説明

結合ゼオライトを製造する方法

【課題】高い機械抵抗を有する、ゼオライトとオリゴマーシリカとを含んでなる触媒を製造する方法であって、合成の終わりにおいて得られた懸濁液からのゼオライト結晶相の分離工程をもはや必要としない方法を提供すること。
【解決手段】テンプレートとして水酸化テトラ−アルキルアンモニウムを含有する試薬混合物の自発生圧力における水熱処理によるゼオライトの合成から生ずる懸濁液に、必要に応じてテトラ−アルキルオルトシリケートを添加して、急速乾燥させ、そして前記乾燥により生ずる生成物を焼成することからなる、機械抵抗が高く、ゼオライトとオリゴマーシリカとを含んでなる、微小球形態のゼオライト触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械抵抗が高いことを特徴とする、ゼオライトとオリゴマーシリカとを含んでなる、微小球形態のゼオライト触媒を製造する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒活性を有する、ゼオライト、合成多孔質結晶質材料は、無機結合剤により結合して寸法を増加させ、それらを工業用プラントにおいて使用できるようにすることが知られている。事実、一方において、小さい寸法のゼオライトの結晶は試薬および反応生成物の粒子内拡散に好都合であり、そして得られる触媒能を増強させることができるが、他方において、この小さい寸法では固定床反応器における粒子間拡散または混合反応器における反応媒質からのゼオライト触媒の分離が不可能となる。これを克服するために、ゼオライトを適当な結合剤と結合させる。結合ゼオライトを製造する方法は、触媒活性を明らかに減少させるゼオライト空洞のブロッキングを防止するような方法でなくてはならない。結合剤部分に触媒が寄与する反応、例えば、多数の酸化および酸を触媒とする反応、を回避するために、結合剤として触媒的に不活性である材料、例えば、シリカ、の使用が特に重要である。しかしながら、シリカは結合性が低く、したがって、十分な硬度を有する押出製品を提供することができないので、通常、押出において使用されない。欧州特許(EP)第265,018号明細書には、ゼオライトおよびオリゴマーシリカをベースとする触媒を製造する方法が記載されている。この方法による微小球形態の結合ゼオライト触媒は、機械抵抗が高いことを特徴とし、流動床またはスラリー反応器において起こる反応に非常に適している。この方法は、少なくとも下記の工程からなる。
【0003】
a) 試薬の適当な混合物の水熱的条件下における結晶化により、結合させるべきゼオライトを製造し、
b) 工程a)において得られたゼオライト結晶を分離し、
c) 可能ならば水中で再分散させることによりゼオライトを洗浄し、結晶相を新しく分離し、
d) 2〜120℃の範囲の温度において、0.2〜24時間の範囲の時間の間、水酸化テトラ−アルキルアンモニウム水溶液中でテトラ−アルキルオルトシリケートの液相中の加水分解により、オリゴマーシリカおよび水酸化テトラ−アルキルアンモニウムの水溶液を製造し、
e) 工程(c)において得られた結晶質ゼオライト相を工程(d)に記載する溶液の中に分散させ、
f) 噴霧乾燥機に供給することによって、この分散液を急速乾燥させ、
g) 乾燥工程において得られた製品の微小球を焼成する。
【0004】
我々は、今回、高い機械抵抗を有する、ゼオライトとオリゴマーシリカとを含んでなる触媒を製造する、かなり簡素化された方法を発見した。この簡素化された方法によれば、結合相に、特定の特性、例えば、実質的に中間孔領域の孔分布および高い表面積、を与えることができて、これらによって、ゼオライトの触媒特性の変化を伴わずに、結合剤部分の拡散バリヤーの存在を確実に避けることができる。同時に、この新規な方法は、要求される単一操作の数を減少させかつ使用する試薬の量を減少させる。特に、先行技術と異なり、本発明の方法は合成の終わりにおいて得られた懸濁液からのゼオライト結晶相の分離工程をもはや必要としない。