説明

結晶性腫瘍壊死因子レセプター2ポリペプチド

本発明は、結晶性ポリペプチド、およびそれらを生成する方法;結晶性ポリペプチドを含む薬学的組成物;さらには、そのようなポリペプチドおよび組成物の治療的な使用に関する。本発明により、結晶性TNFR2:Fcポリペプチドと結晶性エタナーセプト(etanercept)を含む、TNFR2ポリペプチドの結晶形態が提供される。本発明の1つの実施形態は、エタナーセプトの結晶である;特定の実施形態においては、エタナーセプトの結晶は、桿状の形態であり、そして/または0.5ミリメートルから1.5ミリメートルの間、もしくは0.05ミリメートルから0.3ミリメートルの間の最大の長さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年8月1日に出願した米国仮特許出願番号60/491,827(これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)に関する、米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
多くの治療用分子はポリペプチドであり、それらのいくつかは、変性、分解、および/または凝集しやすい。ポリペプチドの凝集は、それにより、免疫原性を生じる場合があるので、望ましくない(Cleland et al.,1993、Crit Rev Therapeutic Drug Carrier Systems,10:307−377;およびRobbins et al.,Diabetes,36:838−845)。ポリペプチドはまた、触媒を受けやすく、また、それらが投与される生物が生まれつき持っている生物学的プロセスによって不活性な形態へと変換されやすい。さらに、治療用ポリペプチドは、不均質な混合物の形態として生成される場合があり、それによって、グリコシル化の程度において、またはそれらの三次元立体構造の別の局面が変化する。
【0003】
治療用ポリペプチドの結晶化により、そのようなポリペプチドの安定であり、均質な処方物が生成されるという利点が提供される。具体的な結晶の利点としては、薬学的産物を調製することにおける治療用化合物の取り扱いがはるかに容易であること;分解、変性、および/または凝集が少なくなること;治療用ポリペプチドの徐放形態を生成でき、投与頻度を減少させることができる可能性が生じること;ならびに、非常に高濃度の治療用ポリペプチドを含む薬学的組成物を形成するために結晶性の治療用ポリペプチドを使用できることが挙げられる。さらに、結晶化方法により、処方物中に、より均質なポリペプチドの集団を生じることができる。なぜなら、同様の構造のポリペプチド分子の付加によってのみ、結晶の持続的な成長が行われるからである。ごく少量の種々の構造のポリペプチドが結晶格子に組み込まれると、結晶中に生じる構造の弱さによってそのさらなる成長が妨げられる。結晶形態への組み込みにより、より大きい割合のポリペプチドが活性な形態となり、少量の結晶性の治療用ペプチドの投与により、より多量のより不均質なポリペプチド処方物の投与と同等の治療効果を生じることができる。
【0004】
したがって、治療用ポリペプチドの結晶性処方物が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により、結晶性TNFR2:Fcポリペプチドと結晶性エタナーセプト(etanercept)を含む、TNFR2ポリペプチドの結晶形態が提供される。本発明の1つの実施形態は、エタナーセプトの結晶である;特定の実施形態においては、エタナーセプトの結晶は、桿状の形態であり、そして/または0.5ミリメートルから1.5ミリメートルの間、もしくは0.05ミリメートルから0.3ミリメートルの間の最大の長さを有する。
【0006】
本発明によって、TNFR2−Ig融合ポリペプチドまたはエタナーセプトのようなTNFR2ポリペプチドの結晶を生成する方法もまた提供される。特定の実施形態においては、TNFR2ポリペプチドは単量体である;さらなる実施形態においては、TNFR2ポリペプチドは多量体であり、例えば、二量体、三量体、またはオリゴマーである。さらなる実施形態においては、TNFR2ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸39から162までの長さにわたって少なくとも90%のアミノ酸同一性を共有する。
【0007】
本発明はまた、結晶性TNFR2:Fcポリペプチドまたは結晶性エタナーセプトのような、開示される結晶性TNFR2ポリペプチドの、本明細書中で開示されるそれぞれの医学的障害の予防的処置または治療的処置のための医薬品の製造における使用にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、結晶形態のTNFR2ポリペプチドに関し、そのような結晶性TNFR2ポリペプチドを生成し、使用するための方法に関する。結晶ポリペプチドは、結晶形態ではないポリペプチドよりもより長い時間保存することができ、より高い物理的な安定性と、生物学的活性の保持を、幅広い保存および取り扱い条件下で示すことができる点で、これらのポリペプチド結晶は有用である。
【0009】
(定義)
「ポリペプチド」は、本明細書中では、通常は10個を超えるアミノ酸を有する、自然界に存在している、合成の、および組み換えの、タンパク質またはペプチドとして定義される。「ポリペプチドリンカー」は、1アミノ酸長のような一連の短いアミノ酸によって形成されるポリペプチドであり得る。
【0010】
「単離された」は、本明細書中で使用される場合は、それが自然界において存在している環境から取り出されているポリペプチドまたは他の分子をいう。
【0011】
「実質的に精製された」は、本明細書中で使用される場合は、それが自然界において存在しているか、またはそれが生成されている環境に存在している他のポリペプチドを実質的に含まないポリペプチドをいう;実質的に精製されたポリペプチドの調製物には、少なくとも90重量%(または、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、または、少なくとも99重量%)のポリペプチドが含まれている。ポリペプチドの重量には、任意の炭水化物、脂質、もしくはポリペプチドに共有結合している他の残基が含まれる。実質的に精製されたポリペプチド調製物には、グリコシル化または他の翻訳後修飾の程度および型に関して、あるいは、立体構造または多量体化の程度に関して、調製物中のポリペプチド分子にバリエーションが含まれている場合もある。
【0012】
「精製されたポリペプチド」は、本明細書中で使用される場合には、本質的に均質なポリペプチド調製物をいう;しかし、本質的に均質なポリペプチド調製物には、グリコシル化または他の翻訳後修飾の程度および型に関して、あるいは、立体構造または多量体化の程度に関して、調製物中のポリペプチド分子にバリエーションが含まれている場合もある。
【0013】
「全長」のポリペプチドは、最初に翻訳された場合にポリペプチドの一次アミノ酸配列全体を有するポリペプチドである;例えば、ヒトTNFR2の全長の形態は配列番号1に示される。ポリペプチドの「成熟形態」は、プロドメインを除去するためのシグナル配列の切断またはタンパク質分解的切断のような翻訳後プロセシング工程を受けたポリペプチドをいう。特定の全長ポリペプチドの複数の成熟形態を、例えば、複数の部位でのシグナル配列の切断によって、またはポリペプチドを切断するプロテアーゼの種々の調節によって、生成することができる。このようなポリペプチドの成熟形態(単数または複数)は、全長のポリペプチドをコードする核酸分子の、適切な哺乳動物細胞または他の宿主細胞中での発現によって、得ることができる。成熟形態のポリペプチドの配列は、また、全長の形態のアミノ酸配列から、シグナル配列またはプロテアーゼ切断部位の同定を通じて、決定することもできる。特定の実施形態においては、ヒトTNFR2ポリペプチドの成熟形態は、配列番号1のアミノ酸23、27、および28からなる群より選択されるN末端アミノ酸残基を有するか、あるいは、配列番号1のアミノ酸1からアミノ酸39の間のそれぞれのアミノ酸からなる群より選択されるN末端アミノ酸を有する。
【0014】
2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、目視検査、および数学的な計算によって決定することができ、比較は、また、コンピュータープログラムを使用する配列情報の比較によって行うこともできる。同一性パーセントを決定することの最初の工程は、重複および同一性を最大にするように、一方で、アラインメント中のギャップを最少にするように、アミノ酸配列をアラインメントすることである。同一性パーセントを決定することの第2の工程は、アラインメントした配列の間の同一である数を計算し、アラインメントの中のアミノ酸の総数で割り算することである。アミノ酸配列が標的アミノ酸配列の「隅から隅までの長さ」を有するものについて同一性パーセントを決定する場合には、標的アミノ酸配列の長さが、アラインメントの中の塩基の総数の最小値である。例えば、配列番号Xのアミノ酸1から100までの第2のアミノ酸配列の長さの「隅から隅までにわたる」50アミノ酸の第1のアミノ酸配列の同一性パーセントを決定する場合には、第1のアミノ酸配列が配列番号Xのアミノ酸1から50までと同一であれば、同一性パーセントは50%となり、これは、50個のアミノ酸の同一性をアラインメントの長さ全体(100アミノ酸)で割り算したものである。アミノ酸配列をアラインメントし、同一性パーセントをコンピューターで計算するための例示的なコンピュータープログラムは、National Library of Medicineのウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/gorf/wblast2.cgiを通じて使用することができるBLASTPプログラム、またはUW−BLAST 2.0アルゴリズムである。UW−BLAST 2.0についての標準的なデフォルトパラメーター設定は、以下のインターネットサイトに記載されている:sapiens.wustl.edu/blast/README.html.。さらに、BLASTアルゴリズムでは、BLOSUM62アミノ酸スコアリングマトリックス、およびオプションのパラメーターが使用され、これらは、以下のように使用することができる:(A)組成の複雑さが低い尋問配列のセグメント(Wootton and FederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry,1993)によって決定される;Wootton and Federhen,1996,Analysis of compositionally biased regions in sequence databases,Methods Enzymol.266:554−71もまた参照のこと)、または短い周期的な内部反復から構成されるセグメント(Claverie and StatesのXNUプログラム(Computers and Chemistry,1993)によって決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、ならびに(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的に有意な限界、すなわち、E−スコア(予想される適合の可能性は、Karlin and Altschul(1990)の確率論的モデルに従って、単に偶然見出される;適合と記載される統計学的有意性がこのE−スコアの限界値よりも大きい場合は、適合は報告されない。);E−スコアの限界値は、0.5、0.25、0.1、0.05、0.01、0.001、0.0001、1e−5、1e−10、1e−15、1e−20、1e−25、1e−30、1e−40、1e−50、1e−75、または、1e−100である。配列比較の分野の当業者によって使用される他のプログラムもまた、アミノ酸配列をアラインメントするために使用することができ、例えば、Genetics Computer Group(GCG;Madison,WI)Wisconsinパッケージバージョン10.0プログラム、「GAP」(Devereux et al.,1984,Nucl.Acids Res.12:387)がその例である。「GAP」プログラムについてのデフォルトパラメーターには、以下のものが含まれる:(1)ヌクレオチドについては、単項式比較マトリックスのGCG履行(一致については1を、不一致については0の値を含む)、およびSchwartz and Dayhoff,eds.,Atlas of Polypeptide Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation pp.353−358,1979に記載されているような、Gribskov and Burgess,Nucl.Acids Res.14:6745,1986の重量アミノ酸比較マトリックス、;あるいは、他の同等の比較マトリックス;(2)アミノ酸配列については、それぞれのギャップについてのペナルティー 30と、それぞれのギャップの中のそれぞれの記号についてのさらなるペナルティー 1、あるいは、ヌクレオチド配列については、それぞれのギャップについてのペナルティー 50と、それぞれのギャップの中のそれぞれの記号についてのさらなるペナルティー 3;(3)末端のギャップについてはペナルティーはなし;ならびに(4)長さのギャップについては最大ではないペナルティー。
【0015】
本発明のTNFR2ポリペプチドの「可溶性形態」には、これらのポリペプチドの特定の断片またはドメインが含まれる。可溶性ポリペプチドは、それらが発現される細胞から分泌され得るポリペプチドである。分泌された可溶性ポリペプチドは、培養培地から所望されるポリペプチドを発現する完全な細胞を、例えば、遠心分離によって、分離し、そして所望されるポリペプチドの存在について培地(上清)をアッセイすることによって同定することができる(そして、その不溶性の膜に結合した対応物と区別することができる)。培地中に所望されるポリペプチドが存在することは、ポリペプチドが細胞から分泌され、したがって、ポリペプチドがポリペプチドの可溶性の形態であることを示している。本発明のサイトカインポリペプチドの可溶性形態の使用は、多くの用途に有用である。組み換え宿主細胞からのポリペプチドの精製は、可溶性ポリペプチドが細胞から分泌されるので、容易である。さらに、可溶性ポリペプチドは、通常、非経口投与について、および多くの酵素的手順について、膜結合形態よりも適している。本発明の特定の実施形態においては、TNFR2ポリペプチドの成熟可溶性形態には、配列番号1のアミノ酸258から87のような膜貫通ドメインまたは膜結合ドメインは含まれていないか、または、そのようなドメインの不十分な部分(例えば、10アミノ酸もしくはそれ未満)しか含まれておらず、結果として、ポリペプチドは膜結合形態で保たれる。
【0016】
「1つのアミノ酸配列から本質的になる単離されたポリペプチド」は、ポリペプチドが、状況に応じて、上記のアミノ酸配列に加えて、ポリペプチドのいずれかの末端、または両方の末端に共有結合されたさらなる物質を有することができることを意味している。上記のさらなる物質は、ポリペプチドのいずれかの末端、または両方の末端に共有結合された、1から10,000個のさらなるアミノ酸;または、ポリペプチドのいずれかの末端、または両方の末端に共有結合された、1から1,000個のさらなるアミノ酸;あるいは、ポリペプチドのいずれかの末端、または両方の末端に共有結合された、1から100個のさらなるアミノ酸である。本発明のポリペプチドのいずれかの末端、または両方の末端へのさらなるアミノ酸の共有結合により、自然界には存在しない組み合わせられたアミノ酸配列が得られる。
【0017】
(結晶化のためのTNFR2ポリペプチド)
TNFR2ポリペプチドは、TNFR2(腫瘍壊死因子受容体2)ポリペプチドの少なくとも一部、またはその改変体の少なくとも一部を含むポリペプチドである。TNFR2ポリペプチドには、TNFR2融合ポリペプチド、例えば、以下に記載されるTNFR2−Ig融合ポリペプチド、ならびに、TNFR2:Fcポリペプチド、エタナーセプト、ならびに、その改変体、単量体、または多量体形態、修飾されたバージョン、および結合体が含まれる。
【0018】
TNFR2ポリペプチドはまた、TNFRSF1B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー1B)、p75、およびCD120bとも呼ばれている;TNFR2ポリペプチドの全長のアミノ酸配列は、配列番号1に示されている(Swiss−Prot Database Accession Number P20333もまた参照のこと)。別の関連しているが異なる腫瘍壊死因子受容体は、TNFR1であり、TNFRSF1Aおよびp55とも呼ばれている(Swiss−Prot Database Accession Number P19438もまた参照のこと)。TNFR2およびTNFR1は、多面的なサイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF−α、または簡単に「TNF」)に結合することが知られている。サイトカイン腫瘍壊死因子αは炎症に関係している。TNF−αへの結合に加えて、TNFR2およびTNFR1ポリペプチドは、TNF−β(より一般的には、「リンホトキシン−α」またはLT−αと呼ばれている)のホモ三量体の細胞への結合に介在する。TNF−βは、炎症に関係している別のサイトカインであり、TNF−αと構造上の類似性を共有する(例えば、Cosman,Blood Cell Biochem 7:51−77,1996を参照のこと)。本明細書中で使用される場合は、「TNFR」または「TNFRポリペプチド」は、TNF−αまたはLT−αに結合することができるポリペプチドをいう;TNFRポリペプチドの特異的な例は、TNFR2およびTNFR1である。本明細書中で使用される場合は、「結合」または「リガンド結合」または「リガンド結合活性を有する」は、単量体形態の場合には、少なくとも1×10−1の親和性で(すなわち、阻害定数すなわち、Kで)、また、さらなる実施形態においては、単量体形態の場合には、少なくとも1×10−1の親和性で、また、二量体もしくは三量体のような多量体の形態の場合には、少なくとも1×10−1の親和性で、また、二量体もしくは三量体のような多量体の形態の場合には、少なくとも8×10−1の親和性で、TNF−αまたはLT−αのようなリガンドに結合することを意味する。TNFR2ポリペプチドまたはその改変体のTNF−α結合親和性(阻害定数)は、以下の実施例6に記載されるような結合アッセイを使用して決定することができる(Mohler et al.,1993、J Immunol 151:1548−1561およびPeppel et al.,1991,J Exp Med 174:1483−1489もまた参照のこと)。同じように、同様のアッセイを使用して、TL−αまたは任意の他の可能性のあるリガンドに対する、TNFR2ポリペプチドまたはその改変体の結合親和性を決定することができる。「TNFRに関係している」は、本明細書中で使用される場合は、TNFRポリペプチドに対して、アミノ酸配列類似性、または三次元構造の類似性によって関係しているポリペプチドをいうが、TNF−αまたはLT−αに必ずしも結合する必要はない。TNFRに関係しているポリペプチドの例は、CD40(Swiss−Prot Database Accession Number P25942)およびOX40(Swiss−Prot Database Accession Number P43489)ポリペプチドである。
【0019】
TNFR1の三次元構造およびいくつかのTNFRに関係しているポリペプチドの三次元構造が決定されている;例えば、p55 TNFR1の細胞外ドメインは結晶化されており、Protein Data Bank(PDB,www.rcsb.org/pdb/)に、1EXTの登録番号で提出されており、そのリガンドLT−αと会合したp55 TNFR1ポリペプチドは、PDBに1TNRとして提出されている。また、Structual Classification of Proteins resource(SCOP,scop.berkeley.edu)においては、TNFRとTNFRに関係しているポリペプチドを定義するSCOP TNF受容体様タンパク質の折り畳みは、それらが少なくとも3個の類似しているジスルフィドを多く含むドメインを有する細胞外ドメインを共有するという点で、構造的に関係している。例えば、配列番号1に示されているようなTNFR2は4個のそのようなドメインを有しており、そのうちの最もN末端側の3個のドメインは、ジスルフィド結合の形成に関与している保存されているシステイン残基の特徴的なパターンを共有する。4個のジスルフィドを多く含むドメインは、配列番号1のアミノ酸39から76、アミノ酸77から118、アミノ酸119から162、およびアミノ酸163から201である。ジスルフィド結合は、以下のアミノ酸位置のシステイン残基の対の間で形成される:40と53、54と67、57と75、78と93、96と110、100と118,120と126、134と143、137と161、および(4番目のドメイン中の)164と179;4番目のジスルフィド結合ドメインには、配列番号1のアミノ酸184および200のシステイン残基の別の対もまた、含まれている。
【0020】
TNFR2ポリペプチドおよびその改変体は、構造的に特徴付けられたTNFRポリペプチドおよびTNFRに関係しているポリペプチドと同様に、GeneFold(Tripos,Inc.,ST.Louis,MO;Jaroszewski et al.,1998、Prot Sci 7:1431−1440)、尋問タンパク質配列をProtein Data Bank(PDB)の構造の典型に重ね合わせるタンパク質折り畳みプログラム(Berman et al.,2000,Nucleic Acids Res 28:235−242)のようなコンピュータープログラムを使用することによって、それらの三次元構造の類似性について分析することができる。TNFR2ポリペプチドまたはその改変体の構造を評価するためにGeneFoldを使用するためには、ポリペプチド配列をプログラムに入力し、これによって、GeneFoldデータベース中に存在している既知のタンパク質構造(「鋳型」構造)にそれをいかにして折り畳むかを反映する確立スコアを割り当てる。スコアリングのために、GeneFoldは、一次アミノ酸配列類似性、残基の埋没パターン、局所相互作用、および二次構造の比較を利用する。GeneFoldプログラムでは、タンパク質の折り畳みに関するデータベース中の鋳型構造の全ての上でアミノ酸配列を折り畳む。これには、いくつかのヒトTNFRポリペプチド、例えば、p55 TNFR1(鋳型「1tnrR」)、およびTNFRに関係しているポリペプチドであるCD40(鋳型「1cdf_」)についての解明されている構造も含まれている。それぞれの比較のために、3個の異なるスコアが、(i)配列のみ;(ii)配列と、局所的な立体構造の優先関係、および埋没の関係;ならびに(iii)配列と局所的な立体構造の優先関係、および埋没の関係と二次構造に基づいて計算される。そのそれぞれの場合において、このプログラムにより、最適なアラインメントが決定され、偶然生じるアラインメントのこの度合いである確立(P値)が計算され、スコアとしてP値の逆数が報告される。これらのスコアは、したがって、尋問ポリペプチド配列がTNFRポリペプチド構造のような種々の参照構造と適合する程度を反映する。GeneFoldを、TNFR2ポリペプチドまたはその改変体(尋問ポリペプチド)を他のTNFRまたはTNFRに関係しているポリペプチドに対して比較するために使用する場合には、尋問ポリペプチドは、1cdf_、1tnrR、または別のTNFR、またはTNFRに関係している鋳型に、3つのスコアリングカテゴリーのうちの1つにおいてもっともヒットするとして適合させられ、そして/また、少なくとも500、または少なくとも700、または少なくとも900、または、少なくとも990、または999.9(最大スコア)のいずれかのスコアでTNFR鋳型と適合する。TNFR2ポリペプチドまたはその改変体の分析のための別の方法は、尋問ポリペプチドの構造を、TNFRまたはTNFRに関係しているタンパク質の構造と、相同性モデリングの周知のプロセスを通じてアラインメントすることである。相同性モデリングに使用することができる1つの有用なソフトウェアプログラムはPhamacopeia Inc.(Princeton,NJ)の関連子会社であるAccelrysから入手することができる「Modeler」プログラムである。
