説明

経路維持部材付コルゲートチューブおよびワイヤーハーネス

【課題】作業者に大きな作業負担を強いることなく、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できるようにすることを目的とする。
【解決手段】経路維持部材付コルゲートチューブ2は、コルゲートチューブ3と、経路維持部材4とを備える。経路維持部材4は、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部401,401にコルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部が収容された状態で、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って取り付けられる。凹溝部401の一対の側壁面420,430のそれぞれには欠損した部分領域V42,V43が形成され、一方の側壁面420に形成された欠損した部分領域V42と、他方の側壁面430に形成された欠損した部分領域V43とが、互いに対向配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線を覆いつつその経路を一定に維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1〜4に開示のように、車両等に敷設されるワイヤーハーネスを、屈曲性良好なコルゲートチューブにて覆う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−86022号公報
【特許文献2】特開2000−184551号公報
【特許文献3】特開2002−64917号公報
【特許文献4】特開2006−296166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コルゲートチューブ自体は、屈曲性に優れるもの故、それ自体はワイヤーハーネスの経路を一定に維持する機能を持たない。このため、ワイヤーハーネス、あるいは、コルゲートチューブに取り付けられたクランプ部材を車両の一定位置に固定することで、ワイヤーハーネスの経路を一定に維持する必要がある。クランプ部材の固定箇所が多くなると、部品コスト増、取り付けコスト増等を招く恐れがある。
【0005】
ここで、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成した樋状の樹脂成型品(プロテクタ)によれば、ワイヤーハーネスを保護しつつその経路を一定に維持することができる。
【0006】
しかしながら、ワイヤーハーネスを保護可能な樹脂成型品を、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成するためには、その金型形状が複雑化してしまう。このため、製造コストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、作業者に大きな作業負担を強いることなく、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブは、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成され、その長手方向に沿ってスリットが形成されたコルゲートチューブと、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部に、前記コルゲートチューブの前記スリットの両側の端縁部が収容された状態で、前記コルゲートチューブの長手方向に沿って取り付けられた経路維持部材と、を備え、前記凹溝部の一対の側壁面のそれぞれに欠損した部分領域が形成され、前記一対の側壁面の一方の側壁面に形成された前記欠損した部分領域と、他方の側壁面に形成された前記欠損した部分領域とが、互いに対向配置される。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材が、前記スリット内に配設される長尺状の連結部と、前記連結部の両縁部にそれぞれ配設され、前記スリットの両側の端縁部の外側部分と内側部分とをそれぞれを覆う一対の突起部と、を備え、前記一対の突起部それぞれにおける、前記連結部側の面が、前記凹溝部の側壁面を形成し、前記一対の突起部それぞれが、前記連結部の延在方向の途中で分断されることによって、前記欠損した部分領域が形成される。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記突起部の分断面が、前記連結部の側に向けて傾斜している。
【0011】
