説明

結晶性のメチルチオニニウム塩化物水和物

メチルチオニニウム塩化物の3つの二水和物形態B、CおよびDならびに1つの一水和物形態Eが記載される。形態B、形態C、形態Dおよび形態Eは、制御された湿度および温度のもとで、より高い水分含量を有するメチルチオニニウム塩化物から、または水和物の変換によって調製することができる。これらの水和物は、医薬組成物に組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性のメチルチオニニウム塩化物水和物、特にメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態C、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dおよびメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eに、形態B、形態C、形態Dおよび形態Eの調製のためのプロセスに、ならびに、好ましくは形態B、形態C、形態Dおよび形態Eを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルチオニニウム塩化物(MTC)[メチレンブルー:3,7−ビスジメチルアミノフェナゾチオニウム塩化物、C1618ClNS、319.85g/mol]は1876年に初めて調製された(非特許文献1)。種々の合成方法が知られており、それらは、最近、特許文献1にまとめられた。また、特許文献1は、メチレンブルーのいくつかの応用例を記載し、その例としては、腎結石の処置および予防のための、黒色腫、マラリア、ウイルス感染症、およびアルツハイマー病の処置のための、医療用染料として、酸化還元指示薬、防腐剤としての使用が挙げられる。MTCは、酸化剤として、およびCO、亜硝酸薬およびアニリン被毒の場合の解毒薬としても使用されてきた。
【0003】
MTCは、水和物の形態で存在することが知られている。例えば、Flukaのカタログは、MTCは22%までの水を含有する可能性があると、非常に概括的に記載している[非特許文献2]。1〜5つの分子の水を伴う構造が、文献の中で説明されてきた[非特許文献3;非特許文献4]。三水和物の形成は、広く受け入れられているようである[例えば非特許文献1]。しかしながら、この主張はすでに80年よりも前に異論を唱えられ、代わりにMTCによる水の不特定の吸着が提案されている[非特許文献5;非特許文献6]。
【0004】
これまで、詳細に特徴付けられた唯一の水和物は、MTCの五水和物である[非特許文献3;非特許文献7]。この水和物については、単結晶X線データさえもが利用可能である。この水和物は、この結晶のα軸に垂直な面に並んだメチルチオニニウムカチオンのπスタッキングした柱状構造からなる。水分子および塩化物イオンはこれらの層の間に位置し、これにより、塩化物イオンは、水の面に対してほとんど垂直で、かつこの柱状構造の軸と平行な面の中に濃縮されている。これらの塩化物イオンは、3/2個の水分子からの3つの水素結合に配位されている。
【0005】
おそらくは、同じ構造は、以前は、四水和物に帰属されていた[非特許文献8]。この五水和物と第2の多形形態との間の相転移は、水性懸濁液の中では、30℃付近で起こると記載された[非特許文献9]。この第2の形態は、室温での五水和物の減圧乾燥によっても得られ、その水分含量は、およそ1mol/molにもなることが示された。
【0006】
化合物の固体状態での形態は、薬学的応用にとって非常に重要である。化合物の固体状態での形態は、その化合物自体の、およびその製剤の化学的安定性および物理的安定性に影響を及ぼす可能性があり、または薬物動態およびバイオアベイラビリティーに対して影響を及ぼす可能性がある。水和物の場合は、組成は、医薬品有効成分の正しい投薬量に対しても影響を及ぼす。
【0007】
医薬組成物で使用されるメチルチオニニウム塩化物は三水和物として記載されるが(非特許文献10)、この三水和物は、他の成分が混じったメチルチオニニウム塩化物五水和物であると考えられる。上記混合物またはその混合物の中の成分は、異なる条件下で安定であり、それらは、他の多形のまたは擬多形(pseudopolymorphic)の種へと変換される可能性があり、従って混合物の組成が変わる可能性があり、そのため、正しい投薬量が問題になり、保存安定性が不十分であると考えられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/032879号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】The Merck Index、第13版、Merck & Co.,Inc.、2001年、エントリー6085
【非特許文献2】Fluka Catalogue 1997/1998、Fluka Chemie AG、1997年
【非特許文献3】J.O.Warwicker、J.Chem.Soc.、1955年、2531頁
【非特許文献4】G.F.Davidson、J.Textile Institute、1947年、第38巻、T408−418頁
【非特許文献5】H.Wales、O.A.Nelson、J.Am.Chem.Soc.、1923年、第45巻、1657頁
【非特許文献6】C.M.Martin、J.W.G.Neuhaus、F.H.Reuter、Analyst、1946年、第71巻、29−31頁
【非特許文献7】H.E.Marr III、J.M.Stewart、M.F.Chiu、Acta Cryst.1973年、第B29巻、847頁
【非特許文献8】W.H.Taylor、Z.Krist.、1935年、第91巻、450頁
【非特許文献9】S.W.Bodman、S.P.Kodama、P.C.Pfeil、R.E.Stevens、J.Chem.Eng.Data、1967年、第12巻、500頁
【非特許文献10】USP Material Safety Data Sheet for Methylene Blue(Catalogue Number 1428008)、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、メチルチオニニウム塩化物水和物の特定の多形形態、およびそれらの調製のための安全でかつ再現性のあるプロセスを提供する。また、本発明は、明確な条件下で安定であり、かつ良好な溶解度およびバイオアベイラビリティーを有するメチルチオニニウム塩化物水和物の特定の多形形態を提供する。本発明は、活性化合物の正確な量を投与するために、医薬組成物の中に明確な含有量で到達するように容易に計量することができる、メチルチオニニウム塩化物水和物の特定の多形形態を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、本願明細書に記載されるとおりの結晶性のメチルチオニニウム塩化物水和物、特にメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態C、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dおよびメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eに、形態B、形態C、形態Dおよび形態Eの調製のためのプロセスに、ならびに、好ましくは形態B、形態C、形態Dおよび形態Eを含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】メチルチオニニウム塩化物の結晶性の含水の形態Bの特徴的なX線粉末回折パターンである。
【図2】メチルチオニニウム塩化物 形態Cの結晶性の二水和物の特徴的なX線粉末回折パターンである。
【図3】メチルチオニニウム塩化物 形態Dの結晶性の二水和物の特徴的なX線粉末回折パターンである。
【図4】メチルチオニニウム塩化物 形態Eの結晶性の一水和物の特徴的なX線粉末回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の態様は、実質的に、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態BにあるMTCである。
【0014】
いくつかの実施形態では、形態Bは、正確には二水和物ではなく、二水和物に対して過剰に少量の水(例えば、約0.2〜0.3当量)を含有しうる。しかしながら、便宜のため、形態Bは、本願明細書中では、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Bと呼ばれる。
【0015】
メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Bは、以下の2θ値(±0.1°)に固有のピークを含むX線粉末回折パターン(波長1.54180Å)を有する:5.8、11.2、25.3、26.8。
【0016】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Bは、X線粉末回折パターンに、以下の2θ値(±0.1°)に以下の付加的なピークを有しうる:15.6、16.9、20.3、28.3。
【0017】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Bは、上記の8つのピークの列挙から選択される3以上のピークのいずれかの組み合わせ(小角側のピークが好ましい)によって特徴付けられてもよい。
【0018】
結晶性のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bの代表的な粉末XRDパターンは図1に示される。
【0019】
理論に結び付けられることは望まないが、形態Bは、全範囲の相対湿度にわたって、室温で、熱力学的に準安定の形態である。粉末X線およびDSCは、形態Bの結晶特性を示す。熱重量分析(TG、加熱速度10℃/分)は、室温〜150℃の間で、メチレンブルー1分子あたり約2、例えば2.2〜2.3個の水分子の水分含量に対応して、10.6%または10.9〜11.5%の水分喪失を生じる。このTG分析によって、形態Bを形態Aおよび形態Eから区別することが可能になる。
【0020】
形態Bは、示差走査熱量測定(DSC)を使用して特徴付けることもできる。金るつぼの中で加熱速度100℃/分にてDSCにかけると、形態Bは、低温側に肩を伴って186℃に融解ピークを有する。金るつぼの中で加熱速度20℃/分にてDSCにかけると、形態Bは、100℃付近に小さい吸熱ピークおよび低温側に肩を伴って183℃に融解ピークを呈する。この融解ピークのあとすぐに分解が続く。
【0021】
形態Bは、減衰全反射赤外(ATR−IR)分光法を使用して特徴付けることもできる。形態Bの特徴的なIRシグナルは、1068、877、および839cm−1に認められる。
【0022】
結晶性形態Bは、緑がかった粉末として得られる。
【0023】
メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bは、メタノールおよび酢酸に可溶であり、水、塩酸および他の有機溶媒に対して低〜中程度の溶解度を有する。その溶解度は、メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aの溶解度と同程度である。
【0024】
本発明の別の態様は、形態Bの調製のためのプロセスであって、固体の形態Aのメチルチオニニウム塩化物五水和物を高温および低湿度で乾燥することを含むプロセスである。温度は、好ましくは少なくとも40℃であり、または50℃でさえあり、70℃未満であってもよい。好ましい実施形態では、温度は約60℃である。湿度は、好ましくは相対湿度40%未満、より好ましくは相対湿度約35%、またはこれ未満である。この乾燥は、形態Bへの変換を成し遂げるのに十分な時間続くべきである。
【0025】
本発明のさらなる態様は、結晶性のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bの調製のためのプロセスであって、固体のメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを、相対湿度8〜15%を有する不活性ガスの流れに、常温で曝すことを含むプロセスである。
