説明

結合・減結合装置

【課題】被試験装置に印加した雷サージ過電圧が試験の対象としていないIT機器等の通信機器である対向装置へ印加されるのを防止でき、しかも、共振周波数を高めることができる結合・減結合装置を提供する。
【解決手段】xDSLの通信信号を通過させる空心の円筒コイル(3061〜3091)を複数個直列に接続して構成されたコモンモードチョークコイル310を設け、巻線間で発生する静電容量を極力抑制して、共振周波数の向上を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、xDSL(x Digital Subscriber Line)高速常時接続通信ネットワークに接続されているIT(Information Technology)機器等の通信機器に雷サージ過電圧が印加された際に、上記IT機器等が有する過電圧に対する耐力特性を評価するための雷サージ試験回路に用いられる結合・減結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークのブロードバンド化に伴うインターネット利用の急激な増加の下で、メタル加入者回線においては、従来の音声伝送信号に比べ、xDSL等の高速デジタル伝送信号の常時接続された状態での使用が普及している。
【0003】
常時接続通信の普及とともに、xDSL用IT機器等の雷サージに対する信頼性向上が求められている。これらのIT機器は通信速度の高速化、広帯域化に伴い、使用する電子デバイスが低電圧駆動され、かつ高密度実装されたために、雷サージ過電圧に対する耐力の低下傾向にある。これに加えて常時接続通信状態が急増し、雷に暴露される確立が高くなったことも一時的な通信異常の増えている一因となっている。
【0004】
これを改善するためには、IT機器等の雷サージ過電圧に対する耐力特性の評価が必要になっている。
【0005】
xDSL用のIT機器等の雷サージ試験に際しては、国際電気通信連合電気通信標準化部門の過電圧試験法に関する勧告(以下、ITU−T k.44という。)の試験条件において述べられているように、IT機器等を動作状態で実施する必要がある。
【0006】
しかし、雷サージ試験を行う際には、印加した雷サージ過電圧から対向装置を防護するための減結合回路が必要であり、上記ITU−T k.44においても減結合回路を原則として使用することとしている。
【0007】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては特許文献1がある。
【0008】
また、上記の動作状態における試験の実施及び減結合回路の原則的な使用方法については、非特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2006−352698号公報
【非特許文献1】「ITU-T K.44 “Resistibility tests for telecommunication equipment exposed to overvoltages and overcurrents-Basic Recommendation”02/2000」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の状況を鑑みれば、減結合回路を減結合回路部として1つの筐体に収容し、この減結合回路部とともに用いられる結合回路部、一次防護素子部もその筐体に収容し、これにより、測定者が高電圧部分に極力触れることなく、xDSL用IT機器等の雷サージ試験を実施できる結合・減結合装置が必要である。
【0010】
また、この結合・減結合装置をアナログの通信機器に対する雷サージ試験にも使用できれば、なお好ましい。
【0011】
雷サージ試験においては、高い雷サージ電圧に対する人体の安全性だけではなく、測定用機器のショート等の防止や測定の迅速化を図ることも必要である。
【0012】
このためにも、結合回路部、減結合回路部、及び一次防護素子部を、絶縁体である1つの筐体内にまとめて収容するのが好ましい。
【0013】
従来では、特許文献1において、雷サージ試験におけるxDSLのような高速デジタル通信信号を伝送することのできる減結合回路が開示されている。その減結合回路は、平成15年1月31日制定された日本電信電話株式会社の通信装置の過電圧耐力に関するテクニカルリクワイヤメントTR189001号に定められている雷サージ試験電圧の最大値30kVにおける試験に適用されている。
【0014】
しかし、この減結合回路の共振周波数は50kHz程度であるために、通信機器の試験波形である波頭長10us、波尾長700usの波形(「10/700us波形」と略記する)を用いた雷サージ試験を実施する場合において、例えば50kHzの周波数成分の電圧については、対向装置に流れ込む電圧を阻止できるのは約30dB(1/32)であり、対向装置に何らかの悪影響を与える虞がある。
【0015】
10/700us波形について、その周波数成分の電圧を60dB(1/1000)に低減させるには、共振周波数を少なくとも200kHz近くにまで向上させるのが望ましい。
【0016】
減結合回路部がこの共振周波数200kHzを実現できるとすれば、雷サージ試験において最大の雷サージ電圧30kVを印加した場合に、対向装置に流れ込む電圧は数十Vに抑制できると推定される。また、共振周波数の目標値を達成するうえで、結合・減結合装置が耐電圧30kV以上を有することは最低限必要であるが、他にも様々な条件がある。
【0017】
xDSLにおいては、主にADSL(Asymmetric DSL)、VDSL(Very high bit-rate DSL)が使用される。ADSLの周波数帯域は26kHz〜3.75MHz、VDSLの周波数帯域は26kHz〜16.2MHzである。このため、これらの周波数帯域において、減結合回路部と通信線とのインピーダンス整合を図ることによって高速伝送信号をできるだけ減衰させないことが必要である。このために減結合回路部は、ノーマルインピーダンスが110Ω程度の特性が求められる。
【0018】
xDSL用IT機器等には、通信線接続端子を4個備えるものがあり、その4個が使用される可能性があるから、減結合回路部では少なくとも巻き線を4本備える必要がある。
【0019】
一方、xDSL用IT機器等には、通信線接続端子を2個備えるものがあり、この場合、その2個だけが使用されるから、減結合回路部の4本の巻き線の内の2本を使用することもできる必要がある。
【0020】
特許文献1の減結合回路には、空心の多層円筒形コイルが構成されるとともに、4本の巻き線を備えるコモンモードチョークコイルが使用されている。4本の巻き線のそれぞれでは、そのインダクタンス値が、国際電気標準会議の電磁適合性におけるサージイミュニティ試験規格IEC61000−4−5に基づき、20mHになっている。
【0021】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的は、被試験装置に印加した雷サージ過電圧が試験の対象としていないIT機器等の通信機器である対向装置へ印加されるのを防止でき、しかも、共振周波数を高めることができる結合・減結合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、請求項1記載の結合・減結合装置は、メタル加入者回線を用いたxDSLの通信線に被試験装置および対向装置を接続した雷サージ試験回路の当該被試験装置および対向装置の間に設置される結合・減結合装置であって、雷サージ電圧を発生させる雷サージ発生器と当該雷サージ電圧の前記通信線への印加点との間に設けられ、当該雷サージ電圧を当該印加点へ印加する結合回路部と、前記印加点より前記対向装置側に設けられ、印加された前記雷サージ電圧が前記対向装置に印加されるのを防止する減結合回路部と、前記印加点より前記被試験装置側に設けられ、印加された前記雷サージ電圧を減衰させることが可能な一次防護素子部と、前記一次防護素子部と前記被試験装置との間に設けられ、前記被試験装置に4本の通信線が接続される場合の当該通信線に1対1で接続される通信線接続端子を備え、前記被試験装置に2本の通信線が接続される場合の当該通信線が、当該通信線接続端子の中の隣接した2つの通信線接続端子に1対1で接続されるようにした入力部と、前記減結合回路部と前記対向装置との間に設置され、前記対向装置に4本の通信線が接続される場合の当該通信線に1対1で接続される通信線接続端子を備え、前記対向装置に2本の通信線が接続される場合の当該通信線が、当該通信線接続端子の中の隣接した2つの通信線接続端子に1対1で接続されるようにした出力部とを備えることを特徴とする。
【0023】
請求項2記載の結合・減結合装置は、請求項1に記載の結合・減結合装置において、前記結合回路部は、前記被試験装置の通信線とアースとの間に前記雷サージ電圧を印加する縦印加用結合回路部と、前記被試験装置の通信線間に前記雷サージ電圧を印加する横印加用結合回路部と、前記縦印加用結合回路部と前記横印加用結合回路部の一方を選択する機能とを備え、初期設定においては、前記縦印加用結合回路部が選択されていることを特徴とする。
【0024】
請求項3記載の結合・減結合装置は、請求項1または2記載の結合・減結合装置において、前記結合回路部は、前記雷サージ発生器で発生した正極性又は負極性の雷サージ電圧が印加される雷サージ入力端子と、前記雷サージ電圧の基準になる0V端子と、前記雷サージ電圧をxDSLの通信信号に悪影響を与えないで通過させる自動復帰スイッチ機能素子である3極ガス避雷管を備え、前記3極ガス避雷管の接地電極以外の2つの電極はそれぞれ前記印加点に接続されており、前記接地電極に前記雷サージ電圧を加えるように構成した、ことを特徴とする。
【0025】
請求項4記載の結合・減結合装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載の結合・減結合装置において、前記結合回路部は、xDSL用の結合回路部と、アナログ用の結合回路部と、前記xDSL用の結合回路部とアナログ用の結合回路部の一方を選択する機能とを備え、初期設定においては、前記xDSL用の結合回路部が選択されていることを特徴とする。
【0026】
請求項5記載の結合・減結合装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の結合・減結合装置において、前記減結合回路部は、xDSLの通信信号を通過させる空心の円筒コイルを複数個直列に接続して構成されたコモンモードチョークコイルを備えることを特徴とする。
【0027】
請求項6記載の結合・減結合装置は、請求項5記載の結合・減結合装置において、前記コモンモードチョークコイルは、絶縁材を被覆した電線を円筒のボビンに2並列巻き、又は4並列巻きしてなる複数個の前記円筒コイルの内側に、前記ボビンの内径にガタなく挿入することのできる外径を有する絶縁体樹脂からなる円筒の筐体を挿入し、前記円筒コイルと前記円筒の筐体との間で同軸構造を構成することによって、前記複数の円筒コイルを軸方向に配置した状態で各々の円筒コイル間で発生させた磁束の中心軸を一致させることのできる構造を有することを特徴とする。