第4の態様は、第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記経路維持部材が、前記スリット内に配設される長尺状の連結部と、前記連結部の両縁部にそれぞれ配設され、前記スリットの両側の端縁部の外側部分と内側部分とをそれぞれを覆う一対の突起部と、を備え、前記一対の突起部それぞれにおける、前記連結部側の面が、前記凹溝部の側壁面を形成し、前記一対の突起部それぞれの前記連結部側の面に窪みが設けられることによって、前記欠損した部分領域が形成される。
【0012】
第5の態様は、第4の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記窪みの内壁面における、前記連結部の延在方向に沿う端面が、前記連結部の側に向けて傾斜している。
【0013】
第6の態様に係るワイヤーハーネスは、第1から第5のいずれかの態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブと、少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様によると、コルゲートチューブによって電線を覆い、また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材によってその経路を一定に維持するので、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持することができる。特に、ここでは、凹溝部の一対の側壁面に互いに対向する欠損した部分領域が形成されている。この構成によると、経路維持部材をスリットの延在方向に沿って相対的にスライド移動させながら凹溝部にスリットの両側の端縁部を収容していく際に、当該対向する欠損した部分領域が形成された箇所において、経路維持部材とコルゲートチューブとの間の摩擦が比較的小さくなる。したがって、経路維持部材をコルゲートチューブに取り付ける作業をスムースに行うことが可能となり、作業者に大きな作業負担を強いることなく、経路維持部材をコルゲートチューブに簡単に取り付けることができる。
【0015】
第2の態様によると、突起部が連結部の延在方向の途中で分断されることによって、欠損した部分領域が形成される。この構成によると、対向する欠損した部分領域が形成された箇所において、経路維持部材とコルゲートチューブとの間の摩擦がゼロとなる。したがって、経路維持部材をコルゲートチューブに取り付ける作業の負担が大幅に軽減される。
【0016】
第3の態様によると、突起部の分断面が、連結部の側に向けて傾斜している。この構成によると、コルゲートチューブの端面が、この傾斜した分断面に沿って連結部の側に導かれてスムースに凹溝部内に導入される。したがって、作業者は、難なく経路維持部材をコルゲートチューブに取り付けることができる。
【0017】
第4の態様によると、一対の突起部それぞれのスリットの両側の端縁部の外側部分あるいは内側部分に対向する側の面に窪みが設けられることによって、欠損した部分領域が形成される。この構成によると、一対の突起部が分断されないので、経路維持部材の強度の低下が抑制され、経路を確実に維持することができる。
【0018】
第5の態様によると、窪みの内壁面における、連結部の延在方向に沿う端面が、連結部の側に向けて傾斜している。この構成によると、コルゲートチューブの端面が、この傾斜した端面に沿って連結部の側に導かれてスムースに凹溝部内に導入される。したがって、作業者は、難なく経路維持部材をコルゲートチューブに取り付けることができる。
【0019】
第6の態様によると、コルゲートチューブによってワイヤーハーネス本体部を覆い、また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材によってその経路を一定に維持するので、より低コストで、ワイヤーハーネス本体部を覆いつつその経路を一定に維持することができる。特に、ここでは、凹溝部の一対の側壁面に互いに対向する欠損した部分領域が形成されている。この構成によると、経路維持部材をスリットの延在方向に沿って相対的にスライド移動させながら凹溝部にスリットの両側の端縁部を収容していく際に、当該対向する欠損した部分領域が形成された箇所において、経路維持部材とコルゲートチューブとの間の摩擦が比較的小さくなる。したがって、経路維持部材をコルゲートチューブに取り付ける作業をスムースに行うことが可能となり、作業者に大きな作業負担を強いることなく、経路維持部材をコルゲートチューブに簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ワイヤーハーネスのうち経路維持部材付コルゲートチューブの装着部分を示す概略斜視図である。