事実、ゼオライトはその合成においてテンプレート(templating agent)として、すなわち、ゼオライトの構造に規則的で一定の多孔度を生じさせることができる化合物として、水酸化テトラ−アルキルアンモニウム(TAAOH)の存在を必要とし、ゼオライト結晶および溶液中に残留する水酸化テトラ−アルキルアンモニウムが存在する、合成終了時に生ずる懸濁液を、それ以上精製および/または濾過しないで、微小球形態のオリゴマーシリカで結合されたゼオライトの製造に、そのまま、使用できることが思いがけず見出された。ゼオライトの分離工程を回避できることは、工業的観点から、非常に有利であり、特に、通常の技術、例えば、濾過または連続的遠心により、合成媒質から分離することができず、いっそうコストが必要なバッチ操作技術を必要とする、0.5μより小さい寸法を有するゼオライト結晶を使用して操作するとき、非常に有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、テンプレートとして水酸化テトラ−アルキルアンモニウムを含有する試薬混合物の自発生圧力における水熱処理によるゼオライトの合成から生ずる懸濁液を、必要に応じてテトラ−アルキルオルトシリケートを前記懸濁液に添加して、急速乾燥させ、そして前記乾燥により生ずる生成物を焼成することからなる、ゼオライトとオリゴマーシリカとを含んでなる微小球形態のゼオライト触媒を製造する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
テンプレートとして水酸化テトラ−アルキルアンモニウム(TAAOH)の存在下の水熱処理によりゼオライトの合成終了時に得られた懸濁液(これを本発明に従い急速乾燥する)の中に、ゼオライト結晶、ゼオライトの孔の中に取り込まれていない水酸化テトラ−アルキルアンモニウムの部分、および多分ケイ素の酸化物および他のヘテロ原子が存在するであろう。事実、過剰の水酸化テトラ−アルキルアンモニウムを使用することが必要であり、結局、合成終了時にTAAOHの一部分が反応媒質中の溶液の中に存在することは、ゼオライトの合成において知られている。したがって、ゼオライトの合成から生ずるこの懸濁液を使用すると、前述の利点に加えて、先行技術である欧州特許(EP)第265,018号明細書の方法(この方法では、TAAOHとオリゴマーシリカとの混合物を別々に調製し、ゼオライト結晶に添加し、急速乾燥工程前に、濾過または遠心により分離することが必要であった)において必要とされるTAAOHの合計量に関して、オリゴマーシリカと結合したゼオライトの製造方法において使用されるTAAOHの合計量を減少させることができる。
【0007】
本発明によれば、ゼオライトの合成から生ずる懸濁液を急速乾燥させる前に、これにテトラ−アルキルオルトシリケートを添加するとき、テトラ−アルキルオルトシリケート、を懸濁液中に含まれるゼオライト100gにつき0.08〜0.50モルの量で添加する。テトラ−アルキルオルトシリケートは、式Si(OR)4 を有する化合物から選択される。式中、置換基Rは、同一であるか、あるいは異なり、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル鎖である。
好ましくは、懸濁液の急速乾燥は噴霧乾燥機へ供給することにより実施される。急速乾燥処理の終わりにおいて、微小球が得られ、これらの微小球を400〜800℃の範囲の温度において焼成する。
【0008】
本発明の方法に従い得られたゼオライト触媒は、機械抵抗が高いことを特徴とし、0.05〜0.30の範囲の重量比でオリゴマーシリカおよびゼオライトを含み、そしてこのゼオライト触媒はSi−O−Si架橋により囲まれている、5〜300μmの範囲の直径を有する微小球の形態にある。本発明の方法によりオリゴマーシリカと結合することができるゼオライトは、その製造に、テンプレートとして水酸化テトラ−アルキルアンモニウムを使用することを含み、特によく使用することができるゼオライトはMFI、MEL、MFI/MEL、MOR、FAU、FAU/EMTおよびBEA構造を有するものから選択することができる。