【0028】
請求項7記載の結合・減結合装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の結合・減結合装置において、前記一次防護素子部は、前記印加点と前記入力部との間に加入者保安器を備え、前記一次防護素子部を無効とした雷サージ試験を実施する際には、前記加入者保安器の無い経路を選択する機能を備え、初期設定においては、前記加入者保安器の有る経路が選択されていることを特徴とする。
【0029】
請求項8記載の結合・減結合装置は、請求項7記載の結合・減結合装置において、前記一次防護素子部は、前記加入者保安器の有る経路を選択した場合は、当該加入者保安器の接地端子にアース抵抗を模した接地抵抗の一端が接続され、前記入力部のアース接続端子に接続されている前記一次防護素子部のアースポートに当該接地抵抗の他の一端が接続され、前記加入者保安器の無い経路を選択した場合は、前記接地抵抗が接続されずに、当該加入者保安器がアースに対して絶縁されている状態を構築する機能を備えることを特徴とする。
【0030】
請求項9記載の結合・減結合装置は、請求項1ないし8のいずれかに記載の結合・減結合装置において、前記入力部は、前記被試験装置の通信線を接続する4個の通信線接続端子と、前記被試験装置のアースポートを接続するアース接続端子と、前記結合・減結合装置を零電位に保持するアース端子とを備え、前記アース端子と、前記アース接続端子と、前記一次防護素子部のアースポートと、前記結合回路部の0V端子とが接続されており、前記被試験装置が2本の通信線を接続して前記対向装置との間で通信をするのに対応する場合は、前記4個の通信線接続端子の中の2個の通信線接続端子のみを使用できるように構成されたことを特徴とする。
【0031】
請求項10記載の結合・減結合装置は、請求項1ないし9のいずれかに記載の結合・減結合装置において、前記出力部は、前記対向装置の通信線を接続する4個の通信線接続端子を備え、前記対向装置が2本の通信線を接続して前記被試験装置との間で通信をするのに対応する場合は、前記4個の通信線接続端子の中の2個の通信線接続端子のみを使用できるように構成されたことを特徴とする。
【0032】
請求項11記載の結合・減結合装置は、請求項1ないし10のいずれかに記載の結合・減結合装置において、前記入力部、前記結合回路部、前記一次防護素子部は、前記結合・減結合装置の筐体における4つの側面のうちの1つの側面に設けられ、前記出力部は、前記1つの側面に対向する側面に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
請求項1記載の発明によれば、xDSL用IT機器等の雷サージ試験において、高電圧が印加される結合回路部、減結合回路部、及び一次防護素子部は一つの筐体に収容することによって、測定者が高電圧部分に極力触れることがないため安全、且つ迅速に試験を実施することが可能となった。また、本装置は従来のアナログ通信機器の雷サージ試験にも適用できる。xDSLの通信信号を通過させるための分割した空芯コイルを複数個、直列に接続したコモンモードチョークコイルを有することにより、空芯コイルの巻線間で発生する静電容量を極力抑制して、共振周波数の向上を図った効果によって、従来のコモンモードチョークコイルに比べて、被試験装置への印加した雷サージ過電圧が試験の対象としていない対向装置に流入することを未然に防止するための性能を向上させることが可能となり、IT機器等の通信機器の動作状態での雷サージ試験を精度良く行うことができる。
【0034】
請求項2記載の発明によれば、結合回路部は縦印加用と横印加用とを備えており、切替え機能を用いてどちらか一方を選択できるため、各々の試験のたびに配線をはずしたり付けたりする手間を省略できるので試験時間の節約が図れる。また高電圧部分に触ることがないため、作業者の安全性も向上する。
【0035】
請求項3記載の発明によれば、被試験装置と対向装置間での通信状態において、通信線が2線の場合において被試験装置に雷サージ電圧を印加しても、自動復帰スイッチ機能素子である3極ガス避雷管の電極間静電容量が1〜2pFと非常に小さいので、xDSLの通信信号に減衰等の悪影響を与えることはほとんど無い。また、2極ガス避雷管を用いて結合回路部を構成することもできるが2個必要であるばかりでなく、2つの2極ガス避雷管の間で放電開始時間に差異が発生するため、これによって2本の通信線の線間に横電圧を発生して、被試験装置に悪影響を与える恐れがある。このため結合回路部には3極ガス避雷管を用いるのが有利である。
【0036】
請求項4記載の発明によれば、従来の低速のアナログ通信機器の雷サージ試験にも適用できるようにxDSL用とは別のアナログ用結合回路部を備えている。アナログ用結合回路部はIEC61000−4−5に記載されている回路構成を採用している。このため本結合・減結合装置は2種類の結合回路部を有しているので、xDSL用とアナログ用結合回路部を別々に搭載した装置を使用するよりも経済的に有利である。
【0037】
請求項5記載の発明によれば、xDSLの通信信号を通過させる分割された空心円筒コイルを複数個直列に接続して動作させるコモンモードチョークコイルであることから、巻線間の静電容量を低減することが可能となり、これによってコモンモードチョークコイルの共振周波数の向上を図ることができる。
【0038】
請求項6記載の発明によれば、高絶縁材を被覆した巻線用電線を円筒のボビンに2並列巻き、又は4並列巻きして構成した複数個の円筒コイルの内径に対して、ガタなく挿入できる外径を持つ絶縁体樹脂から成る別の一本の、複数個の円筒コイルを全部加算した長さを超えた全体の長さをもつ円筒の筐体を挿入する構造を有することによって、複数個の円筒コイルと円筒の筐体との間で同軸構造が構成される。この同軸構造によって複数個の円筒コイルを軸方向に配置した状態で各々の円筒コイル間で発生する磁束の中心軸を一義的に一致させることができる。
【0039】
請求項7記載の発明によれば、例えば、日本電信電話株式会社のメタル加入者回線に使用されている所定の加入者保安器を被試験装置の一次防護素子部として使用することによって、現実の加入者保安器を使用する環境を考慮した雷サージ試験を実施できる。また、一次防護素子部を使用しない雷サージ試験を実施する際には、加入者保安器の無い経路に切替えることができるので各々の試験のたびに加入者保安器をはずしたり付けたりする手間を省略できるので試験時間の節約が図れ、且つ高電圧部分に触ることがないため、作業者の安全性も向上できる。
【0040】
請求項8記載の発明によれば、一次防護素子部有りを選択した場合には、加入者保安器の接地端子に接地抵抗を模擬した任意の抵抗値、例えば300Ωがアース間に形成された状態で雷サージ試験を迅速に実施できる。一次防護素子部無しを選択した場合には通信線から加入者保安器が切り離された状態を構成できるので、雷サージ試験を一台の結合・減結合装置で実施することができる。
【0041】
請求項9記載の発明によれば、4本の通信線をもつ被試験装置を結合・減結合装置に設置する手順は、その4本の通信線を入力部の4個の通信線接続端子に接続する、被試験装置のアースポートを入力部のアース接続端子に接続する、さらに入力部のアース端子を試験室のアースに接続することで回線設定ができる。2本の通信線をもつ被試験装置の場合は、その通信線を入力部の4個の通信線接続端子の中の所定の2個の通信線接続端子に接続することで回線設定ができる。
【0042】
請求項10記載の発明によれば、4本の通信線をもつ対向装置を結合・減結合装置に設置する手順は、その4本の通信線を出力部の4個の通信線接続端子に接続するだけで回線設定ができる。2本の通信線をもつ対向装置の場合は、その通信線を出力部の4個の通信線接続端子の中の所定の2個の通信線接続端子に接続すれば回線設定ができる。
【0043】
請求項11記載の発明によれば、結合・減結合装置の入力部を筐体高さ方向の4個のうちの一つの側面に設置し、また出力部を入力部と対面する筐体の面に設置して構成することによって、被試験装置と対向装置間の離隔距離を長くすることができるので、両装置間でのxDSL通信信号に与える電磁干渉を極力抑制できる。また入力部と結合回路部と一次防護素子部を同じ側面に設置することによって、雷サージ試験を実施する上での操作性、利便性及び安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態に係る結合・減結合装置を適用した雷サージ試験回路を示す回路図である。なお、図1に示す結合・減結合装置100は、メタル加入者回線を用いた高速デジタル伝送方式であるxDSL用のIT機器の雷サージ試験回路に適用した例を示しており、通信線の本数は4本である。
【0046】
結合・減結合装置100は、xDSL用のIT機器である被試験装置300に接続される入力部1と、雷サージ発生器400に接続される結合回路部2と、被試験装置300と同様なxDSL用のIT機器である対向装置200を防護する減結合回路部3と、被試験装置300を防護する一次防護素子部4と、対向装置200に接続される出力部5とを筐体101内に収容したものである。
【0047】
図2は、結合・減結合装置100の一部を切り欠いた斜視図である。
結合・減結合装置100の外寸は、横105cm×奥行き105cm×高さ175cmである。筐体101は、骨組み材とベークライト板の4枚の側面板、天井板及び底板とで構成され、また通信線接続端子11〜14とアース接続端子19、0V端子20と雷サージ入力端子21、一次防護素子部4及び通信線接続端子51〜54(不図示だが、図示された通信線接続端子55〜58に対向するように設けられる)とアース接続端子50はそれぞれアクリル板の防護蓋(不図示)の中に設置されており、接続線は当該の前記防護蓋の下部から引き出される。前記防護蓋はそれぞれが上面の一端を蝶番で側面1011、1012に取り付けており、それぞれの前記防護蓋は所定の接続端子に線を接続する際は、前記防護蓋を上方向に開く構造になっている。
【0048】
筐体101の側面1011には、入力部1、結合回路部2、一次防護素子部4が設けられ、側面1011に対向する側面1012には、出力部5が設けられる。減結合回路部3は、筐体101に収容される。
【0049】
入力部1では、その通信線接続端子11〜14、アース接続端子19は、前記防護蓋の中に収容され、アース端子10が外側に露出している。組で使用される通信線接続端子11、12は互いに隣接して配置される。また、組で使用される通信線接続端子13、14は互いに隣接して配置される。
【0050】
出力部5では、その通信線接続端子55〜58が内側に露出し、通信線接続端子55〜58は、通信線を介して減結合回路部3に接続される。また、通信線接続端子51〜54とアース接続端子50は前記防護蓋の中に収容されている。
【0051】
結合回路部2では、その0V端子20、雷サージ入力端子21が、前記防護蓋の中に収容されている。雷サージ入力端子21は、高絶縁耐力を有する端子である。
【0052】
