説明

結合及び非結合ラベルの測定による検体検出の増加した特異性

本発明は、改善された精度で検体(特にサンプル中の生体分子)を検出するための、検体のラベリングを含む分析技術(例えばSERRS)における内部対照標準の提供を説明する。本発明はたとえば、サンプル中の検体を検出及び/又は定量化する方法であって、a)前記検体に結合することができるラベルのあらかじめ決められた量に、前記検体を含む前記サンプルを接触させるステップ、b)前記検体に結合されたラベルの画分を検出するステップ、及びc)前記検体に結合されないラベルの画分を検出するステップを有し、前記検体に結合されたラベルの量は、前記サンプル中の前記検体の存在及び/又は量を示し、前記検体に結合されないラベルの量は、ラベルの前記あらかじめ決められた量から差し引かれて、前記サンプル中の前記検体の存在及び/又は量を示す内部対照標準を提供し、(b)及び(c)における検出ステップに光学的検出方法を用いる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体のラベリングを伴う分析技術による検体(特にサンプル中の生体分子)の検出のための方法に関し、測定の精度及び/又は信頼性が重要である。
【背景技術】
【0002】
低濃度の生体分子(例えばタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、脂質、多糖類、ホルモン、神経伝達物質、代謝物質など)を、定性的に又は定量的に、高感度で正確に検出することは、医療診断、病理学、毒性学、疫学、生物学的戦争、環境試料採集、法医学及び多数の他の分野における広範囲にわたる潜在的な用途を有する捉えどころのない目標であることが判明した。
【0003】
具体的な例は、例えば、医療診断(病原菌及びウィルスのような感染因子の検出、遺伝的及び後天的遺伝子病などの診断)、犯罪捜査の一部としての法医学試験、父性紛争、全ゲノム配列決定などにおける、DNAの検出である。
【0004】
精製されたサンプルの識別及び/又は定量化は時には検体自体の物理化学的特性に基づいて実行されることができるが、多くの検出分析は、検体に対する強い親和性及び好ましくは高度な特異性も持つ既知の分子である「プローブ」を利用する。検体がタンパク質又はペプチドである場合、これらの分析はリガンド結合分析と呼ばれる。最も一般的なリガンド結合分析の一つはイムノアッセイである。イムノアッセイは、抗体-抗原複合体を形成するように特異的に検体内の抗原と結合する抗体を一般的に使用する。リガンド結合分析は特に医療診断にとって重要である。現代の医療実務において、リガンド結合分析は、抗体、抗原、ホルモン、薬剤、毒物、毒素、違法な薬剤などの存在又はレベルを決定するために、患者の血、尿、唾液などについてごく普通に実行される。リガンド結合分析は、また、地下水汚染、食品中の毒素及び殺虫剤、工業用の生物学的処理をモニタリングするために、及び生物調査の多くの領域において用いられている。
【0005】
DNAの検出は一般的に、ターゲットDNAに対して特異的なヌクレオチド配列である「プローブ」のハイブリッド形成を利用する。そのような分析は、活性感染因子の特異的な検出、法医学分析におけるDNAの識別、及び遺伝子欠損の識別において、一般に用いられる。
【0006】
これらの検出分析における共通の特徴は、多くの場合、トレース可能な物質による検体特異プローブのラベリングである。検体に結合されるトレース可能な物質(今後ラベルと呼ばれる)の検出は、サンプル中の検体の量を示す。ラベルの検出は、使用されるラベルの性質によって、様々な異なる技術の一つを用いて確認することができる。現在の検出方法は、一般的に、検体又はターゲット生体分子と結合することができる蛍光ラベル付き抗体又はオリゴヌクレオチドプローブの検出を伴う。交差反応性及び非特異的結合は、複合サンプル中の生体分子の蛍光検出を難しくする可能性がある。高いプローブ特異性が得られる場合でも、蛍光検出の感度は、低濃度の生体分子を識別するにはしばしば不十分である。検出されるべき生体分子が他の分子の複合混合物中に低濃度で存在し、干渉、蛍光消光及び大きなバックグラウンド蛍光が全てターゲット生体分子からの信号を不明確にし又は減少させるように作用する可能性がある場合、これは特にあてはまる。
【0007】
表面増強(共鳴)ラマン分光即ちSE(R)RSは、その印象的な感度を考慮して、検出のための蛍光に迅速に追い迫る技術である。ラマン分光は、ラマン散乱現象を利用する。光が光学的に透明なサンプルを通過する時、光の一部は全方向に散乱する。ほとんどの散乱する光子は、入射光と同じ波長である。これはレイリー散乱として知られる。しかしながら、わずかな割合の散乱光は、異なる波長及び位相におけるわずかなランダムな変化を持つ。ストークス(反ストークス)ラマン発光スペクトラムの波長は、励起波長に対してより長い(より短い)波長へシフトされる。ラマンスペクトラムは、サンプル中の光吸収分子の化学組成及び構造の特性であるが、ラマン散乱の強度は、これらの分子の濃度に依存する。本質的に弱いラマン散乱は、化合物が粗くされた金属表面(例えば金、銀、銅及び特定の他の金属のナノ粒子)上に又はその近くに吸着される場合、108倍又はそれ以上の係数で増強されることができる。この現象と関連する技術は、表面増強ラマン散乱(SERS)として知られる。検体が「活性」表面のより近くに存在するほど、検出感度の増加はより顕著になる。最適の位置は、表面の周囲の第1分子層内(すなわち表面の約30nm内)である。これは例えば、分子が銀表面近傍に存在することができるように核酸上の正味の電荷を中和するスペルミンによって達成されることができる。
【0008】
検体の共鳴周波数で実行することによって、又はより一般に行われているように、(適切に照射された場合にSE(R)RSスペクトラムを生成することが可能な)検体に取り付けられる「SERS活性」物質又は色素を利用することによって、感度を更に103〜105倍増加させることができる。これは「共鳴ラマン散乱」分光と呼ばれる。「表面増強共鳴ラマン散乱」即ちSERRSを示す表面増強効果と共鳴効果との組み合わせは、感度を強く増加させる。蛍光と比較して、SERRS信号は、コンタミネーション及びバックグラウンドからより容易に区別されることができる。
【0009】
SE(R)RSの重要な他の利点は、一つの励起波長を用いた多重化の可能性である。ラベルとして用いられる各々のSE(R)RS活性色素は、蛍光分光では必要であった分離を伴わずに色素混合物中で認識されることができる固有のフィンガープリントを示す。SE(R)RSのための約50個の特別に設計された色素があり、それぞれは固有のスペクトラムを示す。したがって、SE(R)RSは、低濃度の生体分子を検出するのに十分な感度を示す生体分子検出のための、非常に高感度かつ特異的な方法である。SE(R)RSを用いる生物分析技術は、アトモル(10-18 mol)量のタンパク質又はDNAからフェムトモル(400μl中の10-15mol)濃度までの検出を可能にすることが実証された。単分子検出限界が、ローダミン6G、アデニン、クリスタルバイオレット及び他のSERRS活性分子に対して報告された。物理学における材料分析から生物学における非常に幅広い種類のアプリケーションまで、ラマン分光は非常に広く適用される。
【0010】
たとえSE(R)RSのような非常に高感度な検出方法が利用できるとしても、正確な定量分析は難題のままである。各々の方法は一般的に試薬の生産及び特定の検出条件の用意を必要とし、それらのばらつきは、検出の精度に影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
また、SE(R)RSベースの検出方法に対して、様々な要因が検出の信頼性及び精度に影響を及ぼすことが報告された。SE(R)RS活性表面は、再現可能な態様でそれらを製造することを難しくする複雑な構造及びダイナミクスを持つ。さらに、SE(R)RS増強は、検体とSE(R)RS活性表面との間の距離に強く依存する。その上、SE(R)RS増強の変動は、(SE(R)RS活性ホットスポットの分布に関する)SE(R)RS活性表面上の検体の表面被覆率によって発生する。加えて、(通常のラマンと同様にSE(R)RS、又は蛍光を含む)光学的方法を用いた定量的な濃度測定は、励起、収集効率又はその両方の変化によって生じる強度変動に取り組まねばならない。
【0012】
従来技術において、そのような変動の修正は、多くの場合、光信号及び関係する検体の濃度(又は量)の間の相関を較正するための内部及び/又は外部標準を用いて取り組まれる。内部標準として自己組織化単一層(SAM)から生成されるSE(R)RS信号を用いることによりSE(R)RS(コロイド)定量化の精度を改善することが提案された。この方法によって、SAMの高い被覆率が、SE(R)RS活性表面上への検体の化学吸着を防ぎ、したがって再現性を改善することが推定される。しかしながら、このアプローチは、このSAM内部標準法を用いる場合に観察される比較的大きな予測誤差(0.1から5Mの間のサンプルに対して0.5Mの平方平均予測誤差)に結びつく複数の本質的な限界を持つことが見いだされた。
【0013】
検体及び内部標準分子が実質的に同一の化学特性を持つことを保証することによって、それらの相対的なSE(R)RS強度が、バッチ間のコロイド溶液変動及び光励起/収集パラメータに対してはるかに低感度になることが提案された。これは、改善された精度及び再現性によって幅広い濃度範囲にわたる定量的なSE(R)RS測定の精度の改善を可能にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、例えば定性的又は定量的な、検体のラベリングを伴う検出技術による検体検出の他の又は改善された方法を提供することである。この方法の利点は、改善された測定信頼性及び/又は精度である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様において、改善された検出信頼性及び精度を確保するために、内部基準が含まれる。より詳しくは、これは、サンプル中の検体の存在及び/又は量によって同様に決定される追加の測定を導入することによって達成され、したがって、検体の直接検出のための内部基準として役立つことができる。あらかじめ決められた量のラベルで行う場合、結合していないラベルの画分(fraction)の検出及び/又は定量化は、それに結合されるラベルの画分の測定に基づく検体の直接検出/定量化に関する内部基準を提供する。
