説明

経路維持部材付コルゲートチューブおよびワイヤーハーネス

【課題】より低コストで、電線を露出させずに安定して覆いつつ、その経路を一体に維持できる技術を提供する。
【解決手段】経路維持部材付コルゲートチューブ2は、コルゲートチューブ3と、経路維持部材4とを備える。経路維持部材4は、長手方向に沿って形状を維持するように形成された長尺部材であり、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部401,401にコルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部が収容された状態で、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って取り付けられる。凹溝部401の一対の側壁面420,430のうち、スリット33の両側の端縁部の外側部分を覆う側壁面420が、凹溝部401の延在方向に沿って凸条部51と凹条部52とが交互に繰り返して形成された波形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線を覆いつつその経路を一定に維持する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1〜4に開示のように、車両等に敷設されるワイヤーハーネスを、屈曲性良好なコルゲートチューブにて覆う技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−86022号公報
【特許文献2】特開2000−184551号公報
【特許文献3】特開2002−64917号公報
【特許文献4】特開2006−296166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コルゲートチューブ自体は、屈曲性に優れるもの故、それ自体はワイヤーハーネスの経路を一定に維持する機能を持たない。このため、ワイヤーハーネス、あるいは、コルゲートチューブに取り付けられたクランプ部材を車両の一定位置に固定することで、ワイヤーハーネスの経路を一定に維持する必要がある。クランプ部材の固定箇所が多くなると、部品コスト増、取り付けコスト増等を招く恐れがある。
【0005】
ここで、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成した樋状の樹脂成型品(プロテクタ)によれば、ワイヤーハーネスを保護しつつその経路を一定に維持することができる。
【0006】
しかしながら、ワイヤーハーネスを保護可能な樹脂成型品を、ワイヤーハーネスの敷設箇所に合わせて3次元形状に形成するためには、その金型形状が複雑化してしまう。このため、製造コストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、より低コストで、電線を露出させずに安定して覆いつつ、その経路を一体に維持できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブは、長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成され、その長手方向に沿ってスリットが形成されたコルゲートチューブと、長手方向に沿って形状を維持するように形成された長尺部材であり、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部に、前記コルゲートチューブの前記スリットの両側の端縁部が収容された状態で、前記コルゲートチューブの長手方向に沿って取り付けられた経路維持部材と、を備え、前記凹溝部の一対の側壁面のうち、前記スリットの両側の端縁部の外側部分を覆う側壁面が、前記凹溝部の延在方向に沿って、凸条部と凹条部とが交互に繰り返して形成された波形状に形成されている。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記凸条部が前記環状凹部と噛合可能に形成されている。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記凸条部のピッチが、前記環状凹部のピッチと一致している。
【0011】
第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブであって、前記凸条部の頂部が横断面凸弧状に丸められているとともに、前記凹条部の底部が横断面凹弧状に丸められている。
【0012】
