説明

結晶性ポリマー微孔性膜及びその製造方法、並びに濾過用フィルタ

【課題】微粒子を効率良く捕捉することができ、濾過寿命が長くカートリッジの交換回数を減らすことができ、高流量化により大設備に用いることができる結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタの提供。
【解決手段】結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の表面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを形成する非対称膨潤工程と、前記半膨潤フィルムを延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、前記結晶性ポリマー微孔膜中に残留する膨潤性溶剤量が1ppb〜10,000ppbである結晶性ポリマー微孔性膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体、液体等の精密濾過に使用される濾過効率の高い結晶性ポリマー微孔性膜及び該結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに濾過用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
微孔性膜は古くから知られており、濾過用フィルタ等に広く利用されている(非特許文献1参照)。このような微孔性膜としては、例えばセルロースエステルを原料として製造されるもの(特許文献1〜7参照)、脂肪族ポリアミドを原料として製造されるもの(特許文献8〜14参照)、ポリフルオロカーボンを原料として製造されるもの(特許文献15〜18参照)、ポリプロピレンを原料とするもの(特許文献19参照)、などが挙げられる。
これらの微孔性膜は、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられ、近年、その用途及び使用量が拡大しており、粒子捕捉の点から信頼性の高い微孔性膜が注目されている。これらの中でも、結晶性ポリマーによる微孔性膜は耐薬品性に優れており、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を原料とした微孔性膜は、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、その需要の伸びが著しい。
【0003】
一般に、微孔性膜の単位面積当たりの濾過可能量は少ない(即ち濾過寿命が短い)。このため、工業的に使用する際には、膜面積を増すため、多くの濾過ユニットを並列して使用することを余儀無くされており、濾過工程のコストダウンの観点から、濾過寿命を上げることが必要とされている。例えば目詰まり等による流量低下に有効な微孔性膜として、インレット側からアウトレット側に向かって孔径が徐々に小さくなる非対称膜が提案されている(特許文献20及び21参照)。
また、小孔径を有する濾過層と、該濾過層より孔径が大きい支持層とからなるポリテトラフルオロエチレン複層多孔膜(特許文献22参照)、ポリテトラフルオロエチレンシート上にポリテトラフルオロエチレン乳化分散液を塗布し、延伸したもの(特許文献23参照)、などが提案されている。
【0004】
しかし、前記特許文献20及び21の非対称膜を、ポリテトラフルオロエチレンを用いて実現しようとすると、該ポリテトラフルオロエチレンが極めて特殊な溶媒にしか可溶でないため、孔径が徐々に小さくなる微孔性膜を製造することができない。また、得られた膜を用いて濾過を行うと、目詰まり等による流量低下を招くという問題がある。
また、前記特許文献22及び23によれば、前記特許文献20及び21における問題は低減できるが、その一方で、塗布し、乾燥させた際に、膜にクラックや欠陥が発生しやすいという問題がある。更に、表面のみが小孔径になっているため、十分な濾過寿命が得られないという問題がある。
【0005】
また、特許文献24には、非対称加熱を膜の延伸処理中に行うことによりPTFE非対称多孔質膜を製造する方法が開示されている。
しかし、この提案のPTFE多孔質膜は、延伸前の膜の結晶化度制御を溶剤による膨潤で行っておらず、流量及び濾過寿命の点で十分満足できる性能を有するものではなく、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第1,421,341号明細書
【特許文献2】米国特許第3,133,132号明細書
【特許文献3】米国特許第2,944,017号明細書
【特許文献4】特公昭43−15698号公報
【特許文献5】特公昭45−3313号公報
【特許文献6】特公昭48−39586号公報
【特許文献7】特公昭48−40050号公報
【特許文献8】米国特許第2,783,894号明細書
【特許文献9】米国特許第3,408,315号明細書
【特許文献10】米国特許第4,340,479号明細書
【特許文献11】米国特許第4,340,480号明細書
【特許文献12】米国特許第4,450,126号明細書
【特許文献13】独国特許発明第3,138,525号明細書
【特許文献14】特開昭58−37842号公報
【特許文献15】米国特許第4,196,070号明細書
【特許文献16】米国特許第4,340,482号明細書
【特許文献17】特開昭55−99934号公報
【特許文献18】特開昭58−91732号公報
【特許文献19】西独特許第3,003,400号明細書
【特許文献20】特公昭55−6406号公報
【特許文献21】特公平4−68966号公報
【特許文献22】特開平4−351645号公報
【特許文献23】特開平7−292144号公報
【特許文献24】特公昭63−48562号公報
【非特許文献1】アール・ケスティング(R.Kesting)著「シンセティック・ポリマー・メンブラン(Synthetic Polymer Membrane)」マグロウヒル社(McGrawHill社)発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、微粒子を効率良く捕捉することができ、濾過寿命が長くカートリッジの交換回数を減らすことができ、高流量化により大設備に用いることができる結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の表面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを形成する非対称膨潤工程と、
前記半膨潤フィルムを延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<2> 結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである前記<1>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<3> 延伸工程が、半膨潤フィルムを一軸方向に延伸する前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<4> 延伸工程が、半膨潤フィルムを二軸方向に延伸する前記<1>から<2>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<5> 延伸後のフィルムを親水化処理する親水化工程を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法により製造されたことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<7> 一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、