【図2】図1のk−k線概略断面図である。
【図3】ワイヤーハーネスのうち経路維持部材付コルゲートチューブの装着部分を示す概略側面図である。
【図4】コルゲートチューブに経路維持部材を取り付ける工程を示す説明図である。
【図5】コルゲートチューブに経路維持部材を取り付ける工程を示す説明図である。
【図6】変形例に係る経路維持部材を示す概略側面図である。
【図7】変形例に係る経路維持部材を示す概略側面図である。
【図8】変形例に係る経路維持部材を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
<1.ワイヤーハーネス100>
実施形態に係るワイヤーハーネス100について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、ワイヤーハーネス100のうち経路維持部材付コルゲートチューブ2の装着部分を示す概略斜視図である。図2は、図1のk−k線概略断面図である。図3は、ワイヤーハーネス100のうち経路維持部材付コルゲートチューブ2の装着部分を示す概略側面図である。
【0023】
ワイヤーハーネス100は、ワイヤーハーネス本体部1と、経路維持部材付コルゲートチューブ2とを備える。
【0024】
<1−1.ワイヤーハーネス本体部1>
ワイヤーハーネス本体部1は、複数の電線が結束された構成とされている。より具体的には、ワイヤーハーネス本体部1は、複数の電線が配設対象となる車両への配線形態に応じて分岐しつつ結束された構成とされている。なお、ワイヤーハーネス本体部1は、必ずしも分岐していなくともよい。また、ワイヤーハーネス本体部1は、単一の電線によって構成されていてもよい。また、ワイヤーハーネス本体部1には、他の光ケーブル等が結束されていてもよい。
【0025】
ワイヤーハーネス本体部1を、車両等に配設する際、ワイヤーハーネス本体部1は定められた配設形態に沿って曲げられる。この際、ワイヤーハーネス本体部1は、これが周辺部分に干渉すること等を抑制するため、定められた配設形態に沿って曲げられた形状に維持されることがある。このような場合に、ワイヤーハーネス本体部1には、経路維持部材付コルゲートチューブ2が装着され、これによって、ワイヤーハーネス本体部1が一定の曲げ形状に維持される。なお、ワイヤーハーネス本体部1に対して経路維持部材付コルゲートチューブ2が装着される部分は、ワイヤーハーネス本体部1の一部であってもよいし、ほぼ全体であってもよい。
【0026】
<1−2.経路維持部材付コルゲートチューブ2>
経路維持部材付コルゲートチューブ2は、コルゲートチューブ3と、経路維持部材4とを備える。
【0027】
<コルゲートチューブ3>
コルゲートチューブ3は、長手方向に沿って環状凸部31と環状凹部32とが交互に形成された筒状部材であり(図4参照)、樹脂等で形成されている。コルゲートチューブ3は、環状凸部31と環状凹部32との間の段部等で、容易に弾性変形するため、それ自体では、全体として、曲げ変形容易な性質を有している。通常、コルゲートチューブ3としては、装着対象となるワイヤーハーネス本体部1の部分の外径よりも大きい(通常は多少大きい程度)内径を有するものが、用いられる。
【0028】
コルゲートチューブ3の一側部には、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って、スリット33が形成されている。コルゲートチューブ3を、このスリット33で割開くようにして、ワイヤーハーネス本体部1をコルゲートチューブ3内に容易に配設できるようになっている。
【0029】
<経路維持部材4>
経路維持部材4は、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、P.P.(ポリプロピレン)等の樹脂によって形成されている。換言すれば、経路維持部材4は、金型成型の時点で、少なくとも一部が曲げられた形状に形成されている。経路維持部材4の曲げ形状は、ワイヤーハーネス本体部1のうち装着対象となる部分が配設される配設経路に応じた形状に、設定されている。図1に示す例では、経路維持部材4の長手方向の中間部が、なだらかなS字を描くように曲っており、経路維持部材4の両端部が、直線状に形成されている。経路維持部材4のうち曲げた形状に形成される部分は、その全体であっても一部であってもよい。また、曲げた形状に形成される部分は、平面上で曲る形状に形成されていてもよいし、立体的(3次元的)に曲る形状に形成されていてもよい。
【0030】
