説明

経路推薦装置及び方法及びプログラム

【課題】 移動能力が健常者とは異なる人に対して移動経路を提示する際に、健常者用の情報しかない場合でも、適切な移動経路を提示する。
【解決手段】 本発明は、入力された現在地と目的地の双方の近くを通る該現在地の地点及び該目的地の地点を前記地点記憶手段から取得し、該地点に対応する教師経路候補を教師経路記憶手段から抽出し、該教師経路候補について信頼性の高い教師経路が占める割合が高いほどスコアの値が高いものと評価し、スコアの高いN個の教師経路候補を推薦経路候補として選出し、推薦経路候補に基づいて、道情報記憶手段から取得した移動コストに基づいて推薦経路を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路推薦装置及び方法及びプログラムに係り、特に、有用な既知の教師経路を部分的に用いて、移動能力が健常者とは異なる人に移動経路を案内するための経路推薦装置及び方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
提示する経路を推薦する技術として以下のようなものがある。
【0003】
1.グラフ理論における2頂点最短経路問題の解法:
経路推薦装置は一般に、入力手段を用い利用者によって入力された出発地と目的地に対して、最も負担の低い、出発地から目的地までの経路を推薦する装置である。
【0004】
経路推薦は一般にグラフ理論における最短経路問題として解かれる。すなわち地図上の各地点をノード、各地点間(道)の移動コストをエッジの重みとするグラフを予め作成しておき、利用者によって入力された2ノード(出発地と目的地)間の2頂点対最短経路問題の解を推薦すべき経路とするものである。2頂点対最短経路問題を効率的に解くアルゴリズムにはダイクストラ法などがよく知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
道の移動コストとは、その移動体(ユーザ)が、その道を通過するのにかかる負担(肉体的負担、精神的負担、時間的負担などを総合化したもの)を任意の関数により定量化した値を指す。
【0006】
2.精細な空間モデルを用いた移動者別経路案内システム
都市空間を精細に表現する空間情報システムにおける精細な空間情報を利用した,移動手段に応じた最短経路を検索・表示する装置が存在する(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dijkstra, E.W. (1959). A note on two problems in connexion with graphs. In Numerische Mathematik, 1 (1959), S. 269 〜 271.
【非特許文献2】蒔苗耕司,高木美紀. (2004). 3次元都市空間データモデルの構築と歩行者経路案内システムへの応用.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のグラフ理論を利用した経路推薦装置では、出発地と目的地の近隣の、精度の高い、各地点間の移動コストが予め存在していることが前提である。一般的な健常者を想定した経路推薦装置においては、道の移動コストは道の距離などに応じて容易に出せるが、移動能力が健常者と大きく異なるような特殊な利用者においては、道の移動コストを適切に付与するのが難しい。例えば、段差や道幅、傾斜などが移動負担に大きく影響を与えるような車椅子利用者にとっては、健常者が移動する場合の移動コストは必ずしも参考にならず、健常者にとって快適な経路であっても、車椅子利用者にとっては快適に移動できなかったり、通過できなかったりする場合がある。結果として、車椅子利用者は一般的な経路推薦装置のみを利用するのではなく、信頼できる、限られた、高齢者・障害者用の経路を優先的に考慮し、経路を選択するという現状がある。
【0009】
また従来は、非特許文献2のシステムのような、精細な空間モデルを利用した移動者別の経路案内を実現する装置が存在する。しかしながら、このような空間モデルを利用した装置は、空間モデルを作成するにあたり経路案内装置提供者の負担が大きく、全国の道などの空間で網羅的に利用することは難しい。したがって、空間モデルが作成されていない空間では一般に利用することができない。
【0010】
すなわち、次のような限られた条件における経路推薦においては、従来の移動コストを利用した2頂点対最短経路問題を解くアルゴリズムを搭載した装置のみでは有効に経路を推薦できないという問題がある。
【0011】
a. 利用者にとって精度の低い移動コスト付きの道集合が大量にある:
b. 利用者にとって精度の高い移動コスト付きの道集合が少数ある:
上記a.の「利用者にとって精度の低い移動コスト付きの道集合」とは、各道の移動コスト値の大小が実際にその利用者が感じる度合いの大小との乖離が激しい(と推測される)集合とする。また、上記b.の「利用者にとって精度の高い移動コスト付きの道集合」とは、各道の移動コスト値の大小が実際にその利用者が感じる度合いの大小との一致度が高い(と推測される)集合とする。
【0012】
例として、さきほどの車椅子の利用者の場合においては、単純な道の距離のみなどから算出された移動コスト付きの道集合が、利用者にとって精度の低い移動コスト付きの道集合であり、車椅子利用者と同程度の移動能力を持つ車椅子利用者に移動履歴から算出された移動コスト付きの道集合などが、利用者にとって精度の高い移動コスト付きの道集合である。
【0013】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、移動能力が健常者とは異なる人に対して移動経路を提示する際に、健常者用の情報しかない場合でも、適切な移動経路を提示することが可能な経路推薦装置及び方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
図1は、本発明の原理構成図である。
【0015】
本発明(請求項1)は、出発地から目的地までの経路を推薦する経路推薦装置であって、
地図上の点である地点を一意に特定する情報を格納した地点記憶手段40と、
地図情報中の一部の経路(教師経路)毎に、該経路に沿った地点の順列を格納した教師経路記憶手段50と、
道毎の地点間の移動コストを格納した道情報記憶手段60と、
入力された現在地と目的地の双方の近くを通る該現在地の地点及び該目的地の地点を地点記憶手段40から取得し、該地点に対応する教師経路候補を教師経路記憶手段50から抽出し、該教師経路候補について信頼性の高い教師経路が占める割合が高いほどスコアの値が高いものと評価し、スコアの高いN個の教師経路候補を推薦経路候補として選出する経路候補選出手段20と、
経路候補選出手段20で選出された推薦経路候補に基づいて、道情報記憶手段60から取得した移動コストに基づいて推薦経路を決定する推薦経路算出手段30と、を有する。
【0016】
また、本発明(請求項2)は、経路候補選出手段20において、
教師経路候補に含まれる地点の中で出発地から直線距離が最も短い地点を出発点から教師経路に合流する地点、目的地から直線距離が最も短い地点を目的地から離脱する地点として選出する手段と、
教師経路候補の中で教師経路が占める割合が高ければ高いほどスコアの値が高くなる活用可能スコアを該教師経路候補に付与する手段と、を含む。
【0017】
また、本発明(請求項3)は、経路候補選出手段20において、
教師経路候補に含まれる地点の中で出発地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、教師経路候補の経路の地点順列の中で最も後ろに位置する地点aを抽出し、該教師経路候補に含まれる地点の中で目的地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、該教師経路候補の経路の地点順序の中で最も前に位置する地点bを抽出する手段と、
出発地点から地点aまでの最短な経路Aと、目的地点から地点bまでの最短な経路Bを決定し、該経路Aと該地点aから該地点bと該経路Bを順に結合した地点順列を推薦経路候補とする手段と、を含む。
【0018】
また、本発明(請求項4)は、推薦経路選出手段30において、
推薦経路候補に基づいて道情報記憶手段40を参照し、地点順列の移動コストを取得し、該移動コストの総和の逆数を活用可能性コストとし、該活用可能性コストの値が低いN個の推薦経路を出力する手段を含む。
【0019】
図2は、本発明の原理を説明するための図である。
【0020】
本発明(請求項5)は、出発地から目的地までの経路を推薦する経路推薦方法であって、
地図上の点である地点を一意に特定する情報を格納した地点記憶手段と、
地図情報中の一部の経路(教師経路)毎に、該経路に沿った地点の順列を格納した教師経路記憶手段と、
道毎の地点間の移動コストを格納した道情報記憶手段と、を有する装置が、
入力された現在地と目的地の双方の近くを通る該現在地の地点及び該目的地の地点を地点記憶手段から取得し、該地点に対応する教師経路候補を教師経路記憶手段から抽出し(ステップ1)、該教師経路候補について信頼性の高い教師経路が占める割合が高いほどスコアの値が高いものと評価し、スコアの高いN個の教師経路候補を推薦経路候補として選出する(ステップ2)経路候補選出ステップと、