第5の態様に係るワイヤーハーネスは、第1から第4のいずれか一つの態様に係る経路維持部材付コルゲートチューブと、少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様によると、コルゲートチューブによって電線を覆い、また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材によってその経路を一定に維持するので、より低コストで、電線を覆いつつその経路を一定に維持することができる。特に、スリットの両側の端縁部が収容される凹溝部の一対の側壁面のうち、スリットの端縁部の外側部分を覆う側壁面が波形状に形成されているので、経路維持部材付コルゲートチューブに、これを周方向にねじる力がかかっても、経路維持部材とコルゲートチューブとの間に隙間ができにくい。したがって、電線を露出させずに安定して覆い続けることができる。
【0014】
第2の態様によると、スリットの両側の端縁部の外側部分を覆う側壁面に形成される凸条部が、コルゲートチューブの環状凹部と、噛合可能に形成されている。凸条部が環状凹部と噛み合った状態とされることによって、経路維持部材とコルゲートチューブとの間における隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
第3の態様によると、スリットの両側の端縁部の外側部分を覆う側壁面に形成される凸条部のピッチが、コルゲートチューブの環状凹部のピッチと、一致している。この構成によると、凸条部が環状凹部と噛合可能となるとともに、凹条部が環状凸部と噛合可能となる。したがって、経路維持部材とコルゲートチューブとの間における隙間の発生を特に効果的に抑制することができる。
【0016】
第4の態様によると、スリットの両側の端縁部の外側部分を覆う側壁面に形成される凸条部の頂部が横断面凸弧状に丸められているとともに、凹条部の底部が横断面凹弧状に丸められている。この構成によると、経路維持部材をスリットの延在方向に沿って相対的にスライド移動させながら凹溝部にスリットの両側の端縁部を収容していく際に、経路維持部材をスムースに相対移動させることができる。したがって、経路維持部材をコルゲートチューブに取り付ける作業に負担がかかりにくい。
【0017】
第5の態様によると、コルゲートチューブによってワイヤーハーネス本体部を覆い、また、そのコルゲートチューブに取付けられた経路維持部材によってその経路を一定に維持するので、より低コストで、ワイヤーハーネス本体部を覆いつつその経路を一定に維持することができる。特に、スリットの両側の端縁部が収容される凹溝部の一対の側壁面のうち、スリットの端縁部の外側部分を覆う側壁面が波形状に形成されているので、経路維持部材付コルゲートチューブに、これを周方向にねじる力がかかっても、経路維持部材とコルゲートチューブとの間に隙間ができにくい。したがって、ワイヤーハーネス本体部を露出させずに安定して覆い続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ワイヤーハーネスのうち経路維持部材付コルゲートチューブの装着部分を示す概略斜視図である。
【図2】ワイヤーハーネスのうち経路維持部材付コルゲートチューブの装着部分の一部を拡大して示す側面図である。
【図3】コルゲートチューブに経路維持部材を取り付ける工程を示す説明図である。
【図4】経路維持部材付コルゲートチューブに、これを周方向にねじる力がかかった際の、ワイヤーハーネスの断面の様子を、模式的に示す図である。
【図5】複数種類のコルゲートチューブ間で共用される経路維持部材の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0020】
<1.ワイヤーハーネス100>
実施形態に係るワイヤーハーネス100について、図1、図2を参照しながら説明する。図1は、ワイヤーハーネス100のうち経路維持部材付コルゲートチューブ2の装着部分を示す概略斜視図である。図2は、ワイヤーハーネス100のうち経路維持部材付コルゲートチューブ2の装着部分の一部を拡大して示す側面図である。
【0021】
ワイヤーハーネス100は、ワイヤーハーネス本体部1と、経路維持部材付コルゲートチューブ2とを備える。
【0022】
<1−1.ワイヤーハーネス本体部1>
ワイヤーハーネス本体部1は、複数の電線が結束された構成とされている。より具体的には、ワイヤーハーネス本体部1は、複数の電線が配設対象となる車両への配線形態に応じて分岐しつつ結束された構成とされている。なお、ワイヤーハーネス本体部1は、必ずしも分岐していなくともよい。また、ワイヤーハーネス本体部1は、単一の電線によって構成されていてもよい。また、ワイヤーハーネス本体部1には、他の光ケーブル等が結束されていてもよい。
【0023】
ワイヤーハーネス本体部1を、車両等に配設する際、ワイヤーハーネス本体部1は定められた配設形態に沿って曲げられる。この際、ワイヤーハーネス本体部1は、これが周辺部分に干渉すること等を抑制するため、定められた配設形態に沿って曲げられた形状に維持されることがある。このような場合に、ワイヤーハーネス本体部1には、経路維持部材付コルゲートチューブ2が装着され、これによって、ワイヤーハーネス本体部1が一定の曲げ形状に維持される。なお、ワイヤーハーネス本体部1に対して経路維持部材付コルゲートチューブ2が装着される部分は、ワイヤーハーネス本体部1の一部であってもよいし、ほぼ全体であってもよい。