結合・減結合装置100では、高電圧が扱われるが、外側に露出しているアース端子10以外の回路は、筐体101及び前記防護蓋に内包されるので、高電圧の部分に測定者が触れることを極力避けることができ、よって、安全且つ迅速に試験を実施することができる。
【0053】
また、側面1011に入力部1を設け、対向する側面1012に出力部5を設けたので、被試験装置300及び対向装置200の離間距離を長くできる。よって、被試験装置300及び対向装置200に与える電磁干渉を極力抑制できる。
【0054】
図1に戻り、結合回路部2は、スイッチ201〜206、アナログ用結合回路部207、208、3極ガス避雷管209〜212、0V端子20、雷サージ入力端子21、出力端子23〜26を備える。
【0055】
3極ガス避雷管209〜212は、雷サージ電圧をxDSLの通信信号に悪影響を与えないで通過させる自動復帰スイッチ機能素子であることにより用いられる。3極ガス避雷管209〜212としては、その電極間静電容量が1〜2pFのものが使用される。前述のように、0V端子20、雷サージ入力端子21は、前記防護蓋の中に収容されており、筐体101の外側に露出しない。
【0056】
3極ガス避雷管209、211により、いわゆる縦印加用結合回路部が構成され、3極ガス避雷管209〜212により、いわゆる横印加用結合回路部が構成される。
【0057】
3極ガス避雷管209〜212、スイッチ202、204により、xDSL用の結合回路部が構成され、アナログ用結合回路部207、208により、アナログ用の結合回路部が構成される。
【0058】
アナログ用結合回路部207、208は、低速なアナログの通信機器の雷サージ試験も行えるように設けられ、国際電気標準会議の電磁適合性におけるサージイミュニティ試験規格IEC61000−4−5に示されている2極ガス避雷管とコンデンサの並列接続で構成される。この2極ガス避雷管は、自動復帰スイッチ機能素子であることにより用いられる。
【0059】
0V端子20、雷サージ入力端子21は、雷サージ発生器400のアースポート4002、高電圧ポート4001にそれぞれ接続される。
【0060】
雷サージ入力端子21は、スイッチ201の端子2011に接続される。また、雷サージ入力端子21は、スイッチ205を介して、スイッチ203の端子2031に接続される。スイッチ205では、通常はその各端子がフローティングになっている。
【0061】
スイッチ201の端子2012は、3極ガス避雷管209の接地電極に接続される。
3極ガス避雷管209の一方の通信線用電極は、出力端子23に接続される。
【0062】
スイッチ201の端子2013は、アナログ用結合回路部207の入力端子に接続される。アナログ用結合回路部207の2つの出力端子は、出力端子23、24にそれぞれ接続される。
【0063】
0V端子20は、3極ガス避雷管210の接地電極に接続される。また、0V端子20は、スイッチ206を介して、3極ガス避雷管212の接地電極に接続される。スイッチ206では、通常はその各端子がフローティングになっている。
【0064】
3極ガス避雷管210の一方の通信線用電極は、スイッチ202の端子2021に接続される。3極ガス避雷管210の他方の通信線用電極はフローティングにされる。
3極ガス避雷管209の他方の通信線用電極は、スイッチ202の端子2022に接続される。
【0065】
スイッチ202の端子2023は出力端子24に接続される。
スイッチ201では、端子2011、2012間が接続され、端子2013はフローティングになっている。
スイッチ202では、端子2022、2023間が接続され、端子2021はフローティングになっている。
スイッチ203の端子2032は、3極ガス避雷管211の接地電極に接続される。3極ガス避雷管211の一方の通信線用電極は、出力端子26に接続される。
スイッチ203の端子2033は、アナログ用結合回路部208の入力端子に接続される。
【0066】
アナログ用結合回路部208の2つの出力端子は、出力端子25、26にそれぞれ接続される。
3極ガス避雷管212の一方の通信線用電極は、スイッチ204の端子2041に接続される。3極ガス避雷管212の他方の通信線用電極は、フローティングにされる。
3極ガス避雷管211の他方の通信線用電極は、スイッチ204の端子2042に接続される。
スイッチ204の端子2043は出力端子25に接続される。
スイッチ203では、端子2031、2032間が接続され、端子2033はフローティングになっている。
スイッチ204では、端子2042、2043間が接続され、端子2041はフローティングになっている。
【0067】
なお、結合回路部2において、3極ガス避雷管でなく、2極ガス避雷管を用いてもよい。しかし、この場合、3極ガス避雷管1個に対して2極ガス避雷管が2個必要になってしまう。また、2個の2極ガス避雷管の間で放電開始時間に差異が発生し、その2極ガス避雷管が接続される通信線の線間に横電圧が発生して、被試験装置300に悪影響を与える虞がある。よって、結合回路部2には、3極ガス避雷管を用いるのが好ましい。
【0068】
また、結合回路部2では、xDSL用の回路、つまり、スイッチ202、204、3極ガス避雷管209〜212だけでなく、アナログ用の回路、つまり、アナログ用結合回路部207、208、並びにxDSL用の回路とアナログ用の回路とを切り換えるスイッチ201、203を備えるので、xDSL用の回路のみを備える結合回路部を含む結合・減結合装置と、アナログ用の回路のみを備える結合回路部を含む結合・減結合装置とを用いるよりも経済的に好ましい。
【0069】
入力部1は、通信線接続端子11〜18、アース接続端子19、1A、アース端子10を備える。前述のように、通信線接続端子11〜14、アース接続端子19は前記防護蓋の中に収容され、アース端子10が筐体101の外側に露出している。
【0070】
通信線接続端子11〜14は、通信線(平衡線)3100を介して、被試験装置300の通信線接続端子3001〜3004にそれぞれ接続される。
【0071】
図示しないが、被試験装置300が通信線接続端子3003、3004を備えない場合、通信線接続端子11、12が、2本の通信線(平衡線)を介して、通信線接続端子3001、3002にそれぞれ接続される。
【0072】
アース接続端子19は、アース線を介して、被試験装置300のアースポート3005に接続される。
【0073】
通信線接続端子11と15、12と16、13と17、14と18、アース接続端子19と1A、がそれぞれ接続される。
【0074】
出力部5は、通信線接続端子51〜58、アース接続端子50を備える。通信線接続端子51〜54、アース接続端子50は、前記防護蓋の中に収容されている。組で使用される通信線接続端子51、52は互いに隣接して配置される。また、組で使用される通信線接続端子53、54は互いに隣接して配置される。
【0075】
通信線接続端子51〜54は、通信線(平衡線)2100を介して、対向装置200の通信線接続端子2001〜2004にそれぞれ接続される。
【0076】
対向装置200のアースポート2005は、フローティングにされる。
【0077】
図示しないが、対向装置200が通信線接続端子2003、2004を備えない場合、通信線接続端子51、52が、2本の通信線(平衡線)を介して、通信線接続端子2001、2002にそれぞれ接続される。
【0078】
通信線接続端子51と55、52と56、53と57、54と58、がそれぞれ接続される。
【0079】
一次防護素子部4は、加入者保安器401、402、スイッチ403〜408、接地抵抗409、410、アースポート40、通信線接続端子41〜48を備える。加入者保安器401、402は、ユーザ宅に設置されるものを使用することができる。加入者保安器401、402は、例えば、日本電信電話株式会社のメタル加入者回線に使用されている所定のものを使用することができる。接地抵抗409、410は、こうした、実際の加入者保安器でのアース抵抗を模したものであり、例えば、その値は300Ωである。こうして、実際に使用されている加入者保安器や実際の接地抵抗を模したものを使用することで、実際の通信環境に則した雷サージ試験を実施できる。その際には、雷サージ電圧を所定の電圧まで減衰させることができる。
【0080】
通信線接続端子41は、加入者保安器401の一方の通信線用の一方の端子に接続される。通信線接続端子45は、加入者保安器401の一方の通信線用の他方の端子に接続される。通信線接続端子41、45は、スイッチ403を介して互いに接続される。
【0081】
通信線接続端子42は、加入者保安器401の他方の通信線用の一方の端子に接続される。通信線接続端子46は、加入者保安器401の他方の通信線用の他方の端子に接続される。通信線接続端子42、46は、スイッチ404を介して互いに接続される。
【0082】
通信線接続端子43は、加入者保安器402の一方の通信線用の一方の端子に接続される。通信線接続端子47は、加入者保安器402の一方の通信線用の他方の端子に接続される。通信線接続端子43、47は、スイッチ405を介して互いに接続される。
【0083】
通信線接続端子44は、加入者保安器402の他方の通信線用の一方の端子に接続される。通信線接続端子48は、加入者保安器402の他方の通信線用の他方の端子に接続される。通信線接続端子44、48は、スイッチ406を介して互いに接続される。
【0084】
加入者保安器401の接地端子(図示せず)は、接地抵抗409とスイッチ407を介して、アースポート40に接続される。
【0085】
加入者保安器402の接地端子(図示せず)は、接地抵抗410とスイッチ408を介して、アースポート40に接続される。
【0086】
スイッチ403〜406では、各端子がフローティングにされている。
スイッチ407、408のそれぞれでは、各端子が接続されている。
【0087】
減結合回路部3は、コモンモードチョークコイル310、ワイヤ接続端子31〜38を備える。
【0088】
コモンモードチョークコイル310の巻き線301の一端がワイヤ接続端子31に接続され、巻き線301の他端がワイヤ接続端子35に接続される。
コモンモードチョークコイル310の巻き線302の一端がワイヤ接続端子32に接続され、巻き線302の他端がワイヤ接続端子36に接続される。
コモンモードチョークコイル310の巻き線303の一端がワイヤ接続端子33に接続され、巻き線303の他端がワイヤ接続端子37に接続される。
コモンモードチョークコイル310の巻き線304の一端がワイヤ接続端子34に接続され、巻き線304の他端がワイヤ接続端子38に接続される。
【0089】
入力部1の通信線接続端子15〜18は、4本の通信線(平衡線)49を介して、一次防護素子部4の通信線接続端子41〜44にそれぞれ接続される。
【0090】
出力部5の通信線接続端子55〜58は、4本の通信線(平衡線)59を介して、抵抗61〜64の一端にそれぞれ接続される。抵抗61〜64の他端は、減結合回路部3のワイヤ接続端子31〜34にそれぞれ接続される。抵抗61〜64には、スイッチ65〜68がそれぞれ接続される。スイッチ65〜68では、各端子が接続されている。
【0091】