経路候補選出ステップで選出された推薦経路候補に基づいて、道情報記憶手段から取得した移動コストに基づいて推薦経路を決定する推薦経路算出ステップ(ステップ3)と、を行う。
【0021】
また、本発明(請求項6)は、経路候補選出ステップにおいて、
教師経路候補に含まれる地点の中で出発地から直線距離が最も短い地点を出発点から教師経路に合流する地点、目的地から直線距離が最も短い地点を目的地から離脱する地点として選出し、
教師経路候補の中で教師経路が占める割合が高ければ高いほどスコアの値が高くなる活用可能スコアを該教師経路候補に付与する。
【0022】
また、本発明(請求項7)は、経路候補選出ステップにおいて、
教師経路候補に含まれる地点の中で出発地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、教師経路候補の経路の地点順列の中で最も後ろに位置する地点aを抽出し、該教師経路候補に含まれる地点の中で目的地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、該教師経路候補の経路の地点順序の中で最も前に位置する地点bを抽出し、
出発地点から地点aまでの最短な経路Aと、目的地点から地点bまでの最短な経路Bを決定し、該経路Aと該地点aから該地点bと該経路Bを順に結合した地点順列を推薦経路候補とする。
【0023】
また、本発明(請求項8)は、推薦経路選出ステップにおいて、
推薦経路候補に基づいて道情報記憶手段を参照し、地点順列の移動コストを取得し、該移動コストの総和の逆数を活用可能性コストとし、該活用可能性コストの値が低いN個の推薦経路を出力する。
【0024】
本発明(請求項9)は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の経路推薦装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための経路推薦プログラムである。
【発明の効果】
【0025】
上記のように本発明によれば、以下のような効果を奏する。
【0026】
A:利用者の入力する出発地と目的地の一方もしくは両方が、教師経路集合のどの経路の出発地と目的地とも一致しないときにも、一部活用できる経路があるか判定し、ある場合については選出することができる。
【0027】
B:利用者の入力する出発地と目的地の一方もしくは両方が、教師経路集合のどの経路の出発地と目的地とも一致しないときにも、一部活用できる教師経路がある場合に、ユーザの負担の低い経路を推薦することができる。
【0028】
つまり、検索者にとって負担の低い既知の経路が少数存在する場合に、その経路を有効に利用できる。例として車椅子利用者においては、過去の同程度の移動能力を持つ車椅子利用者の移動履歴(教師経路)を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の原理を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における経路推薦装置の構成図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における地点DBの構成例である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における教師経路DBの構成例である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における移動コスト付き道DBの構成例である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における経路推薦装置の詳細構成図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における教師経路選出部の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態における教師経路候補抽出の例である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における教師経路候補の出発地と目的地の例である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における経路推薦装置の詳細構成図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における教師経路選出部と推薦経路選出部の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施の形態における教師経路の地点選出の例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下図面と共に、本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
