説明

経路設定装置、経路設定方法、管理装置、管理システム、及び記録媒体

【課題】リアルタイム性、メンテナンス性、及び保守性を確保することができる無線経路の設定を行うことができる経路設定装置等を提供する。
【解決手段】経路設定装置5は、無線アクセスポイント装置と複数の無線機器とによって形成される無線ネットワークで確立される無線経路の設定を行うものであり、入力指示に応じて、無線機器等の位置、無線機器等の間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された無線機器等の通信タイミングの編集及び設定とが可能な編集部11と、無線機器の電力量性能情報を記憶する記憶装置5eと、編集部11によって設定された無線経路及び通信タイミング並びに記憶装置5eに記憶された電力量性能情報を用いて、無線機器等の間の伝送遅延、無線機器の消費電力量、及び無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出する算出部12と備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信経路(無線経路)の設定を行う経路設定装置及び経路設定方法、設定された無線経路の管理を行う管理装置及び管理システム、並びに当該経路設定を実現するプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等においては、高度な自動操業を実現すべく、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)と、これらの管理及び制御を行う管理装置とが通信バスを介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されている。従来のフィールド機器は、プラント等に敷設された有線の通信バスを介して測定信号や制御信号等の各種信号の送受信を行うものが殆どであったが、近年では、ISA100やWirelessHART等の産業用無線通信規格に準拠して無線により各種信号の送受信を行うフィールド機器(無線フィールド機器)が実現されている。
【0003】
ここで、上記のISA100は、国際計測制御学会(ISA:International Society of Automation)で策定されたインダストリアル・オートメーション用無線通信規格である。このISA100は、プラント等における計測・制御等に用いられる無線通信規格であるため、リアルタイム性(伝送遅延(レイテンシー)が殆ど生じないこと)が重要視される。よって、ISA100では、無線接続アクセスポイント装置(無線フィールド機器との間で無線通信を行う装置)が複数設けられ、無線アクセスポイント装置と無線フィールド機器とが1対1で接続される形態が基本である。
【0004】
これに対し、上記のWirelessHARTは、米国のHART(Highway Addressable Remote Transducer)通信協会によって提唱された無線通信用規格である。このWirelessHARTは、センサネットワーク(複数のセンサ付無線端末を空間に散在させ、それらが協調して環境や物理的状況を採取することを可能とする無線ネットワーク)を基礎としている。このため、WirelessHARTでは、1つの無線アクセスポイント装置が設けられ、無線フィールド機器や中継装置(リピータ)等の無線機器によってメッシュ状に形成された無線ネットワークが無線アクセスポイント装置に接続される形態が基本である。このWirelessHARTでは、各無線機器の通信品質を示す情報が管理装置によって収集され、収集された情報に基づいて無線経路が動的に切り替えられる。尚、以下の特許文献1には、無線メッシュ型ネットワークを最適化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した産業用無線通信規格が複数存在すると、ネットワークインフラを提供するベンダにとっては規格毎のネットワークインフラを設計・開発する必要があり、ネットワークインフラを利用するユーザにとっては規格毎に異なるツールや手法を用いてネットワークインフラの保守・管理を行う必要があるため、ベンダ及びユーザ双方のコスト面での負担が大きくなる。そこで、近年では、産業用無線通信規格を統合して標準化しようとする動きが活発化している。
【0007】
ここで、前述したWirelessHARTでは、現場に設置された無線機器が周囲の無線機器や無線アクセスポイント装置との間で通信を行って得た通信品質等を示す情報に基づいて無線メッシュ型ネットワークが形成されるため、無線機器を実際に現場に設置するまでは無線経路が定まらない。無線機器の伝送遅延や消費電力量は無線経路に依存するため、システム設計の段階で無線経路が定まっていないと、無線機器の伝送遅延やバッテリの交換周期を見積もることができない。このため、WirelessHARTで用いられている技術をプラント等の制御に適用した場合には、リアルタイム性及びメンテナンス性の面から問題が生ずる虞が考えられる。
【0008】
また、前述したWirelessHARTでは、無線経路が定まった後においても、無線機器毎の通信品質に応じて無線経路が動的に切り替えられる。このため、無線機器の伝送遅延や消費電力量も、無線経路の切り替えに応じて時々刻々と変化してしまう。すると、上記の場合と同様に、無線機器の伝送遅延やバッテリの交換周期を見積もることができず、リアルタイム性及びメンテナンス性の面から問題が生ずる虞が考えられる。
【0009】
更に、前述したWirelessHARTのように、無線機器毎の通信品質に応じて無線経路が動的に変化してしまうと、ユーザが実際の無線経路を把握することができない。ここで、ユーザが実際の無線経路を把握できている場合には、将来生ずると予想される通信障害を避けるために必要となる定期作業(例えば、無線通信の障害となる立ち木の枝の刈り取り作業等)や運用ルール(無線通信の障害になる構造物の建築規制等)を計画することができる。しかしながら、ユーザが実際の無線経路を把握できていない場合には、このような計画を立てることができないため保守性の面からの問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リアルタイム性、メンテナンス性、及び保守性を確保することができる無線経路の設定を行うことができる経路設定装置及び経路設定方法、設定された無線経路の管理を行う管理装置及び管理システム、並びに当該経路設定を実現するプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の経路設定装置は、無線接続装置(2)と複数の無線機器(1a〜1d)とによって形成される無線ネットワーク(N1)で確立される無線経路の設定を行う経路設定装置(5)であって、入力指示に応じて、前記無線接続装置及び前記無線機器の位置、前記無線接続装置と前記無線機器との間の無線経路、並びに前記無線機器間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された前記無線接続装置及び前記無線機器の通信タイミングの編集及び設定とが可能な編集手段(11)と、前記無線機器の電力量性能情報(F2)を記憶する記憶手段(5e)と、前記編集手段によって設定された無線経路及び通信タイミング並びに前記記憶手段に記憶された前記電力量性能情報を用いて、前記無線機器から前記無線接続装置まで又は前記無線機器間の伝送遅延、前記無線機器の消費電力量、及び前記無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出する算出手段(12)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、無線接続装置及び無線機器(無線機器等)の位置及び無線機器等の間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された無線機器等の通信タイミングの編集及び設定とが入力指示に応じて編集手段で行われ、編集手段で設定された無線経路及び通信タイミングと記憶手段に記憶された電力量性能情報とを用いて、無線機器等の間の伝送遅延、無線機器の消費電力量、及び無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つが算出手段によって算出される。
また、本発明の経路設定装置は、前記電力量性能情報が、前記無線機器が通信を行う度に消費される電力量を示す第1情報と、前記無線機器が所定の操作を行う度に消費される電力量を示す第2情報とを含むことを特徴としている。
また、本発明の経路設定装置は、前記編集手段が、前記無線機器の各々について、主たる無線経路である第1無線経路と、補助的な無線経路である第2無線経路とを設定可能であることを特徴としている。
また、本発明の経路設定装置は、前記編集手段が、前記無線接続装置及び前記無線機器の高さ位置の編集及び設定が可能であることを特徴としている。
また、本発明の経路設定装置は、前記編集手段によって編集される前記無線接続装置、前記無線機器、及び無線経路と、前記無線接続装置及び前記無線機器の周囲に位置する構造物とを平面視又は側面視で重ね合わせた状態で表示する表示手段(13)を備えることを特徴としている。
本発明の経路設定方法は、無線接続装置(2)と複数の無線機器(1a〜1d)とによって形成される無線ネットワーク(N1)で確立される無線経路の設定を行う経路設定方法であって、入力指示に応じて、前記無線接続装置及び前記無線機器の位置、前記無線接続装置と前記無線機器との間の無線経路、並びに前記無線機器間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された前記無線接続装置及び前記無線機器の通信タイミングの編集及び設定とを行う第1ステップ(S12,S14)と、前記第1ステップで設定された無線経路及び通信タイミングと前記無線機器の電力量性能情報(F2)とを用いて、前記無線機器から前記無線接続装置まで又は前記無線機器間の伝送遅延、前記無線機器の消費電力量、及び前記無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出する第2ステップ(S16)とを有することを特徴としている。
本発明の管理装置は、無線接続装置(2)と複数の無線機器(1a〜1d)とによって形成される無線ネットワーク(N1)の管理を行う管理装置(3)において、前記複数の無線機器の各々に制御信号を送信して、上記の何れかに記載の経路設定装置、又は、上記の経路設定方法によって設定された無線経路通りの無線経路を確立させることを特徴としている。
また、本発明の管理装置は、前記無線接続装置を備えることを特徴としている。
本発明の管理システムは、無線接続装置(2)と複数の無線機器(1a〜1d)とによって形成される無線ネットワーク(N1)を管理する管理システム(MS)において、上記の何れかに記載の経路設定装置(5)と、上記の管理装置(3)とを備えることを特徴としている。
本発明の記憶媒体は、コンピュータを、入力指示に応じて、無線ネットワーク(N1)の一部をなす無線接続装置(2)及び無線機器(1a〜1d)の位置、前記無線接続装置と前記無線機器との間の無線経路、並びに前記無線機器間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された前記無線接続装置及び前記無線機器の通信タイミングの編集及び設定とが可能な編集手段(11)と、前記無線機器の電力量性能情報(F2)を記憶する記憶手段(5e)と、前記編集手段によって設定された無線経路及び通信タイミング並びに前記記憶手段に記憶された前記電力量性能情報を用いて、前記無線機器から前記無線接続装置まで又は前記無線機器間の伝送遅延、前記無線機器の消費電力量、及び前記無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出する算出手段(12)として機能させる経路設定プログラム(P1)を記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力指示に応じて、編集手段が無線機器等の位置及び無線機器等の間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された無線機器等の通信タイミングの編集及び設定とを行い、編集手段によって設定された無線経路及び通信タイミングと記憶手段に記憶された電力量性能情報とを用いて、算出手段が無線機器等の間の伝送遅延、無線機器の消費電力量、及び無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出している。これにより、設計段階で無線経路、伝送遅延、消費電力量等を知ることができるため、リアルタイム性、メンテナンス性、及び保守性を確保することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による経路設定装置の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による管理システムを実現する大まかな手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による経路設定方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態による経路設定装置に表示される編集ウィンドウを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による経路設定装置に表示される他の編集ウィンドウを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による経路設定装置に表示される機器設定ウィンドウを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による経路設定装置で生成される出力ファイルの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による経路設定装置、経路設定方法、管理装置、管理システム、及び記録媒体について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による管理システムの全体構成を示す図である。図1に示す通り、本実施形態の管理システムMSは、無線機器1a〜1d、無線アクセスポイント装置2(無線接続装置)、ネットワーク管理装置3(管理装置)、ゲートウェイ装置4、及び経路設定装置5を備えており、ネットワーク管理装置3が無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2によって構成される無線ネットワークN1を管理する。尚、図1では4つの無線機器1a〜1dを示しているが、無線機器の数は任意である。
【0015】
無線機器1a〜1dは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器等のプラントや工場に設置されるフィールド機器(無線フィールド機器)であり、ISA100.11a、或いはWirelessHART等に準拠した無線通信を行う。ここで、無線機器1a〜1dは、中継装置(リピータ)の機能を備えており、無線アクセスポイント装置2との間の無線通信以外にも他の無線機器との間の無線通信が可能である。これら無線機器1a〜1dの動作は、ネットワーク管理装置3から無線アクセスポイント装置2を介して送信されてくる制御データに基づいて制御される。また、無線機器1a〜1dで得られた測定データは無線アクセスポイント装置2を介してネットワーク管理装置3に収集される。
【0016】
無線アクセスポイント装置2は、無線機器1a〜1dが接続される無線ネットワークN1と、ネットワーク管理装置3、ゲートウェイ装置4、及び経路設定装置5が接続されるバックボーンネットワークN2とを接続し、無線機器1a〜1dとネットワーク管理装置3等との間で送受信される各種データの中継を行う装置である。尚、無線アクセスポイント装置2も、上述したISA100.11a或いはWirelessHART等に準拠した無線通信を行う。
【0017】
ネットワーク管理装置3は、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2によって構成される無線ネットワークN1を管理する。具体的に、ネットワーク管理装置3は、経路設定ファイルF10に基づいて無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2に制御信号を送信することにより、無線機器1a〜1d間、及び無線機器1a〜1dと無線アクセスポイント装置2との間に、経路設定ファイルF10に設定されている無線経路通りの無線経路を確立させる。ここで、上記の経路設定ファイルF10は、操作者(例えば、管理システムMSの設計を行う設計者)が経路設定装置5を操作することによって作成されるファイルであり、無線ネットワークN1で確立される無線経路を規定するファイルである。
【0018】
このような経路設定ファイルF10を用いて無線ネットワークN1で確立される無線経路を管理するのは、管理システムMSにおいてリアルタイム性、メンテナンス性、及び保守性を確保するためである。つまり、管理システムMSの設計段階で無線経路を規定するとともにWirelessHARTような動的な無線経路の変更を禁止することで、無線機器1a〜1dの伝送遅延やバッテリ(電池)の交換周期の正確な見積もりを可能にしてリアルタイム性及びメンテナンス性を確保している。また、無線経路を正確に把握することで、定期作業や運用ルールの計画を可能にして保守性を確保している。
【0019】
また、ネットワーク管理装置3は、無線アクセスポイント装置2を介して無線機器1a〜1dとの間で通信を行いながら、無線ネットワークN1に接続されている無線機器1a〜1dの制御(例えば、弁の開閉等の制御)、及び無線ネットワークN1に接続されている無線機器1a〜1dで測定される測定データの収集等を行う。加えて、新たな無線機器を無線ネットワークN1に参入させるか否かの参入処理等も行う。
【0020】
ゲートウェイ装置4は、バックボーンネットワークN2と、分散制御システム(DCS)を実現する上位管理装置等(図示省略)が接続される制御ネットワークN3とを接続し、無線機器1a〜1d或いはネットワーク管理装置3と上位管理装置との間で送受信される各種データの中継を行う装置である。経路設定装置5は、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2によって構成される無線ネットワークN1で確立させるべき無線経路の設定を行って経路設定ファイルF10の生成等を行う装置である。
【0021】
この経路設定装置5は、例えばキーボードやポインティングデバイス等の入力装置5a、液晶表示装置等の表示装置5b、通信装置5c(図1では図示省略、図2参照)、及びドライブ装置5d等を備えるノート型のパーソナルコンピュータ等で実現される。ドライブ装置5dは、例えばCD−ROM又はDVD(登録商標)−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体Mに記録されているデータの読み出しを行う装置である。尚、経路設定装置5の機能(無線経路の編集・設定機能等)は、記録媒体Mに記録されたプログラム(経路設定プログラム)をドライブ装置5dによって読み出してインストールすることによりソフトウェア的に実現される。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態による経路設定装置の要部構成を示すブロック図である。図2に示す通り、本実施形態の経路設定装置5は、入力装置5a、表示装置5b、通信装置5c、及びドライブ装置5dに加えて、記憶装置5e(記憶手段)及び処理装置5fを備える。記憶装置5eは、例えばハードディスク等の外部記憶装置であり、上述したドライブ装置5dによって記録媒体Mから読み出されてインストールされた経路設定プログラムP1に加えて、マップファイルF1、機器性能ファイルF2、経路設定ファイルF10、及び出力ファイルF11等の各種ファイルを格納する。
【0023】
上記のマップファイルF1は、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2が設置される場所の地図情報(マップ)が格納されるファイルである。例えば、無線機器1a〜1d等の設置場所がプラント等の敷地内である場合には敷地内に設置される各種装置(構造物)の配置を示す地図情報が格納されたファイルであり、無線機器1a〜1d等の設置場所がプラント等の敷地外である場合には周囲の建物(構造物)を示す地図情報が格納されたファイルである。
【0024】
機器性能ファイルF2は、無線機器1a〜1d及び無線アクスポイント装置2の各種性能を示す情報が格納されるファイルである。具体的には、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の電力量性能を示す電力量性能情報、通信性能を示す通信性能情報、その他の情報が格納される。上記の電力量性能情報は、データの送信時に消費される電力量を示す送信時消費電力量(第1情報)、データの受信時に消費される電力量を示す受信時消費電力量(第1情報)、センサやアクチュエータ等を駆動する際に消費される電力量を示すセンサ等駆動消費電力量(第2情報)、センサによって被測定量を検出する際に消費される電力量を示すセンサ検出消費電力量(第2情報)等を示す情報である。上記の通信性能情報は、最小の伝送遅延量を示す情報や無線通信が可能な距離等を示す情報である。
【0025】
経路設定ファイルF10は、前述した通り、無線ネットワークN1で確立される無線経路が規定されるファイルであり、操作者が経路設定装置5を操作することによって作成される。出力ファイルF11は、経路設定装置5によって設定された無線経路に関する各種の情報が格納されるファイルであり、設置計画図ファイル、側面図ファイル、累計台数表ファイル、機器一覧ファイル、及び転送経路計画表ファイル等が含まれる。この出力ファイルF11は、設計段階において管理システムMSの性能をユーザに提示するために用いられる。
【0026】
設置計画図ファイルは、無線機器1a〜1d等の設置予定位置を示す平面図(設置計画図)が格納されるファイルである。具体的には、無線機器1a〜1d等の周囲に位置する構造物を示す地図情報に対し、無線機器1a〜1d等の設置予定位置や無線機器1a〜1d等の間に確立される無線経路を平面視で重ね合わせた設置計画図が格納されるファイルである。側面図ファイルは、無線機器1a〜1d等の設置予定位置を示す側面図が格納されるファイルである。具体的には、無線機器1a〜1d等の周囲に位置する構造物、無線機器1a〜1d等、及び無線機器1a〜1d等の間に確立される無線経路を側面視で重ね合わせた側面図が格納されるファイルである。
【0027】
累計台数表ファイルは、無線経路の設定が行われた無線機器1a〜1d等を含む管理システムMS全体を構成する全ての機器の台数を示す情報が格納されるファイルである。機器一覧ファイルは、管理システムMSを構成する無線機器1a〜1dの詳細情報が格納されるファイルである。具体的には、無線機器1a〜1d毎に試算されたバッテリ寿命や伝送遅延(レイテンシー)を示す情報、無線機器1a〜1d毎に設定されたアンテナの高さを示す情報等が格納されるファイルである。転送経路計画表ファイルは、無線機器1a〜1d等の間に設定された無線経路毎の通信品質等を示す情報が格納されるファイルである。
【0028】
処理装置5fは、例えばCPU(中央処理装置)であり、経路設定装置5の動作を統括して制御する。経路設定装置5の電源投入により、或いは、経路設定装置5を操作する操作者の指示によって、処理装置5fが、記憶装置1eに格納されている経路設定プログラムP1を読み出して実行することにより、図2に示す編集部11(編集手段)、算出部12(算出手段)、及び表示制御部13(表示手段)が実現される。
【0029】
編集部11は、操作者が入力装置5aを操作して行った入力指示に応じて、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2が設置される位置、無線機器1a〜1dと無線アクセスポイント装置2との間の無線経路、及び無線機器1a〜1d間の無線経路の編集及び設定を行う。また、編集部11は、操作者が入力装置5aを操作して行った入力指示に応じて、無線経路が設定された無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の通信タイミングの編集及び設定を行う。
【0030】
具体的に、編集部11は、記憶装置5eに記憶されたマップファイルF1を読み出し、表示制御部13を制御して、背景に地図情報が表示された編集画面(編集ウィンドウ)を表示装置5bに表示させる。そして、その編集ウィンドウに対してなされる操作者の入力指示に応じて上記の無線経路等の編集を行い、操作者から無線経路の設定指示がなされた場合に、経路設定ファイルF10を生成する。
【0031】
ここで、編集部11は、無線機器1a〜1dの各々について、主たる無線経路(第1無線経路)と補助的な無線経路(第2無線経路)とを設定可能である。主たる無線経路は、通常に用いられる無線経路であり、補助的な無線経路は例えば異常が生じて主たる無線経路を介した無線通信が不可能になった場合に用いられる無線経路である。また、編集部11は、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の高さ位置の編集及び設定も可能である。高さ位置の編集及び設定が可能であることから、無線機器1a〜1d等の間に存在する建物を避けた無線経路の設定を行うことができる。
【0032】
また、編集部11は、無線経路の設定がなされた後に、操作者の入力指示に応じて無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の通信タイミングの編集及び設定を行う(スケジューリング)。具体的に、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2は、例えば16チャネルを用いた無線通信が可能であるため、各無線機器1a〜1dの伝送遅延が極力小さくなるように、又はプロセス制御の制御周期を超えないように、どのチャネルを用いてどのタイミングで通信を行うかの編集及び設定を行う。
【0033】
算出部12は、編集部11によって設定された無線経路及び通信タイミングと記憶装置5eに記憶された機器性能ファイルF2とを用いて、無線装置1a〜1dから無線アクセスポイント装置2まで又は無線機器1a〜1d間の伝送遅延、無線機器1a〜1dの消費電力量、及び無線機器1a〜1dのバッテリの寿命等を算出する。そして、算出結果に基づいて前述した出力ファイルF11を生成し、或いは、操作者の指示に応じて表示制御部13を制御して算出結果を表示装置5bに表示させる。尚、上記伝送遅延、消費電力量、及びバッテリの寿命の全てを算出する必要は必ずしも無く、必要に応じてこれらのうちの1つ又は複数を求めるようにしても良い。
【0034】
表示制御部13は、編集部11又は算出部12の下で、表示装置5bに対する表示制御を行ってGUI(Graphical User Interface)を提供する。例えば、編集部11によって編集される無線機器1a〜1d、無線アクセスポイント装置2、及び無線経路と、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の周囲に位置する構造物とを平面視又は側面視で重ね合わせた状態で表示する。かかる表示を行うことにより、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の設置位置、並びにこれらの間に確立される無線経路を容易に確認することが可能になる。
【0035】
次に、以上説明した管理システムMSを実現する手順について説明する。図3は、本発明の一実施形態による管理システムを実現する大まかな手順を示すフローチャートである。図3に示す通り、管理システムMSは、大まかに、無線経路等の設定工程(工程S1)、管理システムMSの性能確認工程(工程S2)、機器の設置工程(工程S3)、経路設定ファイルF10のダウンロード工程(工程S4)、及び無線経路の確立工程(工程S5)を経て実現される。
【0036】
無線経路等の設定工程(工程S1)は、主に図1に示す管理システムMSで実現する無線ネットワークN1を設計する工程である。具体的には、操作者が経路設計装置5を操作して図4に示すフローチャートに従った処理を経路設計装置5に行わせることにより、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2を設置する位置の編集及び設定、これらの間の無線経路の編集及び設定、並びに、無線経路が設定された無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の通信タイミングの編集及び設定を行う工程である。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態による経路設定方法を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、操作者が経路設定装置5の電源を投入し、或いは、経路設定装置5に対して経路設定プログラムP1の実行指示を行うことにより開始される。経路設定プログラムP1が記憶装置5eから読み出されて処理装置5fによって実行されることにより、図2に示す編集部11、算出部12、及び表示制御部13が実現される。
【0038】
かかる状態で操作者が入力装置5aを操作して無線機器1a〜1dを設置する場所のマップファイルF1を選択する指示を行うと、選択指示されたマップファイルF1が編集部11によって記憶装置5eから読み出される。すると、表示制御部13が編集部11によって制御され、読み出されたマップファイルF1に格納された地図情報が背景に表示された編集ウィンドウが表示装置5bに表示される(ステップS11)。
【0039】
編集ウィンドウが表示されると、操作者による入力装置5aの操作に応じて、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2を設置する位置の編集、これらの間の無線経路の編集、及び無線経路が設定された無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の通信タイミングの編集が編集部11により行われる(ステップS12:第1ステップ)。図5は、本発明の一実施形態による経路設定装置に表示される編集ウィンドウを示す図である。
【0040】
図5に示す通り、経路設定装置5に表示される編集ウィンドウW1には、機器一覧表示領域R1、編集領域R2、及び編集メニュー表示領域R3が設けられている。機器一覧表示領域R1は、操作者の操作に応じて編集領域R2内に配置された無線機器及び無線アクセスポイント装置がツリー形式で一覧表示される領域である。図5に示す例では、1台の無線アクセスポイント装置(BBR)と、10台の無線機器(フィールド機器)とが表示されている。尚、無線機器は、無線機器の種類毎や無線機器を提供するベンダ毎にまとめて表示される。
【0041】
編集領域R2は、上述したステップS11で読み出されたマップファイルF1に格納された地図情報が背景に表示され、無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2の位置及びこれらの間の無線経路の平面視での編集を可能とする領域である。図5に示す例では、「本館」,「駐車場」,「5号館」等の構造物が背景に表示されており、操作者の指示に応じて配置された無線アクセスポイント装置を示すアイコンA1及び無線機器を示すアイコンB1〜B7と操作者の指示に応じて規定された無線経路(実線矢印又は波線矢印で示す経路)とが平面視で背景に重ね合わさった状態で表示されている。尚、実線矢印で示す経路が主たる無線経路であり、波線矢印で示す経路が補助的な無線経路である。
【0042】
尚、この編集領域R2には、以上の背景及びアイコンA1,B1〜B7以外に、操作者の編集作業を容易にするための情報を、操作者の指示に応じて表示させることが可能である。例えば、編集領域R2に表示された背景の拡大率に応じて長さが変化するスケールC1や無線機器毎の通信可能範囲D1を操作者の指示に応じて表示させることが可能である。操作者がスケールC1や通信可能範囲D1を参照すれば、無線機器及び無線アクセスポイント装置の距離や位置関係を容易に把握することができるため編集作業が容易になる。
【0043】
編集メニュー表示領域R3は、編集領域R2に配置可能な無線アクセスポイント装置や無線機器のアイコン等が表示される領域である。図5に示す例では、無線アクセスポイント(BBR)を示す逆三角形のアイコンIC1、無線機器(フィールド機器)を示す丸形のアイコンIC2、無線機器群(フィールド機器群)を示す3つの丸からなるアイコンIC3、及び他社の無線機器を示す丸形のアイコンIC4が編集メニュー表示領域R3に表示されている。尚、上述したスケールC1や通信可能範囲D1を示すアイコンを編集メニュー表示領域R3に設けても良い。
【0044】
以上の編集ウィンドウW1において、操作者が入力装置5aを用いて編集メニュー表示領域R3に表示されたアイコンIC1〜IC4等に対して特定の操作(例えば、編集領域R2にドラッグ・アンド・ドロップする操作)を行えば、無線機器や無線アクセスポイント装置を編集領域R2に新たに配置することができる。尚、編集領域R2に新たに配置された無線機器や無線アクセスポイント装置は、機器一覧表示領域R1にも追加されることになる。また、編集領域R2に既に表示されているアイコンA1,B1〜B7を移動させる操作を行えば、無線アクセスポイント装置や無線機器の位置を変えることができる。
【0045】
更に、編集領域R2に既に表示されているアイコンA1,B1〜B7に対し、通信元と通信先とを選択する操作を行うことで無線経路を設定することができる。例えば、図5に示す例において、アイコンB1を通信元として選択するとともにアイコンA1を通信先として選択すれば、アイコンB1で示される無線機器からアイコンA1で示される無線アクセスポイント装置に向かう無線経路を規定することができる。同様に、アイコンB1を通信元として選択するとともにアイコンB5を通信先として選択すれば、アイコンB1で示される無線機器からアイコンB5で示される無線機器に向かう無線経路を規定することができる。尚、規定した無線経路を主たる無線経路にするか、或いは補助的な無線経路にするかは操作者の指示に応じて設定される。
【0046】
また、編集領域R2に規定された無線経路に対して特定の操作(例えば、右クリック操作)を行うと、図6に示す編集ウィンドウW2が表示されて無線機器及び無線アクセスポイント装置の高さ位置の編集が可能になる。図6は、本発明の一実施形態による経路設定装置に表示される他の編集ウィンドウを示す図である。尚、図6に示す編集ウィンドウW2は、編集ウィンドウW1の編集領域R2に表示されているアイコンA1,B3間の無線経路に対して特定の操作を行った場合に表示されるものである。
【0047】
図6に示す例では、アイコンB3で示される無線機器及びアイコンA1で示される無線アクセスポイント装置、これらの間に位置する「構造物A」、並びにこれらの間に規定された無線経路PTが側面視で重ね合わせた状態で表示されている。併せて、アイコンB3で示される無線機器、アイコンA1で示される無線アクセスポイント装置、及び「構造物A」の高さ位置と、これらの間の距離とを入力する入力ボックスが表示されている。ウィンドウW2に表示された入力ボックスの値を変えれば、入力された値に応じて無線経路PTと「構造物A」との位置関係が自動的に変わるため、無線経路PTが「構造物A」に干渉するか否かを確認することができる。
【0048】
また、編集領域R2に配置された無線機器に対して特定の操作(例えば、右クリック操作)を行うと、図7に示す機器設定ウィンドウW3が表示されて無線機器の設定が可能になる。図7は、本発明の一実施形態による経路設定装置に表示される機器設定ウィンドウを示す図である。図7に示す例では、機器設定ウィンドウW3内に、チェックボックスBX1と入力ボックスBX2,BX3とが設けられている。
【0049】
チェックボックスBX1は、無線機器が中継機能を有するか否か、IOデバイスであるか否か等の無線機器の機能を設定するチェックボックスである。入力ボックスBX2は、無線経路を固定するか、或いは周囲の無線環境に応じて無線経路を動的に切り替えるかを設定する入力ボックスである。入力ボックスBX3は、無線機器のアンテナ高さを設定する入力ボックスである。この入力ボックスBX3は、図6に示す編集ウィンドウW2の無線機器の高さ位置を入力する入力ボックスと連動している。尚、編集領域R2に配置された無線アクセスポイント装置についても、同様の操作を行うことにより、無線アクセスポイント装置のアンテナ高さ等を設定することができる。
【0050】
以上の編集ウィンドウW1,W2や機器設定ウィンドウW3を用いた無線経路の編集が行われると、操作者による入力装置5aの操作に応じた通信タイミングの編集(スケジューリング)が行われる。具体的に、ユーザが行いたいプロセス制御の内容に応じて、各無線機器の伝送遅延が極力小さくなるように、又はプロセス制御の制御周期を超えないように、無線通信で利用可能な複数のチャネル(例えば、16チャネル)のうちのどのチャネルを用いてどのタイミングで通信を行うかの編集を、利用者の操作に応じて行う。
【0051】
以上の無線経路の編集及び無線機器の編集が行われている間、経路設定装置5の編集部11は操作者による編集終了の指示がなされたか否かを判断している(ステップS13)。操作者による編集終了の指示がなされない場合には判断結果は「NO」となり、操作者の指示に応じてステップS12の処理が繰り返される。これに対し、利用者による編集終了の指示がなされると、ステップS13の判断結果は「YES」となり、ステップS12の編集結果に基づいた無線機器等の位置、無線経路、及び通信タイミングの設定が行われる(ステップS14:第1ステップ)。かかる設定がなされると、その内容が反映された経路設定ファイルF10が編集部11によって作成されて記憶装置5eに記憶される(ステップS15)。
【0052】
以上の処理が終了すると、ステップS14の設定内容が編集部11から算出部12に出力されるとともに、記憶装置5eに記憶された機器性能ファイルF2が算出部12に読み出され、無線装置から無線アクセスポイント装置まで又は無線機器間の伝送遅延、無線機器消費電力量、及び無線機器のバッテリの寿命等を算出する処理が行われる(ステップS16:第2ステップ)。
【0053】
具体的に、無線装置から無線アクセスポイント装置まで又は無線機器間の伝送遅延は、編集部11で設定された無線経路と無線装置毎の通信タイミングとを用いて算出される。例えば、図1に示す無線機器1cから無線機器1aを中継して無線アクセスポイント装置2に至る無線経路が設定された場合には、無線機器1cと無線機器1aとの間の通信に要する時間、及び、無線機器1aと無線アクセスポイント装置2との間の通信に要する時間は無視することができるため、無線機器1c,1aに設定された通信タイミングに基づく無線機器1c,1a毎の遅延時間が合算されて伝送遅延が算出される。例えば、無線機器1cの遅延時間は、測定値を取得してから無線機器1aへ向けて送信開始するまでの時間、無線機器1aの遅延時間は、無線機器1cからの測定値を受信してから無線アクセスポイント装置2へ向けて送信開始するまでの時間である。
【0054】
また、無線機器の消費電力量(単位時間消費電力量)は、以下の(1)式に示す通り、機器性能ファイルF2に格納される電力量性能情報(送信時消費電力量、受信時消費電力量、センサ等駆動消費電力量、センサ検出消費電力量)とスケジューリング結果とを用いて算出される。尚、以下の(1)式中において、スケジューリング結果により決定される値は、「単位時間当たりの送信回数」及び「単位時間当たりの受信回数」である。
単位時間消費電力量=送信時消費電力量×単位時間当たりの送信回数
+受信時消費電力量×単位時間当たりの受信回数
+センサ等駆動消費電力量×単位時間当たりの駆動回数
+センサ検出消費電力量×単位時間当たりの検出回数 …(1)
【0055】
また、バッテリの寿命は、以下の(2)式に示す通り、上記の(1)式から求められる単位時間消費電力量を用いて算出される。
バッテリの寿命=(電池の初期容量÷単位時間消費電力量)×単位時間 …(2)
上記(2)式中の電池の初期容量は、電池が新品のときの電池残量であり、新品の電池を使用する場合に用いられる。しかし、既に電池が使用されていて電池残量が減少している場合には、上記(2)式中の電池の初期容量の代わりに、以下の(3)式から求められる電池残量を用いてバッテリの寿命を算出する。尚、以下の(3)式中における「無線機器の稼働時間」は、無線機器の稼働時間を「単位時間消費電力量」の時間単位(例えば、1秒単位)で表したものである。
電池残量=電池の初期容量−(単位時間消費電力量×無線機器の稼働時間)…(3)
【0056】
以上の処理が終了すると、算出部12の算出結果が記憶装置5eに出力されて出力ファイルF11として格納され、或いは、表示制御部13が算出部12によって制御されて算出部12の算出結果が表示装置5bに表示される(ステップS17)。ここで、前述した通り、出力ファイルF11には設置計画図ファイル、側面図ファイル、累計台数表ファイル、機器一覧ファイル、及び転送経路計画表ファイル等が含まれる。設置計画図ファイルには、図5に示す編集ウィンドウW1を用いた編集終了時に編集領域R2に表示されていた内容と同様の内容が格納され、側面図ファイルには図6に示す内容が格納される。
【0057】
また、累計台数表ファイル、機器一覧ファイル、及び転送経路計画表ファイルには、図8(a)〜(c)に示す内容がそれぞれ格納される。図8は、本発明の一実施形態による経路設定装置で生成される出力ファイルの一部を示す図であって、(a)は累計台数表ファイルを示す図であり、(b)は機器一覧ファイルを示す図であり、(c)は転送経路計画表ファイルを示す図である。
【0058】
図8(a)に示す通り、累計台数表ファイルには、管理システムMS全体を構成する全ての機器の台数を示す情報が格納される。また、図8(b)に示す通り、機器一覧ファイルには、管理システムMSを構成する無線機器のバッテリ寿命や伝送遅延(レイテンシー)を示す情報、無線機器毎に設定されたアンテナの高さを示す情報等が格納される。また、図8(c)に示す通り、転送経路計画表ファイルには、無線機器等の間に設定された無線経路毎の通信品質等を示す情報が格納される。
【0059】
経路設定装置5を用いた以上の工程が終了すると、管理システムMSの性能確認工程(工程S2)が行われる。この工程は、経路設定装置5で作成された出力ファイルF11をユーザに提示して、設計された管理システムMSの無線ネットワークN1が、ユーザの要求を満たしているか否かをユーザに確認してもらう工程である。例えば、無線機器の数、配置、及び初期コストが許容できる範囲内であるか否か、管理システムMSの稼働時における無線機器の伝送遅延(レイテンシー)が許容される範囲内であるか否か、バッテリ寿命によって必要となる定期的なメンテナンス時期及び費用等(例えば、電池交換時期及び費用)が許容される範囲内であるか否か等をユーザに確認してもらう。
【0060】
以上の性能確認工程が終了すると、機器の設置工程(工程S3)が行われる。この工程は、経路設定装置5を用いて設定された位置に、管理システムMSをなす無線機器及び無線アクセスポイント装置を設置する工程である。尚、管理システムMSをなすネットワーク管理装置3及びゲートウェイ装置4の設置、並びにバックボーンネットワークN2及び制御ネットワークN3の敷設も併せて行われる。
【0061】
以上の設置工程が終了すると、経路設定ファイルF10のダウンロード工程(工程S4)が行われる。具体的には、経路設定装置5をバックボーンネットワークN2に接続してネットワーク管理装置3と通信可能な状態にし、経路設定装置5の記憶装置5eに格納された経路設定ファイルF10をネットワーク管理装置3にダウンロードする処理が行われる。
【0062】
ダウンロード工程が終了すると、無線経路の確立工程(工程S5)が行われる。この工程では、まず工程S3で設置した無線機器及び無線アクセスポイント装置(図1に示す無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2)の電源が投入され、ネットワーク管理装置3の管理の下で、無線機器1a〜1dを無線ネットワークN1に参入させる処理が行われる。かかる処理が行われることにより、無線ネットワークN1に参入した無線機器1a〜1dとネットワーク管理装置3とが通信可能な状態になる。
【0063】
次に、工程S4で経路設定装置5からダウンロードされた経路設定ファイルF10の内容がネットワーク管理装置3に読み出され、この経路設定ファイルF10の内容に応じた制御信号が無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2に送信される。これにより、無線機器1a〜1d間、及び無線機器1a〜1dと無線アクセスポイント装置2との間に、経路設定ファイルF10に設定されている無線経路通りの無線経路が確立される。このようにして設定された無線経路は、ネットワーク管理装置3から無線経路を変更すべき旨の制御信号が送信され、或いは、異常が生じて主たる無線経路を介した無線通信が不可能にならない限り変更されない。
【0064】
以上説明した通り、本実施形態では、経路設定装置5を用いて無線機器1a〜1d等の位置及び無線経路等を規定する経路設定ファイルF10を作成し、この経路設定ファイルF10で規定される通りの無線経路を無線ネットワークN1で確立するようにしている。。これにより、管理システムMSの設計段階で無線経路を規定することができるとともに、管理システムMSの稼働時における無線経路の変更は原則として行われないため、無線機器1a〜1dの伝送遅延やバッテリの交換周期の正確な見積もりが可能となり、リアルタイム性及びメンテナンス性を確保することができる。また、無線経路を正確に把握することができるため、定期作業や運用ルールを計画することが可能であり、保守性を確保することができる。
【0065】
以上、本発明の一実施形態による経路設定装置、経路設定方法、管理装置、管理システム、及び記録媒体について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、無線アクセスポイント装置2、ネットワーク管理装置3、ゲートウェイ装置4、及び経路設定装置5が別々の装置として実現されている例について説明したが、これらのうちの任意の2つ以上の装置を1つの装置として実現することも可能である。