【0009】
本発明によれば、懸濁液を急速乾燥させ、引き続いて焼成してオリゴマーシリカと結合したゼオライトを製造することができ、この懸濁液は、水熱処理下に、自発生圧力において、TAAOHの存在において、先行技術において記載されかつ当業者に知られている方法に従い実施される合成により生ずる懸濁液である。特に、本発明の好ましい態様によれば、結合したゼオライトは、MFIグループに属するシリカライトであるか、あるいはMFI、MEL、MFI/MEL、BEA、MOR、FAUおよびFAU/EMT構造を有するケイ素およびアルミニウム酸化物から成るゼオライトである。これらの合成から生ずる懸濁液は、ゼオライト結晶、水酸化テトラ−アルキルアンモニウム、ケイ素および必要に応じて酸化アルミニウムを含有する。特に、この場合において、テトラ−アルキルオルトシリケートの添加は必要でない。これらの懸濁液を噴霧乾燥機に直接的に供給し、生ずる微小球を前述の条件下に焼成する。
【0010】
したがって、本発明の1つの態様は、ゼオライトと、オリゴマーシリカとを含んでなる微小球形態のゼオライト触媒を製造する方法であり、ここでゼオライトはMFIグループに属するシリカライトから選択されるか、あるいはMFI、MEL、MFI/MEL、BEA、MOR、FAUおよびFAU/EMT構造を有するケイ素およびアルミニウム酸化物から成るゼオライト、から選択される。この方法は、テンプレートとして水酸化テトラ−アルキルアンモニウムを含有する試薬混合物の自発生圧力における水熱処理によるゼオライトの合成により生ずる懸濁液を急速乾燥させ、そして前記乾燥から生ずる生成物を焼成することからなる。
【0011】
これらの懸濁液を調製する条件は、当業者に知られており、そして通常先行技術文献において記載されている。例えば、S−1と呼ばれる、MFIグループに属するシリカライト、およびその製造方法は、米国特許第4,061,724号明細書に記載されている。ゼオライトベータと呼ばれる、ケイ素およびアルミニウム酸化物から成るBEAゼオライト、およびその製造方法は、米国特許第3,308,069号明細書に記載されている。ZSM−5と呼ばれる、ケイ素およびアルミニウム酸化物から成るMFIゼオライト、およびその製造方法は、米国特許第3,702,886号および再発行米国特許第29948号明細書に記載されている。モルデナイトと呼ばれる、ケイ素およびアルミニウム酸化物から成るMORゼオライト、およびその製造方法は、米国特許第4,052,472号明細書に記載されている。N−Yと呼ばれる、ケイ素およびアルミニウム酸化物から成るFAUゼオライト、およびその製造方法は、米国特許第3,306,922号明細書に記載されている。ECR−30と呼ばれる、ケイ素およびアルミニウム酸化物から成るFAU/EMTゼオライト、およびその製造方法は、欧州特許(EP)第315,461号明細書に記載されている。ZSM−5/ZSM−11と呼ばれる、ケイ素およびアルミニウム酸化物から成るMFI/MELゼオライト、およびその製造方法は、米国特許第4,289,607号明細書に記載されている。ZSM−11と呼ばれる、ケイ素およびアルミニウム酸化物から成るMELゼオライト、およびその製造方法は、米国特許第3,709,979号明細書に記載されている。
【0012】
乾燥により生ずる製品を、焼成する前に、必要に応じて既知の技術に従い空気中で200〜300℃において2〜10時間の間処理し、かつ酸形態で交換して、存在することがあるアルカリ金属を除去する。
【0013】
本発明の好ましい態様によればに従い結合させるために最も適当なゼオライトは、シリカライトS−1である。5〜300μmの直径を有し、0.05〜0.3のオリゴマーシリカ/シリカライトの重量比においてシリカライトS−1およびオリゴマーシリカから成り、機械抵抗が高いことを特徴とし、触媒の分野において使用される、微小球形態のゼオライト材料は、新規なものであり、本発明の他の目的物である。MFI、MEL、MFI/MEL、BEA、MOR、FAUおよびFAU/EMTグループに属するケイ素およびアルミニウム酸化物から成るゼオライトを使用するとき、少量のアルミナは最終触媒の結合相の中にも存在する。本発明の方法に従い製造され、高い機械抵抗を有し、酸触媒反応としての炭化水素の変換プロセスにおいて有用である、これらの後者の触媒は、新規なものであり、本発明の他の目的物である。