【0016】
本発明は、したがって、サンプル中の検体の存在を検出し及びオプションとして定量化するための方法を提供し、当該方法は、a) 検体と結合することが可能なラベルのあらかじめ決められた量に潜在的に検体を含むサンプルを接触させるステップ、b) 検体に結合されたラベルの画分を検出するステップを有し、検体に結合されたラベルの量は、サンプル中の検体の存在(及びオプションとして量)を示し、本方法はさらに、(c)検体に結合されないラベルの画分を検出するステップをさらに有し、検体に結合されないラベルの量は、サンプル中の検体の存在(及びオプションとして量)を間接的に示す内部対照標準を提供し、(b)及び(c)における前記検出ステップは光学的検出方法を用いて保証される。
【0017】
一実施例によると、検体に結合されたラベルの画分の検出及び検体に結合されないラベルの画分の検出は、従来の分離なしで、すなわち同じサンプル内で実行される。これは例えば、結合された状態と結合していない状態で区別して検出されることができるラベルの使用によって達成されることができる。用いられるラベルは光学的ラベルである。特定の実施の形態によれば、蛍光性ラベル及び/又はSE(R)RS活性ラベルが利用され、その最大吸収周波数は、前記SE(R)RS活性表面との前記蛍光性ラベル及び/又はSE(R)RS活性ラベルの結び付きにより、第1周波数から第2周波数にシフトする。あるいは、検体に結合された時と検体に結合していない時とで異なるラベルの信号を保証するために、分子ビーコンとして提供されるラベルが利用される。
【0018】
別の実施例によれば、本発明の方法は、ステップ(b)の前に分離ステップを更に含み、検体に結合されたラベルの画分は、検体に結合されないラベルの画分から分離される。この分離ステップは、サンプルからの一方又は両方の画分の除去を含むことができ、又は1つのサンプル内での画分の物理的分離であることができる。
【0019】
一実施例によれば、これは、結合されたラベルの画分を基板上に捕獲して、サンプルから基板又は結合していないラベルの画分を物理的に除去することによって達成される。結合されたラベルの画分は、基板上に検体を捕獲する捕獲プローブを経由して基板上に捕獲されることができる。一実施例によれば、捕獲プローブは検体特異捕獲プローブである。あるいは、基板への検体の結合は、基板上のストレプトアビジンタグに接触する検体上のビオチンタグによって生じる。ビオチンタグは、PCR増幅によって検体に組み込まれることができる。
【0020】
本発明の更なる具体的な実施の形態は、ラベルの結合画分及び非結合画分の分離が、物理的又は化学的力に反応する基板又はタグへの結合画分の結合よって保証され、結合画分を移動させる(除去する)ために物理的又は化学的力(例えば重力、磁場)が適用される方法に関する。
【0021】
本発明の方法は、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、化学物質、抗体、微生物又は真核細胞のような(但しこれらに限られない)、実質的に任意の種類の検体の検出に適用可能である。本発明の方法の特定の実施の形態は、DNAのような核酸配列の検出及び/又は定量化に関する。
【0022】
具体的には、本発明の方法は、上記の検出ステップ(b)及び(c)が、光学的検出方法を用いて保証される方法である。最も具体的には、本発明の方法の検出ステップ(b)及び(c)は、SE(R)RSを用いて保証され、ラベルはSE(R)RS活性ラベルである。特定の実施の形態において、本方法は、ステップ(b)及び(c)の前に、検体に結合されたラベルの画分及び検体に結合されないラベルの画分をSE(R)RS活性表面に接触させることを伴うステップをさらに含む。結合ラベル及び非結合ラベルの検出が同じサンプル内で実行される場合、SE(R)RS活性表面をサンプルに加えることによって、結合ラベル及び非結合ラベルは同時にSE(R)RS活性表面に接触する。特定の実施の形態において、本発明の方法に用いられるSE(R)RS活性表面は、銀若しくは金ナノ粒子のコロイド懸濁、又はその凝集コロイドである。
【0023】
一般的に、検体が精製された形で存在しないサンプル(すなわち他の成分が存在するサンプル)で行う場合、本発明の方法に用いられるラベルは、検体特異ラベル(すなわち検体と特異的に結合することが可能なラベル)である。それでもやはり、検体が精製された形で存在し、本発明の方法が定量化目的で用いられる場合、ラベルは検体に結合すれば十分であることも認識される。
【0024】
本発明の方法に用いられるラベルが検体特異ラベルである場合、これは、ラベルに結合される検体特異プローブを用いることにより保証されることができる。一般的に、検体がヌクレオチド配列である場合、検体特異プローブは、相補的なオリゴヌクレオチド配列であることができる。
【0025】
本発明は、また、サンプル中の検体の存在を検出及び/又は定量化するためのシステムを提供し、当該システムは、
a) 前記検体と結合することが可能なラベルのあらかじめ決められた量に、前記検体を潜在的に含む前記サンプルを接触させるための手段、
b) 前記検体に結合されたラベルの画分を検出するための手段、並びに
c) 前記検体に結合されないラベルの画分を検出するための手段、
を有し、
前記検体に結合されたラベルの量は、前記サンプル中の検体の存在及びオプションとしてその量を示し、前記検体に結合されないラベルの量は、ラベルの前記あらかじめ決められた量から差し引かれ、前記サンプル中の検体の存在及びオプションとしてその量を示す内部対照標準を提供する。
【0026】
本システムは、例えば分子診断において検体の分析に用いられることができる。
【0027】
本発明の上記の及び他の特性、特徴及び利点は、本発明の原理を一例として説明する添付の図面と共に考慮することにより、以下の詳細な説明から明らかになる。この説明は、本発明の範囲を制限することなく、単に例として与えられる。以下で引用される参照図は添付の図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本明細書において用いられる用語「検体」は、本発明を用いて検出される検査サンプル中の物質を指す。本発明によって認識される検体の非制限的なリストが、詳細な説明において提供される。
【0029】
本明細書において用いられる用語「ラベル」は、検出可能な信号を生成することができる分子又は物質を指す。本発明の方法に用いられることが構想されるラベルの非制限的なリストが、詳細な説明において提供される。
【0030】
本明細書において用いられる用語「結合ラベルの画分」は、あらかじめ決められた量のラベルをサンプルに加えたときに検体と結合するラベルを指す。
【0031】
本明細書において用いられる用語「非結合ラベルの画分」は、あらかじめ決められた量のラベルをサンプルに加えたときに検体と結合しないラベルを指す。
【0032】
本発明の方法において、検出の際に任意のラベルが関連する画分で検出されるかどうかに無関係に、結合ラベル及び非結合ラベルの画分が参照されることが理解される。
【0033】
本明細書において用いられる「検体特異プローブ」は、検体と特異的に結合することが可能であり、ラベルを取り付けることができるプローブである。検体へのプローブの結合は、相補的ヌクレオチド配列、抗原/抗体相互作用、リガンド/受容体結合、酵素/基質相互作用などを含む(但しこれらに限られない)任意の種類の相互作用に基づくことができる。
【0034】
本明細書において用いられる「検体特異ラベル」は、その本来の特性によって又は検体特異プローブに連結されているラベルの結果として、検体と特異的に結合することが可能なラベルを指す。
【0035】
本明細書において用いられる「捕獲プローブ」は、分子又は分子の複合体を基板に結合することが可能な分子を指す。
【0036】
本明細書において用いられる「基板」は、分子又は分子の複合体が結合されることができ、操作されることができる材料を指す。基板の典型的な例は、マイクロタイタープレート、ビーズ、チップなどを含む(但しそれらに限られない)。
【0037】
本明細書において用いられる「SE(R)RS活性表面」は、検体がそれに吸着されるか又はその近傍に存在するときに、ラマン散乱の強力な増強に寄与する金属表面を指す。その表面は、例えばエッチングされた又は粗くされた金属表面、金属ゾル又は金属コロイド粒子の凝集であることができる。SE(R)RS活性表面のより詳細にわたるリストは、下記の説明において見いだされる。
【0038】
本発明は、特定の実施の形態に関して及び特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに制限されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲中のいかなる引用符号も範囲を制限するように解釈されてはならない。説明される図面は、単に概略であって非制限的である。図において、いくつかの要素のサイズは誇張される場合があり、説明の便宜上、縮尺通りに描かれていない場合がある。本願の明細書及び請求の範囲において「有する,含む」との用語が用いられる場合、それは他の要素又はステップを除外しない。単数形の名詞が用いられる場合、特に別途述べられない限り、その名詞が示すものが複数存在する場合を含む。