本発明は、最短経路問題を解くにあたり、
a. 利用者にとって精度の低い移動コスト付きの道集合が大量にある;
b. 利用者にとって精度の高い移動コスト付きの道集合が少数ある;
という限られた情報しか利用できないケースに着目し、本来活用しづらい教師経路を、最大限活用することを可能にするものである。
【0032】
[第1の実施の形態]
図3は、本発明の第1の実施の形態における経路推薦装置の概要構成を示す。
【0033】
同図に示す経路推薦装置100は、入力部10、教師経路選出部20、推薦経路算出部30、地点DB40、教師経路DB50、道DB60から構成される。
【0034】
地点DB40は、図4に示すように、地点(地図上の点)を一意に特定するための地点IDと緯度、経度、その地点IDが含まれる教師経路ID(後述)から構成される。
【0035】
教師経路DB50は、図5に示すように、教師経路を一意に特定するための教師経路IDと、その教師経路上に存在する地点IDを、経路に沿った順序で並べた地点IDの順列である地点順列で構成される(つまり、地点順列とは地点IDの順番付きのリストである)。
【0036】
教師経路は、地点順列で表現される、ある地点IDで表現される緯度経度上の位置からある地点IDで表現される緯度経度上の位置までに行く場合に、検索者にとって負担の低い(最適と考えられる)既知の経路を意味する。教師経路は通常、図5の{教師経路ID-000001と教師経路ID-000002}のペア、{教師経路ID-000003と教師経路ID-000004}のペアのように、逆順の地点順列で表現される教師経路が格納されているものとする(一方通行の道を表す連続する2地点IDを地点順列に含む教師経路のような、出発地と目的地を入れ替えた場合、教師経路といえなくなるような教師経路を除く)。また、このとき{教師経路ID-000001と教師経路ID-000002}のような教師経路IDのペアを教師経路のペア関係と呼ぶことにする。
【0037】
移動コスト付き道DB60は、図6に示すように、道(地点同士の接続線)ID、結ばれる2つの地点ID、道の移動コストで構成される。
【0038】
以下では経路推薦装置の各部の詳細について記す。
【0039】
図7は、本発明の第1の実施の形態における経路推薦装置の詳細構成を示す。
【0040】
<入力部>
入力部10は、利用者から、当該利用者が求める経路の出発地を表す緯度経度と目的地を表す緯度経度が入力として与えられると、地点DB40を参照し、出発地の地点ID(S)と目的地の地点ID(G)を取得し、教師経路選出部20に渡す。
【0041】
<教師経路選出部>
次に、教師経路選出部20は、教師経路存在判定部21、教師経路候補選出部22、活用可能性スコア算出部23、有効性判定部24を有し、入力部10から渡された出発地の地点ID(S)と目的地の地点ID(G)から推薦候補となる教師経路候補を抽出し、推薦経路となるために有効なスコアを求め、当該スコアに応じて後段の推薦経路算出部30に出力するものである。
【0042】
図8は、本発明の第1の実施の形態における教師経路選出部の動作を示すフローチャートである。以下、図7に示す教師経路選出部20の動作を図8に基づいて説明する。
【0043】
ステップ101) まず、教師経路存在判定部21は、入力部10から出発地の地点IDと目的地の地点IDを取得する。ここでは、出発地点S、目的地点Gとする。教師経路存在判定部21は、SとGに基づいて地点DB40を参照し、S,Gの両方を含む教師経路IDがあるかを判定し、ある場合はステップ102に移行し、ない場合は推薦経路表示部110に対して「推薦不能」を表すフラグを出力する。
【0044】
ステップ102) S、Gを両方含む教師経路がある場合はS、Gを両方含む教師経路IDを地点DB40から全ての教師経路を抽出する。なお、なお、ペア関係にある2つの教師経路が抽出されたときは、教師経路DB50を参照し、GがSより前側の項に位置している方は削除するものとする。抽出した各教師経路に対して、SからGまでの部分順列を推薦する教師経路とするので、該当するSからGまでの地点の順列を抽出し、抽出した各教師経路毎の地点順列(つまり、各教師経路の部分順列)を推薦経路表示部110に渡す。ここで、ある地点順列Teのある地点ID(e1)から別のある地点ID(e2)までの部分順列とは、Teに対して、e1より前の項、e2より後ろの項を除く処理を行った順列である。