【0021】
結晶化のためのTNFR2ポリペプチドには、配列番号1のTNFR2ポリペプチドの細胞外領域の少なくとも一部、またはその改変体が含まれる。特定の実施形態においては、TNFR2ポリペプチドの細胞外領域全体が、TNFR2ポリペプチド中に含まれる。特定の実施例としては、TNFR2ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸28から257、またはアミノ酸27から257、またはアミノ酸23から257を含むこともできる。さらなる実施形態においては、TNFR2ポリペプチドの細胞外領域は、分子内ジスルフィド結合を有する3個の最もN末端側のドメインを完全なまま残しながら、少なくとも1つの可能性のあるN結合グリコシル化部位(例えば、配列番号1のアミノ酸171および193)、および/または、プロリンを多く含む領域(例えば、配列番号1のアミノ酸24から36、もしくは、配列番号1のアミノ酸217から261)を欠失させるように、短縮させられる。例えば、1つの実施形態においては、TNFR2ポリペプチドには、配列番号1のアミノ酸39から162、または配列番号1のアミノ酸39から179、または配列番号1のアミノ酸39から200、あるいは上記のいずれかの改変体が含まれる。
【0022】
本発明にしたがう結晶化のためのTNFR2ポリペプチドとしては、配列番号1のTNFR2ポリペプチドの長さの、少なくとも20%(または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%、または少なくとも50%)であるアミノ酸配列の長さを有しており、TNFR2ポリペプチドと少なくとも60%(または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%)の配列同一性を有するポリペプチドが挙げられる。本発明には、また、TNFR2ポリペプチド、および配列番号1の少なくとも80個、または少なくとも90個、または少なくとも100個、または少なくとも110個、または少なくとも120個、または少なくとも130個の連続しているアミノ酸を含むセグメントを含むポリペプチド断片、あるいはそれらの改変体も、含まれる。このようなポリペプチドおよびポリペプチド断片には、また、配列番号1のTNFR2ポリペプチドと、少なくとも70%(または少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも99%、または少なくとも99.5%)の配列同一性を共有するセグメントも含まれる場合がある。
【0023】
結晶化させられるTNFR2ポリペプチドのそのような改変体を生成する場合には、いくつかの検討材料を、当業者を、TNF−α結合活性のような生物学的活性を保持している改変体を生成できるように導くために、使用することができる。特定の実施形態においては、配列番号1のTNFR2ポリペプチドについての上記の、少なくとも3個のN末端ジスルフィド結合領域、または少なくとも4個全てのジスルフィド結合領域を保持していることが望ましい。さらに、N末端の3個のジスルフィド結合領域を含むTNFR2の細胞外ドメインの部分を、4番目のジスルフィド結合領域の全てまたはその一部を含むように伸張することができる。また、特定の実施形態においては、4番目のジスルフィド結合領域のシステインが全く含まれないか、あるいは、システインの最初の対(配列番号1のアミノ酸164と179)を含む4番目のジスルフィド結合領域の領域が含まれ、そして/またはシステインの2番目の対(配列番号1のアミノ酸185と200)を含む4番目のジスルフィド結合領域の領域が含まれる。したがって、本発明の範囲に含まれる改変体は、これらのドメインのジスルフィド結合を形成することに関与しているシステイン残基を保持しており、また、それらのシステインの間に適切な間隔(すなわち、一次アミノ酸配列の残基の数)も保持している。例えば、ジスルフィド結合を形成するシステイン対の間に5個を超えるアミノ酸が挿入されていないか、または欠失させられている改変体は、本発明の範囲に含まれ、したがって、そのようなシステインの間に4個を超えるアミノ酸が挿入されていないかまたは欠失させられている改変体が、本発明の範囲に含まれ、そのようなシステインの間に3個を超えるアミノ酸が挿入されていないかまたは欠失させられている改変体が、本発明の範囲に含まれ、そのようなシステインの間に2個を超えるアミノ酸が挿入されていないかまたは欠失させられている改変体が、本発明の範囲に含まれ、そのようなシステインの間に1個を超えるアミノ酸が挿入されていないかまたは欠失させられている改変体が、本発明の範囲に含まれる。
【0024】
当業者がTNFR2ポリペプチドの改変体を生成できるように導く別の検討材料は、行われるアミノ酸置換の性質である;このような置換は保存的であり得、保存的置換とは、改変体中の特定の位置に存在しているアミノ酸が、変更されていないTNFR2ポリペプチド中の対応している位置のアミノ酸と同じ化学的および/または大きさ特性を有することを意味する。表2に、類似する特性を有すると考えられるアミノ酸のグループをまとめる。したがって、表2の同じ並びにある別のアミノ酸での任意のアミノ酸の置換は、保存的置換である。特定の実施形態においては、TNFR2ポリペプチド改変体は、配列番号1のアミノ酸39から162、または配列番号1のアミノ酸39から179、または配列番号1のアミノ酸39から200の長さの隅々にわたって20%またはそれ未満のアミノ酸置換(または15%もしくはそれ未満、または10%もしくはそれ未満、または7.5%もしくはそれ未満、または5%もしくはそれ未満、または2.5%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満)を有する。特定の実施形態においては、TNFR2ポリペプチド改変体は、配列番号1のアミノ酸39から162、または配列番号1のアミノ酸39から179、または配列番号1のアミノ酸39から200の長さの隅々にわたって、20%またはそれ未満のアミノ酸置換(または15%もしくはそれ未満、または10%もしくはそれ未満、または7.5%もしくはそれ未満、または5%もしくはそれ未満、または2.5%もしくはそれ未満、または1%もしくはそれ未満)を有する。
【0025】
特定の実施形態においては、結晶化させられるTNFR2ポリペプチドまたはその改変体は、TNF−α結合活性、および/またはLT−α結合活性を有する。
【0026】
(表2)
(保存的アミノ酸置換)
【0027】
【表2】

(TNFR2融合タンパク質)
特定の実施形態においては、本発明の結晶化方法に使用されるTNFR2ポリペプチドには、Ig(免疫グロブリン)ポリペプチドの一部またはその改変体に対して融合させられたTNFR2ポリペプチドが含まれ、これは、状況に応じて、TNFR2−Ig融合ポリペプチドのTNFR2部分とIg部分との間にポリペプチドリンカーを有する。(任意のポリペプチドリンカーは、それがTNFR2融合ポリペプチド中に存在する場合には、1アミノ酸長のような短いものであり得る。)免疫グロブリン(Ig)ポリペプチドは、アミノ酸配列によって関連付けられ、また、三次元構造によっても関連付けられる。SCOPで定義されるような、ポリペプチドのIgスーパーファミリーは、通常は2つのシートに並べられる7本の鎖を有するとして記載される、タンパク質折り畳み「免疫グロブリン様βサンドイッチ」を有するタンパク質の1つのサブセットであるが、折り畳みのいくつかのメンバーはさらに鎖を有する。Igスーパーファミリーは以下の4個のタンパク質ドメインファミリーに分けられる:Vセットドメイン(抗体可変ドメイン様);C1セットドメイン(抗体定常ドメイン様);C2セットドメイン;およびIセットドメイン。
【0028】
TNFR2−Ig融合ポリペプチドには、少なくともIgポリペプチドの一部が、例えば、Igポリペプチドの定常領域の少なくとも10個の連続しているアミノ酸、またはIgポリペプチドの定常領域の少なくとも20個の連続しているアミノ酸と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を共有する少なくとも14アミノ酸長のポリペプチドが含まれる。本発明のTNFR2−Ig融合ポリペプチドには、少なくとも1つの重鎖定常領域が含まれることが好ましく、特定の実施形態においては、少なくとも1つの軽鎖定常領域が含まれることが好ましい。
【0029】
特定の実施形態においては、Igポリペプチドには、IgGクラスの重鎖の定常領域、またはその断片および/もしくは改変体が含まれ、他の実施形態においては、他の免疫グロブリンイソ型の定常領域を、そのようなTNFR2−Ig融合体を生成するために使用することができる。例えば、IgMクラスの重鎖の定常領域、またはその断片および/もしくは改変体を含むTNFR2−Ig融合ポリペプチドを、TNFR2−Ig融合ポリペプチドの10価(decavalent)形態を生成するために使用することができる。配列番号2によって提供されるヒトIgG1クラスの重鎖定常ドメインの特異的な例を有する、免疫グロブリン重鎖の定常領域には、CH1ドメイン(配列番号2のアミノ酸1から98)、ヒンジ領域(配列番号2のアミノ酸99から110)、CH2ドメイン(配列番号2のアミノ酸111から223)、およびCH3ドメイン(配列番号2のアミノ酸224から330)が含まれる。配列番号3によって、IgG1クラスの重鎖定常ドメインの改変体の特異的な例が提供される。この中には、2つのアミノ酸置換が生成されている(239位でGluがAspで置換されており、241位でMetがLeuで置換されている)。本発明の特定の実施形態には、配列番号2または配列番号3の全体またはそれらの一部に対して融合させられた、TNFR2ポリペプチドの細胞外ドメイン全体またはそれらの一部(配列番号1)を含む、TNFR2−Ig融合ポリペプチドが含まれる。これは、状況に応じて、TNFR2−Ig融合ポリペプチドのTNFR2部分とIg部分との間にリンカーポリペプチドを有する。本発明のさらなる実施形態においては、少なくともCHの部分を含む重鎖定常領域が、TNFR2−Ig融合ポリペプチドのIg部分である。特定の実施形態では、また、例えば、複数の重鎖の間にジスルフィド結合を提供するためにヒンジ領域のC末端側半分を含めることができる。本発明の特定の実施形態においては、TNFR2ポリペプチドは、状況に応じてポリペプチドリンカーを介して、重鎖定常ドメインのCH領域の少なくとも一部のN末端に対して共有結合させられて、TNFR2−Ig融合ポリペプチドが形成される。
【0030】
特定のさらなる実施形態においては、ヒンジ領域の少なくとも一部が、CH領域に結合させられる。1つの例としては、CHおよびCHが分子中に存在し、ヒンジ領域全体もまた存在する。別の例としては、CHは、ヒンジの最初の7個のアミノ酸(配列番号2または3のアミノ酸99から105)とともに存在する。本発明のTNFR2−Ig融合ポリペプチドが、例えば、単量体または二量体であり得ること、そして二量体TNFR2−Ig融合ポリペプチドが望ましい場合には、複数の重鎖の間のジスルフィド結合の形成に関与しているヒンジ領域の部分(例えば、配列番号2または3のアミノ酸109を含む配列番号2または3のアミノ酸99から110の部分)を含むことが重要であることは、当業者によって理解されるであろう。本発明のさらなる実施形態においては、TNFR2−Ig融合ポリペプチドは、C末端リジン残基(配列番号2または3のアミノ酸330)を含まないCH3ドメインの部分を含むことができる。なぜなら、C末端リジン残基は、Ig重鎖ポリペプチドの翻訳後プロセシングにおいて除去されることが観察されているからである。
【0031】
(Fcドメイン)
本明細書中で使用される場合は、Fcドメインには、上記に記載したような重鎖のCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインの1つまたは全て、あるいは、それらの断片または改変体が含まれ得、これらは、Fcドメインを含むTNFR2−Ig融合ポリペプチドの構成要素によって決定した場合には、単量体、二量体、または多量体であり得る。
【0032】
本発明による結晶化のために具体的に想定される特定のポリペプチドとしては、Fcドメインの少なくとも一部を含むTNFR2−Ig融合ポリペプチドが挙げられる。ヒトおよび他の哺乳動物の疾患の処置に適している好ましいTNFR2ポリペプチドは、TNFR2:Fcであり、これは、本明細書中で使用される場合、免疫グロブリンポリペプチドのFc部分に対して融合させられたTNFR2ポリペプチドの細胞外ドメイン全体またはその一部、あるいはその改変体であって、状況に応じて、TNFR2:FcポリペプチドのTNFR2部分とFc部分との間にポリペプチドリンカーを有するものを意味する。
【0033】
(他の多量体化ドメイン)
本発明の多量体としては、結晶化のためのTNFR2ポリペプチドが挙げられ、ここでは、TNFR2ポリペプチドは、二量体、三量体、十量体、または他の多量体形態である。本発明の多量体を調製するための別の方法としては、ロイシンジッパーの使用が挙げられる。ロイシンジッパードメインは、それらが見出されるポリペプチドのオリゴマー形成を促進するペプチドである。ロイシンジッパーは、いくつかのDNA結合ポリペプチドにおいて最初に同定され(Landschulz et al.,Science 240:1759,1988)、それ以来、種々の様々なポリペプチドにおいて見出されてきた。特に、既知のロイシンジッパーの中には、二量体化または三量体化する、自然界に存在しているペプチドまたはその誘導体がある。ジッパードメイン(本明細書中では、多量体化ドメインまたは多量体形成ドメインとも呼ばれる)には、反復的な7個の繰り返しが含まれ、多くの場合には、これには、他のアミノ酸がちりばめられて組み込まれている4個または5個のロイシン残基が含まれている。ロイシンジッパーの使用と、ロイシンジッパーを用いた多量体の調製は当該分野で周知である。他の多量体化ドメインとしては、肺のサーファクタントタンパクDに見られる三量体化ドメイン(Kovacs et al.,2002、J Biomol NMR 24:89−102)、および当該分野で公知の他のそのようなドメインが挙げられる。
【0034】
(エタナーセプト)
1つの実施形態においては、結晶化されるTNFR2ポリペプチドは「エタナーセプト(etanercept)」である。これは、ヒトIgG1の232位のアミノ酸位置に融合させられたTNFR2ポリペプチドの細胞外部分に由来する235個のアミノ酸からそれぞれがなる、2つのポリペプチドの二量体である。エタナーセプトの単量体成分のアミノ酸配列は、配列番号4に示される。この分子の二量体形態においては、2つのこれらの融合ポリペプチド(または「単量体」)が、2つの単量体の免疫グロブリン部分の間で形成される3個のジスルフィド結合によって互いに結合している。したがって、エタナーセプト二量体は、934個のアミノ酸からなり、およそ150キロダルトンの見かけの分子量を有する(Physicians Desk Reference,2002,Medical Economics Company Inc.,pp.1752−1755)。エタナーセプトは、現在、商品名ENBREL(登録商標)(Amgen Inc.,Thousand Oaks,CA)として市販されている。
【0035】
(グリコシル化および結合体)
本発明には、付随する自然なパターンのグリコシル化を伴っている、またはそれを伴っていない、本発明のTNFR2ポリペプチドが含まれる。酵母または哺乳動物の発現系(例えば、COS−1またはCHO細胞)中で発現させられるポリペプチドは、分子量およびグリコシル化パターンにおいて、発現系の選択に応じて、自然界に存在しているヒトのポリペプチドと類似している場合も、またそれとは明らかに異なる場合もある。本発明のポリペプチドの細菌の発現系(例えば、大腸菌(E.coli))での発現により、グリコシル化されていない分子が得られる。さらに、所定の調製物に、ポリペプチドの複数の様々にグリコシル化された種を含めることができる。グリコシル基は、従来の方法、具体的には、グリコペプチダーゼを利用する方法によって除去することができる。一般的には、本発明のグリコシル化ポリペプチドを、モル過剰量のグリコペプチダーゼ(Boehringer Mannheim)とともにインキュベートすることができる。
【0036】
本明細書中に記載される結晶化のための、およびその治療における使用のためのTNFR2ポリペプチドは、その血清半減期を延長させるため、またはタンパク質の送達を促進するために、ポリエチレングリコールと結合させられる(ペグ化)場合がある。TNFR p55から導かれたペグ化させられたTNFRポリペプチドの例は、組み換えのポリエチレングリコール結合可溶性TNFR p55(PEG−sTNFR I型)である。これは、TNFR p55の細胞外ドメインを含む。TNFR2ポリペプチドおよびその断片を同様の様式でポリエチレングリコールと結合と結合させることができる。ポリペプチドのペグ化のための試薬および方法は、例えば、WO92/16221;WO99/102330;および米国特許第6,420,339号;同第6,433,158号;同第6,441,136号;同第6,451,986号;同第6,548,644号;および同第6,552,170号に記載されている。これらの全ては、引用により本明細書中に組み入れられる。
【0037】
本発明には、また、細胞傷害性物質または蛍光物質に結合させられたTNFR2ポリペプチドの結晶形態も含まれる。このような物質としては、マイタンシン誘導体(例えば、DM1);腸毒素(例えば、ブドウ球菌(Staphylococcal)エントロトキシン);他の毒性タンパク質および化合物(例えば、Ricin−A、シュードモナス(Pseudomonas)毒素、ジフテリア毒素、ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキセート、およびマイトマイシンC);ヨウ素の同位元素(例えば、ヨウ素−125);テクネチウムの同位元素(例えば、Tc−99m);他の同位元素(212Bi、131I、186Re、および90Y);シアニン蛍光色素(例えば、Cy5.5.18);ならびにリボソーム不活化ポリペプチド(例えば、ボーガニン(bouganin)、ゲロニン、またはサポリン−S6)が挙げられる。
【0038】
(結晶化のためのポリペプチドの生成および精製)
TNFR2ポリペプチドを、ポリペプチドを生成するように遺伝子操作した宿主細胞のような、ポリペプチドを発現する生存している宿主細胞から生成させることができる。ポリペプチドを生成させるための細胞に対する遺伝子操作方法は、当該分野で周知である。例えば、Ausubel et al.,eds.(1990),Current Protocols in Molecular Biology(Wiley,New York)を参照のこと。このような方法には、ポリペプチドをコードし発現することができる核酸を生存している宿主細胞に導入することが含まれる。これらの宿主細胞は、培養液中で増殖させた細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、または動物細胞であり得る。細菌宿主細胞としては、大腸菌(Escherichia coli)細胞が挙げられるが、これに限定されない。適切な大腸菌(E.coli)株の例としては、HB101、DH5α、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539、および外来DNAを切断することができない任意の大腸菌(E.coli)株が挙げられる。使用することができる真菌宿主細胞としては、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、およびアスペルギルス属(Aspergillus)の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。使用することができる動物細胞株のいくつかの例は、CHO、VERO、BHK、HeLa、Cos、MDCK、293、3T3、およびWI38である。新しい動物細胞株を、当業者に周知の方法を使用して(例えば、形質転換、ウイルス感染、および/または選択によって)確立することができる。状況に応じて、ポリペプチドを、宿主細胞から培地中に分泌させることができる。
【0039】
発現されたTNFR2ポリペプチドの精製は、任意の標準的な方法によって行うことができる。TNFR2ポリペプチドが細胞内で生成される場合は、特定の破片を、例えば、遠心分離または限外濾過によって、取り出すことができる。ポリペプチドが培地中に分泌される場合は、そのような発現系に由来する上清を、標準的なポリペプチド濃縮フィルターを使用して最初に濃縮することができる。プロテアーゼ阻害剤もまた、タンパク質分解を阻害するために添加することができ、抗生物質を、微生物の増殖を防ぐために含めることができる。TNFR2ポリペプチドを、所望されるポリペプチドの立体構造を得るために、シャペロンまたはアクセサリータンパク質の存在下で生成させることができ、また、これを、再折り畳みを誘導するか、またはポリペプチドの立体構造の変化を誘導するために、生成後に酸化および/または還元条件のような条件に供することができる(例えば、WO02/068455)。
【0040】
TNFR2ポリペプチドは、例えば、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィー、および公知であるかまたはまだ発見されていない精製技術の任意の組み合わせを使用して、精製することができる。例えば、プロテインAを、TNFR2−Igポリペプチドを精製するために使用することができる。これは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖(Lindmark et al.,1983,J.Immunol.Meth.62:1−13)に基づく。ここでは、TNFR2−Ig融合ポリペプチドのIg部分には、プロテインAへの結合に関与している定常ドメインの一部が含まれている。プロテインGは、全てのマウスのイソ型、およびヒトのγ3について推奨される(Guss et al.,1986,EMBO J.5:1567−1575)。TNFR2ポリペプチドの精製のための他の技術を、必要に応じて利用することができ、イオン交換カラム上での分画、エタノールまたは他のアルコール類での沈殿、逆相HPLC,FPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSET(登録商標)上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、疎水性相互作用クロマトグラフィー、クロマト分画、SDS−PAGE,および硫酸アンモニウム沈殿を含むが、これらに限定されない他の技術もまた、必要に応じて利用することができる。