【0039】
第1の態様によれば、本発明は、検体のラベリングに基づくサンプル中の検体の検出及び/又は定量化のための分析技術を提供し、あらかじめ決められた量のラベルがサンプルに接触され、結合ラベルの検出及び/又は定量化に加えて、ラベルの非結合画分も定量化される。したがって、一実施例によれば、本発明の方法は、
- 検体と結合することが可能なラベルのあらかじめ決められた量に、検体を含む疑いがあるサンプルを接触させるステップ、
- 検体に結合されたラベルの画分(ラベルの結合画分)を検出及び/又は定量化するステップ、並びに
- 検体に結合されないラベルの画分(ラベルの非結合画分)を検出及び/又は定量化するステップを含む(図1)。
【0040】
本発明は、あらかじめ決められた量のラベル(全ラベル即ち100%)で行われる場合、ラベルの結合画分の検出は、検体の存在及び/又は濃度に関する直接的な情報(全ラベルのx又はa%)を提供し、同時に、ラベルの非結合画分の検出(全ラベルのy又はb%)は、間接的に同じ情報を提供するはずであり(全ラベル-y = x; 又は100%-b% = a%)、したがって内部基準又は対照標準として役立つことができるというコンセプトに基づく。
【0041】
本発明の方法による内部基準の導入は、より正確かつ信頼性が高い検体の検出を保証する。
【0042】
本発明の方法は、原則として、検出が検体へのラベルの結合及び検体に結合したラベルの検出に基づく任意の分析的検出技術に適用されることができる。具体的には、本発明の方法は、広範囲の濃度にわたるラベルの正確な定量的検出を可能にする検出方法に適している。一般的に、ラベルを用いた検出に基づく検出方法は、正確な検出を保証するために、サンプルへの過剰なラベルの追加を必要とする。サンプル中の検体の量に基づいて、非結合ラベルの画分は、非常に大量(すなわち加えられた過剰なラベルのあらかじめ決められた量近く又はそれと同じ)から非常に少量まで変化する。一般的に、DNAプローブによって実行する場合、10-6 Mから10-9 Mの範囲内のラベル濃度が用いられる。
【0043】
本発明の方法は、検体の検出を含む方法である。検出される検体の性質は本発明にとって重要でなく、任意の分子又は検出のための関心分子の凝集物であることができる。検体の網羅的ではないリストは、タンパク質、ポリペチド、ペプチド、アミノ酸、核酸、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ヌクレオシド、炭水化物、多糖類、リポポリサッカリド、グリコプロテイン、リポタンパク質、核タンパク質、脂質、ホルモン、ステロイド、成長因子、サイトカイン、神経伝達物質、受容体、酵素、抗原、アレルゲン、抗体、代謝物質、コファクタ、栄養素、毒素、毒物、薬剤、細菌戦物質、生物学的危険物質、感染因子、プリオン、ビタミン、免疫グロブリン、アルブミン、ヘモグロビン、凝固因子、インターロイキン、インターフェロン、サイトカイン、腫瘍特異エピトープを含むペプチド及び任意の上記の物質に対する抗体を含む。検体は、ウィルス、バクテリア、真菌、微生物(例えばサルモネラ、ストレプトコッカス、レジオネラ菌、大腸菌、ジアルジア、クリプトスポリジウム 、リケッチア)、芽胞、カビ、酵母、藻類、アメーバ、渦鞭毛藻類、単細胞生物、病原又は細胞、並びに微生物の細胞表面分子、断片、部分、成分、生成物、小さい有機分子、核酸及びオリゴヌクレオチド、代謝物質のような、一つ以上の複雑な凝集物を含むことができる(但しそれらに限られない)。
【0044】
特定の実施の形態によれば、検体は、遺伝子のようなDNA、ウィルスDNA、細菌DNA、菌類DNA、哺乳類DNA、又はDNAフラグメントである。検体は、RNA(例えばウィルスRNA、mRNA、rRNA)であることもできる。検体は、また、cDNA、オリゴヌクレオチド、又は合成DNA、RNA、PNA、合成オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド若しくは他の核酸類似体であることができる。それは、単鎖及び二重鎖核酸から成ることができる。それは、検出の前に、制限酵素との温浸、核酸ポリメラーゼによる複製、断片化の発生を可能にするシアリング又は音波処理のような操作を受けることができる。
【0045】
本発明は、蛍光性、発色性若しくは化学発光性色素、放射性同位元素、金属及び/又は磁気ナノ粒子などのようなラベル(但しこれらに限られない)の使用による検出を含む検出方法に特に適している。
【0046】
したがって、本発明の方法において実行される検出ステップは、用いられるラベルによって決定され、蛍光、比色法、吸収、反射、偏光、屈折、電気化学、化学発光、レイリー散乱及びラマン散乱、SE(R)RS、共鳴光散乱、グレーティング結合表面プラスモン共鳴、シンチレーション計数、磁気センサ、電気化学検出(例えばアノードストリッピング電圧測定)などを含む(但しそれらに限られない)。
【0047】
それぞれの検出方法に用いられる適切なラベルは非常に多く、従来技術において詳細に説明される。蛍光性ラベルは、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、テトラメチルローダミン(TMR)のようなカルボキシフルオレセイン、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、sulforhodamine 101(Texas redTM)、アト色素(Sigma Aldrich社)、Fluorescent Red及びFluorescent Orange、フィコエリトリン、フィコシアニン及びCrypto-FluorTM色素を含む(但しそれらに限られない)。最も一般的な放射性同位元素は、β放射体(例えば3H及び14C)並びにγ放出体(例えばヨウ素125(125I))を含む。定量的及び定性的分析に用いられる他の説明されたラベルは、デンドリマー、量子ドット、アップコンバーティング蛍光体及びナノ粒子を含む(但しそれらに限られない)。
【0048】
本発明の方法は、特に表面増強(共鳴)ラマン分光(SE(R)RS)に基づく検出方法に適しており、広範囲の濃度における高感度な定量的検出を可能にする。
【0049】
本発明の方法における検体の検出がSE(R)RSに基づく場合、ラベルは、SE(R)RS活性である物質、すなわち、適切に照射された場合にSERS又はSERRSスペクトラムを生成することが可能である物質であり、本明細書においてSE(R)RS活性ラベル又は色素とも呼ばれる。SE(R)RS活性ラベルの非制限的な例は、5-(及び6-)carboxy-4',5'-dichloro-2',7'-dimethoxy fluorescein、5-carboxy-2',4',5',7'-tetrachlorofluorescein及び5-carboxyfluoresceinのようなフルオレセイン色素、5-(及び6-)carboxy rhodamine、6-carboxytetramethyl rhodamine及び6-carboxyrhodamine Xのようなローダミン色素、メチル、ニトロシル、スルホニル及びアミノフタロシアニンのようなフタロシアニン、米国特許番号6127120において挙げられるようなアゾ色素、アゾメチン、シアニン、及びメチル、ニトロ、スルファノ及びアミノ派生物のようなキサンチン、並びにスクシニルフルオレセインを含む。これらのそれぞれは、任意の従来の方法で置換されることができ、多数の有用なラベルを生じさせる。
【0050】
特定の実施の形態によれば、SE(R)RS活性ラベルは、カルボキシローダミン、FAM又はTETである。カルボキシローダミンR6Gによってラベル付けされたオリゴヌクレオチドの補正曲線は、1.05x10-12Mの検出限界に達する(希釈効果を考慮すると、サンプルボリューム中のラベル付きオリゴヌクレオチドの0.5フェムトモルの検出に対応する)ことが実証された。同時に、(FAM及びTETと同様に)R6Gの補正グラフが、10-7 Mから10-11 Mまでの範囲にわたって線形であることが示された(LGC "Evaluation of the sensitivity of SERRS-based DNA detection", January 2004, LGC/Mfb/2004/02, http://www.mfbprog.org.uk/themes/theme_publications_item.asp?intThemeID=10&intPublicationID=865において入手可能)。
【0051】
ラベルの選択は、ラベルの共鳴周波数、検査サンプル中に存在する他の分子の共鳴周波数などのような要因によって影響される可能性がある。生体分子の検出に有用なSE(R)RS活性ラベルは、米国特許番号5306403、6002471及び6174677のような従来技術において説明される。
【0052】
表面増強(共鳴)ラマン分光(SE(R)RS)のような表面増強分光による検出は、コロイドであることができる粗い金属表面上へ吸着された検体に対して観察されるラマン散乱の強力な増強に基づく。したがって、これは適切な「SE(R)RS活性表面」の存在下でのラベルの検出を必要とする。一般的に、この表面は貴金属(Au、Ag、Cu)表面又はアルカリ金属(Li、Na、K)表面である。金属表面は、例えばエッチングされた若しくは粗くされた金属表面、金属ゾル又は特定の実施の形態によれば金属コロイド粒子の凝集であり、後者はラマン散乱の108〜1012倍を超えるSERRSの増強をもたらす。本発明の検出方法におけるSE(R)RS活性表面を構成する金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子島状膜、金属皮膜ナノ粒子ベース基材、埋め込まれた金属ナノ粒子を有するポリマーフィルムなどで準備されることもできる。金属表面は、むきだしの金属であることができ、又は金属表面上の金属酸化物層から成ることができる。それは、その吸着能力を増加させるために、シトラート又は適切なポリマー(例えばポリリシン若しくはポリフェノール)のような有機被覆を含むことができる。