(部分順列の例:
[000001, 000002, 000005, 000007, 000009]で表現される地点順列の000002から000007までの部分順列は[000002, 000005, 000007]である)
S,G両方を含む教師経路がない場合はSとGを次の教師経路候補選出部22に渡す。
【0045】
ステップ103) 教師経路候補選出部22は、Sの緯度経度とGの緯度経度に対して,近距離にある緯度経度を表す地点IDをそれぞれに対して含む教師経路を抽出する。具体的には、次の処理を行うことができる。
【0046】
まず、地点DB40を参照し、全ての地点IDと緯度経度と地点IDが含まれる教師経路IDを取得し、それらに対してSの緯度経度との距離がR(Rは予め定められた閾値)以下の緯度経度を表す地点IDを全て抽出し、さらに抽出した地点IDが含まれる教師経路IDを全て抽出し、抽出した教師経路IDのリスト(重複する教師経度IDは一つにまとめる)を取得する(抽出したリストを、「S近傍教師経路リスト」と呼ぶこととする)。同様に,全ての地点IDと緯度経度と地点IDが含まれる教師経路IDに対して、Gの緯度経度との距離がR以下の緯度経度を表す地点IDを全て抽出し、さらに抽出した地点IDが含まれる教師経路IDを全て抽出し、抽出した教師経路IDのリスト(重複する教師経度IDは一つにまとめる)を取得する(抽出したリストを、「G近傍教師経路リスト」と呼ぶこととする)。
結果としてS, G それぞれに対して近距離にある教師経路IDのリストであるS近傍教師経路リストとG近傍教師経路リストが抽出される。
【0047】
S近傍教師経路リストと、G近傍教師経路リストの両方に含まれる全ての教師経路IDを、教師経路候補として抽出する。
【0048】
具体的には、図9に示すように、SとGのそれぞれの緯度経度を中心とした予め与えられた半径Rの円内に教師経路中の地点IDが両方ともに含まれる教師経路IDを抽出することができる。図9の場合は、出発地点Sからの直線距離が最も短いs1を始点(教師経路に合流する地点)、目的地点Gからの直線距離が最も短いg1を終点(目的地点に向かうために教師経路から離脱する地点)とする教師経路候補T1と、同様に、s2を始点、g2を終点とする教師経路候補T2が選出される。
【0049】
当該ステップではこのように教師経路候補選出部22が教師経路候補を(全て)抽出し、抽出した教師経路候補を活用可能性スコア算出部23に渡す(抽出された教師経路候補の数を仮にM個とする)。
【0050】
なお、条件を満たす教師経路がない場合(つまり、抽出された教師経路候補が0個の場合)、推薦不能を表すフラグを推薦経路表示部110に渡す。
【0051】
ステップ104) 活用可能性スコア算出部23は、 教師経路候補選出部22から取得した教師経路候補それぞれに対して、その教師経路が推薦する経路として活用できそうであればあるほど高い値を算出する評価関数を用いて、活用可能性スコアpを算出する。
【0052】
なお、教師経路候補を特定する識別子をTi(i=1,2,…,M)とする。したがって、各教師経路候補Ti(i=1,2,…,M)に対して活用可能性スコアpを算出することとなる。
【0053】
各教師経路候補Tiの活用可能性スコアpを算出するための評価関数の例としては、Dtiの逆数がある。なお、Dtiの添え字tiはTiを指し、Tiで特定される教師経路候補のスコアがDtiである。DTiと記載する場合もある。このDtiが低いほど活用可能性が高い教師経路候補とする。Dtiを求める式を以下に示す。
【0054】
Dti = ||S-Sti|| + ||G-Gti||+|Sti-Gti|
上記において、Sti, Gtiは,教師経路候補Tiの各地点IDで表される各緯度経度のうち、それぞれS、Gで表される緯度経度からの直線距離が最も小さい緯度経度によって表されるTi上の地点であり、||X-Y||は地点ID- Xで表現される緯度経度と、地点ID-Yで表現される緯度経度の直線距離、|G-Gti|は教師経路候補Tiの地点順列のGからGtiまでの部分順列の各隣り合う地点IDの緯度経度の直線距離の総和を表す。
【0055】
なお、上記のDtiの逆数を評価関数の値である活用可能性スコアDtiは、出発地点Sから目的地点Gに至る全経路の長さが短ければ短いほど、その教師経路候補は推薦する経路として活用できそうである(つまり、活用可能性スコアpは大きな値となる)と判定する例である。
【0056】