【0014】
本発明の特に好ましい態様によれば、結合すべきゼオライトが、MFI、MFI/MELおよびMELグループに属し、必要に応じて他のヘテロ原子ならびにケイ素を含有するとき、急速乾燥させる懸濁液は、100%にできるだけい近い、例えば、98〜100%の、ゼオライトの結晶化収率を得るように、製造されたゼオライトの合成から誘導された懸濁液である。反応混合物の中に存在するすべてのシリカおよび可能なヘテロ原子のゼオライトにおける全回収率に相当する100%の結晶化収率を得るのような方法において、操作することが特に好ましい。100%の結晶化収率で製造するために特に適し、したがって、本発明のこの好ましい態様に従い結合されるMFI、MFI/MELおよびMELグループのゼオライトは、下記1)〜3)のものから選択される。
1) 式pHMO2 ・qTiO2 ・SiO2 を有するMFIゼオライト。式中、Mはアルミニウム、ガリウムおよび鉄から選択される金属であり、pは0〜0.04の範囲の値であり、そしてqは0.0005〜0.03の範囲の値である。特にpが0であるとき、ゼオライトは米国特許第4,410,501号明細書に記載されているチタンシリカライトTS−1である。pが0と異なりかつMがAl、GaおよびFeであるゼオライトは、それぞれ、欧州特許(EP)第226,257号、欧州特許(EP)第266,258号および欧州特許(EP)第226,258号の各明細書にそれぞれ記載されている。
2) 式aAl2 3 ・(1−a)SiO2 を有するMFIゼオライト。式中、aは0〜0.02の範囲の値である。特にaが0であるとき、ゼオライトは米国特許第4,061,724号明細書に記載されているシリカライトS−1である。aが0と異なるとき、ゼオライトは米国特許第3,702,886号および再発行米国特許第29,948号の各明細書に記載されている、ZSM−5である。3) 式xTiO2 ・(1−x)SiO2 を有するMELまたはMFI/MELゼオライト。式中、xは0.0005〜0.03の範囲の値である。これらのゼオライトはベルギー国特許(BE)第1,001,038号明細書に記載されており、そしてTS−2およびTS−1/TS−2と呼ばれる。
【0015】
したがって、急速乾燥すべき懸濁液が98%より高い、好ましくは100%の結晶化収率を有するMFIゼオライトの合成から誘導されるような操作の好ましい態様によれば、本発明は、式pHMO2 ・qTiO2 ・SiO2 (式中、Mはアルミニウム、ガリウムおよび鉄から選択される金属であり、pは0〜0.04の範囲の値であり、そしてqは0.0005〜0.03の範囲の値である)を有するMFIゼオライトおよびオリゴマーシリカから成る微小球形態のゼオライト触媒を製造する方法に関するものである。この方法は、下記工程a)〜d)からなる。
【0016】
a) 自発生圧力、190〜230℃の温度において、0.5〜10時間の範囲の時間の間、アルカリ金属を含まない、ケイ素源、チタン源、必要に応じて金属M源、および水酸化テトラプロピルアンモニウムの混合物を、水熱処理することによってゼオライトを合成する工程。ここで、前記混合物は、モル比として表して、下記の組成を有する。
Si/Ti=35〜2000、
M/Si=0〜0.04、ここでMはAl、GaおよびFeから選択される、
TPA−OH/Si=0.2〜0.5、ここでTPA=テトラプロピルアンモニウム、
2 O/Si=10〜35。
b) 前の工程a)から生ずる懸濁液にテトラ−アルキルオルトシリケートを添加する工程。
c) 工程b)において得られた懸濁液を急速乾燥させる工程。
d) 工程c)において得られた生成物を焼成する工程。
【0017】