経路維持部材4は、その長尺方向に沿う一対の凹溝部401,401が形成された部分を有している。具体的には、経路維持部材4は、長尺状の連結部41の一方側(外周側)の縁部に外周側突起部42が配設されるとともに、連結部41の他方側(内周側)の縁部に内周側突起部43が配設された構成とされており、これによって、経路維持部材4は、その長手方向に対して直交する面における断面形状が略H字状を呈している。この構成において、連結部41の側面は凹溝部401の底面を形成する。また、外周側突起部42の連結部41側の面(下方側の面)420および、内周側突起部43の連結部41側の面(上方側の面)430は、凹溝部401の一対の側壁面を形成する。
【0031】
一対の凹溝部401,401は、コルゲートチューブ3のうちスリット33の両側の端縁部を収容可能に形成されている。一対の凹溝部401,401にスリット33の両側の端縁部が収容された状態においては、連結部41がスリット33内に配設され、外周側突起部42がコルゲートチューブ3の外周面に沿って配設されてスリット33の両側の端縁部の外側部分を覆い(より具体的には、外周側突起部42の連結部41側の面420がスリット33の両側の端縁部の外側部分に当接あるいは近接してこれを覆い)、さらに、内周側突起部43がコルゲートチューブ3の内周面に沿って配設されてスリット33の両側の端縁部の内側部分を覆う(より具体的には、内周側突起部43の連結部41側の面430がスリット33の両側の端縁部の内側部分に当接あるいは近接してこれを覆う)。このように、経路維持部材4の一対の凹溝部401,401内に、スリット33の両側の端縁部が収容されることによって、経路維持部材4が、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って取り付けられることになる。経路維持部材4が取り付けられると、コルゲートチューブ3は、経路維持部材4の形状に沿って曲げられた状態で、当該経路維持部材4と一体化される。
【0032】
なお、外周側突起部42の外側面(連結部41と逆側の面)は、経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられた状態において、コルゲートチューブ3の外周面に沿うような弧状曲面を呈している。
【0033】
各凹溝部401の幅寸法dは、コルゲートチューブ3の厚み寸法(より具体的には、コルゲートチューブ3の径方向において環状凸部31の最外周部分と環状凹部32の最内周部分との差)と略同じかそれよりも大きい(僅かに大きい)程度の寸法に、設定されている。なお、凹溝部401の深さ寸法は、コルゲートチューブ3の端縁部をその径方向に位置決めした状態で収容できる程度であればよく、特に限定はない。
【0034】
外周側突起部42は、連結部41の延在方向の途中で分断されており、これによって側壁面420に欠損した部分領域が形成されている。また、内周側突起部43も、連結部41の延在方向の途中で分断されおり、これによって側壁面430に欠損した部分領域が形成されている。ただし、外周側突起部42の延在途中に形成された分断領域V42と、内周側突起部43の延在途中に形成された分断領域V43とは、連結部41の延在方向について同じ位置に形成されている。すなわち、分断領域V42と分断領域V43とは、連結部41を挟んで対向配置される。これによって、各凹溝部401の一対の側壁面420,430に、互いに対向する欠損した部分領域が形成されることになる。この互いに対向した一対の欠損部分を、以下「対向欠損部対5」ともいう。
【0035】
ここで、外周側突起部42の分断面(すなわち、分断領域V42の両端面)421,421のそれぞれ、および、内周側突起部43の分断面(すなわち、分断領域V43の両端面)431,431のそれぞれは、いずれも、連結部41の側に向けて傾斜している。すなわち、外周側突起部42の各分断面421は、分断領域V42の中心に近づくにつれて上方に向かうように傾斜している。また、内周側突起部43の各分断面431は、分断領域V43の中心に近づくにつれて下方に向かうように傾斜している。
【0036】
<2.ワイヤーハーネス100の製造>
ワイヤーハーネス100を製造する工程について、図1〜図3に加え、図4、図5を参照しながら説明する。図4および図5は、当該工程の説明図である。
【0037】
まず、コルゲートチューブ3をスリット33で開いて、コルゲートチューブ3内にワイヤーハーネス本体部1を収容する。
【0038】
