説明

結合剤および非伝導性粒子を含む絶縁保護コーティング

絶縁保護コーティングは、結合層および伝導性結晶構造の成長に対する遮蔽を提供する粒子を含んでいる。上記粒子は、伝導性表面において伝導性結晶構造の成長を十分に阻害する蛇行経路を提供する素材から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広く、基材の絶縁保護コーティングに関し、特に、電子アセンブリの、実質的に無鉛を基礎とした伝導性層から生ずる、金属結晶構造の成長の効果を十分に阻害する、改良された絶縁保護コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁保護コーティングは、通常は、電子アセンブリまたは電子回路等の基材に塗布されるコーティング素材であり、湿気、塵埃、化学薬品および温度等の周囲の汚染物質に対する保護を提供する。さらに、適切に選択された絶縁保護コーティングは、電子アセンブリの機械的ストレスの影響を低減し、それゆえ電子アセンブリに接続されるコンポーネントの剥離または分離を十分に低減すると、広く理解されている。的確なコーティング素材の選択は、通常は、以下の基準に基づいている。経験的に知られている基材またはアセンブリの曝露または汚染物のタイプ;基材またはアセンブリの作業上の温度幅;コーティング素材の物理的、電気的および化学的特性;並びに、基材およびそれが取り付けられている任意のコンポーネント上のコーティングの電気的、化学的および機械的適合性(すなわち、コーティングは、コンポーネントの熱膨張率を合わせる必要があるか?)。従来の絶縁保護コーティングは、通常の汚染物質からの適正な保護を提供するが、このコーティングは、金属結晶構造(例えば、スズウィスカー)の成長に関する不良に対しては、ほとんど保護を提供できない可能性があることを、当業者なら通常、理解している。
【0003】
1950年代から、電子工業における金属結晶構造の成長の減少が一般に知られている。このような構造は、少なくとも一つの伝導体から他の伝導体に向かう表面から成長し、密集した伝導体または異なる電位で作動する回路素子をブリッジする短絡を生成することによって、電子システム不良を引き起こす可能性がある。これら伝導性構造は、一般に、デンドライト状または“ウィスカー”様の構造として分類される。例えば、スズウィスカーは、電子アセンブリの電気めっきされたスズ仕上げから生じることが知られている。スズウィスカーは、通常は、金属が伝導体の表面からわずかな長く細い金属ウィスカーを成長することによって、結晶冶金現象として特徴づけられる。これら“ウィスカー様”構造は、数ミリメーターの長さで、伝導性表面から外側に成長することが観察されている。この現象は、元素金属および合金の両方で起こることが記録されている。伝導性ウィスカーのように成長する可能性のある他の金属は、亜鉛、カドミウム、インジウム、金、銀およびアンチモンが含まれる可能性がある。しかしながら、確かな鉛を基礎とした合金がこの現象を提示できないことが、一般に知られている。
【0004】
現在、金属ウィスカーの形成を引き起こす特別な何かとして、最も確実な説明は存在しない。一部に、金属ウィスカーは、例えば電気めっき等の付着処理の間に物理的ストレス、および/または、作動中の環境における熱ストレスが与えられることに反応して成長する可能性がある、という説が提案されている。さらに、ウィスカーの構造の状態および特定の特性に関する最近の研究の中に不一致がある。そのような状態の一つには、構造に必要とされるインキュベーション期間;金属ウィスカーの固有の成長率;金属ウィスカーの最大長;ウィスカーの最大径;および、温度、圧力、湿気、電界の存在における温度周期を含む、成長を助長する周囲の要因がある。代わりに、金属デンドライトはよく知られている。
【0005】
金属デンドライトは、シダ様形状で、通常、金属の表面の全体に成長する、非対称の分岐構造である。デンドライトの成長は、湿潤状態で通常起こることが、よく特徴づけられ、この湿潤状態は、金属イオンの溶液への金属の溶解を可能とするものであり、金属イオンの溶液は、電磁場の存在を介するエレクトロマイグレーションにより再分配されるものである。伝導性構造−デンドライトまたはウィスカー−のタイプにかかわらず、これらの構造は、センサー、回路基板または同様のもの等、多くの電子装置において不良を引き起こす短絡を生成するかもしれない。多くの試みは、このような現象を軽減したり十分に防いだりしており、特に、金属ウィスカーの成長を軽減したり十分に防いだりしている。スズウィスカーの構造を回避するための従来の方法は、鉛等の別の金属でスズめっきを合金化するか、または従来の絶縁保護コート等のバリア層を提供することを含んでいる。
【0006】