【0026】
この相対湿度は、好ましくは室温で9〜12%である。不活性ガスの例は、空気、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンおよびクリプトン、またはこれらの混合物である。固体のメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aは、好ましくは、結晶性の粉末の形態にあり、この結晶性の粉末の形態は、乾燥操作を促進するために撹拌されてもよい。曝露時間はメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aの量に依存し、数時間〜数週間の範囲に及ぶ可能性がある。
【0027】
常温は、15〜30℃、好ましくは20〜25℃の温度を意味しうる。
【0028】
本発明者らは、メチルチオニニウム塩化物は、少なくとも2つのさらなる結晶性の二水和物の形態(以降、形態Cおよび形態Dと呼ばれる)で存在するということも見出した。
【0029】
本発明のさらなる態様は、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Cである。
【0030】
メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Cは、以下の2θ値(±0.1°)に固有のピークを含む特徴的なX線粉末回折パターンを有する:8.1、11.1、17.6、25.9、27.2。
【0031】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Cは、X線粉末回折パターンに、以下の2θ値(±0.1°)に以下の付加的なピークを有しうる:16.2、17.8、24.4、30.8、31.3、33.0。
【0032】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Cは、X線粉末回折パターンに、以下の2θ値(±0.1°)に以下のさらなるピークを有しうる:13.4、18.4,28.7、29.5、30.0、34.1、36.0、36.7、39.5、42.7、45.3、48.0。
【0033】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Cは、上記の23個のピークの列挙から選択される5以上のピークのいずれかの組み合わせ(小角側のピークが好ましい)によって特徴付けられてもよい。
【0034】
結晶性のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cの代表的な粉末XRDパターンは図2に示される。
【0035】
理論に結び付けられることは望まないが、形態Cは、室温で、40%未満および約10%までの、またはおそらくさらに4%までの相対湿度で、熱力学的に安定な形態である。(形態B、形態Dまたは形態Eと比べて)この広い範囲の熱力学的な安定性は、より高い温度ではさらに広がるが、この広い範囲の熱力学的な安定性のため、形態Cが、25℃を超える温度での調製プロセス、保存または使用のために選択される形態となる。粉末X線回折およびDSCは、形態Cの結晶特性を示す。加熱速度10℃/分での熱重量分析(TG)は、室温〜150℃の間で、メチレンブルー1分子あたり約1.9〜2.3個の水分子という水分含量に対応して、約9.8〜11.4%の水分喪失を示す。好ましい実施形態では、加熱速度10℃/分での熱重量分析は、室温〜150℃の間で、2段階の約9.8〜10.7%の水分喪失を示した。全水分喪失は、メチレンブルー1分子あたりほぼ正確に2個の水分子の水分含量に対応する。2段階の存在は形態CのTGプロファイルの特徴である。このTG分析によって、形態Cを形態Aおよび形態Eから区別することが可能になる。
【0036】
形態Cは、示差走査熱量測定(DSC)を使用して特徴付けることもできる。金るつぼの中で加熱速度100℃/分にてDSCにかけると、形態Cは151℃および183℃に2つの吸熱極大を有する。
【0037】
形態Cは、減衰全反射赤外(ATR−IR)分光法を使用して特徴付けることもできる。形態Cの特徴的なIRシグナルは、1497/1483(二重のピーク)、1438、1301、および1060cm−1に認められる。
【0038】
結晶性形態Cは、金色の光沢を有する緑がかった粉末として得られる。
【0039】
本発明のさらなる態様は、含水メチルチオニニウム塩化物または特定の水和物の、ジメチルスルホキシドからの再結晶化による、形態Cの調製のためのプロセスである。
【0040】
また、形態Cは、少量の水の存在下での、アセトニトリルまたはイソプロパノール中での形態Aもしくは形態Bまたは他の多形形態の懸濁平衡化によっても調製することができる。それゆえ、本発明の別の態様は、含水メチルチオニニウム塩化物または種々の水和物の混合物またはメチルチオニニウム塩化物の特定の水和物が、少量の水を含有する、イソプロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、およびアセトニトリル、またはこれらの混合物を含む群から選択される溶媒の中で、常温で懸濁および撹拌される、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cの調製のためのプロセスである。
【0041】
選択される有機溶媒(少なくとも2つの溶媒の混合物を含む)は、好ましくはこの結晶性生成物の単離の温度(これは、典型的には室温以下である)で、MTC二水和物 形態Cについて非常に小さい溶解度を有することが好ましい。室温で20g/l未満、特に2g/l未満の溶解度が好ましい。この溶媒は水と混和性であり、その蒸気圧は水の蒸気圧を超えることが好ましい。
【0042】
この懸濁液中の水和物の量は、溶媒の量に対して1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%であってもよい。常温は、15〜30℃、好ましくは20〜25℃の温度を意味しうる。
【0043】
適切な少量の水は、最初に加えられたメチルチオニニウム塩化物水和物によってすでに与えられた水の量、懸濁液中のメチルチオニニウム塩化物の濃度、および水分含量に応じて変わる選ばれた溶媒の水分活性に依存する。室温で行われるとき、当該変換プロセスの最後での水分含量は、0.04〜0.4、好ましくは0.1〜0.3の間の水分活性(それぞれ4〜40%、10〜30%の相対湿度に対応する)に対応する必要がある。
【0044】
当該処理は、当該他の形態が形態Cに変換されるのに十分長くあるべきである。処理時間は、懸濁液中の固体の量および出発物質の組成に主に依存するが、時間〜数日間であってもよい。
【0045】
形態Cへの変換の後に、固体は単離されてもよい。この固体の単離は濾過によって実施される。単離後、溶媒が形態Cから除去されてもよい。溶媒の除去は、減圧中、100℃未満、好ましくは50℃未満、最も好ましくは室温付近の温度で実施されてもよい。あるいは、当該水和物の安定性範囲に相当する相対湿度を有するガスの流れが、乾燥のために、試料にわたって通されてもよい。
【0046】
本発明のさらなる態様の対象は、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Dである。
【0047】
メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Dは、以下の2θ値(±0.1°)に固有のピークを含むX線粉末回折パターンを有する:7.0、8.5、12.0、14.4,25.3、25.7、27.5。
【0048】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Dは、X線粉末回折パターンに、以下の2θ値(±0.1°)に以下の付加的なピークを有しうる:6.0,10.4、20.9、21.1、21.7、22.3、23.7、24.5、26.9、28.5、29.0、30.4、31.8。
【0049】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Dは、X線粉末回折パターンに、以下の2θ値(±0.1°)に以下のさらなるピークを有しうる:9.8、16.3、17.1、18.1、34.9、41.5、46.5。
【0050】
また、メチルチオニニウム塩化物二水和物の結晶性形態Dは、上記の27のピークの列挙から選択される5以上のピークのいずれかの組み合わせ(小角側のピークが好ましい)によって特徴付けられてもよい。
【0051】
結晶性のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dの代表的な粉末XRDパターンは図3に示される。
【0052】
理論に結び付けられることは望まないが、形態Dは、室温で、全範囲の相対湿度にわたって、熱力学的に準安定である。粉末X線回折およびDSCは、形態Dの結晶特性を示す。熱重量分析(TG、加熱速度10℃/分)は、室温〜150℃の間で、メチレンブルー1分子あたり約1.9〜2.3個の水分子という水分含量に対応して、約9.3〜11.2%の水分喪失を生じる。TG分析によって、形態Dを形態Aおよび形態Eから区別することが可能になる。
【0053】
形態Dは、示差走査熱量測定(DSC)を使用して特徴付けることもできる。金るつぼの中で加熱速度100℃/分にてDSCにかけると、形態Dは、164℃および185℃に2つの吸熱ピーク極大を有し、ベースラインの段が63℃付近に観察される。
【0054】
形態Dは、減衰全反射赤外(ATR−IR)分光法を使用して特徴付けることもできる。形態Dの特徴的なIRシグナルは、1181、1140、1066、951、および831cm−1に認められる。
【0055】
結晶性形態Dは、灰色〜紫色の粉末として得られる。
【0056】
純粋な形態Dは、良溶媒中の溶液を大過剰の非溶媒に加えるなどの沈殿プロセスによって調製することができる。従って、本発明のさらなる態様は、メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aをメタノールに溶解させる工程と、t−ブチル−メチルエーテルをこのメタノール性溶液に加えるかまたはこのメタノール性溶液をt−ブチルメチルエーテルに加えるかのいずれかにより、この溶液をt−ブチル−メチルエーテルと合わせる工程とを含む、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dの調製のためのプロセスである。
【0057】
本発明のさらなる態様は、メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを酢酸に溶解させる工程と、トルエンをこの酢酸溶液に加えるかまたはこの酢酸溶液をトルエンに加えるかのいずれかにより、この溶液をトルエンと合わせる工程とを含む、実質的に純粋なメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dの調製のためのプロセスである。
【0058】
メタノール溶液または酢酸溶液中の形態Aの濃度は、メタノールまたは酢酸の量に基づいて1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲であってもよい。t−ブチル−メチルエーテルまたはトルエンの量は、メタノールまたは酢酸の体積に等しくてもよいが、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは10倍、この体積を上回る。
【0059】
上記の2つの方法のうちのいずれかにおける形態Dの沈殿の後、固体は濾過によって単離されてもよい。単離後、溶媒は形態Dから除去されてもよい。この溶媒は減圧乾燥によって、または不活性ガスの流れの中で除去され、この際、すべてのプロセス工程における相対空気湿度は50%未満、好ましくは40%未満である。
【0060】
本発明者らは、メチレンブルーが結晶性の一水和物を形成するということも見出した。
【0061】
本発明のさらなる態様は、結晶性形態Eのメチルチオニニウム塩化物一水和物である。
【0062】
結晶性形態Eのメチルチオニニウム塩化物一水和物は、以下の2θ値(±0.1°)に固有のピークを含む特徴的なX線粉末回折パターンを有する:9.0、12.5、14.1、14.4、18.1、23.2、24.1、26.0。