続いて、経路維持部材4を、コルゲートチューブ3に取り付ける。具体的には、まず、経路維持部材4の延在方向に沿うどちらかの端部(延在方向の両端部のうちのどちら側の端部でもよい)における、一対の凹溝部401,401の開口端のそれぞれから、コルゲートチューブ3の延在方向に沿う一方の端部における、スリット33の両側の端縁部のそれぞれを差し込む(図4に示される状態)。そして、経路維持部材4を、スリット33の延在方向に沿って、相対的にスライド移動させていく(矢印AR1)。ここで、上述したとおり、各凹溝部401の一対の側壁面420,430には、対向欠損部対5が形成されている。この対向欠損部対5が形成された箇所においては、コルゲートチューブ3は、側壁面420,430に接触しない(したがって、側壁面420,430から摩擦力を受けない)。このため、対向欠損部対5が形成されない場合に比べて、コルゲートチューブ3と経路維持部材4とを、スムースに相対移動させることができる。また、上述したとおり、各突起部42,43の分断面421,431は、連結部41の側に向けて傾斜している。したがって、図5に示されるように、対向欠損部対5の端(コルゲートチューブ3の移動方向について下流側の端)にさしかかったコルゲートチューブ3の端部は、この分断面421に沿って連結部41の側に導かれて(AR2)、ひっかかりなくスムースに、対向欠損部対5から凹溝部401内へと再び導入される。
【0039】
スリット33の延在方向に沿って相対的にスライド移動される経路維持部材4の先頭側の端部が、コルゲートチューブ3の端部に到達すると、コルゲートチューブ3の延在方向の全体にわたって、スリット33の両側の端縁部が、一対の凹溝部401,401内に収容された状態となる(図1〜図3に示される状態)。すなわち、経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられた状態となる。上述したとおり、経路維持部材4が取り付けられると、コルゲートチューブ3は、経路維持部材4の形状に沿って曲げられた状態で、当該経路維持部材4と一体化される。
【0040】
経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられることによって、ワイヤーハーネス本体部1が経路維持部材付コルゲートチューブ2に装着されることになる。経路維持部材付コルゲートチューブ2が装着されることによって、ワイヤーハーネス本体部1における経路維持部材付コルゲートチューブ2の装着部分が、経路維持部材4の曲げ形状に沿う曲げ形状に維持される。つまり、このように構成されたワイヤーハーネス100においては、ワイヤーハーネス本体部1はコルゲートチューブ3によって覆われて保護されるとともに、経路維持部材4によって所定の形状に曲った経路を描くように維持される。したがって、経路維持部材4をワイヤーハーネス本体部1の敷設箇所に合わせた形状に形成しておけば、ワイヤーハーネス本体部1が当該敷設箇所に合わせた一定の経路に維持されることになる。
【0041】
なお、この後、必要に応じて、タイバンド、粘着テープ等がコルゲートチューブ3の外周に巻付けられ、コルゲートチューブ3の閉状態が維持されると共に、コルゲートチューブ3と経路維持部材4との一体化状態が維持されてもよい。なお、上記の他、コルゲートチューブ3自体に設けられたロック構造等によってコルゲートチューブ3の閉状態が維持されてもよい。
【0042】
<3.効果>
上記の実施の形態においては、コルゲートチューブ3によってワイヤーハーネス本体部1を覆うことができるとともに、そのコルゲートチューブ3に取付けられた経路維持部材4によってその経路を一定に維持することができる。この構成においては、経路維持部材4自体でワイヤーハーネス本体部1を覆わなくてもよいため、経路維持部材4自体を小型かつ単純な形状にすることができる。このため、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された経路維持部材4を、比較的低コストで形成することができる。したがって、より低コストで、ワイヤーハーネス本体部1を覆いつつその経路を一定に維持できる。また、ワイヤーハーネス本体部1を曲げた状態に維持できる結果、当該ワイヤーハーネス本体部1を車両等に組付ける際に、車両に対する取り付け箇所を少なくすることができる。換言すれば、経路維持部材付コルゲートチューブ2の取り付け箇所が少なくても、ワイヤーハーネス本体部1を一定の曲げ形状に維持できる。このため、ワイヤーハーネス本体部1を取り付け固定するためのクランプ部材等の使用個数、取り付け作業を少なくすることができ、この観点からも、経路維持部材付コルゲートチューブ2の製造コスト、取り付け作業コストの低減を図ることができる。
【0043】