【0053】
本発明の特定の実施の形態によれば、SE(R)RS活性表面を構成する金属コロイド粒子は、US20050130163 A1において説明されるように制御されて凝集したナノ粒子又はコロイドナノ粒子である。ナノ粒子を用意するための他の方法が知られている(例えば米国特許第6054495、6127120及び6149868)。ナノ粒子は商業的な供給元から入手することができる(例えば、Nanoprobes Inc., Yaphank, N.Y.,Polysciences, Inc., Warrington, Pa.)。金属粒子は、それらがSE(R)RS効果を生じさせる限り任意のサイズでよい。一般的にそれらは、金属の種類によって、約4-50 nm、特に25-40nmの間の直径を持つ。
【0054】
SE(R)RS検出方法を利用する本発明の検出及び/又は定量化方法において、用いられる成分の(少なくとも)1つ又はその組み合わせ(すなわちラベル、プローブ、ラベル付きプローブ、検体又はラベルが結合した検体)は、金属表面上へ吸着されることが認識される。そのような吸着は、直接的な結合又はリンカー化合物によって媒介されることができ、非共有結合又は共有結合のいずれかが関与する。吸着の様々なオプション及びモードが、従来技術において知られており、例えば米国特許6127120及び6972173において説明される。一般的に、金属SE(R)RS活性表面への吸着は、単量体又は重合体のポリアミン(より具体的にはスペルミンのような短鎖脂肪族化合物ポリアミン)の追加によって保証される。したがって、一実施例によれば、本発明の方法は検出の前に、SE(R)RSによって検出されるべきサンプルへのポリアミンの追加を含む。
【0055】
あるいは又はさらに、検体特異プローブは、SE(R)RS活性表面上への化学吸着を促進又は容易にするために修飾される。これは、検体特異プローブの全体的な負電荷を少なくとも部分的に低減することによって保証されることができる。より詳しくは、検体特異プローブがヌクレオチドである場合、これは、米国特許6127120にて説明されるように、ルイス塩基(例えばアミノ基)を有する一つ以上の官能基を核酸又は核酸ユニットに組み込むことによって保証されることができる。
【0056】
更なる実施の形態によれば、(例えばルイス塩基のような)官能基が、SE(R)RS活性表面上への化学吸着を促進又は容易にするために、SE(R)RS活性ラベルに提供される。オプションとして、US2005/0130163に記載されるように、SE(R)RS活性ラベル又は色素及び金属粒子はポリマービーズ中に混入され、それはオプションとしてさらに、分離の際に重要である場合がある磁性をビーズに与える(下記参照)磁性粒子を含むことができる。
【0057】
ラベル、プローブ又はラベル付きプローブの一つ以上がSE(R)RS活性表面に吸着される場合、結合ラベル及び非結合ラベルの両方の検出が同様の方法で保証されることができる。
【0058】
本発明の別の実施例によれば、検体は、例えば上記の化学的修飾を用いて、又は特異的なリンカーを経由して、金属SE(R)RS活性表面に吸着される。この実施例によれば、非結合ラベルは、結合ラベルから分離されるとき、SE(R)RS活性表面に接触していない。非結合ラベルの検出を保証するために、それは金属SE(R)RS活性表面に接触することができる。オプションとして、これは、金属SE(R)RS活性表面(又は金属SE(R)RS活性表面に結合された過剰な検体)にプローブを接触させることによって保証されることができる。
【0059】
本発明の方法は、検体に結合されたラベルの画分(結合ラベルの画分)及び検体に結合されないラベルの画分(非結合ラベルの画分)の両方の検出を含む。本発明の一実施例によれば、結合ラベル及び非結合ラベルの画分は同じ検出方法を用いて測定される。したがって、この実施の形態によれば、結合画分及び非結合画分の両方が、例えばSE(R)RS又は蛍光(図3a及び3b)を用いて検出される。あるいはしかしながら、結合画分及び非結合画分が異なる検出方法を用いて測定されることができることが認識される。後者の実施の形態によれば、結合ラベルは例えばSE(R)RSを使用して測定されることができ、一方、非結合ラベルは他の検出方法(例えば蛍光)に基づいて測定されることができる。これは、2つの異なる方法において検出可能であるラベルの使用、即ち二重ラベルの使用を必要とすることが理解される。色素のSE(R)RSスペクトラムが分子固有であるので、ほとんどの蛍光色素は、原則として、それらのSE(R)RSスペクトラムに基づいて検出されることもできる。例えばSE(R)RS活性表面が検体に結合される場合、本発明の方法におけるラベルの結合画分及び非結合画分の検出のために異なる検出方法を用いることは重要である(上記参照)。
【0060】
上記のように、本発明の方法は、ラベルに結合することによる検体の検出を伴う任意の方法に適用されることができる。検体へのラベルの結合が重要であるが、この結合は必ずしも検体に特異的である必要はないことが認識される。本発明の方法が純粋な検体の定量的な検出のために適用される場合、(分析に用いられる任意の物質(例えばサンプル容器)との結合が発生しない限り)ラベルは検体と結合することが可能であれば、実際には十分である。検体と結合するラベルの能力は、検体へのラベルの本来の結合に基づくことができる(例えば二本鎖DNA間への色素のランダムな取り込み)。
【0061】
しかしながら、一般的には、サンプル中の検体の検出が必要とされる場合、検体へのラベルの結合は、検体特異ラベルを用いることによる特異的な結合でなければならない。一実施例によれば、これは、ラベルを検体特異「プローブ」に連結することによって保証される。検体特異プローブの性質は、検出されるべき検体の性質によって決定される。最も一般的には、プローブは、抗原抗体結合、相補的ヌクレオチド配列、炭水化物-レクチン、相補的ペプチド配列、リガンド-受容体、助酵素-酵素、酵素阻害剤-酵素などのような(但しそれらに限られない)、検体との特異的な相互作用に基づいて開発される。ラベルに連結される検体特異プローブは「検体特異ラベル」になり、本発明のこの実施例によれば、それは検体と特異的に結合することが可能なラベルである。
【0062】
本発明の特定の実施の形態によれば、重要な検体はオリゴヌクレオチドであり、検体特異プローブは、その配列が当該重要な検体に対して相補的であるオリゴヌクレオチドプローブである。このオリゴヌクレオチドプローブは、検体特異ラベルを得るためにラベルに結合される。
【0063】
ラベル付きヌクレオチドを調製して、それらを核酸に組み込むための方法は、従来技術において説明される(例えば米国特許番号US4962037, US5405747, US6136543, US6210896)。
【0064】
本発明の特定の実施例では、SE(R)RS活性ラベルが用いられ、それは、直接的に又はリンカー化合物を介して、ヌクレオチドプローブに取り付ける。他の分子(例えばヌクレオチド又は核酸)と共有結合反応するように設計された反応基を含むSE(R)RS活性ラベルは市販されている(例えばMolecular Probe社、Eugene、Oreg.)。ヌクレオチド前駆物質に共有結合で取り付けられるSE(R)RS活性ラベルは、標準の商業的な供給元から購入することができる(例えば、Roche Molecular Biochemicals社, Indianapolis, Ind.; Promega社, Madison, Wis.; Ambion社, Austin, Tex.; Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, N.J.)。
【0065】
検体がヌクレオチド配列である場合、検体特異ラベルは、検体への検体特異プローブのハイブリッド形成による検体の特異的な検出、及び本発明による結合ラベル及び非結合ラベルの検出において用いられることができるプローブあることができる。あるいは、本発明の方法は、例えばPCRを用いた検体の増幅を含むことができ、検体特異ラベルはPCR生成物に組み込まれる。本発明の方法によれば、あらかじめ決められた量の検体特異ラベル(又はラベル付きプライマ)が用いられ、組み込まれた検体特異ラベル及び非結合検体特異ラベル(の量)の両方が検出される。
【0066】
本発明は、検体へのラベルの結合に基づく検体の検出及び/又は定量化の方法に関し、検出の精度及び信頼性は、あらかじめ決められた量のラベルにサンプルを接触させ、ラベルの結合画分及び非結合画分の両方を検出することによって改善される。
【0067】