最初の方法に関して、鉛で合金化する能力は、エレクトロニクス産業から鉛を基礎とする化合物を取り除くためのイニシアチブにより、制限されるか、または、阻止されている。例えば、欧州共同体(EU)は、エレクトロニクス産業において、鉛等の有害な物質の使用を減らすプログラムを開始している。EUによって制定された法律は、確実な有害物質に関する制限(RoHS)および電気および電子機器の廃棄(WEEE)指令として知られている。この指令は、2006年6月に、電子機器の供給者に対して有効となり、当該供給者は、それらの製品から鉛の使用をほとんど廃止することが求められている。このように、鉛を伴う一般的な電気めっきおよびハンダ組成物の合金化は、もはや実行可能な解決策ではない。
【0007】
また、これまで、絶縁保護コーティング方法は不十分であることが明らかとなった。ウッドロー(T.ウッドローおよびE.レッドベリー、スズウィスカー軽減方法としての絶縁保護コーティングの評価、IPC/JEDEC 鉛フリー電子部品およびアセンブリに関する国際会議、サンホセ、CA、2005年4月18〜20日)は、スズウィスカーの成長を軽減するか、または実質的に防ぐために、6つの異なったタイプの典型的な絶縁保護コーティングについて議論している。ウッドローの教示は、従来の絶縁保護コーティングは、一時的に、伝導性ウィスカーの構造を抑制するかもしれないが、時間が経過するに伴い、上記構造は成長を続け、最終的には、上記コーティングを貫通するということを意味している。さらに、ウッドローは、『上記コーティングの機械的特性とウィスカー[の構造]を抑制するその能力との間には、どのような明らか関係も注目されなかった』とはっきり述べている。ウッドローの結果は、典型的な絶縁保護コーティングは、電子アセンブリにおいてウィスカーの成長という問題点に、適切に取り組むものではないということを、明白に示している。
【0008】
以前に説明したように、実質的に無鉛を基礎とした伝導性めっき、および/または、基礎となる材料は、電子システムにおける不良を引き起こす可能性のある、伝導性のデンドライト状および/またはウィスカー様構造の成長に、非常に影響を受けやすい。たとえば、人工衛星の不良、(B.フェルプス、‘ウィスカー’が人工衛星の不良を引き起こした:星間現象のせいにされたギャラクシーIVの機能停止、ワイヤレスウィーク、1999−05−17.)、航空機の不良(食品医薬品局、ITG#42:スズウィスカー問題、要因および回答、http://www.fda.gov/ora/inspect_ref/itg/itg42.html、1986年3月16日)、および、埋込型医療装置の不良(B.ノードウォール、スズウィスカー成長についての空軍接続レーダー問題、アビエーションウィークアンドスペーステクノロジー,1986年6月20日、65〜70ページ)を引き起こした、これら伝導性構造のタイプが報告されている。現在の絶縁保護コーティングは、伝導性結晶構造の成長を実質的に緩和するかもしれない複合物、および/または、積層絶縁保護コーティングシステムを生成する。従来の絶縁保護コーティングは、通常、単相コーティングであり、この単相コーティングは、プリント回路基板および関連コンポーネントなどの基材に、曝露から周囲の状況までを実質的に与えない、ということを、当業者なら通常、理解している。
【0009】
このような従来の絶縁保護コーティングの選択は、一般に、コーティングの硬さと、塩水、体液および工業薬品などの特定の化合物へのその関連する抵抗性との間の妥協に基づいている。コーティングの硬さは、当該コーティングがその周囲環境における露出からの保護を提供するために選択されるが、それにもかかわらず、取り付けられているコンポーネントが熱サイクルの間における熱膨張の差の結果として分離するかもしれないものの、当該コンポーネントがどのようなものであっても、当該コーティングは機械的ストレスの強要を回避するために十分な適合性を維持しなければならない、ということが、当業者は、さらに十分理解する。すなわち妥協は、従来の絶縁保護コーティングの剛性から見て、当該コーティングのバリア性に関して存在しなければならない。
【0010】
さらに具体的にいうと、絶縁保護コーティングは、基材上で接着ボンドを形成する。たとえば、電子アセンブリにおいて、絶縁保護コーティングは、コンポーネントおよびプリント回路基板を十分に覆っている。絶縁保護コーティングの剛性が原因で、コンポーネントおよびプリント回路基板の熱膨張における差が、コンポーネントおよびプリント配線板の間の接合部分における機械的ストレスとして翻訳される。これらのストレスは、上記基板からコンポーネントを分離したり取り除いたりするために十分となっている可能性がある。前述したように、従来の絶縁保護コーティングが相対的に剛体であるにもかかわらず、複数の研究は、伝導性結晶構造またはウィスカーの成長を軽減するために十分に剛体でないことを示している。