【0063】
また、結晶性形態Eのメチルチオニニウム塩化物一水和物は、X線粉末回折パターンに、以下の2θ値(±0.1°)に以下の付加的なピークを有しうる:24.5、27.2。
【0064】
また、結晶性形態Eのメチルチオニニウム塩化物一水和物は、X線粉末回折パターンに、以下の2θ値(±0.1°)に以下のさらなるピークを有しうる:21.8、22.1、28.4、29.6、32.0、39.3、41.7、47.1。
【0065】
また、結晶性形態Eのメチルチオニニウム塩化物一水和物は、上記の18のピークの列挙から選択される5以上のピークのいずれかの組み合わせ(小角側のピークが好ましい)によって特徴付けられてもよい。
【0066】
結晶性のメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの代表的な粉末XRDパターンは図4に示される。
【0067】
理論に結び付けられることは望まないが、形態Eは、室温で、約10%未満、または約4%未満、および約2%までの相対湿度で、熱力学的に安定である。粉末X線回折は、形態Eの結晶特性を示す。
【0068】
熱重量分析(TG、加熱速度10℃/分)は、室温〜110℃の間で、メチレンブルー1分子あたり1つの水分子という水分含量に対応して、5.1%〜5.4%の水分喪失を生じる。TGは、形態Eを形態A、形態B、形態Cおよび形態Dから区別するために使用することができる。
【0069】
形態Eは、示差走査熱量測定(DSC)を使用して特徴付けることもできる。金るつぼの中で加熱速度100℃/分にてDSCにかけると、形態Eは、220℃付近の分解温度まで熱的事象を示さない。
【0070】
形態Eは、減衰全反射赤外(ATR−IR)分光法を使用して特徴付けることもできる。形態Eの特徴的なIRシグナルは、1350、1323、1242、1218、1175、1134、および1035cm−1に認められる。
【0071】
結晶性形態Eは黄土色の粉末として得られる。
【0072】
純粋な形態Eは、溶媒の中での、乾燥条件下での含水メチルチオニニウム塩化物または形態A、形態B、形態Cもしくは形態Dまたはこれらの混合物の懸濁平衡化によって調製することができる。適切な溶媒としては、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cの調製のための懸濁平衡化で使用される溶媒、つまりイソプロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、およびアセトニトリルが挙げられる。従って、本発明の別の態様は、含水メチルチオニニウム塩化物または種々の水和物の混合物またはメチルチオニニウム塩化物の特定の水和物が乾燥溶媒、好ましくはイソプロパノール中に常温で懸濁され撹拌される、結晶性のメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの調製のためのプロセスである。
【0073】
この懸濁液中の水和物の量は、非溶媒の量に対して1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%であってもよい。常温は、15〜35℃、好ましくは20〜35℃の温度を意味しうる。水の除去を容易にするために、例えば30分以内の20〜35℃の温度サイクルが適用されてもよい。乾燥イソプロパノールは、イソプロパノール中の1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の水分含量を意味する。
【0074】
処理時間は、形態Eへの変換を許容するのに十分であるべきである。処理時間は、懸濁液中の固体の量に主に依存するが、数時間〜数週間であってもよい。適切な平衡化時間の後、水分含量を低く保つために、溶媒は、除去されて新しい乾燥溶媒に置き換えられる必要がある場合がある。
【0075】
形態Eの形成後、固体は単離されてもよい。この固体の単離は濾過によって実施される。固体の単離後、溶媒が形態Eから除去されてもよい。溶媒の除去は、減圧中、100℃未満、好ましくは50℃未満、最も好ましくは室温付近の温度で実施されてもよい。あるいは、当該水和物の安定性範囲に相当する相対湿度を有するガスの流れが、乾燥のために、試料にわたって通されてもよい。
【0076】
純度
上記の態様の各々において、メチルチオニニウム塩化物は実質的に上記の形態にあることが好ましい。「実質的に上記の形態にある」は、メチルチオニニウム塩化物の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、80重量%または90重量%が上記の形態にあることを意味する。いくつかの実施形態では、少なくとも95重量%、99重量%またはさらには99.5重量%以上が上記の結晶性形態にあってもよい。
【0077】
上記の態様の各々において、メチルチオニニウム塩化物は実質的に溶媒を含まないことが好ましい。本願明細書で使用する用語「実質的に溶媒を含まない」は、ごくわずかの量の任意の溶媒しか有しない形態、例えば合計0.5重量%以下の任意の溶媒を有する形態を指す。あらゆる溶媒の総量は、0.25%、0.1%、0.05%または0.025重量%以下であってもよい。
【0078】
組成物
本発明の1つの態様は、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを含む組成物に関する。
【0079】
1つの実施形態では、当該組成物は、薬学的に許容できる担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含む。
【0080】
病原体を不活化する方法
本発明の1つの態様は、試料(例えば、血液または血漿試料)において病原体を不活化する方法であって、化合物をその試料に導入する工程と、その試料を光に曝露する工程とを含む方法における、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの使用に関する。
【0081】
医学的処置の方法
本発明の1つの態様は、治療によるヒトまたは動物の身体の(例えば、疾患状態の)処置方法における使用のための、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eに関する。
【0082】
本発明の1つの態様は、疾患状態の処置における使用のための医薬の製造のための、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの使用に関する。
【0083】
本発明の1つの態様は、疾患状態の処置における、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの使用に関する。
【0084】
本発明の1つの態様は、患者における疾患状態の処置方法であって、当該患者に、治療上有効量の、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを投与することを含む方法、に関する。
【0085】
疾患状態
1つの実施形態では、この疾患状態はタウオパチーである。
【0086】
「タウオパチー」は、タウタンパク質(およびその異常な機能またはプロセシング)が役割を果たす状態である。アルツハイマー病はタウオパチーの一例である。ピック病および進行性核上麻痺(PSP)などの神経変性障害の病変形成は、それぞれ歯状回および新皮質の星状錐体細胞(stellate pyramidal cells)中の、病的な切断されたタウ凝集体の蓄積と相関するようである。他の認知症として、前頭側頭認知症(FTD);17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP−17);脱抑制−認知症−パーキンソン病−筋萎縮複合症(DDPAC);淡蒼球−橋−黒質変性(PPND);グアム−ALS症候群;淡蒼球−黒質−ルイ体変性(PNLD);皮質−基底変性(CBD)および他のもの(例えば、Wischik,C.M.、Theuring,F.およびHarrington,C.R.、「The molecular basis of tau protein pathology in Alzheimer’s disease and related neurodegenerative dementias」、Neurobiology of Alzheimer’s Disease(D.DawbarnおよびS.J.Allen編)、Oxford University Press、Oxford、2000年の中の103−206頁、とりわけこの文献の中の表5.1を参照)が挙げられる。これらの疾患のうちの各々は、異常なタウ凝集によって主にまたは部分的に特徴付けられ、本願明細書では「タウオパチー」と呼ばれる。
【0087】
1つの実施形態では、当該疾患状態はアルツハイマー病(AD)である。1つの実施形態では、当該疾患状態は皮膚癌である。1つの実施形態では、当該疾患状態は黒色腫である。
【0088】
1つの実施形態では、当該疾患状態はウイルス性、細菌性または原虫性である。1つの実施形態では、この原虫性疾患状態はマラリアである。この実施形態では、処置は、別の抗菌薬と組み合わせられても、例えばクロロキンまたはアトバコンと組み合わせられてもよい。1つの実施形態では、このウイルス性疾患状態は、C型肝炎、HIVまたはウエストナイルウイルスによって引き起こされる。
【0089】
処置
用語「処置」は、ある状態を処置するという文脈で本願明細書で使用する場合、一般に、ヒトであろうとまたは動物(例えば、獣医学での応用において)であろうと、いくらかの所望の治療効果、例えばその状態の進行の阻害が達成される処置および治療に関しており、そしてこのいくらかの所望の治療効果には進行速度の低下、進行速度の停止、その状態の退行、その状態の改善、およびその状態の治癒が含まれる。予防的措置としての処置(すなわち、予防、防止)も包含される。
【0090】
用語「治療上有効量」は、本願明細書で使用する場合、所望の処置計画に従って投与されたときに妥当な効果/リスク比と釣り合っていくらかの所望の治療効果をもたらすために有効である、活性化合物、または活性化合物を含む物質、組成物もしくは剤形の量に関する。
【0091】
用語「処置」は、2以上の処置または治療が例えば逐次的にまたは同時に組み合わされる併用処置および併用療法を包含する。
【0092】
処置および治療の例としては、化学療法(例えば、薬物、抗体(例えば、免疫療法におけるように)、プロドラッグ(例えば、光力学療法、GDEPT、ADEPTなどにおけるように)を含めた活性薬剤の投与);外科手術;放射線療法;および遺伝子治療が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
投与経路
メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態E、またはそれを含む医薬組成物は、全身/末梢または局所(すなわち、所望の作用の部位で)のいずれかで、いずれかの好都合な投与経路によって対象/患者に投与されてもよい。
【0094】
投与経路としては、経口(例えば、摂取による);口腔内;舌下;経皮(例えば、パッチ、硬膏剤などによることを含む);経粘膜(例えば、パッチ、硬膏剤などによることを含む);鼻腔内(例えば、鼻腔スプレーによる);眼内(例えば、点眼薬による);経肺(例えば、口または鼻を介した、例えばエアロゾルでの、吸入または通気療法による);経直腸(例えば、座薬または浣腸による);膣内(例えば、ペッサリーによる);非経口、例えば皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、髄腔内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、外皮下(subcuticular)、関節内、くも膜下、および胸骨内(例えば、脳の中への血管内カテーテル注入を含む)を含めた注射による;例えば皮下または筋肉内へのデポーまたはリザーバの移植によることが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
対象/患者