【0041】
(結晶、結晶性処方物、および組成物の生成)
ポリペプチド結晶は、水溶液から、または有機溶媒もしくは添加物を含む水溶液からポリペプチドの制御された結晶化によって成長させることができる。制御することができる溶液の条件としては、例えば、溶媒、有機溶媒、または添加物の蒸発速度、適切な共溶質および緩衝液の存在、pH、ならびに温度が挙げられる。タンパク質の結晶化に影響を与える種々の要因の包括的な概要については、McPherson,1985,Methods Enzymol 114:112−120によって公開されている。さらに、McPherson and Gilliland,1988,J Crystal Growth,90:51−59には、結晶化させることができるポリペプチドについての蓄積された包括的なリスト、ならびにそれらを結晶化させる条件が含まれている。結晶、および結晶化の手法についての概要、さらには、解明されたタンパク質の構造の配位の包括は、Brookhaven National LaboratoryのProtein Data Bank(www.rcsb.org/pdb/;Bernstein et al.,1977、J.Mol.Biol.,112:535−542)によって保存されている。これらの参考文献は、適切なポリペプチドの結晶の形成のための前準備として、ポリペプチドの結晶化に必要な条件を決定するために使用することができ、これによって、他のポリペプチドについての結晶化方法を導くことができる。しかし、上記の参考文献のほとんどにおいて記載されている条件が、殆どの場合において、極少量の大きな回折の品質の結晶を得るために最適であることに注意しなければならない。したがって、これらの条件を、ポリペプチドの結晶の大量生成のための生成量の多いプロセスが得られるようにいくらかの程度調整することが必要であることが、当業者に明らかである。
【0042】
一般的には、結晶は、結晶化させられるポリペプチドを、適切な水性の溶媒または適切な結晶化試薬(例えば、塩または有機溶媒または添加物)を含む水性の溶媒と混合することによって生じさせられる。溶媒は、ポリペプチドと混合され、結晶化の誘導に適切であり、ポリペプチドの活性および安定性を維持できることが実験により決定された温度での攪拌に供することができる。溶媒には、状況に応じて、共溶質、例えば、二価の陽イオン、補因子、またはカオトロピック剤、さらには、pHを制御するための緩衝液の種を含めることができる。結晶化のための「共溶質の手段」には、ポリペプチドの結晶化を促進するための共溶質を供給することができる化合物が含まれる。共溶質の手段の例として、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化カドミウム、硫酸カドミウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化セシウム、塩化コバルト、CH(CH15N(CHBr(CTAB)、クエン酸二アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二アンモニウム、酒石酸二アンモニウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、DL−リンゴ酸、塩化第二鉄、L−プロリン、酢酸リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ニッケル、酢酸カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、フッ化カリウム、ギ酸カリウム、硝酸カリウム、リン酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、硫酸カリウム、チオシアン酸カリウム、酢酸ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、コハク酸、タクシメート(tacsimate)、クエン酸三アンモニウム、クエン酸三リチウム、トリメチルアミンNオキサイド、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、および共溶質を供給するように作用する他の化合物が挙げられる。「結晶化緩衝液の手段」としては、ポリペプチドの結晶化を促進するための所望の範囲に、溶液のpHを維持する化合物が挙げられる。結晶化緩衝液の手段の例としては、ACES(N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルフォン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルフォン酸)、Bicine(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン)、BIS−TRIS(2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−2,2’、2’’−ニトリロトリエタノール)、ホウ酸、CAPS(3−[シクロヘキシルアミノ]−1−プロパン−スルフォン酸)、EPPS(HEPPS、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルフォン酸)、Gly−Gly(NHCHCONHCHCOOH、グリシル−グリシン)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタン−スルフォン酸)、イミダゾール、MES(2−モルフォリノエタンスルフォン酸)、MOPS(3−(N−モルフォリノ)−プロパンスルフォン酸)、PIPES(ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルフォン酸))、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸一塩基ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、TAPS(N−[トリス−(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノプロパンスルフォン酸)、TAPSO(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルフォン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタン−スルフォン酸)、Tricine(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)、Tris−HCl、TRIZMA(2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール)、および溶液を特定のpHまたはその付近に保つように作用する他の化合物が挙げられる。
【0043】
共溶質、緩衝液などの必要性と、それらの濃度は、結晶化を促進するように経験的に決定される。ポリペプチドについての適切な結晶化条件のいくつかの例は、実施例1、2、および3に以下に記載される。
【0044】
産業的規模での処理においては、結晶化を導く制御された沈殿は、ポリペプチド、沈殿物、共溶質、および状況に応じて、緩衝液を、バッチプロセスにおいて単純に混合することによって、最もよく行うことができる。別の見解としては、ポリペプチドは、出発材料としてポリペプチドの沈殿を使用すること(「種蒔き」)によって結晶化させることもできる。この場合は、ポリペプチドの沈殿を結晶化溶液に添加して、結晶が形成されるまでインキュベートする。透析または蒸気拡散のような別の研究室での結晶化方法もまた、適応することができる。McPherson、前出、およびGilliland、前出には、結晶化に関する文献のそれらの概要において、適切な条件についての包括的なリストが含まれている。時に、結晶化したポリペプチドが架橋される場合には、意図される架橋剤と結晶化媒体との間での不適合により、さらに適切な溶媒系へと結晶を移動させることが必要な場合もある。
【0045】
本発明の1つの実施形態によれば、ポリペプチド結晶、結晶性処方物および組成物は、以下のプロセスによって調製される:最初に、ポリペプチドが結晶化される。次に、本明細書中に記載されている賦形剤または成分が母液に直接添加される。あるいは、母液が、最短で1時間、最長で24時間かけて除去された後、結晶が、賦形剤または他の処方成分の溶液中に懸濁させられる。賦形剤の濃度は、通常、約0.01から30%W/Wの間であり、これは、それぞれ、99.99から70%W/Wのポリペプチド結晶の濃度に対応する。1つの実施形態においては、賦形剤の濃度は、約0.1から10%であり、これは、それぞれ、99.9から90%W/Wの結晶濃度に対応する。母液は、濾過または遠心分離のいずれかにより、結晶のスラリーから除去することができる。その後、結晶は、状況に応じて、50から100%の1つ以上の有機溶媒または添加物の溶液、例えば、エタノール、イソプロパノール、または酢酸エチルで、室温または20℃から25℃の間の温度のいずれかで、洗浄される。結晶は、窒素ガス、空気、または不活性ガスのいずれかの流れを結晶の上に流すことによって乾燥させられる。あるいは、結晶は、風乾によって、または凍結乾燥によって、または減圧乾燥によって乾燥させられる。乾燥は、洗浄後、最短で1時間から、最長で72時間の間、最終産物の水分含有量が10重量%未満、最も好ましくは、5重量%未満になるまで、行われる。最後に、結晶の微細化が、必要に応じて行われる。ポリペプチド結晶の乾燥は、水分、有機溶媒、または添加物、あるいは、液体高分子の、N、空気、または不活性ガスでの乾燥、減圧オーブンでの乾燥、凍結乾燥、揮発性有機溶媒もしくは添加物での洗浄、その後の溶媒の蒸発、あるいは、ドラフトでの蒸発を含む手段による除去である。通常は、乾燥は、結晶が自由に浮遊できる粉末になるまで行われる。乾燥は、湿った結晶の上に気体の流れを通過させることによって行うことができる。気体は、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、空気、またはそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。本発明のポリペプチド結晶は、さらに、所望の粒子の大きさの分布となるように、適切なミル、例えば、ジェットミルの中で微細化することによって、さらに処理することができる。粒子または粉末処方物の成分は、微細化の前に、または微細化の後に、混合することができる。得られる粒子の直径は、0.1から100マイクロメートルの範囲、または0.2から10マイクロメートルの範囲、または、10から50マイクロメートルの範囲、または、0.5から2マイクロメートルの範囲とすることができる。吸入により投与される処方物については、1つの実施形態において、ポリペプチド結晶から形成される粒子は、0.5から1マイクロメートルの範囲である。
【0046】
本発明の1つの実施形態によれば、タンパク質結晶、タンパク質結晶処方物または組成物を調製する際には、エンハンサー(例えば、界面活性剤)は結晶化の間には添加されない。賦形剤または成分は、結晶化後、母液に、約1〜10%W/Wの濃度で、あるいは、約0.1〜25%W/Wの濃度で、あるいは、約0.1〜50%W/W/の濃度で添加される。これらの濃度は、それぞれ、99〜90%W/W、99.9〜75%W/W、および99.9〜50%W/Wの結晶濃度に対応する。賦形剤または成分は、約0.1〜3時間の間、母液中で結晶とともにインキュベートされる。あるいは、インキュベーションは、0.1〜12時間行われるか、あるいは、インキュベーションは、0.1〜24時間行われる。
【0047】
本発明の別の実施形態においては、成分または賦形剤は、母液以外の溶液中に溶解させられ、タンパク質結晶が母液から取り出され、賦形剤または成分の溶液中に再懸濁させられる。成分または賦形剤の濃度と、インキュベーション時間は、上記と同じである。
【0048】
(ポリペプチド結晶)
本明細書中で使用される場合は、「結晶」または「結晶性」とは、物質の固体の状態の1つの形態をいう。これは、不定形固体の状態である第2の形態とは異なる。結晶は、格子構造、特徴的な形状、ならびに屈折率および副屈折のような光学的特性を含む、特徴的な性質を示す。結晶は、三次元において周期的に繰り返すパターンに配置された原子からなる(C.S.Barrett,Structure of Metal,2nd ed.,McGraw−Hill,New York,1952,p.1)。対照的に、不定形物質は、物質の結晶化していない固体の形態であり、多くの場合、不定形沈殿と呼ばれる。このような沈殿は、結晶性の固体状態の特徴である分子の格子構造は持たず、結晶形態の物質の典型である副屈折または他の分光学的特性は示さない。
【0049】
ポリペプチド結晶は、結晶格子に配置されたポリペプチド分子である。ポリペプチド結晶には、三次元において周期的に繰り返される特異的なポリペプチド−ポリペプチド相互作用のパターンが含まれている。本発明のポリペプチド結晶は、ポリペプチドの不定形の固体形態または沈殿、例えば、ポリペプチド溶液の凍結乾燥によって得られる形態とは区別される。
【0050】
ポリペプチド結晶中では、ポリペプチド分子は、対称単位を形成するように互いに並んだ非対称の単位を形成する。ポリペプチド結晶の対称単位の幾何学的構造は、立方体、六方晶体、単斜晶、斜方晶形、正方晶、三斜晶、または三方晶形であり得る。それら全体の結晶の全体的な構造は、両錐、立方体、針状、板状、角柱、長斜方形、桿状、または球状の形態、あるいはそれらの組み合わせであり得る。「立方体」構造のクラスの結晶は、さらに具体的には、十八方晶(octadecahedral)または十二方晶(dodecahedral)の結晶形態を有し得る。結晶の直径は、Martinの直径として定義される。これは、接眼目盛りに平行な線の長さとして測定され、ランダムな方向を向いている結晶を2つの同じように突出した面積に分割する。針状または桿状のような形態の結晶はまた、結晶の長さと本明細書中で呼ばれる最大寸法を有する。
【0051】
(治療的投与のための処方物)
本明細書中で使用される場合は、「組成物」は、少なくとも2つの成分を含む混合物を意味すると理解される。具体的には、本発明により、結晶性TNFR2ポリペプチドを含むか、または結晶性TNFR2ポリペプチドを使用して調製された組成物が提供される。本発明の1つの実施形態においては、結晶性TNFR2ポリペプチドを含むか、または結晶性TNFR2ポリペプチドを使用して調製された組成物または処方物が、その必要がある患者への注射および/または投与に適切であるように調製される。患者に対して薬学的目的のために投与される組成物は実質的に滅菌のものであり、これには、レシピエントに対して過度に毒性または感染性である試薬はいずれも含まれない。
【0052】
本発明の1つの実施形態においては、結晶性エタナーセプトのような結晶性TNFR2ポリペプチドは、生理学的に許容される組成物(本明細書中では、薬学的組成物、または薬学的処方物とも呼ばれる)の形態で投与され、これには、以下の1つ以上とともに処方される結晶性TNFR2ポリペプチドが含まれる:生理学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤。このような担体、賦形剤、または希釈剤は、使用される投与量および濃度では、レシピエントにとって非毒性である。通常は、このような組成物の調製には、結晶性TNFR2ポリペプチドを1つ以上の以下のものと混合することが必然的に伴う:緩衝液、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸)、低分子量ポリペプチド(例えば、10個未満のアミノ酸を有するもの)、タンパク質、アミノ酸、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストリン)、キレート化剤(例えば、EDTA)、グルタチオン、ならびに他の安定化剤および賦形剤。液体の処方物においては、中性の緩衝化生理食塩水または非特異的血清アルブミンと混合された生理食塩水が、例示的な適切な希釈剤である。適切な産業的な基準によれば、ベンジルアルコールのような防腐剤もまた、添加することができる。薬学的組成物中で使用することができる成分のさらなる例は、Remington’s Pharmceutical Sciences,16thEd.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1980、およびAmerican Pharmaceutical Associationと、Pharmaceutical Society of Great Britainとによって一緒に出版されたHandbook of Phamaceutical Excipientsに示されている。
【0053】
1つの実施形態においては、本発明の処方物が、バルクの処方物に調製され、そのような場合には、薬学的組成物の成分は、それらが投与に必要とされるよりも高濃度になるように調整され、投与の前に適切に希釈されると想定される。
【0054】
本発明のポリペプチド結晶は、保存および取り扱いに適切な形態で、そして、吸入または肺への投与に適切な形態で、例えば、エアゾール処方物の調製については粉末の形態で、固体の結晶性または粉末状の処方物として処方することができる。さらなる実施形態においては、ポリペプチド結晶は、そのような結晶の液体の溶液に、またはそのような結晶のスラリーに処方することができる。別の実施形態においては、ポリペプチド結晶は、治療的な投与のための液体処方物、例えば、水性の処方物を調製するために使用される。
【0055】
(固体の結晶性処方物)
結晶の固体処方物は、肺への投与に適していることが理想的である。これは、他の投与経路によって送達することが困難である生物学的高分子について特に有用である。(例えば、PCT特許出願番号WO96/32152、同95/24183、および同WO97/41833を参照のこと)。
【0056】
ポリペプチド結晶の固体処方物としては、液体の溶液から実質的に単離させられるか乾燥させられ、そして、遊離の結晶として、または例えば、粉末の形態で粒子として存在する結晶が挙げられる。本発明の状況においては、表現「粉末」は、本質的に乾燥した粒子のコレクション、すなわち、約10重量%未満、または6重量%未満、または4重量%未満の水分含有量をいう。1つの実施形態においては、本発明により、結晶性TNFR2ポリペプチドを乾燥粉末として含む結晶性TNFR2ポリペプチドの用量をエアゾール化し、エアゾールを形成するように気体の流れの中に一定量の乾燥粉末を分散させ、そしてその後の吸入のためのチャンバーにエアゾールを捕捉するための方法が提供される。
【0057】
ポリペプチド結晶または粉末は、状況に応じて、担体または界面活性剤と混合することができる。適切な担体試薬としては、1)炭水化物、例えば、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ソルボースなどのような単糖;2)ラクトース、トレハロースなどのような二糖;3)ラフィノース、マルトデキストリン、デキストランなどのような多糖類;4)マンニトール、キシリトールなどのようなアルジトール;5)塩化ナトリウムなどのような無機塩;ならびに、6)クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどのような有機塩が挙げられる。特定の実施形態においては、担体は、トレハロース、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イノシトール、スクロース、塩化ナトリウム、およびクエン酸ナトリウムからなる群より選択される。界面活性剤は、脂肪酸の塩、胆汁酸塩、またはリン脂質からなる群より選択することができる。脂肪酸塩としては、C10〜14脂肪酸、例えば、カプリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、およびミリスチン酸ナトリウムが挙げられる。胆汁酸塩としては、ウルソデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコール酸、およびタウロジヒドロフシジン酸の塩が挙げられる。1つの実施形態においては、界面活性剤はタウロコール酸ナトリウムのようなタウロコール酸の塩である。界面活性剤として使用することができるリン脂質としては、リソホファチジルコリンが挙げられる。本発明の粉末状処方物における結晶性ポリペプチドの界面活性剤に対する分子比は、例えば、9:1から1:9であり、また、5:1から1:5の間、または3:1から1:3の間である。
【0058】
(溶液またはスラリー状の結晶)
1つの実施形態においては、本発明により、ポリペプチドを、懸濁液中での保存に適している結晶にするための方法が提供される。この方法には、結晶化緩衝液(母液)を非水性の溶媒と置き換えることが含まれる。さらに別の実施形態においては、結晶性のスラリーは、最初の溶媒を遠心によって除去(spinning out)し、残っている結晶性の固体を第2の有機溶媒または添加物を使用する洗浄によって水を除去し、その後、非水性の溶媒を蒸発させることにより、固体にすることができる。結晶性の治療用タンパク質の非水性のスラリーは、皮下投与に特に有用である。
【0059】
1つのこのような実施形態においては、本発明のポリペプチド結晶は、ポリペプチド結晶を安定化させるために、液体の有機添加物と混合させられる。このような混合物は、n%の有機添加物(nは、1から99の間である)とm%の水溶液(mは100−nである)を含む水性の有機混合物として特徴付けられる。有機添加物の例としては、フェノール性化合物(例えば、m−クレゾールまたはフェノール、またはそれらの混合物)、およびアセトン、メチルアルコール、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、1−プロパノール、イソプロパノール、2−プロパノール、アセトニトリル、1−ブタノール、2−ブタノール、エチルアルコール、シクロロへキサン、ジオキサン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジクロロエタン、ヘキサン、イソオクタン、塩化メチレン、tert−ブチルアルコール、トルエン、四塩化炭素、あるいは、それらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
(液体処方物)
本発明の1つの実施形態は、薬学的組成物の安定な長期保存が可能である水性の処方物に関する。ここでは、結晶性TNFR2ポリペプチドは、薬学的組成物の調製において使用される有用成分である。この処方物は、それが患者への使用により便利であるとの理由に一部基づいて、有用である。なぜなら、この処方物は、再水和のようなさらなる工程を全く必要としないからである。本明細書中で使用される場合は、溶液または液体処方物とは、適切な溶媒または互いに混和性の溶媒の混合物中に溶解させられた1つ以上の化学物質を含む液体調製物を意味する。
【0061】
再構成は、適切な緩衝液または薬学的処方物中への、ポリペプチド結晶または結晶処方物または組成物の溶解である。
【0062】
(薬学的処方物の成分)