減結合回路部3のワイヤ接続端子35〜38は、4本の通信線(平衡線)39を介して、一次防護素子部4の通信線接続端子45〜48にそれぞれ接続される。
【0092】
ワイヤ接続端子35と通信線接続端子45とを接続する通信線には雷サージ印加点T1が設定され、ワイヤ接続端子36と通信線接続端子46とを接続する通信線には雷サージ印加点T2が設定される。結合回路部2の出力端子24、23は、不平衡線27を介して、雷サージ印加点T1、T2にそれぞれ接続される。
【0093】
ワイヤ接続端子37と通信線接続端子47とを接続する通信線には雷サージ印加点T3が設定され、ワイヤ接続端子38と通信線接続端子48とを接続する通信線には雷サージ印加点T4が設定される。結合回路部2の出力端子25、26は、不平衡線28を介して、雷サージ印加点T3、T4にそれぞれ接続される。
【0094】
入力部1のアース接続端子1A、アース端子10、アース接続端子19、結合回路部2の0V端子20、一次防護素子部4のアースポート40、出力部5のアース接続端子50は、互いに接続される。
【0095】
入力部1のアース端子10は、結合・減結合装置100の外部に設置されているアースGに接続され、零電位に保持される。
【0096】
図3は、コモンモードチョークコイル310の回路図である。図4は、コモンモードチョークコイル310の一実施例において一部を切り欠いた側面図である。
【0097】
減結合回路部3は、コモンモードチョークコイル310、ワイヤ接続端子31〜38を備える。
【0098】
コモンモードチョークコイル310は、巻き線301〜304、円筒筐体305、ボビン306〜309を備える。円筒筐体305は、絶縁体樹脂製の、例えば、塩化ビニール製の円筒の筐体である。ボビン306〜309のそれぞれは、例えば、塩化ビニールパイプ製の円筒の長手方向の両端にアクリル製円板のフランジ状ストッパを有するものである。
【0099】
コモンモードチョークコイル310の一実施例では、巻き線301〜304は、高い絶縁性を有する絶縁材を被覆したもの、例えば、7.5kVポリエチレン絶縁ビニールシース電線であり、外径、断面積は、それぞれ5.4mm、2mm2である。同実施例では、こうして絶縁性能と経済性を考慮した。また、同実施例では、コモンモードチョークコイル310のノーマルインピーダンスは110Ω程度である。よって、ADSL、VDSLの周波数帯域において、減結合回路部3と通信線とのインピーダンス整合を図ることによって、高速伝送信号をできるだけ減衰させないようにできる。
【0100】
同実施例では、ボビン306〜309は、それぞれ、長さが198mm、外径が410mm、内径が370mm、フランジ外径が640mmである。
【0101】
同実施例では、円筒筐体305は、長さが1180mm、外径が370mm、内径が347mmである。
【0102】
ボビン306〜309の内径は同一であり、その内径より円筒筐体305の外径が少し小さくなっている。ボビン306〜309では、隣り合うボビン間に空隙380が設けられる。そして、ボビン306〜309の内側に円筒筐体305がガタなく挿入される。
【0103】
コモンモードチョークコイル310は、こうして空芯構造にされる。つまり、数百Vから30kV以上の雷サージ電圧で雷サージ試験が実施できるように、空芯構造として、かかる雷サージ電圧によっても、コモンモードチョークコイル310が磁気飽和しないようになっている。
【0104】
円筒筐体305の軸方向の長さは、ボビン306〜309の長さの合計と、空隙380の長さの合計と、ワイヤ接続端子31〜34が取り付けられる部分3051の長さと、ワイヤ接続端子35〜38が取り付けられる部分3052の長さの総和である。
【0105】
巻き線301〜304の最もワイヤ接続端子35〜38に近い部分が、ボビン306に並列巻きで多層に巻かれ、こうして、空心の円筒コイルである分割コイル3061が構成される。
【0106】
巻き線301〜304の次にワイヤ接続端子35〜38に近い部分が、ボビン307に並列巻きで多層に巻かれ、こうして、空心の円筒コイルである分割コイル3071が構成される。
【0107】
巻き線301〜304の次にワイヤ接続端子35〜38に近い部分が、ボビン308に並列巻きで多層に巻かれ、こうして、空心の円筒コイルである分割コイル3081が構成される。
【0108】
巻き線301〜304の最もワイヤ接続端子35〜38から遠い部分が、ボビン309に並列巻きで多層に巻かれ、こうして、空心の円筒コイルである分割コイル3091が構成される。
【0109】
分割コイル3061における巻き線301〜304の巻き始めは、ワイヤ接続端子35〜38にそれぞれ接続される。
【0110】
分割コイル3061における巻き線301〜304巻き終わりは、分割コイル3071における巻き線301〜304の巻き始めにそれぞれ接続される。
【0111】
分割コイル3071における巻き線301〜304巻き終わりは、分割コイル3081における巻き線301〜304の巻き始めにそれぞれ接続される。
【0112】
分割コイル3081における巻き線301〜304巻き終わりは、分割コイル3091における巻き線301〜304の巻き始めにそれぞれ接続される。
【0113】
分割コイル3091における巻き線301〜304の巻き終わりは、ワイヤ接続端子31〜34にそれぞれ接続される。
【0114】
図3では、巻き始めに黒丸印を付し、巻き終わりには黒丸印を付さないようにしている。
【0115】
xDSLにおいては、主にADSL(Asymmetric DSL)、VDSL(Very high bit-rate DSL)が使用される。ADSLの周波数帯域は26kHz〜3.75MHz、VDSLの周波数帯域は26kHz〜16.2MHzである。
【0116】
コモンモードチョークコイル310の一実施例では、これらの周波数帯域で信号を通過させ、音声信号の周波数帯域でも信号も通過させるようになっている。
【0117】
同実施例では、分割コイル3061〜3091のそれぞれでは、巻き線301〜304のそれぞれの巻数が90ターン(=6ターン×15層)で、そのインダクタンス値が5mHである。分割コイル3061〜3091を直列に接続したので、巻き線301〜304のそれぞれのインダクタンス値は、前記のサージイミュニティ試験規格IEC61000−4−5において示された20mH(=5mH×4(分割コイル3061〜3091の総数))になっている。
【0118】
図5は、コモンモードチョークコイル310におけるコモンモードインピーダンスの特性の一例を示す図である。このコモンモードチョークコイル310の共振周波数は155.03kHzになっている。また、そのときのインピーダンス値から求めたインダクタンス値は20.8mHになる。
【0119】
なお、ボビン306〜309の長さをより長くすることで、巻き線の層数を減らして線間の静電容量を低減でき、これにより、共振周波数をより高くすることができる。
【0120】
同実施例では、コモンモードチョークコイル310、ワイヤ接続端子31〜38、円筒筐体305の間が、30kV以上の雷サージ電圧によっても絶縁破壊しないように、50kV以上の絶縁耐力をもたせている。
【0121】
ボビン306〜309の内側に円筒筐体305が挿入されるので、分割コイル3061〜3091の中心軸が一致し、各分割コイルと円筒筐体305との間で同軸構造が構成される。また、分割コイル3061〜3091で発生する軸方向の磁束の中心軸が一致し、コモンモードチョークコイル310のインダクタンスを効率的に発生させることができる。
【0122】
また、分割コイル3061〜3091と円筒筐体305の中心軸が一致しているので、空隙380の軸方向の長さ調整が容易であり、コモンモードチョークコイル310でインダクタンスを最大にする調整が容易に行える。
【0123】
(1)2つの通信線接続端子を備える被試験装置300の試験方法
被試験装置300が、2つの通信線接続端子を備える場合の試験方法を説明する。
【0124】
(1−1)まず、その通信線接続端子3001、3002とアースポート3005の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「縦印加」という。
【0125】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
入力部1の通信線接続端子11、12は、通信線を介して、被試験装置300の通信線接続端子3001、3002にそれぞれ接続される。
【0126】
入力部1のアース接続端子19は、被試験装置300のアースポート3005に接続される。
出力部5の通信線接続端子51、52は、通信線を介して、対向装置200の通信線接続端子2001、2002にそれぞれ接続される。
【0127】
対向装置200のアースポート2005は、フローティングにされる。
結合回路部2の0V端子20、雷サージ入力端子21は、雷サージ発生器400のアースポート4002、高電圧ポート4001にそれぞれ接続される。
【0128】
この場合の試験に限らず、本実施の形態では、入力部1、結合回路部2、出力部5が操作される。図2に示すように、このような操作対象である入力部1、結合回路部2や、一次防護素子部4を同一の側面1011に設けたので、操作性が向上する。また、こうした利便性の向上が、安全性の向上にもつながる。
【0129】
スイッチ201では、端子2011、2012間が接続され、端子2013はフローティングされる。つまり、初期の設定を維持する。
スイッチ202では、端子2022、2023間が接続され、端子2021はフローティングにされる。つまり、初期の設定を維持する。
スイッチ205、206のそれぞれでは、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定を維持する。
一次防護素子部4を無効にする場合は、スイッチ403、404のそれぞれで、各端子が接続される。つまり、初期の設定が変更される。また、スイッチ407では、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。
【0130】
一方、一次防護素子部4を有効にする場合は、スイッチ403、404のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が維持される。また、スイッチ407では、各端子が接続される。つまり、初期の設定が維持される。
【0131】
また、スイッチ65、66のそれぞれで、各端子が接続される。つまり、初期の設定が維持される。
【0132】
次に、被試験装置300と対向装置200とで互いに通信を行う。図3、図4を参照して説明したコモンモードチョークコイル310の構成により、ADSLの場合の26kHz〜3.75MHzの通信信号、VDSLの場合の26kHz〜16.2MHzの通信信号が遮断されることなく通信が行える。
【0133】
また、この通信信号は、雷サージ印加点T1、T2を通過し、これらの雷サージ印加点T1、T2には、3極ガス避雷管209が接続されるのだが、その電極間静電容量が1〜2pFと非常に小さいので、ここでの通信信号が減衰するなどの悪影響をほぼなくすことができる。なお、3極ガス避雷管209に限らず、3極ガス避雷管210〜212の電極間静電容量も1〜2pFと非常に小さいので、これ以降に説明するxDSLの通信信号についても、その通信信号が減衰するなどの悪影響をほぼなくすことができる。