【0024】
<1−2.経路維持部材付コルゲートチューブ2>
経路維持部材付コルゲートチューブ2は、コルゲートチューブ3と、経路維持部材4とを備える。
【0025】
<コルゲートチューブ3>
コルゲートチューブ3は、長手方向に沿って環状凸部31と環状凹部32とが交互に形成された筒状部材であり、樹脂等で形成されている。コルゲートチューブ3は、環状凸部31と環状凹部32との間の段部等で、容易に弾性変形するため、それ自体では、全体として、曲げ変形容易な性質を有している。通常、コルゲートチューブ3としては、装着対象となるワイヤーハーネス本体部1の部分の外径よりも大きい(通常は多少大きい程度)内径を有するものが、用いられる。
【0026】
コルゲートチューブ3の一側部には、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って、スリット33が形成されている。コルゲートチューブ3を、このスリット33で割開くようにして、ワイヤーハーネス本体部1をコルゲートチューブ3内に容易に配設できるようになっている。
【0027】
<経路維持部材4>
経路維持部材4は、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状を維持するように金型成型された長尺部材であり、P.P.(ポリプロピレン)等の樹脂によって形成されている。換言すれば、経路維持部材4は、金型成型の時点で、少なくとも一部が曲げられた形状に形成されている。経路維持部材4の曲げ形状は、ワイヤーハーネス本体部1のうち装着対象となる部分が配設される配設経路に応じた形状に、設定されている。図1に示す例では、経路維持部材4の長手方向の中間部が、なだらかなS字を描くように曲っており、経路維持部材4の両端部が、直線状に形成されている。経路維持部材4のうち曲げた形状に形成される部分は、その全体であっても一部であってもよい。また、曲げた形状に形成される部分は、平面上で曲る形状に形成されていてもよいし、立体的(3次元的)に曲る形状に形成されていてもよい。
【0028】
経路維持部材4は、その長尺方向に沿う一対の凹溝部401,401が形成された部分を有している。具体的には、経路維持部材4は、長尺状の連結部41の一方側(外周側)の縁部に外周側突起部42が配設されるとともに、連結部41の他方側(内周側)の縁部に内周側突起部43が配設された構成とされており、これによって、経路維持部材4は、その長手方向に対して直交する面における断面形状が略H字状を呈している。この構成において、連結部41の側面は凹溝部401の底面を形成する。また、外周側突起部42の連結部41側の面(下方側の面)420および、内周側突起部43の連結部41側の面(上方側の面)430は、凹溝部401の一対の側壁面を形成する。
【0029】
一対の凹溝部401,401は、コルゲートチューブ3のうちスリット33の両側の端縁部を収容可能に形成されている。一対の凹溝部401,401にスリット33の両側の端縁部が収容された状態においては、連結部41がスリット33内に配設され、外周側突起部42がコルゲートチューブ3の外周面に沿って配設されてスリット33の両側の端縁部の外側部分を覆い(より具体的には、外周側突起部42の連結部41側の面420がスリット33の両側の端縁部の外側部分に当接あるいは近接してこれを覆い)、さらに、内周側突起部43がコルゲートチューブ3の内周面に沿って配設されてスリット33の両側の端縁部の内側部分を覆う(より具体的には、内周側突起部43の連結部41側の面430がスリット33の両側の端縁部の内側部分に当接あるいは近接してこれを覆う)。このように、経路維持部材4の一対の凹溝部401,401内に、スリット33の両側の端縁部が収容されることによって、経路維持部材4が、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って取り付けられることになる。経路維持部材4が取り付けられると、コルゲートチューブ3は、経路維持部材4の形状に沿って曲げられた状態で、当該経路維持部材4と一体化される。
【0030】
なお、外周側突起部42の外側面(連結部41と逆側の面)は、経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられた状態において、コルゲートチューブ3の外周面に沿うような屈折面を呈している。ただし、外周側突起部42の外側面は、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられた状態において、コルゲートチューブ3の外周面に沿うような弧状曲面を呈していてもよい。
【0031】