本発明の薬学的組成物は、上記のような結晶性TNFR2ポリペプチドに加えて、1つ以上の以下のタイプの成分または以下の段落で列挙される賦形剤を混合することによって調製される。これらの多くまたは全ては、商業的な供給業者から入手することができる。当業者であれば、組成物中に含められる種々の成分の混合が、任意の適切な順序で行われ得ること、すなわち、緩衝液は、最初に、途中で、または最後に添加することができ、そして張度変更剤(tonicity modifier)は、最初に、途中で、または最後に添加することができることを理解するであろう。当業者であれば、また、これらの化合物のいくつかが、特定の組み合わせにおいては不適合であり得、したがって、関連する混合物と適合する類似している特性を有する異なる化合物で容易に置き換えることができることも、理解するであろう。例えば、薬学的組成物の保存のために使用される容器、および/または、治療的投与のために使用されるデバイス中に存在する、賦形剤および他の成分、または物質の種々の組み合わせの適切さに関する認識は、当該分野に存在している(例えば、Akers,2002,J Pharm Sci 91:2283−2300を参照のこと)。
【0063】
酸性化剤(「酸性化手段」):酢酸、氷酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、希塩酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希リン酸、硫酸、酒石酸、および他の適切な酸。
【0064】
有効成分:さらなる有効成分を、本発明に記載される組成物中に、例えば、注射部位の不快状態を取り除くために含めることができる。このような有効成分としては、適切な投与量の非ステロイド系抗炎症薬、例えば、トロメタミンが挙げられるが、これに限定されない。
【0065】
エアゾール噴射剤(「推進手段」):ブタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、イソブタン、プロパン、トリクロロモノフルオロメタン。
【0066】
凝集阻害剤(「凝集阻害手段」)により、不適切な、または望ましくない三次または四次複合体へとポリペプチドが会合する傾向を低減させる。適切な凝集阻害剤としては、アミノ酸L−アルギニン、および/またはL−システインが挙げられる。これらは、Fcドメインを含むポリペプチドの凝集を長期間、例えば、2年またはそれ以上の間減少させる。凝集阻害剤の処方物中での濃度は、約1mMから1Mの間、または約10mMから約200mMの間、または約10mMから約100mMの間、または約15mMから約75mMの間、または約25mMであり得る。
【0067】
アルコール変性剤(「変性手段」):安息香酸デナトニウム、メチルイソブチルケトン、スクロースオクタセテート。
【0068】
アルキル化剤(「アルキル化手段」):強アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トロラミン。
【0069】
固化防止剤(「固化防止手段」):ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、タルク。
【0070】
消泡剤(「消泡手段」):ジメチコーン、シメチコーン。
【0071】
酸化防止剤(「酸化防止手段」)を、本発明の処方物中に含めることができる。処方物の調製に使用することが想定される酸化防止剤としては、グリシンおよびリジンのようなアミノ酸、EDTAおよびDTPAのようなキレート化剤、およびソルビトールおよびマンニトールのようなフリーラジカルスカベンジャーが挙げられる。さらなる酸化防止剤としては、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化イオウ、トコフェロール、およびトコフェロール賦形剤が挙げられる。二酸化窒素または二酸化炭素の重層もまた、酸化を阻害することにおける使用が想定される。二酸化窒素または二酸化炭素の重層は、充填プロセスの間にバイアルまたは予め充填しておいた注射器の頭部空間に導入することができる。
【0072】
緩衝化剤(「処方物緩衝化手段」)は、薬学的処方物のpHを所望される範囲に維持する。薬学的組成物のpHが生理学的なレベルに、またはその付近に設定されると、投与の際の患者の痛みを最大に和らげることができる。具体的には、特定の実施形態においては、薬学的組成物のpHは、約4.0から8.4のpH範囲、または約5.0から8.0のpH範囲、または約5.8から7.4のpH範囲、または約6.2から7.0のpH範囲である。pHを、必要である場合には、特定の処方物中でのポリペプチドの安定性および可溶性を最大にするように調節することもできることが理解され、例えば、生理学的範囲外のpHが、患者がなおも耐えられる場合には、本発明の範囲内である。本発明の薬学的組成物での使用に適している種々の緩衝液としては、ヒスチジン、アルカリ塩(リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、あるいはそれらの水素または二水素塩)、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、クエン酸カリウム、マレイン酸、酢酸アンモニウム、トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(トリス)、酢酸およびジエタノールアミンの種々の形態、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、乳酸、リン酸、メタリン酸カリウム、リン酸一塩基カリウム、乳酸ナトリウム溶液、ならびに、当該分野で公知である任意の他の薬学的に許容されるpH緩衝化剤が挙げられる。塩酸、水酸化ナトリウム、またはそれらの塩のようなpH調節剤もまた、所望されるpHを得るために含められる場合もある。1つの適切な緩衝液は、pH6.2またはその付近に薬学的組成物を維持するためのリン酸ナトリウムである。別の例においては、酢酸塩が、pH6よりもむしろpH5の緩衝液により効果的であり、より少ない酢酸塩を、pH6よりもむしろpH5の溶液に使用することができる。処方物中の緩衝液の濃度は、約1mMから約1Mの間、または約10mMから約200mMの間であり得る。
【0073】
キレート化剤(「キレート化手段」、金属イオン封鎖剤とも呼ばれる):エデト酸2ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸およびその塩、エデト酸。
【0074】
コーティング剤(「コーティング手段」):カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、薬学的な釉薬、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルフタル酸メチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、酢酸フタル酸ポリビニル、シェラック、スクロース、二酸化チタン、カルナワロウ、微結晶ロウ、ゼイン。
【0075】
着色剤(「着色手段」):キャラメル;エリスロシン(FD&C 赤色No.3);FD&C 赤色No.40;FD&C 黄色No.5;FD&C 黄色No.6;FD&C 青色No.1;赤色、黄色、黒色、青色、または混合;酸化鉄。
【0076】
錯化剤(「錯体形成手段」):エチレンジアミン四酢酸およびその塩(EDTA)、エデト酸、ゲンチシン酸エタノールアミド、硫酸オキシキノリン。
【0077】
乾燥剤(「乾燥手段」):塩化カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素。
【0078】
濾過補助剤(「濾過手段」):粉末状セルロース、精製されたケイ土。
【0079】
矯味矯臭剤および香料(「風味付け手段」):アネトール、アニス油、ベンズアルデヒド、桂皮油、ココア、エチルバニリン、メントール、サリチル酸メチル、グルタミン酸一ナトリウム、オレンジ花油、オレンジ油、ペッパーミント、ペッパーミント油、ハッカ精、ローズオイル、ローズ水、チモール、トルーバルサムチンキ剤、バニラ、バニラチンキ剤、バニリン。
【0080】
保湿剤(「水分保持手段」):グリセリン、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール。
【0081】
軟膏基剤(「軟膏手段」):ラノリン、無水ラノリン、親水性軟膏、白色軟膏、黄色軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ワセリン、親水性ワセリン、白色ワセリン、ローズ水軟膏、スクワラン。
【0082】
流動化剤(「流動化手段」):ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、フタル酸ジエチル、グリセリン、モノアセチル化およびジアセチル化モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル。
【0083】
高分子膜:酢酸セルロース。
【0084】
高分子担体(「担体手段」)は、生物学的送達を含む、ポリペプチドの送達のためのポリペプチド結晶のカプセル化に使用される高分子である。このような高分子としては、生体適合性ポリマーおよび生体分解性高分子が挙げられる。高分子担体は、1つの高分子型である場合も、また、複数の高分子型の混合物からなる場合もある。高分子担体として有用である高分子としては、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、例えば、ポリ(乳酸)すなわちPLA、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)すなわちPLGA、ポリ(B−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)およびポリ(ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、マレイン酸無水物−アルキルビニルエーテルコポリマー、プルロニックポリオール(Pluronic polyol)、アルブミン、自然界に存在しているポリペプチドおよび合成のポリペプチド、アルギン酸塩、セルロースおよびセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖類、グリコアミノグリカン、硫化多糖類、あるいは、ポリペプチド結晶をカプセル化できる任意の便利な材料が挙げられる。
【0085】
保存剤(または「保存手段」)、例えば、抗菌性保存剤。本発明の処方物、例えば、多用量処方物中での使用が想定されるものとしては、例えば、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズアルコニウム溶液、塩化ベンゼルトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、およびチモールが挙げられる。含まれる保存剤の量は、0%から2%(w/v)の範囲、または約1%(w/v)である。
【0086】
可溶化剤および安定化剤(「可溶化手段」または「安定化手段」、乳化剤、共溶質、または共−溶媒とも呼ばれる)。これは、ポリペプチドの可溶性を増大させ、そして/またはポリペプチドを安定化させ、溶液中で(または乾燥形態もしくは凍結形態で)、薬学的組成物に添加することもできる。可溶化剤および安定化剤の例としては、糖/ポリオール:例えば、スクロース、ラクトース、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルトース、イノシトール、トレハロース、グルコース;高分子、例えば、血清アルブミン(ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒトSA(HSA)、または組み換えHA)、デキストラン、PVA、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンイミン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC);非水性溶媒、例えば:多価アルコール(例えば、PEG、エチレングリコール、およびグリセロール)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、およびジメチルホルムアミド(DMF);アミノ酸、例えば、プロリン、L−メチオニン、L−セリン、グルタミン酸ナトリウム、アラニン、グリシン、リジン塩酸塩、サルコシン、およびγ−アミノ酪酸;界面活性剤、例えば、Tween−80、Tween−20、SDS、ポリソルビン酸、ポリオキシエチレンコポリマー;およびその他の雑多な安定化剤賦形剤、例えば:リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、トリメチルアミンN−オキサイド、ベタイン、金属イオン(例えば、亜鉛、銅、カルシウム、マンガン、およびマグネシウム)、CHAPS、モノラウリン酸塩、2−O−β−マンノグリセレート;あるいは、以下のいずれか:アカシア、コレステロール、ジエタノールアミン(添加物)、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンアルコール、レシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、モノエタノールアミン(添加物)、オレイン酸(添加物)、オレイルアルコール(安定化剤)、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミン、乳化ろう;湿潤剤、および/または安定化剤、例えば、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドキュセートナトリウム、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポリオキシル50ステアレート、チロキサポール;あるいは、上記の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。処方物中の可溶化剤/安定化剤の濃度は、約0.001から5重量パーセント、または約0.1から2重量パーセントである。1つの実施形態においては、安定化剤は、ソルビタンモノ−9−オクタデセノエートポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)誘導体から選択される。これには、ポリソルベート80、またはポリソルベート20が含まれるが、これらに限定されない。この実施形態において使用されるポリソルベート20または80の量は、1回の使用の処方物において、または多用量の処方物において、0.001%から0.1%(w/v)の範囲内であり、例えば、0.005%(w/v)である。別の実施形態においては、0.05mMから50mMの範囲内の遊離のL−メチオニンが処方物中に含まれる。遊離のL−メチオニンの量は、1回使用の処方物については、0.05mMから5mMであり、多用量の処方物については1mMから10mMである。
【0087】
溶媒(「溶解させるための手段」):アセトン、アルコール、希釈されたアルコール、アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、コーン油、綿実油、酢酸エチル、グリセリン、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、塩化メチレン、メチルイソブチルケトン、鉱油、ピーナッツ油、ポリエチレングリコール、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、ゴマ油、注射用の水、注射用の滅菌水、洗浄用の滅菌水、精製水。
【0088】
吸着剤(吸湿剤とも呼ばれる、「吸着手段」):粉末状セルロース、炭、精製されたケイ土;および二酸化炭素吸着剤:水酸化バリウム石灰、石灰ソーダ。
【0089】
硬化剤(「硬化手段」):水素化ヒマシ油、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、固い脂肪、パラフィン、ポリエチレン賦形剤、ステアリルアルコール、乳化ろう、白ろう、黄ろう。
【0090】
坐剤基剤(「坐剤手段」):ココアバター、固い脂肪、ポリエチレングリコール。
【0091】
懸濁剤および/または粘性増加剤(「粘性増加手段」):アカシア、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製されたベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラギーナン、微結晶性およびカルボキシメチルセルロースセルロースナトリウム、デキストリン、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マグネシウムケイ酸アルミニウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キサンタンガム。
【0092】
甘味剤(「甘味手段」):アスパルテーム、デキストレート、デキストロース、賦形剤デキストロース、フルクトース、マンニトール、サッカリン、サッカリンカルシウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール、ソルビトール溶液、スクロース、圧縮糖、菓子用の糖、シロップ。
【0093】
錠剤の結合剤(「錠剤の結合手段」):アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポビドン、予めゼラチン状にしたデンプン、シロップ。
【0094】
錠剤および/またはカプセル剤用の希釈剤(「希釈手段」):炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末状セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、予めゼラチン状にしたデンプン、スクロース、圧縮糖、菓子用の糖。
【0095】
錠剤崩壊物質(「錠剤崩壊手段」):アルギン酸、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コルスポビドン、ポラクリリンカリウム、グリコール酸ナトリウムスターチ、デンプン、予めゼラチン状にしたデンプン。
【0096】
錠剤および/またはカプセル剤用の潤滑剤(「潤滑手段」):ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、軽油、ポリエチレングリコール、フマル酸ナトリウムステアリル、ステアリン酸、精製されたステアリン酸、タルク、水素化植物油、ステアリン酸亜鉛。
【0097】
張度変更剤(「張度を変化させる手段」)は、溶液の浸透圧に関係する分子と理解される。薬学的組成物の浸透圧は、好ましくは、有効成分の安定性を最大にし、そしてまた、投与の際の患者の不快状態を最少にするように、調節される。血清は、およそ300+/−50ミリオスモル/キログラムである。通常は、薬学的組成物が血清と等張性であること、すなわち、同じであるか類似の浸透圧を有することが好ましい。これは、張度変更剤の添加によって行われ、したがって、浸透圧が約180から約420ミリオスモルまでであることが意図されるが、特異的な条件が必要である場合には、浸透圧がさらに高いか、またはさらに低いかのいずれかであり得ることが理解される。浸透圧を変化させるために適切な張度変更剤の例としては、アミノ酸(例えば、アルギニン、システイン、ヒスチジン、およびグリシン)、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびクエン酸ナトリウム)、ならびに/または糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、グリセリン、およびマンニトール)が挙げられるが、これらに限定されない。処方物中での張度変更剤の濃度は、約1mMから1Mの間、または約10mMから約200mMの間であり得る。1つの実施形態においては、張度変更剤は、0mMから200mMの濃度範囲の塩化ナトリウムである。別の実施形態においては、張度変更剤は、ソルビトールまたはトレハロースであり、塩化ナトリウムは存在しない。
【0098】
ビヒクル(「ビヒクル手段」):香味付けされた、そして/または甘味付けされたもの(芳香族エリキシル、化合物ベンズアルデヒドエリキシル、イソ−アルコール性エリキシル、ペッパーミント水、ソルビトール溶液、シロップ、トルーバルサムシロップ);油性のもの(アーモンド油、コーン油、菜種油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、軽油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オリーブ油、ピーナッツ油、杏仁油、ゴマ油、大豆油、スクワラン);糖球のような固体の担体;滅菌のもの(静菌性の注射用水、静菌性塩化ナトリウム注入液)。
【0099】
撥水剤(「撥水手段」):シクロメチコン、ジメチコン、シメチコン。
【0100】
特定の実施形態においては、薬学的組成物には、以下から選択される化合物、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる:1)アミノ酸(例えば、グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリンの塩:2)炭水化物、例えば、単糖(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボース)の塩;3)二糖(例えば、ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロース)の塩;4)多糖(例えば、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲン)の塩;5)アルジトール(例えば、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトール)の塩;6)グルクロン酸、ガラクツロン酸の塩;7)シクロデキストリン(例えば、メチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど)の塩;8)無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、炭酸、ならびにリン酸アンモニウム);9)有機塩(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩);10)乳化剤または可溶化剤(例えば、アカシア、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、ソルビタンモノラウレート、モノステアリン酸ソルビタン、および他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、ろう、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン誘導体);11)粘度増化剤(例えば、寒天、アルギン酸およびその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロースおよびその誘導体、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、へキシレングリコール、チロキサポール);ならびに12)特定の成分(例えば、スクロース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、イノシトール、酢酸、リン酸、クエン酸、ホウ酸などのナトリウム塩およびカリウム塩、グリシン、アルギニン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、へキシレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン。