前記結晶性ポリマー微孔膜中に残留する膨潤性溶剤量が1ppb〜10,000ppbであることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜である。
<8> 結晶性ポリマーからなるフィルムの他方の面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを延伸してなる前記<7>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<9> 他方の面である膨潤面の平均孔径が、その反対側の非膨潤面の平均孔径よりも小さく、かつ前記非膨潤面から前記膨潤面に向かって平均孔径が連続的に変化している前記<8>に記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<10> 結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである前記<7>から<9>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
<11> 膨潤性溶剤が、下記構造式で表される化合物、パーフルオロケロセン、パーフルオロジメチルシクロへキサン、及びヘキサフルオロプロピレン3量体のいずれかである前記<7>から<10>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜である。
【化2】

<12> 前記<6>から<11>のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタである。
<13> プリーツ状に加工成形してなる前記<12>に記載の濾過用フィルタである。
<14> 結晶性ポリマー微孔性膜の平均孔径の大きな面側をフィルタの濾過面に使用する前記<12>から<13>のいずれかに記載の濾過用フィルタである。
【0009】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に変化しており、
前記結晶性ポリマー微孔膜中に残留する膨潤性溶剤量が1ppb〜10,000ppbである。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜においては、一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に変化している構造と、結晶性ポリマー微孔膜中に残留する膨潤性溶剤量が1ppb〜10000ppbであり、非対称加熱することなく、膨潤性溶剤を付与して非対称孔構造を形成するので、膨潤面側の微粒子表面の結着がよく進み、結果としてフィブリル化に関与する粒子が増えるため小孔径となり、微粒子を効率良く捕捉することができ、濾過寿命が長く、高流量化により大設備に用いることができ、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、これまでの濾過用フィルタでは対応できなかった高温濾過や反応性薬品の濾過にも適用できる。
【0010】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の表面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを形成する非対称膨潤工程と、
前記半膨潤フィルムを延伸する延伸工程と、を含む。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法においては、非対称加熱処理のように高温での加熱(350℃以上)が不要であり、非対称孔を形成するための条件の制御の幅が広がり、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を効率よく製造することができる。
【0011】
本発明の濾過用フィルタは、本発明の前記結晶性ポリマー微孔性膜を用いているので、平均孔径が大きい面(非膨潤面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。また、比表面積が大きいため微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる効果が大きく、濾過寿命を大きく改善することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、微粒子を効率良く捕捉することができ、濾過寿命が長くカートリッジの交換回数を減らすことができ、高流量化により大設備に用いることができる結晶性ポリマー微孔性膜、及び該結晶性ポリマー微孔性膜を効率良く製造することができる結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法、並びに該結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(結晶性ポリマー微孔性膜及び結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法)
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に変化しており、
前記結晶性ポリマー微孔膜中に残留する膨潤性溶剤量が1ppb〜10,000ppbである。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、非対称膨潤工程と、延伸工程とを含み、結晶性ポリマーフィルム作製工程、親水化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
以下、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及び結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法について詳細に説明する。
【0014】
本発明においては、結晶性ポリマーからなるフィルムの結晶構造を一方の面と、他方の面とで非対称に変化させることにより、その後の延伸による多孔質化の度合いを膜の一方の面と、他方の面とで変化させている。本発明では、この結晶構造の変化を、膨潤性溶剤を膜中に付与して膨潤させることにより、結晶構造を一部破壊することにより、延伸工程でのフィブリル化を抑制することができる。
前記膨潤性溶剤については、結晶性ポリマーに該溶剤の液体あるいは蒸気を接触させ、溶解しない程度に結晶構造を保ちつつ該結晶性ポリマー中に拡散していくものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記膨潤性溶剤の種類は、対象とする結晶性ポリマーにより異なるが、結晶性ポリマーがポリテトラフルオロエチレンである場合は「ふっ素樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社発行、p82−83に記載の溶剤などを用いることができる。具体的には、下記構造式で表される化合物(商品名:FC−75、スリーエム社製)、パーフルオロケロセン、パーフルオロジメチルシクロへキサン、ヘキサフルオロプロピレン3量体、1,2−BrTFE、SiClなどが挙げられる。これらの中でも、下記構造式で表される化合物(商品名:フロリナートFC−75、スリーエム社製)、パーフルオロケロセン、パーフルオロジメチルシクロへキサン、ヘキサフルオロプロピレン3量体が特に好ましい。