これらのケイ素源、チタン源および金属M源は、米国特許第4,410,501号、欧州特許(EP)第226257号、欧州特許(EP)第266825号、および欧州特許(EP)第226258号の各明細書に記載されている。ケイ素源は、好ましくはテトラエチルオルトシリケートであり、チタン源は、好ましくはテトラエチルオルトチタネートであり、金属M源は、好ましくは当該金属の可溶性塩である。本発明の方法によれば好ましい結合されるゼオライトは、チタンシリカライトTS−1である。
【0018】
急速乾燥すべき懸濁液が98%より高い、好ましくは100%の結晶化収率を有するMFIゼオライトの合成から誘導され、そして結合すべきMFIゼオライトがaAl2 3 ・(1−a)SiO2 であるような操作の好ましい態様によれば、本発明の他の目的は、式aAl2 3 ・(1−a)SiO2 (式中、aは0〜0.02の範囲の値である)を有するMFIゼオライトおよびオリゴマーシリカから成る微小球形態のゼオライト触媒を製造する方法に関するものである。この方法は、下記工程a)〜d)からなる。
【0019】
a) 自発生圧力、190〜230℃の温度において、0.5〜10時間の範囲の時間の間、アルカリ金属を含まない、ケイ素源、必要に応じてアルミニウム源、および水酸化テトラプロピルアンモニウムの混合物を水熱処理することによってゼオライトを合成する工程。ここで、前記混合物は、モル比として表して、下記の組成を有する。
Al/Si=0〜0.04、
TPA−OH/Si=0.2〜0.5、ここでTPA=テトラプロピルアンモニウム、
2 O/Si=10〜35。
b) 前の工程a)から生ずる懸濁液にテトラ−アルキルオルトシリケートを添加する工程。
c) 工程b)において得られた懸濁液を急速乾燥させる工程。
d) 工程c)において得られた生成物を焼成する工程。
【0020】
ケイ素源およびアルミニウム源は、米国特許第4,061,724号および米国特許第3,702,886号各明細書に記載されている。ケイ素源は好ましくはテトラエチルオルトシリケートであり、そしてアルミニウム源は好ましくはAl(OR)3 であり、式中、Rは3〜4個の炭素原子を含有するアルキルである。
【0021】
急速乾燥すべき懸濁液が98%より高い、好ましくは100%の結晶化収率を有するMFI/MELまたはMELゼオライトの合成から誘導され、そして結合すべきMFI/MELまたはMELゼオライトがxTiO2 ・(1−x)SiO2 であるような操作の好ましい態様によれば、本発明の他の目的は、式xTiO2 ・(1−x)SiO2 (式中、xは0.0005〜0.03の範囲の値である)を有するMFI/MELまたはMELゼオライトおよびオリゴマーシリカから成る微小球形態のゼオライト触媒を製造する方法に関するものである。この方法は、下記工程a)〜d)からなる。
【0022】
a) 自発生圧力、190〜230℃の温度において、0.5〜10時間の範囲の時間の間、アルカリ金属を含まない、ケイ素源、チタン源、および水酸化テトラ−アルキルアンモニウムの混合物を水熱処理することによってゼオライトを合成する工程。ここで、前記混合物は、モル比として表して、下記の組成を有する。
Si/Ti=35〜2000、
TAA−OH/Si=0.2〜0.5、
2 O/Si=10〜35。
b) 前の工程a)から生ずる懸濁液にテトラ−アルキルオルトシリケートを添加する工程。
c) 工程b)において得られた懸濁液を急速乾燥させる工程。
d) 工程c)において得られた生成物を焼成する工程。
【0023】
ケイ素源、チタン源および水酸化テトラ−アルキルアンモニウムは、また、2成分または3成分の混合物において使用することができ、ベルギー国特許(BE)第1,001,038号明細書に記載されている。ケイ素源は好ましくはテトラエチルオルトシリケートであり、そしてチタン源は好ましくはテトラエチルオルトチタネートである。
前のゼオライト合成工程(a)における水熱処理は好ましくは200〜230℃の範囲の温度において実施され、例えば、200℃より高くかつ230℃より低いか、あるいはそれに等しい温度において実施される。
【0024】