対象/患者は、動物、哺乳類、有胎盤哺乳類、有袋類(例えば、カンガルー、ウオンバット)、単孔類動物(例えば、カモノハシ)、齧歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科動物(例えば、マウス)、ウサギ目動物(例えば、ウサギ)、鳥類(例えば、トリ)、イヌ科動物(例えば、イヌ)、ネコ科動物(例えば、ネコ)、ウマ科動物(例えば、ウマ)、ブタ類(porcine)(例えば、ブタ)、ヒツジ(ovine)(例えば、ヒツジ)、ウシ属(例えば、ウシ)、霊長類、サル(simian)(例えば、サルまたはエイプ)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、エイプ(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトであってもよい。
【0096】
さらに、対象/患者は、その発達形態のいずれか、例えば胎児であってもよい。
【0097】
1つの好ましい実施形態では、この対象/患者はヒトである。
【0098】
製剤
メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを単独で使用する(例えば、投与する)ことは可能であるが、これを組成物または製剤として提供することが好ましいことが多い。
【0099】
1つの実施形態では、この組成物は、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eと、薬学的に許容できる担体、希釈剤、または賦形剤とを含む医薬組成物(例えば、製剤、調剤、医薬)である。
【0100】
1つの実施形態では、この組成物は、当業者にとっては周知である1以上の他の薬学的に許容できる成分と一緒に、少なくとも、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを含む医薬組成物であり、この他の薬学的に許容できる成分としては、薬学的に許容できる担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、矯味矯臭剤、および甘味剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
1つの実施形態では、当該組成物は、他の活性薬剤、例えば、他の治療薬または予防薬をさらに含む。
【0102】
適切な担体、希釈剤、賦形剤などは、標準的な医薬教書に見出すことができる。例えば、Handbook of Pharmaceutical Additives、第2版(M.AshおよびI.Ash編集)、2001 (Synapse Information Resources,Inc.、Endicott、New York、USA)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、pub. Lippincott,Williams & Wilkins、2000;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994を参照。
【0103】
本発明の別の態様は、医薬組成物を作製する方法であって、本願明細書に明記される[11C]で放射標識されたメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを、当業者にとっては周知である1以上の他の薬学的に許容できる成分、例えば、担体、希釈剤、賦形剤などと一緒に混合することを含む方法に関する。個別の単位(例えば、錠剤など)として製剤化される場合は、各単位は所定量(投薬量)の当該活性化合物を含有する。
【0104】
用語「薬学的に許容できる」は、本願明細書で使用する場合、信頼できる医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応、または他の問題または合併症なしに、妥当な効果/リスク比と釣り合って、問題の対象(例えば、ヒト)の組織と接触して使用するのに適している化合物、成分、物質、組成物、剤形などに関する。各担体、希釈剤、賦形剤などは、製剤の他の成分と適合性であるという意味でも、「許容できる」必要がある。
【0105】
当該製剤は、薬学の技術分野で周知のいずれの方法によって調製されてもよい。このような方法は、当該活性化合物を1以上の付属成分を構成する担体と合わせる工程を含む。一般に、当該製剤は、当該活性化合物を担体(例えば、液体担体、微粉化された固体担体など)と均一かつ密に合わせ、次いで必要に応じて製品を形作ることにより調製される。
【0106】
当該製剤は、迅速放出または徐放(slow release);即時放出性、遅延放出性、時限放出性(timed release)、または徐放性(sustained release);またはこれらの組み合わせを提供するように調製されてもよい。
【0107】
(例えば、注射による)非経口投与に適した製剤としては、当該活性成分が(例えば、リポソームまたは他の微粒子の中に)溶解され、懸濁され、または他の態様で与えられている、水系または非水系の、等張性の、発熱物質を含まない、滅菌された液体(例えば、溶液、懸濁液)が挙げられる。そのような液体は、抗酸化剤、緩衝剤、防腐剤、安定剤、静菌薬、懸濁剤、増粘剤、および当該製剤を意図されるレシピエントの血液(または他の関連する体液)と等張性にする溶質などの他の薬学的に許容できる成分をさらに含有してもよい。賦形剤の例としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などが挙げられる。このような製剤における使用のための適切な等張性担体の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、または乳酸加リンゲル液が挙げられる。典型的には、その液体の中の当該活性成分の濃度は、約1ng/ml〜約10μg/ml、例えば約10ng/ml〜約1μg/mlである。この製剤は、単位用量または多回用量の密閉された容器、例えばアンプルおよびバイアルで提供されてもよく、そして使用の直前に注入のために滅菌された液体担体、例えば水の添加だけを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥された)状態で保存されてもよい。すぐに使用できる注射液および注射用懸濁剤は、滅菌された粉末、顆粒、および錠剤から調製されてもよい。
【0108】
好ましい製剤の例
本発明の1つの態様は、20〜300mgの、本願明細書に記載されるメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eと、薬学的に許容できる担体、希釈剤、または賦形剤とを含む投薬単位(例えば、医薬錠剤またはカプセル剤)に関する。
【0109】
1つの実施形態では、この投薬単位は錠剤である。1つの実施形態では、この投薬単位はカプセル剤である。
【0110】
1つの実施形態では、この量は20〜200mgである。1つの実施形態では、この量は約20mgである。1つの実施形態では、この量は約60mgである。1つの実施形態では、この量は約100mgである。1つの実施形態では、この量は約150mgである。1つの実施形態では、この量は約200mgである。
【0111】
1つの実施形態では、薬学的に許容できる担体、希釈剤、または賦形剤は、グリセリド(例えば、Gelucire 44/14(登録商標);ラウロイル マクロゴール−32 グリセリド PhEur、USP)およびコロイド状二酸化ケイ素(例えば、2% Aerosil200 (登録商標);コロイド状二酸化ケイ素 PhEur、USP)のうちの一方もしくは両方であるか、またはこれらのうちの一方もしくは両方を含む。
【0112】
投薬量
メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態E、およびメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを含む組成物の適切な投薬量は、患者ごとに変わる可能性があるということは、当業者ならわかるであろう。最適投薬量を決定することは、一般に、いずれかのリスクまたは有害な副作用に対する治療上の利益のレベルの衡量を伴うであろう。選択される投薬量レベルは、様々な要因(特定の化合物の活性、投与経路、投与回数、当該化合物の排泄速度、処置の継続期間、併用される他の薬物、化合物、および/または物質、状態の重症度、ならびに患者の種属、性別、年齢、体重、状態、全般的な健康状態、およびそれまでの病歴が挙げられるが、これらに限定されない)に依存するであろう。化合物量および投与経路は、最終的には医師、獣医、または臨床医の判断によることになるが、一般に投薬量は、実質的に危険なまたは有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成する作用部位での局所濃度を達成するように選択されることになる。
【0113】
投与は、1つの用量で、または治療過程全体にわたって連続的にもしくは間歇的に(例えば、適切な間隔での分割用量で)行うことができる。投与の最も有効な手段および投薬量を決定する方法は当業者にとって周知であり、治療のために使用される製剤、治療の目的、処置しようとする標的細胞、および処置しようとする対象とともに変わることになる。単回または複数回の投与は、処置している医師、獣医、または臨床医によって選択される用量レベルおよびパターンを用いて行うことができる。
【0114】
一般に、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの適切な用量は、1日あたり、対象の体重1キログラムあたり約100ng〜約25mg(より典型的には約1μg〜約10mg)の範囲にある。
【0115】
1つの実施形態では、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eは、以下の用量・用法に従ってヒト患者に投与される:約100mg、1日3回。
【0116】
1つの実施形態では、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eは、以下の用量・用法に従ってヒト患者に投与される:約150mg、1日2回。
【0117】
1つの実施形態では、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eは、以下の用量・用法に従ってヒト患者に投与される:約200mg,1日2回。
【0118】
以下の実施例は本発明を説明するが、上記の記載された範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0119】
実験:
粉末X線回折(PXRD):PXRDは、CuKα線を使用してBruker D8 Advance粉末X線回折計で実施した。面間隔dは、1.54180Åの波長を使用して2θ値から算出される。一般に、2θ値は±0.1〜0.2°の誤差範囲内にある。それゆえ、面間隔dの値に関する実験誤差は、ピーク位置に依存する。
【0120】
示差走査熱量測定(DSC):Perkin Elmer DSC 7、測定は、周囲条件下で密閉した金製の試料パンの中で実施した。20K/分または100K/分のいずれかの加熱速度を使用した。本願明細書中で与えられるすべての融点は、DSC測定のピーク温度から決定した。
【0121】
熱重量分析(TG):Perkin Elmer TGS 2。アルミニウムるつぼ(開放系)、N雰囲気、加熱速度0℃/分、範囲25〜350℃。
【0122】
IR検出を用いた熱重量測定(TG−FTIR):Bruker FTIR Spectrometer Vector 22に連結したNetzsch Thermo−Microbalance TG 209(ピンホールを有する試料パン、窒素雰囲気、加熱速度10K/分)。
【0123】
水和物 形態A
メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aは、国際公開第2006/032879号パンフレットに従って調製される生成物の、0.1M塩酸からの再結晶化ならびに約60mbarの減圧中および室温での乾燥によって得られうる(実施例17を参照)。比較として、形態Aについてのd値(Å)を表1に与える。
【0124】
【表1】