【化3】

【0015】
前記膨潤性溶剤の好ましい膨潤能としては、膨潤による質量増加で1質量%〜20質量%が好ましく、3質量%〜15質量%がより好ましく、5質量%〜12質量%が更に好ましい。前記膨潤性溶剤は、結晶性ポリマーからなるフィルムを膨潤させた後、加熱して乾燥するため、沸点が高すぎると残留溶剤が多くなってしまうため好ましくない。該溶剤の沸点は30℃〜300℃が好ましく、50℃〜250℃がより好ましく、70℃〜150℃が更に好ましい。
このように結晶性ポリマーからなるフィルムを膨潤させる目的で使用した溶媒は、後の乾燥工程で速やかに乾燥除去を行っているが、通常、極微量(1ppb〜10,000ppb、好ましくは1ppb〜5,000ppb)の残留溶剤が残存してしまう。しかし、1〜10,000ppbの残留溶剤は極微量であるため、通常の濾過フィルターとしての使用で問題になることはない。
前記膨潤性溶剤量が10,000ppbを超えると、濾液中に膨潤性溶媒が不純物として混入してしまい問題となることがある。
ここで、残留する膨潤性溶剤量は、例えばガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー質量分析、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー質量分析、などの方法で行うことができる。特に不溶性ポリマー中の微量揮発性成分の分析については、Purge&Trap型のヘッドスペースサンプラーによるガスクロマトグラフィー質量分析が適しており、ppbレベルの残留溶剤量の分析が可能である。
【0016】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、結晶性ポリマーからなるフィルムの他方の面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを延伸してなる。
この場合、他方の面である膨潤面の平均孔径が、その反対側の非膨潤面の平均孔径よりも小さく、かつ前記非膨潤面から前記膨潤面に向かって平均孔径が連続的に変化していることが好ましい。
以下においては、平均孔径が大きい側の面を「非膨潤面」とし、平均孔径が小さい側の面を「膨潤面」として説明する。これは本発明の説明をわかりやすくするために便宜的につけた呼称に過ぎない。したがって、未膨潤の結晶性ポリマーフィルムのいずれの面を膨潤させて「膨潤面」にしても構わない。
【0017】
−結晶性ポリマー−
本発明において、前記「結晶性ポリマー」とは、分子構造の中に長い鎖状の分子が規則的に並んだ結晶性領域と、規則的に並んでいない非結晶領域が混在したポリマーを意味し、このようなポリマーは物理的な処理により、結晶性が発現する。例えば、ポリエチレンフィルムを外力により延伸すると、始めは透明なフィルムが白濁する現象が認められる。これは外力によりポリマー内の分子配列が一つの方向に揃えられることによって、結晶性が発現したことに由来する。
【0018】
前記結晶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばポリアルキレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、液晶性ポリマーなどが挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、などが挙げられる。
これらの中でも、耐薬品性と扱い性の観点から、ポリアルキレン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)が好ましく、ポリアルキレンにおけるアルキレン基の水素原子がフッ素原子によって一部又は全部が置換されたフッ素系ポリアルキレンがより好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく使用される。
前記ポリエチレンは、その分岐度により密度が変化し、分岐度が多く、結晶化度が低いものが低密度ポリエチレン(LDPE)、分岐度が少なく、結晶化度の高いものが高密度ポリエチレン(HDPE)と分類され、いずれも用いることができる。これらの中でも、結晶性コントロールの点から、HDPEが特に好ましい。
【0019】
前記結晶性ポリマーは、そのガラス転移温度が、40℃〜400℃が好ましく、50℃〜350℃がより好ましい。また、前記結晶性ポリマーの質量平均分子量は、1,000〜100,000,000が好ましい。前記結晶性ポリマーの数平均分子量は、500〜50,000,000が好ましく、1,000〜10,000,000がより好ましい。
【0020】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、非膨潤面の平均孔径が膨潤面の平均孔径よりも大きいことを1つの特徴とする。
また、前記結晶性ポリマー微孔性膜は、膜厚みを「10」とし、表面から深さ方向「1」の厚み部分における平均孔径をP1とし、「9」の厚み部分における平均孔径をP2としたとき、P1/P2が2〜10,000が好ましく、3〜100がより好ましい。
また、前記結晶性ポリマー微孔性膜は、非膨潤面と膨潤面の平均孔径の比(非膨潤面/膨潤面比)が5倍〜30倍が好ましく、10倍〜25倍がより好ましく、15倍〜20倍が更に好ましい。
【0021】
ここで、前記平均孔径は、例えば走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で膜表面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んで結晶性ポリマー繊維のみからなる像を得て、その像を演算処理することにより平均孔径が求められる。
【0022】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜には、上記の特徴に加えて更に非膨潤面から膨潤面に向けて平均孔径が連続的に変化している態様(第1の態様)と、上記の特徴に加えて更に単層構造である態様(第2の態様)の両方が含まれる。これらの付加的な特徴を更に加えることによって、濾過寿命を効果的に改善することができる。
【0023】
第1の態様でいう「非膨潤面から膨潤面に向けて平均孔径が連続的に変化している」とは、横軸に非膨潤面からの厚み方向の距離d(表面からの深さに相当)をとり、縦軸に平均孔径Dをとったときに、グラフが1本の連続線で描かれることを意味する。非膨潤面(d=0)から膨潤面(d=膜厚)に至るまでのグラフは傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものであってもよいし、傾きが負の領域と傾きがゼロの領域(dD/dt=0)が混在するものであってもよいし、傾きが負の領域と正の領域(dD/dt>0)が混在するものであってもよい。好ましいのは、傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものであるか、傾きが負の領域と傾きがゼロの領域(dD/dt=0)が混在するものである。更に好ましいのは、傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものである。
【0024】