【0066】
また、上記実施形態では、経路設定装置5を用いて作成した経路設定ファイルF10をネットワーク管理装置3にダウンロードする例について説明した。しかしながら、無線機器1a〜1d、無線アクセスポイント装置2、又はゲートウェイ装置4に経路設定ファイルF10を記憶する領域を設け、ネットワーク管理装置3がこれらから経路設定ファイルF10をダウンロードするようにしても良い。
【0067】
更に、上記実施形態では、ISA100.11a、或いはWirelessHART等に準拠した無線通信を行う無線機器1a〜1d及び無線アクセスポイント装置2を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、無線メッシュ型ネットワークを形成することができる無線通信規格に準拠した無線通信を行う無線機器及び無線アクセスポイント装置が用いられる管理システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1a〜1d 無線機器
2 無線アクセスポイント装置
3 ネットワーク管理装置
5 経路設定装置
5e 記憶装置
11 編集部
12 算出部
13 表示制御部
F2 機器性能ファイル
MS 経路設定装置
N1 無線ネットワーク
P1 経路設定プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線接続装置と複数の無線機器とによって形成される無線ネットワークで確立される無線経路の設定を行う経路設定装置であって、
入力指示に応じて、前記無線接続装置及び前記無線機器の位置、前記無線接続装置と前記無線機器との間の無線経路、並びに前記無線機器間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された前記無線接続装置及び前記無線機器の通信タイミングの編集及び設定とが可能な編集手段と、
前記無線機器の電力量性能情報を記憶する記憶手段と、
前記編集手段によって設定された無線経路及び通信タイミング並びに前記記憶手段に記憶された前記電力量性能情報を用いて、前記無線機器から前記無線接続装置まで又は前記無線機器間の伝送遅延、前記無線機器の消費電力量、及び前記無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出する算出手段と
を備えることを特徴とする経路設定装置。
【請求項2】
前記電力量性能情報は、前記無線機器が通信を行う度に消費される電力量を示す第1情報と、前記無線機器が所定の操作を行う度に消費される電力量を示す第2情報とを含むことを特徴とする請求項1記載の経路設定装置。
【請求項3】
前記編集手段は、前記無線機器の各々について、主たる無線経路である第1無線経路と、補助的な無線経路である第2無線経路とを設定可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の経路設定装置。
【請求項4】
前記編集手段は、前記無線接続装置及び前記無線機器の高さ位置の編集及び設定が可能であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の経路設定装置。
【請求項5】
前記編集手段によって編集される前記無線接続装置、前記無線機器、及び無線経路と、前記無線接続装置及び前記無線機器の周囲に位置する構造物とを平面視又は側面視で重ね合わせた状態で表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の経路設定装置。
【請求項6】
無線接続装置と複数の無線機器とによって形成される無線ネットワークで確立される無線経路の設定を行う経路設定方法であって、
入力指示に応じて、前記無線接続装置及び前記無線機器の位置、前記無線接続装置と前記無線機器との間の無線経路、並びに前記無線機器間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された前記無線接続装置及び前記無線機器の通信タイミングの編集及び設定とを行う第1ステップと、
前記第1ステップで設定された無線経路及び通信タイミングと前記無線機器の電力量性能情報とを用いて、前記無線機器から前記無線接続装置まで又は前記無線機器間の伝送遅延、前記無線機器の消費電力量、及び前記無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出する第2ステップと
を有することを特徴とする経路設定方法。
【請求項7】
無線接続装置と複数の無線機器とによって形成される無線ネットワークの管理を行う管理装置において、
前記複数の無線機器の各々に制御信号を送信して、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の経路設定装置、又は、請求項6記載の経路設定方法によって設定された無線経路通りの無線経路を確立させることを特徴とする管理装置。
【請求項8】
前記管理装置は、前記無線接続装置を備えることを特徴とする請求項7記載の管理装置。
【請求項9】
無線接続装置と複数の無線機器とによって形成される無線ネットワークを管理する管理システムにおいて、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の経路設定装置と、
請求項7又は請求項8記載の管理装置と
を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項10】
コンピュータを、
入力指示に応じて、無線ネットワークの一部をなす無線接続装置及び無線機器の位置、前記無線接続装置と前記無線機器との間の無線経路、並びに前記無線機器間の無線経路の編集及び設定と、無線経路が設定された前記無線接続装置及び前記無線機器の通信タイミングの編集及び設定とが可能な編集手段と、
前記無線機器の電力量性能情報を記憶する記憶手段と、
前記編集手段によって設定された無線経路及び通信タイミング並びに前記記憶手段に記憶された前記電力量性能情報を用いて、前記無線機器から前記無線接続装置まで又は前記無線機器間の伝送遅延、前記無線機器の消費電力量、及び前記無線機器の電源として用いられる電池の寿命の少なくとも1つを算出する算出手段と
して機能させる経路設定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147298(P2012−147298A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4751(P2011−4751)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】