また、上記の実施の形態においては、経路維持部材4は、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部401,401にコルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部が収容された状態とされることによって、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って取付けられる。この構成によると、コルゲートチューブ3と経路維持部材4との取り付け位置関係が安定化するため、コルゲートチューブ3を、経路維持部材4の形状に沿った所期の形状に維持し易い。また、経路維持部材4がコルゲートチューブ3から外れにくい。さらに、スリット33が経路維持部材4の一部によって閉塞されることになるため、コルゲートチューブ3内のワイヤーハーネス本体部1がスリット33から外部に脱してしまうといった事態が発生しにくい。
【0044】
一対の凹溝部401,401にコルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部が収容された状態とされることによって、経路維持部材4をコルゲートチューブ3に取付ける態様においては、上述した利点が得られる一方で、経路維持部材4の長尺長さが長くなるにつれ、また、経路維持部材4の形状が複雑になるにつれ、経路維持部材4をコルゲートチューブ3に取り付ける作業にかかる負担が大きくなってくるおそれがある。ここで、上記の実施の形態においては、凹溝部401の一対の側壁面420,430に互いに対向する欠損した部分領域(対向欠損部対5)が形成されている。この構成によると、経路維持部材4をスリット33の延在方向に沿って相対的にスライド移動させながら凹溝部401にスリットの両側の各端縁部を収容していく際に、対向欠損部対5が形成された箇所において、経路維持部材4とコルゲートチューブ3との間の摩擦が比較的小さくなる。したがって、経路維持部材4をコルゲートチューブ3に取り付ける作業をスムースに行うことが可能となり、作業者に大きな作業負担を強いることなく、経路維持部材4をコルゲートチューブ3に簡単に取り付けることができる。
【0045】
また、対向欠損部対5の体積分だけ経路維持部材4を形成するために必要な材料の量が少なくてすむため、対向欠損部対5が形成されない場合に比べて、低コストで経路維持部材4を形成することができる。
【0046】
特に、上記の実施の形態においては、外周側突起部42および内周側突起部43が連結部41の延在方向の途中で分断されることによって、欠損した部分領域が形成される。この構成によると、対向欠損部対5が形成された箇所において、経路維持部材4とコルゲートチューブ3との間の摩擦がゼロとなる。したがって、経路維持部材4をコルゲートチューブ3に取り付ける作業の負担が大幅に軽減される。
【0047】
また、上記の実施の形態においては、各突起部42,43の分断面421,431が、連結部41の側に向けて傾斜している。この構成によると、コルゲートチューブ3の端面が、傾斜した分断面421に沿って連結部の側に導かれてスムースに凹溝部401内に導入される。したがって、作業者は、難なく経路維持部材4をコルゲートチューブ3に取り付けることができる。
【0048】
また、上記の実施の形態において、対向欠損部対5は、経路維持部材4の延在方向に沿うどの位置に形成されてもよいが、経路維持部材4の曲げ形状に応じて対向欠損部対5bの形成位置が決定されることが特に好ましい。経路維持部材4が比較的大きい曲げ半径で曲げられる部分は、コルゲートチューブ3に対する取り付けが比較的難しいところ、当該部分に対向欠損部対5が形成された場合、当該比較的取り付け作業に手間取る部分において経路維持部材4をコルゲートチューブ3にスムースに取り付けることができるため、経路維持部材4の取り付け作業が大幅に容易化される。また、この場合、経路維持部材4は、比較的急に曲げられた部分で、比較的単純化な形状に形成されることになるため、比較的簡易な金型構造としやすいというメリットも得られる。一方、比較的小さい曲げ半径で曲げられる部分に対向欠損部対5が形成された場合、経路維持部材4が比較的急に曲げられる部分で、コルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部が一対の凹溝部401,401内に収容されるため、コルゲートチューブ3と経路維持部材4との合体状態がより確実に維持される。このため、ワイヤーハーネス本体部1の曲げ状態をより確実に維持できる。ただし、「対向欠損部対5が比較的小さい曲げ半径で曲げられる部分に形成される」とは、対向欠損部対5が形成されている部分の曲げ半径が他の部分の曲げ半径より小さい場合、および、対向欠損部対5が形成されている部分が直線状の部分に形成されている場合を含む。
【0049】
<4.変形例>
