説明

経路制御プロトコルに基づいて障害リンクを検出する方法、ノード装置及びプログラム

【課題】経路制御プロトコルに基づく経路更新メッセージを通常シーケンスで監視し、少ない計算量で且つリアルタイムに障害リンクを検出する方法等を提供する。
【解決手段】最初に、パスリストを用いて障害候補リンクを選択する。次に、障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出し、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する。次に、最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する。そして、他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとしてステップを繰り返し、検出されなかった場合、障害候補リンクを障害リンクとして確定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路制御プロトコルに基づいて障害リンクを検出する方法、ノード装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットでは、経路制御プロトコルを用いて、ノード装置(例えばルータ)がパケットを適切に中継転送する。代表的な経路制御プロトコルとして、インターネット上で組織間の経路情報を交換する「BGP(Border Gateway Protocol)」がある。BGP対応のノード装置には、インターネットにおける唯一の「AS(Autonomous System)番号」が付与される。AS番号は、共通ポリシ及び同一管理運用下にあるノード装置の集合毎に付与される。AS番号は、原則として2バイト(現在は4バイト化)であって、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)によって管理されている。
【0003】
このような経路制御プロトコルに基づくネットワークについて、障害リンクを検出するために、従来、ネットワークにプローブ装置が設置されていた。そのプローブ装置が、多数のノード間を流れる経路更新メッセージを監視することによって、障害リンクを解析する。特に、経路更新メッセージを、大量に収集し且つクラスタリングすることによって、障害リンクを解析する技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、障害発生の前後の経路更新メッセージに含まれるプレフィックス及びASパスリストが用いられる。ASパスリストの変化を解析することによって、同時間帯に変化した多数のプレフィックスをクラスタリングする。これによって、共通のASパスのリンクを抽出し、障害リンクを検出する。
【0004】
図1は、従来技術におけるネットワーク構成図及びテーブルである。
【0005】
図1によれば、BGPを用いて、AS番号を有する9台のノード装置1(AS10〜AS90)が相互に接続されている。各ノード装置は、送信元アドレス(送信元ネットワークプレフィックス)及びAS番号を含むUPDATEメッセージを、定期的にブロードキャストで送信する。UPDATEメッセージには、以下のパラメータが含まれる。
(1)プレフィックス
(2)メッセージ種別
(3)AS_PATH属性
「プレフィックス」は、IPアドレス及びサブネットマスクの組(xxx.xxx.xxx.xxx/xx)であって、送信元ネットワークアドレス(又は送信元ノード装置のアドレス)を表す。
「メッセージ種別」は、経路更新(Announce)を表す。
「AS_PATH属性」は、プレフィックスからの到達経路のパスリスト(AS番号の列)を表す。
【0006】
各ノード装置は、UPDATEメッセージを受信した際に、そのUPDATEメッセージのパスリストに、更に当該ノード装置のAS番号を含めて、そのUPDATEメッセージを中継転送する。これらUPDATEメッセージは、観測ノード装置AS10によって受信される。
【0007】
観測ノード装置は、RIB(Routing Information Base)と称されるパス(経路)テーブルと、リンクテーブルとを有する。ここで、「パス」とは、送信元ノード装置と宛先ノード装置との間の経路であって、中継ノード装置を介した接続を意味する。また、「リンク」とは、直接的に接続される隣接ノード装置間の接続を意味する。
【0008】
パステーブルは、1つのパスを、複数のリンクのリストによって構成する。パステーブルは、少なくとも、送信元アドレスの集合を表す「プレフィックス」と、そのプレフィックスに到達するための中継ノード装置の「AS番号のパスリスト」とが含まれる。「プレフィックス」とは、IPアドレスとサブネットマスクのビット数との組を表す。
【0009】
パステーブルは、ノード装置間で、「経路更新メッセージ(UPDATE)」を定期的に交換することによって更新される。図1によれば、パステーブルには、受信したUPDATEメッセージのプレフィックス毎に、ASパスリストが記録される。
【0010】
