説明

結合部を有する熱膨張性耐火シートを備えた鉄骨被覆構造

【課題】建築物における鉄骨の位置関係に依存することなく容易に施工することができ、火災等の熱にさらされた場合であっても熱膨張性耐火シートの膨張残渣の厚みに偏りが生じたり、内部に空洞が生じたりすることを軽減できる鉄骨被覆構造を提供すること。
【解決手段】二本のフランジを備えた鉄骨と、前記二本のフランジのうち、少なくとも一方のフランジの両端に設置された拡張具と、前記鉄骨および前記拡張具を覆う熱膨張性耐火シートと、を有する鉄骨被覆構造であって、
前記拡張具が、前記フランジ端部から外部に突き出して設置されると共に、前記拡張具が、加熱された場合に変形する素材により成形され、
前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する結合部が、前記鉄骨の長手方向に、連続して設けられているかまたは間隔をおいて設けられていることを特徴とする、鉄骨被覆構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合部を有する熱膨張性耐火シートを備えた鉄骨の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄骨被覆構造として、金属板と熱膨張性材料層とを積層一体化し折り曲げ加工してなる耐火被覆ユニットを、予め鉄骨に取り付けられた拡張具を介して固定した鉄骨被覆構造が提案されている(特許文献1)。
【0003】
図44は従来の鉄骨被覆構造に使用する拡張具を説明するための模式斜視図である。
図44(a)は拡張具200の斜視図を示し、水平部202と、前記水平部202の相対する端部からそれぞれ垂下する二つのL字状片204、204と、前記水平部202の別の端部から垂下する垂直片206とを具備し、水平部202とL字状片204、204との間には挿入部210がそれぞれ形成されている。上記水平部202の形状は、正方形や長方形である。
【0004】
上記拡張具200の材質は金属が好ましいとされ、例えば、図44(b)に示された形状に打ち抜かれた鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板等を破線に沿って折り曲げ加工することにより作製することができる。
【0005】
図45は従来の鉄骨被覆構造を説明するための模式断面図であり、床スラブ500を支持しているH型鋼100に耐火被覆を施した構造を示したものである。
【0006】
まず、H型鋼100の一方のフランジ2端部を拡張具200の挿入部210に挿入することにより前記拡張具200をH型鋼100に取り付け、H型鋼100のもう一方のフランジ2端部を別の拡張具200の挿入部210に挿入することにより前記拡張具200をH型鋼100に取り付ける。同様にして、H型鋼100の両方のフランジ3端部にさらに別の拡張具200、200をそれぞれ取り付ける。
以上の作業により、H型鋼100のフランジ2および3に2個ずつ、計4個の拡張具200を取り付ける。
【0007】
次いで、図45に示したように、不燃材300を拡張具200に固定することにより、H型鋼100の三方を不燃材300により被覆した後、石膏ボード310上に金属板と熱膨張性材料とからなる耐火被覆ユニット320を熱膨張性材料層側を内側として被覆し拡張具200へ固定する。この様にして図45に示される従来の鉄骨被覆構造が得られる。
【0008】
図45に示される従来の鉄骨被覆構造は、鉄骨に突起物等があった場合でも前記拡張具を介して鉄骨に耐火被覆ユニットを取り付けることにより施工することができるから、簡便かつ安価に、効率よく施工することができるとされる。
しかし先に説明した従来の鉄骨被覆構造の場合には鉄骨に突起物等があった場合でも施工することができる利点がある反面、金属板と熱膨張性材料層とを積層一体化し折り曲げ加工してなる耐火被覆ユニットを予め準備しておく必要があった。
このため建築物内部に鉄骨が複雑に組み合わされた場所が存在すると施工が困難となる場合があった。
【0009】
この一方、耐火被覆材が鉄骨の角部に接して巻き付けられている場合には、加熱された耐火被覆材の角部には、鉄骨などと接していない側の面外方向へ膨張し、耐火被覆材の表面に面内方向に引っ張られる張力が発生している。この張力により、断熱層が部分的に薄くなったり、ひび割れたりして、耐火被覆材の耐火性能が低下してしまう問題がある。
この問題に対応するために、熱膨張性耐火シートにより鉄骨を覆う構造であって、鉄骨と熱膨張性耐火シートとの間に、前記熱膨張性耐火シートの膨張温度よりも低い温度により燃焼または熱溶融する材料により形成されたスペーサを配置した鉄骨被覆構造が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−013224号公報
【特許文献2】特開2010−265605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、単に熱膨張性耐火シートと鉄骨との間にスペーサを設けて熱膨張性耐火シートにより鉄骨を被覆しただけでは、鉄骨被覆構造が火災等の熱にさらされた場合に前記熱膨張性耐火シートの膨らむ形状に偏りが生じたり、前記熱膨張性耐火シートの内部に空洞が生じたりする問題もあった。
【0012】
本発明の目的は、建築物における鉄骨の位置関係に依存することなく容易に施工することができ、火災等の熱にさらされた場合であっても熱膨張性耐火シートの膨張残渣の厚みに偏りが生じたり、内部に空洞が生じたりすることを軽減できる鉄骨被覆構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明者が鋭意検討した結果、鉄骨のフランジに拡張具を設置し、その拡張具の上から鉄骨を熱膨張性耐火シートが覆う鉄骨被覆構造であって、前記熱膨張性耐火シートに対し鉄骨の長手方向に結合部が設けられた鉄骨被覆構造が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち本発明は、
[1]平行に対向する二本のフランジおよび前記フランジを両端に連結した一本のウェブからなる断面H字状の鉄骨と、
前記二本のフランジのうち、少なくとも一方のフランジの両端に設置された拡張具と、
前記鉄骨および前記拡張具を覆う熱膨張性耐火シートと、
を有する鉄骨被覆構造であって、
前記拡張具が、前記フランジ端部から外部に突き出して設置されると共に、前記拡張具が、加熱された場合に変形する素材により成形され、
前記熱膨張性耐火シートが、表面の不燃材層と裏面の不燃材層との間に熱膨張性樹脂組成物層を積層してなり、
前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する結合部が、前記鉄骨の長手方向に、連続して設けられているかまたは間隔をおいて設けられていることを特徴とする、鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0015】
また本発明の一つは、
[2]前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する結合部が、前記熱膨張性耐火シートに間隔をおいて二以上設けられ、
互いに隣り合う結合部の間隔が、前記鉄骨の長手方向を基準として、5〜250mmの範囲である、上記[1]に記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0016】
また本発明の一つは、
[3]熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する二以上の結合部を含む結合部列が、前記熱膨張性耐火シートに間隔をおいて平行に二列以上設けられ、
互いに隣り合う結合部列の間隔が、前記鉄骨の長手方向に対する垂直方向を基準として、50〜500mmの範囲である、上記[1]または[2]に記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0017】
また本発明の一つは、
[4]前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する結合部が、下記(1)〜(5)からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段により固定されている、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
(1)不燃材により綴じる手段
(2)不燃糸により縫合する手段
(3)圧着材により圧着する手段
(4)熱により融着する手段
(5)接着剤により接着する手段
【0018】
また本発明の一つは、
[5]前記拡張具が、前記鉄骨のフランジの端部の外形に略合致する設置溝を有し、
前記設置溝に前記鉄骨のフランジを挿入することにより、前記拡張具が前記フランジから外部に突き出して設置される、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0019】
また本発明の一つは、
[6]前記拡張具が、前記フランジ端部に挿入することのできる設置溝を有し、
前記拡張具の設置溝が、前記拡張具の設置溝の一部または全部が変形された状態により、前記フランジ端部にはめ合わされている、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0020】
また本発明の一つは、