【0011】
それゆえ、電子アセンブリ、工業コンポーネント、医療装置、および他の基板および/または装置等、基材上で成長する伝導性結晶の影響を軽減できるかもしれない、改良された絶縁保護コーティングシステムおよび/または方法を提供することが望ましい可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の発明においては、絶縁保護コーティングは、結合層および/またはマトリクス、並びに、粒子を含んでおり、当該粒子は、伝導性結晶構造の成長を阻害する、電気的に非伝導性の物質を含んでいる。
【0013】
他の発明においては、伝導性の結晶構造遮蔽を伴う基材をコートする方法は、多相コーティングおよび基材へのコーティングの塗布において、結合層および粒子を提供することを含んでいる。上記粒子は、ある意味で、基材内で伝導性結晶構造の成長を阻害する電気的非伝導性物質として、配されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
新規であると確信している本発明の特徴は、付加されたクレームにおける特徴で詳細に説明される。本発明は、参照数字に適するようにそれぞれの図面における要素も同様に特定されている添付図面とともに、以下の説明の参照によって最適に理解することができる。
【図1】図1は、導電体におけるスズウィスカーの成長を示す顕微鏡写真である。
【図2A】図2Aは、結合層に埋め込まれた、ガラスマイクロ微粒子を含む絶縁保護コートの一例を示す顕微鏡写真である。
【図2B】図2Bは、結合層に埋め込まれた微粒子を含む絶縁保護コートの一例を示す図示説明図である。
【図3】図3は、絶縁保護コーティングの一例でコートされた電子アセンブリを示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
説明され開示されている本発明は、特定の実施形態に関連するものであるが、本説明は、ここに示されるとともに説明されている特定の実施形態に本発明を限定することを意味するものではなく、むしろ本発明が、ここに開示されるとともにクレームされた発明のどのような均等なものも同様に含んでいる本クレームによって、明確にされた発明の精神および範囲の中にある、全ての代替の実施形態およびと変更を含んでいることを意味する。ここに提示する発明において開示される例に従う絶縁保護コートは、例えば、湿気、菌類、塵埃、腐食、摩耗、および他の環境ストレスから、装置コンポーネントを保護することができる。ここに提示するコーティングは、例えば、間隙、孔、ポイント、鋭角の縁、およびポイントまたは平坦表面等の多くの形状に適合する。一般に、絶縁保護コーティングは、金属および/または伝導性結晶構造の成長から、基材および/またはどのような取り付けコンポーネントにも遮蔽を与える、ここに提示する発明の教示に従って構成されることが開示されている。ここに提示する発明の見地に従って、本開示の絶縁保護コーティングは、結晶構造の成長を阻害する、あるいは、結晶構造の成長を他にブロックしたり逸らしたりする蛇行経路を形成するために十分な硬さおよび/または密度で、非伝導性粒子を有する結合層を含んでいる。すなわち、上記マトリクスを含んだ上記硬質粒子は、金属結晶構造へのインデント抵抗を提供するので、それらを鈍らせ、および/または、蛇行経路によって与えられる側面荷重(side load)が原因でそれらを曲げることを引き起こす。もし、金属結晶構造が形成され、ここに提示する絶縁保護コーティングを最初に貫けば、短絡を引き起こすことがあり得るところの他の伝導体に達するために、細長い構造の形状で成長を続けることになる。ここに提示する絶縁保護コーティングのために、隣接する伝導体は、細長い円柱形状はオイラーの法則によれば曲がる傾向があるように、その成長または形成は上記硬質粒子を貫くことができないので、その円柱構造から保護される。
【0016】
本開示の例に従って、本絶縁保護コーティングは、バリア剛性課題を最小化するか除去することができるとともに、結合層および粒子を含む、多相絶縁保護コーティングを提供することによって、伝導性結晶構造成長の問題を解決することができる。前述したように、結合層の選択−従来の絶縁保護コーティングから−は、基材および/または基材コンポーネントの間の相互接続に損傷を与えないで、周囲の汚染物質からのより好ましい保護を提供する。さらに、上記粒子は、ウィスカーまたはデンドライト等の伝導性構造の成長を、遮る、逸らす、および/または、防ぐために十分な硬さおよび/または密度を提供する。
【0017】