本発明の一実施例によれば、ラベルの結合画分及び非結合画分は、従来の分離を伴わずに、すなわち同じサンプル中で、個別に検出及び/又は定量化されることができる。これは、その信号が検体への結合で変更される(検体特異)ラベルを用いる本発明の一実施例によって達成されることができる。そのようなラベルの例は、分子ビーコンに結合されるラベルである。例えば、ターゲット配列に対して相補的であり、その2つの末端の各々において色素及び失活剤(例えばDabcyl)によって二重にラベル付けされるプローブが利用される。その閉じた状態において、色素の信号は失活剤によって抑えられる。相補的配列がターゲットDNAにハイブリッドすると、ビーコンは開き、信号が検出されることができる。特異的に検体と結合して、それによって信号の変化を引き起こすことが可能なラベルの更なる例が、WO2005/019812においてSERRSに対して提供される。その中で、その2つの末端の各々において異なる色素によって二重にラベルをつけられたプローブであるSERRSビーコンが説明される。第2の色素は特に、それが適切な金属表面上へオリゴヌクレオチドプローブを固定することが可能であるように設計される。ターゲットDNAがない場合、ビーコンは「閉じた状態」で金属表面上に固定され、両方の色素に対応するSERRSスペクトラムの検出をもたらす。相補的配列がターゲットDNAにハイブリッドすると、ビーコンは開き、色素の一方が表面から取り去られる。これはSERRS信号を変化させる。あるいは、蛍光色素分子ラベル付きオリゴヌクレオチドプローブが利用されることができ、ラベルの蛍光の偏光は、ターゲット核酸への結合で増加する(Walker and Linn (1996) Clinical Chemistry. 42:1604-1608)。更なる実施の形態において、SE(R)RS活性ラベルが利用され、その最大吸収周波数は、金属粒子表面に吸着された色素分子の変化する吸収スペクトルに基づいて、SE(R)RS活性金属表面とのラベルの結び付きにより、第1周波数から第2周波数にシフトする(Franzen et al. (2002) J. Phys. Chem. 106:6533-6540; Noginov et al. (2005) J. Opt. A: Pure Appl. Opt. 7: S219-S229)。この実施例によれば、検体はSE(R)RS活性金属表面に結び付けられる。サンプルにSE(R)RS活性ラベルを接触させると、特異的に検体に結合されるSE(R)RS活性ラベルは、それによって金属表面に結び付けられ、サンプル中で結合してないままであるSE(R)RS活性ラベルとは異なるスペクトラムを放射する。例えば、SE(R)RS活性ラベル付きオリゴヌクレオチドプローブは、銀ナノ粒子に結合されるDNAフラグメントとハイブリッド形成すると、最大吸収周波数のシフトを受けることができ、それによって、同じサンプル内で、そのハイブリッドされた(結合された)形態及びそのハイブリッドされていない(結合していない)形態において、検出されることができる。
【0068】
本発明の方法の他の実施の形態によれば、ラベルの結合画分及び非結合画分の検出は、これらの画分の従来の分離を必要とする。結合ラベル及び非結合ラベルの分離は、その個々の検出を可能にするように、サンプルから非結合ラベル及び/又は検体に結合されたラベルを除去する任意のプロセスによって達成されることができる。
【0069】
典型的な分離技術は、沈降分離、沈澱、遠心分離、基板への特異的な結合、等電点電気泳動及びキャピラリー電気泳動法を含む(但しこれらに限られない)ゲル電気泳動、誘電泳動、蛍光活性選別技術を含む(但しこれに限られない)選別、HPLC、FPLC、サイズ排除(ゲル濾過)クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、疎水的相互作用クロマトグラフィ、免疫アフィニティークロマトグラフィ及び逆相クロマトグラフィを含む(但しこれらに限られない)クロマトグラフィを含む。分離技術の詳細な議論は、とりわけ、Rapley; Sambrook et al.; Sambrook and Russell; Ausbel et al.; Molecular Probes Handbook; Pierce Applications Handbook; Capillary Electrophoresis: Theory and Practice, P. Grossman and J. Colburn, eds., Academic Press (1992); Wenz and Schroth, PCT International Publication No. WO 01/92579; M. Ladisch, Bioseparations Engineering: Principles, Practice, and Economics, John Wiley & Sons (2001); and Liebler, Introduction to Proteomics, Humana Press (2002)において見つけることができる。
【0070】
一実施例によれば、結合ラベル及び非結合ラベルの分離は、基板への検体の結合によって達成される。一般的に、これは、基板に結合されて、抗原を特異的に結合することが可能である「捕獲プローブ」を必要とする。検体がヌクレオチド配列である場合、捕獲プローブは一般的に、検体内のある領域に対して相補的なオリゴヌクレオチドである。ラベルもプローブに結合される場合、検体特異プローブ及び捕獲プローブが検体内の異なる配列に対して相補的であるように取り計らわれる。あるいは、検体は、サンプルからの検体の(及び結果的に検体結合ラベルの)分離を可能にするタグを備えている。これは、例えばターゲットヌクレオチド配列(検体)がタグを付けられたプライマを用いて増幅される場合に達成されることができ、そのタグは、基板と結合することを可能にする。特定の実施の形態によれば、ビオチンタグは、ビオチンタグを備えたプライマを用いて増幅された検体に導入される。ビオチン-ストレプトアビジン捕獲方法において、ビオチン化検体は、ストレプトアビジンで被覆した基板(例えばビーズ)又はマイクロタイタープレートのストレプトアビジンで被覆したウェルへのビオチン分子の結合によって捕獲される。
【0071】
あるいは、検体がタンパク質又はペプチドである場合、捕獲プローブは、基板に結合される検体特異抗体であることができる。基板に対する検体(結果的に検体結合ラベル)の結合は、結合ラベル及び非結合ラベルの物理的分離を可能にする。例えば、磁気ビーズが用いられる場合、これらは、磁場を印加することによってサンプルから除去されることができる。あるいは、検体は、マイクロタイタープレートに取り付けられた固定された捕獲プローブへの結合によって捕獲されることができ、その後、非結合ラベルを含む上澄液が除去されることができる。
【0072】
本発明のさらに他の実施の形態によれば、検出はSE(R)RSに基づき、結合ラベル画分及び非結合ラベル画分の分離ステップは、SE(R)RS活性表面及び/又はラベルを利用する。より詳しくは、この実施の形態によれば、SE(R)RS活性表面及び/又はラベルは、物理的又は化学的力を受けることができるタグとして本質的に機能し、又はそのようなタグを備える。例えば、SE(R)RS活性金属ナノ粒子の重量が、分離技術において用いられることができる(US2005/0130163)。あるいは、SE(R)RS活性表面は、磁性材料であるタグ(例えばSE(R)RS活性ビーズ中の磁性粒子)を有し、結合ラベル画分及び非結合ラベル画分の分離は、磁場を印加することによって、又はサンプル中に磁性物体を導入することによって、保証される。一実施例によれば、検体特異SE(R)RS活性ラベルに結合される磁気SE(R)RS活性表面は、あらかじめ決められた量でサンプルに加えられ、その結果、磁気SE(R)RS表面/検体特異SE(R)RS活性ラベルの一部が、サンプル中の検体と結合する。検体は、捕獲プローブを経由して基板に結合される。SE(R)RS活性ラベルの非結合画分は、電磁石を用いて除去されることができ、(磁石をオフにすることによって)別のバイアル中に放出されることができる。本発明の他の実施例において、磁気SE(R)RS活性表面に結合される検体特異SE(R)RS活性ラベル及びビオチン化プローブは、検体のPCR介在DNA増幅のための(例えば順方向及び逆方向)プライマとして用いられる。PCR生成物は、SE(R)RSラベル及びビオチンラベルの両方が付けられている。PCR生成物を収容するマイクロタイタープレートウェルに導入される電磁石は、サンプルから全ての磁気プローブを収集するためにオンにされる(すなわち、PCR生成物及びSE(R)RS活性ラベルに結合される非結合磁気表面に取り込まれる)。それから磁石はサンプルから取り出されて、ストレプトアビジンで被覆された他のウェルに浸される。磁石がオフに切り替えられると、ビオチンタグも含むPCR生成物は、ストレプトアビジンによって捕獲される。非結合磁気SE(R)RS活性ラベルは、再び電磁石をオンにすることによって除去され、本発明による検出のために他のバイアルへ移されることができる。
【0073】
本発明の方法のさらに他の実施の形態によれば、ラベルの結合画分及び非結合画分の検出は、同じサンプル内で、すなわちサンプルのいずれの画分をも実際に除去することなく、1つのサンプル内の異なる検出領域を利用して、実行される。したがって、この実施の形態によれば、結合画分及び/又は非結合画分の分離又は物理的移動は、反応容器の中で確保される。そのような反応容器内での物理的移動は、検体特異ラベル付きプローブ、又は、結合プローブ及び/若しくは非結合プローブの移動を可能にする物理的/化学的力を受けることができるタグを備えるSE(R)RS活性表面の使用によって、確保されることができる。そのような力の例は、磁力、動電学的力などを含む。特定の実施の形態によれば、検体特異プローブ上のタグは、磁力を受けると磁力の方向にプローブを動かすことが可能である強磁性粒子である。
【0074】
本発明は、検体(より詳しくはサンプル中の検体)の検出及び/又は定量化のための改善された方法に関する。本願明細書に説明される方法は一般に「検体」に関連するが、本発明の方法が異なる検体特異ラベルを使用していくつかの検体が同時に検出又は定量化される場合に適用されることができることが同時に構想される。特に、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、テトラメチルローダミン(TMR)のようなカルボキシフルオレセイン、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、sulforhodamine 101(Texas redTM)、Atto色素(Sigma Aldrich)、Fluorescent Red及びFluorescent Orange、フィコエリトリン、フィコシアニン、Crypto-FluorTM色素、量子ドット又はSE(R)RS活性色素などの(但しそれらに限られない)異なる蛍光性ラベルのような(但しそれに限られない)、同じ検出方法を用いて区別して検出されることができる異なる検体特異ラベルが利用される。各々のラベルがそれぞれの検体に対して特異的であるので、各々のラベルについて、本発明による検出の内部検証を得るために、結合画分及び非結合画分の両方を測定することが可能である。