前の工程a)において使用する反応混合物の特定の組成物の組み合わせおよび反応温度は、非常に高い結晶化収率、好ましくは100%の結晶化収率を有するMFI、MFI/MELおよびまたMEL構造を有するゼオライト、特にTS−1およびS−1、の製造を可能とし、それ自体新規であり、本発明の他の態様である。先行技術において記載されたMFI、MELおよびMFI/MEL構造を有するゼオライトの製造に関する実施例において、特定したまたは計算可能な結晶化収率は、また、100%より非常に低い。
【0025】
工程(a)において、この特定の組成物の組み合わせおよび反応条件を使用すると、工程d)の終わりに、微小球が得られる。この微小球は、オリゴマーシリカと結合した、MFI、MEL、またはMFI/MELゼオライト、好ましくはTS−1およびS−1から成り、0.05〜0.3の範囲のオリゴマーシリカ/ゼオライトの重量比をもち、高い表面積、実質的に中間細孔範囲の結合相中の孔分布、および高い機械抵抗を有し、触媒反応の分野において使用することができる。特に、5〜300μmの直径を有し、ゼオライトTS−2またはTS−1/TS−2およびオリゴマーシリカから成り、0.05〜0.3の範囲のオリゴマーシリカ/ゼオライトの重量比を有する微小球形態のゼオライト材料は、新規であり、本発明の他の目的物である。
【0026】
前の工程(b)において、テトラ−アルキルオルトシリケート(TAOS)、好ましくはテトラエチルオルトシリケートを、工程a)の終わりに得られた懸濁液の中に含まれるゼオライト100gにつき0.08〜0.50モルの範囲の量において、添加する。
工程(b)から誘導される懸濁液は、急速乾燥工程の前に、好ましくは40〜100℃に0.5〜10時間の間加熱される。
前の工程(c)において、工程(b)から得られた懸濁液を、好ましくは噴霧乾燥機を使用して、急速乾燥して、ゼオライトの微結晶Si−O−Si架橋で緊密に囲まれている、3次元のシリカ格子から成る微小球が得られる。
工程(c)から生ずる微小球を、400〜800℃の範囲の温度において焼成する。
【実施例】
【0027】
(例1)
1873gの水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPA−OH)の14重量%の水溶液をオートクレーブの中に入れる。次いで、547gのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)と、547gのTEOSおよび30gのテトラエチルオルトチタネート(TEOT)から成る溶液とを閉じた系で操作して、連続的に添加する。こうして調製した混合物を熟成させないで、自発生圧力、200℃および2時間の、水熱処理を直ちに開始する。結晶化が止んだとき、オートクレーブを冷却し、乳化懸濁液を排出させる。
【0028】
100gのこの懸濁液を遠心し、水中に再分散させ、再び遠心する。得られた固体を乾燥させ、焼成し、結晶質相の特性決定に使用する。結晶化収率は100%であることが証明され、化学分析により、下記の結果が得られた。
SiO2 =96.8%、TiO2 =3.19%。
TEM分析すると、0.3μmの平均直径を有する結晶質凝集物が観察される。
紫外−可視スペクトルを第1図曲線Aに示す(波長を横座標に、吸収を縦座標に示す)。
【0029】
110gのTEOSを残りの乳化懸濁液に添加し、この混合物を60℃に1時間加熱し、次いで噴霧乾燥機(Niro Mobile Minor HI−TEC、流入空気の温度:230℃、流出空気の温度:150℃、チャンバーの直径:1m)に送る。平均直径30μmのコンパクトな微小球が得られ、そしてオリゴマーシリカ/ゼオライトの重量比は0.1である。微小球を窒素雰囲気下にマッフルの中に入れ、550℃に加熱する。窒素中でその温度において2時間滞留させた後、雰囲気を窒素から空気に徐々に交換し、生成物を550℃において空気中にさらに2時間放置する。得られた生成物は下記の組成物を有する。
SiO2 =97.05%、TiO2 =2.94%。
【0030】