【0125】
括弧の中の略語は、以下のとおり意味する:(vs)=非常に高い強度;(s)=高い強度;(m)中程度の強度;および(w)=低い強度。
【0126】
ATR−IRにおける形態Aの特徴的なIRシグナルは、1491、1421、1356、1225/1215(二重のピーク)、1177、および1151cm−1に認められる。
【0127】
A)多形形態Bの調製
実施例A1:
150mgの結晶性のメチルチオニニウム塩化物五水和物を相対湿度35%、60℃で5日間加熱した。この生成物に対する熱重量分析で、150℃の温度までに10.6%の重量減少が示された。これは2当量の水の存在に対応する。PXRDにより結晶性試料であることが明らかになった。粉末X線回折パターンは図1に示され、2θにおける特徴的なピークは、対応するÅ単位の面間隔dの値とともに表2に与えられる。DSC(−50℃から210℃、100℃/分、金るつぼ)により、低温側に肩を伴って186℃に融解ピークが明らかになった。
【0128】
【表2】

【0129】
実施例A2:
1gの、少量の形態Bが混入した結晶性のメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態A粉末を、およそ9%の相対湿度を有する加湿された窒素の流れのもとで、小型マグネチックスターラーを用いた撹拌下で、室温で3週間、保存した。脱水は3週間後に完結し、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bを緑がかった結晶粉末として定量的に与えた。PXRDは、実施例A1のPXRDに合致した。
【0130】
実施例A3:
2gの、少量の形態Bが混入した結晶性のメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態A粉末を、およそ14%の相対湿度を有する加湿された窒素の流れのもとで、小型マグネチックスターラーを用いた撹拌下で、室温で4週間、保存した。脱水は3週間後に完結し、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bを緑がかった結晶粉末として定量的に与えた。PXRDは、実施例A1のPXRDに合致した。
【0131】
B)多形形態Cの調製
実施例B1:
メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aおよびメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bの混合物(170mg)を2mlのアセトニトリルに懸濁させ、室温で4日間撹拌した。固体を濾別し、1mbarの減圧中、室温で15分間乾燥した。110mgのメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cを、緑がかった結晶粉末として得た。
【0132】
PXRDにより結晶性試料であることが明らかになった。粉末X線回折パターンは図2に示され、2θにおける特徴的なピークは、対応するÅ単位の面間隔dの値とともに表3に与えられる。TG−FTIRにより、室温〜150℃の間で2段階の約11.4%の質量減少が明らかになった。この約11.4%の質量減少は2.2当量の水分含量に対応し、これは二水和物について予想される量よりわずかに多かった。DSC(−50℃から210℃、100℃/分、金るつぼ)により、151℃および183℃の2つの吸熱ピークが明らかになった。
【0133】
【表3】