各凹溝部401の幅寸法は、最も幅広の部分において、コルゲートチューブ3の径方向において環状凸部31の最外周部分と環状凹部32の最内周部分との差と略同じかそれよりも大きい(僅かに大きい)程度の寸法に、設定されている。また、凹溝部401の幅寸法は、最も幅狭の部分において、コルゲートチューブ3の径方向において環状凹部32の最外周部分と環状凹部32最内周部分との差と略同じかそれよりも大きい(僅かに大きい)程度の寸法に、設定されている。なお、凹溝部401の深さ寸法は、コルゲートチューブ3の端縁部をその径方向に位置決めした状態で収容できる程度であればよく、特に限定はない。
【0032】
外周側突起部42の連結部41側の面420は、上述したとおり、経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられた状態において、スリット33の端縁部の外側部分に当接あるいは近接してこれを覆う(以下この面420を、「外側対向面420」ともいう)。この外側対向面420は、凹溝部401の延在方向に沿って凸条部51(凹溝部401の延在方向と直交して伸びる凸条部51)と凹条部52(凹溝部401の延在方向と直交して伸びる凹条部52)とが等ピッチで交互に繰り返して形成された波形状(凹凸面)に形成されている。
【0033】
ここで、各凸条部51の頂部は、横断面凸弧状に丸められているともに、各凹条部52の底部は、横断面凹弧状に丸められており、外側対向面420は全体として滑らかな波形状に形成されている。
【0034】
また、凸条部51のピッチ(凸条部51の最頂部と、当該凸条部51と凹条部52を挟んで隣り合う凸条部51の最頂部との間の距離)d1は、コルゲートチューブ3における、環状凹部32のピッチ(環状凹部32の中心(コルゲートチューブ3の延在方向に沿う中心)と、当該環状凹部32と環状凸部31を挟んで隣り合う環状凹部32の中心との間の距離)e1と等しい寸法とされる。これによって、各凸条部51が各環状凹部32と噛合可能となるとともに、各凹条部52が各環状凸部31と噛合可能となる。
【0035】
ただし、凸条部51および凹条部52が、環状凹部32および環状凸部31と噛み合わされた状態において、凸条部51の最頂部から凹条部52の最底部へかける稜線部分の途中の位置Aが、環状凸部31の頂端面の縁部に当接し、凸条部51の最頂部が、環状凹部32に近接、あるいは、当接した状態になることが好ましい。つまり、位置Aと凸条部51の最頂部との高さ方向の段差寸法(位置Aと凸条部51の最頂部との高さ方向の差)d2は、環状凸部31と環状凹部32との高さ方向の段差寸法(環状凸部31と環状凹部32との高さ方向の差)e2以下であることが好ましい。
【0036】
なお、図2においては、外側対向面420がコルゲートチューブ3の外側部分に当接し、凸条部51および凹条部52が、環状凹部32および環状凸部31と噛み合わされた状態が示されているが、経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられた状態(自然状態)においては、外側対向面420とコルゲートチューブ3の外側部分との間に僅かな隙間ができていてもよい(図4の上段参照)。
【0037】
<2.ワイヤーハーネス100の製造>
ワイヤーハーネス100を製造する工程について、図3を参照しながら説明する。図3は、当該工程の説明図である。
【0038】
まず、コルゲートチューブ3をスリット33で開いて、コルゲートチューブ3内にワイヤーハーネス本体部1を収容する。
【0039】
続いて、経路維持部材4を、コルゲートチューブ3に取り付ける。具体的には、コルゲートチューブ3をスリット33で開いて、コルゲートチューブ3のうちスリット33の両側の端縁部を一対の凹溝部401,401内に収容する。この工程は、例えば、経路維持部材4の延在方向に沿うどちらかの端部(延在方向の両端部のうちのどちら側の端部でもよい)における、一対の凹溝部401,401の開口端のそれぞれから、コルゲートチューブ3の延在方向に沿う一方の端部における、スリット33の両側の端縁部のそれぞれを差し込み、経路維持部材4を、スリット33の延在方向に沿って、相対的にスライド移動させていくことによって行われる。
【0040】
コルゲートチューブ3の延在方向の全体にわたって、スリット33の両側の端縁部が、一対の凹溝部401,401内に収容された状態となると、これによって、経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられることになる(図1に示される状態)。上述したとおり、経路維持部材4が取り付けられると、コルゲートチューブ3は、経路維持部材4の形状に沿って曲げられた状態で、当該経路維持部材4と一体化される。
【0041】