紫外−可視スペクトルを第1図曲線Bに示す。第1図に示すスペクトルを比較すると、双方の試料において、チタンは全て四面体配位であり、こうしてゼオライトの網状構造の中に挿入されていることが理解ができる。第2図は、グラニュロメーター(Granulometter)715 E608により、超音波処理前(曲線−●−)および1時間超音波処理した後(−□−)(Branson Bath 5200)において測定した、微小球の寸法分布を示す。微小球の平均直径(μm)を横座標に示し、微小球の%を縦座標に示す。図面から観察できるように、粒子分布は超音波処理により変更されず、したがって、触媒はすぐれた機械抵抗を有する。
【0031】
(例2)
2288gの水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPA−OH)の14重量%の水溶液を7gのアルミニウムイソプロピレート中に溶解し、次いで1094gのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を添加する。得られた溶液をオートクレーブの中に入れ、自発生圧力、200℃において2時間、水熱処理をする。結晶化が止んだとき、オートクレーブを冷却し、乳化懸濁液を排出させる。
100gのこの懸濁液を遠心し、水中に再分散させ、再び遠心する。得られた固体を乾燥させ、焼成し、結晶質相の特性決定に使用する。結晶化収率は100%であることが証明され、化学分析により、下記の結果が得られた。SiO2 =99.44%、Al2 3 =0.56%。
110gのTEOSを残りの乳化懸濁液に添加し、この混合物を60℃に1時間加熱し、次いで噴霧乾燥機(Niro Mobile Minor HI−TEC、流入空気の温度:230℃、流出空気の温度:150℃、チャンバーの直径:1m)に送る。平均直径30μmのコンパクトな微小球が得られ、そしてオリゴマーシリカ/ゼオライトの重量比は0.1である。微小球を窒素雰囲気下にマッフルの中に入れ、550℃に加熱する。窒素中でその温度において2時間滞留させた後、雰囲気を窒素から空気に徐々に交換し、生成物を550℃において空気中にさらに2時間放置する。得られた生成物は下記の組成物を有する。
SiO2 =99.49%、Al2 3 =0.51%。
【0032】
第3図は、グラニュロメーター715 E608により、超音波処理前(曲線−●−)および1時間超音波処理した後(−□−)(Branson Bath 5200)において測定した、微小球の寸法分布を示す。微小球の平均直径(μm)を横座標に示し、微小球の%を縦座標に示す。図面から観察できるように、粒子分布は超音波処理により変更されず、したがって、触媒はすぐれた機械抵抗を有する。
【0033】
(例3)
1102gの水および1096gのTEOSを、802gの40%のTPA−OHに添加する。得られた溶液をオートクレーブの中に入れ、180℃において3時間水熱処理する。次いで、オートクレーブを冷却し、乳化懸濁液を排出させる。100gのこの懸濁液を遠心し、水中に再分散させ、再び遠心する。得られた固体を乾燥させ、焼成する。結晶化収率は84%であることが証明される。残りの懸濁液をそのまま噴霧乾燥機(Buchi 190、入口温度:200℃、出口温度:140℃)に送る。
【0034】
第4図は、グラニュロメーター715 E608により、超音波処理前(曲線−●−)および1時間超音波処理した後(−□−)(Branson Bath 5200)において測定した、微小球の寸法分布を示す。微小球の平均直径(μm)を横座標に示し、微小球の%を縦座標に示す。図面から観察できるように、粒子分布は超音波処理により変更されず、したがって、触媒はすぐれた機械抵抗を有する。
【0035】
(例4)(比較)