[7]前記拡張具の設置溝の一部または全部を変形させることにより、変形された拡張具の設置溝が変形前の形状に戻ろうとする応力が生じ、この応力により、前記拡張部の設置溝と前記フランジ端部とが固定されている、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0021】
また本発明の一つは、
[8]前記拡張具の設置溝が、次の(1)〜(5)からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
(1)互いに対向する前記拡張具の設置溝の一方の内面(a)と他方の内面(b)の少なくとも一方の面に突起部が設けられた設置溝
(2)前記拡張具の設置溝の奥の内面(c)から前記設置溝の開口部方向に向かって、連続的または段階的に前記設置溝の開口部が狭くなる設置溝
(3)互いに対向する、前記拡張具の設置溝の一方の内面(a)と他方の内面(b)の少なくとも一方の面が、折れ曲がり部を有する設置溝
(4)互いに対向する、前記拡張具の設置溝の一方の内面(a)と他方の内面(b)の少なくとも一方の面が、波形部を有する設置溝
(5)板材を組み合わせてなる設置溝であって、前記設置溝を形成する板材の少なくとも一つが前記フランジに傾斜して接する設置溝
【0022】
また本発明の一つは、
[9]前記拡張具が、本体板と、前記本体板の両端に設置された相対する二つの側面板とを有し、
前記側面板が、支持部とフランジ保持部とを有し、
前記鉄骨のフランジを挿入するための設置溝が、前記本体板、前記側面板の支持部および前記側面板のフランジ保持部により囲まれる切欠きにより形成され、
前記側面板の支持部と前記側面板のフランジ保持部との接合部に、前記側面板の支持部に対して前記側面板のフランジ保持部を傾斜可能に連結する切込みが形成されている、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0023】
また本発明の一つは、
[10]前記拡張具が、紙材、木材、天然樹脂および合成樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、上記[1]〜[9]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【0024】
また本発明の一つは、
[11]前記鉄骨が、建築物の仕切り部に設けられた区画に対して一方のフランジの外面を平行にして設置され、
前記拡張具が、前記一方のフランジとは反対側の他方のフランジの両端に設置され、
前記熱膨張性耐火シートが、前記鉄骨および前記拡張具を覆うと共に、前記鉄骨および前記区画の少なくとも一方に固定されている、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の鉄骨被覆構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に使用する熱膨張性耐火シートは、前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを鉄骨の長手方向に固定する結合部を有している。
このため本発明の鉄骨被覆構造が火災等の熱にさらされた場合でも、前記熱膨張性耐火シートの内部で熱膨張性樹脂組成物層が鉄骨の底方向へ垂れたり、熱膨張残渣の形状に偏りが生じたり、前記熱膨張性耐火シートの内部に空洞が生じたりすることを軽減することができる。
火災等の熱により前記熱膨張性耐火シートが膨張して生成した熱膨張残渣は比較的均一に鉄骨の周囲を覆うことから、本発明の鉄骨被覆構造は耐火性に優れる。
【0026】
加えて本発明の鉄骨被覆構造は、鉄骨のフランジの端部に前記フランジから外部に突き出した拡張具が設置されいる。
そして熱膨張性耐火シートが前記拡張具を介して前記鉄骨を覆っていることから、前記熱膨張性耐火シートと前記フランジの端部との間には一定の間隔が設けられている。
この一方、前記拡張具は火災等の熱により加熱された場合、変形する。
このため本発明の鉄骨被覆構造が火災等の熱にさらされた場合には、前記熱膨張性耐火シートが膨張すると共に、前記拡張具が変形することから、前記熱膨張性耐火シートと前記フランジの端部との隙間に前記熱膨張性耐火シートの膨張残渣が充填される。
この結果、前記鉄骨の周囲には前記熱膨張性耐火シートの膨張残渣が比較的均一に生成し、鉄骨に対して膨張残渣が極端に薄くなる部分が生成することはなく、火災等の熱が鉄骨に伝わる時間を有効に遅延させることができる。
【0027】
また本発明の鉄骨被覆構造は、前記鉄骨および拡張具を熱膨張性耐火シートにより覆うことにより施工することができ、従来の鉄骨被覆構造の様に金属板と熱膨張性材料層とを積層一体化し折り曲げ加工してなる耐火被覆ユニットを準備する必要がなく、鉄骨が複雑に組み合わさっている建築物においても容易に施工することができる。
【0028】
さらに本発明の鉄骨被覆構造は、鉄骨に拡張具を設置し、前記鉄骨および拡張具を熱膨張性耐火シートにより覆うことにより施工することができることから、本発明の鉄骨被覆構造を施工する際に熟練作業者以外による施工も可能である。
これにより本発明の鉄骨被覆構造は施工作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明に係る鉄骨被覆構造の実施形態を説明するための模式断面図である。
【図2】図2は本発明に係る鉄骨被覆構造のうち、図1に示す鉄骨および拡張具の部分を示す模式部分断面図である。
【図3】図3は本発明に使用する熱膨張性耐火シートについて説明するための模式部分拡大断面図である。
【図4】図4は本発明に使用する熱膨張性耐火シートに設けられる結合部について説明するための模式断面図である。
【図5】図5は熱膨張性耐火シートに設けられる結合部の変形例を例示した模式断面図である。
【図6】図6は熱膨張性耐火シートに設けられる結合部の変形例を例示した模式断面図である。
【図7】図7は熱膨張性耐火シートに設けられる結合部の変形例を例示した模式断面図である。
【図8】図8は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための平面図である。
【図9】図9は不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面である。
【図10】図10は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための平面図である。
【図11】図11は不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面である。
【図12】図12は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための平面図である。
【図13】図13は不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面である。
【図14】図14は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための正面図である。
【図15】図15は不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面である。
【図16】図16は図14に例示した圧着型の不燃材の変形例を例示した模式正面図である。
【図17】図17は本発明に使用する拡張具の形状を説明するための斜視図である。
【図18】図18は本発明に使用する拡張具の形状を説明するための斜視図である。
【図19】図19は本発明に使用する拡張具の形状を説明するための斜視図である。
【図20】図20は本発明に使用する拡張具の形状を説明するための斜視図である。
【図21】図21は本発明に使用する拡張具の形状を説明するための斜視図である。
【図22】図22は本発明に使用する拡張具の変形例を説明するための斜視図である。
【図23】図23は本発明に使用する拡張具の変形例を説明するための斜視図である。
【図24】図24は本発明に使用する拡張具の変形例を説明するための断面図である。
【図25】図25は本発明に使用する拡張具の設置溝に設置される突起部の変形例を示す模式斜視図である。
【図26】図26は本発明に使用する拡張具の設置溝に設置される突起部の変形例を示す模式斜視図である。
【図27】図27は本発明に使用する拡張具の設置溝に設置される突起部の変形例を示す模式斜視図である。
【図28】図28は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための平面図である。
【図29】図29は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための斜視図である。
【図30】図30は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための平面図である。
【図31】図31は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための斜視図である。
【図32】図32は本発明に使用する拡張具を鉄骨に設置した状態を説明するための模式斜視図である。
【図33】図33は本発明に使用する拡張具を鉄骨に設置した状態を説明するための模式斜視図である。
【図34】図34は本発明に使用する拡張具の変形例を説明するための平面図である。
【図35】図35は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための平面図である。
【図36】図36は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための斜視図である。
【図37】図37は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための平面図である。
【図38】図38は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための斜視図である。
【図39】図39は本発明の実施例1に係る鉄骨被覆構造を説明するための模式正面図である。
【図40】図40は比較例2に係る鉄骨被覆構造を説明するための模式正面図である。
【図41】図41は比較例3に係る鉄骨被覆構造を説明するための模式正面図である。
【図42】図42は比較例4に係る鉄骨被覆構造を説明するための模式正面図である。
【図43】図43は比較例5に係る鉄骨被覆構造を説明するための模式正面図である。
【図44】図44は従来の鉄骨被覆構造に使用する拡張具を説明するための模式斜視図である。
【図45】図45は従来の鉄骨被覆構造を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に図面を参照しつつ、第一の実施形態である、本発明に係る鉄骨被覆構造500について説明する。
図1は、本発明に係る鉄骨被覆構造500の実施形態を説明するための模式断面図である。
図1に例示された鉄骨1は、その断面がH字状の構造を有するものであり、2本のフランジ2、3と1本のウェブ4とを備えるものである。前記2本のフランジ2、3のうち、上フランジ2と下フランジ3とは平行に対向していて、上フランジ2および下フランジ3の中央部に前記ウェブ4の両端が接続されている。
この鉄骨1は公知であり、市販品等を適宜選択して使用することができる。
【0031】
ここで前記鉄骨1は建物の床や天井等の構造材5を支える梁としての機能を有するものであり、前記構造材5と直接または金属接続部材等を介してボルト、溶接等の固定手段により固定されている(図示せず)。
図1では前記鉄骨1が梁等として、水平方向に設置された場合について説明しているが、前記鉄骨1を柱等として垂直方向に設置した場合も同様に本発明の鉄骨被覆構造を形成することが可能である。なお水平方向とは、地面を基準として地面に平行な面上の方向をいう。また垂直方向とは地面を基準とした方向をいう。
【0032】
前記下フランジ3の両端には拡張具6、6が設置されている。前記拡張具6、6はそれぞれ前記下フランジ3の端部の外形に略合致する設置溝を有していて、その設置溝に前記下フランジ3を挿入することにより、前記下フランジ3の両端に拡張具6、6を設置することができる。
前記拡張具6、6はそれぞれ前記下フランジ3の両端から、前記ウエブ4に対して垂直方向および水平方向に外部に突き出して設置されている。
ここで前記下フランジ3から外部に突き出すとは、前記下フランジ3の両端を基準として、鉄骨1の外部へ拡張部分を有することを意味する。
【0033】
図2は本発明に係る鉄骨被覆構造500のうち、図1に示す鉄骨および拡張具の部分を示す模式部分断面図である。
前記鉄骨1のうち、一点破線a‐aおよびb‐bにより分けられる範囲のうち、参照符号A〜Hにより示される範囲が鉄骨1の外部を示す。
図2に示される様に、前記拡張具6、6はそれぞれ、参照符号A、BおよびC、ならびに参照符号C、DおよびEに拡張部分を有する。
本発明に使用する拡張具は、図2の場合で説明すると、参照符号A、BおよびCのうち少なくとも一つの範囲に拡張部分を有するものであり、また参照符号C、DおよびEのうち少なくとも一つの範囲に拡張部分を有するものである。
本発明に使用する拡張具は、参照符号AおよびEに拡張部分を有するものであれば好ましい。
【0034】
再度図1に戻って説明する。
前記鉄骨1および拡張具6、6は熱膨張性耐火シート7により覆われている。
前記熱膨張性耐火シート7を、ビス、タッカー、溶接ピン、ボルト、タッピング螺子等の固定手段により前記鉄骨1に対して固定することができる。
図1の場合では溶接ピン8により、前記熱膨張性耐火シート7が前記鉄骨1に固定されている。
【0035】
必要に応じて前記熱膨張性耐火シート7の端面を、床や天井等の構造材5にボルト、ビス、タッカー、タッピングねじ等の固定手段により固定することにより本発明の鉄骨被覆構造が得られる。
前記構造材5に対して前記熱膨張性耐火シート7を固定する際には、例えば前記構造材5に予め埋込ピン等の突起物を設置しておき、外側から押して前記熱膨張性耐火シート7に前記突起物を貫通させ、前記突起物の貫通部分を曲げる等の固定手段等によっても固定することが可能である。
【0036】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火シートについて説明する。
図1に例示される本発明に使用する熱膨張性耐火シート7は、前記熱膨張性耐火シート7を鉄骨1の長手方向に固定する結合部9a、9bを有する。
前記結合部9a、9bを前記熱膨張性耐火シート7に設けることにより、本発明の鉄骨被覆構造が火災等の熱にさらされた場合に、前記熱膨張性耐火シート7に含まれる熱膨張性樹脂組成物が溶融して鉄骨1の下フランジ3側へ移動することを防止することができる。
【0037】
この様に前記熱膨張性耐火シート7に結合部9a、9bを設けることにより、前記熱膨張性耐火シート7が火災等の熱により加熱されて生じる熱膨張残渣の形状に偏りが生じたり、前記熱膨張性耐火シートの内部に空洞が生じたりすることを軽減することができる。
【0038】
加えて熱膨張性耐火シート7は、前記熱膨張性耐火シート7を鉄骨1の長手方向に固定する結合部9cを有する。
前記鉄骨1の下フランジ3の下に前記結合部9cを設けることにより、前記熱膨張性耐火シート7が火災等の熱により加熱されて生じる熱膨張残渣が下に垂れて、熱膨張残渣による断熱効果に偏りが生じることを防止することができる。
【0039】
図3は本発明に使用する熱膨張性耐火シートについて説明するための模式部分拡大断面図である。
図1に示される熱膨張性耐火シート7のうち、破線の円に示された部分を拡大した断面図が図3である。
図3に示される様に、本発明に使用する熱膨張性耐火シート7は、不燃材層20、熱膨張性樹脂組成物層21、不燃材層22が積層されて形成されている。
前記不燃材層20は、図1において熱膨張性耐火シート7の表面、すなわち前記鉄骨1とは反対側に配置されている。
前記不燃材層21は、図1において熱膨張性耐火シート7の裏面、すなわち前記鉄骨1側に配置されている。
また前記熱膨張性樹脂組成物層21は、前記不燃材層20および21の間に挟まれている。
【0040】
本発明に使用する熱膨張性耐火シート7の構成は図3に示されるものに限定されることはなく、複数の不燃材層、熱膨張性樹脂組成物層等を含む構成であってもよい。
前記熱膨張性耐火シート7は、火災等の熱にさらされた場合に前記熱膨張性樹脂組成物層が膨張して形成される熱膨張残渣が、表面の不燃材層と裏面の不燃材層とに支持される構造であれば特に限定はない。
前記熱膨張性耐火シート7の構成の具体例を挙げるとすれば、例えば、
(1)不燃材層−熱膨張性樹脂組成物層−不燃材層
(2)不燃材層−不燃材層−熱膨張性樹脂組成物層−不燃材層−不燃材層
(3)不燃材層−熱膨張性樹脂組成物層−不燃材層−熱膨張性樹脂組成物層−不燃材層−熱膨張性樹脂組成物層−不燃材層
等の構成が挙げられる。
前記不燃材層および熱膨張性樹脂組成物層はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0041】
図4は本発明に使用する熱膨張性耐火シート7に設けられる結合部について説明するための模式断面図である。
図1は鉄骨1を切断した断面を示す断面図であったが、図4は鉄骨1のウエブ4(図4ではウエブ4は熱膨張性耐火シート7により覆われているため図示されていない)と平行な面により切断した断面を示す断面図である。
図4に示される様に、結合部9a、9bがそれぞれ間隔をおいて鉄骨1の長手方向に設けられている。
前記結合部9a、9bにより、前記表面の不燃材層20と裏面の不燃材層22とが固定されている(図1参照)。
また複数の結合部9aが鉄骨1の長手方向に配置されて、結合部列900aを形成している。同様に複数の結合部9bが鉄骨1の長手方向に配置されて、結合部列900bを形成している。
【0042】
第一の実施形態に使用した結合部9a、9bは不燃材により前記表面の不燃材層20と裏面の不燃材層21とを綴じるものであるが、前記不燃材としては、例えば、ステープラ、タッカー等を挙げることができる。
例えば、コの字形状の鋼製の線材を前記熱膨張性耐火シート7の表面に打ち込み、前記コの字形状の二本の線材部分を内側に折り曲げることにより、前記表面の不燃材層20と裏面の不燃材層21とを綴じることができる。
【0043】
鉄骨1の長手方向を基準とする前記結合部9a、9bの長さは、それぞれ10〜100mmの範囲であれば前記熱膨張性耐火シート7を固定し易いことから好ましい。
また前記結合部9a‐9a、9b‐9bの鉄骨1の長手方向の中心間隔は、それぞれ5〜250mmの範囲であれば好ましく、10〜200mmの範囲であればより好ましく、50〜150mmの範囲であればさらに好ましい。
前記結合部9a‐9a、9b−9bの鉄骨1の長手方向の中心間隔がそれぞれ5mm以上であれば、本発明に係る鉄骨被覆構造500を比較的容易に施工できる。
また前記結合部9a−9a、9b−9bの鉄骨1の長手方向の中心間隔がそれぞれ250mm以下であれば、前記鉄骨被覆構造500が火災等の熱にさらされた場合に、前記熱膨張性耐火シート7が火災等の熱により加熱されて生じる熱膨張残渣の形状に偏りが生じたり、前記熱膨張性耐火シートの内部に空洞が生じたりすることを軽減することができる。
【0044】
前記熱膨張性耐火シート7に含まれる表面の不燃材層20と裏面の不燃材層22とを鉄骨1の長手方向に固定する複数の結合部9aにより、鉄骨1の長手方向に形成される結合部列900aと、
前記熱膨張性耐火シート7に含まれる表面の不燃材層20と裏面の不燃材層22とを鉄骨1の長手方向に固定する複数の結合部9bにより、鉄骨1の長手方向に形成される結合部列900bとの距離は、
鉄骨1の長手方向に対する垂直方向を基準として、50〜500mmの範囲であることが好ましく、100〜400mmの範囲であればより好ましく、150〜350mmの範囲であればさらに好ましい。
前記範囲が50mm以上の場合は前記熱膨張性耐火シート7の円滑な膨張が促進される。また前記範囲が500mm以下であれば、前記熱膨張性耐火シート7が火災等の熱により加熱されて生じる熱膨張残渣の形状に偏りが生じたり、前記熱膨張性耐火シートの内部に空洞が生じたりすることを軽減することができる。
なお、前記熱膨張性耐火シート7に対して、前記結合部列900aおよび前記結合部列900bに加えて結合部列を追加して設ける場合には、追加される結合部列は、前記結合部列900aと平行であることが好ましく、前記結合部列900aおよび前記結合部列900bと同じ間隔をおいて設けることが好ましい。
【0045】
図4では250mm毎に前記熱膨張性耐火シート7が鉄骨1に対して溶接ピン8により固定されている。
また前記熱膨張性耐火シート7を二枚以上使用する場合には、図4に示される様に、前記熱膨張性耐火シート7、7同士の境界部分を重ね合わせて固定することが好ましい。
【0046】
また図4の場合は前記熱膨張性耐火シート7、7が100mmの幅に重ねられている。
図4に示される様に、鉄骨1に対する火災等の熱の影響を排除するために本発明の鉄骨構造は、前記熱膨張性耐火シート7により前記鉄骨1および拡張具6が隙間なく覆われていることが好ましい。
【0047】
次に熱膨張性耐火シートに設けられる結合部について詳細に説明する。
図5は熱膨張性耐火シートに設けられる結合部の変形例を例示した模式断面図である。
図4の場合は前記結合部9a、9bは鉄骨1の長手方向に間隔をおいて設置されていた。これに対して図5に示す結合部91a、91bは鉄骨1の長手方向に連続して設けられている。
それ以外は図4の場合と同様である。
【0048】
図6および図7は熱膨張性耐火シートに設けられる結合部列の変形例を例示した模式断面図である。
本発明に使用する熱膨張性耐火シートに設けられる結合部列は、鉄骨の長手方向に設けられていれば、必ずしも同一直線上になくてもよい。
図6に示す様に、結合部列92a、92bはそれぞれ一定幅を持って上下に配置されて、鉄骨の長手方向に対して垂直方向に隙間なく覆い尽くす様に設置されてもよい。
また図7に示す様に、結合部93a、93bはそれぞれ一定幅を持って上下に配置されて、鉄骨の長手方向に対して垂直方向に隙間が生じる様に設置されてもよい。
【0049】
また本発明に使用する熱膨張性耐火シートに設けられる結合部の具体例としては、例えば、不燃材により前記熱膨張性耐火シートを綴じた構造、不燃糸により前記熱膨張性耐火シートを縫合した構造、圧着材により前記熱膨張性耐火シートを圧着した構造、熱により前記熱膨張性耐火シートを融着した構造、接着剤により接着した構造等を挙げることができる。
【0050】
前記結合部に使用する不燃材としては、例えば、金属材料、無機材料等を挙げることができる。
前記金属材料としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、二以上の金属を含む合金等を挙げることができる。
また無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック等を挙げることができる。
【0051】
図8は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための平面図である。
図8に例示されるステープラの針30を用いて熱膨張性耐火シート7に結合部を形成することができる。前記ステープラの針30は本体部31と固定部32とを有している。
図9は前記不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面である。
図9に例示される様に、前記ステープラの針30の固定部32を内側に折り返すことにより、前記熱膨張性耐火シートに結合部を形成することができる。
【0052】
図10は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための断面図である。
図10に例示される不燃材はボタン型の結合部を形成するものである。前記不燃材は止め具33として機能するものであり、球を平面により切断した形状の止め具本体34と連結部35とを有する。
前記止め具33を熱膨張性耐火シートに設置する際には、前記熱膨張性耐火シートに切り込みを設けておき、前記切り込みに前記止め具本体34を通せばよい。
図11は前記不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面図である。
図11に例示される様に、熱膨張性耐火シートの切り込みに前記止め具33の止め具本体34を入れることにより、前記熱膨張性耐火シートに結合部を形成することができる。
【0053】
図12は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための平面図である。
図12に例示される不燃材は螺子型の結合部を形成するものである。
図13は前記不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面図である。
前記熱膨張性耐火シートに孔を設けておき、この孔に螺子本体37を通し、ナット38により前記螺子本体37を固定することにより前記熱膨張性耐火シートに螺子36による結合部を形成することができる。
なお螺子36を使用する際にはワッシャー等の環状部材を併用することもできる。
【0054】
次に前記結合部に使用する不燃糸としては、例えば、金属材料、無機材料等を成形した糸等を挙げることができる。
前記不燃糸の具体例としては、例えば、鋼線、銅線、ロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等を挙げることができる。
【0055】
前記不燃糸を使用して熱膨張性耐火シートを縫合することによっても前記熱膨張性耐火シートに結合部を形成することができる。
【0056】
次に前記結合部に使用する圧着材としては、例えば、金属材料、無機材料等を成形したものを挙げることができる。
使用する金属材料、無機材料等については先の不燃材の場合で例示したものと同様である。
【0057】
図14は熱膨張性耐火シートに結合部を形成するための不燃材の形状を説明するための正面図である。
図14に例示される不燃材は圧着型の結合部を形成するものである。
前記圧着材40は、例えば、突出部43、44を設けた部材41と、受部45を設けた部材42とを組み合わせて使用される。突出部43、44のうち、突出部43は金属の円柱であり、突出部44は金属薄板により形成されていて、複数の切り込みが設けられている。前記突出部44を前記受部42の内部46、47に挿入して押圧すると、前記突出部44が変形して幅広の内部47で広がる。
この様に、前記突出部44を受部45の内部47で変形させることにより両者を固定することができる。
【0058】
図15は前記不燃材を用いて熱膨張性耐火シートに結合部を形成した構造を説明するための模式断面である。
前記熱膨張性耐火シートに孔を設けておき、この孔に突出部43、44を通し、受部45の内部46、47で前記突出部44を変形させて固定することにより前記熱膨張性耐火シートに結合部を形成することができる。
【0059】
図16は図14に例示した圧着型の不燃材の変形例を例示した模式正面図である。
前記圧着材48は、例えば、突出部43と爪部49を設けた部材41と、受部45を設けた部材42とを組み合わせて使用される。部材41の突出部43と爪部49を前記受部45の内部46、47に挿入すると、前記受部45の内部47に前記爪部49が掛かる。この様にして両者を固定することができる。
前記圧着材48を使用することにより、先の図15の場合と同様に前記熱膨張性耐火シートに結合部を形成することができる。
【0060】
次に熱膨張性耐火シートの結合部は、前記熱膨張性耐火シートを水平方向に熱金型等を利用して熱により融着することによっても形成することができる。
例えば不燃材層に熱可塑性樹脂層を設けておくことにより、前記熱可塑性樹脂層を熱により融かして熱膨張性耐火シートの内部を融着することができる。
【0061】
また接着剤によっても熱膨張性耐火シートに含まれる各層同士を接着することもできる。
【0062】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火シートの組成について説明する。
本発明に使用する熱膨張性耐火シートは、エポキシ樹脂やゴム等の樹脂成分、リン化合物、熱膨張性黒鉛、無機充填材等を含有する熱膨張性樹脂組成物をシート状に成形してなるものである。
前記熱膨張性耐火シートは、ガラスクロス等の無機繊維シート、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔等の一種もしくは二種以上を積層したものを使用することができる。
【0063】
前記無機繊維シートに使用する無機繊維としては、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール、石膏繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、スラグ繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
前記無機繊維層は、前記無機繊維を用いた無機繊維クロスを使用することが好ましい。
また前記無機繊維シートに使用する無機繊維は、金属箔をラミネートしたものを使用することが好ましい。
金属箔ラミネート無機繊維の具体例としては、例えば、アルミニウム箔ラミネートガラスクロス、銅箔ラミネートガラスクロス等がさらに好ましい。
【0064】
前記熱膨張性耐火シートは、例えば金属箔層、熱膨張性樹脂層および無機繊維層等を積層すること等により得ることができる。これらの積層には溶融同時押出、熱プレス等の他、接着剤により各層を貼着する手段等を挙げることができる。本発明に使用する熱膨張性耐火シートは金属箔層が最外面にあることが好ましい。
【0065】
前記前記熱膨張性耐火シートは市販品を使用することができ、例えば積水化学工業社製フィブロック(登録商標。エポキシ樹脂やゴムを樹脂成分とし、リン化合物、熱膨張性黒鉛および無機充填材等を含む熱膨張性樹脂組成物のシート状成形物)等を入手して使用することが可能である。
なお前記熱膨張性黒鉛は、中和された熱膨張性黒鉛を使用することが好ましい。
【0066】
前記熱膨張性耐火シートは火災等の熱により膨張し、膨張残渣を形成する。この膨張残渣が前記鉄骨に対する火災等の炎を遮断する。このため火災等が発生した場合であっても前記鉄骨の強度が低下すること等を防止することができる。
【0067】
また本発明においては、前記鉄骨および拡張具を鉄骨被覆材により覆ってから熱膨張性耐火シートを重ねて覆うことができ、また前記熱膨張性耐火シート7の上から鉄骨被覆材により重ねて覆うこともできる。
【0068】
前記鉄骨用被覆材としては、例えば、ロックウール、グラスウール、セラミックウール等の無機繊維からなる無機繊維シート、
アルミ箔、鉄箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、銅箔、クラッド箔、鉛アンチ箔等の金属や、アルミニウム薄板、銅薄板、ステンレス薄板、錫薄板、鉛薄板、錫鉛合金薄板、クラッド薄板、鉛アンチ薄板等の金属薄板、アルミガラスクロス、合成樹脂に対
し、アルミニウム、マグネシウム等の金属粉を分散させたもの等からなる金属シート等を挙げることができる。
これらの前記無機繊維シート、前記金属シート等の一種もしくは二種以上を組み合わせて使用するか、あるいは積層させて使用することができる。
【0069】
次に本発明に使用する拡張具について説明する。
先の図1に例示される様に、本発明に使用する拡張具6は、火災等により加熱された場合に変形するものが用いられる。
前記拡張具6の変形は、体積の減少を伴うものが好ましく、前記熱膨張性耐火シート7が膨張を開始する前後の温度において前記6の変形や体積の減少が伴う変形が始まることがより好ましく、前記熱膨張性耐火シート7の熱膨張開始温度よりも低い温度において前記拡張具6の変形や体積の減少を伴う変形が始まることがさらに好ましい。
前記熱膨張性耐火シート7の熱膨張開始温度よりも低い温度において変形する拡張具を使用することにより、前記熱膨張性耐火シートが膨張する前に前記拡張具が前記熱膨張性耐火シートを保持すると共に前記熱膨張性耐火シートの位置が変動することを防止することができる。
【0070】
通常本発明に使用する熱膨張性耐火シート7は80〜300℃の温度範囲により膨張を開始するが、本発明に使用する拡張具6は前記熱膨張性耐火シートの膨張開始温度に合わせて、その熱膨張を妨げない温度範囲において変形するものを適宜選択されることが好ましい。
【0071】
図1に示される鉄骨被覆構造が火災等の熱にさらされた場合、前記鉄骨1および拡張具6,6を覆う前記熱膨張性耐火シート7が膨張すると共に前記拡張具6,6は、使用する熱膨張性耐火シートの熱膨張開始温度の前後の温度において変形を開始する。
前記拡張具6,6は60〜550℃の温度範囲において収縮、溶融、流出、気化、分解、焼失等により変形しながらその体積が減少するものを使用することが好ましく、前記熱膨張性耐火シート7の熱膨張開始温度以下の温度で変形しながらその体積が減少するものであればより好ましい。
火災等の熱により前記拡張具6,6が変形し、前記拡張具6,6が損なわれた場合であっても前記熱膨張性耐火シート7が膨張し、前記熱膨張性耐火シート7による膨張残渣が前記拡張具6,6の存在していた空間を含めて、前記鉄骨1の下ウエブ3と前記熱膨張性耐火シート7との隙間に配置される。
これにより前記鉄骨1の周囲は、前記拡張具6,6を使用しなかった場合と比較して前記熱膨張性耐火シートの膨張残渣により比較的均一に取り囲まれる。
前記鉄骨1の周囲には前記膨張残渣が極端に薄くなった部分が存在しないため、火災等の熱から鉄骨1を有効に保護することができる。
【0072】
次に本発明に使用する拡張具の詳細について説明する。
図17〜図20は本発明に使用する拡張具の形状を説明するための斜視図である。
図17および図18に例示される様に、本発明に使用する拡張具の形状としては、例えば球、立方体、直方体等の他、円柱、四角柱、多角柱等の形状が挙げられる。
図17および図18に例示される拡張具はそれぞれ本発明に使用する鉄骨のフランジの端部の外形に略合致する設置溝10を有する。
なお本発明においては、長手方向に200mm未満の長さのものを直方体と表現し、長手方向に200mm以上の長さのものを四角柱、多角柱等と表現する。
【0073】
また図19に例示される様に、前記設置溝は段差10aを備えるものであってもよい。
この段差10aを前記鉄骨1に設置する際は耐熱粘着テープ等により、段差10aを、前記鉄骨1のフランジ3の両端部に貼着することにより設置することができる。
【0074】
図20に例示される拡張具は両端に段差10b、10cが設けられていて、これらをそれぞれ鉄骨1の上フランジ2の端部と下フランジ3の端部にはめ合わせることにより鉄骨1に設置することができる。
【0075】
また図21に例示される様に、本発明に使用する拡張具は、鉄骨のフランジに挿入するためのフランジ接合部20、20と、前記フランジ接合部20、20同士を連結する連結部材21を有するものであってもよい。
【0076】
本発明に使用する拡張具は設置溝を有するものであるが、前記拡張具として鉄骨のフランジの厚みよりも前記設置溝の開口部の大きさが狭い設置溝を有するものを採用することができる。
前記拡張具の設置溝の一部または全部を変形させることにより、拡張具の設置溝を本発明に使用する鉄骨のフランジの端部に挿入することが可能である。
具体的には、設置溝を広げて鉄骨のフランジ端部に挿入することにより、フランジの端部に拡張具を設置することができる。
【0077】
ここで鉄骨のフランジの厚みと前記設置溝の開口部の大きさとの関係を説明する。
前記設置溝の開口部の大きさは、鉄骨のフランジの厚みTmmを基準として、前記設置溝の開口部の大きさが、前記鉄骨のフランジの厚み方向に最も狭い部分を基準として(T−1)〜(T−30)mmの範囲にあることが好ましい。
前記設置溝の開口部の大きさは、(T−5)〜(T−20)mmの範囲であればより好ましく、(T−5)〜(T−10)mmの範囲であればさらに好ましい。
【0078】
拡張具の設置溝の一部または全部を変形させる際には、前記設置溝の開口部を広げるとよい。
拡張具の設置溝10を変形させることにより生じる、変形された拡張具の設置溝10が変形前の形状に戻るための応力により、前記拡張部の設置溝10と前記フランジ端部とを固定することができる。
前記応力により、前記拡張部の設置溝10と前記フランジ端部とを固定することができる点は、以下の拡張具の場合も同様である。
【0079】
図22、図23、図25〜図28は、図17および図18に記載された拡張具の変形例を例示した斜視図である。また図24は図17および図18に記載された拡張具の変形例を例示した断面図である。
図22(a')に例示される球の拡張具は設置溝10に加え、突起部70を備える。
図22(a')に例示される設置溝10は、前記拡張具の設置溝10の一方の内面60および他方の内面61ならびに奥の内面62により形成されている。また前記拡張具の設置溝10の一方の内面60および他方の内面61は互いに対向する関係にある。
前記球の拡張具の設置溝10の内面60には突起部70が設けられている。前記突起部70の形状は先端が球面状の略円錐形状である。
本発明に使用する前記突起部の形状に限定はなく、目的に合わせて適宜選択して採用することができる。
【0080】
前記球の拡張具の設置溝10の内面61と前記突起部70の先端との距離は、本発明に使用する鉄骨のフランジ端部の厚みよりも小さい。
このため前記球の拡張具の設置溝10を本発明に使用する鉄骨のフランジ端部に設置する際には、前記球の拡張具の設置溝10を広げてから、前記球の拡張具の設置溝10を鉄骨のフランジの端部に挿入する。
前記立方体の拡張具の設置溝10を変形させることにより生じる、変形された拡張具の設置溝10が変形前の形状に戻るための応力により、前記拡張部の設置溝10と前記フランジ端部とを固定することができる。
【0081】
図22(b')に例示される立方体の拡張具は設置溝10に加え、突起部71を備える。
図22(b')に例示される設置溝10は、図22(a')の場合と同様に前記拡張具の設置溝の一方の内面60および他方の内面61ならびに奥の内面62により形成されている。
前記立方体の拡張具の設置溝10の内面60および31にはそれぞれ突起部71,71が設けられている。前記突起部71,71の形状は直方体である。
【0082】
前記立方体の拡張具の設置溝10の内面60に設置された前記突起部71と、前記立方体の拡張具の設置溝10の内面61に設置された前記突起部71との距離は、本発明に使用する鉄骨のフランジ端部の厚みよりも小さい。
このため前記立方体の拡張具の設置溝10を本発明に使用する鉄骨のフランジ端部に設置する際には、前記立方体の拡張具の設置溝10を広げてから、前記立方体の拡張具の設置溝10を鉄骨のフランジの端部にはめ合わせる。
前記立方体の拡張具の設置溝10を変形させることにより生じる、変形された拡張具の設置溝10が変形前の形状に戻るための応力により、先の球の拡張具の場合と同様に前記拡張部の設置溝10と前記フランジ端部とを固定することができる。
【0083】
図22(c')に例示される直方体の拡張具は設置溝10を備える。
図22(c')に例示される直方体の拡張具は、先の図22(b')に例示した立方体の拡張具の場合と同様、前記立方体の拡張具の設置溝10の内面60に設置された前記突起部71と、前記立方体の拡張具の設置溝10の内面61に設置された前記突起部71とを有する。
図22(b')に例示される立方体の拡張具の場合には、前記突起部71が前記設置溝10の内部に対称的に配置されているが、図22(c')に例示される直方体の拡張具の場合には、前記突起部71は前記設置溝10の内面60と内面61にそれぞれ交互に配置されている点が異なる。
【0084】
図23(d')〜(f')に例示される柱状の拡張具は設置溝10に加え、突起部72を備える。
前記柱状の拡張具の設置溝10の内部にも突起部72,72が設置されている。前記突起部72,72間の距離は鉄骨の厚みより狭いが、前記柱状の拡張具の設置溝10を広げることにより、前柱状の拡張具の設置溝10を鉄骨のフランジの端部にはめ合わせることができる。
【0085】
図24は、本発明に使用する拡張具の設置溝に設置される突起部の変形例を示す模式断面図である。
図24(d)および(e)に例示される様に、拡張具の設置溝10の内面60、内面61および奥の内面62のうち、内面60および内面61の少なくとも一方に突起部72を設置することができる。
【0086】
また図24(f)および(g)に例示される様に、前記拡張具の設置溝10の奥の内面62から前記設置溝10の開口部方向に向かって、前記設置溝10の開口部を狭くすることにより、拡張具の設置溝10の内面60および内面61に、図24(d)および(e)に例示される突起部72と同様の機能を与えることができる。
図24(d)および(e)に例示される突起部72は段階的に前記設置溝10の開口部方向に向かって段階的に隆起するのに対し、図24(f)および(g)に例示される突起部73は連続的に前記設置溝10の開口部方向に向かって隆起している。
【0087】
また図24(h)および(i)に例示される様に、拡張具の設置溝に設置される突起部として、拡張具の設置溝10の内面60および内面61の少なくとも一方の面に平面部分を有する突起部74、曲面部分を有する突起部75を設けることもできる。
【0088】
図25〜27は、本発明に使用する拡張具の設置溝に設置される突起部の変形例を示す模式斜視図である。
先に説明した図23の柱状の拡張具の場合は、突起部72が前記柱状の拡張具の長手方向に沿って設置されていたが、図25に例示する柱状の拡張具の場合は、突起部76が間隔をおいて、前記柱状の拡張具の長手方向に対して垂直方向に設置されている点が異なる。
なお図25に例示した柱状の拡張具の場合には前記突起部76は、設置溝10の内面60に設けられているが、設置溝10の内面61にも前記突起部76を設置することができる。
【0089】
また図26に例示される様に、本発明に使用する拡張具は、互いに対向する、前記拡張具の設置溝10の一方の内面60と他方の内面61との少なくとも一方の面に折れ曲がり部を設置することができる。
前記折れ曲がり部は、谷部77と山部78が繰り返す形状により形成されている。なお、前記折れ曲がり部は平面を含む形状であってもよい。
【0090】
また図27に例示される様に、本発明に使用する拡張具は、互いに対向する、前記拡張具の設置溝10の一方の内面60と他方の内面61との少なくとも一方の面に波形部を設置することができる。
なお、前記波形部は平面を含む形状であってもよい。
【0091】
図22〜27に例示した拡張具の設置溝10を広げることにより、前記拡張具10を鉄骨のフランジの端部にはめ合わせることができる。
【0092】
図28および図30は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための平面図であり、図29および図31は本発明に使用する拡張具の一実施形態を説明するための斜視図である。
図28および29に例示される様に、拡張具600は本体板610と、前記本体板610の両端に設置された相対する二つの側面板620、630とを有する。
前記側面620、630はそれぞれ前記本体板610に対して屈曲可能に接続されている。
前記側面620、630はそれぞれ支持部640、650ならびにフランジ保持部660、670を有する。
前記本体板610、前記側面板620の支持部640および前記側面板620のフランジ保持部660により囲まれる切欠き680、ならびに前記本体板610、前記側面板630の支持部650および前記側面板630のフランジ保持部670により囲まれる切欠き690が、鉄骨のフランジに設置するための設置溝を形成する。
【0093】
また前記側面板620の支持部640と前記側面板620のフランジ保持部660との接合部に、前記側面板620の支持部640に対して前記側面板620のフランジ保持部660を傾斜可能に連結する切込み700ならびに前記側面板630の支持部650と前記側面板630のフランジ保持部670との接合部に、前記側面板630の支持部650に対して前記側面板630のフランジ保持部670を傾斜可能に連結する切込み710が形成されている。
【0094】
図30および図31に示される拡張具601は図28および図29に示される拡張具600の変形例である。
前記拡張具601は、鉄骨に対する設置作業を容易にするため側面板621、631の端部が丸く成形されている。
【0095】
図32および図33はそれぞれ本発明に使用する拡張具を鉄骨に設置した状態を説明するための模式斜視図である。
図32に例示される様に、前記拡張具600には前記鉄骨1のフランジ3の端部の外形に合致する設置溝を有することから、前記設置溝を前記鉄骨1のフランジ3の端部に挿入することにより、前記鉄骨1に対して前記拡張具600を設置することができる。
【0096】
また図33に例示される様に、前記側面板620のフランジ保持部660が前記側面板620の支持部640に対して傾斜可能に連結されていることから、前記側面板620のフランジ保持部660を前記側面板620の支持部640に対して傾斜させることにより、前記設置溝の幅が前記鉄骨1のフランジ3の端部の厚みより狭い場合であっても、前記拡張具600を前記鉄骨1のフランジ3の端部に設置することができる。
【0097】
同様に前記側面板630のフランジ保持部670が前記側面板630の支持部650に対して傾斜可能に連結されていることから、前記側面板630のフランジ保持部670を前記側面板630の支持部650に対して傾斜させることにより、前記設置溝の幅が前記鉄骨1のフランジ3の端部の厚みより狭い場合であっても、前記拡張具600を前記鉄骨1のフランジ3の端部に設置することができる。
【0098】
図34は本発明に使用する拡張具の変形例を説明するための平面図である。
図34に例示される拡張具604は、前記拡張具600の変形例を例示したものである。
拡張具604は本体板614と、前記本体板614の両端に設置された対向する二つの側面板624,634とを有する。
前記側面624,634はそれぞれ支持部644,654ならびにフランジ保持部664,674を有する。
前記本体板614、前記側面板624の支持部644および前記側面板624のフランジ保持部664により囲まれる切欠き684、ならびに前記本体板614、前記側面板634の支持部654および前記側面板634のフランジ保持部674により囲まれる切欠き694が、鉄骨のフランジに設置するための設置溝を形成する。
【0099】
またフランジ保持部664aに対してフランジ保持部664bを傾斜可能に連結する切込み704、およびフランジ保持部674aに対してフランジ保持部674bを傾斜可能に連結する切込み714が形成されている。
拡張具604に鉄骨のフランジ端部を挿入した場合には、フランジ保持部664aに対してフランジ保持部664bが変形する。
またフランジ保持部674aに対してフランジ保持部674bが変形する。
変形したフランジ部664bおよびフランジ部674bが元の形状に戻る際の応力により、前記拡張具604を鉄骨のフランジ端部に固定することができる。
【0100】
図35および図36に示される拡張具602は図28および図29に示される拡張具600の変形例である。
図35および図36に例示される様に、拡張具602は本体板612と、前記本体板612の両端に設置された対向する二つの側面板622,632とを有する。
前記側面622,632はそれぞれ前記本体板612に対して屈曲可能に接続されている。
前記側面622,632はそれぞれ支持部642,652ならびにフランジ保持部662,672を有する。
前記本体板612、前記側面板622の支持部642および前記側面板622のフランジ保持部662により囲まれる切欠き682、ならびに前記本体板612、前記側面板632の支持部652および前記側面板632のフランジ保持部672により囲まれる切欠き692が、鉄骨のフランジに設置するための設置溝を形成する。
【0101】
図36に例示される様に、前記切欠き692により形成される設置溝は、内面60、内面61および奥の内面62により形成される。なお設置溝の内面61は本体板612により形成され、設置溝の内面61および奥の内面62はそれぞれ側面板632の端面により形成される。
前記拡張具の設置溝の奥の内面62から前記設置溝の開口部方向に向かって、前記設置溝の開口部が狭くなっている。
拡張具602を鉄骨のフランジ端部にはめ合わせた場合には、本体板612および側面板622,632が変形する。
変形した本体板612および側面板622,632が元の形状に戻る際の応力により、前記拡張具602を鉄骨のフランジ端部に固定することができる。
【0102】
図37および図38に示される拡張具603は図35および図36に示される拡張具602の変形例である。
前記拡張具603は、側面板623,633と本体板613により形成される設置溝の内面60に突起部が設置されている。
この突起部を設置することにより、切り欠き683,693により形成される設置溝の厚みを鉄骨のフランジ端部より狭くすることができる。
側面板623,633と本体板613とを変形させることにより、拡張具603を鉄骨のフランジ端部にはめ合わせることができる。
【0103】
次に本発明に使用する拡張具の素材について説明する。
本発明に使用する拡張具は、先に説明した通り、火災等の熱により加熱された場合に変形するものである。
【0104】
前記拡張具の素材としては、例えば、紙材、木材、天然樹脂、合成樹脂等の一種もしくは二種以上を含むものが挙げられる。
【0105】
前記紙材としては、例えば、木材等の植物から取り出した繊維状物質や化学繊維を水等の分散媒中に分散させ、これを濾過して均一層を形成してから乾燥させた紙等が挙げられる。
前記紙に対して、塗料、撥水剤等を塗布して得られる加工紙、波状の紙をライナーと呼ばれる平面の紙により挟んで接着した段ボール等が挙げられる。
【0106】
前記木材としては、例えば、天然木材から得られる木素材に限られず、木素材を含む集成木材、積層木材、積層木板等が挙げられる。
【0107】
前記天然樹脂としては、例えば、セルロース誘導体、ゼラチン、アルギン酸塩、キトサン、プルラン、ペクチン、カラゲナン、タンパク質、タンニン、リグニン、ロジン酸等を主成分とする高分子、ろう、ワックス、天然ゴム等が挙げられる。
【0108】
前記合成樹脂としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1、2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリイソブチレンゴム、塩化ブチルゴム等の合成ゴム、
ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、
ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0109】
前記拡張具の素材は、火災等の熱に本発明の鉄骨被覆構造がさらされた場合に、本発明に使用する熱膨張性耐火シートの膨張を阻害しない範囲で適宜選択することが好ましい。
【0110】
次に本発明について図面に基づき実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0111】
図39は本発明の実施例1に係る鉄骨被覆構造510を説明するための模式正面図である。
実施例1に係る鉄骨被覆構造510の構造は図1に示したものと同様である。
実施例1では構造材5として、ALC板50、51が使用されている。また前記構造材5に対して鉄骨1が埋め込みボルト(図示せず)により固定されている。
実施例1に使用した拡張具600は、図33に示された拡張具と同一の形状を有していて、ポリプロピレンにより形成されている。
前記拡張具600はフランジ3に対して200〜800mm間隔に設置することが好ましく、400〜600mm間隔に設置すればさらに好ましい。
前記鉄骨1および拡張具600を覆う様に熱膨張性耐火シート70が設置されていて、長さが250mmの溶接ピン8により鉄骨1に溶接されている。
【0112】
実施例1に使用した熱膨張性耐火シート70は0.7mm厚の熱膨張性耐火材の両面を、アルミニウム箔ラミネートガラスクロスにより積層したものであり、前記アルミニウム箔ラミネートガラスクロスのアルミ箔は前記熱膨張性耐火シート70の最外面に配置されているものである。
前記熱膨張性耐火シート70は端部の20mmが前記構造材5に接している。
また前記拡張具600は前記鉄骨1のフランジ3の両端から外側へ50mm突き出して設置されていて、前記熱膨張性耐火シート70が鉄骨1のフランジ3に対して直接接触しないようにされている。
また前記鉄骨1および前記拡張具600に対する前記熱膨張性耐火シート70の覆い方は先に示した図1の場合と同様であり、250mm間隔に溶接ピン8が鉄骨1のフランジ2に溶接されている。
【0113】
前記熱膨張性耐火シート70には、前記熱膨張性耐火シート70に含まれる表面の不燃材層であるアルミニウム箔ラミネートガラスクロスと裏面の不燃材層であるアルミニウム箔ラミネートガラスクロスとを鉄骨の長手方向(すなわち図39の左右方向)に固定する結合部9aと、前記結合部9aが鉄骨の長手方向に複数集合して形成される結合部列900aに対して平行に間隔をおいて設けられた結合部9bとを有する。
また前記結合部9bが鉄骨の長手方向に複数集合して結合部列900bが形成されている。
【0114】
前記結合部9bも前記結合部9aと同様に、前記熱膨張性耐火シート70に含まれる表面の不燃材層であるアルミニウム箔ラミネートガラスクロスと裏面の不燃材層であるアルミニウム箔ラミネートガラスクロスとを固定している。
実施例1に使用した前記結合部9aと結合部9bとは、図8により説明したステープラの針30により形成されている。その構造は図1および図9の場合と同様である。
【0115】
前記図39に示される結合部9aおよび9bの幅はそれぞれ50mmである。鉄骨の長手方向(すなわち図39の左右方向)の結合部9a−9aの中心間隔および結合部9b−9bの中心間隔はそれぞれ100mmである。また垂直方向(図28の上下方向)の結合部9a−9aの中心間隔および結合部9b−9bの中心間隔はそれぞれ300mmである。
【0116】
また熱膨張性耐火シート70、70との境界部分では、熱膨張性耐火シート70、70同士が突き合わされている。図28では熱膨張性耐火シート70、70同士が突き合わされて形成された目地部71に熱膨張性耐火テープ80が貼着されている。
【0117】
前記熱膨張性耐火テープ80の構成は、先に説明した熱膨張性耐火シートの場合と同様である。実施例1に使用した前記熱膨張性耐火テープ80は、熱膨張性樹脂組成物層と不燃材層としてのアルミニウム箔ラミネートガラスクロスが積層されているものである。
前記熱膨張性樹脂組成物層には粘着成分が添加されているため、前記熱膨張性耐火テープ80を目地部71に貼着することができる。
【0118】
実施例1に示される鉄骨被覆構造に対し、ISO 834の試験方法に準拠して耐火1時間の耐火性能試験を行った。
耐火性能試験は鉄骨1のウエブの両方の側から実施した。片方にはバーナーを1個配置し、他方には同じバーナーを2個配置した。
【0119】
耐火性能試験後の熱膨張性耐火シート70の膨張残渣は、下の部分が大きく膨らむ、いわゆる垂れを起こさなかった。また水平方向の収縮を起こさなかった。さらに目地71は耐熱試験の後でも開かなかった。
さらに前記鉄骨1全体を膨張残渣が覆っていて、外部に鉄骨1が露出した部分や膨張残渣が極端に薄くなった場所は観察することができなかった。
【0120】
[比較例1]
実施例1の場合で結合部9aおよび結合部9bを含め、結合部を全く設けなかった他は実施例1の場合と全く同様の耐火性能試験を実施した。
その結果、バーナーを2個配置した側は大きく膨らみ、熱膨張性耐火シートにより形成される熱膨張残渣の形状に偏りがあった。また熱膨張残渣に垂れが生じた。
さらに熱膨張残渣の内部に空洞ができ、アルミニウム箔ラミネートガラスクロスが熱により劣化した。
【0121】
[比較例2]
図40は比較例2に係る鉄骨被覆構造520を説明するための模式正面図である。
実施例1に係る鉄骨被覆構造510に使用した前記結合部9aと結合部9bとは鉄骨の長手方向に配置されていたが、比較例2に係る鉄骨被覆構造520に使用した結合部9cと結合部9dとは鉄骨の長手方向に対し垂直方向(すなわち図40の上下方向)に配置されている点が異なる。
なお鉄骨の長手方向の結合部9a−9bの中心間隔は300mmである。また結合部9aの中心部と前記目地部71との鉄骨の長手方向の距離は300mmであり、結合部9bの中心部と、前記結合部9bに最も近いALC板51との水平方向の距離は300mmである。
また実施例1の場合と比較して、熱膨張性耐火シート70、70同士が突き合わされて形成された目地部71の位置が左側に配置されている。
それ以外は実施例1の場合と同様である。
耐火性能試験の結果、熱膨張性耐火シート70により形成される熱膨張残渣に垂れは生じなかった。
しかし前記熱膨張性耐火シート70は水平方向の収縮を起こし、目地71が開いた。
【0122】
[比較例3]
図41は比較例3に係る鉄骨被覆構造530を説明するための模式正面図である。
比較例2に係る鉄骨被覆構造520に使用した前記結合部9cと結合部9dは垂直方向に二列に配置されていたが、比較例3に係る鉄骨被覆構造520の場合は一列の結合部9eが配置されている点が異なる。
それ以外は比較例1の場合と同様である。
耐火性能試験の結果、熱膨張性耐火シート70により形成される熱膨張残渣に垂れが生じた。また前記熱膨張性耐火シート70は水平方向の収縮を起こし、目地71が開いた。
【0123】
[比較例4]
図42は比較例4に係る鉄骨被覆構造540を説明するための模式正面図である。
比較例4に係る鉄骨被覆構造540は、比較例2に係る鉄骨被覆構造520と比較して、水平方向の結合部9f−9gの中心間隔が600mmである点、結合部9fの中心部と前記目地部71との水平方向の距離が150mmである点、結合部9gの中心部と、前記結合部9gに最も近いALC板51との水平方向の距離が150mmである点以外は比較例2に係る鉄骨被覆構造520と同様である。
耐火性能試験の結果、熱膨張性耐火シート70により形成される熱膨張残渣に、比較例3よりも少ないが垂れが生じた。また前記熱膨張性耐火シート70は水平方向の収縮を起こし、目地71が開いた。
【0124】
[比較例5]
図43は比較例5に係る鉄骨被覆構造550を説明するための模式正面図である。
比較例2に係る鉄骨被覆構造520の場合には均等に縦方向に配置していた結合部9cおよび9dを、比較例5に係る鉄骨被覆構造550の場合は、縦方向に2カ所に集中して結合部9hおよび9iを配置した点が比較例2の場合と異なる。その他は比較例2の場合と同様である。
耐火性能試験の結果、熱膨張性耐火シート70により形成される熱膨張残渣に、比較例3よりも少ないが垂れが生じた。また前記熱膨張性耐火シート70は水平方向の収縮を起こし、目地71が開いた。
さらに前記熱膨張性耐火シート70に斜め方向にしわが生じた。
【符号の説明】
【0125】
1 鉄骨
2、3 フランジ
4 ウェブ
5 構造材
6、200、600〜604 拡張具
7、70 熱膨張性耐火シート
8 溶接ピン
9、9a〜9i 結合部
10 設置溝
10a、10b、10c 段差
20、22 不燃材層
21 熱膨張性樹脂組成物層
30 ステープラの針
31 本体部
32 固定部
33 止め具
34 止め具本体
35 連結部
36 螺子
37 螺子本体
38 ナット
40、48 圧着材
43、44 突出部
41、42 部材
45 受部
46、47 受部の内部
49 爪部
50、51 ALC板
60、61 内面
62 奥の内面
70〜76 突起部
77 谷部
78 山部
79 波形部
80 熱膨張性耐火テープ
100 H型鋼
202 水平部
204 L字状片
206 垂直片
210 挿入部
300 不燃材
310 石膏ボード
320 耐火被覆ユニット
500 床スラブ
510、520、530、540、550 鉄骨被覆構造
610、611 612、614 本体板
620、621、622、623、624、630、631、632、633、634 側面板
640、641、642、643、644、650、651、652、653、654 支持部
660、661、662、663、664、664a、664b、670、671、672、673、674、674a、674b フランジ保持部
680、681、682、683、684、690、691、692、693、694 切欠き
700、701、704、710、711、714 切込み
800 発泡スチロール製の拡張具
参照符号A〜H 鉄骨の外部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に対向する二本のフランジおよび前記フランジを両端に連結した一本のウェブからなる断面H字状の鉄骨と、
前記二本のフランジのうち、少なくとも一方のフランジの両端に設置された拡張具と、
前記鉄骨および前記拡張具を覆う熱膨張性耐火シートと、
を有する鉄骨被覆構造であって、
前記拡張具が、前記フランジ端部から外部に突き出して設置されると共に、前記拡張具が、加熱された場合に変形する素材により成形され、
前記熱膨張性耐火シートが、表面の不燃材層と裏面の不燃材層との間に熱膨張性樹脂組成物層を積層してなり、
前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する結合部が、前記鉄骨の長手方向に、連続して設けられているかまたは間隔をおいて設けられていることを特徴とする、鉄骨被覆構造。
【請求項2】
前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する結合部が、前記熱膨張性耐火シートに間隔をおいて二以上設けられ、
互いに隣り合う結合部の間隔が、前記鉄骨の長手方向を基準として、5〜250mmの範囲である、請求項1に記載の鉄骨被覆構造。
【請求項3】
熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する二以上の結合部を含む結合部列が、前記熱膨張性耐火シートに間隔をおいて平行に二列以上設けられ、
互いに隣り合う結合部列の間隔が、前記鉄骨の長手方向に対する垂直方向を基準として、50〜500mmの範囲である、請求項1または2に記載の鉄骨被覆構造。
【請求項4】
前記熱膨張性耐火シートに含まれる表面の不燃材層と裏面の不燃材層とを固定する結合部が、下記(1)〜(5)からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段により固定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。
(1)不燃材により綴じる手段
(2)不燃糸により縫合する手段
(3)圧着材により圧着する手段
(4)熱により融着する手段
(5)接着剤により接着する手段
【請求項5】
前記拡張具が、前記鉄骨のフランジの端部の外形に略合致する設置溝を有し、
前記設置溝に前記鉄骨のフランジを挿入することにより、前記拡張具が前記フランジから外部に突き出して設置される、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。
【請求項6】
前記拡張具が、前記フランジ端部に挿入することのできる設置溝を有し、
前記拡張具の設置溝が、前記拡張具の設置溝の一部または全部が変形された状態により、前記フランジ端部にはめ合わされている、請求項1〜5のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。
【請求項7】
前記拡張具の設置溝の一部または全部を変形させることにより、変形された拡張具の設置溝が変形前の形状に戻ろうとする応力が生じ、この応力により、前記拡張部の設置溝と前記フランジ端部とが固定されている、請求項1〜6のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。
【請求項8】
前記拡張具の設置溝が、次の(1)〜(5)からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1〜7のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。
(1)互いに対向する前記拡張具の設置溝の一方の内面(a)と他方の内面(b)の少なくとも一方の面に突起部が設けられた設置溝
(2)前記拡張具の設置溝の奥の内面(c)から前記設置溝の開口部方向に向かって、連続的または段階的に前記設置溝の開口部が狭くなる設置溝
(3)互いに対向する、前記拡張具の設置溝の一方の内面(a)と他方の内面(b)の少なくとも一方の面が、折れ曲がり部を有する設置溝
(4)互いに対向する、前記拡張具の設置溝の一方の内面(a)と他方の内面(b)の少なくとも一方の面が、波形部を有する設置溝
(5)板材を組み合わせてなる設置溝であって、前記設置溝を形成する板材の少なくとも一つが前記フランジに傾斜して接する設置溝
【請求項9】
前記拡張具が、本体板と、前記本体板の両端に設置された相対する二つの側面板とを有し、
前記側面板が、支持部とフランジ保持部とを有し、
前記鉄骨のフランジを挿入するための設置溝が、前記本体板、前記側面板の支持部および前記側面板のフランジ保持部により囲まれる切欠きにより形成され、
前記側面板の支持部と前記側面板のフランジ保持部との接合部に、前記側面板の支持部に対して前記側面板のフランジ保持部を傾斜可能に連結する切込みが形成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。
【請求項10】
前記拡張具が、紙材、木材、天然樹脂および合成樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。
【請求項11】
前記鉄骨が、建築物の仕切り部に設けられた区画に対して一方のフランジの外面を平行にして設置され、
前記拡張具が、前記一方のフランジとは反対側の他方のフランジの両端に設置され、
前記熱膨張性耐火シートが、前記鉄骨および前記拡張具を覆うと共に、前記鉄骨および前記区画の少なくとも一方に固定されている、請求項1〜10のいずれかに記載の鉄骨被覆構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2013−68023(P2013−68023A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208324(P2011−208324)
【出願日】平成23年9月25日(2011.9.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】