【0101】
(徐放形態)
本発明の1つの好ましい実施形態においては、結晶性TNFR2ポリペプチドの徐放形態(「制御放出」形態とも呼ばれる)が使用される。これには、結晶性TNFR2:Fcの徐放形態が含まれる。徐放形態または制御放出形態には、結晶性ポリペプチドと、結晶性ポリペプチドの物理的放出または生物学的有用性を所望される期間に延長するための物質(「徐放手段」)が含まれる。開示される方法での使用に適している徐放形態としては、ゆっくりと溶解する生分解性高分子(例えば、本明細書中に記載される高分子担体、米国特許第6,036,978号に記載されているアルギン酸微粒子、または米国特許第6,083,534号に記載されているポリエチレン−ビニル酢酸およびポリ(乳酸−グリコール酸(glucolic acid))組成物)のような徐放手段の中にカプセル化されているもの、そのような高分子(局所塗布されるヒドロゲルを含む)とともに投与されるもの、および/または生体適合性の半透性の移植物の中に入れられているものである、結晶性TNFR2ポリペプチドが挙げられるが、これに限定されない。本発明のさらなる実施形態として、高分子微粒子(ここでは、有効成分と、高分子(例えば、PLGA)のような徐放手段の混合物が、連続相の中に分散させられており、得られる分散物が、水および有機溶媒または添加物を除去するために直接凍結乾燥させられ、上記の微粒子が形成される(米国特許第6,020,004号));アルギン酸エステルのような生体分解性陰イオン性多糖類、ポリペプチド、および少なくとも1つの結合させられた多価金属イオンを含む注射することができるゲル組成物(米国特許第6,432,449号);逆相熱ゲル化特性を有しており、状況に応じてpH反応性ゲル化/脱ゲル化特性を有する、注射することができる生分解性高分子状マトリックス(米国特許第6,541,033号、および同第6,451,346号);約15重量%から約30重量%までの範囲のポリオールを含む懸濁物のような、生体適合性ポリオール:油懸濁物(米国特許第6,245,740号)のようなさらなる徐放形態が挙げられる。このような徐放形態は、デポー製剤の形態での投与を通じてのポリペプチドの持続的な投与に適している。ここでは、デポー製剤は、移植物であり得るか、または、注射することができるマイクロスフェア、ナノスフェア、またはゲルの形態であることもできる。上記に列挙された米国特許(米国特許第6,036,978号、同第6,083,534号、同第6,020,004号、同第6,432,449号、同第6,541,033号、同第6,451,346号、および同第6,245,740号)は、それらの全体が、本明細書中に引用によって組み込まれる。さらに、本発明の結晶性ポリペプチドの徐放形態または制御放出形態には、Kim,C.,2000,“Controlled Release Dosage Form Design”,Technomic Publishing Co.,Lancaster PAに記載されている手段のようなタイプの徐放手段が含まれる。これには、以下が含まれている:自然界に存在している高分子(ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、アラビアガム、またはキトサン)、半合成の高分子またはセルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、またはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、および合成高分子(イオン交換樹脂(メタクリル酸、スルフォン化ポリスチレン/ジビニルベンゼン)、ポリアクリル酸(カルボポール)、ポリ(MMA/MAA)、ポリ(MMA/DEAMA)、ポリ(MMA/EA)、ポリ(フタル酸酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸/グリコール酸)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリ(ジメチルシリコン)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレン/ビニル酢酸)、ポリ(エチレン/ビニルアルコール)、ポリブタジエン、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(グルタミン酸))。
【0102】
本発明のさらなる実施形態として、その全体が本明細書中に引用によって組み込まれる米国特許第6,541,606号に記載されているような、それらの本来備わっている生物学的に活性な三次構造を保存するために、高分子担体のマトリックス中へのカプセル化によってマイクロスフェアを形成するように少なくとも1つの高分子担体中にカプセル化させられた、TNFR2ポリペプチド結晶が挙げられる。カプセル化されるTNFR2ポリペプチド結晶またはその処方物は、PLGAのような高分子担体中に懸濁させられ、これは、有機溶媒または添加物中に溶解させられる。このようなカプセル化されたTNFR2ポリペプチド結晶は、同等の条件下で保存された場合に、溶液中のTNFR2ポリペプチドよりも長い期間にわたってTNFR2ポリペプチドの生物学的活性を維持する。
【0103】
(例示的な実施形態)
処方物には、約25から約50mgのTNFR2ポリペプチドまたはエタナーセプトを含めることができる。ここでは、TNFR2ポリペプチドまたはエタナーセプトは、結晶形態、約10mMから約100mMのL−アルギニン、約10mMから約50mMのリン酸ナトリウム、約0.75%から約1.25%のスクロース、約50mMから約150mMのNaClから、約pH6.0から約pH7.0で再構成される。別の実施形態では、処方物中で、L−アルギニンをL−システイン(約1から約500μモル)で置き換えることができる。別の実施形態では、pHは、約pH7.0である。別の実施形態においては、薬学的組成物には、25mg/mLの結晶性TNFR2、約25mMのL−アルギニン、約25mMのリン酸ナトリウム、約98mMの塩化ナトリウム、および約1%のスクロースが、pH6.2で含まれる。別の実施形態においては、ここでは、結晶性のエタナーセプトまたは結晶形態から再構成されたエタナーセプトは、結晶化していないエタナーセプト調製物よりも、エタナーセプト1単位当たりの生物学的活性についてより高い活性レベルを有しており、処方物には、約10から約50mgの結晶性エタナーセプトまたは結晶形態から再構成されたエタナーセプトを、あるいは、約15から約25mgの結晶性エタナーセプトまたは結晶形態から再構成されたエタナーセプトを含めることができる。
【0104】
(ポリペプチドの安定性および生物学的活性についての処方物の試験)
さらに別の実施形態においては、本発明により、本発明の薬学的組成物中の結晶性TNFR2ポリペプチドの安定性についての早い安定性試験のための方法が提供される。この方法には、保存前、すなわち、時間0の本発明に従って処方されたポリペプチドの活性を試験する工程;37℃で1ヶ月、組成物を保存しポリペプチドの安定性を測定する工程;ならびに、時間0と1ヶ月の時点での安定性を比較する工程が含まれる。この情報は、最初に良好な安定性を有するように見えても長期間うまく保存することができないバッチまたはロットの早期の廃棄を手助けする。
【0105】
さらに、本発明の薬学的組成物により、改善された長期保存が提供され、その結果、有効成分、例えば、結晶性TNFR2ポリペプチドは、液体または凍結された状態のいずれかで長期保存の間中安定である。本明細書中で使用される場合は、語句「長期間」の保存は、薬学的組成物が3ヶ月以上、6ヶ月以上保存できること、そして好ましくは、1年以上保存できることを意味すると理解される。長期間の保存は、また、薬学的組成物が2〜8℃で液体として、または例えば、−20℃以下で凍結されてのいずれかで保存されることを意味するとも理解される。組成物を、2回以上凍結、および融解させることができることもまた意図される。用語「安定」は、長期保存に関しては、薬学的組成物の活性なポリペプチドが、保存開始時点の組成物の活性と比較して、20%より多くはその活性を失わない、より好ましくは、15%より多くは失わない、さらにより好ましくは、10%より多くは失わない、そして最も好ましくは、5%より多くはその活性を失わないことを意味すると理解される。TNFR2ポリペプチドの活性は、多数のアッセイのいずれか1つによってアッセイすることができる。これらのアッセイには、ELISAアッセイのようなリガンド結合アッセイが含まれる。ここでは、リガンドが固体支持体に結合させられ、TNFR2ポリペプチドの試験調製物と対照調製物が添加され、リガンドに対するTNFR2の結合が、TNFR2ポリペプチドのIg成分に向けられた標識された抗Ig抗体を使用して検出される。さらに、実施例6に記載されるアッセイのようなアッセイを使用して、TNFに結合するTNFR2ポリペプチドの生物学的活性を検出することができ、また、これを、他のリガンドに結合するTNFR2ポリペプチドの活性を試験するように変更することもできる。
【0106】
(投与および投与量)
本明細書中で使用される場合は、「結晶性TNFR2の投与」または「結晶性TNFR2ポリペプチドの投与」は、結晶性TNFR2ポリペプチドを含む薬学的組成物、または結晶性TNFR2ポリペプチドを使用して調製された薬学的組成物の投与を意味する。
【0107】
任意の有効な投与経路を使用して、結晶性TNFR2を治療的に投与することができる。注射する場合は、結晶性TNFR2を、例えば、関節内、静脈内、筋肉内、病変内、腹腔内、または皮下経路によって、ボーラス注射または持続的な注入によって投与することができる。他の適切な投与手段としては、移植物からの徐放、デポー製剤(移植されるもの、または注射されるもの)、坐剤、エアゾール吸入、点眼薬、経口調製物(丸剤、シロップ剤、トローチ剤、またはチューイングガムを含む)、および局所用調製物(例えば、ローション、ゲル剤、スプレー剤、軟膏)、あるいは、他の適切な技術が挙げられる。結晶性TNFR2が、1つ以上の他の生物学的に活性な化合物と組み合わせて投与される場合は、これらは、同じ経路によって投与される場合も、また、異なる経路によって投与される場合もあり、同時に投与される場合も、別々に投与される場合も、また連続して投与される場合もある。
【0108】
適切な投与量は、標準的な投与試験において決定することができ、これは選択される投与経路に応じて変化し得る。投与量および投与頻度は、処置される適応症の性質および重篤度、所望される応答、患者の年齢および状態などの要因に応じて変化する。以下の投与レジュメにおいては、投与される結晶性TNFR2の量は、結晶性TNFR2を含む薬学的組成物についての結晶性TNFR2の量、または結晶性TNFR2を使用して調製された薬学的組成物についてのTNFR2ポリペプチドの量であると理解される。
【0109】
本発明の1つの実施形態においては、結晶性TNFR2は、本明細書中に開示される医学的障害または状態を処置するために、1週間に1回投与される。別の実施形態においては、1週間に少なくとも2回投与され、別の実施形態においては、1週間に少なくとも3回投与される。成人患者とは、18歳以上の人である。注射される場合は、成人についての結晶性TNFR2の有効量は、1〜20mg/m体表面積の用量範囲であり、好ましくは、約5〜12mg/mである。あるいは、均一な用量が投与される。このような量は、5〜100mg/用量の範囲であり得る。皮下注射によって投与される均一な用量についての例示的な用量範囲は、5〜25mg/用量、25〜50mg/用量、および50〜100mg/用量である。本発明の1つの実施形態においては、以下に記載される種々の適応症が、1用量あたり25mgのTNFR2の結晶性TNFR2を含むかまたは、それから調製されたか、あるいは、1用量あたり50mgを含む注射できる調製物を投与することによって処置される。25mgまたは50mgの用量は、特に、慢性的な状態について、繰り返し投与することができる。注射以外の投与経路が使用される場合は、用量は、標準的な医療行為にしたがって適切に調節される。多くの例においては、患者の状態の改善は、少なくとも3週間の期間にわたる1週間に1回から3回の、約25mgの結晶性TNFR2の用量を注射することによって、あるいは、少なくとも3週間にわたる1週間に1回または2回の、50mgの結晶性TNFR2の用量を注射することによって得られるが、長期間にわたる処置が、所望される程度の改善を誘導するために必要である場合もある。治療不能な慢性的な状態については、患者の医師によって必要であると考えられる用量および頻度になるように調節されて、レジュメがいつまでも継続される場合もある。
【0110】
小児科の患者(4歳〜17歳)については、適切なレジュメには、0.4mg/kg体重の皮下注射が含まれ、最大で25mg/用量の結晶性TNFR2が、1週間に1回以上の皮下注射によって投与される。
【0111】
ヒト患者に加えて、結晶性TNFR2ポリペプチドは、ヒト以外の動物、例えば、ペット(イヌ、ネコ、鳥類、霊長類など)、家畜動物(ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、鳥類など)、あるいは、本明細書中に記載されている状態の1つに匹敵する状態に罹患している任意の動物を苦しめている、本明細書中に記載されているような医学的状態の処置に有用である。このような例においては、適切な用量は、動物の体重に従って決定することができる。例えば、0.2〜1mg/kgの用量が使用される場合がある。あるいは、用量は、動物の表面積にしたがって決定され、例示的な用量は、0.1〜20mg/m体表面積の範囲であり、またより好ましくは、5〜12mg/m体表面積である。イヌまたはネコのような小動物については、適切な用量は、0.4mg/kg体重である。別の実施形態においては、結晶性TNFR2(ここでは、TNFR2ポリペプチドは、患者と同じ種に由来する遺伝子から発現されることが好ましい)が、注射または他の適切な経路によって、動物の状態が改善するまで、1週間に1回以上投与されるか、あるいは永久に投与される場合もある。
【0112】
結晶性TNFR2ポリペプチドまたは結晶形態から再構成されたTNFR2ポリペプチドが、結晶化していないTNFR2ポリペプチド調製物よりも、1単位のTNFR2ポリペプチドあたり高いレベルの生物学的活性を有する別の実施形態においては、上記の投与量を、結晶性TNFR2ポリペプチドの生物学的活性の増大の程度に基づいて適切に減少させることができる。例えば、結晶化によって1単位のTNFR2ポリペプチドあたり生物学的活性が2倍に増大する場合は、上記の投与量を、上記の投与量および投与量範囲の50%に減少させることができる。他の実施形態においては、投与量を、上記の投与量の10から95%、または上記の投与量の25から75%、または上記の投与量の60%、70%、または80%に減少させることができる。
【0113】
本発明にはさらに、結晶性TNFR2ポリペプチドを含むか、または、結晶性TNFR2ポリペプチドを使用して調製された薬学的組成物と組み合わせて同じ患者に投与される、1つ以上の他の薬剤と同時に、結晶性TNFR2を投与することが含まれる。それぞれの薬剤は、その医薬品についての適切なレジュメにしたがって投与される。「同時投与」には、組み合わせの成分を用いた、同時または連続する処置が含まれ、さらに、薬剤が変更されるか、または1つの成分が長期間投与され、他の成分(単数または複数)が断続的に投与されるレジュメも含まれる。成分は、同じ組成物中で投与される場合も、また、別の組成物中で投与される場合も、そして、同じ投与経路で投与することも、また、異なる投与経路で投与することもできる。
【0114】
(治療的使用)
本発明は、結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することにより、種々の医学的障害を処置するための方法に関する。結晶性TNFR2ポリペプチドは、他の生物学的に活性な分子と組み合わせて、本明細書中に記載される併用療法および/または同時治療によって例示されるがこれらに限定されない様式で投与することができる。本発明により、医学的障害に罹患しているヒト患者を含む哺乳動物患者を処置するための化合物、組成物、および方法が提供される。本開示の目的については、用語「疾病」、「疾患」、「医学的状態」、「異常な状態」などは、用語「医学的障害」と同義的に使用される。
【0115】
本発明にしたがって、医学的障害を有する患者には、治療有効量の結晶性TNFR2ポリペプチドが投与される。結晶性TNFR2ポリペプチドは、結晶性TNFR2:FcのようなTNF−α−結合可溶性TNF−α受容体の結晶形態であり得る。本明細書中で使用される場合は、語句治療薬の「治療的有効量を投与する」は、患者が、障害の重篤度を反映する少なくとも1つの指標においてベースラインを上回る改善の維持を誘導するために十分な量で十分な時間の間、その薬剤で処置されることを意味する。改善は、患者が1週間またはそれ以上の週によって間隔を明けられた少なくとも2回の時点において改善を示す場合に、「維持されている」とみなされる。改善の程度は、症候または兆候に基づいて決定され、決定にはまた、生活の質のアンケートのような、患者に対するアンケートも使用される場合がある。患者の疾病の程度を反映する種々の指標を、処置量または処置時間が十分であるかどうかを決定するために評価することができる。選択された指標(単数または複数)のベースラインの値は、結晶性エタナーセプトまたは他の結晶性TNFR2ポリペプチドの最初の用量が投与される前の患者の試験によって確定される。好ましくは、ベースライン試験は、最初の用量の投与の約60日以内に行われる。結晶性TNFR2ポリペプチドが急性の状態を処置するために、例えば、外傷性の膝の損傷を処置するために投与される場合は、最初の用量は、損傷が生じた後、可能な限り早く投与される。
【0116】
改善は、患者が選択された指標(単数または複数)についてベースラインを上回る改善を示すまで、結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することによって誘導される。慢性的な状態を処置することにおいては、この改善の程度は、少なくとも1ヶ月またはそれ以上、例えば、1ヶ月、2ヶ月、もしくは3ヶ月、またはそれ以上の期間にわたって、あるいは無期限に、この医薬品を繰り返し投与することによって得られる。1週間から6週間の期間、または1回の用量でもなお、多くの場合には、急性の状態を処置するためには十分である。損傷や急性状態については、1回の用量で十分である場合がある。処置後の患者の疾病の程度は、1つ以上の指標によっては改善しているように見えても、処置が、同じレベルで、または少ない用量もしくは頻度で無期限に継続される場合もある。一旦、処置が減少させられるかまたは中断されても、後に、状態が再度現れた場合には、もとのレベルで再開される場合もある。
【0117】
1つの実施形態においては、結晶性TNFR2ポリペプチドで処置される医学的状態は、異常なTNF−α濃度または過剰なTNF−α濃度を特徴とする。全身的または局所的なTNF−αの過剰は、多数の医学的障害の進行に関係しているとの提案がなされている。例えば、慢性心不全の患者は、高い血清TNF−α濃度を有しており、これは、疾患の進行を加速させることが示されている(例えば、Levine et al.,N Eng J Med 323:236−241,1990を参照のこと)。種々の他の疾患が、高いTNF−α濃度に関係している(例えば、Feldman et al.,Transplantation Proceeding 30:4126−4127,1998を参照のこと)。TNF−αの抑制が異常なTNF−αの発現または過剰なTNF−αの発現を特徴とする障害に罹患している患者に有効であることが示唆されている。しかし、このような疾患の有効な処置の考案は進歩してはいるが、改良された医薬品および処置方法が必要とされている。
【0118】
異常なTNFR−αの発現を特徴とする多数の医学的障害を処置するための方法が、本明細書中で提供される。この方法は、TNFR2:Fcのような可溶性TNF−α受容体の結晶形態のような結晶性TNFR2ポリペプチドを、患者の状態の持続的な改善を誘導するために十分な期間の間投与することによる。この方法には、内因性の生物学的に活性なTNF−αの有効量を、例えば、TNF−αのその細胞表面受容体(TNFR)に対する結合を妨げることによって減少させることができる結晶性TNFR2ポリペプチドを含むか、またはこれを使用して調製された処方物を患者に投与することが含まれる。
【0119】
(心臓血管疾患)
心臓血管障害は、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、その薬学的組成物、および/または併用療法を用いて処置することができる。結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドで処置することができる心臓血管障害の例として、以下が挙げられる:大動脈瘤、動脈炎、血管閉塞(大脳動脈の閉塞を含む);冠状動脈のバイパス手術の合併症;虚血/再潅流障害;心臓病(アテローム性心臓病を含む)、心筋炎、(慢性自己免疫性心筋炎、およびウイルス性心筋炎を含む);心不全(慢性心不全(CHF)、心不全の悪液質を含む);心筋梗塞;心臓の外科手術後の再狭窄;無症候性心筋虚血;左心室補助循環装置の移植後の合併症;レイノー現象;静脈血栓症;脈菅炎(カワサキ脈肝炎を含む);巨細胞性動脈炎、ウェグナー肉芽腫症;およびシェーンライン・ヘノッホ型紫斑病。
【0120】
さらに、本明細書中で開示されるTNFR2:Fcまたは他の結晶性TNFR2ポリペプチドは、心臓血管の疾患(虚血が原因であるか、虚血以外が原因である心筋症、心筋梗塞の後の脈菅形成療法を含む)の処置、または末梢動脈疾患のための骨髄幹細胞療法または血管形成幹細胞療法と組み合わせて使用することができる。この目的のために有用である幹細胞としては、間充織幹細胞および内皮前駆細胞(例えば、脾臓、胎児の肝臓、骨髄、または循環している血液中に見られるもの)が挙げられる(米国特許第5,486,369号;Deisher T,Drugs 3(6):649−53(2000);Huss R,Stem Cells 18:1−9(2000);Huss et al.,Stem Cells 18:252−60(2000))。結晶性TNFR2ポリペプチドは、幹細胞移植と同時に、さらには、増殖能力を有するかまたは分化能力を有する幹細胞増殖因子での処置と同時に与えられる場合もある。
【0121】
TNF−αおよびIL−8は、化学走査性因子としてアテローム性腹部大動脈瘤に関係している(Szekanecz et al.,Pathobiol 62:134−139(1994))。腹部大動脈瘤は、ヒト患者においては、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することによって処置することができる。結晶性TNFR2ポリペプチドは、IL−8の阻害因子と組み合わせて投与することができ、このような処置には、この状態に関係している病理学的新血管形成を減少させる効果がある。
【0122】