また、リンクテーブルには、リンク毎に、評価時間Tにおける、UPDATEメッセージを受信したプレフィックスの数が表されている。ここで、リンクのプレフィックス数が0になった場合、障害リンクと判定される。図1によれば、リンク(AS20,AS30)は、プレフィックス数3である。また、リンク(AS30,AS40)、リンク(AS30,AS50)及びリンク(AS30,AS60)は、プレフィックス数1である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−135756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載された技術によれば、大量の経路更新メッセージをデータベースに収集した上で、クラスタリング(例えばデンドログラム)のための複雑なアルゴリズムを必要とする。そのために、ネットワークの規模に応じて、膨大な計算量を必要とし、リアルタイムに障害リンクを検出することはできなかった。また、複数の障害リンクが同一時間帯に発生した場合、クラスタリングによって特定の障害リンクを検出できないという課題も生じていた。そのために、短い時間帯に区切って、クラスタリングを実行し、障害リンクを検出していた。
【0013】
図2は、従来技術における障害リンクを含むネットワーク構成図及びテーブルである。
【0014】
図2によれば、リンク(AS20,AS30)のみに、実際に障害が発生している。この場合、ノード装置AS40,AS50,AS60からのUPDATEメッセージが受信できなくなる。最初に、ノード装置AS40からのUPDATEメッセージが受信できなくなった場合、リンク(AS30,AS40)のプレフィックス数が0に減分され、リンク(AS20,AS30)のプレフィックス数が2に減分される。次に、ノード装置AS50からのUPDATEメッセージが受信できなくなった場合、リンク(AS30,AS50)のプレフィックス数が0に減分され、リンク(AS20,AS30)のプレフィックス数が1に減分される。更に、ノード装置AS60からのUPDATEメッセージが受信できなくなった場合、リンク(AS30,AS60)のプレフィックス数が0に減分され、リンク(AS20,AS30)のプレフィックス数が0に減分される。プレフィックス数が0となったリンクは、障害リンクとして検出される。
【0015】
図2からも明らかなとおり、リンク(AS20,AS30)にしか障害が発生していないにも関わらず、リンク(AS30,AS40)、リンク(AS30,AS50)及びリンク(AS30,AS60)も、障害リンクとして検出される。即ち、観測ノード装置から見て、実際の障害リンクよりも上流のリンクも障害リンクとして検出してしまう。
【0016】
また、図2によれば、リンクテーブルに記録されるプレフィックス数は、観測ノード装置から見て、遠いリンクから順に0となっていく。
【0017】
そこで、本発明は、経路制御プロトコルに基づく経路更新メッセージを通常シーケンスで監視し、実際に発生した障害リンクを特定することができる方法、ノード装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、固有識別番号を有する複数のノード装置が相互に接続され、経路制御プロトコルの経路更新メッセージを送受信するネットワークであって、
各ノード装置が、送信元アドレス及び固有識別番号を含む経路更新メッセージを定期的にブロードキャストで送信し、
各ノード装置が、受信した経路更新メッセージに含まれる、中継ノード装置の固有識別番号の連続からなるパスリストに、更に当該ノード装置の固有識別番号を含めて、当該経路更新メッセージを中継転送する
ノード装置の障害リンク検出方法において、
送信元アドレス毎のパスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを障害候補リンクとして選択する第1のステップと、
障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出し、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する第2のステップと、
最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する第3のステップと、
他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとして第2のステップへ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、障害候補リンクを障害リンクとして確定する第4のステップと
を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の障害リンク検出方法における他の実施形態によれば、
経路制御プロトコルは、BGP(Border Gateway Protocol)であり、
固有識別番号は、AS(Autonomous System)番号であり、
経路更新メッセージは、BGPのUPDATE(Announce)であり、
経路更新メッセージの送信元アドレスは、IPアドレスとサブネットマスクのビット数との組からなるプレフィックスであり、
経路更新メッセージのパスリストは、AS_PATH属性に含まれる
ことも好ましい。
【0020】
本発明の障害リンク検出方法における他の実施形態によれば、
第1の所定時間α及び第2の所定時間βは、障害リンクの発生頻度に応じて、及び/又は、経路更新メッセージの送信時間間隔に応じて制御されることも好ましい。
【0021】
本発明によれば、経路制御プロトコルの経路更新メッセージを送受信するネットワークに接続された、固有識別番号を有するノード装置であって、
送信元アドレス及び固有識別番号を含む経路更新メッセージを定期的にブロードキャストで送信する経路更新メッセージ送信手段と、
受信した経路更新メッセージに含まれる、中継ノード装置の固有識別番号の連続からなるパスリストに、更に当該ノード装置の固有識別番号を含めて、当該経路更新メッセージを中継転送する中継転送手段と
を有するノード装置において、
送信元アドレス毎のパスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを障害候補リンクとして選択する障害候補リンク選択手段と、
障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出し、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する上流障害リンク検出手段と、
最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する下流障害リンク検出手段と、
他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとして上流障害リンク検出手段へ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、障害候補リンクを障害リンクとして確定する障害リンク確定手段と
を有することを特徴とする。
【0022】
本発明のノード装置における他の実施形態によれば、
経路制御プロトコルは、BGPであり、
固有識別番号は、AS番号であり、
経路更新メッセージは、BGPのUPDATE(Announce)であり、
経路更新メッセージの送信元アドレスは、IPアドレスとサブネットマスクのビット数との組からなるプレフィックスであり、
経路更新メッセージのパスリストは、AS_PATH属性に含まれる
ことも好ましい。
【0023】
本発明のノード装置における他の実施形態によれば、第1の所定時間α及び第2の所定時間βを、障害リンクの発生頻度に応じて、及び/又は、経路更新メッセージの送信時間間隔に応じて制御する判定時間制御手段を更に有することも好ましい。
【0024】
本発明によれば、固有識別番号を有する複数のノード装置が相互に接続され、経路制御プロトコルの経路更新メッセージを送受信するネットワークであって、
各ノード装置が、送信元アドレス及び固有識別番号を含む経路更新メッセージを定期的にブロードキャストで送信し、
各ノード装置が、受信した経路更新メッセージに含まれる、中継ノード装置の固有識別番号の連続からなるパスリストに、更に当該ノード装置の固有識別番号を含めて、当該経路更新メッセージを中継転送する
ノード装置に搭載されたコンピュータを実行させる障害リンク検出プログラムであって、
送信元アドレス毎のパスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを障害候補リンクとして選択する第1のステップと、
障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出し、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する第2のステップと、
最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する第3のステップと、
他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとして第2のステップへ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、障害候補リンクを障害リンクとして確定する第4のステップと
してコンピュータを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の障害リンク検出方法、ノード装置及びプログラムによれば、上流障害リンクと下流障害リンクとを別々に検出することによって、経路制御プロトコルに基づく経路更新メッセージを通常シーケンスで監視し、実際に発生した障害リンクを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術におけるネットワーク構成図及びテーブルである。
【図2】従来技術における障害リンクを含むネットワーク構成図及びテーブルである。
【図3】本発明におけるノード装置のフローチャートである。
【図4】図3のS31における時刻T1のネットワーク構成図である。
【図5】図3のS32における時刻T1+αのネットワーク構成図である。
【図6】図3のS33における時刻T2+βのネットワーク構成図である。
【図7】本発明における障害リンクを含むネットワーク構成図である。
【図8】本発明におけるノード装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
本発明によれば、観測ノード装置から見て、遠いリンクを「上流リンク」と定義し、近いリンク「下流リンク」と定義する。また、「リンク(X,Y)」記載した場合、Xを下流ノード装置と定義し、Yを上流ノード装置と定義する。
【0029】
図2からも明らかなとおり、リンクテーブルに記録されるプレフィックス数は、観測ノード装置から見て、遠いリンクから順に0となっていく。本発明によれば、上流障害リンクと下流障害リンクとを別々に検出することによって、実際に発生した障害リンクを特定する。
【0030】
図3は、本発明におけるノード装置のフローチャートである。
【0031】
(S31)送信元アドレス毎のパスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを「障害候補リンク」として選択する。
【0032】
図4は、図3のS31における時刻T1のネットワーク構成図である。
【0033】
図4によれば、リンク(AS20,AS30)は、リンク(AS30,AS40)に対して、下流リンクとなる。観測ノード装置は、当初、ノード装置AS40,AS50,AS60からのUPDATEメッセージを受信し続けていたとする。これによって、パステーブルには、ノード装置AS40からのプレフィックス数が記録されている。
【0034】
その後、観測ノード装置は、ノード装置AS40からのUPDATEメッセージを受信できなくなったとする。このとき、パステーブルについて、ノード装置AS40のプレフィックス(送信元アドレス)に対応するASパスリストは、「不用」に設定される。また、リンクテーブルについて、リンク(AS30,AS40)のプレフィックス数が0に減分され、リンク(AS20,AS30)のプレフィックス数が2に減分される。リンク(AS30,AS40)には、障害が発生したものとして、障害検出時刻T1が記録される。そして、リンク(AS30,AS40)は、「障害候補リンク」として選択される。
【0035】
(S32)障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出する。また、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する。
【0036】
図5は、図3のS32における時刻T1+αのネットワーク構成図である。
【0037】
図5によれば、観測ノード装置は、リンク(AS30,AS40)(障害候補リンク)の障害検出時刻T1から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置AS30を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出する。
【0038】
図5によれば、時刻T1〜時刻T1+αに、ノード装置AS50からのUPDATEメッセージと、ノード装置AS60からのUPDATEメッセージとが、受信できなくなったとする。このとき、パステーブルについて、ノード装置AS50及びノード装置AS60のプレフィックスに対応するASパスリストは、「不用」に設定される。また、リンクテーブルについて、(AS30,AS50)のプレフィックス数が0に減分され、リンク(AS30,AS60)のプレフィックス数が0になり、リンク(AS20,AS30)のプレフィックス数が0に減分される。これによって、リンク(AS30,AS50)、リンク(AS30,AS60)及びリンク(AS20,AS30)が、障害リンクとして検出される。
【0039】
その中で、ノード装置AS30を、下流ノード装置とするリンクとしては、リンク(AS30,50)及びリンク(AS30,60)がある。結局、リンク(AS30,AS50)及びリンク(AS30,AS60)が検出される。
【0040】
次に、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する。図4によれば、リンク(AS30,60)の障害を検出した時刻T2が、最新障害検出時刻であるとする。
【0041】
(S33)最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する。
【0042】
図6は、図3のS33における時刻T2+βのネットワーク構成図である。
【0043】
図6によれば、最新障害検出時刻T2から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、リンク(AS30,AS40)(障害候補リンク)の下流ノード装置AS30を、上流ノード装置とする他の障害リンク(AS20,AS30)を検出する。ここで、図6によれば、最新障害検出時刻T2と、障害リンク(AS20,AS30)の障害検出時刻とは、同じである。
【0044】
(S34)他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとしてS32へ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、障害候補リンクを障害リンクとして確定する。
【0045】
図7は、図3のS34によって確定した障害リンクを含むネットワーク構成図である。
【0046】
図7によれば、リンク(AS20,AS30)を、障害候補として、S32〜S33の処理を実行するが、リンク(AS20,AS30)以外に、他の障害リンクは検出されない。これによって、リンク(AS20,AS30)が最も下流にあり、当該リンク(AS20,AS30)に障害が発生したことを特定することができる。
【0047】
図4〜図6について、以下のような時刻の関係が成立する。
最初の障害候補リンクの障害発生時刻:T1
上流障害リンクの最新障害発生時刻: T2
下流障害リンクの障害発生時刻: T3
T1≦T3、T2≦T3
【0048】
仮に、T1=T2=T3の場合、本発明によって確定される障害リンクは、同様に、リンク(20,30)である。
また、仮に、以下のような時刻関係であっても、本発明によって確定される障害リンクは、同様に、リンク(20,30)である。
T1<T3、T2<T3、T1<T2
T2≦T1+α、T3≦T2+α+β
尚、図4〜図6は、T1<T2=T3の関係にある。
【0049】
ここで、第1の所定時間α及び第2の所定時間βは、障害リンクの発生頻度に応じて、及び/又は、UPDATEメッセージの送信時間間隔に応じて制御されるものであってもよい。例えば、障害リンクの発生頻度が相対的に多い場合、及び/又は、UPDATEメッセージの送信時間間隔が相対的に短い場合、α及びβは相対的に短く設定される。
【0050】
図8は、本発明におけるノード装置の機能構成図である。
【0051】
図8によれば、ノード装置1は、中継転送部10と、経路更新メッセージ送信部11と、経路更新メッセージ受信監視部12と、パステーブル13と、リンクテーブル14と、障害候補リンク選択部15と、上流障害リンク検出部16と、下流障害リンク検出部17と、障害リンク確定部18と、判定時間制御部19とを有する。これら機能構成部は、ノード装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。尚、中継転送部10を除くこれらの機能を、パステーブル13及びリンクテーブル14を予め蓄積した障害リンク検出装置2に搭載することもできる。これによって、予め蓄積されたログファイルを用いて、障害リンクを特定することもできる。
【0052】
中継転送部10は、UPDATE(Announce)メッセージを受信した際に、そのパスリストに更に当該ノード装置のAS番号を含めて、そのUPDATEメッセージを中継転送する。
【0053】
経路更新メッセージ送信部11は、BGPに基づいて、プレフィックス(送信元アドレス)及びAS番号(固有識別番号)を含むUPDATEメッセージを、定期的にブロードキャストで送信する。
【0054】
経路更新メッセージ受信監視部12は、中継転送部10から抽出したBGPのUPDATEメッセージを、パステーブル13へ出力する。
【0055】
パステーブル13は、UPDATEメッセージの送信元アドレス毎に、中継されたノード装置の固有識別番号の連続からなるパスリストを記録する。
【0056】
リンクテーブル14は、隣接するノード装置間のリンク毎に、パステーブル13に記録されたパスリストが通過するプレフィックス数を記録する。
【0057】
障害候補リンク選択部15は、送信元アドレス毎のパスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを障害候補リンクとして選択する。
【0058】
上流障害リンク検出部16は、障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出する。そして、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する。
【0059】
下流障害リンク検出部17は、最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する。
【0060】
障害リンク確定部18は、他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとして上流障害リンク検出部16へ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、障害候補リンクを障害リンクとして確定する。
【0061】
判定時間制御部19は、第1の所定時間α及び第2の所定時間βを、障害リンクの発生頻度に応じて、及び/又は、前記経路更新メッセージの送信時間間隔に応じて制御する。
【0062】
以上、詳細に説明したように、本発明の障害リンク検出方法、ノード装置及びプログラムによれば、上流障害リンクと下流障害リンクとを別々に検出することによって、経路制御プロトコルに基づく経路更新メッセージを通常シーケンスで監視し、実際に発生した障害リンクを特定することができる。
【0063】
本発明によれば、観測ノード装置で計測したBGPのUPFATEメッセージを用いて、リンクを通過するプレフィックス数を監視し、上流障害リンクと下流障害リンクとの時刻差から、下流に生じた障害リンクを特定することができる。
【0064】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0065】
1 ノード装置
10 中継転送部
11 経路更新メッセージ送信部
12 経路更新メッセージ受信監視部
13 パステーブル
14 リンクテーブル
15 障害候補リンク選択部
16 上流障害リンク検出部
17 下流障害リンク検出部
18 障害リンク確定部
19 判定時間制御部
2 障害リンク検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有識別番号を有する複数のノード装置が相互に接続され、経路制御プロトコルの経路更新メッセージを送受信するネットワークであって、
各ノード装置が、送信元アドレス及び固有識別番号を含む経路更新メッセージを定期的にブロードキャストで送信し、
各ノード装置が、受信した前記経路更新メッセージに含まれる、中継ノード装置の固有識別番号の連続からなるパスリストに、更に当該ノード装置の固有識別番号を含めて、当該経路更新メッセージを中継転送する
前記ノード装置の障害リンク検出方法において、
送信元アドレス毎の前記パスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを障害候補リンクとして選択する第1のステップと、
前記障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、前記障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出し、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する第2のステップと、
前記最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、前記障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する第3のステップと、
他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとして第2のステップへ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、前記障害候補リンクを障害リンクとして確定する第4のステップと