図10に、当該ステップで実施される処理のイメージを示す。同図中の太線の長さが活用可能性スコアDtiに相当する(Si,Giが教師経路候補Tiの出発地と目的地を表す地点IDである)。
【0057】
活用可能性スコア算出部23は、上記で求められたM個の教師経路候補及び、当該候補の活用可能性スコアDtiを有効性判定部24に渡す。
【0058】
ステップ105) 有効性判定部24は、ステップ104で抽出した各教師経路候補Tiが活用可能か判定する。例として次の判定式を満たす場合に活用可能とする。
【0059】
|Sti-Gti|/Dti ≧ θ (θは予め定めた閾値)
また、上記判定式の左辺の値を教師経路候補Tiの活用可能性スコアqとする。なお、上記の活用可能性スコアqは、出発地点Sから目的地点Gに至る全経路の中で、教師経路候補で特定される経路の長さが占める割合が高ければ高いほど、その教師経路候補は推薦する経路として活用できそうである(つまり、活用可能性スコアqは大きな値となる)と判定する例である。
【0060】
有効性判定部24は、選出した教師経路候補のうち活用可能な教師経路候補が存在する場合に、活用可能な教師経路候補集合の各教師経路候補Tiについて、それぞれ活用する教師経路Tiとして、Tiの教師経路IDと地点Sti, Gtiの地点IDとその活用可能性スコアpとその活用可能性スコアqを、推薦経路算出部30に渡す。なお、当該有効性判定部24で活用可能と判定された教師経路候補の数をN個とし、活用可能性スコアp,qをN個出力するものとする。
【0061】
一方、有効性判定部24は、算出した全ての教師経路が活用可能でない場合に、推薦経路表示部110に推薦不能を表すフラグを渡す。
【0062】
<推薦経路算出部>
次に、推薦経路算出部30について説明する。
【0063】
推薦経路算出部の概要を以下に示す。
【0064】
推薦経路算出部30は、地点DB40を参照し,全ての地点IDとその緯度経度を取得しておく。また道DB60を参照し、全ての道IDとその道で結ばれる地点ID、および移動コストを取得しておく。さらにそれらの地点IDをノード、地点間のコストをエッジとするネットワークグラフを作成しておく。
【0065】
推薦経路算出部30は教師経路選出部30によって活用可能とされた教師経路集合の各教師経路TiとSti,Gtiに対して移動コストを活用した推薦経路を算出する。教師経路選出部20において活用可能とされた各教師経路Ti(とSti, Gti)に対してS,Sti間、G,Gti間の移動コストの和が最も低い経路S→Sti,Gti→Gを算出する(S→StiはSからStiまでの移動コスト最適な経路を意味し、Sを初項、Gを末項とする地点順列で表される)。
【0066】
なお、またS,Sti間及びG,Gti間のそれぞれの移動コストの総和の合計の逆数を活用可能性スコアrとする。
【0067】
なお、上記の活用可能性スコアrは、出発地点Sから目的地点Gに至る経路において,教師経路の部分経路以外の経路中の道の移動コストの総和が低いほどその教師経路は推薦する経路として活用できそうである(つまり、活用可能性スコアrは大きな値となる)と判定する例である。
【0068】
さらに活用可能性スコアp、活用可能性スコアq、活用可能性スコアrの線形和を活用可能性スコアsとする。線形和をとるときの各項の係数は予め定めた値によって与えられるものとする。活用可能性スコアsはこれまでに算出した活用可能性スコアp,活用可能性スコアq,活用可能性スコアrの線形和が高ければ高いほど、その教師経路は推薦する経路として活用できそうである(つまり、活用可能性スコアsは大きな値となる)と判定する例である。
【0069】
算出される経路は、作成したネットワークグラフにおけるS−Sti間、 Gti−G間の2頂点対最短経路問題の解であり、ダイクストラ法などの既存手法によって抽出される。推薦経路算出部30は、地点順列S→Sti,地点順列Sti〜Gti,地点順列Gti→Gをこの順に結合した地点を推薦経路として、活用可能性スコアsと共に推薦経路表示部110に渡す。
【0070】
(Sti~Gtiは教師経路Tiの地点順列のStiからGtiまでの部分順列)
地点順列A,B,Cをこの順に結合した順列とは,地点順列A,B,Cがあるとき、Aの末項の次にBの初項を追加し、以下Bのx項(1>x)をBのx-1項の次に追加し、Bの末項の次にCの初項を追加し、以下Cのy項(1>y)をCのy-1項の次に追加した結果を表す順列である。但し、同じ値の項が隣り合う場合はどちらか一方の項を削除するものとする.
例として下記のような地点順列A,B,Cがあるとき、それらをこの順に結合した順列とは下記のような順列Dである.