【0134】
実施例B2:
175mgの、メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aおよびメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bの混合物を、約100℃で、3mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。この溶液を室温まで冷却し、冷蔵庫の中で一晩保存した。冷たい固体混合物を室温まで加温し、これによってDMSOが融解した。残りの固体を濾別し、1mbarの減圧中、室温で乾燥した。これにより、135mgの緑がかったメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cを得た。PXRDは、実施例B1のPXRDに合致した。
【0135】
実施例B3:
2gのメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを10mlのアセトニトリルに懸濁させ、室温で6日間撹拌した。固体を濾別し、1mbarの減圧中、室温で15分間乾燥した。この手順を2回繰り返した。純粋なメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cを、緑がかった結晶粉末として得た。PXRDは、実施例B1のPXRDに合致した。熱重量分析により、室温〜150℃の間で2段階の、9.8%の質量減少が明らかになった。この全質量減少は、ほぼ正確に2当量の水分含量に対応する。
【0136】
実施例B4:
メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態A、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cおよびメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dを含む混合物100mgを、20μlの水(約12%相対湿度に対応する)を含有する2mlのイソプロパノールに懸濁させた。この懸濁液を室温で6日間撹拌した。固体を濾別し、1mbarの減圧中、室温で5分間乾燥した。これにより、純粋なメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cを緑がかった結晶粉末として得た。PXRDは、実施例B1のPXRDに合致した。
【0137】
実施例B5:
メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態A、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cおよびメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dを含む混合物100mgを、50μl水(相対湿度約28%)を含有する2mlのイソプロパノールに懸濁させた。この懸濁液を室温で6日間撹拌した。固体を濾別し、1mbarの減圧下、室温で5分間乾燥した。これにより、純粋なメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cを緑がかった結晶粉末として得た。PXRDは、実施例B1のPXRDに合致した。
【0138】
100mgのこの粉末状生成物を、1to/0.5cmの圧力で錠剤へと圧縮した。形態Cはこの錠剤の中で保持された。PXRDは、実施例B1のPXRDに合致した。
【0139】
実施例B6:
500mgのメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを10mlのイソプロパノールに懸濁させ、2週間撹拌した。固体を濾別し、1mbarの減圧下、室温で5分間乾燥した。これにより、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cを緑がかった結晶粉末として得た。PXRDは、実施例B1のPXRDに合致した。
【0140】
C)水和物 形態Dの調製
実施例C1:
100mgのメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Bを2mlの純粋な酢酸に溶解させた。この溶液を0.2μmのシリンジフィルターに通して濾過し、10mlのトルエンに加えた。粘着性のある沈殿物が短時間のうちに生成した。沈殿から約3分後にこの固体を濾別し、トルエンで洗浄し、1mbarの減圧下、室温で15分間乾燥した。これにより、70mgのメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dを灰色〜紫色の結晶粉末として得た。
【0141】
PXRDにより結晶性試料であることが明らかになった。粉末X線回折パターンは図3に示され、2θにおける特徴的なピークは、対応するÅ単位の面間隔dの値とともに表4に与えられる。TGにより約9.3%の質量減少が明らかになり、TG−FTIRにより、室温〜150℃の間で、約11.0%の質量減少が明らかになった。この約11.0%の質量減少は2.2当量の水分含量に対応し、これは二水和物について予想される量よりわずかに多かった。DSC(−50℃から210℃、100℃/分、金るつぼ)により、164℃および185℃の2つの吸熱ピークが明らかになった。
【0142】
【表4】