【0134】
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0135】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、3極ガス避雷管209、スイッチ202、出力端子24を介して、雷サージ印加点T1に印加される。
【0136】
また、この雷サージ電圧は、スイッチ201、3極ガス避雷管209、出力端子23を介して、雷サージ印加点T2に印加される。
【0137】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T1、T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰されず、雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧が被試験装置300の通信線接続端子3001とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧が被試験装置300の通信線接続端子3002とアースポート3005の間に印加される。
【0138】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T1、T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4の加入者保安器401が動作することによって減衰される。
【0139】
加入者保安器401の接地端子から出力される動作電流は、接地抵抗409、0V端子20を介して、雷サージ発生器400のアースポート4002に戻る。アースポート40は、入力部1のアース端子10を介してアースGに接続されているので、零電位に保持されている。しかし加入者保安器401の接地端子は、加入者保安器401の動作後の残留電圧(数十Vである)と、接地抵抗409の抵抗値と加入者保安器401の動作電流との積で表される電圧(接地抵抗電圧という)とを加えた電圧分だけ、零電位よりも電位が上昇している。ただし残留電圧は接地抵抗電圧に比べて非常に小さいので無視してもよい。すなわち一次防護素子部4を有効にした場合において、雷サージ電圧の減衰後の電圧は接地抵抗電圧に等しいと考えて問題はない。
【0140】
なお、一次防護素子部4を有効にした場合は、以降の試験でも同様に、加入者保安器401や加入者保安器402の接地端子は零電位よりも接地抵抗電圧分の電位が上昇している。
【0141】
雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が被試験装置300の通信線接続端子3001とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が被試験装置300の通信線接続端子3002とアースポート3005の間に印加される。
【0142】
一方、雷サージ印加点T1、T2に印加された雷サージ電圧は、減結合回路部3により減衰する。よって、雷サージ印加点T1、T2に印加された雷サージ電圧が減衰しないで対向装置200に印加されるのを防止することができる。したがい、対向装置200を動作させたままで精度良く雷サージ試験が行える。
【0143】
(1−2)次に、通信線接続端子3001と通信線接続端子3002の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「横印加」という。
【0144】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
対向装置200、被試験装置300、雷サージ発生器400と結合・減結合装置100との接続は、(1−1)での接続と同様である。結合・減結合装置100でのスイッチの設定は、(1−1)での設定に対し、以下の点が異なる。
【0145】
スイッチ202では、端子2021、2023間が接続され、端子2022はフローティングにされる。つまり、初期の設定を変更する。
【0146】
こうして、スイッチ202を設けて、その設定変更で縦印加と横印加を切り換えるようにしたので、配線を外したり付けたりせずに切り換えが行える。よって、配線の付け外しの手間が省ける。また、作業者が配線の付け外しで高電圧部分に触れることがなく安全性が向上する。
【0147】
また、スイッチ65、66のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。
【0148】
こうした上で、(1−1)と同様に、被試験装置300と対向装置200とで互いに通信を行う。
【0149】
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0150】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、3極ガス避雷管209、出力端子23を介して、雷サージ印加点T2に印加される。
【0151】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、被試験装置300の通信線接続端子3002に印加される。
【0152】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、被試験装置300の通信線接続端子3002に印加される。
【0153】
また、雷サージ発生器400のアースポート4002、結合回路部2の3極ガス避雷管210、スイッチ202、出力端子24、雷サージ印加点T1、一次防護素子部4の通信線接続端子45、41、入力部1の通信線接続15、11、通信線接続端子3001を結ぶ経路が形成される。この経路により、雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が通信線接続端子3001と通信線接続端子3002の間に印加される。
【0154】
一方、高電圧ポート4001、スイッチ201、3極ガス避雷管209、出力端子23、雷サージ印加点T2、巻き線302、抵抗62、通信線接続端子2002、対向装置200の内部回路、通信線接続端子2001、抵抗61、巻き線301、雷サージ印加点T1、出力端子24、スイッチ202、3極ガス避雷管210、雷サージ発生器400のアースポート4002を結ぶ経路が形成される。雷サージ電圧は、抵抗61、62により減衰する。よって、雷サージ電圧が減衰しないで対向装置200に印加されるのを防止することができる。したがい、対向装置200を動作させたままで精度良く雷サージ試験が行える。
【0155】
(2)2つの通信線接続端子を備えるアナログの被試験装置の試験方法
次に、2つの通信線接続端子を備えるアナログの被試験装置(図示せず)の試験方法を説明する。
【0156】
(2−1)まず、その被試験装置の2つの通信線接続端子(通信線接続端子A1、A2という)とアースポート(アースポートAGという)の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「縦印加」という。
【0157】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
入力部1の通信線接続端子11、12は、通信線を介して、通信線接続端子A1、A2にそれぞれ接続される。
【0158】
入力部1のアース接続端子19は、アースポートAGに接続される。
出力部5の通信線接続端子51、52は、通信線を介して、アナログの対向装置の2つの通信線接続端子(通信線接続端子B1、B2という)にそれぞれ接続される。
【0159】
対向装置200のアースポート(アースポートBGという)は、フローティングにされる。
結合回路部2の0V端子20、雷サージ入力端子21は、雷サージ発生器400のアースポート4002、高電圧ポート4001にそれぞれ接続される。
【0160】
スイッチ201では、端子2011、2013間が接続され、端子2012はフローティングされる。つまり、初期の設定が変更される。
スイッチ205では、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定を維持する。
【0161】
一次防護素子部4を無効にする場合は、スイッチ403、404のそれぞれで、各端子が接続される。つまり、初期の設定が変更される。また、スイッチ407では、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。
【0162】
一方、一次防護素子部4を有効にする場合は、スイッチ403、404のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が維持される。また、スイッチ407では、各端子が接続される。つまり、初期の設定が維持される。
【0163】
また、スイッチ65、66のそれぞれで、各端子が接続される。つまり、初期の設定が維持される。
【0164】
次に、アナログの被試験装置と対向装置とで互いに通信を行う。
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0165】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、アナログ用結合回路部207、出力端子23、24を介して、雷サージ印加点T1、T2に印加される。
【0166】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、通信線接続端子A1とアースポートAGの間に印加される。また、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、通信線接続端子A2とアースポートAGの間に印加される。
【0167】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、通信線接続端子A1とアースポートAGの間に印加される。また、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、通信線接続端子A2とアースポートAGの間に印加される。
【0168】
一方、雷サージ印加点T1、T2に印加された雷サージ電圧は、減結合回路部3により減衰する。よって、雷サージ印加点T1、T2に印加された雷サージ電圧が減衰しないで対向装置に印加されるのを防止することができる。したがい、対向装置を動作させたままで精度良く雷サージ試験が行える。
【0169】
(2−2)次に、通信線接続端子A1と通信線接続端子A2の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「横印加」という。
【0170】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