図1に示すように、金属ウィスカー100は、伝導体110の表面から直接に成長している。図1の例では、導電体は、ネジ伝導体であり、拡大して図示されている。金属ウィスカー100によって例示された伝導性成長のこのタイプは、ウィスカー100が他の伝導性表面と電気接触を形成するまで、導電体の外側に離れて形成が継続する可能性がある。金属ウィスカー100は、単なる典型的な伝導性結晶構造101である。当業者は、伝導性結晶構造101がまたデンドライトの形態をとることを理解するだろう。
【0018】
図2A、図2Bおよび図3に示される典型的な絶縁保護コーティング140においては、結合層130内に埋め込まれた粒子120を含んでいる。以下でさらに詳細に説明されるように、結合層130絶縁保護コーティング内の粒子120は、伝導性結晶構造101の成長を、阻害し、ブロックし、他へ遮る。このブロッキング、阻害、または遮断は、少なくとも1または2の典型的な方法により起こすことができる。
【0019】
開示される例では、図2Bを参照すれば、粒子120は、結合層130に分散されていることから、伝導性結晶構造101は、蛇行経路をたどるように強制される。6個の典型的な蛇行経路が、図2Bに概略的に図示され、経路P1 、P2 、P3 、P4 、P5 およびP6 として示されている。これら経路の配置および方向は、とりわけ典型的である。それぞれの事例では、伝導性結晶構造101は、絶縁保護コーティング140が塗布された基材102から離れて伝搬することができる。伝導性結晶構造101は、経路P16 の一つをたどる傾向にあり、粒子120に遭遇し、そして、成長を継続するために曲がらなければならなくなる。また、上記経路の一つをたどる伝導性結晶構造101は、上記粒子120は伝導性結晶構造101のどのようなさらなる成長を遮断するために十分な硬さを有しているので、上記粒子に遭遇しなければならず、上記粒子120によってさらなる成長から簡単にブロックされる(それは、重ねて図1に示す金属ウィスカー100あるいはデンドライト等の他の伝導性結晶構造であってもよい)。
【0020】
図2Aは、ここに提示される絶縁保護コーティング140を50μm規模で示す顕微鏡写真である。図2Aの例では、上記粒子120は、結合層130内に配置されているセラミックマイクロ微粒子の形態である。(結合層130は、顕微鏡写真では、例によって可視状態になく、それで、結合層130は図2Aにおいて概略的に示されている)。
【0021】
図2Bは、結合層130と関連づけながら上記粒子120を同様に示している図形的描写である。上記粒子120は、結合層130の中に埋め込まれ、保持されていることが示される。従来の単相絶縁保護コーティングとは異なり、結合層130内の上記粒子120は、金属ウィスカーの成長を防ぐとともに、それに関連するどのような不具合も十分に防いだり除去したりするために十分な抵抗性を示すことができる。結合層130は、機械的保定または接着ボンドで上記粒子120を保持できることを、当業者によって十分に理解されるであろう。さらに、上記粒子120は、結合層130内の上記粒子の保定を高めるために、酸エッチング等の処理を施せることを意図してよい。図2Aの上記基材102は、同様に、例えば、酸エッチングにより、接着を強めるよう施してもよい。他の処理方法もまた適当であることが判明するかもしれない。
【0022】
結合層130は、例えば、ポリウレタン、パラレン(paralene)、アクリル、シリコーンおよびエポキシから選択される従来の絶縁保護コーティングから構成される層にすればよい。結合層130は、容易に形成され、粒子のみの分散、あるいは、アセトン、水、エーテル、アルコール、芳香族化合物、およびそれらの組合せ等と併用して塗布されることが、また当業者によって十分に理解されるであろう。基材へ絶縁保護コーティングを塗布する方法はいくつか存在する。上記方法の一つは、通常、手動で行われるが、いくつかは自動で行われる。
【0023】
図3を参照すれば、ここで提示する絶縁保護コーティング140を基材102へ付着させるおよび/または塗布する一つの方法例は、スプレーコーティングまたはペインティングによるものである。例えば、手持ちスプレイヤーガンが当業者に知られているとともに、スプレー式塗料に用いられるものと同様のものが、電子アセンブリボード150に絶縁保護コーティング140を塗布するために用いることができる。示されるように、電子コンポーネント160およびプリント配線基板170は、絶縁保護コーティング140によって十分に覆われることができる。新たにコートされた電子アセンブリボード150は、使用の前に硬化しておく。一例のコーティングは、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーからのセラミックジーオスフェア(Zeeospheres)(R)G−200,G−400またはG−600等の粒子を含む、ウィスコンシン州ジャーマンタウンのレジンラブ(Resinlab)(TM)から入手できる結合層から構成されることができる。