メタロプロテイナーゼ(MMP)が心筋の再構築および心筋線維症の鍵となる要素であることが、研究によって示されている。したがって、結晶性TNFR2ポリペプチドを、MMPの直接の阻害と組み合わせて炎症性反応とTNF−αとを阻害するために投与することにより、左心室のポンプ機能の不全のような障害を軽減、予防、またはくい止めることができる。これは、MMP阻害因子と共に、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドを同時投与することによって行われる。あるいは、左心室のポンプ機能の不全の処置には、MMP阻害因子を同時に使用することなく、結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することが含まれる場合もある。
【0123】
開示される結晶性TNFR2ポリペプチドのいずれか、または本明細書中で開示される併用療法はまた、家族性混合型高脂血症(FCH)を処置するために使用することもできる。FCHは、早すぎる冠状動脈性心臓病を特徴とする遺伝性の異常脂質血症である。FCH患者は、そのTNFR II遺伝子が遺伝的に欠損しており、その体内でのTNFR IIレベルが低く、内因性のTNF−αの悪影響に過剰に反応するようである(van Greenbroek et al.,2000、Atherosclerosis 153:1−8)。FCHに関係している冠状動脈の疾患、インシュリン耐性、および肥満は、FCH患者に、結晶性TNFR2:Fcまたは結晶性エタナーセプトのような、本明細書中で開示される結晶性TNFR2ポリペプチドのいずれか1つを投与することによって、緩和または予防することができる。さらに、FCHについての結晶性TNFR2ポリペプチドでの処置は、食事に含まれる脂肪分およびコレステロールを減らすことと同時に、ならびに/または、以下を含む、この状態を処置するために使用される1つ以上の他の薬剤と組み合わせて投与される場合もある:胆汁酸捕捉樹脂(コレスチルアミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸、ナイアシン、コレステロールを低下させる薬剤(例えば、ゲムフィブロジルもしくはプロブコール、またはコレステロールを低下させる「スタチン」の1つ、またはHMG−CoA還元酵素阻害因子(例えば、ロバスタチンもしくはパラバスタチン)。本発明の別の態様においては、結晶性TNFR2ポリペプチドは、C反応性タンパク質(CRP)の高い血清濃度を有しており、したがって、そのコレステロール値が低い場合でも心臓発作の危険がある患者を処置するために使用される(Ridker et al.,2001,New Eng J Med 344:1959−1965)。
【0124】
(感染および損傷)
開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、本明細書中に記載されている組成物および/または併用療法は、細菌、ウイルス、原虫による感染、ならびにそれらによって生じる合併症を処置するための医薬品において有用である。1つのそのような疾患は、マイコプラズマ肺炎である。さらに、AIDSおよび関連する状態、例えば、AIDSによる認知症、AIDSによる消耗、抗レトロウイルス療法が原因で生じるリピディストロフィー(lipidistrophy);およびカポジ肉腫を処置するために、結晶性TNFR2ポリペプチドを使用することが、本明細書中で提供される。結晶性TNFR2ポリペプチドを、原虫に関係する疾患(マラリア(脳マラリアを含む)および住血吸虫症を含む)を処置するために使用することが、本明細書中で提供される。さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドを、癩性結節性紅斑;細菌性またはウイルス性髄膜炎;結核症(肺結核を含む);および細菌またはウイルスによる感染に対する二次的な肺炎を処置するために使用することも、提供される。結晶性TNFR2ポリペプチドを、回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)によって引き起こされるような、シラミによって媒介される回帰熱を処置するための医薬品を調製するために使用することもまた、本明細書中で提供される。結晶性TNFR2ポリペプチドは、また、ヘルペスウイルスによって引き起こされる状態、例えば、ヘルペスによる間質性角膜炎、角膜病変、およびウイルスによって誘導される角膜の障害を処置するための医薬品を調製するために使用することもできる。さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、ヒトのパピローマウイルスによる感染を処置することにおいて、ならびに、感染性単核球症を処置することにおいて使用することができる。また、結晶性TNFR2ポリペプチドは、インフルエンザを処置するための、ならびに、重症疾患多発性神経障害および筋障害(CIPNM)、長引く伝染性疾患と組み合わせて時折生じる炎症症候群を処置するための医薬品を調製するために使用される。本発明の結晶性TNFR2ポリペプチドは、また、プリオンによって媒介されると考えられている、感染性海綿状脳症を処置するためにも使用される。
【0125】
開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、その薬学的組成物、および/または併用療法のいずれかで処置することができる別の障害は、熱帯性対麻痺/HTLV−1関連ミエロパシー(TSP/HAM)である。この疾患は、ヒトレトロウイルスHTLV−1への感染によって引き起こされる。最近の研究は、TNF−αがHTLVに感染した細胞によって示されるグルタミンの取り込みの減少において役割を果たしていることを示唆している(Szymocha et al.,2000,J Virol 74:6433−6441)。TSP/HAMは、肢が弱くなることと、肢の筋肉の硬直を引き起こす脊髄のゆっくりと進行する状態であり、多くの場合は、足の感覚が失われることが伴う。この状態に対する既知の処置には、コルチコステロイドおよび血漿交換法が含まれる。TSP/HAMは、本明細書中に開示される結晶性TNFR2ポリペプチドのいずれかで処置することができる。本明細書中に開示される結晶性TNFR2ポリペプチドのいずれかは、コルチコステロイドまたは血漿交換法と、あるいは両方と同時に投与することができる。TSP/HAMを処置するための例示的な結晶性TNFR2ポリペプチドは、結晶性TNFR2:Fcである。処置が十分であることは、肢の硬直の改善について患者をモニターすること、または患者の悪化の停止によって、あるいは、患者の医師によって適切であると考えられる任意の他の手段によって決定される。
【0126】
開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法によって処置することができる他の状態としては、頭部または脊髄の損傷によって生じる、頭部の外傷が原因である硬膜下血腫を含む状態が挙げられる。
【0127】
(神経疾患、疼痛、および熱)
頚椎性頭痛は、頸部の機能異常が原因で生じる頭痛の一般的な形態であり、これは、高いレベルのTNF−αと関係している。TNF−αは、患者の不快感に関係している炎症性の状態を媒介すると考えられている(Martelletti,Clin Exp Rheumatol 18(2 Suppl 19):S33−8(Mar−Apr,2000)。頚椎性頭痛は、本明細書中に開示されているような結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することによって処置することができ、これにより、炎症反応とそれに伴う頭痛の痛みが軽減する。
【0128】
さらに、本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、慢性的な痛みの状態、例えば、慢性的な骨盤痛(慢性的な前立腺炎/骨盤痛症候群を含む)を処置するために使用される。さらなる例として、本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、ヘルペスの後の痛みを処置するために使用される。
【0129】
本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、原発性アミロイドーシスを処置するために有用である。さらに、種々の状態を特徴とする二次性アミロイドーシスもまた、本明細書中に記載されている、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチド、ならびに組成物および/または併用療法を用いて処置することができる。このような状態としては、アルツハイマー病、二次的な反応性アミロイドーシス、ダウン症、および透析によるアミロイドーシスが挙げられる。遺伝性間欠熱症候群(家族性地中海熱、超免疫グロブリンDおよび間欠熱症候群、ならびにTNF受容体による間欠熱症候群(TRAPS)を含む)もまた、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができる。
【0130】
開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法はさらに、急性の多発性神経障害;拒食症;顔面麻痺;慢性疲労症候群;伝染性認知症(クロイツフェルトヤコブ病を含む);脱髄性ニューロパシー;ギラン・バレー症候群;椎間板の疾患;湾岸戦争病;重症筋無力症;無症候性脳虚血;睡眠障害(発作性睡眠および睡眠時無呼吸を含む);慢性神経変性;および発作(脳の虚血疾患を含む)を処置するために有用である。
【0131】
(腫瘍性疾患および血液疾患)
種々の腫瘍性疾患および血液疾患を処置するために結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を使用するための方法が、本明細書中で提供される。例えば、結晶性TNFR2ポリペプチドは、急性骨髄性白血病、エプスタインバーウイルス陽性鼻咽頭ガン、胆嚢ガン、神経膠腫、結腸癌、胃ガン、前立腺ガン、腎細胞ガン、子宮頸ガンおよび卵巣ガン、肺ガン(SCLCおよびNSCLC)(ガンに関係する吐き気、ガンに関係する悪液質、倦怠感、衰弱、悪液質および高カルシウム血症の腫瘍随伴症候群を含む)を含む種々の形態のガンを処置するために使用される。本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができるさらなる疾患は、充実性腫瘍(肉腫、骨肉腫、およびガン腫、例えば、腺ガン(例えば、乳ガン)、および扁平上皮ガンを含む)である。さらに、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法は、白血病(慢性または急性骨髄性白血病、慢性または急性リンパ芽球性白血病、および毛様細胞白血病を含む)を処置するために有用である。侵襲性の転移の可能性がある他の悪性腫瘍を、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができ、これには、多発性骨髄腫が含まれる。結晶性TNFR2ポリペプチドが腫瘍を処置するために使用される場合は、この処置は、処置される特定の腫瘍上で高いレベルで発現される膜タンパク質を標的とする抗体と組み合わせて投与される。例えば、乳ガン、卵巣ガン、および前立腺ガンのような腫瘍、または他のHer2陽性腫瘍には、結晶性TNFR2:Fcまたは他の結晶性TNFR2ポリペプチドを、Her2/neuに対する抗体、例えば、HERCEPTIN(登録商標)(一般的には、「トラツズマブ(trastuzumabu)」;Genentech,Inc.として知られている)と組み合わせて投与することができる。ガン(例えば、卵巣ガンまたは前立腺ガン)は、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドと、インターフェロン−γとの同時投与によって処置することができる(Windbichler et al.,2000、British J Cancer 82:1138−1144)。
【0132】
種々のリンパ増殖性疾患もまた、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができる。これらには、自己免疫性リンパ球増殖性症候群(ALPS)、慢性リンパ芽球性白血病、毛様細胞白血病、慢性リンパ性白血病、末梢T細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、エプスタインバーウイルス陽性T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、ホジキン病、びまん性侵攻性リンパ腫、急性リンパ性白血病、Tγリンパ増殖性疾患、皮膚B細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(すなわち、菌状息肉腫)、およびセザリー症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
さらに、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を、慢性疾患による貧血、再生不良性貧血(ファンコニ再生不良性貧血を含む);特発性血小板減少性紫斑病(ITP);骨髄異形成症候群(不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰な芽球を伴う不応性貧血、形質転換の際の過剰な芽球を伴う不応性貧血を含む);骨髄線維症/骨髄様化生;および鎌状赤血球血管障害(sicle cell vasocclusive crisis)を含む、貧血症および血液疾患を処置するために使用することができる。さらに、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドは、慢性特発性好中球減少症の処置に有用である。
【0134】
結晶性TNFR2ポリペプチドと1つ以上の抗血管形成因子の組み合わせを、充実性腫瘍を処置するために使用することができ、それによって、腫瘍組織に栄養を与える脈菅形成を減少させることができる。このような併用療法に適している抗血管形成因子としては、IL−8阻害因子、アンギオスタチン、エンドスタチン、クリングル5、脈菅内皮成長因子(VEGF)の阻害因子、アンジオポエチン−2またはアンジオポエチン−1の他のアンタゴニスト、血小板活性化因子のアンタゴニスト、塩基性線維芽細胞成長因子のアンタゴニストが挙げられる。脈菅内皮成長因子に対する抗体、例えば、組み換えのヒト化抗VEGF(AVASTIN(登録商標)、「ベバシツマブ(bevacizumab)」;Genentech,Inc.として一般的に知られている)が、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドとの併用療法に有用である。
【0135】
本発明の1つの実施形態においては、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドが、プロテアソーム阻害因子と組み合わせてガン患者に投与される。これには、血液のガンまたは充実性腫瘍に罹患している患者に対する投与が含まれる。プロテアソームは、細胞周期およびアポトーシスに関係している種々のタンパク質、例えば、サイクリンおよびNF−κBの安定性を制御する(例えば、Schenkein,2002,Clin Lymphoma 3:49−55およびAdams,2002,Curr Opin Oncol 14:628−634を参照のこと)。プロテアソーム阻害因子はアポトーシスを誘導することができ、したがって、他の抗ガン剤に対してガン細胞を感作することができる。本発明の組み合わせについての例示的なプロテアソーム阻害因子としては、例えば、カルボベンゾキシ−L−ロイシル−L−ロイシル−L−ロイシナル(MG132)、クラストラクタシスチンβ−ラクトン(A.G.Scientific,Inc.)、カルボベンゾキシ−L−イソロイシル−(γ)−t−ブチル−L−グルタミル−L−アラニル−L−ロイシナル(PSI)、N−アセチル−leu−leu−ノルロイシナル(ALLN)、MLN519(Millennium Pharmaceuticals)、[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[ピラジニルカルボニル]アミノ]プロピル]−アミノ]ブチル]ボロン酸(PS−341、「ボルテゾミブ(bortezomib)」、商品名VELCADE(登録商標)(Millennium Pharmaceuticals)として一般に知られている)、およびカルボベンゾキシ−L−ロイシル−L−ロイシル−L−ノルバリナル(MG115;Affiniti Research Products)が挙げられる。例えば、多発性骨髄腫、卵巣ガン、前立腺ガン、乳ガン、悪性血液疾患(例えば、リンパ腫または白血病)、あるいは他の腫瘍は、PS−341のようなプロテアソーム阻害因子、および結晶性TNFR2:Fcもしくは結晶性エタナーセプトのような、結晶性TNFR2ポリペプチドで同時に処置することができる。
【0136】
特定の療法による望ましくない副作用は、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドで処置することができる。このような副作用は、いくつかの例においては、高いTNF−αレベルによって媒介され、このような患者は、TNF−αのレベルを低下させる薬剤での処置による恩恵を受けることができる。例えば、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドは、化学療法に伴う吐き気、または他の薬剤によって誘導される吐き気の治療を助けるために投与することができる。さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、脳腫瘍の放射性治療に伴う放射線によって誘導される脳の損傷を処置するために使用される。さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、特定の種のガン細胞の表面上に存在する抗原に対して指向させられたモノクローナル抗体の投与に伴う毒性を処置するために使用される。例えば、本明細書中で開示される結晶性TNFR2ポリペプチドは、CAMPATH1−H(登録商標)(「アレンツズマブ(Alemtuzumab)」、Berlex Laboratoriesとして一般的に知られている;EP0328404A1もまたを参照のことのこと)の注入に伴う毒性を処置するために使用することができる。CAMPATH1−H(登録商標)は、慢性リンパ球性白血病を処置するために使用される。CAMPATH1−Hは、単球、B細胞、およびT細胞上に見られる細胞表面抗原であるCD52に特異的なヒト化抗体である。本発明の別の実施形態においては、結晶性TNFR2:Fcまたは結晶性エタナーセプトのような開示される結晶性TNFR2ポリペプチドは、長期間にわたるインターフェロン療法に関係する自己免疫障害を緩和するために投与することができる。
【0137】
結晶性TNFR2ポリペプチドは、長期間にわたるインターフェロンの投与に伴う望ましくない副作用を減少させるために、ガン患者に投与することができる。望ましくない副作用としては、疲労、発熱、好中球減少、発疹、頭痛、消化器疾患、肝臓の酵素のバランスが崩れることなどを挙げることができる。例えば、インターフェロンγ(IFNγ)は、卵巣ガンに有効であることが示されており、しがたって、卵巣ガンの患者は、IFNγと、結晶性TNFR2:Fcまたは結晶性エタナーセプトのような結晶性TNFR2ポリペプチドを同時に投与することによって処置することができる。同様に、IFNαは、多くの場合、黒色腫、慢性骨髄性白血病、基底細胞ガン、毛様細胞白血病、膀胱ガン、乳児および幼児の血管腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、菌状息肉腫、非ホジキンリンパ腫、および腎細胞ガンを処置するために使用され、インターフェロンによって誘導される副作用を減少させるために、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドと同時に投与することができる。
【0138】
さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、低分子に結合することができ、塩基性分子に優先的に結合するタンパク質である、α−1酸糖タンパク質(AGP)に結合される薬剤に対する薬剤耐性を生じることを防ぐか、またはそのような薬剤耐性を緩和するためにも使用することができる。AGPは、種々の病的状態(慢性的な炎症、心筋梗塞、およびガンを含む)において増大する急性期タンパク質である。STI571(Glivec(登録商標)、「イマチニブ(imatinib)」(Novaritis)として一般的に知られている)は、Bcr−Ab1およびC−kitキナーゼ活性について有効な阻害因子であり、慢性骨髄性白血病(CML)の処置に有用である。CMLのマウスモデルの研究により、AGPがイマチニブに結合してこれを不活化させ、したがって、この薬剤に対する耐性を生じることが示されている(Gambacorti−Passerini et al.2000,J Natl Can Inst 92:1641−1650)。患者のAGPのレベルは、ペントキシフィリンを投与することによって下げることができる(Voisin et al.,1998,Am J Physiol 275:R1412−R1419)。本発明により、イマチニブに対する耐性を防ぐかまたはそのような耐性を減少させる方法が提供される。この方法は、結晶性TNFR2:Fcまたは結晶性エタナーセプトのような結晶性TNFR2ポリペプチドを、イマチニブでの処置を受けるCML患者に同時に投与することによる。UCN−01(7−ヒドロキシスタウロスポリン)は、消化器腫瘍および他の充実性腫瘍を処置するために使用される薬剤であり、これもまた、AGPに結合する傾向も有する(Senderowicz et al.,2000、J Natl Cancer Inst 92(5):376−387);Noriaki et al.,2000、Biol Pharmac Bull 23(7):893−895;Fuse et al.,1999、Cancer Res 59(5);1054−1060;Tamura et al.,1999,Proc.Annu Meet Am Soc Clin Oncol 18:A611)。結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドを、UCN−01で同時に処置される消化器ガンの患者に投与することによって、AGPに対するUCN−01の結合を妨げるかまたは減少させ、それによって、UNC−01での処置の有効性を増大させるための方法が、本明細書中に提供される。あるいは、イマチニブまたはUCN−01を投与された患者を、IL−1阻害因子または結晶性TNFR2ポリペプチドを、IL−1阻害因子、例えば、WO01/87328(これは、引用によりその全体が本明細書中に組み入れられる)に記載されているIL−1阻害因子の1つとともに同時投与することによって処置することができる。これらの方法については、結晶性TNFR2ポリペプチドは、1週間に1回以上、例えば、1週間に1回、2回、または3回投与することができる。結晶性TNFR2ポリペプチドの投与についての他の適切な態様は、皮下注射である。患者が成人である場合には、注射される結晶性TNFR2ポリペプチドについての適切な用量としては、5〜12mg/m体表面積、または25mg、または50mg/用量が挙げられる。患者が小児科の患者である場合は、結晶性TNFR2ポリペプチドを、皮下注射によって、1週間に1回以上、0.4mg/kg体重の用量で、最大で25mg/用量までを投与することができる。
【0139】
(肺疾患)
多数の肺疾患もまた、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法で処置することができる。1つのこのような状態は、成人の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。これは、高いTNF−αに関係しており、毒性化合物との接触、膵炎、外傷、または他の原因を含む種々の原因によって引き起こされ得る。開示される本発明の化合物、組成物、および/または併用療法は、また、気管支−肺形成不全(BPD);リンパ管平滑筋腫症;高圧肺;早産児の慢性繊維性肺疾患;および特発性気管支拡張症の処置に有用である。特発性気管支拡張症は、好中球によって気管支マトリックスのプロテオグリカン成分の分解が媒介される疾患である。気管支拡張症患者の気管支分泌物中のプロ炎症性媒介因子、具体的には、TNF−αは、これらの好中球の分解作用を増強すると疑われる(Shum et al.,Am J Respir Crit Care Med 162:1925−31(2000))。本発明により、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することを含む、特発性気管支拡張症の処置が提供される。さらに、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法は、石綿症、炭坑労働者塵肺、珪肺症、または、微粒子に長期間さらされることに関係する同様の状態を含む職業性肺疾患を処置するために使用される。本発明の他の態様においては、開示される化合物、組成物、および/または併用療法は、慢性気管支炎または肺気腫を伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む肺疾患;嚢胞性線維症、特発性肺線維症、および放射線によって誘導される肺線維症のような繊維性の肺疾患;肺サルコイドーシスを含むサルコイドーシス;およびアレルギー性リウマチ、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、および喘息を含むアレルギーを処置するために使用される。
【0140】
嚢胞性線維症は、多量の粘液の蓄積を主な特徴とする遺伝性の状態であり、この患者は、慢性的な肺の感染、および膵臓の閉塞になりやすく、その結果、栄養の吸収不良や栄養失調を生じる。結晶性TNFR2ポリペプチドは、嚢胞性線維症を処置するために投与される場合もある。所望される場合は、結晶性TNFR2ポリペプチドでの処置は、吸入される組み換えのデオキシリボヌクレアーゼI(例えば、PULMOZYME(登録商標);Genentech,Inc.)または吸入されるトブラマイシン(TOBI(登録商標);Pathogenesis,Inc.)のような粘膜を薄くする薬剤であるコルチコステロイドと同時に投与することができる。結晶性TNFR2ポリペプチドはまた、修正遺伝子治療、嚢胞性線維症細胞が塩化物を分泌するように刺激する薬剤、または他のまだ発表されていない処置と同時に投与することができる。処置が十分であることは、例えば、唾液または肺の洗浄液中の病原性生物(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))の数の減少を観察することによって、体重の増加について患者をモニターすることによって、肺の能力の増大を検出することによって、または任意の他の便利な手段によって評価することができる。
【0141】
結晶性TNFR2ポリペプチド、またはサイトカインIFNγ−1b(例えば、ACTIMMUNE(登録商標);InterMune Pharmaceuticals)と組み合わせた結晶性TNFR2ポリペプチドを、嚢胞性線維症または繊維性の肺疾患、例えば、特発性肺線維症、放射線によって誘導される肺線維症、およびブレオマイシンによって誘導される肺線維症を処置するために使用することができる。さらに、この組み合わせは、全身性硬化症(「強皮症」とも呼ばれる)(これには、多くの場合、肝臓の線維症が含まれる)を含む臓器の線維症を特徴とする他の疾患を処置するために有用である。嚢胞性線維症を処置するためには、結晶性TNFR2ポリペプチドおよびIFNγ−1bを、PULMOZYME(登録商標)またはTOBI(登録商標)または嚢胞性線維症についての他の処置と組み合わせることができる。結晶性TNFR2ポリペプチドは、単独で、またはIFNγ−1bと組み合わせて、繊維性肺疾患を処置するために現在使用されている他の処置とともに投与することができる。このようなさらなる処置としては、グルココルチコイド、アザチオプリン、シクロホスファミド、ペニシラミン、コルヒシン(colchisine)、酸素補給などが挙げられる。IPFのような繊維性肺疾患の患者は、多くの場合、乾性咳嗽、呼吸困難を伴い、肺の機能試験において拘束性の換気パターンを示す。胸部X線検査により、患者の肺には繊維の蓄積が明らかにされる。開示される方法にしたがって繊維性肺疾患を処置する場合は、処置が十分であることは、患者の咳(咳をしている場合)の減少を観察することによって、または肺の全能力、肺活量、残っている肺容量の改善を検出するための標準的な肺機能試験を使用することによって、あるいは、運動条件下での脱飽和を測定する動脈血気体決定を行うことによって検出することができ、患者の肺機能がこれらの測定の1つ以上にしたがって改善されたことが示される。さらに、患者の改善は、胸部X線検査の、患者の肺の線維症の進行が停止しているかまたは線維症が減少していることを示す結果によって決定することができる。さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、コラーゲンの生成をダウンレギュレートし、それによって線維形成を阻害するホルモンであるレラキシンと組み合わせて投与される場合、またはTGF−βの線維形成活性をブロックする薬剤と組み合わせて投与される場合には、臓器の線維症を処置するために有用である。結晶性TNFR2および組み換えヒトレラキシンを使用する併用療法は、例えば、全身性硬化症または繊維性肺疾患(嚢胞性線維症、特発性肺線維症、放射線によって誘導される肺線維症、およびブレオマイシンによって誘導される肺線維症を含む)を処置するために有用である。
【0142】
(リウマチおよび皮膚疾患)
他の実施形態により、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を、種々のリウマチ障害を処置するために使用する方法が提供される。慢性関節リウマチを処置することにおいてTNF−α阻害因子を使用することは、Moreland,L.W.,1991,J Rheumatol 26 Suppl 57:7−15にまとめられており、脊椎関節症および強直性脊椎炎を処置することにおけるTNF−α阻害因子の使用は、Schnarr et al.,2002,Clin Exp Rheumatol 20(Suppl.28):S126−S129、およびGorman et al.,2002,N Engl J Med 346(18):1349−1356に、それぞれ開示されている。結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法で処置することができる状態として、成人および幼児の慢性関節リウマチ;全身性エリテマトーデス;通風;変形性関節症;リウマチ性多発性筋肉痛;血清反応陰性頚椎関節炎(強直性脊椎炎を含む);およびライター病(反応性関節炎)が挙げられる。本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法はまた、乾癬性関節炎および慢性ライム病関節炎を処置するためにも使用される。乾癬性関節炎の処置にTNF−α阻害因子を使用することは、Ruderman,E.M.,2002,Am J Manag Care 8:S171−180およびSalvarani et al.,2002,Clin Exp Rheumatol 20(Suppl.28)S71−S75に記載されている。スティル病、および慢性関節リウマチに関係しているブドウ膜炎もまた、これらの化合物、組成物、および/または併用療法で処置することができる。さらに、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法は、皮膚筋炎および多発性筋炎を含む随意筋の炎症を生じる障害の処置に使用される。さらに、本明細書中で開示される化合物、組成物、および/または併用療法は、散発性の封入体筋炎を処置するために有用である。なぜなら、TNF−αは、これらの筋疾患の進行において重要な役割を果たし得るからである。さらに、本明細書中で開示される化合物、組成物、および/または併用療法は、多中心性細網組織球症を処置するために使用される。多中心性細網組織球症は、顔および手の関節破壊および丘疹状小結節が、多核化した巨細胞によるプロ炎症性サイトカインの過剰な生成に関係している疾患である。本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、過剰なTNF−αの分泌に一部原因があると考えられている現象である、肥大性瘢痕を阻害するために使用することができる。結晶性TNFR2ポリペプチドは、単独で投与することができ、また、肥大性瘢痕を阻害するための他の薬剤、例えば、TGF−αの阻害因子と同時に投与することもできる。
【0143】
皮膚または粘膜に関係している障害もまた、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を使用して処置することができる。このような障害としては、棘融解性疾患(ダリエ病、毛胞性角化症、および尋常性天疱瘡を含む)が挙げられる。また、本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法としては、にきび;酒さ;円形脱毛症;アフタ性口内炎;水疱性類天疱瘡;火傷;疱疹状皮膚炎;湿疹;紅斑(多形性紅斑を含む)、および大水胞性多形性紅斑(スティーブンス・ジョンソン症候群);炎症性皮膚疾患;扁平苔癬;線形IgA水疱性疾患(linear IgA Bullous disease)(子供の慢性水胞症);肌の弾力が失われること;粘膜表面の潰瘍;好中球性皮膚炎(Sweet’s症候群);毛孔性紅色粃糠疹;乾癬;壊疽性膿皮症;および中毒性表皮剥離症が挙げられる。
【0144】
別の実施形態においては、開示される結晶性TNFR2ポリペプチドは、脂肪類皮膚硬化症(lipodermatosclerosis)および慢性静脈性潰瘍(多くの場合は、脚に存在する)を処置するため、およびそれらの再発を防ぐために使用される。複数の研究によって、TNF−αが、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)の活性化によって、ならびに、TGFαおよび他のサイトカインの生成を誘導することによって、脂肪類皮膚硬化症および慢性静脈性潰瘍の病因に関係していることが示されている。オキシペンチフィリン(oxpentifylline)およびペントキシフィリンは、この設定において有効であることが示されている。結晶性TNFR2:Fcまたは結晶性エタナーセプトを含む開示される結晶性TNFR2ポリペプチドは、慢性静脈性潰瘍を処置するために、単独で、あるいは、オキシペンチフィリン、ペントキシフィリン、GM−CSF、レプチン、PDGF、bFGF、EGF、TGF、および/またはIGFの1つ以上と組み合わせて使用することができる。これらの処置により、治癒が加速され、再発を防ぐ。投与は、全身的である場合も局所的である場合もある。局所投与については、結晶性TNFR2ポリペプチドが、軟膏、ローション、ゲル、またはクリーム剤で局所塗布されるか、病変の周辺に、潰瘍に直接あるいは、潰瘍から約10センチメートルまでの位置に注射される。
【0145】
(その他の障害)
内分泌系の種々の障害を処置するために、結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を使用するための方法もまた、提供される。例えば、結晶性TNFR2ポリペプチドは、若年発症糖尿病(自己免疫性糖尿病およびインシュリン依存性糖尿病の型を含む)を処置するために、さらには、成人発症型糖尿病(非インシュリン依存性糖尿病および肥満によって誘導される糖尿病を含む)を処置するためにも使用される。さらに、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法は、糖尿病に付随する二次的な状態、例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病患者における腎移植拒絶、肥満によって媒介されるインシュリン耐性、および腎不全(これら自体が、タンパク質尿症および高血圧と関係している場合もある)を処置するためにも使用される。他の内分泌疾患もまた、これらの化合物、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができる。例として、多嚢胞卵巣疾患、X連鎖性副腎白質ジストロフィー、甲状腺機能低下症、および甲状腺炎(橋本病(すなわち、自己免疫性甲状腺炎)を含む)が挙げられる。
【0146】
結晶性TNFR2:Fcのような開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、さらに、肝炎(急性アルコール性肝炎、急性薬剤性肝障害、またはウイルス性肝炎、A型肝炎、B型肝炎、およびC型肝炎を含む)、硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、特発性門脈圧亢進症、ならびに、原因不明の肝臓の炎症のような肝臓の状態を処置するために使用される。上記の肝臓疾患は、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドで、同じ状態を処置するために使用される他の医薬品と同時に処置することができる。一例として、結晶性TNFR2ポリペプチドは、インターフェロンα(IFNα)で同時に処置される患者においてC型肝炎(慢性C型肝炎を含む)を処置するために使用することができる。肝臓でのINFαの高レベルの発現は、IFNαの作用を妨害し、それによってIFNαでの処置に対する患者の応答を妨害する(Hong et al.,2001、FASEB J 15:1595−1597)。C型肝炎を処置するために結晶性TNFR2ポリペプチドと同時に投与することができる処置としては、ペグ化IFNα、リバビリン、またはリバビリンとインターフェロン−αもしくはペグ化インターフェロン−αの組み合わせが挙げられる。結晶性TNFR2ポリペプチドとの同時使用に適しているインターフェロン−α部分としては、IFNα−2a(例えば、ROFERON(登録商標);Hoffmann−LaRoche)、ペグ化IFNα−2a(例えば、PEGASYS(登録商標);Hoffmann−LaRoche)、US20020127203A1に記載されているようなペグ化IFNα−2aまたはIFNα−2b、あるいは、WO9964016に記載されているペグ化IFNα結合体が挙げられる。別の実施形態においては、C型肝炎を、インターフェロン−αと、結晶性TNFR2:Fc以外の結晶性TNFR2ポリペプチド(例えば、レナーセプト(lenercept)もしくはオナーセプト(onercept)の結晶形態)の同時投与によって処置することができる。
【0147】
消化器系の状態(セリアック病を含む)もまた、結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができる。クローン病の処置においてTNF−α阻害因子を使用することは、Ricart et al.,2002,Drugs of Today 38(11);725−744に開示されている。さらに、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法は、クローン病、消化器疾患もしくは他の全身性疾患に関係する吐き気;潰瘍性大腸炎;特発性胃不全麻痺;胆石症(胆石);膵炎(慢性膵炎および急性膵炎に伴う肺の損傷を含む);ならびに、潰瘍(胃潰瘍および十二指腸潰瘍を含む)を処置するために使用される。
【0148】
本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を、糸球体腎炎(自己免疫性糸球体腎炎、毒物への暴露が原因である糸球体腎炎、または溶血連鎖球菌もしくは他の感染源への感染についての二次的な糸球体腎炎を含む)のような泌尿生殖器系の障害を処置するために、使用する方法もまた含まれる。尿毒症性症候群およびその臨床的な合併症(例えば、腎不全、貧血、および肥大型心筋症)(環境有害物質、薬物に対する暴露、または他の原因に関係している尿毒症性症候群を含む)もまた、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法で処置することができる。本発明の化合物、組成物、および/または併用療法で処置することができるさらなる状態は、血液透析の合併症;前立腺の状態(良性前立腺肥大症、非細菌性前立腺炎、および慢性前立腺炎を含む);ならびに、血液透析の合併症である。
【0149】
さらに、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、異常なTNF−αの発現に関係している難聴のような難聴を含む種々の障害を処置するために使用される。これらの1つは、内耳性難聴または蝸牛神経に関係している難聴である。蝸牛神経に関係している難聴は、自己免疫プロセスによるもの、すなわち、自己免疫性難聴と考えられている。この状態は、現在は、結晶性TNFR2:Fcまたは他の結晶性TNFR2ポリペプチドと同時に投与することができる、ステロイド、メトトレキセート、および/またはシクロホスファミドで処置することができる。多くの場合は難聴を伴う中耳疾患であるコレステリン腫もまた、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法で処置することができる。
【0150】
さらに、本発明により、骨および関節の関節炎以外の医学的状態の処置のための、結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法が提供される。これには、例えば、骨粗鬆症(閉経後の骨粗鬆症を含む)、歯の緩みもしくは歯を失うことになる歯周炎、および関節置換術の後の補綴物のゆるみ(一般的には、磨耗くずに対する炎症反応に関係している)が含まれるが、これらに限定されない骨量の減少につながる破骨細胞の障害が含まれる。この後者の状態は、「整形外科用インプラントの溶解」と呼ばれる。結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することによって処置することができる他の状態として、一時的な下顎関節機能不全(TMJ)、ガンの高カルシウム血症が原因で生じる骨量の減少(例えば、骨への転移が含まれる)(例えば、黒色腫、あるいは肺ガン、乳ガン、肺ガン、扁平上皮ガン、および頭頸部ガン、腎臓ガン、または前立腺ガンにおいて生じるもの)が挙げられる。
【0151】
移植に関係する障害もまた、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法で処置することができる。例えば、移植片対宿主病、および固形臓器の移植(心臓、肝臓、肺、皮膚、腎臓、または他の臓器の移植を含む)によって生じる他の合併症である。このような結晶性TNFR2ポリペプチドは、例えば、肺移植後の閉塞性細気管支炎、および器質化肺炎につながる閉塞性細気管支炎のような閉塞性細気管支炎の発症を防ぐかまたは阻害するために投与することができる。末梢血幹細胞移植の形態で自己の造血幹細胞移植を受けた患者は、「移植症候群」すなわち「ES」を発症する場合があり、これは、造血幹細胞の移植の時点とほぼ同じ時点で生じる、有害な一般的には治療をしないでも長期的には状態が落ち着いたり収まる性質のある応答であり、肺の損傷を生じる場合がある。ESは、IL−8またはTNF−αのいずれかの阻害因子(例えば、結晶性TNFR2:Fc、または他の結晶性TNFRポリペプチド)で、あるいは、これらのサイトカインの両方に対する阻害因子の組み合わせを用いて処置することができる。開示される結晶性TNFR2ポリペプチドは、また、骨髄移植片の拒絶、あるいは、他のタイプの移植片(例えば、角膜移植、または肝臓もしくは他の固形臓器の移植)を受け入れることに対してレシピエントの体がうまくいかないことのような、移植の失敗を処置あるいは予防するために有用である。移植の拒絶には、多くの場合、高濃度のTNF−αおよびIL−10が伴う。移植の拒絶は、結晶性TNFR2ポリペプチドとIL−10阻害因子の組み合わせで処置することができる。
【0152】
眼疾患もまた、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができ、これには、裂孔原性網膜剥離、および炎症性眼疾患、および喫煙に関係している炎症性眼疾患、さらには、喫煙に関係しているかまたは加齢に関係している黄斑変性症が含まれる。
【0153】
本明細書中に記載される、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチド、開示される組成物、および/または併用療法は、女性の生殖器官に影響を与える障害の処置に有用である。例として、多発性の移植による不具合/不妊症;胎児消失症候群、またはIV胚消失(自然流産);子癇前症妊娠(preeclamptic pregnancies)または子癇;ならびに、子宮内膜症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
さらに、開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、肥満の処置に有用であり、これには、レプチン生成の減少を生じるための処置、、または抗鬱剤の投与を用いることに伴う体重増加の処置が含まれる。また、本発明の化合物、組成物、および/または併用療法は、神経原性疼痛、坐骨神経痛、老化の状態、重度の薬物反応(例えば、IL−2の毒性またはブレオマイシンによって誘導される肺症および線維症)を処置するために、あるいは、心臓の外科手術もしくは他の外科手術において、または肢もしくは関節の外傷性の損傷(例えば、外傷性の膝の損傷)を処置することにおいて、自己赤血球の輸血前、その間、もしくはその後の炎症反応を抑制するために、使用される。開示される結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法を用いて処置することができる種々の他の医学的障害として、多発性硬化症;ベーチェット症候群;シェーグレン症候群;自己免疫性溶血性貧血;ベータ・サラセミア;筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病);パーキンソン病;および原因不明の腱滑膜炎、ならびに遺伝的欠損に関係している種々の自己免疫障害または疾患が挙げられる。さらに、本発明の結晶性TNFR2ポリペプチド、組成物、および/または併用療法は、ゴーシェ病、ハンチントン病、線形IgA疾患、および筋ジストロフィーのような遺伝性の状態を処置するために使用される。
【0155】