【0075】
本発明は、サンプル中の一つ以上の検体の検出及び/又は定量化の精度や信頼性の改善を可能にする。用語「サンプル」は、本明細書において広義に用いられ、広範囲にわたる生体物質、及びそのような生体物質から導出又は抽出される組成物を含むことが意図される。サンプルは、その中において検体が検出される任意の適切な製剤であることができる。例えばサンプルは、血(血漿及び血小板分留物を含む)、脊髄液、粘液、痰、唾液、精液、大便若しくは尿又はその任意の一部のような(但しそれらに限られない)身体組織又は流体を含むことができる。例示的なサンプルは、全血、赤血球、白血球、軟膜、毛、爪及び表皮物質からの物質、頬側スワブ、咽頭スワブ、膣スワブ、尿道スワブ、頸部スワブ、咽頭スワブ、直腸スワブ、病巣スワブ、膿瘍スワブ、鼻咽頭スワブなどを含むスワブ(但しこれらにかぎられない)、リンパ性流体、羊水、脳脊髄液、腹膜しん出液、肋膜しん出液、嚢胞からの流体、滑液、硝子体液、房水、嚢流体、眼球洗浄液、眼球吸引液、血漿、血清、肺洗浄液、肺吸引液、体内の任意の組織の生検材料物質を含むことができる。任意の上記の例示的な生体サンプルから取得される溶解物、抽出物又は物質もサンプルとみなされることができることを当業者は認識する。移植された物質を含む培養細胞、一次細胞、二次細胞株など、及び任意の細胞、組織若しくは臓器から得られる溶解物、抽出物、上澄液又は物質も、本明細書で用いられる用語「生体サンプル」の意味の範囲内である。微生物及びウィルスを含むサンプルも、本発明の方法を用いた検体検出に関連して認識される。法医学設定から得られる物質も、用語「サンプル」の意図された意味の範囲内である。サンプルは、食材や飲料、汚染の疑いがある水などを含むこともできる。これらのリストは網羅的であることを意図しない。
【0076】
本発明の特定の実施例では、サンプルは、検出方法によるサンプルの検出を容易にするために前処理される。例えば、一般的に、検体の半単離若しくは単離をもたらす、又は検体の増幅を保証するサンプルの前処理が構想される。多くの方法及びキットが、様々な種類のサンプルの前処理に利用できる。
【0077】
サンプルの調製又は前処理は、検出方法によって決定される。例えば、SE(R)RSを用いる検出が構想される場合、サンプルは、そのSE(R)RSスペクトラムの記録を可能にするために適切に調製された任意の適切な形態(例えば固体、溶液若しくは懸濁液又は気体)であることができる。検出サンプルは任意の適切なpHであることができる。
【0078】
本発明の特定の実施の形態によれば、検体は、核酸(例えばゲノムDNAの配列又は病原微生物からの核酸)である。様々な方法が、核酸をサンプルから単離するために利用できる。例示的な核酸単離技術は以下を含む。(1) 有機物を抽出してその後例えばフェノール/クロロホルム有機試薬を用いてエタノール沈殿する(例えば、Ausbel et.al. 編(1995:2003年6月までの増刊を含む)の"Current Protocols in Molecular Biology," John Wiley & Sons, New York)。好ましくは、自動DNA抽出機(例えば、Applied Biosystems社(Foster City, Calif)から入手可能なModel 341DNA Extractor)を用いる。(2)固定相吸着方法(例えば、Boom他の米国特許第5234809号; Walsh他のBioTechniques 10(4):506-513(1991))。(3)塩によって誘発されたDNA沈澱方法(例えば、 Miller et.al., (1988) Nucl. Acids Res., 16(3): 9-10)。そのような沈澱方法は、一般的に「塩析」法と呼ばれる。市販のキットがそのような方法を促進するために用いられることができる(例えば、Genomic DNA Purification Kit及びTotal RNA Isolation System(共にPromega社(Madison, Wis.)から入手可能))。さらに、そのような方法は、例えばABI PRISMTM 6700 Automated Nucleic Acid Workstation(Applied Biosystems社, Foster City, Calif.)又はABI PRISMTM 6100 Nucleic Acid PrepStation、及び関連するプロトコル(例えばNucPrepTM Chemistry:Isolation of Genomic DNA from Animal and Plant Tissue, Applied Biosystems Protocol 4333959 Rev. A (2002)、Isolation of Total RNA from Cultured Cells, Applied Biosystems Protocol 4330254 Rev. A (2002)、及びABI PRISMTM Cell Lysis Control Kit, Applied Biosystems Protocol 4316607 Rev. C (2001))を用いて、自動化又は半自動化されている。
【0079】
上記の単離方法は、酵素消化ステップ(例えばプロテアーゼによる消化)、及び/又は、例えばPCRによる酵素増幅ステップ、及び/又は、断片化のためのシアリング/超音波処理ステップをさらに含むことができる。
【0080】
上記のように、本発明の方法は、表面増強(共鳴)ラマン分光(SE(R)RS)に基づく検出及び/又は定量化方法において特に興味深い。本願明細書において一般的にSE(R)RSが参照されるが、例えば、表面増強蛍光、通常のラマン散乱、共鳴ラマン散乱、コヒーレント(反ストークス)ラマン分光(CARS)、誘導ラマン散乱、反転ラマン分光、誘導利得ラマン分光、ハイパーラマン散乱、分子光学的レーザ検査(MOLE)又はラマンマイクロプローブ又はラマン顕微鏡検査又は共焦ラマンマイクロ分光分析、三次元若しくはスキャンラマン、ラマンサチュレーション分光法、時間分解ラマン共鳴、ラマンデカップリング分光又はUVラマン顕微鏡検査のような(但しそれらに限られない)他の種類の分光法に基づく検出方法も構想されることが理解される。
【0081】
本発明の特定の実施例では、ラベルの共鳴周波数で動作することで感度が増加するので、本発明の方法はSERRSを必要とする。この場合には、ラマンスペクトラムを生成するために用いられる光源はコヒーレントな光源(例えばレーザ)であり、用いられているラベルの最大吸収周波数に実質的に調整される。この周波数は、SE(R)RS活性表面並びに検体及び/又は検体結合種とのラベルの関連性によって僅かにシフトする可能性があるが、当業者は、これに対応するために光源を適切に調整することが可能である。光源は、ラベルの吸収極大の近くの周波数に又はラベルの吸収スペクトラム中の第2のピークの周波数における若しくはその近くの周波数に調整されることができる。あるいは、SERRSは、活性表面上のプラスモン共鳴周波数で動作することを含むことができる。
【0082】
SE(R)RS検出に基づく本発明の方法において、一般的に、例えばラベルの吸収極大に対応する1つのピークが励起のために選択され、検出は、「フィンガープリント」スペクトラムの単一の波長で実行されることができる。あるいは、特にそれぞれの検体が異なるSERRSラベルを用いて同時に検出されている場合、「フィンガープリント」スペクトラム全体が、各々のラベルを識別するために検出されることができる。しかしながら、各々が固有のスペクトル線を持つ異なるラベルによっても、信号の強さは、選択されたスペクトル線周波数において検出されることができる。
【0083】
一般的に、SE(R)RSに基づく検出方法における検出ステップは、可視スペクトラムの周波数を持つレーザからの入射光を用いることにより実行される。選択される厳密な周波数は、ラベル、表面及び検体に依存する。概して、可視スペクトラムの緑又は赤の領域における周波数は、より良い表面増強効果を生じさせる傾向がある。しかしながら、例えば紫外線又は近赤外線範囲の他の周波数が用いられる状況を構想することが可能である。適切な周波数と電力をもつ適切な光源の選択及び必要な場合には調整は、特に入手可能なSE(R)RS文献を参照して、おそらく当業者の能力の範囲内である。
【0084】
SE(R)RSベースの検出方法に用いられる励起源は、窒素レーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、アルゴンイオンレーザ、クリプトンイオンレーザなどを含む(但しそれらに限られない)。複数のレーザは、共鳴ラマンスペクトル法にとって重要である励起線の幅広い選択を提供することができる。特定の実施の形態によれば、アルゴンイオンレーザが、514.5nmの励起でLabRam集積化機器(Jobin Yvon社)において用いられる。
【0085】
励起ビームは、対物レンズを用いて基材にフォーカスされることができる。対物レンズは、励起ビーム及び放射されたラマン信号のための直角ジオメトリを作成するためにホログラフィックビームスプリッタを用いることにより、サンプルの励起及びラマン信号の収集の両方に用いられることができる。ラマン信号の強度は、励起ビームからの強いバックグラウンドに対して測定されることを必要とする。バックグラウンドは主としてレイリー散乱光及び鏡面反射であり、高効率光学フィルタによって選択的に取り除かれることができる。例えば、ホログラフィックノッチフィルタがレイリー散乱放射を低減するために用いられることができる。