対向装置、被試験装置、雷サージ発生器400と結合・減結合装置100との接続は、(2−1)での接続と同様である。結合・減結合装置100では、スイッチ65、66のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。これ以外のスイッチの設定は、(2−1)での設定と同様である。
【0171】
こうした上で、(2−1)と同様に、被試験装置と対向装置とで互いに通信を行う。
【0172】
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0173】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、アナログ用結合回路部207、出力端子23を介して、雷サージ印加点T2に印加される。
【0174】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、通信線接続端子A2に印加される。
【0175】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、通信線接続端子A2に印加される。
【0176】
また、雷サージ発生器400のアースポート4002、アナログ用結合回路部207のアースポート(図示せず)、出力端子24、雷サージ印加点T1、一次防護素子部4の通信線接続端子45、41、入力部1の通信線接続15、11、通信線接続端子3001を結ぶ経路が形成される。この経路により、雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が通信線接続端子A1と通信線接続端子A2の間に印加される。
【0177】
一方、(1−2)と同様にして、雷サージ電圧が減衰しないで対向装置200に印加されるのを防止することができる。したがい、対向装置200を動作させたままで精度良く雷サージ試験が行える。
【0178】
(3)4つの通信線接続端子を備える被試験装置300の試験方法
次に、被試験装置300が4つの通信線接続端子を備える場合の試験方法を説明する。
【0179】
(3−1)まず、通信線接続端子3001〜3004とアースポート3005の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「縦印加」という。
【0180】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
入力部1の通信線接続端子11〜14は、通信線3100を介して、被試験装置300の通信線接続端子3001〜3004にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子3001、3002は、通信線接続端子11、12にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子3003、3004は、通信線接続端子13、14にそれぞれ接続される。
入力部1のアース接続端子19は、被試験装置300のアースポート3005に接続される。
【0181】
出力部5の通信線接続端子51〜54は、通信線2100を介して、対向装置200の通信線接続端子2001〜2004にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子2001、2002は、通信線接続端子51、52にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子2003、2004は、通信線接続端子53、54にそれぞれ接続される。
【0182】
対向装置200のアースポート2005は、フローティングにされる。
結合回路部2の0V端子20、雷サージ入力端子21は、雷サージ発生器400のアースポート4002、高電圧ポート4001にそれぞれ接続される。
【0183】
スイッチ201では、端子2011、2012間が接続され、端子2013はフローティングされる。つまり、初期の設定を維持する。
スイッチ202では、端子2022、2023間が接続され、端子2021はフローティングにされる。つまり、初期の設定を維持する。
スイッチ203では、端子2031、2032間が接続され、端子2033はフローティングされる。つまり、初期の設定を維持する。
スイッチ204では、端子2042、2043間が接続され、端子2041はフローティングにされる。つまり、初期の設定を維持する。
スイッチ205、206のそれぞれでは、各端子が接続される。つまり、初期の設定が変更される。
【0184】
一次防護素子部4を無効にする場合は、スイッチ403〜406のそれぞれで、各端子が接続される。つまり、初期の設定が変更される。また、スイッチ407、408のそれぞれでは、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。
【0185】
一方、一次防護素子部4を有効にする場合は、スイッチ403〜406のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が維持される。また、スイッチ407、408のそれぞれでは、各端子が接続される。つまり、初期の設定が維持される。
【0186】
また、スイッチ65〜68のそれぞれで、各端子が接続される。つまり、初期の設定が維持される。
【0187】
次に、被試験装置300と対向装置200とで互いに通信を行う。図3、図4を参照して説明したコモンモードチョークコイル310の構成により、ADSLの場合の26kHz〜3.75MHzの通信信号、VDSLの場合の26kHz〜16.2MHzの通信信号が遮断されることなく通信が行える。
【0188】
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0189】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、3極ガス避雷管209、スイッチ202、出力端子24を介して、雷サージ印加点T1に印加される。
【0190】
また、この雷サージ電圧は、スイッチ201、3極ガス避雷管209、出力端子23を介して、雷サージ印加点T2に印加される。
【0191】
また、この雷サージ電圧は、スイッチ205、203、3極ガス避雷管211、スイッチ204、出力端子25を介して、雷サージ印加点T3に接続される。
【0192】
また、この雷サージ電圧は、スイッチ205、203、3極ガス避雷管211、出力端子26を介して、雷サージ印加点T4に印加される。
【0193】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰されず、雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧が被試験装置300の通信線接続端子3001とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧が被試験装置300の通信線接続端子3002とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T3に印加された雷サージ電圧が被試験装置300の通信線接続端子3003とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧が被試験装置300の通信線接続端子3004とアースポート3005の間に印加される。
【0194】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が被試験装置300の通信線接続端子3001とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が被試験装置300の通信線接続端子3002とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T3に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が被試験装置300の通信線接続端子3003とアースポート3005の間に印加され、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が被試験装置300の通信線接続端子3004とアースポート3005の間に印加される。
【0195】
一方、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧は、減結合回路部3により減衰する。よって、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧が減衰しないで対向装置200に印加されるのを防止することができる。したがい、対向装置200を動作させたままで精度良く雷サージ試験が行える。
【0196】
(3−2)次に、通信線接続端子3001と通信線接続端子3002の間、並びに、通信線接続端子3003と通信線接続端子3004の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「横印加」という。
【0197】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
対向装置200、被試験装置300、雷サージ発生器400と結合・減結合装置100との接続は、(3−1)での接続と同様である。結合・減結合装置100でのスイッチの設定は、(3−1)での設定に対し、以下の点が異なる。
【0198】
スイッチ202では、端子2021、2023間が接続され、端子2022はフローティングにされる。つまり、初期の設定を変更する。
また、スイッチ204では、端子2041、2043間が接続され、端子2042はフローティングにされる。つまり、初期の設定を変更する。
こうして、スイッチ202、204を設けて、その設定変更で縦印加と横印加を切り換えるようにしたので、配線を外したり付けたりせずに切り換えが行える。よって、配線の付け外しの手間が省ける。また、作業者が配線の付け外しで高電圧部分に触れることがなく安全性が向上する。
【0199】
また、スイッチ65〜68のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。
【0200】
こうした上で、(3−1)と同様に、被試験装置300と対向装置200とで互いに通信を行う。
【0201】
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0202】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、3極ガス避雷管209、出力端子23を介して、雷サージ印加点T2に印加される。
【0203】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、被試験装置300の通信線接続端子3002に印加される。
【0204】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、被試験装置300の通信線接続端子3002に印加される。