経路維持部材4がコルゲートチューブ3に取り付けられることによって、ワイヤーハーネス本体部1が経路維持部材付コルゲートチューブ2に装着されることになる。経路維持部材付コルゲートチューブ2が装着されることによって、ワイヤーハーネス本体部1における経路維持部材付コルゲートチューブ2の装着部分が、経路維持部材4の曲げ形状に沿う曲げ形状に維持される。つまり、このように構成されたワイヤーハーネス100においては、ワイヤーハーネス本体部1はコルゲートチューブ3によって覆われて保護されるとともに、経路維持部材4によって所定の形状に曲った経路を描くように維持される。したがって、経路維持部材4をワイヤーハーネス本体部1の敷設箇所に合わせた形状に形成しておけば、ワイヤーハーネス本体部1が当該敷設箇所に合わせた一定の経路に維持されることになる。
【0042】
なお、この後、必要に応じて、タイバンド、粘着テープ等がコルゲートチューブ3の外周に巻付けられ、コルゲートチューブ3の閉状態が維持されると共に、コルゲートチューブ3と経路維持部材4との一体化状態が維持されてもよい。なお、上記の他、コルゲートチューブ3自体に設けられたロック構造等によってコルゲートチューブ3の閉状態が維持されてもよい。
【0043】
<3.ワイヤーハーネス100の敷設態様>
ワイヤーハーネス100を車両等に組み付ける態様について、図4を参照しながら説明する。図4は、経路維持部材付コルゲートチューブ2に、これを周方向にねじる力がかかった際の、ワイヤーハーネス100の断面(図1のK−K線断面)の様子を、模式的に示す図である。
【0044】
ワイヤーハーネス100は、例えば、経路維持部材付コルゲートチューブ2の装着部において車体パネル等に固定された状態で車両内に組み付けられる。具体的には、ワイヤーハーネス100は、例えば、経路維持部材付コルゲートチューブ2に巻き付けられるベルト部91と、車体パネル等に形成された係止孔等に押し込まれて固定されるクリップ部92とから構成される固定用部材(例えばクランプ部材)9を用いて車体に固定される(図1参照)。
【0045】
ここで、固定用部材9は、理想的には、経路維持部材付コルゲートチューブ2の周方向について定められた位置に正確に取り付けられている必要があるが、実際は、周方向についての取り付け位置が、公差の範囲内で位置ずれしている可能性がある。すなわち、図示されるように、本来であれば、クリップ部92を例えば6時方向に向けるようにして経路維持部材付コルゲートチューブ2に取り付けられているべき固定用部材9が、クリップ部92を6時方向からずれた方向に向けるようにして経路維持部材付コルゲートチューブ2に取り付けられている可能性がある(図4の上段に示す状態)。このように周方向に位置ずれした状態で経路維持部材付コルゲートチューブ2に取り付けられているクリップ部92を、車体パネルPに形成された係止孔に押し込んで車体パネルPに対して固定すると(図4の下段に示す状態)、経路維持部材付コルゲートチューブ2に、これを周方向にねじる力(ねじり力)がかかる。
【0046】
ここで、コルゲートチューブ3は経路維持部材4よりも変形しやすい。したがって、経路維持部材付コルゲートチューブ2にねじり力がかかると、その延在方向の一部において、コルゲートチューブ3が、経路維持部材4よりも大きくねじれ変形するおそれがある。すると、スリット33の延在方向に沿う一部において、その一方側の端縁部の外側部分が、外側対向面420に強く突き当たった状態となる。ここで、当該端縁部の外側部分が突き当たった面が平坦であるとすると、当該平坦面で環状凸部31が押しつぶされる格好となる可能性があり、その結果、スリット33の延在方向に沿う一部において、経路維持部材とコルゲートチューブ3との間に隙間ができるおそれがある。
【0047】
ここでは、上述したとおり、外側対向面420は、波形状に形成されている。したがって、経路維持部材付コルゲートチューブ2にねじり力がかかって、スリット33の一方側の端縁部の外側部分が、外側対向面420に強く突き当たった状態となっても、環状凸部31が凹条部52の中に入り込むことができるので、環状凸部31が押しつぶされにくく、経路維持部材4とコルゲートチューブ3との間に隙間ができにくい。
【0048】
<4.効果>
上記の実施の形態においては、コルゲートチューブ3によってワイヤーハーネス本体部1を覆うことができるとともに、そのコルゲートチューブ3に取付けられた経路維持部材4によってその経路を一定に維持することができる。この構成においては、経路維持部材4自体でワイヤーハーネス本体部1を覆わなくてもよいため、経路維持部材4自体を小型かつ単純な形状にすることができる。このため、長手方向に沿って形状を維持するように形成された経路維持部材4を、比較的低コストで形成することができる。したがって、より低コストで、ワイヤーハーネス本体部1を覆いつつその経路を一定に維持できる。また、ワイヤーハーネス本体部1を曲げた状態に維持できる結果、当該ワイヤーハーネス本体部1を車両等に組付ける際に、車両に対する取り付け箇所を少なくすることができる。換言すれば、経路維持部材付コルゲートチューブ2の取り付け箇所が少なくても、ワイヤーハーネス本体部1を一定の曲げ形状に維持できる。このため、ワイヤーハーネス本体部1を取り付け固定するためのクランプ部材等の使用個数、取り付け作業を少なくすることができ、この観点からも、経路維持部材付コルゲートチューブ2の製造コスト、取り付け作業コストの低減を図ることができる。