上記の実施の形態においては、経路維持部材4は、外周側突起部42および内周側突起部43のそれぞれが途中で分断されることによって、各凹溝部401の一対の側壁面420,430に対向欠損部対5が形成されていたが、対向欠損部対を形成する態様はこれに限られるものではない。例えば、図6に示されるように、連結部41aの延在方向の途中で、外周側突起部42aの連結部41a側の面(凹溝部401aの側壁面)420aに、窪み422aを形成するとともに、内周側突起部43aの連結部41a側の面(凹溝部401aの側壁面)430aであって、窪み422aと対向する位置に、窪み432aを形成してもよい。この構成によっても、各凹溝部401aの一対の側壁面420a,430aに、互いに対向する欠損した部分領域(対向欠損部対5a)が形成されることになる。なお、この変形例においても、窪み422aの内壁面における連結部41aの延在方向に沿う両端面423a,423aのそれぞれと、窪み432aの内壁面において連結部41aの延在方向に沿う両端面433a,433aのそれぞれとは、いずれも、連結部41aの側に向けて傾斜していることが好ましい。
【0050】
この変形例においても、経路維持部材4aを、コルゲートチューブ3に取り付ける作業は、上記の実施の形態と同様の態様で行われる。すなわち、まず、経路維持部材4aの延在方向に沿う両端部のうちの任意の一方の端部における、一対の凹溝部401a,401aの開口端のそれぞれから、コルゲートチューブ3の延在方向に沿う一方の端部における、スリット33の両側の端部のそれぞれを差し込む。そして、経路維持部材4aをスリット33の延在方向に沿って、相対的にスライド移動させていく。ここで、各凹溝部401aの一対の側壁面420a,430aには、対向欠損部対5aが形成されており、この対向欠損部対5aが形成された箇所においては、コルゲートチューブ3は、側壁面420a,430aに接触しにくく、側壁面420a,430aから受ける摩擦力が比較的小さくなる。このため、対向欠損部対5aが形成されない場合に比べて、コルゲートチューブ3と経路維持部材4aとを、スムースに相対移動させることができる。つまり、この構成によっても、上記の実施の形態と同様、経路維持部材4aをコルゲートチューブ3に取り付ける作業をスムースに行うことが可能となり、作業者に大きな作業負担を強いることなく、経路維持部材4aをコルゲートチューブ3に簡単に取り付けることができる。また、各窪み422a,432aの各端面423a,433aを、連結部41aの側に向けて傾斜させておけば、対向欠損部対5aの端にさしかかったコルゲートチューブ3の端部は、この端面423aに沿って連結部41aの側に導かれて、ひっかかりなくスムースに、対向欠損部対5aから凹溝部401a内へと再び導入される。したがって、作業者は、難なく経路維持部材4aをコルゲートチューブ3に取り付けることができる。
【0051】
この変形例に係る経路維持部材4aにおいては、外周側突起部42aおよび内周側突起部43aが分断されないので、経路維持部材4aの強度の低下が抑制される。したがって、経路を確実に維持することができる。つまり、経路を確実に維持するという点においては、上記の実施の形態よりもこの変形例の方が有利である。一方、上記の実施の形態においては、対向欠損部対5が形成された箇所ではコルゲートチューブ3は、側壁面420a,430aと全く接触しないので、コルゲートチューブ3と経路維持部材4aとを、非常にスムースに相対移動させることができる。つまり、経路維持部材4aをコルゲートチューブ3に取り付ける作業の負担を軽減するという点においては、この変形例よりも上記の実施の形態の方が有利である。そこで、例えば、経路維持部材付コルゲートチューブが、ワイヤーハーネス本体部1における、径サイズが比較的小さい部分(例えば、電線の枝線部)に装着される場合は、上記の実施の形態に係る経路維持部材4を適用し、径サイズが比較的大きい部分に装着される場合は、この変形例に係る経路維持部材4aを適用する、といった使い分けをしてもよい。
【0052】
また、上記の実施の形態においては、経路維持部材4の延在方向に沿って1箇所に対向欠損部対5が形成される構成としたが、例えば、図7に示されるように、経路維持部材4bは、その延在方向に沿って複数の対向欠損部対5b,5b,5bを備える構成であってもよい。複数の対向欠損部対5b,5b,5bを備える構成の場合、隣り合う対向欠損部対5b,5bの間隔は一定であってもよいし、ばらばらであってもよい。また、経路維持部材4bの延在方向に沿う各対向欠損部対5bの長さは、互いに等しくてもよいし、ばらばらであってもよい。対向欠損部対5bの形成位置およびその延在長さは、上述したとおり、経路維持部材4bの曲げ形状に応じて決定されることが特に好ましい。
【0053】