【0205】
また、雷サージ発生器400のアースポート4002、結合回路部2の3極ガス避雷管210、スイッチ202、出力端子24、雷サージ印加点T1、一次防護素子部4の通信線接続端子45、41、入力部1の通信線接続15、11、通信線接続端子3001を結ぶ経路が形成される。この経路により、雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が通信線接続端子3001と通信線接続端子3002の間に印加される。
【0206】
また、この雷サージ電圧は、スイッチ205、203、3極ガス避雷管211、出力端子26を介して、雷サージ印加点T4に印加される。
【0207】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、被試験装置300の通信線接続端子3004に印加される。
【0208】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、被試験装置300の通信線接続端子3004に印加される。
【0209】
また、雷サージ発生器400のアースポート4002、結合回路部2のスイッチ206、3極ガス避雷管212、スイッチ204、出力端子25、雷サージ印加点T3、一次防護素子部4の通信線接続端子47、43、入力部1の通信線接続17、13、通信線接続端子3003を結ぶ経路が形成される。この経路により、雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が通信線接続端子3003と通信線接続端子3004の間に印加される。
【0210】
一方、(1−2)などと同様にして、雷サージ電圧は抵抗61、62により減衰する。
【0211】
また、高電圧ポート4001、スイッチ205、スイッチ203、3極ガス避雷管211、出力端子26、雷サージ印加点T4、巻き線304、抵抗64、通信線接続端子2004、対向装置200の内部回路、通信線接続端子2003、抵抗63、巻き線303、雷サージ印加点T3、出力端子25、スイッチ204、3極ガス避雷管212、スイッチ206、雷サージ発生器400のアースポート4002を結ぶ経路が形成される。雷サージ電圧は、抵抗63、64により減衰する。
【0212】
よって、雷サージ電圧が減衰しないで対向装置200に印加されるのを防止することができる。したがい、対向装置200を動作させたままで精度良く雷サージ試験が行える。
【0213】
(4)4つの通信線接続端子を備えるアナログの被試験装置の試験方法
次に、4つの通信線接続端子を備えるアナログの被試験装置(図示せず)の試験方法を説明する。
【0214】
(4−1)まず、アナログの被試験装置の4つの通信線接続端子(通信線接続端子A1〜A4という)とアースポート(アースポートAGという)の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「縦印加」という。
【0215】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
入力部1の通信線接続端子11〜14は、通信線を介して、通信線接続端子A1〜A4にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子A1、A2は、通信線接続端子11、12にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子A3、A4は、通信線接続端子13、14にそれぞれ接続される。
【0216】
入力部1のアース接続端子19は、アースポートAGに接続される。
出力部5の通信線接続端子51〜54は、通信線を介して、アナログの対向装置の4つの通信線接続端子(通信線接続端子B1〜B4という)にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子B1、B2は、通信線接続端子51、52にそれぞれ接続される。組で使用される通信線接続端子B3、B4は、通信線接続端子53、54にそれぞれ接続される。
【0217】
対向装置200のアースポート(アースポートBGという)は、フローティングにされる。
結合回路部2の0V端子20、雷サージ入力端子21は、雷サージ発生器400のアースポート4002、高電圧ポート4001にそれぞれ接続される。
【0218】
スイッチ201では、端子2011、2013間が接続され、端子2012はフローティングされる。つまり、初期の設定が変更される。
スイッチ203では、端子2031、2033間が接続され、端子2032はフローティングされる。つまり、初期の設定が変更される。
スイッチ205では、各端子が接続される。つまり、初期の設定が変更される。
【0219】
一次防護素子部4を無効にする場合は、スイッチ403、404のそれぞれで、各端子が接続される。つまり、初期の設定が変更される。また、スイッチ407では、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。
【0220】
一方、一次防護素子部4を有効にする場合は、スイッチ403、404のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が維持される。また、スイッチ407では、各端子が接続される。つまり、初期の設定が維持される。
【0221】
次に、アナログの被試験装置と対向装置とで互いに通信を行う。
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0222】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、アナログ用結合回路部207、出力端子23、24を介して、雷サージ印加点T1、T2に印加される。
また、この雷サージ電圧は、スイッチ205、203、アナログ用結合回路部208、出力端子25、26を介して、雷サージ印加点T3、T4に印加される。
【0223】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰されず、雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧が通信線接続端子A1とアースポートAGの間に印加され、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧が通信線接続端子A2とアースポートAGの間に印加され、雷サージ印加点T3に印加された雷サージ電圧が通信線接続端子A3とアースポートAGの間に印加され、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧が通信線接続端子A4とアースポートAGの間に印加される。
【0224】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、雷サージ印加点T1に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が通信線接続端子A1とアースポートAGの間に印加され、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が通信線接続端子A2とアースポートAGの間に印加され、雷サージ印加点T3に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が通信線接続端子A3とアースポートAGの間に印加され、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧の減衰後の電圧が通信線接続端子A4とアースポートAGの間に印加される。
【0225】
一方、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧は、減結合回路部3により減衰する。よって、雷サージ印加点T1〜T4に印加された雷サージ電圧が減衰しないで対向装置に印加されるのを防止することができる。したがい、対向装置を動作させたままで精度良く雷サージ試験が行える。
【0226】
(4−2)次に、アナログの被試験装置の通信線接続端子A1と通信線接続端子A2の間、並びに、通信線接続端子A3と通信線接続端子A4の間に雷サージ電圧を印加する場合の試験方法を説明する。かかる印加を「横印加」という。
【0227】
入力部1のアース端子10は、アースGに接続される。
対向装置、被試験装置、雷サージ発生器400と結合・減結合装置100との接続は、(4−1)での接続と同様である。結合・減結合装置100では、スイッチ65〜68のそれぞれで、各端子がフローティングにされる。つまり、初期の設定が変更される。これ以外のスイッチの設定は、(4−1)での設定と同様である。
【0228】
こうした上で、(4−1)と同様に、被試験装置と対向装置とで互いに通信を行う。
【0229】
次に、雷サージ発生器400のアースポート4002に対して正極性又は負極性の雷サージ電圧を高電圧ポート4001に発生させる。
【0230】
この雷サージ電圧は、スイッチ201、アナログ用結合回路部207、出力端子23を介して、雷サージ印加点T2に印加される。
【0231】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、通信線接続端子A2に印加される。
【0232】
一次防護素子部4を有効にした場合は、雷サージ印加点T2に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰され、通信線接続端子A2に印加される。
【0233】
また、雷サージ発生器400のアースポート4002、アナログ用結合回路部207、出力端子24、雷サージ印加点T1、一次防護素子部4の通信線接続端子45、41、入力部1の通信線接続15、11、通信線接続端子3001を結ぶ経路が形成される。この経路により、雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が通信線接続端子A1と通信線接続端子A2の間に印加される。
【0234】
また、雷サージ電圧は、スイッチ205、203、アナログ用結合回路部208、出力端子26を介して、雷サージ印加点T4に印加される。
【0235】
一次防護素子部4を無効にした場合、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰せず、通信線接続端子A4に印加される。
【0236】
一次防護素子部4を有効にした場合、雷サージ印加点T4に印加された雷サージ電圧は、一次防護素子部4によって減衰し、通信線接続端子A4に印加される。
【0237】
また、雷サージ発生器400のアースポート4002、アナログ用結合回路部208のアースポート(図示せず)、出力端子25、雷サージ印加点T3、一次防護素子部4の通信線接続端子47、43、入力部1の通信線接続17、13、通信線接続端子A3を結ぶ経路が形成される。この経路により、雷サージ電圧またはその減衰後の電圧が通信線接続端子A3と通信線接続端子A4の間に印加される。
