説明

結晶性ポリエステルの製造方法

【課題】粉砕性の変動が小さい結晶性ポリエステル、該結晶性ポリエステルを、安定して製造する方法、及び該結晶性ポリエステルを用いたトナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】工程1:炭素数2〜8のα,ω-直鎖脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させる工程、及び工程2:工程1の縮重合反応中又は縮重合反応後に、カテコール骨格を有する化合物及びハイドロキノン骨格を有する化合物から選ばれる1種以上及びラジカル重合開始剤を添加して、結晶性ポリエステルを得る工程を含む、結晶性ポリエステルの製造方法、該方法により得られた結晶性ポリエステル、並びに該結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕する工程を含む、トナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等に用いられる電子写真用トナーの結着樹脂等として用いられる結晶性ポリエステル、その製造方法、及び該結晶性ポリエステルを用いたトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、結晶性ポリエステルは、結晶部分が発現するシャープメルト性と、ポリエチレン等の他の結晶性樹脂と異なり非晶質ポリエステルとの相溶性が高く、分散が容易であるという特徴により、トナーの低温定着性向上に適した結着樹脂として注目されている。
【0003】
特許文献1には、球状であって、低温での定着性に優れ、広い温度領域において耐オフセット性の良好な電子写真用トナーを提供することを課題として、結着樹脂と着色剤とを含む電子写真用トナーにおいて、前記結着樹脂が、不飽和部位による架橋構造を有する結晶性ポリエステルを主成分として含み、かつトナー粒子が球状であることを特徴とする電子写真用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−117268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナーの耐久性を向上させるには、結着樹脂の粉砕性が必要であるが、一般に、結晶性ポリエステルは、非晶質ポリエステルと比較して、結晶性ポリエステルが結晶部分を有していることから、粉砕性に劣り、粉砕機等の部材を汚染しやすい。また、粉砕性を向上させたとしても、安定した粉砕性の結晶性ポリエステルを製造できなければ、トナーの生産効率が低下するという課題を抱えている。
【0006】
本発明の課題は、粉砕性の変動が小さい結晶性ポリエステル、該結晶性ポリエステルを、安定して製造する方法、及び該結晶性ポリエステルを用いたトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
〔1〕 工程1:炭素数2〜8のα,ω-直鎖脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させる工程、及び
工程2:工程1の縮重合反応中又は縮重合反応後に、カテコール骨格を有する化合物及びハイドロキノン骨格を有する化合物から選ばれる1種以上及びラジカル重合開始剤を添加して、結晶性ポリエステルを得る工程
を含む、結晶性ポリエステルの製造方法、
〔2〕 前記〔1〕記載の方法により得られた結晶性ポリエステル、並びに
〔3〕 前記〔2〕記載の結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕する工程を含む、トナーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、粉砕性の変動が小さい結晶性ポリエステルを、安定して製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、結晶性ポリエステルを製造するにあたり、カルボン酸成分として不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物を用い、ラジカル重合開始剤によって、ポリエステルの一部を高分子量化することにより、粉砕性が改善された結晶性ポリエステルが得られることを見出した。これは、結晶性ポリエステルが結晶化する際に、高分子量部分とその他の部分で結晶成長速度が異なるため、結晶性樹脂内でミクロな歪が生じており、これが結晶性ポリエステルの粉砕性の向上に寄与しているものと考えられる。しかしながら、結晶性ポリエステルの融点は通常100℃程度であるため、それ以上の高い温度でラジカル重合開始剤を添加する必要があるが、反応性が非常に高くなるため、わずかな添加条件の振れにより、結晶性ポリエステルの粉砕性が変化する。そのため、安定した粉砕性能を有する結晶性ポリエステルを製造することは困難であった。
【0010】
そこで、本発明者らがさらに検討した結果、ラジカル重合開始剤と前後して、好ましくはラジカル重合開始剤の添加前に、カテコール骨格を有する化合物及びハイドロキノン骨格を有する化合物から選ばれる1種以上を反応系内に添加しておけば、ラジカル重合開始剤の活性をある程度低下させることができ、粉砕性の変動の小さい結晶性ポリエステルを安定して製造することができることを見出した。
【0011】
以上の観点から、本発明においては、
工程1:炭素数2〜8のα,ω-直鎖脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させる工程、及び
工程2:工程1の縮重合反応中又は縮重合反応後に、カテコール骨格を有する化合物及びハイドロキノン骨格を有する化合物から選ばれる1種以上及びラジカル重合開始剤を添加して結晶性ポリエステルを得る工程
を含む方法により、結晶性ポリエステルを製造する。
【0012】
ポリエステルの結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち軟化点/吸熱の最高ピーク温度で表わされ、一般にこの値が1.4を超えると樹脂は非晶質であり、0.6未満の時は結晶性が低く非晶部分が多い。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。本発明において、「結晶性ポリエステル」とは、軟化点/吸熱の最高ピーク温度の値が0.6〜1.4、好ましくは0.8〜1.2であるポリエステルをいい、「非晶質ポリエステル」とは、軟化点/吸熱の最高ピーク温度の値が1.4より大きいか、0.6未満、好ましくは1.4より大きいポリエステルをいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度が軟化点の±20℃以内にあれば、そのピーク温度を融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。なお、本発明において、単に「ポリエステル」という場合は、結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルの両方を意味する。