傾きが負の領域の中には少なくとも膜の非膨潤面が含まれることが好ましい。傾きが負の領域(dD/dt<0)においては、傾きが常に一定であっても異なっていてもよい。例えば、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は傾きが負の領域(dD/dt<0)のみからなるものである場合、膜の非膨潤面におけるdD/dtよりも膜の膨潤面におけるdD/dtが大きい態様をとることができる。また、結晶性ポリマー微孔性膜の非膨潤面から膨潤面に向かうにしたがって徐々にdD/dtが大きくなる態様(絶対値が小さくなる態様)をとることができる。
【0025】
第2の態様でいう「単層構造」からは、2以上の層を貼り合わせたり積層したりすることにより形成される複層構造は除外される。即ち、第2の態様でいう「単層構造」とは、複層構造に存在する層と層の間の境界を有しない構造を意味する。第2の態様では、膜中に、非膨潤面の平均孔径よりも小さくかつ膨潤面の平均孔径よりも大きな平均孔径を有する面が存在することが好ましい。
【0026】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、第1の態様の特徴と第2の態様の特徴を両方とも兼ね備えているものが好ましい。即ち、結晶性ポリマー微孔性膜の非膨潤面の平均孔径が膨潤面の平均孔径よりも大きくて、非膨潤面から膨潤面に向けて平均孔径が連続的に変化しており、かつ、単層構造であるものが好ましい。このような結晶性ポリマー微孔性膜であれば、非膨潤面側から濾過を行ったときに一段と効率よく微粒子を捕捉することができ、濾過寿命も大きく改善することができるとともに、容易かつ安価に製造することもできる。
【0027】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の膜厚は、1μm〜300μmが好ましく、5μm〜100μmがより好ましく、10μm〜80μmが更に好ましい。
【0028】
<結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法>
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法は、非対称膨潤工程、及び延伸工程を少なくとも含み、結晶性ポリマーフィルム作製工程、親水化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0029】
−結晶性ポリマーフィルム作製工程−
結晶性ポリマーからなる未膨潤の結晶性フィルムを製造する際に用いる結晶性ポリマー原料の種類としては、特に制限はなく、上述した結晶性ポリマーを好ましく用いることができる。これらの中でも、ポリエチレン又はその水素原子がフッ素原子に置換された結晶性ポリマーが使用され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
原料として使用する結晶性ポリマーは、数平均分子量500〜50,000,000のものが好ましく、1,000〜10,000,000のものがより好ましい。
原料として使用する結晶性ポリマーとしては、ポリエチレンが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを用いることができる。ポリテトラフルオロエチレンは、通常、乳化重合法により製造されたポリテトラフルオロエチレンを用いることができ、好ましくは乳化重合により得られた水性分散体を凝析することにより取得した微粉末状のポリテトラフルオロエチレンを使用する。
原料として使用するポリテトラフルオロエチレンの数平均分子量は、250万〜1000万が好ましく、300万〜800万がより好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン原料としては、特に制限はなく、市場で販売されているポリテトラフルオロエチレン原料を適宜選択して使用してもよい。例えば、ダイキン工業株式会社製「ポリフロン・ファインパウダーF104U」などが好適に挙げられる。
【0030】
前記ポリテトラフルオロエチレン原料を押出助剤と混合した混合物を作製し、これをペースト押出して圧延することによりフィルムを調製するのが好ましい。押出助剤としては、液状潤滑剤を用いることが好ましく、具体的にはソルベントナフサ、ホワイトオイルなどを例示することができる。前記押出助剤としては、市場で販売されているエッソ石油株式会社製「アイソパー」などの炭化水素油を用いても構わない。前記押出助剤の添加量は、結晶性ポリマー100質量部に対して、20質量部〜30質量部が好ましい。
【0031】
ペースト押出しは、通常50℃〜80℃にて行うことが好ましい。押出し形状については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常は棒状にするのが好ましい。押出物は次いで圧延することによりフィルム状にする。圧延は、例えばカレンダーロールにより50m/分の速度でカレンダー掛けすることにより行うことができる。圧延温度は、通常50℃〜70℃に設定することができる。その後、フィルムを加熱することにより押出助剤を除去して結晶性ポリマー未加熱フィルムとすることが好ましい。このときの加熱温度は用いる結晶性ポリマーの種類に応じて適宜定めることができるが、40℃〜400℃が好ましく、60℃〜350℃がより好ましい。例えばテトラフルオロエチレンを用いる場合には、150℃〜280℃が好ましく、200℃〜255℃がより好ましい。加熱は、フィルムを熱風乾燥炉に通すなどの方法で行うことができる。このようにして製造される結晶性ポリマー未膨潤フィルムの厚みは、最終的に製造しようとする結晶性ポリマー微孔性膜の厚みに応じて適宜調整することができ、後の工程で延伸を行う場合には、延伸による厚みの減少も考慮して調整することが必要である。
なお、結晶性ポリマー未膨潤フィルムの製造に際しては、「ポリフロンハンドブック」(ダイキン工業株式会社発行、1983年改訂版)に記載されている事項を適宜採用することができる。
【0032】
−非対称膨潤工程−
前記非対称膨潤工程は、結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の表面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを形成する工程である。このように、結晶性ポリマーからなるフィルムの結晶構造を一方の面と他方の面とで非対称に変化させることにより、その後の延伸による多孔質化の度合いを膜の一の面と他方の面で変化させている。
【0033】
本発明においては、片面から膨潤性溶剤を接触させることにより、結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の面と他方の面での膨潤量を変化させている。しかしながら、本発明のような薄膜では、短時間で膜全体に膨潤性溶剤が拡散してしまうため、短時間で膨潤性溶剤を乾燥除去することにより、一方の面と他方の面の膨潤量を制御している。乾燥除去の条件は、熱風乾燥炉を用い、膨潤性溶剤の沸点よりも50℃以上高い温度〜結晶性ポリマーの融点より10℃低い温度、より好ましくは膨潤性溶剤の沸点よりも70℃以上高い温度〜ポリマーの融点より10℃低い温度、更に好ましくは膨潤性溶剤の沸点よりも100℃以上高い温度〜ポリマーの融点より10℃低い温度、で両面から熱風を当て、乾燥できる範囲でなるべく短時間、好ましくは5秒〜5分、より好ましくは5秒〜3分、更に好ましくは5秒〜1分で乾燥を行うことが好ましい。