【0049】
また、上記の実施の形態においては、経路維持部材4は、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部401,401にコルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部が収容された状態とされることによって、コルゲートチューブ3の長手方向に沿って取付けられる。この構成によると、コルゲートチューブ3と経路維持部材4との取り付け位置関係が安定化するため、コルゲートチューブ3を、経路維持部材4の形状に沿った所期の形状に維持し易い。また、経路維持部材4がコルゲートチューブ3から外れにくい。さらに、スリット33が経路維持部材4の一部によって閉塞されることになるため、コルゲートチューブ3内のワイヤーハーネス本体部1がスリット33から外部に脱してしまうといった事態が発生しにくい。
【0050】
また、上記の実施の形態においては、コルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部が収容される凹溝部401の一対の側壁面420,430のうち、スリット33の端縁部の外側部分を覆う側壁面(外側対向面)420が波形状に形成されている。この構成によると、例えばワイヤーハーネス100を車両に組み付ける際に、経路維持部材付コルゲートチューブ2に、これを周方向にねじる力がかかっても、経路維持部材4とコルゲートチューブ3との間に隙間ができにくい。したがって、ワイヤーハーネス本体部1を露出させずに安定して覆い続けることができる。
【0051】
また、上記の実施の形態においては、凸条部51のピッチd1が、環状凹部32のピッチe1と一致しているので、外側対向面420が、コルゲートチューブ3のスリット33の両側の端縁部の外側部分を覆った状態において、凸条部51が環状凹部32と噛み合うとともに、凹条部52が環状凸部31と噛み合う。この構成によると、環状凸部31の押しつぶしが効果的に抑制され、路維持部材4とコルゲートチューブ3との間における隙間の発生を特に効果的に抑制できる。
【0052】
また、上記の実施の形態においては、各凸条部51の頂部は横断面凸弧状に丸められているともに、各凹条部52の底部は、横断面凹弧状に丸められている(すなわち、凸条部51の頂部および凹条部52の底部が、アール形状とされている)。この構成によると、例えば経路維持部材4をスリット33の延在方向に沿って相対的にスライド移動させながら凹溝部401にスリット33の両側の端縁部を収容していく場合に、経路維持部材4をスムースに相対移動させることができる。したがって、経路維持部材4をコルゲートチューブ3に取り付ける作業に負担がかかりにくい。
【0053】
<5.変形例>
上記の実施の形態に係る経路維持部材4は、図5に示されるように、品番の異なる複数種類のコルゲートチューブ3a,3b,3cの間で共用されてもよい。ただし、これら複数種類のコルゲートチューブ3a,3b,3cは、少なくとも環状凹部32a,32b,32cのピッチe1が共通し、その他の寸法(例えば、外径寸法、内径寸法等)が相違するものとする。この場合、経路維持部材4の外側対向面420に形成される波形状の凸条部51のピッチd1は、環状凹部32a,32b,32cのピッチe1と等しい寸法とされる。また、凸条部51の高さは、例えば、環状凹部の深さが最も浅いコルゲートチューブ3aにあわせて規定すればよい。すなわち、位置A(凸条部51および凹条部52が、環状凹部32aおよび環状凸部31aと噛み合わされた状態において、環状凸部31aの頂端面の縁部が当接する位置A)と凸条部51の最頂部との高さ方向の段差寸法d2aが、環状凸部31aと環状凹部32aとの高さ方向の段差寸法e2a以下となるように(最も好ましくは、段差寸法e2と一致するように)規定すればよい。
【0054】
また、外側対向面420の波形状は、必ずしも上述したものに限られない。例えば、凸条部および凹条部の少なくとも一方が、横断面三角形状、あるいは、横断面台形状に形成されてもよい。ただし、コルゲートチューブ3に経路維持部材4を装着する作業の作業性を考慮すると、外側対向面420はできるだけ滑らかな波形状であることが好ましく、この変形例においても、凸条部および凹条部に含まれる角部は角丸形状とされることが好ましい。
【0055】
また、上記の実施の形態においては、凸条部51のピッチd1は環状凸部31のピッチe1と等しい寸法とされたが、凸条部51のピッチd1は、必ずしも環状凸部31のピッチe1と等しい寸法とされなくともよい。ただし、環状凸部31の押しつぶしをできるだけ効果的に抑制するためには、凸条部51が環状凹部32以外の部分と対向する箇所ができるだけ少ないことが好ましく、凸条部51が環状凹部32と噛合可能となっていることが特に好ましい。このためには、凸条部51のピッチd1は、環状凸部31のピッチe1の整数倍となっていることが好ましい。