【0238】
一方、(3−2)などと同様にして、雷サージ電圧が減衰しないで対向装置200に印加されるのを防止することができる。
【0239】
上記の(1)、(3)で説明した試験方法の結果の一例を説明する。
【0240】
この試験では、被試験装置300及び対向装置200として、伝送速度が50MbpsのVDSLモデムを使用した。通信速度は、下り25.7Mbps、上り7.9Mbpsに設定できた。。
【0241】
雷サージ電圧の波形は、波頭長10us、波尾長700usの波形とした。電流制限抵抗は25Ωとした。雷サージ発生器400の充電電圧は15kVとした。
【0242】
この雷サージ電圧の印加後の被試験装置300及び対向装置200では、共に異常は発生しなかった。
【0243】
以上、(1)〜(4)の試験に使用可能な結合・減結合装置100の構成とこれらの試験方法を説明したが、(1)、(2)の試験だけ行えればよいときは、以下のようにしてもよい。
【0244】
入力部1では、通信線接続端子13、14、17、18を設けなくてよい。
【0245】
結合回路部2では、スイッチ203、204、205、206、3極ガス避雷管211、212、出力端子25、25を設けなくてよい。
【0246】
減結合回路部3では、巻き線303、304、ワイヤ接続端子33、34、37、38を設けなくてよい。この場合、巻き線301、302を並列巻きにすればよい。
【0247】
一次防護素子部4では、加入者保安器402、スイッチ405、406、408、接地抵抗410、通信線接続端子43、44、47、48を設けなくてよい。
【0248】
出力部5では、通信線接続端子53、54、57、58を設けなくてよい。
【0249】
また、不平衡線28は設けなくてよい。
【0250】
また、通信線(平衡線)49を設けず、入力部1の通信線接続端子15、16を、2本の通信線(平衡線)を介して、一次防護素子部4の通信線接続端子41〜44にそれぞれ接続すればよい。
【0251】
また、通信線(平衡線)59を設けず、出力部5の通信線接続端子55、56を、2本の通信線(平衡線)を介して、減結合回路部3のワイヤ接続端子31、32にそれぞれ接続すればよい。
【0252】
また、通信線(平衡線)39を設けず、減結合回路部3のワイヤ接続端子35、36を、2本の通信線(平衡線)を介して、一次防護素子部4の通信線接続端子45、46にそれぞれ接続すればよい。
【0253】
また、(1)や(2)の試験は、被試験装置と対向装置のそれぞれが、2つの通信線接続端子を備えるとして説明したが、被試験装置と対向装置のそれぞれが、4つの通信線接続端子を備え、その2つを使用する場合でも同様に行えばよい。
【0254】
また、本実施の形態では、被試験装置300や対向装置200としてVDSLモデムを使用したが、本発明はこれに限定されることなく、その他のIT機器等の通信機器についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】本発明の一実施形態に係る結合・減結合装置を適用した雷サージ試験回路を示す回路図である。
【図2】結合・減結合装置100の一部を切り欠いた斜視図である。
【図3】コモンモードチョークコイル310の回路図である。
【図4】一部を切り欠いたコモンモードチョークコイル310の側面図である。
【図5】コモンモードチョークコイル310におけるコモンモードインピーダンスの特性の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0256】
1…入力部
1A、19…アース接続端子
2…結合回路部
3…減結合回路部
4…一次防護素子部
5…出力部
10…アース端子
11〜18、41〜48、51〜58、2001〜2004、3001〜3004…通信線接続端子
20…0V端子
21…雷サージ入力端子
23〜26…出力端子
27、28…不平衡線
31〜38…ワイヤ接続端子
39、49、59、2100、3100…通信線
40、2005、3005、4002…アースポート
50…アース接続端子
61〜64…抵抗
100…結合・減結合装置
101…筐体
200…対向装置
65〜68、201〜206、403〜408…スイッチ
207、208…アナログ用結合回路部
209〜212…3極ガス避雷管
300…被試験装置
301〜304…巻き線
305…円筒筐体
306〜309…ボビン
310…コモンモードチョークコイル
380…空隙
400…雷サージ発生器
401、402…加入者保安器
409、410…接地抵抗
1011、1012…側面
3061〜3091…分割コイル
4001…高電圧ポート
G…アース
T1〜T4…雷サージ印加点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタル加入者回線を用いたxDSLの通信線に被試験装置および対向装置を接続した雷サージ試験回路の当該被試験装置および対向装置の間に設置される結合・減結合装置であって、
雷サージ電圧を発生させる雷サージ発生器と当該雷サージ電圧の前記通信線への印加点との間に設けられ、当該雷サージ電圧を当該印加点へ印加する結合回路部と、
前記印加点より前記対向装置側に設けられ、印加された前記雷サージ電圧が前記対向装置に印加されるのを防止する減結合回路部と、
前記印加点より前記被試験装置側に設けられ、印加された前記雷サージ電圧を減衰させることが可能な一次防護素子部と、
前記一次防護素子部と前記被試験装置との間に設けられ、前記被試験装置に4本の通信線が接続される場合の当該通信線に1対1で接続される通信線接続端子を備え、前記被試験装置に2本の通信線が接続される場合の当該通信線が、当該通信線接続端子の中の隣接した2つの通信線接続端子に1対1で接続されるようにした入力部と、
前記減結合回路部と前記対向装置との間に設置され、前記対向装置に4本の通信線が接続される場合の当該通信線に1対1で接続される通信線接続端子を備え、前記対向装置に2本の通信線が接続される場合の当該通信線が、当該通信線接続端子の中の隣接した2つの通信線接続端子に1対1で接続されるようにした出力部と
を備えることを特徴とする結合・減結合装置。
【請求項2】
前記結合回路部は、
前記被試験装置の通信線とアースとの間に前記雷サージ電圧を印加する縦印加用結合回路部と、
前記被試験装置の通信線間に前記雷サージ電圧を印加する横印加用結合回路部と、
前記縦印加用結合回路部と前記横印加用結合回路部の一方を選択する機能とを備え、
初期設定においては、前記縦印加用結合回路部が選択されている
ことを特徴とする請求項1に記載の結合・減結合装置。
【請求項3】
前記結合回路部は、
前記雷サージ発生器で発生した正極性又は負極性の雷サージ電圧が印加される雷サージ入力端子と、
前記雷サージ電圧の基準になる0V端子と、
前記雷サージ電圧をxDSLの通信信号に悪影響を与えないで通過させる自動復帰スイッチ機能素子である3極ガス避雷管を備え、
前記3極ガス避雷管の接地電極以外の2つの電極はそれぞれ前記印加点に接続されており、
前記接地電極に前記雷サージ電圧を加えるように構成した、
ことを特徴とする請求項1または2記載の結合・減結合装置。
【請求項4】
前記結合回路部は、
xDSL用の結合回路部と、
アナログ用の結合回路部と、
前記xDSL用の結合回路部とアナログ用の結合回路部の一方を選択する機能とを備え、
初期設定においては、前記xDSL用の結合回路部が選択されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の結合・減結合装置。
【請求項5】
前記減結合回路部は、
xDSLの通信信号を通過させる空心の円筒コイルを複数個直列に接続して構成されたコモンモードチョークコイルを備える
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の結合・減結合装置。
【請求項6】
前記コモンモードチョークコイルは、
絶縁材を被覆した電線を円筒のボビンに2並列巻き、又は4並列巻きしてなる複数個の前記円筒コイルの内側に、前記ボビンの内径にガタなく挿入することのできる外径を有する絶縁体樹脂からなる円筒の筐体を挿入し、前記円筒コイルと前記円筒の筐体との間で同軸構造を構成することによって、前記複数の円筒コイルを軸方向に配置した状態で各々の円筒コイル間で発生させた磁束の中心軸を一致させることのできる構造を有することを特徴とする請求項5記載の結合・減結合装置。
【請求項7】
前記一次防護素子部は、
前記印加点と前記入力部との間に加入者保安器を備え、
前記一次防護素子部を無効とした雷サージ試験を実施する際には、前記加入者保安器の無い経路を選択する機能を備え、
初期設定においては、前記加入者保安器の有る経路が選択されている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の結合・減結合装置。
【請求項8】
前記一次防護素子部は、
前記加入者保安器の有る経路を選択した場合は、当該加入者保安器の接地端子にアース抵抗を模した接地抵抗の一端が接続され、前記入力部のアース接続端子に接続されている前記一次防護素子部のアースポートに当該接地抵抗の他の一端が接続され、
前記加入者保安器の無い経路を選択した場合は、前記接地抵抗が接続されずに、当該加入者保安器がアースに対して絶縁されている状態を構築する機能を備える
ことを特徴とする請求項7記載の結合・減結合装置。
【請求項9】
前記入力部は、
前記被試験装置の通信線を接続する4個の通信線接続端子と、
前記被試験装置のアースポートを接続するアース接続端子と、
前記結合・減結合装置を零電位に保持するアース端子とを備え、
前記アース端子と、前記アース接続端子と、前記一次防護素子部のアースポートと、前記結合回路部の0V端子とが接続されており、
前記被試験装置が2本の通信線を接続して前記対向装置との間で通信をするのに対応する場合は、前記4個の通信線接続端子の中の2個の通信線接続端子のみを使用できるように構成された
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の結合・減結合装置。
【請求項10】
前記出力部は、
前記対向装置の通信線を接続する4個の通信線接続端子を備え、
前記対向装置が2本の通信線を接続して前記被試験装置との間で通信をするのに対応する場合は、前記4個の通信線接続端子の中の2個の通信線接続端子のみを使用できるように構成された
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の結合・減結合装置。
【請求項11】
前記入力部、前記結合回路部、前記一次防護素子部は、
前記結合・減結合装置の筐体における4つの側面のうちの1つの側面に設けられ、
前記出力部は、
前記1つの側面に対向する側面に設けられた
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の結合・減結合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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