形式化の一例としては、容量で25mLのA部化合物、12.5mLのB部化合物、および25mLのセラミック粒子を用いた、レジンラブ(Resinlab)(TM)W112800エポキシからなる二部結合層は、キシレン等の溶剤94mLで混合した。もちろん、商業的に入手可能な結合層に適合するどのような溶剤も使用できるということを、当業者は理解する。上記溶剤は、スプレー付着を円滑とするために上記混合物に加えられる。例えば、形式化の本例では、追加溶剤は、#4フォードカップで26秒または約92センチポーズ(cps)の粘度を有する最終混合物を提供する。上記コーティングの付着に用いたスプレーガンは、イリノイ州フランクリンのバジャーエアブラシカンパニー(Badger Air-Brush Company)のスプレーチップ#50−0163を取り付けたモデル200NHであった。
【0024】
本実施例の絶縁保護コーティング140では、上記溶剤は、容量で約40%の粒子の最終コーティング混合物をもたらし、塗布の後に蒸発することになる。硬化後の絶縁保護コーティングが、金属結晶構造の成長を遮るために十分な蛇行経路および/または硬さを実現するのであれば、代わりの粒子の濃度および/または構成および/またはサイズの異なる材料の粒子を含ませることができる、他の代わりの形式化を、当業者は十分に理解することができる。さらに、代わりの結合層が、本技術で知られているさまざまな他のコーティングを含むことができることを、当業者は十分に理解することができる。上記絶縁保護コーティングの材料は、ブラッシング、ディッピング、またはニードル塗布による等の追加的なさまざまな方法によって、塗布することができることが、一般的に理解される。塗布方法の選択は、絶縁保護的にコートされるための基材の複雑さ、要求されるコーティングの性能、およびコーティング処理の処理能力の要求に依存する。上記コーティング材料は、乾燥状態で、直接の湿気の凝縮が起こらない状態のために、硬化の後、望ましくは50〜100マイクロメーターの範囲内の厚みを有するが、代わりの厚みは、本発明の精神と範囲から逸脱しないように検討されることができる。
【0025】
他の塗布方法の例は、上記基材上で上記コーティングをブラッシングすることを含むことができる。これは、作業者が、上記コーティング材料の入った容器にブラシを浸漬し、上記基材の上へ上記材料をブラシするという、手動の処理としてよい。この手動の処理の有利な点は、設備投資が不要、工具またはマスキングが要求されない、および、この処理が相対的に単純である、ということを含む。また、従来のマスキング技術は、基材へ結合層を塗布するために検討されてもよい。
【0026】
他のコーティング方法の例は、ディップコーティング処理である。このディップコーティング処理は、手動でまたは自動で行われることができる。手動モードでは、作業者が、コーティング材料が入ったタンクに電子アセンブリ等の基材を沈める。もちろん、この方法は、当業者によって理解されるように、また自動化されてもよい。本システムの有利な点は、低い設備投資、簡単、および高い処理能力である。
【0027】
また、ニードル分注は、本実施例の絶縁保護コーティングを付着させるために用いることができ、人手によっても自動処理によってもどちらでも行うことができる。手動の作業では、上記材料は、ニードルを介して推し進められ、滴として分注される。上記滴は、上記ボード上に戦略的に置かれ、上記材料は、割り当てられた領域を流れてコートすることを可能とする。さらに、代表的なロボット処理は、回路基板上を動くことができるとともに、コーティング材料を分注することができるニードル塗布器を用いることを採用することができる。その流速および材料粘度は、望ましいコーティング厚みが維持されるように、上記分注器を制御するコンピュータシステムにプログラムされることができる。
【0028】
それでも、パラレンと呼ばれる結合層のもう一つのタイプは、本実施例の絶縁保護コーティングを形成するための粒子を伴って塗布される。パラレンは、一般に、本技術において知られている真空付着処理で塗布される。0.1〜76.0マイクロメーターのフィルムコーティングは、単一の作業で簡単に塗布されることができる。パラレンコーティングの有利な点は、これらがスプレーおよびニードル塗布が可能でない隠れた表面や他の領域を覆うことにある。コーティング厚みは、凹凸のある表面でさえ、非常に一定である。
【0029】