【0056】
また、上記の実施の形態においては、外側対向面420は、外周側突起部42の延在方向に沿う全域にわたって波形状とされていたが、外側対向面420は、外周側突起部42の延在方向に沿う一部領域においてのみ波形状とされてもよい。例えば、経路維持部材4の延在方向に沿う端部部分、経路維持部材4が比較的小さい曲げ半径で曲げられる部分、あるいは、直線状の部分等の特定領域においてのみ、外側対向面420を波形状としてもよい。
【0057】
また、上記の実施の形態において、経路維持部材4のうち一対の凹溝部401,401が形成された部分は、経路維持部材4の長手方向全体であってもよいし、その長手方向に沿った一部であってもよい。
【0058】
また、上記の実施の形態においては、経路維持部材4は、長手方向に沿って少なくとも一部が曲げられた形状の長尺部材であるとしたが、経路維持部材は、曲げられた形状の部分がない直線形状のものであってもよい。
【0059】
また、上記の実施の形態においては、経路維持部材4は、長尺方向に沿う形状を維持できる部材であればよく、必ずしも樹脂を金型成形することにより形成された部材である必要はない。例えば、経路維持部材は、ゴム、エラストマー等から形成された弾性を有する長尺部材と、当該長尺部材の延在方向に沿って埋設された、塑性変形可能で、かつ、塑性変形後に形状を維持できる形状維持線とから構成されてもよい。この場合、形状維持線は、金属線(鉄線、導線、ステンレス線、あるいは、これらの合金線等)、あるいは、塑性変形後にある程度の剛性を有する樹脂等を用いて形成することができる。この構成の場合、形状維持線を、塑性変形させることによって、経路維持部材の長手方向に沿う形状を維持することが可能となる。
【0060】
また、1つのワイヤーハーネス100において、上記の実施の形態、変形例で説明した経路維持部材等が混在して用いられていてもよい。
【0061】
なお、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0062】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0063】
100 ワイヤーハーネス
1 ワイヤーハーネス本体部
2 経路維持部材付コルゲートチューブ
3 コルゲートチューブ
31 環状凸部
32 環状凹部
33 スリット
4 経路維持部材
401 凹溝部
41 連結部
42 外周側突起部
43 内周側突起部
420 外側対向面
51 凸条部
52 凹条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って環状凸部と環状凹部とが交互に形成され、その長手方向に沿ってスリットが形成されたコルゲートチューブと、
長手方向に沿って形状を維持するように形成された長尺部材であり、その長尺方向に沿って形成された一対の凹溝部に、前記コルゲートチューブの前記スリットの両側の端縁部が収容された状態で、前記コルゲートチューブの長手方向に沿って取り付けられた経路維持部材と、
を備え、
前記凹溝部の一対の側壁面のうち、前記スリットの両側の端縁部の外側部分を覆う側壁面が、前記凹溝部の延在方向に沿って、凸条部と凹条部とが交互に繰り返して形成された波形状に形成されている、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記凸条部が前記環状凹部と噛合可能に形成されている、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項3】
請求項2に記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記凸条部のピッチが、前記環状凹部のピッチと一致している、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の経路維持部材付コルゲートチューブであって、
前記凸条部の頂部が横断面凸弧状に丸められているとともに、前記凹条部の底部が横断面凹弧状に丸められている、
経路維持部材付コルゲートチューブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の経路維持部材付コルゲートチューブと、
少なくとも1本の電線を有し、前記経路維持部材付コルゲートチューブ内に挿通されたワイヤーハーネス本体部と、
を備えるワイヤーハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−99153(P2013−99153A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241081(P2011−241081)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】