【0086】
表面増強ラマン放射信号は、ラマン検出器によって検出されることができる。ラマン分光において潜在的に利用される様々な検出ユニットが従来技術において知られており、任意の既知のラマン検出ユニットが用いられることができる。ラマン検出ユニットの例は、例えば米国特許番号6002471において開示される。赤増強増感電荷結合素子(RE-ICCD)を備える電荷結合デバイス(CCD)、シリコンフォトダイオード、又は単独で又は信号のカスケード増幅のために直列に配置される光電子増倍管のような、他の種類の検出器が、用いられることができる。光子計数電子装置が高感度な検出のために用いられることができる。検出器の選択は、主に特定の分析を実行するために必要とされる検出の感度に依存する。波長選択ミラー、散乱光検出のためのホログラフィック光学素子及びファイバ光導波路を含むいくつかの装置が、SE(R)RS信号を収集するために適している。
【0087】
SE(R)RSスペクトラムを取得し及び/又は分析するための装置は、コンピュータのような何らかの形のデータプロセッサを含むことができる。一旦SE(R)RS信号が適切な検出器によって取り込まれると、その周波数及び強度データは分析用のコンピュータに一般的に渡される。フィンガープリントラマンスペクトラムが検出されたラマン活性化合物の同定のために参照スペクトルと比較されるか、又は被測定周波数における信号の強さが検出されたラマン活性化合物の量を算出するために用いられる。
【0088】
本発明は、ラベルベースの検体検出のための改善された方法を提供する。本発明の方法のアプリケーションに適応されるシステム、キット、試剤及びツールは、特に(捕獲プローブ伴う領域と伴わない領域を含む)適応された基板などは、本発明の範囲内である。
【0089】
図4Aは、本発明の実施の形態によるシステムの模式的な表現である。サンプル中の検体の存在を検出及びオプションとして定量化するためのシステム(100)は、検体を含むと推測されるサンプルのソース106、検体と結合することが可能なラベルを収容するソース108、並びに、検体と結合することが可能なラベルのあらかじめ決められた量に検体を含むサンプルを接触させるための手段102に、検体及びあらかじめ決められた量のラベルを供給するための手段110を含む。手段110は、サンプル及び/又は検体の重量供給を含むことができ、ソース106, 108から接触手段102への流体の供給を可能にするために、パイプ/管路及びバルブ(例えば選択可能かつ制御可能なバルブ)の設備を含むこともできる。あるいは、流体は、ソース106, 108から接触手段102へポンピングされることができる。
【0090】
接触手段102は、上述の任意の方法により、結合されたラベルを結合していないラベルから分離するための手段を含むことができる。
【0091】
制御及び分析回路112が、手段110の動作を制御するために提供されることができる。更に、検体に結合されるラベルの割合及び検体に結合されないラベルの割合を検出するための手段104も提供される。手段104は、分析回路112の管理下であることができる。検出を表わす信号は、非結合ラベル及び結合ラベルの検出が互いに矛盾しないことを確認するアルゴリズムを実行し、任意の適切な表示手段114(例えば視覚表示装置、プロッタ、プリンタ)に結果を表示するように適応されることができる制御及び分析回路112に供給されることができる。制御及び分析回路112は、離れた所に結果を伝送するためのローカルエリアネットワーク又は広域ネットワーク対する接続を備えることができる。制御及び分析回路112は、例えば専用ハードウェア又は適切にプログラムされたコンピュータ、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサのような埋込み型プロセサ、プログラム可能なゲートアレイ(例えばPAL、PLA又はFPGA)等の、任意の適切な態様で実現されることができる。
【0092】
図4Bは、本発明によるシステムの別の実施例を示す。図4Aと同じ参照番号のアイテムは同じ機能を持つ。図4Aと図4Bとの間の主な違いは、検出手段104が、非結合ラベル及び結合ラベルをそれぞれ検出するための2つの異なる検出手段104A及び104Bとして提供されることである。上述の任意の検出方法が、検出手段104A及び/又はBによって実現されることができる。
【実施例1】
【0093】
[HIVの検出における内部基準の設立]
本実施例では、HIVの検出は、サンプル中のgag遺伝子(検体)の存在に基づいて実行される(Isola et al., 1998, Anal. Chem. 70:1352-1356) 。
【0094】
ラベルとしてクレシル高速バイオレット(CFV)が用いられ、それはCFVによってラベル付けされたgag特異オリゴヌクレオチドプライマを用いたPCR増幅の間に検体に組み込まれる(上記のIsola et al.)。
【0095】
本発明では、あらかじめ決められた量のCFVラベル付きgag特異オリゴヌクレオチドが、PCR反応において用いられる。
【0096】
増幅されたPCR生成物の配列内のgag遺伝子の配列に特異的なヌクレオチド配列であるが、PCRプライマの配列とは異なり、誘導体化ポリスチレンプレートのような固体支持体と結合することが可能なリンカー(例えば6カーボン5'-アミノリンカー)を備える捕獲プローブが、設計される。捕獲プローブは、それから支持体上に配される。
【0097】
誘導体化プレート上の未反応サイトをブロックした後に、PCR反応混合物内の二重鎖PCR生成物は、5分間水中でボイルすることによって変性されて、DNA再結合を防ぐために氷上で急速に冷やされる。混合物は、捕獲プローブを有するプレートに加えられて、ハイブリッド形成溶液の存在下でハイブリッドすることができる。ハイブリッド形成の後、プレート上の緩衝液は慎重に除去されて、他のプレートへ移される。ハイブリッド形成プレートは、100μlの緩衝液でリンスされ、リンス液も収集される。
【0098】
SERS活性表面は、ハイブリッドされたプレート並びに過剰なハイブリッド形成溶液及びリンス液を収容するプレートの両方への蒸着によって銀の100Å層を加えることにより、ハイブリッド形成の後、加えられる。
【0099】
SERSスペクトルが2つのサンプルから取得される。ハイブリッドされたプレートのスペクトラムは、サンプル中のgagDNAの量の直接的な示度を提供する。結合していないCFVラベル付きgag特異オリゴヌクレオチドの画分を含む過剰なハイブリッド形成溶液のスペクトラムは、サンプルに加えられたCFVラベル付きgag特異オリゴヌクレオチドのあらかじめ決められた量から差し引かれると、サンプル中のgagDNAの量の内部対照標準を提供する。
【実施例2】
【0100】
[クラミジアの検出における内部基準の設立]
本実施例では、病原細菌トラコーマ病原体の検出が、サンプル中のomp1遺伝子配列(検体)の存在に基づいて実行される。
【0101】
サンプル中のomp1遺伝子は、第1ウェル中で、ビオチンによって5'-末端においてタグ付けされた順方向プライマ、及び逆方向プライマを用いて、PCRによって増幅される。
【0102】
17塩基omp1特異DNAオリゴヌクレオチドは、「HEX」として市販されている置換フルオレセイン色素である2,5,1',3',7',9'-ヘキサクロロ-5-カルボキシフルオレセインによって、5'-末端においてタグ付けされる。結果として生じるHEXラベル付きomp1特異オリゴヌクレオチド(「HEXプローブ」)は、増幅されたomp1 PCR生成物の配列内の配列であるがPCRプライマの配列とは異なる配列を持ち(「ネスト化」)、ビオチン化プライマが組み込まれるストランドに対して相補的である。
【0103】
あらかじめ決められた量のHEXプローブが、第1ウェルにおけるomp1増幅ビオチン化PCR生成物へのハイブリッド形成のために用いられる。
【0104】
ビオチン化ハイブリッド形成複合体は、ストレプトアビジンで被覆した磁気ビーズを用いて捕獲される。電磁石が、全ての磁気ビーズを収集するためにオンにされる。そして電磁石は溶液から取り出されて、検出用の第2ウェルに浸される。第2ウェル中に全ての磁気ビーズを放出するために、電磁石はオフにされる。このようにして、全ての結合していないHEXプローブは第1ウェルの中に残り、全てのomp1結合HEXプローブは第2ウェルへ移される。後者は、検出前の加熱によって、ビオチン化ハイブリッド形成複合体から解放される。ストレプトアビジンで被覆したビーズに同様に結合されるPCR反応物の過剰なビオチン化プライマは、HEXによってラベル付けされておらず、したがって、特に検出可能なSERRS信号を示さない。
【0105】
第1ウェル中の結合していないHEXプローブ及び第2ウェル中の加熱により解放されたHEXプローブの検出は、次のように実行される。US6,127,120で説明される手順によって、クエン酸塩で還元された銀コロイドが調製される。このコロイドの溶液は蒸留水中で調製される。スペルミン塩酸塩の水溶液が両方のウェルに加えられ、銀コロイド溶液のアリクォット(aliquot)が続く。スペルミンは凝集コロイドの形成を保証して、それによってSERRS増強に寄与し、さらに銀コロイド上へのHEXプローブの吸着を助ける。両方のコロイド懸濁液がSERRS検査を受ける。
【0106】
結合されたプローブ(すなわち加熱による解放の前にはomp1に特異的に結合されていたHEXプローブ)の画分を含む第2ウェルのスペクトラムは、サンプル中のomp1 DNAの量の直接的な示度を提供する。結合していないプローブの画分を含む第1ウェルのスペクトラムは、サンプルに加えられたHEXプローブのあらかじめ決められた量から差し引かれると、サンプル中のomp1 DNAの量に対する内部対照標準を提供する。
【実施例3】
【0107】
[素因遺伝子突然変異の検出における内部基準の設立]