【0143】
実施例C2:
118mgのメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを2mlの純粋な酢酸に溶解させた。この溶液を0.2μmのシリンジフィルターに通して濾過し、10mlのトルエンに加えた。粘着性のある沈殿物が短時間のうちに生成した。沈殿から約3分後にこの固体を濾別し、トルエンで洗浄し、室温で60分間乾燥した。これにより、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dを灰色〜紫色の結晶粉末として得た。PXRDは、実施例C1のPXRDに合致した。
【0144】
実施例C3:
1gのメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを10mlのメタノールに溶解させた。この溶液を0.2μmのシリンジフィルターに通して濾過し、撹拌することなく100mlのt−ブチル−メチルエーテル(tBME)に加えた。沈殿物が短時間のうちに生成した。沈殿から約3分後にこの固体を濾別し、tBMEで洗浄し、窒素の流れの中で1時間、乾燥した。これにより、850mgのメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dを灰色〜紫色の結晶粉末として得た。PXRDは、実施例C1のPXRDに合致した。
【0145】
D)水和物 形態Eの調製
実施例D1:
メチルチオニニウム塩化物五水和物 形態A、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、メチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Cおよびメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態Dを含む混合物80mgを、0.1重量%未満の水を含有する2mlの乾燥イソプロパノールに懸濁させた。この懸濁液を、25℃〜35℃の間の温度サイクルのもとで1週間、撹拌した。固体を濾過し、1mbarの減圧下、室温で5分間乾燥した。これにより、メチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを黄土色の結晶粉末として得た。
【0146】
PXRDにより結晶性試料であることが明らかになった。粉末X線回折パターンは図4に示され、2θにおける特徴的なピークは、対応するÅ単位の面間隔dの値とともに表5に与えられる。TGにより、室温〜125℃の間で約5.1%の質量減少が明らかになった。この約5.1%の質量減少は1当量の水分含量に対応する。DSC(−50℃から210℃、100℃/分、金るつぼ)により、約200℃の分解温度まで熱的事象がないことが明らかになった。
【0147】
【表5】