また、膨潤性溶剤に対する非接触面側を冷却ロールにより冷却することにより、溶剤を膨潤しにくくし、一の面と他方の面の膨潤量の差が大きくなるように制御することが好ましい。このときの冷却ロールの温度は低い方が好ましいが、過度に低いロールは結露の問題及び経済的にも好ましくないので温度としては−20℃〜20℃が好ましく、−15℃〜10℃がより好ましく、−10℃〜5℃が更に好ましい。
【0034】
前記膨潤性溶剤の接触方法としては、例えば、液体溶剤の塗布、溶剤蒸気の噴き付け、溶剤微液滴のスプレーなどが挙げられる。
前記非対称膨潤工程における膨潤は、連続的に行ってもよく、又は何度かに分割して間欠的に行ってもよい。
【0035】
−延伸工程−
半膨潤したフィルムは、次いで延伸することが好ましい。延伸は、長手方向と幅方向の両方について行うことが好ましい。長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行ってもよいし、同時に二軸延伸を行ってもよい。
長手方向と幅方向について、それぞれ逐次延伸を行う場合には、まず、長手方向の延伸を行ってから幅方向の延伸を行うことが好ましい。
前記長手方向の延伸倍率は、4倍〜100倍が好ましく、8倍〜90倍がより好ましく、10倍〜80倍が更に好ましい。長手方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
前記幅方向の延伸倍率は、10倍〜100倍が好ましく、12倍〜90倍がより好ましく、15倍〜70倍が更に好ましく、20倍〜40倍が特に好ましい。幅方向の延伸温度は、100℃〜300℃が好ましく、200℃〜290℃がより好ましく、250℃〜280℃が特に好ましい。
面積延伸倍率は、50倍〜300倍が好ましく、75倍〜280倍がより好ましく、100倍〜260倍が更に好ましい。延伸を行う際には、予め延伸温度以下の温度にフィルムを予備加熱しておいてもよい。
【0036】
なお、延伸後に、必要に応じて熱固定を行うことができる。該熱固定の温度は、通常、延伸温度以上で結晶性ポリマーの融点未満で行うことが好ましい。
【0037】
−親水化工程−
前記親水化工程は、延伸後のフィルムを親水化処理する工程である。
前記親水化処理としては、(1)延伸後のフィルムにケトン類を含浸させた後、紫外線レーザーを照射する処理、(2)化学的エッチング処理、などが挙げられる。
【0038】
前記(1)の延伸後のフィルムにケトン類を含浸させた後、紫外線レーザーを照射する処理に使用しうる水溶性ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、アセトンが特に好ましい。結晶性ポリマー微孔性膜に含浸する段階での上記水溶性ケトンの濃度は結晶性ポリマー微孔性膜の材質及び細孔の大きさによって若干変動するが、アセトン及びメチルエチルケトンの場合、好ましくは85質量%〜100質量%である。また、紫外レーザー光照射時の結晶性ポリマー微孔性膜内部の水溶性ケトンの濃度は、使用する紫外レーザー光の波長における吸光度として0.1〜10が好ましい。例えばこれはアセトンの場合、光源としてKrFを使用する場合は、0.05質量%〜5質量%に相当する。吸光度として0.1〜6が好ましく、0.5〜5がより好ましい。この濃度範囲に調整された水溶性ケトンを含んだ結晶性ポリマー微孔性膜に紫外レーザー光を照射する場合には、従来よりもかなり低い照射量で既に満足すべき親水化効果が得られる。
【0039】
一般的には、沸点が50℃〜100℃の水溶性ケトンを用いる場合には、紫外レーザー照射による親水化処理効率が高く、親水化処理後の溶剤除去も容易であるが、沸点が100℃よりも高い水溶性ケトンを用いる場合には、親水化処理後のケトン除去が困難となる。
【0040】
水溶性ケトンを含浸した結晶性ポリマー微孔性膜に紫外レーザー光を照射して親水化処理するに当たっては、均一で高い親水化処理効果を得るために、水溶性ケトンを含浸した結晶性ポリマー微孔性膜に水を含浸させて結晶性ポリマー微孔性膜中の水溶性ケトン水溶液の濃度を、使用する紫外レーザー光の波長における吸光度が0.1〜10、好ましくは0.1〜6、特に好ましくは0.5〜5となるように調整する。前記吸光度が0.1よりも低い場合には十分な親水化処理効果が得難くなることがあり、10よりも高くなると、水溶液による光エネルギーの吸収が大きくなり、微孔内部までの十分な親水化処理が困難となることがある。
結晶性ポリマー微孔性膜中の水溶性ケトン水溶液の濃度を調整するために水を含浸させる方法としては、同じケトンの極く低濃度の水溶液中に浸漬するのが好ましい。
ここで、前記吸光度とは、次式で定義される量を意味する。
吸光度≡log10(I/I)=εcd
ただし、εはケトンの吸光係数、cはケトン水溶液の濃度(モル/dm3)、dは透過光路長さ(cm)、Iは溶媒単独の光透過強度、Iはその溶液の光透過強度を表す。本発明で、吸光度がxとなる濃度とは、dが1cmの測定セルで測定した場合に吸光度がxとなるような濃度を意味する。ただし、dが1cmでは透過光量が少なすぎて吸光度の測定が困難であるような高い濃度の場合は、dが0.2cmの測定セルを使用して得られた吸光度を5倍したものを吸光度とした。
【0041】
前記水溶性ケトンの水溶液を結晶性ポリマー微孔性膜に含浸させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、浸漬法、噴霧法、塗布法等を結晶性ポリマー微孔性膜の形態や寸法等に応じて適宜採用すればよいが、浸漬法が一般的である。
前記水溶性ケトン又はその水溶液の含浸温度は、結晶性ポリマー微孔性膜の微孔内への水溶液の拡散速度の観点からは10℃〜40℃が好ましい。含浸温度が10℃よりも低い場合には、微孔内部へ水溶液を十分に拡散させるのに比較的長い時間が必要となり、また、40℃よりも高くなると、水溶性ケトンの蒸発速度が高くなり、好ましくない。
【0042】
前記含浸処理に付した結晶性ポリマー微孔性膜は含浸されている水溶性ケトンの濃度を上記範囲に調整したのち以下の紫外レーザー光照射処理に付される。
紫外レーザー光としては、波長が190nm〜400nm以下のものが好ましく、アルゴンイオンレーザー光、クリプトンイオンレーザー光、Nレーザー光、色素レーザー光、及びエキシマレーザー光等が例示されるが、エキシマレーザー光が好適である。これらの中でも、高出力が長時間にわたって安定して得られるKrFエキシマレーザー光(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長:193nm)及びXeClエキシマレーザー光(308nm)が特に好ましい。
前記エキシマレーザー光照射は、通常、室温、大気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。また、エキシマレーザー光の照射条件は、フッ素樹脂の種類及び所望の表面改質の程度によって左右されるが、一般的な照射条件は次の通りである。
・フルエンス:10mJ/cm/パルス以上
・入射エネルギー:0.1J/cm以上
【0043】
特に好適なKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、及びXeClエキシマレーザー光の常用される照射条件は次の通りである。
・KrFフルエンス:50〜500mJ/cm/パルス入射エネルギー:0.25〜3.0J/cm
・ArFフルエンス:10〜200mJ/cm/パルス入射エネルギー:0.1〜3.0J/cm
・XeClフルエンス:50〜500mJ/cm/パルス入射エネルギー:3.0〜30.0J/cm
【0044】
前記(2)の化学的エッチング処理としては、アルカリ金属を用いて、結晶性ポリマー微孔性膜を構成するフッ素樹脂を変性し、その変性された部分を除去する酸化分解処理が挙げられる。