患者のサンプルから抽出されるDNAは、対立遺伝子特異オリゴヌクレオチドを用いて増幅される。2つの順方向プライマが1つの逆方向プライマとともに用いられる。順方向プライマは、SERRS活性ラベル及びSERRS活性表面を有するSERRS活性ビーズ上へ、5'-末端リンカーを介して固定される(US2005/0130163)。あらかじめ決められた量の順方向プライマが用いられる。逆方向プライマはビオチンに5'-末端を介して固定される。PCR生成物は、SERRS活性ビーズ及びビオチンタグの両方を組み込む。
【0108】
PCR反応物の混合物は、ストレプトアビジンで被覆したマイクロタイタープレート上へ配される。ビオチン化PCR生成物及びビオチン化プライマの両方がプレート上に捕獲される。過剰な流体はプレートから除去されて、被覆されていないプレートへ移される。これはSERRS活性ビーズに結合される過剰な順方向プライマを含む。
【0109】
SERRSスペクトルが、固定されたSERRS活性ビーズ及び結合していないSERRS活性ビーズに関して取得される。
【0110】
分離なしで異なるラベルを識別するSERRSの能力は、異なるラベルを有する異なるプライマを用いて、1つのサンプル中の各々のプライマに対するPCR生成物(及び結合していない順方向プライマ)の存在を識別することを可能にする。
【実施例4】
【0111】
[真正細菌DNAの検出における内部基準の設立]
バクテリアは、細胞培養中の混入物として頻繁に見いだされる。調査は、調査された細胞培養において、全体として6.5%の静的細菌性汚染発生率を確認した。このように、多くの細胞培養は、細菌汚染の目に見える徴候がなく、流体の脱色によって一般に示される。さらに、標準の抗生物質は、耐性細菌感染に対して効果がないだけでなく、さらに代謝、細胞成長及び分化に強く影響することが実証された。
【0112】
真性細菌ゲノム中の16SリボソームRNAコード領域に対して特異的なプローブを用いることにより、細胞培養中の空気伝染性混入物として通常遭遇する最も一般的な真性細菌種を検出することが可能である。
【0113】
SERRS検出の感度は、非常に低い濃度のDNAを検出し、したがって増幅ステップなしで済ませることを可能にする。
【0114】
細胞上澄液のサンプルは、あらかじめ決められた量の16S RNA特異プローブに接触され、Cy3 SERRSラベルに結合されて、ハイブリッドすることができる。
【0115】
ハイブリッド形成混合物は、異なる16S RNA特異プローブが結合されたプレート上へ配される。Cy3ラベルが結合されるターゲットDNAの捕獲プローブへのハイブリッド形成の後に、流体は除去されて第2プレートへ移される。プレートはリンスされ、リンス液も同様に第2プレートへ移される。
【0116】
SE(R)RS活性表面は、蒸着で100Åの銀の層を加えることによって、ハイブリッド形成の後に第1プレートに加えられる。第2プレート中の結合していない16S RNA特異プローブの存在は蛍光によって決定される。
【実施例5】
【0117】
[サンドイッチELISA中のhGHの検出における内部基準の設立]
銀電極は、37℃で培養され、それから1% NaHCOの抗ヒト成長ホルモン(hGH)の溶液中で培養される(US5266498)。電極はそれからBSA溶液によって飽和される。
【0118】
hGHを含むサンプル及びhGHの標準液の希釈幅がバッファ中に作られて、銀フィルムは、サンプル及び標準液の異なる濃度バッチによって培養される。洗浄された後、フィルムは、あらかじめ決められた量のジアミノベンジジン(DAB)ラベル付き抗hGH(例えば40μg/ml)によって接触され、培養される。反応物流体は除去されて、検出バイアルへ移される。フィルムは更にリンスされる。
【0119】
電極のSERRSスペクトラムが取得される。反応物流体中の結合していないDABラベル付き抗hGHの濃度は、標準液との比較に基づいて、酵素によって決定される。
【0120】
銀フィルムに結合されるDABラベル付き抗hGHの直接検出及び結合していないDABラベル付き抗hGHの検出により得られた値は、検出の信頼性を決定するために比較される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】検体結合ラベル及び非結合ラベルを測定する本発明の検出方法の特定の実施の形態の模式図。
【図2】サンプル中のDNAのSE(R)RS検出に適用される本発明の方法の実施の形態の模式図。
【図3A】本発明の一実施例による検体結合ラベル及び非結合ラベルのSE(R)RSスペクトルの例。スペクトルの比較は検体の濃度に関する追加の情報を示す。
【図3B】本発明の一実施例による検体結合ラベル及び非結合ラベルのスペクトルの蛍光スペクトルの例。スペクトルの比較は検体の濃度に関する追加の情報を示す。
【図4A】本発明の実施の形態によるシステムの模式図。
【図4B】本発明の実施の形態によるシステムの模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の検体を検出及び/又は定量化する方法であって、
a)前記検体に結合することができるラベルのあらかじめ決められた量に、前記検体を含む前記サンプルを接触させるステップ、
b)前記検体に結合されたラベルの画分を検出するステップ、及び
c)前記検体に結合されないラベルの画分を検出するステップ、
を有し、
前記検体に結合されたラベルの量は、前記サンプル中の前記検体の存在及び/又は量を示し、
前記検体に結合されないラベルの量は、ラベルの前記あらかじめ決められた量から差し引かれて、前記サンプル中の前記検体の存在及び/又は量を示す内部対照標準を提供し、
(b)及び(c)における検出ステップに光学的検出方法を用いる方法。
【請求項2】
前記検出ステップ(b)及び前記検出ステップ(c)が、同じサンプル内で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)及び(c)における前記検出ステップにSE(R)RSを用い、前記ラベルがSE(R)RS活性ラベルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)及び(c)の前に、前記検体に結合されたラベルの画分及び前記検体に結合されないラベルの画分をSE(R)RS活性表面に接触させるステップをさらに有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ラベルが検体特異ラベルである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記検体特異ラベルが検体特異プローブを有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検体がヌクレオチド配列であり、前記検体特異プローブが、前記検体内の配列に対して相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記検体に結合された前記ラベルと前記検体に結合されない前記ラベルとの分別検出を可能にするラベルを利用する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ラベルが蛍光性ラベル及び/又はSE(R)RS活性ラベルであり、その最大吸収周波数が、前記SE(R)RS活性表面との前記蛍光性ラベル及び/又はSE(R)RS活性ラベルの結び付きにより、第1周波数から第2周波数にシフトする、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)の前に、前記検体に結合されないラベルの画分から、前記検体に結合されたラベルの画分を分離するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記結合されたラベルの画分と前記結合されないラベルの画分との分離が、物理的又は化学的力を受けることができるタグ備える検体特異プローブを利用して行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ラベルがSE(R)RS活性ラベルであり、ステップ(b)及び(c)の前に、前記検体に結合されたラベルの画分と前記検体に結合されないラベルの画分とがSE(R)RS活性表面に接触され、前記分離が、物理的又は化学的力を受けることができるタグとしてとして機能する又はそのようなタグを備えるSE(R)RS活性表面を用いて行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
サンプル中の検体の存在を検出及び/又は定量化するためのシステムであって、
a)前記検体に結合することができるラベルのあらかじめ決められた量に、潜在的に前記検体を含む前記サンプルを接触させる手段、
b)前記検体に結合されたラベルの画分を検出する手段、及び
c)前記検体に結合されないラベルの画分を検出する手段、
を有し、
前記検体に結合されるラベルの量は、前記サンプル中の検体の存在及びオプションとしてその量を示し、
前記検体に結合されないラベルの量は、ラベルの前記あらかじめ決められた量から差し引かれて、前記サンプル中の検体の存在及びオプションとしてその量を示す内部対照標準を提供し、
前記検出に光学的検出方法を用いるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2009−540326(P2009−540326A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514956(P2009−514956)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052159
【国際公開番号】WO2008/007242
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】