TS−1を米国特許第4,410,501号明細書に従い製造する。2844gのTEOSおよび153gのTEOTから成る溶液を、1時間かけて、4662gのTPAOHの15重量%の水溶液に添加する。得られた最終溶液をわずかに加熱して加水分解を加速させかつ形成されたエチルアルコールを蒸発させる。80℃において約5時間後、5850gの水を添加する。最終溶液をオートクレーブに入れ、自発生圧力において5時間180℃に加熱する。結晶化が止んだとき、オートクレーブを冷却し、乳化懸濁液を排出させる。100gのこの懸濁液を遠心し、水中に再分散させ、再び遠心する。得られた固体を乾燥させ、焼成し、結晶質相を特性決定するために使用する。結晶化収率は89%であることが証明され、化学分析により、下記の結果が得られた。
SiO2 =93.97%、TiO2 =3.10%。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】波長を横座標に、吸収を縦座標にして描いた、紫外−可視スペクトルを示すグラフである。
【図2】例1で得られた微小球の寸法分布を示すグラフである。
【図3】例2で得られた微小球の寸法分布を示すグラフである。
【図4】例3で得られた微小球の寸法分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
−●− 超音波処理前
−□− 超音波処理後

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発生圧力、190〜230℃の温度において、0.5〜10時間の範囲の時間の間、アルカリ金属を含まない、ケイ素源、チタン源、必要に応じて金属M源および水酸化テトラプロピルアンモニウムの混合物を水熱処理することによってゼオライトを合成することからなり、ここで、前記混合物がモル比として表して、下記の組成を有し、
Si/Ti=35〜2000、
M/Si=0〜0.04、ここでMはAl、GaおよびFeから選択される、
TPA−OH/Si=0.2〜0.5、ここでTPA=テトラプロピルアンモニウム、
2 O/Si=10〜35、
式pHMO2 ・qTiO2 ・SiO2 (式中、Mはアルミニウム、ガリウムおよび鉄から選択される金属であり、pは0〜0.04の範囲の値であり、そしてqは0.0005〜0.03の範囲の値である)を有するMFIゼオライトを製造する方法。
【請求項2】
ゼオライトがTS−1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ケイ素源がテトラエチルオルトシリケートであり、チタン源がテトラエチルオルトチタネートであり、そして金属M源が当該金属の可溶性塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
自発生圧力、190〜230℃の温度において、0.5〜10時間の範囲の時間の間、アルカリ金属を含まない、ケイ素源、チタン源、および水酸化テトラ−アルキルアンモニウム(TAAOH)の混合物を水熱処理することによってゼオライトを合成することからなり、ここで、前記混合物が、モル比として表して、下記の組成を有し、
Si/Ti=35〜2000、
TAA−OH/Si=0.2〜0.5、
2 O/Si=10〜35、
式xTiO2 ・(1−x)SiO2 (式中、xは0.0005〜0.03の範囲の値である)を有するMFI/MELまたはMELゼオライトを製造する方法。
【請求項5】
ケイ素源がテトラエチルオルトシリケートであり、チタン源がテトラエチルオルトチタネートであり、そして金属M源が当該金属の可溶性塩である、請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−162891(P2008−162891A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43237(P2008−43237)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【分割の表示】特願平10−283028の分割
【原出願日】平成10年10月5日(1998.10.5)
【出願人】(592174844)シンディアル、ソシエタ、ペル、アチオニ (4)
【氏名又は名称原語表記】Syndial S.p.A.
【Fターム(参考)】