投与装置を示す正面図
【図8】同平面図
【図9】実施例4の変形例を示す正面図
【図10】マイクロニードル装置を用いた実施例5に係る経皮投与装置を示す略示断面図
【図11】同実施例6に係る経皮投与装置を示す一部断面とした略示正面図
【図12】同裏面図
【図13】同実施例6における球状作用側電極構造体を拡大して示す断面図
【図14】同実施例6の変形例を示す図12と同様の裏面図
【図15】同変形例における球状非作用側電極構造体を拡大して示す断面図
【符号の説明】
【0110】
10、70、80、90、100、110…経皮投与装置
11…イオントフォレーシス装置
12…直流電源
20…作用側電極構造体
20A、40A…前端面
40…非作用側電極構造体
60、72、82、91…引張り装置
62…枠体
64A、64B、82A〜82F…ローラ
66A、66B、84…モータ
74…粘着部
86…可撓性連結部材
92…第1のレバー
92A、94A…接触部材
94…第2のレバー
96、128…弾性部材
98…マイクロニードル装置
112…球状作用側電極構造体
114…駆動装置
116、134…接触球面
118、136…球面電極
132…球状非作用側電極構造体
S…皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投与部の前端面を皮膚に接触させて、イオントフォレーシス及びマイクロニードルの一方により、前記前端面から薬物イオン又は薬物を、皮膚を介して、生体に投与するための経皮投与装置であって、
前記前端面と平行に、皮膚を引張り可能な引張装置を、前記投与部と連結して設けたことを特徴とする経皮投与装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記引張装置は、
前記投与部における前記前端面の両側に配設され、外周が皮膚と接触して、これを引張り可能な一対のローラと、
皮膚を前記前端面の両側に引張る方向に、前記一対のローラを回転させる駆動部と、
を有してなることを特徴とする経皮投与装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記引張装置は、前記投与部における前記前端面の一方の側方に配設され、外周が皮膚と接触して回転することにより皮膚を引張り可能なローラと、
このローラを、皮膚を引張る方向に回転するように駆動する駆動部と、
前記前端面を間にして、前記ローラと反対側に配設され、皮膚に密着する粘着部と、
を有してなることを特徴とする経皮投与装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記引張装置は、前記前端面を囲んで、回転軸がほぼ環状に連続するように配置された複数個のローラと、
前記ローラを回転させる駆動部と、
を有することを特徴とする経皮投与装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記環状に配置されたローラを、回転軸方向の両端部において回転を伝達するように連結する可撓性連結部材を設けたことを特徴とする経皮投与装置。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
前記ローラと前記駆動部とはモータローラから構成され、前記ローラは、前記モータローラの回転可能な外殻から構成されていることを特徴とする経皮投与装置。
【請求項7】
投与部の前端面を皮膚に接触させて、イオントフォレーシス及びマイクロニードルの一方により、前記前端面から薬物イオン又は薬物を、皮膚を介して、生体に投与する経皮投与装置であって、
前端が開閉自在となるように連結された第1のレバー及び第2のレバーからなる引張装置を有してなり、
前記第1のレバー及び第2のレバーの一方は、前記投与部に連結され、
前記第1のレバー及び第2のレバーは、各々の前端において、皮膚に粘性をもって接触する接触部を有し、
前記投与部は、前記前端面が、前記第1のレバー及び第2のレバーの前端の接触部間にあるように配置され、
前記第2のレバーを第1のレバーに対して拡開することにより、前記第1のレバーの前端の接触部と第2のレバーの前端の接触部間において、皮膚を引張り可能としたことを特徴とする経皮投与装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記引張装置は、前記第1のレバー及び第2のレバーの前端が拡開する方向に、これらを付勢する弾性部材を有することを特徴とする経皮投与装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかにおいて、
前記投与部が、前記引張装置に対して着脱自在に構成されたことを特徴とする経皮投与装置。
【請求項10】
イオントフォレーシスにより、薬物イオンを、皮膚又は粘膜を介して、生体に投与するために使用される作用側電極構造体及び非作用側電極構造体と、これらの作用側電極構造体及び非作用側電極構造体に接続される直流電源と、を有してなる経皮投与装置であって、
前記作用側電極構造体は、弾性連結部材により相互に一定範囲で相対変位可能に連結された、ほぼ球形の複数個の球状作用側電極構造体からなり、各球状作用側電極構造体は、前側に皮膚又は粘膜への接触球面を有し、後側に球面電極を有してなり、
前記複数の球状態作用側電極構造体の球面電極に同時に接触して、この複数の球状作用側電極構造体を前記直流電源の一方の電極に電気的に接続させつつ、一定範囲で揺動させる駆動装置を設けたことを特徴とする経皮投与装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記非作用側電極構造体は、弾性連結部材により相互に一定範囲で相対変位可能に連結された、前記球状作用側電極構造体と同一直径の複数個の球状非作用側電極構造体からなり、各球状非作用側電極構造体は、前側に皮膚又は粘膜への接触球面を有し、後側に球面電極を有してなり、且つ、前記複数個の球状作用側電極構造体の間にこれと交互に、又は、隣接して配置され、
前記駆動装置は、前記複数の球状非作用側電極構造体の球面電極に同時に接触して、この複数の球状非作用側電極構造体の球面電極を前記直流電源の他方の電極に電気的に接続させつつ、一定範囲で揺動させるようにされたことを特徴とする経皮投与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−289482(P2007−289482A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121895(P2006−121895)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(504153989)トランスキュー・テクノロジーズ 株式会社 (83)
【Fターム(参考)】