前記酸化分解処理は、例えば、有機アルカリ金属溶液を用いて行われる。結晶性ポリマー微孔性膜に、有機アルカリ金属溶液により化学的エッチング処理を施すと、表面は変性され親水性が付与されるとともに、褐色化した層(褐色層)が形成される。この褐色層は、フッ化ナトリウム、炭素−炭素二重結合を有するフッ素樹脂の分解物、これらとナフタレン、アントラセンとの重合物等からなるが、これらは、脱落、分解、溶出等により濾過液に混入する場合があるので、除去することが好ましい。これらの除去は、過酸化水素や次亜塩素酸ソーダ、オゾン等による酸化分解によりすることができる。
【0045】
前記化学的エッチング処理は、有機アルカリ金属溶液等を用いて行うことができるが、具体的には、有機アルカリ金属溶液に結晶性ポリマー微孔性膜を浸漬することにより行うことができる。この場合、結晶性ポリマー微孔性膜の表面側から化学的エッチング処理が行われるので、膜の両表面近傍のみに化学的エッチング処理を施すことも可能である。しかし、膜の保水性をより高めるためには、両表面近傍のみではなく、結晶性ポリマー微孔性膜の内部まで化学的エッチング処理を施すことが好ましい。結晶性ポリマー微孔性膜の内部まで化学的エッチング処理を施しても、分離膜としての機能の低下は小さい。
前記化学的エッチング処理に用いられる有機アルカリ金属溶液としては、例えばメチルリチウム、金属ナトリウム−ナフタレン錯体、金属ナトリウム−アントラセン錯体のテトラヒドロフラン等の有機溶剤溶液、金属ナトリウム−液体アンモニアの溶液等が挙げられる。これらの中でも、ナフタレンを芳香族アニオンラジカルとした金属ナトリウムとの錯体の溶液が一般に広く用いられているが、結晶性ポリマー微孔性膜の内部まで化学的エッチング処理を施こすためには、ベンゾフェノン、アントラセン、ビフェニルを芳香族アニオンラジカルとして用いることが好ましい。
【0046】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は、様々な用途に用いることができるが、特に、以下に説明する濾過用フィルタとして好適に用いることができる。
【0047】
(濾過用フィルタ)
本発明の濾過用フィルタは、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いることを特徴とする。
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を濾過用フィルタとして用いるときは、その非膨潤面(平均孔径が大きい面)をインレット側として濾過を行う。即ち、ポアサイズの大きな表面側をフィルタの濾過面に使用する。このように、平均孔径が大きい面(非膨潤面)をインレット側として濾過を行うことにより、効率よく微粒子を捕捉することができる。
また、本発明の結晶性ポリマー微孔性膜は比表面積が大きいため、その表面から導入された微細粒子が最小孔径部分に到達する以前に吸着又は付着によって除かれる。したがって、目詰まりを起こしにくく、長期間にわたって高い濾過効率を維持することができる。
【0048】
本発明の濾過用フィルタは、差圧0.1kg/cmとして濾過を行った時に、少なくとも5ml/cm・min以上の濾過が可能なものとすることができる。
本発明の濾過用フィルタの形状としては、ろ過膜をひだ折りするプリーツ型、ろ過膜をのり巻き状にするスパイラル型、円板状のろ過膜を積層させるフレーム・アンド・プレート型、ろ過膜を管状にするチューブ型などがある。これらの中でも、カートリッジあたりのフィルタのろ過に使用する有効表面積を増大させることができる点から、プリーツ型が特に好ましい。
また、劣化したろ過膜を取り換える際にフィルターエレメントのみを取り換えるエレメント交換式フィルターカートリッジと、フィルターエレメントをろ過ハウジングと一体に加工しハウジングごと使い捨てのタイプにしたカプセル式のフィルターカートリッジとに分類される。
【0049】
ここで、図1はエレメント交換式のプリーツフィルターカートリッジエレメントの構造を示す展開図である。精密ろ過膜103は2枚の膜サポート102、104によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するコアー105の廻りに巻き付けられている。その外側には外周カバー101があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端にはエンドプレート106a、106bにより、精密ろ過膜がシールされている。エンドプレートはガスケット107を介してフィルターハウジング(不図示)のシール部と接する。ろ過された液体はコアーの集液口から集められ、流体出口108から排出される。
【0050】
カプセル式のプリーツフィルターカートリッジを図2及び図3に示す。
図2はカプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込まれる前の精密ろ過膜フィルターエレメントの全体構造を示す展開図である。精密ろ過膜2は2枚のサポート1、3によってサンドイッチされた状態でひだ折りされ、集液口を多数有するフィルターエレメントコア7の廻りに巻き付けられている。その外側にはフィルターエレメントカバー6があり、精密ろ過膜を保護している。円筒の両端には上部エンドプレート4、下部エンドプレート5により、精密ろ過膜がシールされている。
図3は、フィルターエレメントがハウジングに組込まれて一体化されたカプセル式のプリーツフィルターカートリッジの構造を示す。フィルターエレメント10はハウジングベースとハウジングカバーよりなるハウジング内に組込まれている。下部エンドプレートはOリング8を介してハウジングベース中心部にある集水管(不図示)にシールされている。液体は液入口ノズルからハウジング内に入り、フィルターメディア9を通過し、フィルターエレメントコア7の集液口から集められ、液出口ノズル14から排出される。ハウジングベースとハウジングカバーは通常溶着部17で液密に熱融着される。
【0051】
図2は、下部エンドプレートとハウジングベースとのシールをOリングを介して行う事例を示しているが、下部エンドプレートとハウジングベースとのシールは熱融着や接着剤によって行われることもある。またハウジングベースとハウジングカバーとのシールも熱融着の他に、接着剤を用いる方法も可能である。図1〜3は精密ろ過フィルターカートリッジの具体例であり、本発明はこれらの図に限定されるわけではない。
【0052】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜を用いた濾過用フィルタは、このように濾過機能が高くて長寿命であるという特徴を有することから、濾過装置をコンパクトにまとめることができる。従来の濾過装置では、多数の濾過ユニットを並列的に使用して濾過寿命の短さに対処していたが、本発明の濾過用フィルタを用いれば並列的に使用する濾過ユニットの数を大幅に減らすことができる。また、濾過用フィルタの交換期間も大幅に延ばすことができるため、メンテナンスにかかる費用や時間を節減できる。
【0053】
本発明の濾過用フィルタは、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌に用いられる。特に、本発明の濾過用フィルタは耐熱性及び耐薬品性に優れているため、従来の濾過用フィルタでは対応できなかった高温濾過や反応性薬品の濾過にも効果的に用いられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
<結晶性ポリマー微孔性膜の作製>