【0148】
実施例D2:
1gのメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを20mlの乾燥イソプロパノールに懸濁させ、室温で3日間撹拌した。この固体を濾別し、10mlの乾燥イソプロパノールに再懸濁し、さらに9日間撹拌した。この固体を再度濾別した。溶媒がなくなると、濾過ケーキは黄土色に変わった。残留するイソプロパノールを、乾燥窒素の流れのもとで2時間除去した。これにより、700mgのメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを黄土色の結晶性の粉末として得た。PXRDは、実施例D1のPXRDに合致した。
【0149】
実施例D3:
1gのメチルチオニニウム塩化物五水和物 形態Aを10mlの乾燥イソプロパノールに懸濁させ、室温で1日撹拌した。この固体を濾別し、10mlの乾燥イソプロパノールに再度懸濁し、3日間撹拌した。濾過、再懸濁液および撹拌をもう一度繰り返した。固体は黄土色に変わった。最後に、この黄土色の固体を濾別し、残留するイソプロパノールを、乾燥窒素の流れのもとで2時間除去した。これにより、650mgのメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを黄土色の結晶性の粉末として得た。PXRDは、実施例D1のPXRDに合致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形態Cとしての結晶性のメチルチオニニウム塩化物二水和物。
【請求項2】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項1に記載の化合物:
【表1】

【請求項3】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項1に記載の化合物:
【表2】

【請求項4】
示差走査熱量測定において毎分100℃の速度で加熱されるときに、151℃および183℃に2つの吸熱極大を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
実質的に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の形態Cの形態にあるメチルチオニニウム塩化物二水和物の調製のためのプロセスであって、
含水メチルチオニニウム塩化物または種々の水和物の混合物またはメチルチオニニウム塩化物の特定の水和物を、少量の水を含有する、イソプロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、2−ブタノン、およびアセトニトリルを含む群から選択される溶媒の中で、常温で、形態Cを生成するのに十分な時間、懸濁および撹拌する工程と、
次いで固体を単離する工程と、
前記固体から前記溶媒を除去する工程と
を含む、プロセス。
【請求項6】
形態Eとしての結晶性のメチルチオニニウム塩化物一水和物。
【請求項7】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項6に記載の化合物:
【表3】

【請求項8】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項6に記載の化合物:
【表4】

【請求項9】
示差走査熱量測定において毎分100℃の速度で加熱されるときに、220℃付近の分解温度まで熱的事象を示さない、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
実質的に、請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の形態Eの形態にあるメチルチオニニウム塩化物一水和物の調製のためのプロセスであって、
含水メチルチオニニウム塩化物または種々の水和物の混合物またはメチルチオニニウム塩化物の特定の水和物を乾燥溶媒、好ましくはイソプロパノール中で、常温で、形態Eを生成するのに十分な時間、懸濁および撹拌する工程と、
固体を濾過によって単離する工程と、
残留する溶媒を、減圧乾燥によって、または乾燥ガスでパージすることによって前記固体から除去する工程と
を含むプロセス。
【請求項11】
形態Dとしての結晶性のメチルチオニニウム塩化物二水和物。
【請求項12】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項11に記載の化合物:
【表5】

【請求項13】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項11に記載の化合物:
【表6】

【請求項14】
示差走査熱量測定において毎分100℃の速度で加熱されるときに、164℃および185℃に2つの吸熱ピーク極大、および63℃付近にベースラインの段を有する、請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
実質的に、請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の形態Dの形態にあるメチルチオニニウム塩化物二水和物の調製のためのプロセスであって、
メチルチオニニウム塩化物五水和物を酢酸に溶解させる工程と、
トルエンを前記酢酸溶液に加えるかまたは前記酢酸溶液をトルエンに加えるかのいずれかにより、前記溶液をトルエンと合わせる工程と、
沈殿のあと短時間のうちに固体を濾過によって単離する工程と、
溶媒を、減圧乾燥によって、または不活性ガスの流れの中で除去する工程と
を含み、すべてのプロセス工程における相対空気湿度は50%未満である、プロセス。
【請求項16】
実質的に形態Bとしての結晶性のメチルチオニニウム塩化物二水和物。
【請求項17】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項16に記載の化合物:
【表7】

【請求項18】
粉末X線回折パターンにおいて以下の特徴的なピークを有する請求項16に記載の化合物:
【表8】

【請求項19】
示差走査熱量測定において毎分100℃の速度で加熱されるときに、低温側に肩を伴って186℃に融解ピークを有する、請求項16から請求項18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
実質的に、形態Bの形態にあるメチルチオニニウム塩化物二水和物の調製のためのプロセスであって、
固体のメチルチオニニウム塩化物五水和物を、相対湿度8〜15%を有する不活性ガスの流れに、ほぼ室温で、実質的に純粋な形態Bを生成するのに十分な時間、曝す工程
を含むプロセス。
【請求項21】
請求項1から請求項4、請求項5から請求項9、請求項11から請求項14または請求項16から請求項19のいずれか1項に記載のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から請求項4、請求項5から請求項9、請求項11から請求項14または請求項16から請求項19のいずれか1項に記載のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eと、薬学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項23】
治療によるヒトまたは動物の身体の処置方法における使用のための、請求項1から請求項4、請求項5から請求項9、請求項11から請求項14または請求項16から請求項19のいずれか1項に記載のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態E。
【請求項24】
疾患状態の処置における、請求項1から請求項4、請求項5から請求項9、請求項11から請求項14または請求項16から請求項19のいずれか1項に記載のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの使用。
【請求項25】
タウオパチー、アルツハイマー病(AD)、皮膚癌、黒色腫、C型肝炎、HIVまたはウエストナイルウイルスの処置における、請求項1から請求項4、請求項5から請求項9、請求項11から請求項14または請求項16から請求項19のいずれか1項に記載のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eの使用。
【請求項26】
患者におけるタウオパチー、アルツハイマー病(AD)、皮膚癌、黒色腫、C型肝炎、HIVまたはウエストナイルウイルスの処置方法であって、前記患者に、治療上有効量の、請求項1から請求項4、請求項5から請求項9、請求項11から請求項14または請求項16から請求項19のいずれか1項に記載のメチルチオニニウム塩化物二水和物 形態B、形態Cもしくは形態Dまたはメチルチオニニウム塩化物一水和物 形態Eを投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−505925(P2013−505925A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530357(P2012−530357)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002526
【国際公開番号】WO2011/036558
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(510090737)ウィスタ ラボラトリーズ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】