A = [a1, a2, ... , an]
B = [b1, b2, ... , bm]
C = [c1, c2, ..., cl]
D = [a1, a2, ..., an, b1, b2, ..., bm, c1, c2, ..., cl]
<推薦経路表示部>
推薦経路表示部110は、経路推薦装置100の教師経路選出部20及び、推薦経路算出部30に接続されている。推薦経路表示部110の概要を以下に示す。
【0071】
推薦経路表示部110は、前の処理より推薦経路の地点順列(と活用可能性スコアs)の集合が渡された場合は、活用可能性スコアに高いものから順にそれらを表示インターフェイス上に利用者に表示する。なお、活用可能性スコアが与えられていない地点順列が与えられた時は、地点順列をランダムな順にそれらを表示インターフェイス上に表示するものとする.推薦不能を表すフラグが渡された場合は推薦する経路が存在しない旨を表示し終了する。
【0072】
[第2の実施の形態]
図11は、本発明の第2の実施の形態における経路推薦装置の構成を示す。
【0073】
同図に示す経路推薦装置200において、装置概要構成は図3と同様であるが、教師経路選出部70と推薦経路選出部80の構成が異なる。同図において、図7と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
教師経路選出部70は、教師経路存在判定部71と教師経路選出部72を有する。教師経路存在判定部71は、第1の実施の形態における教師経路存在判定部21と同様である。
教師経路選出部72も第1の実施の形態における教師経路選出部72と同様である。
【0075】
第1の実施の形態の推薦経路算出部30に代わって、本実施の形態では、推薦経路選出部80を有し、当該推薦経路選出部80は合流経路抽出部81と推薦経路ランキング82を有する。
【0076】
図12は、本発明の第2の実施の形態における教師経路選出部と推薦経路選出部の動作のフローチャートである。
【0077】
ステップ201〜ステップ202までは、第1の実施の形態における図8のステップ101〜ステップ102と同様である。
【0078】
ステップ203) 推薦経路選出部80の合流経路抽出部81が教師経路選出部72から教師経路候補を取得すると、図13のように、地点DB40を参照して各教師経路Tiに対して、Sを中心とした所定の半径Rの円内にあり、教師経路Tiの地点順列の中で最も後ろ側に位置する地点Miを選出する。同様にGを中心とした所定の半径Rの円内にあり、教師経路Tiの地点順列の中で最も前側に位置する地点Niを選出する。
【0079】
ステップ204) 合流経路抽出部81ではSからMiおよびNiからGまでの最短な経路S→Mi,Ni→Gを抽出する。ただし、最短な経路を計算する上で、教師経路Ti上の道は信頼できる道として、Ti上の道のコストは、移動コスト付き道DB60によって与えられる移動コストに対してパラメータαを乗算した値とする(α<1)。なお、当該パラメータαは予め与えられメモリ(図示せず)に格納されている値とする。このとき各地点順列S→Mi,Mi〜Ni,Ni →Gをこの順に結合した地点順列が推薦経路であり、各教師経路Ti毎に抽出した推薦経路を推薦経路ランキング部82に渡す。
【0080】
ステップ205) 推薦経路ランキング部82は、合流経路抽出部81から取得した各推薦経路に、活用可能性スコアsを付与する。当該活用可能性スコアsは推薦経路の地点順列の移動コスト総和の逆数で表される(値が低いほど活用可能性が低い)。推薦経路ランキング部82は、各教師経路毎の推薦経路の地点順列と活用可能性スコアsを推薦経路表示部110に渡す。
【0081】
以降の処理は第1の実施の形態と同様である。
【0082】
上記の第1の実施の形態は、教師経路への合流箇所の決め方について、出発、目的地からの距離の近さを重要視した例であり、第2の実施の形態は、移動コストを柔軟に用いた例である。
【0083】
なお、上記の図7、図11に示す各構成要素の動作をプログラムとして構築し、経路推薦装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0084】
また、構築されたプログラムをハードディスクや、フレキシブルディスク・CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0085】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 入力部
20 経路候補選出手段、教師経路選出部
21 教師経路存在判定部
22 教師経路選出部
23 活用可能性スコア算出部
24 有効性判定部
30 推薦経路選出手段、推薦経路算出部
40 地点記憶手段、地点DB
50 教師経路記憶手段、教師経路DB
60 道情報記憶手段、移動コスト付き道DB
70 教師経路選出部
71 教師経路存在判定部
72 教師経路選出部
80 推薦経路選出部
81 合流経路抽出部
82 推薦経路ランキング部
100,200 経路推薦装置
110 推薦経路表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地までの経路を推薦する経路推薦装置であって、
地図上の点である地点を一意に特定する情報を格納した地点記憶手段と、