を有することを特徴とする障害リンク検出方法。
【請求項2】
前記経路制御プロトコルは、BGP(Border Gateway Protocol)であり、
前記固有識別番号は、AS(Autonomous System)番号であり、
前記経路更新メッセージは、BGPのUPDATE(Announce)であり、
前記経路更新メッセージの前記送信元アドレスは、IPアドレスとサブネットマスクのビット数との組からなるプレフィックスであり、
前記経路更新メッセージの前記パスリストは、AS_PATH属性に含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載のノード装置の障害リンク検出方法。
【請求項3】
第1の所定時間α及び第2の所定時間βは、障害リンクの発生頻度に応じて、及び/又は、前記経路更新メッセージの送信時間間隔に応じて制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の障害リンク検出方法。
【請求項4】
経路制御プロトコルの経路更新メッセージを送受信するネットワークに接続された、固有識別番号を有するノード装置であって、
送信元アドレス及び固有識別番号を含む経路更新メッセージを定期的にブロードキャストで送信する経路更新メッセージ送信手段と、
受信した前記経路更新メッセージに含まれる、中継ノード装置の固有識別番号の連続からなるパスリストに、更に当該ノード装置の固有識別番号を含めて、当該経路更新メッセージを中継転送する中継転送手段と
を有するノード装置において、
送信元アドレス毎の前記パスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを障害候補リンクとして選択する障害候補リンク選択手段と、
前記障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、前記障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出し、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する上流障害リンク検出手段と、
前記最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、前記障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する下流障害リンク検出手段と、
他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとして前記上流障害リンク検出手段へ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、前記障害候補リンクを障害リンクとして確定する障害リンク確定手段と
を有することを特徴とするノード装置。
【請求項5】
前記経路制御プロトコルは、BGPであり、
前記固有識別番号は、AS番号であり、
前記経路更新メッセージは、BGPのUPDATE(Announce)であり、
前記経路更新メッセージの前記送信元アドレスは、IPアドレスとサブネットマスクのビット数との組からなるプレフィックスであり、
前記経路更新メッセージの前記パスリストは、AS_PATH属性に含まれる
ことを特徴とする請求項4に記載のノード装置。
【請求項6】
第1の所定時間α及び第2の所定時間βを、障害リンクの発生頻度に応じて、及び/又は、前記経路更新メッセージの送信時間間隔に応じて制御する判定時間制御手段を更に有することを特徴とする請求項4又は5に記載のノード装置。
【請求項7】
固有識別番号を有する複数のノード装置が相互に接続され、経路制御プロトコルの経路更新メッセージを送受信するネットワークであって、
各ノード装置が、送信元アドレス及び固有識別番号を含む経路更新メッセージを定期的にブロードキャストで送信し、
各ノード装置が、受信した前記経路更新メッセージに含まれる、中継ノード装置の固有識別番号の連続からなるパスリストに、更に当該ノード装置の固有識別番号を含めて、当該経路更新メッセージを中継転送する
ノード装置に搭載されたコンピュータを実行させる障害リンク検出プログラムであって、
送信元アドレス毎の前記パスリストを用いて障害リンク及び障害検出時刻を検出し、その障害リンクを障害候補リンクとして選択する第1のステップと、
前記障害候補リンクの障害検出時刻から第1の所定時間α内に発生した他の障害リンクであって、且つ、前記障害候補リンクの下流ノード装置を、下流ノード装置とする他の障害リンクを検出し、検出された他の障害リンクの中で、最新障害検出時刻を検出する第2のステップと、
前記最新障害検出時刻から第2の所定時間β内に発生した他の障害リンクであって、且つ、前記障害候補リンクの下流ノード装置を、上流ノード装置とする他の障害リンクを検出する第3のステップと、
他の障害リンクが検出された場合、当該他の障害リンクを障害候補リンクとして第2のステップへ移行し、他の障害リンクが検出されなかった場合、前記障害候補リンクを障害リンクとして確定する第4のステップと
してコンピュータを実行させることを特徴とするノード装置の障害リンク検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−213018(P2010−213018A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57270(P2009−57270)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】