【0013】
アルコール成分としては、結晶性ポリエステルの結晶性及び粉砕性を高める観点から、炭素数2〜8のα,ω-直鎖脂肪族ジオールを含有する。
【0014】
炭素数2〜8のα,ω-直鎖脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、炭素数は4〜8が好ましく、4〜6がより好ましい。
【0015】
前記α,ω-直鎖脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、70〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%がさらに好ましい。
【0016】
3価以上の多価アルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0017】
アルコール成分は、結晶性ポリエステルの粉砕性の観点から、3価以上の多価アルコール成分は含有していないか、含有していても含有量は、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。
【0018】
不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、これらの酸の無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステル等のジカルボン酸化合物が好ましく、これらのなかでは、結晶性の観点から、フマル酸、マレイン酸、それらの酸の無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、フマル酸化合物及びマレイン酸化合物の少なくともいずれかであることがより好ましい。本発明において、上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
【0019】
不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、結晶性ポリエステルの粉砕性の観点から、カルボン酸成分中、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好まし、70モル%以上がよりさらに好ましく、80モル%以上がよりさらに好ましく、98モル%以上がよりさらに好ましい。
【0020】
不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物以外のジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0021】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0022】
カルボン酸成分は、結晶性ポリエステルの粉砕性の観点から、3価以上の多価カルボン酸化合物は含有していないか、含有していても含有量は、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、1モル%以下がさらに好ましい。
【0023】
工程1において、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、錫化合物、チタン化合物等のエステル化触媒の存在下、不活性ガス雰囲気中で行うことができ、その温度は、120〜230℃が好ましい。
【0024】
エステル化触媒は、公知のものを用いることができる。錫化合物としては、(R1COO)2Sn(ここでR1は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R2O)2Sn(ここでR2は炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R1COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましい。チタン化合物としては、テトラ-n-ブチルチタネート〔Ti(C49O)4〕、テトラプロピルチタネート〔Ti(C37O)4〕、テトラステアリルチタネート〔Ti(C1837O)4〕、テトラミリスチルチタネート〔Ti(C1429O)4〕、テトラオクチルチタネート〔Ti(C817O)4〕、ジオクチルジヒドロキシオクチルチタネート〔Ti(C817O)2(OHC816O)2〕、ジミリスチルジオクチルチタネート〔Ti(C1429O)2(C817O)2〕等が挙げられる。
【0025】
上記錫化合物及びチタン化合物は、1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0026】
エステル化触媒の存在量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜2.0重量部が好ましく、0.1〜1.5重量部がより好ましく、0.2〜1.0重量部がさらに好ましい。
【0027】
結晶性ポリエステルにおける、カルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、0.9以上1.0未満が好ましく、0.95以上1.0未満がより好ましい。
【0028】
縮重合反応に際しては、樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させる等の方法を用いてもよい。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させてもよい。
【0029】
工程2において、カテコール骨格を有する化合物及びハイドロキノン骨格を有する化合物から選ばれる1種以上(以下、単にカテコール類ともいう)としては、t−ブチルカテコール、3−フェニルカテコール等のカテコール骨格を有する化合物;ハイドロキノン、4-メトキシフェノール(ハイドロキノンモノメチルエ−テル)、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン骨格を有する化合物等が挙げられ、これらの中では、反応制御、即ち、結晶性ポリエステルの粉砕性を一定にする観点から、t−ブチルカテコールが好ましい。
【0030】
カテコール類の使用量は、縮重合反応に用いられるアルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.02〜1重量部がより好ましく、0.03〜0.5重量部がさらに好ましい。
【0031】
ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、ジブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカルボネイト等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0032】
ラジカル重合開始剤の使用量は、縮重合反応に用いられるアルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.02〜1重量部がより好ましく、0.03〜0.5重量部がさらに好ましく、不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物100重量部に対して、0.02〜1重量部が好ましく、0.04〜0.5重量部がより好ましく、0.05〜0.3重量部がさらに好ましい。カテコール類とラジカル重合開始剤との重量比(カテコール類/ラジカル重合開始剤)は、1/10〜10/1が好ましく、1/5〜5/1がより好ましく、1/2〜3/1がさらに好ましい。
【0033】
ラジカル重合開始剤は、炭素数2〜18のアルコールと混合して、反応系内に添加することが好ましい。ラジカル重合開始剤を炭素数2〜18のアルコールと混合して、即ち、炭素数2〜18のアルコールで希釈して、反応系内に添加することにより、ラジカル重合開始剤の添加量に対する結晶性ポリエステルの粉砕性の変動がさらに小さくなり、より安定したポリエステルを製造することができる。また、ラジカル重合開始剤をアルコールで希釈して用いることにより、トータルの使用量の多少にかかわらず、即ち使用量が少なくても同等の物性が得られ、さらに、安定した物性が得られやすい。これは、ラジカル開始剤を単独で添加する場合、湿度や反応水の影響により、滴下前に一部失活してしまうのに対し、アルコール中に入れることにより、添加前の失活を防止することができるためと推定される。
【0034】
ラジカル重合開始剤と混合するアルコールの炭素数は2〜18であり、好ましくは2〜6である。また、ラジカル重合開始剤と混合するアルコールは、結晶性ポリエステルの粉砕性の観点から、飽和脂肪族アルコールが好ましく、一級のアルコールがより好ましい。
【0035】
工程2において、カテコール類とラジカル重合開始剤は、反応制御の観点から、縮重合反応の反応率が、好ましくは40〜90%、より好ましくは60〜85%の時点で添加することが望ましい。ここで、縮重合反応の反応率は、理論反応水の排出完了時を100%として換算された値であり、例えば、反応率が80%とは理論反応水の80%が排出した時点である。
【0036】
また、ラジカル重合開始剤は、反応制御、即ち、結晶性ポリエステルの粉砕性を一定にする観点から、カテコール類と同時に又はカテコール類を添加した後に、添加することが好ましく、カテコール類を添加した後に添加することがより好ましい。カテコール類を添加した後、ラジカル重合開始剤を添加する場合は、カテコール類が反応系中に均一に分散していることが、反応スケールにもよるが、カテコール類を添加した後、好ましくは10分〜2時間程度、より好ましくは15分〜1時間程度反応系内を攪拌してから、ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。
【0037】
ラジカル重合開始剤の添加時間は、発熱する安全性、反応槽の温度コントロールの観点、結晶性ポリエステルのポリエステル間の粉砕性のバラツキを抑制する観点、結晶性ポリエステルの粉砕性を向上する観点から、反応スケールにもよるが、好ましくは15分〜1時間程度、より好ましくは25〜50分間かけて徐々に、ほぼ均等の速度で添加することが好ましい。
【0038】
工程2において、ラジカル重合開始剤を添加する際の反応系内の温度は、ラジカル重合開始剤による付加重合反応を進行させる観点から、100〜200℃が好ましく、140〜180℃がより好ましい。
【0039】
反応時間は、反応スケールにもよるが、通常30分〜5時間が好ましく、30分〜3時間が好ましい。
【0040】
付加重合反応後、さらに縮重合反応を行うことが、結晶性ポリエステルの粉砕性及び樹脂の軟化点の観点から好ましい。その場合、反応温度は、好ましくは190〜230℃、より好ましくは190〜210℃が好ましい。
【0041】
結晶性ポリエステルの融点は、トナーの低温定着性の観点から、70〜140℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜115℃である。結晶性ポリエステルの融点は、後述する樹脂の吸熱の最高ピーク温度として求めることができる。
【0042】
結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性の観点から、60〜130℃が好ましく、より好ましくは70〜125℃、さらに好ましくは85〜120℃である。結晶性ポリエステルの融点及び軟化点は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により容易に調整することができる。
【0043】
本発明の方法により得られた結晶性ポリエステルは、粉砕性のバラツキが小さく、粉砕トナーの製造過程において、同じ粉砕条件で生産効率よく混練物を粉砕することができる。また、非晶質ポリエステルと適度な相溶性を有するとともに、非晶質ポリエステルと溶融混練した後も適度の結晶性を維持することができ、非晶質ポリエステルと溶融混練した後の再結晶化が促進される。従って、本発明ではさらに、本発明の方法により得られた結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを結着樹脂として用いた粉砕トナーの製造方法、即ち、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕する工程を含む、トナーの製造方法を提供する。
【0044】
非晶質ポリエステルも、結晶性ポリエステルと同様に、原料モノマーとしてアルコール成分とカルボン酸成分とを用い、それらを縮重合させて得られるが、アルコール成分としては、芳香族ジオール等の樹脂の非晶質化を促進させるモノマーが含有されていることが好ましい。
【0045】
樹脂の非晶質化を促進させる芳香族ジオールとしては、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の式(I):
【0046】
【化1】

【0047】
(式中、R3O及びOR3はオキシアルキレン基であり、R3はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0048】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
【0049】
また、カルボン酸成分に含まれるジカルボン酸化合物としては、フマル酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の炭素数2〜30、好ましくは2〜8の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;これらの酸の無水物、及び酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0050】
また、3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0051】
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、樹脂の分子量調整等のために、適宜含有されていてもよい。
【0052】
非晶質ポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを、例えば、不活性ガス雰囲気中、要すればエステル化触媒、カテコール類等の存在下、180〜250℃で縮重合させて得られる。
【0053】
非晶質ポリエステルの軟化点は、トナーの低温定着性及び保存性の観点から、90〜160℃が好ましく、95〜155℃がより好ましく、115〜150℃がさらに好ましい。
【0054】
非晶質ポリエステルのガラス転移点は、トナーの低温定着性及び保存性の観点から、45〜85℃が好ましく、50〜80℃がより好ましく、58〜75℃がさらに好ましい。なお、ガラス転移点は非晶質樹脂に特有の物性であり、吸熱の最高ピーク温度とは区別される。
【0055】
また、非晶質ポリエステルの酸価は、トナーの帯電性と環境安定性の観点から、1〜90mgKOH/gが好ましく、2〜90mgKOH/gがより好ましく、3〜88mgKOH/gがさらに好ましい。
【0056】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
【0057】
結着樹脂中、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルの重量比(結晶性ポリエステル/非晶質ポリエステル)は、トナーの低温定着性と耐久性との観点から、10/90〜40/60が好ましく、10/90〜30/70がより好ましく、20/80〜30/70がさらに好ましい。
【0058】
結着樹脂には、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等のポリエステル以外の樹脂が、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。前記の結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルの総含有量は、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質100重量%がさらに好ましい。
【0059】
本発明の方法により得られるトナーは、結晶核剤を用いてもよい。含有していてもよい。結晶核剤により、結晶成長速度が速まり、非晶質部が低減されることにより、トナーの硬度が高まる。
【0060】
結晶核剤としては、結晶化促進効果の観点から、芳香族アミド化合物が好ましく、具体的には、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、N,N’-ジシクロオクチル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、N,N’-ジシクロドデシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミド、N,N’-ジシクロヘキシル-4,4'-ビフェニルジカルボキサミド等が挙げられる。
【0061】
芳香族アミド化合物の含有量は、トナーの低温定着性及び保存安定性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、0.5〜3.0重量部がより好ましく、1.0〜2.0重量部がさらに好ましい。
【0062】
さらに、トナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0063】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、黒色顔料、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾイエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0064】
着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0065】
荷電制御剤としては、クロム系アゾ染料、鉄系アゾ染料、アルミニウムアゾ染料、サリチル酸金属錯体等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、0.5〜7重量部がより好ましい。
【0067】
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、シリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナバロウワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス等のワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0069】
離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、結着樹脂中への分散性の観点から、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、1.5〜7重量部がさらに好ましい。
【0070】
本発明のトナーの製造方法としては、本発明の結晶性ポリエステル及び非晶質ポリエステルを含むトナー原料を溶融混練する工程及び得られた混練物を粉砕する工程を含む方法が好ましい。本発明の結晶性ポリエステルは、非晶質ポリエステルとの相溶性が一般の結晶性ポリエステルよりもやや低いため、非晶質ポリエステルと溶融混練しても、結晶性の低下を抑制することができる。
【0071】
溶融混練する際の、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとの混合重量比 (結晶性ポリエステル/非晶質ポリエステル)は、トナーの低温定着性と耐久性との観点から、10/90〜40/60が好ましく、10/90〜30/70がより好ましく、20/80〜30/70がさらに好ましい。
【0072】
原料の溶融混練は、例えば、結晶性ポリエステル、非晶質ポリエステル、着色剤等を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で適宜混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の混練機を用いて行うことができる。
【0073】
溶融混練の際の温度は、各原料が十分に混ざり合える程度の温度であれば特に限定されないが、好ましくは(Ta-30)℃以上、(Ta+40)℃以下である。ここで、Taとは各結着樹脂の軟化点を加重平均して求めた重量平均軟化点(℃)である。具体的には、100〜150℃が好ましく、110〜140℃がより好ましい。
【0074】
本発明においては、溶融混練工程の後、粉砕工程の前に、得られた溶融混練物を冷却し、さらに、加熱保持する工程を行うことが好ましい。加熱保持工程により、結晶化を促進し非晶質部を低減することができる。
【0075】
加熱保持工程は、ケーキングや凝集物の発生を抑えながら効果的に再結晶化と形状を制御する観点から、加熱温度t(℃)が、
好ましくはTg1-20≦t≦Tm、
(式中、Tg1は、非晶質ポリエステルのガラス転移点(℃)、Tmは結晶性ポリエステルの融点(℃)である)
を満足する条件下で行うことが望ましい。具体的には、40〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
【0076】
加熱保持の供する溶融混練物は、結晶化促進の観点から、一旦上記温度未満の温度まで冷却した後、上記温度範囲に加熱することが好ましい。
【0077】
加熱保持工程の時間は、生産性と再結晶化、形状制御の観点から、2〜36時間が好ましく、5〜30時間がより好ましく、5〜12時間がさらに好ましい。
【0078】
加熱保持工程には、オーブン等を用いることができる。例えば、オーブンを用いる場合、溶融混練物をオーブン内で、一定温度に保持することにより、加熱保持工程を行うことができる。また、恒温恒湿槽や振動流動層(VIA-16D型(中央化工機(株)製)を用いることもできる。
【0079】
溶融混練工程又は加熱保持工程の後は、工程の粉砕機を用いて混練物を粉砕し、さらに適宜、分級工程等を経て、トナーを製造することができる。本発明の方法により得られた、粉砕性がコントロールされた結晶性ポリエステルを用いることで、粉砕の際の生産効率を高めることができる。
【0080】
トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0081】
トナーの表面には、外添剤が添加してもよい。外添剤としては、トナーには、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、樹脂微粒子等の有機微粒子等が挙げられ、これらの表面には疎水化処理が施されていてもよい。外添剤の添加量は、外添剤で処理する前のトナー粒子100重量部に対して、0.05〜5重量部が好ましい。
【0082】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【実施例】
【0083】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0084】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、DSC Q20)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度を求める。
【0085】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて、試料を0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0086】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0087】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0088】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0089】
実施例1〜3
表1に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れに入れ、160℃で反応率が80%に達するまで反応させた後、表1に示すt−ブチルカテコールを添加し、30分間攪拌後、同温度(160℃)で、表1に示すジブチルパーオキサイド(ラジカル重合開始剤)をエタノールと混合して得られたジブチルパーオキサイドの20重量%エタノール溶液を表1に示す時間をかけて滴下した。滴下後、200℃まで昇温し、8kPaにて15分間反応させて、結晶性ポリエステルを得た。
【0090】
実施例4〜6
表1に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れに入れ、160℃で反応率が80%に達するまで反応させた後、表1に示すt−ブチルカテコールを添加し、30分間攪拌後、表1に示すジブチルパーオキサイド(ラジカル重合開始剤)を表1に示す時間をかけて滴下した。滴下後、200℃まで昇温し、8kPaにて15分間反応させて、結晶性ポリエステルを得た。
【0091】
比較例1〜3
表1に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れに入れ、160℃で反応率が80%に達するまで反応させた後、表1に示すジブチルパーオキサイド(ラジカル重合開始剤)を表1に示す時間をかけて滴下した。滴下後、200℃まで昇温し、8kPaにて15分間反応させて、結晶性ポリエステルを得た。
【0092】
下記の方法により、得られた結晶性ポリエステルの粉砕指数を測定した。粉砕指数が小さいほど、粉砕性が良好であることを示す。粉砕指数は、小さい方が好ましく、通常40以下が好ましい。
【0093】
〔樹脂の粉砕指数〕
粉砕した樹脂粉末から、22メッシュと16メッシュの篩いを使用して、0.71mm以上1mm以下の粉末を分取し、National コーヒーミル MK-61Mに20g入れ、10秒間粉砕した。得られた粉末を目開き0.5mm(30メッシュ)で篩い、篩に残った重量Aを測定し、A/20×100の値を粉砕指数として算出した。粉砕指数は、低い方が好ましい。
【0094】
【表1】

【0095】
以上の結果から、実施例1〜6は、カテコール類を用いていることから、滴下時間による結晶性ポリエステルの粉砕性のバラツキが少ないことが分かる。なかでも、ラジカル重合開始剤をアルコールで希釈して添加した実施例1〜3は、実施例4〜6に比べて、さらに滴下時間による結晶性ポリエステルの粉砕性のバラツキが少なく、粉砕性も高い。また、実施例4〜6では、ラジカル重合開始剤の量を実施例1〜3より多く用いたが、結晶性ポリエステルの粉砕性は、実施例1〜3と同等である。
一方、カテコール類を使用していない比較例1〜3は、ラジカル重合開始剤の滴下時間による結晶性ポリエステルの粉砕性のバラツキが大きい。比較例2では、ラジカル重合開始剤の反応性が高いため、反応槽の温度制御が困難であった。
【0096】
また、同じ滴下時間である、実施例1(SD=0.84)、実施例4(SD=1.14)、及び比較例1(SD=3.05)を対比すると、比較例1の結晶性ポリエステルの粉砕性指数のバラツキが最も大きかった。ここで、括弧内は、各条件下で5回繰り返して得られた結晶性ポリエステルの粉砕指数のSD(標準偏差)値を示す。
【0097】
非晶質ポリエステルの製造例1〔樹脂a〕
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料及び2-エチルヘキサン酸錫(II)(エステル化触媒)40gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃で8時間かけ反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させた。さらに、210℃にて無水トリメリット酸を添加し、表2記載の軟化点に達するまで反応させて、非晶質ポリエステルを得た。
【0098】
【表2】

【0099】
トナーの製造例
実施例1〜6又は比較例1〜3の結晶性ポリエステル20重量部、樹脂a 80重量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、C.I.ピグメントブルー15:3)5.0重量部、負帯電性荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1.0重量部、及び離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製、融点:83℃)2.0重量部を、ヘンシェルミキサーにて良く攪拌後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱温度は120℃であり、混合物の供給速度は10kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却し、オーブン中で、60℃にて8時間加熱保持した後、ジェットミル(I-2型粉砕機、日本ニューマチック社製)で体積中位粒径(D50)5.5μmのトナー粒子を得た。
【0100】
得られたトナー粒子100重量部に対し、外添剤「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製)0.5重量部及び「NAX-50」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、トナーを得た。
【0101】
なお、上記のジェットミルのI-2型粉砕機を2.5kg/hrのフィード量で使用し、同じ体積中位粒径(D50)(5.5μm)のトナー粒子を得るためには、圧力を調整する必要がある。
例えば、上記製造条件において、結晶性ポリエステルの粉砕性指数が23の場合は0.44パスカル、粉砕性指数が28の場合は0.50パスカル、粉砕性指数が34の場合は0.58パスカルである。実施例1〜6で得られた、粉砕性指数のバラツキが小さい結晶性ポリエステルを用いた方法によれば、ジェットミルの条件を一定で用いることができるため、生産効率を高くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の方法により得られる結晶性ポリエステルは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるトナーの結着樹脂等として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:炭素数2〜8のα,ω-直鎖脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合させる工程、及び
工程2:工程1の縮重合反応中又は縮重合反応後に、カテコール骨格を有する化合物及びハイドロキノン骨格を有する化合物から選ばれる1種以上及びラジカル重合開始剤を添加して、結晶性ポリエステルを得る工程
を含む、結晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
工程2において、ラジカル重合開始剤を炭素数2〜18のアルコールと混合して添加する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
不飽和脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量が、カルボン酸成分中、20モル%以上である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
ラジカル重合開始剤を添加する際の反応系内の温度が、100〜200℃である、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
【請求項5】
カテコール骨格を有する化合物及びハイドロキノン骨格を有する化合物から選ばれる1種以上を添加した後、ラジカル重合開始剤を添加する、請求項1〜4いずれか記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の方法により得られた結晶性ポリエステル。
【請求項7】
請求項6記載の結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕する工程を含む、トナーの製造方法。

【公開番号】特開2011−132333(P2011−132333A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292191(P2009−292191)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】