したがって、ここに提示する、調和のとれている結合層および粒子を含む絶縁保護コーティングは、容易に合成されることができることは、当業者によって十分理解されるだろう。せいぜい、いくつかの通常のパラメーターの変化テストが、望ましい用途についての量を最適化するために要求されるかもしれない程度である。上記粒子は、高分子材料の全体に実質的に均質に分散されるかもしれないし、あるいはまた、上記材料の中間から外面まで、または、ある表面から他の表面等の量(例えば濃度)が増加したり減少したりする、勾配の種類を存在させるかもしれない。また、上記粒子は、外部膜または内部層、このように形成された積層間構造として、分散されることができる。このような実施形態では、ここに提示する粒子は、結合層とともに上塗りされてもよい。この方法では、本発明は、他のコーティングまたは結合層で上塗りされた粒子のフィルムから構成される、新規な薄層または多層構造を検討する。さらに、上記粒子が、結合層を伴う基材の特定の点または部分に置かれることもあり得ることを、当業者は十分理解する。もちろん、これら薄層のいずれも、前述の手順を基礎として容易に形成されることができる。
【0030】
限定よりむしろ実施例として、ここに提示する絶縁保護コーティングは、以下の基材の一つ以上に塗布されたときに、有利であると判明するであろう;キーパッド、集積回路、プリント配線基板、プリント回路基板、ハイブリッド、トランスデューサー、センサー、加速度計、コイル、光ファイバーコンポーネント、熱交換器、医療インプラント、流量計、磁石、光電セル、電気外科的器具、およびカプセル型超小型回路。
【0031】
ここに提示する発明は、特定の典型的な実施形態を参照して説明したが、この実施形態が、単に実例であって、また、本発明を制限するものでないことを意図し、変更、追加および/または削除は、本発明の精神および範囲から逸脱しない開示された実施形態とすることができるということを、当業者は、十分に理解するだろう。それゆえ、前述の説明は、理解の明確さのためにのみ与えられ、そして、本発明の範囲内での変更は当業者にとって明確とできるのだから、そこからどのような不要な制限も理解されるべきではない。たとえば、前記蛇行経路を形成する結晶の編成の存在において十分な硬さが実現されるどのような粒子であっても、成長または移動を防ぐことができる。望ましくは5モース(Mohs)の公知の無機化合物、または、それより硬いもの、または、摂氏400度よりも望ましくは大きな温度でのガラス転移を有するいずれの公知の材料であっても、十分な硬さを提供できることを、当業者は十分理解すべきである。特定の装置、方法、および製品の品目がここに説明されているが、この特許の対象の範囲はそれらに限定されない。反対に、この発明は、付加されたクレームの範囲内で、文字通りか均等論の原則の下で、公正に収まる装置、方法、および製品の品目の全てを含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁保護コーティングであって、
結合層と粒子とを含み、
当該粒子は、前記絶縁保護コーティング内で伝導性結晶構造の成長を阻害する電気的非伝導性材料を含んでいる、絶縁保護コーティング。
【請求項2】
前記粒子は、前記伝導性結晶構造の成長を阻害する蛇行経路を提供するものである、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項3】
前記粒子は、前記結合層内に配されている、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項4】
前記絶縁保護コーティングおよび粒子は薄層を形成している、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項5】
前記粒子は、モース硬度計で少なくとも5の硬さを有する材料を含んでいる、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項6】
前記粒子は、二酸化ケイ素およびセラミックからなるグループから選択される材料を含んでいる、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項7】
前記電気的非伝導性粒子は、望ましくは少なくとも摂氏400度の温度でガラス転移した材料を含んでいる、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項8】
前記結合層は、エポキシ、ポリウレタン、パラレン、アクリルおよびそれらの混合物からなるグループから選択される材料を含んでいる、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項9】
前記結合層は、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、スチレン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シリコーンおよびそれらの混合物からなるグループから選択される高分子材料を含んでいる、請求項8に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項10】