−未膨潤フィルムの作製−
数平均分子量が620万のポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、「ポリフロン・ファインパウダーF104U」)100質量部に、押出助剤として炭化水素油(エッソ石油株式会社製、「アイソパーM」)27質量部を加え、丸棒状にペースト押出しを行った。これを、70℃に加熱したカレンダーロールにより50m/分の速度でカレンダー掛けして、ポリテトラフルオロエチレンフィルムを作製した。このフィルムを250℃の熱風乾燥炉に通して押出助剤を乾燥除去し、平均厚み100μm、平均幅150mm、比重1.55のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)未膨潤フィルムを作製した。
【0056】
−片面膨潤処理−
得られたPTFE未膨潤フィルムを0℃に冷却したロール(表面材質:SUS316)で片面を冷却しながら、反対面からフロリナートFC−75(スリーエム社製、沸点102℃)の蒸気を30秒間噴きつけた。その後、このフィルムを250℃の熱風乾燥炉に1分間通してフロリナートFC−75を乾燥除去した。以上により、半膨潤PTFEフィルムを作製した。
【0057】
−延伸処理−
得られたPTFE半膨潤フィルムを270℃にて長手方向に12.5倍にロール間延伸し、一旦巻き取りロールに巻き取った。その後、フィルムを305℃に予備加熱した後、両端をクリップで挟み、270℃で幅方向に30倍に延伸した。その後、380℃で熱固定を行った。得られた延伸フィルムの面積延伸倍率は、伸長面積倍率で260倍であった。
【0058】
−親水化処理−
濃度0.03質量%の過酸化水素水中に、予めエタノールを含浸させた上記延伸フィルムを浸漬し(液温:40℃)、20時間後に引き上げた該微孔性膜の上方から、フルエンス25mJ/cm/パルス、照射量10J/cmの条件下でArFエキシマレーザー光(193nm)を照射して親水化した。以上により、実施例1の親水性ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
該微孔性膜の濡れ性は、純水で十分洗浄し、乾燥させた後、JIS K6768に規定された濡れ指数標準液で測定した。即ち、表面張力が順を追って変化する一連の混合液を該微孔性膜に順次滴下してゆき、該微孔性膜を濡らすと判定される混合液の最高の表面張力を濡れ指数として評価した。その結果、該微孔性膜の濡れ指数は52dyn/cmであった。この濡れ指数は、紫外レーザー光を照射しないポリテトラフルオロエチレン製微孔性膜の値(31dyn/cm未満)に比べて著しく大きい。この結果から、親水化処理によりフッ素樹脂表面の濡れ性が大幅に改善されたことが分かった。
【0059】
(実施例2)
−結晶性ポリマー微孔性膜の作製−
実施例1において、片面膨潤処理における溶剤をパーフルオロケロセン(沸点210℃〜240℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0060】
(実施例3)
−結晶性ポリマー微孔性膜の作製−
実施例1において、片面膨潤処理における溶剤をパーフルオロジメチルシクロヘキサン(沸点103℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0061】
(実施例4)
−結晶性ポリマー微孔性膜の作製−
実施例1において、片面膨潤処理における溶剤をヘキサフルオロプロピレン3量体(沸点110℃〜115℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0062】
(参考例1)
実施例1において、片面膨潤処理の代わりに、345℃に加熱したロール(表面材質:SUS316)で1分間焼成し片面加熱した以外は、実施例1と同様にして、参考例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0063】
(比較例1)
−結晶性ポリマー微孔性膜の作製−
実施例1において、片面膨潤処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0064】
(比較例2)
−結晶性ポリマー微孔性膜の作製−
実施例1において、片面膨潤処理の替わりに両面からフロリナートFC−75の蒸気を噴きつけた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のポリテトラフルオロエチレン微孔性膜を作製した。
【0065】
次に、作製した実施例1〜4、参考例1、及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、以下のようにしてPTFE微孔性膜中の残留する膨潤性溶剤量を測定した。結果を表1に示す。また、該微孔性膜の非膨潤面の平均孔径が膨潤面の平均孔径よりも大きく、かつ非膨潤面から膨潤面に向かって平均孔径が連続的に変化しているか否かを確認するため、以下のようにして、フィルム厚み(平均膜厚)、及びP1/P2の測定を行った。結果を表2に示す。
【0066】
<残留する膨潤性溶剤量の測定>
PTFE微孔性膜の残留溶剤量は、Purge&Trap型ヘッドスペースサンプラーJHS−100(日本分析工業株式会社製)を備えたガスクロマトグラフィー質量分析装置QP−5000(島津製作所製)を用いて分析した。
【0067】
【表1】

【0068】
<フィルムの厚み(平均膜厚)>
実施例1〜4、参考例1、及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜の厚み(平均膜厚)をダイヤル式厚みゲージ(アンリツ株式会社製、K402B)により測定した。任意の3箇所を測定し、その平均値を求めた。
【0069】
<P1/P2の測定>
実施例1〜4、参考例1、及び比較例1〜2の各ポリテトラフルオロエチレン微孔性膜について、微孔性膜の膜厚を「10」とし、非膨潤面から深さ方向「1」の厚み部分における平均孔径をP1とし、「9」の厚み部分の平均孔径をP2としたときのP1/P2を求めた。
ここで、前記PTFE微孔性膜の平均孔径は、走査型電子顕微鏡(日立S−4000型、蒸着は日立E1030型、いずれも日立製作所製)で膜表面の写真(SEM写真、倍率1,000倍〜5,000倍)をとり、得られた写真を画像処理装置(本体名:日本アビオニクス株式会社製、TVイメージプロセッサTVIP−4100II、制御ソフト名:ラトックシステムエンジニアリング株式会社製、TVイメージプロセッサイメージコマンド4198)に取り込んでポリテトラフルオロエチレン繊維のみからなる像を得、その像を演算処理することにより平均孔径を求めた。
【0070】
【表2】

表2の結果から、実施例1〜4及び参考例1の各PTFE微孔性膜は、非膨潤面の平均孔径が膨潤面の平均孔径よりも大きく、かつ非膨潤面から膨潤面に向かって平均孔径が連続的に変化していることが分かった。また、片面加熱法による参考例1よりも片面膨張法による実施例1〜4の方が非対称化の効果が大きいことが分かった。
これに対し、比較例1及び2のPTFE微孔性膜は、非膨潤面の平均孔径が膨潤面の平均孔径とほぼ同一であり、非膨潤面から膨潤面に向かって平均孔径が変化していないことが分かった。
【0071】
<濾過テスト>
次に、実施例1〜4、参考例1、及び比較例1〜2の各PTFE微孔性膜について、濾過テストを行った。まず、ポリスチレンラテックス(平均粒子サイズ0.17μm)を0.01質量%含有する水溶液を、差圧0.1kgとして濾過を行った。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