また、上記の実施の形態においては、分断面421,431は、いずれも、連結部41の側に向けて傾斜しているとしたが、必ずしも全ての分断面421,431が傾斜している必要はない。例えば、図8に示されるように、経路維持部材4cは、外周側突起部42cの分断面421cは傾斜した形状とし、内周側突起部43cの分断面431cは傾斜しない(内周側突起部43cの延在方向と直交する)形状としてもよい。
【0054】
また、1つのワイヤーハーネス100において、上記の実施の形態、変形例で説明した経路維持部材4,4a,4b,4c等が混在して用いられていてもよい。
【0055】
なお、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0056】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0057】
100 ワイヤーハーネス
1 ワイヤーハーネス本体部
2 経路維持部材付コルゲートチューブ
3 コルゲートチューブ
31 環状凸部
32 環状凹部
33 スリット
4、4a、4b、4c 経路維持部材
401 凹溝部
41 連結部
42 外周側突起部
43 内周側突起部
5 対向欠損部対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成され、その長手方向に沿ってスリットが形成されたコルゲートチューブと、
長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部に、前記コルゲートチューブの前記スリットの両側の端縁部が収容された状態で、前記コルゲートチューブの長手方向に沿って取り付けられた経路維持部材と、
を備え、
前記凹溝部の一対の側壁面のそれぞれに欠損した部分領域が形成され、
前記一対の側壁面の一方の側壁面に形成された前記欠損した部分領域と、他方の側壁面に形成された前記欠損した部分領域とが、互いに対向配置される、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材が、
前記スリット内に配設される長尺状の連結部と、
前記連結部の両縁部にそれぞれ配設され、前記スリットの両側の端縁部の外側部分と内側部分とをそれぞれを覆う一対の突起部と、
を備え、
前記一対の突起部それぞれにおける、前記連結部側の面が、前記凹溝部の側壁面を形成し、
前記一対の突起部それぞれが、前記連結部の延在方向の途中で分断されることによって、前記欠損した部分領域が形成される、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項3】
請求項2に記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記突起部の分断面が、前記連結部の側に向けて傾斜している、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項4】
請求項1に記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記経路維持部材が、
前記スリット内に配設される長尺状の連結部と、
前記連結部の両縁部にそれぞれ配設され、前記スリットの両側の端縁部の外側部分と内側部分とをそれぞれを覆う一対の突起部と、
を備え、
前記一対の突起部それぞれにおける、前記連結部側の面が、前記凹溝部の側壁面を形成し、
前記一対の突起部それぞれの前記連結部側の面に窪みが設けられることによって、前記欠損した部分領域が形成される、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項5】
請求項4に記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記窪みの内壁面における、前記連結部の延在方向に沿う端面が、前記連結部の側に向けて傾斜している、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の経路維持部材付コルゲートチューブと、
少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部と、
を備えるワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102634(P2013−102634A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245321(P2011−245321)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】