前記粒子は、少なくとも、球状、円錐状、円筒状、部分的球状、部分的円錐状、部分的円筒状、および/または、それらの混合の形状を有している、請求項1に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項11】
前記粒子は、前記結合層の全体に実質的に均質に分散されている、請求項2に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項12】
前記結合層は、さらに、分散剤、結合剤、架橋剤、安定化剤、着色剤、UV吸収剤およびこれらの組合せからなるグループから選択される添加剤を含んでいる、請求項8に記載の絶縁保護コーティング。
【請求項13】
基材に隣接した伝導性結晶構造の形成を遮蔽する方法であって、
少なくとも結合層および粒子を有し、前記粒子は、前記コーティング内に伝導性結晶構造の成長を阻害する電気的非伝導性材料を含む、絶縁保護コーティングを準備するステップと、
前記基材上に前記絶縁保護コーティングを塗布するステップと、を含む、方法。
【請求項14】
前記基材への前記絶縁保護コーティングの塗布は、ディップ−コーティング、スプレーコーティング、ブラシコーティング、ニードル分注、真空蒸着、および/またはそれらの混合からなるグループから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基材は、キーパッド、集積回路、プリント配線基板、プリント回路基板、ハイブリッド、トランスデューサー、センサー、加速度計、コイル、光ファイバーコンポーネント、熱交換器、医療インプラント、流量計、磁石、光電セル、電気外科的器具、およびカプセル型超小型回路からなるグループから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記絶縁保護コーティングは、前記伝導性結晶構造の成長を十分に阻害する蛇行経路を提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記結合層は、エポキシ、ポリウレタン、パラレン、アクリルおよびそれらの混合物からなるグループから選択された材料を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記電気的非伝導性粒子は、モース硬度計で少なくとも5モースの硬さを有する材料を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記電気的非伝導性粒子は、二酸化ケイ素およびセラミックからなるグループから選択される材料を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記電気的非伝導性粒子は、望ましくは少なくとも摂氏400度の温度でガラス転移した材料を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子は、前記結合層の全体に実質的に均質に分散されている、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記結合層は、さらに、分散剤、結合剤、架橋剤、安定化剤、着色剤、UV吸収剤およびこれらの組合せからなるグループから選択される添加剤を含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも部分的に絶縁保護コーティングで覆われた基材を備え、
前記絶縁保護コーティングは、結合層内で分散された粒子を含み、前記粒子は、電気的非伝導性材料を含み、粒子および前記結合層は、前記基材から伝搬する伝導性結晶構造の成長を限定するために準備されたものである、絶縁保護コーティングアセンブリ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−520953(P2010−520953A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553679(P2009−553679)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/055139
【国際公開番号】WO2008/112433
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(591055436)フィッシャー コントロールズ インターナショナル リミテッド ライアビリティー カンパニー (183)
【Fターム(参考)】