地図情報中の一部の経路(教師経路)毎に、該経路に沿った地点の順列を格納した教師経路記憶手段と、
道毎の地点間の移動コストを格納した道情報記憶手段と、
入力された現在地と目的地の双方の近くを通る該現在地の地点及び該目的地の地点を前記地点記憶手段から取得し、該地点に対応する教師経路候補を前記教師経路記憶手段から抽出し、該教師経路候補について信頼性の高い教師経路が占める割合が高いほどスコアの値が高いものと評価し、スコアの高いN個の教師経路候補を推薦経路候補として選出する経路候補選出手段と、
前記経路候補選出手段で選出された前記推薦経路候補に基づいて、前記道情報記憶手段から取得した移動コストに基づいて推薦経路を決定する推薦経路算出手段と、
を有することを特徴とする経路推薦装置。
【請求項2】
前記経路候補選出手段は、
前記教師経路候補に含まれる地点の中で出発地から直線距離が最も短い地点を出発点から教師経路に合流する地点、目的地から直線距離が最も短い地点を目的地から離脱する地点として選出する手段と、
前記教師経路候補の中で教師経路が占める割合が高ければ高いほどスコアの値が高くなる活用可能スコアを該教師経路候補に付与する手段と、
を含む請求項1記載の経路推薦装置。
【請求項3】
前記経路候補選出手段は、
前記教師経路候補に含まれる地点の中で出発地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、教師経路候補の経路の地点順列の中で最も後ろに位置する地点aを抽出し、該教師経路候補に含まれる地点の中で目的地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、該教師経路候補の経路の地点順序の中で最も前に位置する地点bを抽出する手段と、
前記出発地点から前記地点aまでの最短な経路Aと、前記目的地点から前記地点bまでの最短な経路Bを決定し、該経路Aと該地点aから該地点bと該経路Bを順に結合した地点順列を推薦経路候補とする手段と、
を含む請求項1または2記載の経路推薦装置。
【請求項4】
前記推薦経路選出手段は、
前記推薦経路候補に基づいて前記道情報記憶手段を参照し、地点順列の移動コストを取得し、該移動コストの総和の逆数を活用可能性コストとし、該活用可能性コストの値が低いN個の推薦経路を出力する手段を
含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の経路推薦装置。
【請求項5】
出発地から目的地までの経路を推薦する経路推薦方法であって、
地図上の点である地点を一意に特定する情報を格納した地点記憶手段と、
地図情報中の一部の経路(教師経路)毎に、該経路に沿った地点の順列を格納した教師経路記憶手段と、
道毎の地点間の移動コストを格納した道情報記憶手段と、を有する装置が、
入力された現在地と目的地の双方の近くを通る該現在地の地点及び該目的地の地点を前記地点記憶手段から取得し、該地点に対応する教師経路候補を前記教師経路記憶手段から抽出し、該教師経路候補について信頼性の高い教師経路が占める割合が高いほどスコアの値が高いものと評価し、スコアの高いN個の教師経路候補を推薦経路候補として選出する経路候補選出ステップと、
前記経路候補選出ステップで選出された前記推薦経路候補に基づいて、前記道情報記憶手段から取得した移動コストに基づいて推薦経路を決定する推薦経路算出ステップと、
を行うことを特徴とする経路推薦方法。
【請求項6】
前記経路候補選出ステップにおいて、
前記教師経路候補に含まれる地点の中で出発地から直線距離が最も短い地点を出発点から教師経路に合流する地点、目的地から直線距離が最も短い地点を目的地から離脱する地点として選出し、
前記教師経路候補の中で教師経路が占める割合が高ければ高いほどスコアの値が高くなる活用可能スコアを該教師経路候補に付与する、
請求項5記載の経路推薦方法。
【請求項7】
前記経路候補選出ステップにおいて、
前記教師経路候補に含まれる地点の中で出発地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、教師経路候補の経路の地点順列の中で最も後ろに位置する地点aを抽出し、該教師経路候補に含まれる地点の中で目的地点を中心とした所定の半径Rの円内にあり、該教師経路候補の経路の地点順序の中で最も前に位置する地点bを抽出し、
前記出発地点から前記地点aまでの最短な経路Aと、前記目的地点から前記地点bまでの最短な経路Bを決定し、該経路Aと該地点aから該地点bと該経路Bを順に結合した地点順列を推薦経路候補とする
請求項5または6記載の経路推薦方法。
【請求項8】
前記推薦経路選出ステップにおいて、
前記推薦経路候補に基づいて前記道情報記憶手段を参照し、地点順列の移動コストを取得し、該移動コストの総和の逆数を活用可能性コストとし、該活用可能性コストの値が低いN個の推薦経路を出力する
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の経路推薦方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の経路推薦装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための経路推薦プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate