説明

結晶化ペンタサッカライド、これを得る方法、およびイドラパリナックスの調製のためのこの使用

本発明は、結晶形のメチルペンタサッカライドO−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノース、これを得るための方法、およびイドラパリナックスの調製のためのこの使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶形のペンタサッカライド、即ちメチルO−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノースおよびこれを得るための方法に関し、ならびにイドラパリナックスの調製のためのこの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
イドラパリナックスナトリウム、即ちメチルO−2,3,4−トリ−O−メチル−6−O−ナトリウムスルホネート−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロネートナトリウム−(1→4)−O−2,3,6−トリ−O−ナトリウムスルホナート−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロネートナトリウム−(1→4)−O−2,3,6−トリ−O−ナトリウムスルホネート−α−D−グルコピラノースは、抗血栓活性を持つペンタサッカライドである。
【0003】
脱保護ペンタサッカライドの硫酸化によるイドラパリナックスの調製は、Bioorganic & Medicinal Chemistry,1994,Vol.2,No.11,pp.1267−1280に、および欧州特許第0529715号明細書にも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0529715号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bioorganic & Medicinal Chemistry,1994,Vol.2,No.11,pp.1267−1280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ペンタサッカライドメチルO−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノースの結晶形が今や単離されている。結晶形のこの化合物は、以下で詳説するように、この生成物を特に興味深い化学収率および著しく向上した品質で得ることが可能となり、得られた粗生成物に関して純度が改善されるため、イドラパリナックスの調製に非常に有用であることが判明した。イドラパリナックスの産生における反応収率および純度のこのような向上が工業上の観点から相当の利点であるのは、方法の頑健性が特に大規模合成の場合に、常に懸念原因であるためである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それゆえ本発明の1つの主題は、結晶形の化合物メチルO−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノースである。
【0008】
メチルO−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノースは、以下で式(I)の化合物と呼ばれ、以下の式に相当する:
【0009】
【化1】

【0010】
本発明による結晶形の式(I)の化合物は、ほぼ12.009;7.703;7.300;7.129;5.838;4.665;4.476および3.785オングストローム(平面間距離)に特徴的な線がある粉末X線回折図を有する。化合物は約203℃(203℃±1℃)の融点も有する。
【0011】
本発明の主題は、アモルファス形の式(I)の化合物をイソプロパノールまたはイソプロパノール/MTBE(メチルtert−ブチルエーテル)混合物中で結晶化させるステップを含む、結晶形の式(I)の化合物を調製する方法でもある。
【0012】
式(I)の化合物は、アモルファス形の式(I)の化合物を熱イソプロパノールに溶解させて、続いて反応媒体をゆっくり冷却することによって結晶形で得ることができる。
【0013】
「熱イソプロパノールでの溶解」という用語は、確実に式(I)の化合物を完全に溶解させる温度のイソプロパノールを意味する。このような溶解は、約60から80℃、例えば65から75℃の温度で行われ得る。
【0014】
式(I)の化合物とイソプロパノールとの重量/体積比は有利には、約1/6である。
【0015】
「ゆっくり冷却」という用語は、公知の結晶化学作用の標準条件下で、例えば10から40℃の温度に到達するための約10℃/時の温度勾配(速度)を意味し、温度が低ければ低いほど結晶収率が良好であることが理解される。
【0016】
式(I)の化合物の結晶化は、共溶媒の存在下で、特にイソプロパノール/MTBE混合物中でも行われ得る。
【0017】
この場合、イソプロパノール/MTBE混合物は有利には、体積で約50/50の混合物である。前記方法はとりわけ、以下のように行われ得る:
1)上記のような、式(I)の化合物のイソプロパノールへの溶解、
2)MTBEの沸点以下の温度への混合物の冷却と、続いてのMTBEの添加、および
3)約10℃の温度への混合物の冷却。
【0018】
上のステップ1)および2)の間に、式(I)の化合物とそれぞれイソプロパノールおよびMTBEとの間の重量/体積比は各約1/6であり得る。
【0019】
冷却ステップ3)は好ましくは、結晶化をより良好に制御するために低速で行われ、混合物は有利には、10℃の温度にて1時間以上、例えば約2時間維持される。
【0020】
結晶性生成物は次に濾過、洗浄および乾燥され得る。
【0021】
アモルファス形の式(I)の化合物は、論文Bioorganic & Medicinal Chemistry,1994,Vol.2,No.11,pp.1267−1280および特許EP 0 529 715 B1の教示に従って、即ちヒドロキシル基に保護基、例えばアセチル基およびベンジル基を持つ、対応するペンタサッカライドの完全脱保護によって得ることができる。
【0022】
式(I)の化合物は、以下で式(I’)(式中、MeおよびBnはそれぞれ、メチルおよびベンジルを表す。)の化合物と呼ばれる、メチルO−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロン酸−(1→4)−O−2−O−ベンジル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロン酸−(1→4)−O−2,3,6−トリ−O−ベンジル−α−D−グルコピラノースの加水分解によって、例えばアモルファス形で得ることができる:
【0023】
【化2】

【0024】
このような水素化分解は、パラジウム担持木炭の存在下で水圧下にて、好適な溶媒または溶媒混合物、例えばテトラヒドロフラン、メタノール、またはテトラヒドロフラン/水、t−ブタノール/水もしくはエタノール/水/酢酸エチル混合物の中で行うことができる。
【0025】
式(I’)の化合物はこれ自体、以下で式(I”)(式中、Me、BnおよびAcはそれぞれ、メチル基、ベンジル基およびアセチル基を表す。)の化合物と呼ばれる、メチルO−6−O−アセチル−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−ベンジル−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロネート−(1→4)−O−3,6−ジ−O−アセチル−2−O−ベンジル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−ベンジル−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロネート−(1→4)−O−2,3,6−トリ−O−ベンジル−α−D−グルコピラノシドの鹸化によってこれ自体得ることができる:
【0026】
【化3】

【0027】
このような鹸化は、室温から65℃の、有利には25から55℃の温度にて、塩基、例えば水酸化リチウム、ナトリウムまたはカリウムを使用して、溶媒、例えばテトラヒドロフランまたはアセトニトリル中で行われ得る。
【0028】
式(I”)の化合物の鹸化のステップの後には有利に、鹸化生成物の沈殿のステップが続く。このような沈殿は、例えば塩酸水溶液を使用してpH約1.5の水性媒体中で行われ得る。このことにより、以下で詳説するように、得られた鹸化生成物の純度が著しく改善される。
【0029】
本発明の主題は、イドラパリナックスの調製のための、結晶形の式(I)の化合物の使用でもある。
【0030】
さらに詳細には本発明の主題は、上で定義したように結晶形の式(I)の化合物の硫酸化によってイドラパリナックスを調製する方法である。
【0031】
硫酸化は、例えばトリエチルアミンまたはピリジンとの複合体の形の三酸化硫黄を使用して、室温から約50℃の、例えば20から50℃の温度にて、溶媒、例えばN,N’−ジメチルホルムアミド中で行われ得る。
【0032】
結晶形の式(I)の化合物の硫酸化のステップには、エタノールおよびイソプロパノールから選択される1つまたは2つの他の溶媒との混合物中での、例えばMTBE/エタノール、MTBE/イソプロパノールまたはMTBE/エタノール/イソプロパノール混合物中での硫酸化化合物の沈殿のステップが有利に続き得る。とりわけこのような沈殿によって、硫酸化から生じる溶媒残留物を除去することが可能となる。
【0033】
それゆえ本発明の主題は、以下のステップ:
a)イソプロパノール中での、場合により共溶媒の存在下での、アモルファス形の先に定義したような式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿
を含む、イドラパリナックスを調製する方法である。
【0034】
アモルファス形の式(I)の化合物が式(I’)の化合物の水素化分解によって得られることは、先に認識されている。それゆえ本発明の主題は、以下のステップ:
)アモルファス形の式(I)の化合物を得るための、先に定義したような式(I’)の化合物の水素化分解、
a)場合により共溶媒の存在下での、イソプロパノール中での先行ステップの後に得られた式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿
を含む、イドラパリナックスを調製する方法でもある。
【0035】
式(I’)の化合物が式(I”)の化合物の鹸化によって得ることができることも先に認識されている。それゆえ本発明の主題は、以下のステップ:
)式(I’)の化合物を得るための、先に定義したような式(I”)の化合物の鹸化、
)アモルファス形の式(I)の化合物を得るための、先行ステップの後に得られた式(I’)の化合物の水素化分解、
a)場合により共溶媒の存在下での、イソプロパノール中での先行ステップの後に得られた式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿
を含む、イドラパリナックスを調製する方法でもある。
【0036】
最後に式(I”)の化合物の鹸化のステップの後には、鹸化生成物の沈殿のステップが続き得ることが先に認識されている。それゆえ本発明の主題は、以下のステップ:
)式(I’)の化合物を得るための、先に定義したような式(I”)の化合物の鹸化、
)先行ステップの後に得られた式(I’)の化合物の、pH約1.5の水性媒体中での沈殿、
)アモルファス形の式(I)の化合物を得るための、先行ステップの後に得られた式(I’)の化合物の水素化分解、
a)場合により共溶媒の存在下での、イソプロパノール中での先行ステップの後に得られた式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿
を含む、イドラパリナックスを調製する方法でもある。
【0037】
上記の方法において、結晶化ステップa)は有利には、先に詳説したように、イソプロパノール/MTBE混合物中で行われる。
【0038】
続いての実施例では、結晶形の式(I)の化合物を得るための考えられる方法、この結晶形の分析特徴、およびイドラパリナックスを調製するためのこの使用を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】結晶形の式(I)の化合物の粉末X線回折図を示す。
【実施例1】
【0040】
結晶形の式(I)の化合物の調製(スキーム1)。
【0041】
【化4】

【0042】
1.1:式(I’)の化合物の調製
式(I”)の化合物は例えば特許EP 0 529 715 B1または論文「Bioorg.Med.Chem.」(1994,Vol.2,No.11,pp.1267−1280);「Bioorg.Med.Chem.Letters」(1992,Vol.2,No.9,pp.905−910)もしくは「Magnetic Resonance in Chemistry」(2001,Vol.39,pp.288−293)の教示に従って得られる。式(I”)の化合物(5g、3.06mmol)を、アセトニトリル(10mL)に溶解する。次に脱イオン水(12.2mL)および30%水酸化ナトリウム水溶液(4.1g)を添加する。混合物を40℃に加熱して、この温度に5時間維持した。次に反応媒体を20℃に冷却して、1N塩酸水溶液(約17.7g)によってpH6.25に酸性化してから、ある不純物をMTBEによって抽出すると、鹸化生成物が水層に残存する。水相に含有されている残留アセトニトリルを次に濃縮によって除去して、続いて脱イオン水(125mL)で希釈する。鹸化生成物は、20℃の1N塩酸水溶液(約17.6g)を添加することによって、最終的にpH1.5で沈殿する。濾過の前に懸濁物を20℃で4時間維持する。最後に湿潤固体を30℃の真空乾燥器で乾燥させて、式(I’)の化合物2.93g(93.6%)を得る。
【0043】
NMR(サッカライド単位D、E、F、G、Hのアノマープロトン):5.79、5.14、5.55、5.92、4.94ppm。
【0044】
1.2:式(I)の粗化合物の調製
先行ステップの後に得られた式(I’)の化合物をテトラヒドロフラン(18mL)に溶解させる。木炭担持パラジウム(0.3g)を添加する。反応媒体を水素0.3バール(相対圧力)にて4時間にわたって水素添加する。濾過および蒸発の後、式(I)の粗化合物2.12g(99%)が得られる。
【0045】
1.3:イソプロパノール/MTBE混合物を使用する結晶形の式(I)の化合物の調製
先行ステップの後に得られた粗水素添加生成物を65℃のイソプロパノール(13mL)に溶解させて、次に室温にて結晶化させる。次に懸濁物を40℃に冷却して、続いてMTBE(13mL)を添加し、次に10℃までゆっくり冷却する。10℃に2時間維持した後、結晶性水素添加生成物を濾過、洗浄および乾燥する。結晶形の式(I)の化合物1.66gはこのように、クリーム色がかった白色の粉末の形で得られる。式(I’)の化合物からの、結晶形の式(I)の化合物の産生での反応収率は92.5%である。開始化合物(I”)に対して表すとき、結晶形の式(I)の化合物の産生での反応収率は86.6%である。
【0046】
結晶形の式(I)の化合物のNMR(サッカライド単位D、E、F、G、Hのアノマープロトン):5.77、5.11、5.51、5.84、5.01ppm。
【0047】
1.4 イソプロパノールを使用する結晶形の式(I)の化合物の調製
ステップ1.2の後に得られた粗水素添加生成物を75℃のイソプロパノール(5体積)に溶解させる。次に、結晶化のための公知の標準技法に従って、媒体を結晶が現れるまでゆっくり冷却する。前記方法は、65℃で1時間冷却する第1のステップと、次の、4時間にわたって25℃のまたは6時間にわたって5℃の最終温度に冷却する第2のステップと、最後にこの最終温度に30分間維持することとによって行われる。懸濁物を次に濾過して、イソプロパノール(2×0.1V)ですすぎ、顕微鏡下では針形に見える白色結晶の形で化合物(I)を単離する。これらの結晶のH NMR分析は、上のステップ1.3の後に記載したものと同じである。
【実施例2】
【0048】
結晶形の式(1)の化合物の粉末X線回折図(図1)
以下の条件下でD5005装置(Bruker AXS)を使用した:
−支持体:フラット試料ホルダ
−角度領域:0.01°2θ刻みで2.00から35.00°2θ(度2シータ)
−刻み当りの時間:70秒、
−分解能スリット:0.1mm、
−発電機:50kVおよび40mA。
【0049】
実施例1.3で得たような結晶形の式(I)の化合物をそのまま使用して粉砕する。図1はこのようにして得たX線回折図を示す。この回折図は実際に、結晶性生成物の特徴的な回折線を有す。
【0050】
それゆえ本発明の主題は、図1による粉末X線回折図に特徴付けられる、結晶形の式(I)の化合物である(相対強度が10%以上の線について言及する。)。
【0051】
【表1】

【0052】
式(I)の化合物の結晶性構造の格子パラメータの決定は、Materials StudioプログラムのReflex自動指標化と、続いてFullProffのソフトウェアによるPawley精密化とによって行った。
【0053】
結晶系は単環式網目であり、空間群はP1 2 1である。結晶学的データ、即ち平面間距離(a、bおよびc、オングストローム)、角度(α、βおよびγ、度)および各単位セルの容積(V、オングストローム)を表2に示す。
【0054】
【表2】

【実施例3】
【0055】
結晶形の式(I)の化合物の融点
実施例1.3に従って得たような結晶形の式(I)の化合物のDSC(示差走査熱量測定)による分析は、Perkin−Elmer「Pyris 1」装置を使用して、以下の条件下で行う:3℃/分にて25から250℃、穴開き蓋を圧着した30μlアルミニウムるつぼ内で、窒素流下。分析により、化合物の融点に相当する、203℃±1℃の吸熱(エンタルピー:66J/g)が明らかとなった。
【実施例4】
【0056】
結晶形の式(I)の化合物からのイドラパリナックスの調製(スキーム2)
式(I)の化合物からのイドラパリナックス(II)の調製をスキーム2にまとめる。
【0057】
【化5】

【0058】
実施例1.3で得たような結晶形の式(I)の化合物をN,N’−ジメチルホルムアミド(6.6mL)に溶解して、次に30℃まで加熱する。不活性雰囲気下で、ピリジン−三酸化硫黄複合体3.8gをゆっくり添加して、続いて30℃にて4時間維持する。次に反応媒体を最高25℃で維持した23.8%炭酸水素ナトリウム水溶液(16.3g)に注入して、式(II)の化合物を得る。反応媒体を4時間にわたって撹拌し続ける。次に硫酸化生成物の溶液をMTBE/イソプロパノール/エタノール混合物(171mL/70mL/70mL)に注ぐ。生成物の沈殿が観察され、濾過、ケーキの洗浄および乾燥後に、式(II)の化合物4.99g(96.8%)を得て、次にアニオン交換クロマトグラフィーにより通常の技法に従って精製する。
【0059】
式(II)の化合物のNMR(サッカライド単位D、E、F、G、Hのアノマープロトン):5.48、4.68、5.44、5.08、5.18ppm。
【0060】
それゆえ本発明による方法により、式(I”)の化合物から開始して、イドラパリナックス(式(II)の化合物)を約84%の化学収率で(上記のプロトコルにより正確は83.8%)、即ち特許EP0529715B1に記載された方法と比較して約30%上昇した収率で得られると思われる。
【実施例5】
【0061】
本発明で行った方法による合成生成物および中間体の品質
本発明により結晶化された式(I)の化合物によって、先に詳説したように化学収率が改善されただけではなく、純度も改善されたイドラパリナックスナトリウムを得ることができ、純度の改善によって有効成分の最終精製を容易にすることができる。詳細には、アニオン交換クロマトグラフィーによる最終精製に関して、約5から10%の収率のさらなる上昇が観察される。続いてのクロマトグラフィー精製ステップでのより純粋な生成物の使用および次のクロマトグラフィー収率の改善は、重要な工業上の利点である。
【0062】
表3は、以下の化合物の、有機純度のレベルと、これに対するサッカライド不純物のレベルも示す:
−式(I’)の化合物、
−式(I)の化合物、および
−式(II)の化合物(イドラパリナックスナトリウム)、
前記化合物は、特許EP 0 529 715 B1(この場合、式(I)の化合物はアモルファス形である。)の教示、または本発明による方法(この場合、式(I)の化合物は結晶形である。)のどちらかに従って得られる。これらのサッカライド不純物のレベルはHPLCによって測定される。
【0063】
【表3】

【0064】
表3から、第1に式(I’)の化合物の産生のための沈殿ステップ、および第2に式(I)の化合物の結晶化によって、有機純度が著しく改善した生成物を得られることが明らかになる。
【0065】
次に鹸化反応(実施例4を参照)で結晶性生成物(I)を使用することによって、表3に示す有機純度によって示されるように、イドラパリナックスナトリウムを式(I)の非結晶性化合物から得た生成物よりも顕著に高い品質で得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶形であることを特徴とする、式(I):
【化1】

の化合物、メチルO−2,3,4−トリ−O−メチル−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラノシルウロン酸−(1→4)−O−α−D−グルコピラノース。
【請求項2】
粉末X線回折図が以下の約12.009;7.703;7.300;7.129;5.838;4.665;4.476および3.785オングストロームの平面間距離として表された特徴的な線を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
図1による粉末X線回折図を特徴とする、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
203℃±1℃の融点を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、イソプロパノール中での、場合により共溶媒の存在下でのアモルファス形の式(I)の化合物の結晶化ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
共溶媒がMTBEであることを特徴とする、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
結晶化が体積で約50/50のイソプロパノール/MTBE混合物中で行われる、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
方法が以下のステップ:
1)式(I)の化合物のイソプロパノールへの溶解、
2)MTBEの沸点より低い温度への混合物の冷却と、続いてのMTBEの添加、および
3)約10℃の温度への混合物の冷却、
を含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の調製方法。
【請求項9】
アモルファス形の式(I)の化合物が式(I’)
【化2】

の化合物の水素化分解によって得られることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項10】
式(I’)の化合物が式(I”):
【化3】

の化合物の鹸化によって得られることを特徴とする、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
式(I”)の化合物の鹸化のステップの後にpH1.5の水性媒体中での沈殿が続くことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の硫酸化によりイドラパリナックスを調製する方法。
【請求項13】
式(I)の化合物の硫酸化ステップの後にMTBEとエタノールおよびイソプロパノールから選択される1つまたは2つの他の溶媒との混合物中での沈殿ステップが続くことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
沈殿ステップがMTBE/イソプロパノール/エタノール混合物中で行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
方法が以下のステップ:
a)イソプロパノール中での、場合により共溶媒の存在下での、アモルファス形の請求項1に記載の式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿、
を含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
方法が以下のステップ:
)アモルファス形の請求項1に記載の式(I)の化合物を得るための、請求項9に記載の式(I’)の化合物の水素化分解、
a)場合により共溶媒の存在下での、イソプロパノール中での先行ステップの後に得られた式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿、
を含むことを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
方法が以下のステップ:
)請求項9に記載の式(I’)の化合物を得るための、請求項10に記載の式(I”)の化合物の鹸化、
)アモルファス形の請求項1に記載の式(I)の化合物を得るための、先行ステップの後に得られた式(I’)の化合物の水素化分解、
a)場合により共溶媒の存在下での、イソプロパノール中での先行ステップの後に得られた式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿、
を含むことを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
方法が以下のステップ:
)請求項9に記載の式(I’)の化合物を得るための、請求項10に記載の式(I”)の化合物の鹸化、
)先行ステップの後に得られた式(I’)の化合物のpH約1.5の水性媒体中での沈殿、
)アモルファス形の請求項1に記載の式(I)の化合物を得るための、先行ステップの後に得られた式(I’)の化合物の水素化分解、
a)場合により共溶媒の存在下での、イソプロパノール中での先行ステップの後に得られた式(I)の化合物の結晶化、
b)イドラパリナックスを得るための、先行ステップの後に得られた結晶形の式(I)の化合物の硫酸化、ならびに
c)場合によりMTBEと、エタノールおよびイソプロパノールから選択した1つまたは2つの他の溶媒との混合物中でのイドラパリナックスの沈殿、
を含むことを特徴とする、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
イドラパリナックスの調製のための、請求項1から4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−509305(P2012−509305A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536929(P2011−536929)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052221
【国際公開番号】WO2010/058130
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】