表3の結果から、比較例2のPTFE微孔性膜は400ml/cmで実質的に目詰まりを起こした。
これに対し、実施例1〜4の各PTFE微孔性膜は、それぞれ1300ml/cm、1300ml/cm、1200ml/cm、1300ml/cmまで濾過が可能であり、濾過寿命が大幅に改善されることが分かった。また、参考例1も1000ml/cmと改善効果が認められたが実施例1〜4よりはやや劣っていた。
【0073】
(実施例5)
−フィルターカートリッジ化−
実施例1のPTFE微孔性膜を以下の構成のように積層し、ひだ幅12.5mmにプリーツ(プリーツ幅=220mm)し、その230山分のひだをとって円筒状に丸め、その合わせ目をインパルスシーラーで溶着する。円筒の両端15mmずつを切り落とし、その切断面をポリプロピレン性のエンドプレートに熱溶着してエレメント交換式のフィルターカートリッジに仕上げた。
−構成−
1次側 ネット AET社製DELNET(RC−0707−20P)
厚み:0.13mm、坪量:31g/m、使用面積:約1.3m
1次側 不織布 三井化学社製シンテックス(PK−404N)
厚み:0.15mm、使用面積:約1.3m
ろ材 実施例1のPTFE微孔性膜
厚み:約0.05mm、使用面積:約1.3m
2次側 ネット AET社製DELNET(RC−0707−20P)
厚み:0.13mm、坪量:31g/m、使用面積:約1.3m
本発明のフィルターカートリッジは、内蔵する結晶性ポリマー微孔性膜が親水性であるため、水系の処理において煩雑なプレ親水化処理が不要である。また、結晶性ポリマーを用いているため耐溶剤性に優れる。更に孔部が非対称構造を有するため、大流量かつ目詰まりを起こしにくく長寿命であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の結晶性ポリマー微孔性膜及びこれを用いた濾過用フィルタは、長期間にわたって効率よく微粒子を捕捉することができ、粒子捕捉能の耐擦過性が向上し、耐熱性及び耐薬品性に優れているため、濾過が必要とされる様々な状況において使用することができ、気体、液体等の精密濾過に好適に用いられ、例えば、腐食性ガス、半導体工業で使用される各種ガス等の濾過、電子工業用洗浄水、医薬用水、医薬製造工程用水、食品水等の濾過、滅菌、高温濾過、反応性薬品の濾過などに幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は、ハウジングに組込む前の一般的なプリーツフィルターエレメントの構造を表す図である。
【図2】図2は、カプセル式フィルターカートリッジのハウジングに組込む前の一般的なフィルターエレメントの構造を表す図である。
【図3】図3は、ハウジングと一体化された一般的なカプセル式のフィルターカートリッジの構造を表す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 一次側サポート
2 精密ろ過膜
3 二次側サポート
4 上部エンドプレート
5 下部エンドプレート
6 フィルターエレメントカバー
7 フィルターエレメントコア
8 Oリング
9 フィルターメディア
10 フィルターエレメント
11 ハウジングカバー
12 ハウジングベース
13 液入口ノズル
14 液出口ノズル
15 エアーベント
16 ドレン
17 溶着部
101 外周カバー
102 膜サポート
103 精密ろ過膜
104 膜サポート
105 コアー
106a、106b エンドプレート
107 ガスケット
108 液体出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリマーからなるフィルムの一方の表面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを形成する非対称膨潤工程と、
前記半膨潤フィルムを延伸する延伸工程と、を含むことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項2】
結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1に記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項3】
延伸工程が、半膨潤フィルムを一軸方向に延伸する請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項4】
延伸工程が、半膨潤フィルムを二軸方向に延伸する請求項1から2のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項5】
延伸後のフィルムを親水化処理する親水化工程を含む請求項1から4のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜の製造方法により製造されたことを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項7】
一方の面の平均孔径が、他方の面の平均孔径よりも大きく、かつ前記一方の面から前記他方の面に向かって平均孔径が連続的に変化している結晶性ポリマー微孔性膜であって、
前記結晶性ポリマー微孔膜中に残留する膨潤性溶剤量が1ppb〜10,000ppbであることを特徴とする結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項8】
結晶性ポリマーからなるフィルムの他方の面を膨潤性溶剤と接触させて、該フィルムの厚み方向に結晶化度勾配を形成した半膨潤フィルムを延伸してなる請求項7に記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項9】
他方の面である膨潤面の平均孔径が、その反対側の非膨潤面の平均孔径よりも小さく、かつ前記非膨潤面から前記膨潤面に向かって平均孔径が連続的に変化している請求項8に記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項10】
結晶性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項7から9のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【請求項11】
膨潤性溶剤が、下記構造式で表される化合物、パーフルオロケロセン、パーフルオロジメチルシクロへキサン、及びヘキサフルオロプロピレン3量体のいずれかである請求項7から10のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜。
【化1】

【請求項12】
請求項6から11のいずれかに記載の結晶性ポリマー微孔性膜を用いたことを特徴とする濾過用フィルタ。
【請求項13】
プリーツ状に加工成形してなる請求項12に記載の濾過用フィルタ。
【請求項14】
結晶性ポリマー微孔性膜の平均孔径の大きな面側をフィルタの濾過面に使用する請求項12から13のいずれかに記載の濾過用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−142785(P2009−142785A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324901(P2007−324901)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】