本発明のさらに別の実施形態においては、本明細書中で開示される結晶性TNFR2ポリペプチドは、自閉症の領域の障害、および他の広汎性発達障害を処置するために使用される。プロ炎症性サイトカイン(TNF−αおよびIL−1を含む)は、自閉症の患者のサブセットにおいて過剰発現されていることが示されており、このことは、これらの患者が過剰な生まれつきの免疫反応を有しており、そして/またはT細胞応答のための調節性サイトカインを異常に生成していることを示している。したがって、自閉症の領域の障害を、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することによって処置するための方法が、本明細書中で提供される。
【0156】
(さらなる併用療法)
本明細書中に記載される疾患を処置するために使用される種々の他の医薬品もまた、結晶性TNFR2を含む組成物、または結晶性TNFR2を使用して調製される組成物と同時に投与することができる。このような医薬品として、抗ウイルス剤;抗生物質;鎮痛剤;非ステロイド系抗炎症剤(NSAID);抗リウマチ予防維持薬(DMARD);コルチコステロイド;局所ステロイド;全身性ステロイド(例えば、プレドニソン);サイトカイン;炎症性サイトカインのアンタゴニスト;T細胞表面タンパク質に対する抗体;経口レチノイド;サリチル酸;およびヒドロキシウレアが挙げられる。このような併用に適している鎮痛剤として、アセトアミノフェン、コデイン、ナプシル酸プロポキシフェン、オキシコドン塩酸塩、ヒドロコドン酸性酒石酸塩、およびトラマドールが挙げられる。本発明の併用療法に適しているNSAIDとしては、サリチル酸(アスピリン)およびサリチル酸誘導体;イブプロフェン;インドメタシン;セレコキシブ(CELEBREX(登録商標));レフォコキシブ(VIOXX(登録商標));バルデコキシブ(BEXTRA(登録商標));ケトロラック;ナムブメトロン;ピロキシカム;ナプロキセン;オキサプロジン;スリンダク;ケトプロフェン;ジクロフェナク;および他のCOX−1およびCOX−2阻害因子、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、フマル酸誘導体、カルボン酸誘導体、酪酸誘導体、オキシカム、ピラゾール、およびピラゾロンが挙げられ、これらには、新しく開発される抗炎症剤も含まれる。このような併用に適しているDMARDとしては、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、硫酸ヒドロキシクロロキン、メトトレキセート、レフルノミド、ミノサイクリン、ペニリルアミン、スルファサラジン、および経口用金、金チオリンゴ酸ナトリウム、およびアウロチオグルコースのような金化合物が挙げられる。結晶性TNFR2と併用することができるサイトカイン阻害因子の例としては、例えば、TGFβのアンタゴニスト、IL−6のアンタゴニスト、またはIL−8のアンタゴニストが挙げられる。結晶性TNFR2ポリペプチドはまた、抗レトロウイルス療法を受けるHIV感染患者においてT細胞の増殖を増強するために、サイトカインGM−CSF、IL−2、および/またはプロテインキナーゼA1型の阻害因子と組み合わせて投与することができる。さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、ホジキン病を処置するために、IL−13の阻害因子と組み合わせることもできる。神経成長因子もまた、特定の状態を処置するために、結晶性TNFR2ポリペプチドと組み合わせることができる。このような状態としては、神経変性疾患、脊髄損傷、および多発性硬化症が挙げられる。この組み合わせで処置することができる他の状態は、緑内障および糖尿病である。さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、抗マラリア薬またはコルヒチンと組み合わせて投与することができる。
【0157】
結晶性TNFR2ポリペプチドと組み合わせて本明細書中に記載される疾患の処置に適している他の化合物としては、サリドマイドもしくはサリドマイド類似体、ペントキシフィリン、またはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)阻害因子のような低分子、あるいは他の低分子が挙げられる。この目的に適しているMMP阻害因子としては、例えば、米国特許第5,883,131号、同第5,863,949号、および同第5,861,510号に記載されているもの、さらには、米国特許第5,872,146号に記載されているメルカプトアルキルペプチジル化合物が挙げられる。TNF−αの生成を減少させることができる他の低分子としては、例えば、米国特許第5,508,300号、同第5,596,013号、および同第5,563,143号に記載されている分子が挙げられ、これらのいずれかを、結晶性TNFR2ポリペプチドと組み合わせて投与することができる。本明細書中に記載される疾患を処置するために結晶性TNFR2ポリペプチドと組み合わせて有用であるさらなる低分子としては、米国特許第5,747,514号、米国特許第5,691,382号に記載されているMMP阻害因子、さらには、米国特許第5,821,262号に記載されているヒドロキサム酸誘導体が挙げられる。本明細書中に記載される疾患は、また、ホスホジエステラーゼIVおよびTNF−αの生成を阻害する低分子、例えば、置換されたオキシム誘導体(WO96/00215)、キノリンスルフォンアミド(米国特許第5,834,485号)、アリールフラン誘導体(WO99/18095)、および複素二環式誘導体(WO96/01825;GB2,291,422A)を含む併用療法で処置することができる。TNF−αおよびIFNγを抑制するチアゾール誘導体(WO99/15524)、さらには、TNF−αおよび他のプロ炎症性サイトカインを抑制するキサンチン誘導体(例えば、米国特許第5,118,500号、米国特許第5,096,906号、および米国特許第5,196,430号を参照のこと)もまた、結晶性TNFR2ポリペプチドとの組み合わせにおいて有用である。本明細書中に記載される状態を、結晶性TNFR2ポリペプチドと同時に用いて処置するために有用なさらなる低分子として、米国特許第5,547,979号に開示されているものが挙げられる。
【0158】
さらに、結晶性TNFR2ポリペプチドは、第2のTNF−αアンタゴニストと組み合わせることができる。第2のTNF−αアンタゴニストとして、TNF−αまたはTNF−α受容体に対する抗体、TNF−αに由来するペプチド(これは、TNF−αの競合的阻害因子として作用する)(例えば、米国特許第5,795,859号、または米国特許第6,107,273号に記載されているもの)、Ig融合タンパク質以外の可溶性TNFR、または内因性のTNF−αのレベルを低下させる他の分子(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)、またはTNF−αの生成を阻害するリボザイム、またはTNF−α転換酵素の阻害因子(例えば、米国特許第5,594,106号を参照のこと)、または上記に記載されている低分子もしくはTNF−α阻害因子のいずれか(ペントキシフィリンまたはサリドマイドもしくはその誘導体を含む)が挙げられる。サリドマイドまたはサリドマイド誘導体は、例えば、血液疾患および腫瘍性疾患を処置するために、結晶性TNFR2ポリペプチドと同時に投与することができる。結晶性TNFR2ポリペプチド単独で処置することができるこのような障害の例として、移植片対宿主病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、鎌状赤血球血管障害、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、毛様細胞白血病、悪液質および高カルシウム血症の腫瘍随伴症候群、多発性骨髄腫、およびPOEMS症候群(多発性神経障害、臓器肥大症、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症、および皮膚の変化)、骨髄線維症/骨髄様化生、カポジ肉腫、ガンに伴う悪液質、アミロイドーシス、慢性疾患の貧血、扁平上皮ガン、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性溶血性貧血、およびベータ・サラセミアが挙げられる。本発明の1つの実施形態においては、サリドマイドと併用される結晶性TNFR2ポリペプチドは、結晶性TNFR2:Fcまたは結晶性エタナーセプトである。
【0159】
さらに、本発明により、その必要があるヒト患者を処置するための方法が提供される。この方法には、US2001/002138A1(これは、引用によりその全体が本明細書中に組み入れられる)に記載されているように、治療有効量の結晶性TNFR2ポリペプチドおよびIL−4阻害因子を患者に投与することが含まれる。結晶性TNFR2ポリペプチドとIL−4阻害因子の組み合わせによって効果的に処置するができる状態としては、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺胞タンパク症、ブレオマイシンによって誘導される肺症(pneumopathy)および線維症、放射線によって誘導される肺線維症、嚢胞性線維症、肺でのコラーゲンの蓄積、ARDS;種々の皮膚疾患(疱疹状皮膚炎(ダーリング病)、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、蕁麻疹(慢性特発性蕁麻疹を含む)を含むが、これらに限定されない)、ならびに、自己免疫性水疱形成性疾患(尋常性天疱瘡、および水疱性類天疱瘡を含む);重症筋無力症、サルコイドーシス(肺サルコイドーシスを含む)、強皮症、反応性関節炎;高IgE症候群、多発性硬化症、および特発性好酸球増加症候群;医薬品に対するアレルギー性の反応が挙げられる。さらに、アレルギーの免疫療法に対するアジュバントとして使用される。特定の実施形態においては、結晶性TNFR2ポリペプチドとIL−4阻害因子の組み合わせが、1週間に1回以上、皮下注射によって、またはエアゾールの肺投与によって、例えば、ネブライザーによって投与される。
【0160】
本明細書中に記載される疾患についての他の処置としては、RANKまたはRANK−リガンドに対するアンタゴニスト抗体、オステオプロテゲリン、または、RANKの可溶性形態(RANK:Fcを含む)、およびRANKを誘発することのないRANK−リガンドの可溶性形態のような、RANKとRANK−リガンドとの結合をブロックする化合物と同時に、結晶性TNFR2ポリペプチドを投与することが含まれる。本発明の1つの実施形態においては、ヒトRANKLに特異的に結合する抗体が、結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドと同時に投与される。これらの組み合わせに適しているRANKの可溶性形態は、例えば、米国特許第6,017,729号に記載されている。結晶性TNFR2ポリペプチドの、RANK:Fcまたはオステオプロテゲリンとの同時投与は、骨粗鬆症、多発性骨髄腫、または骨の変性を生じる他の悪性腫瘍を含むがこれらに限定されない種々の設定、あるいは骨への転移を防ぐことを助ける抗腫瘍療法において骨破壊を防ぐために、または補綴物の磨耗くずまたは歯周炎に伴う骨破壊を防ぐために有用である。結晶性TNFR2ポリペプチドとRANK阻害因子の組み合わせで処置することができる腫瘍として、乳ガン、肺ガン、黒色腫、骨肉腫、扁平上皮ガン、頭頸部ガン、腎臓ガン、前立腺ガン、および高カルシウム血症を伴うガンが挙げられる。
【0161】
(さらなる用途)
リンパ球の非ウイルスベクターでのトランスフェクションにより、TNF−αおよびCD95によって媒介される経路を通じて標的細胞のアポトーシスを誘導することができる(例えば、Ebert et al.,Cytokines,Cell & Mol Ther 5:165−73(1999)を参照のこと)。結晶性TNFR2:Fcのような結晶性TNFR2ポリペプチドは、このアポトーシスを阻害するために、単独で使用することができ、また、CD95に対する抗体のようなCD95阻害因子と組み合わせて使用することもできる。この処置は、非ウイルスベクターを使用した場合、特に、リポソーム媒介性もしくは受容体媒介性遺伝子導入方法を使用した場合には、リンパ球への遺伝子の導入を増強させる。このような処置によって、標的細胞内への外来遺伝子の取り込みを改善することができる。
【0162】
さらに、本発明の組成物は、また、結晶性TNFR2ポリペプチドが処置しようとする状態の処置または緩和のための1つ以上の医薬品の製造のために使用することもできる。
【0163】
以下の実施例は、本発明をさらに完全に説明するために提供され、その範囲を限定するとは解釈されない。
【実施例】
【0164】
(実施例1)
(ENBREL(登録商標)(エタナーセプト)の結晶化のための方法)
エタナーセプトポリペプチドは、上記のように、ヒトの免疫グロブリンG1(IgG1)の一部に融合させられたヒト腫瘍壊死因子受容体2(TNFR p75)の細胞外ドメインの一部からなる。エタナーセプトポリペプチドは、哺乳動物宿主細胞中でエタナーセプトをコードするDNA構築物を発現させることによって調製し、その後、実質的に均質となるように精製した。その後の結晶化実験のために、エタナーセプトポリペプチドを、リン酸緩衝液中に懸濁させた。
【0165】
エタナーセプトの結晶化は、結晶化スクリーン(PEG/LiCl Grid Screen;Hampton Research,Aliso Viejo,CA)を使用して行った。これは、「懸滴」蒸気拡散として知られている巨大分子の結晶化のための方法を使用する。ポリペプチド試料および結晶化試薬(「結晶化緩衝液」または「母液」)の混合物からなる液滴を、シアラナイズしたカバーガラスの下側に載せ、その後、カバーガラス上の液滴をグリースでシールし、通常は24ウェルVDXトレイの上に乗せて、試薬の液体容器と蒸気平衡を生じるようにする。平衡に達するように、水蒸気を、液滴と、トレイのウェルの中の1ミリリットルの容器溶液との間で交換する。液滴の水分がなくなると、ポリペプチド試料は相対的な濃度が上昇して、最終的には、過飽和を生じる場合がある。結晶化を行うために必要なのはポリペプチド試料の濃度の上昇である。通常は、液滴には、容器よりも低い濃度の試薬が含まれており、通常は、液滴には、容器中の試薬の濃度の半分が含まれている。なぜなら、等しい容量の試料と試薬を、液滴を形成させるために混合するからである。これらの実験では、液滴中の最初のポリペプチド濃度を、通常、25.48mg/mL、または50.96mg/mLとしたが、結晶化はまた、およそ6mg/mLのエタナーセプトポリペプチド濃度でも観察でき、また、100mg/mLのような高濃度、もしくはおよそ3mg/mLのようなさらに低いポリペプチド濃度でも得られた。しかし、低濃度では、より長時間のインキュベーションが、最初の液滴の大きさに応じて、結晶の成長のために必要である場合がある。
【0166】
結晶化スクリーンを、24ウェルVDXポリプロピレン組織培養トレイ中にセットした。VDXトレイの中のそれぞれの位置には、1mLの試薬容器を含め、それぞれのウェルの試薬容器は、種々の結晶化緩衝液条件の並びとなるように、他のウェルとは組成が異なるようにした。それぞれのポリペプチド濃度の1マイクロリットルのポリペプチド溶液を、1マイクロリットルの容器溶液に添加して、液滴を形成させた。トレイを、5±3℃、または室温(20±3℃)のいずれかでインキュベートした。室温でインキュベートしたいくつかのウェルの中ではおよそ48時間で結晶が現れ、その後数日間、成長させるためにインキュベートし続けた。
【0167】
最初のスクリーンにおいては、25.48mg/mLのエタナーセプト濃度、または50.96mg/mLの濃度のいずれかを使用した以下の条件下で、結晶が得られた:
1.1.0Mの塩化リチウム、0.1MのHEPES(pH7.0);30%のポリエチレングリコール6000
2.1.0Mの塩化リチウム、0.1MのTris−HCl(pH8.0);30%のポリエチレングリコール6000
3.1.0Mの塩化リチウム、0.1MのBicine(pH9.0);30%のポリエチレングリコール6000
4.0.2Mの硫酸リチウム、0.1MのTris−HCl(pH8.5);30%のポリエチレングリコール4000
5.0.2Mの硫酸リチウム、0.1MのTris−HCl(pH8.5);25%のポリエチレングリコール3350
6.0.5Mの硫酸リチウム、0.1MのTris−HCl(pH8.5)。
上記の最初の3つの条件下で形成されたエタナーセプトの結晶は、およそ1mmの長さの桿状はまた桿のクラスターであり、多くの場合は、不定形の沈殿物が付随していた。硫酸リチウム条件で形成されたエタナーセプトの結晶は、およそ0.1〜0.2mmの長さの桿状であり、塩化リチウム条件で見られた不定形の沈殿物を伴わずに形成された。エタナーセプトの結晶のいくつかを、X線回折によって試験したが、塩様の回折パターンは示さなかった。結果は、ポリペプチド物質を含む結晶と一致した。エタナーセプトの結晶のいくつかを溶解させ、それらのポリペプチド内容物を、7サイクルの自動エドマン分解によって部分的に配列決定した;3〜4pmolの部分的なアミノ酸配列をこれらの結晶から得、エタナーセプトの配列のN末端部分と一致することを確認した(LPAQVAF;配列番号4のアミノ酸1から7を参照のこと)。図1は、1ミリリットルあたり50.96mgのエタナーセプトを、0.1MのHEPES(pH7.0)、30%のPEG 60000、0.7Mの塩化リチウムの結晶化容器緩衝液とともに含むポリペプチド溶液から形成されたエタナーセプト結晶の写真である。室温で7日間の後、結晶を手で回収し、上記の容器緩衝液十分に洗浄し、写真を撮影した。このグループからの結晶を、上記のN末端アミノ酸配列の分析に供した。別の結晶化条件 − 1Mの硫酸リチウム、0.1MのTris−HCl(pH8.5)、0.01Mの塩化ニッケル − によって結晶が生じた。しかし、これらの結晶のポリペプチド内容物は確認できず、したがって、この特定の条件の組み合わせのもとでは、塩の結晶は形成されていないと考えられる。
【0168】
これらの結果に基づいて、上記の最初の3つの条件の3個のパラメーター(LiCl濃度、pH、および%(重量/容量)で示されるポリエチレングリコール(PEG)6000の濃度)のそれぞれを、さらなる実験において変化させた。これによって、さらなる実験用トレイの中の全ての液滴の中で結晶の形成が生じた。0.7Mから1.2Mの間の塩化リチウム濃度、22%から32%の間のPEG 6000濃度、およびpH6.8から7.3の間の0.1MのHEPESのpH値の全てが、室温でおよそ48時間の、25.48mg/mLおよび50.96mg/mLのエタナーセプト濃度で、良好な結晶化を生じた。さらなる実験では、良好な結晶化条件の範囲を、0.2Mから1.2MのLiCl、および16%から32%のPEG 6000までを含むように拡大したが、エタナーセプトの結晶化は、0.2MのLiClを含む条件の全ての組み合わせで起こらず、そして/または、エタナーセプトの結晶は0.2MのLiClを使用した場合には、形成するまでにより長い時間がかかり得る。したがって、以下の条件の全ての組み合わせ − 0.3Mから1.2Mの間の塩化リチウム濃度、16%から32%の間のPEG 6000濃度、およびpH6.8から7.3の間の0.1MのHEPESのpH値 − を、エタナーセプトの結晶化に適している条件と考えられる。さらに、0.2Mから0.5Mの間の硫酸リチウム、およそpH8.5の0.1MのTris−HClを含み、状況に応じて、30%までのPEG(PEG 3350〜PEG 4000までの大きさの範囲)を含む条件を、エタナーセプトの結晶化に適している条件であると考えられる。
【0169】
(実施例2)
(ENBREL(登録商標)(エタナーセプト)の結晶化のための別の方法)
上記の実施例1に記載した結晶化のための「懸滴」方法を、エタナーセプトのさらなる結晶を調製するために使用した。エタナーセプトを、製品の説明書に従って市販されているENBREL(登録商標)凍結乾燥粉末から再構成した:ENBREL(登録商標)の凍結乾燥粉末のバイアルには、25mgのエタナーセプト、40mgのマンニトール、10mgのスクロース、および1.2mgのトロメタミンが含まれている。これを、1mLの滅菌された静菌性注射用水[Sterile Bacteriostatic Water for Injection,USP(0.9%のベンジルアルコールを含む)]で再構成する。再構成したエタナーセプトの溶液を、10,000分子量カットオフ透析カセットを使用して水中に透析しその後、10,000分子量カットオフ遠心分離フィルターを使用して100mg/mLに濃縮した。それぞれの結晶化ウェルには、以下に列挙するように、容器中に1.0mLの特定の結晶化試薬を含めた。液滴を、1マイクロリットルのその結晶化試薬に対して100mg/mLのエタナーセプト溶液1マイクロリットルを添加することによって生成した。結晶を、室温(およそ22℃)で成長させた。約100マイクロメートルの長さの針状のエタナーセプトの結晶が、以下に列挙する全ての結晶化試薬中で、いくつかの場合には、2日程度の短い期間で、そして他の場合には、2週間から4週間の期間で、形成された。
【0170】
【表3】

別の結晶化実験においては、約100マイクロメートルの長さのエタナーセプトの針状結晶が、以下の結晶化条件下で2週間から4週間の期間で形成された。
【0171】
【表4】

(実施例3)
(結晶化条件のさらなる拡大)
上記の実施例1でエタナーセプトの結晶化について記載した「懸滴」方法のような蒸気拡散結晶化方法は、TNFR2ポリペプチドのようなポリペプチドの結晶化を行うために変更することができる。例えば、試薬に対して他の容量のポリペプチド試料を混合して、液滴と容器との間の試薬濃度の差を変化させることができ、また、液滴中の最初のポリペプチド濃度を変化させることもできる。9部のポリペプチド試料に対して1部の試薬を混合することによって、容器の試薬濃度の0.1倍である、最初の試薬濃度を有する液滴を生じることができる。本発明の特定の実施形態においては、液滴中の結晶化試薬の最初の濃度は、容器中の結晶化試薬の濃度の、およそ0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.7、0.8、0.85、0.9、または0.95倍である。液滴中の最初のポリペプチド濃度は、およそ6mg/mLのような低濃度であっても、100mg/mLのような高濃度であっても、また、120mg/mLのような可能な限り高い濃度であってもよい。3mg/mLのような低いポリペプチド濃度でも結晶は形成されるが、結晶を検出することができるまでにはより長いインキュベーション時間が必要である場合がある。
【0172】
結晶化条件のさらなる拡大により、エタナーセプトまたは他のTNFR2ポリペプチドの結晶を得るために適切であるさらなる条件が、以下に記載するように得られる。例えば、塩条件、pH緩衝液条件、状況に応じたPEG条件、および状況に応じた補因子条件を組み合わせることができる。それぞれの条件は、以下に記載する条件の対応するグループから選択される。
【0173】
【表5】


(実施例4)
ポリペプチド結晶を形成させた後、これらを、それらのポリペプチド内容物を確認し、それらの物理的な構造をさらに試験するために、種々の分析に供することができる。例えば、必要である場合は、個々の結晶を、結晶化溶液から取り出すことができ、そして水性溶媒もしくは有機溶媒、または添加物で洗浄し、その後(例えば、風乾によって、結晶の上に不活性気体の流れを通過させることによって、凍結乾燥によって、または減圧によって)乾燥させることができる。結晶を単離し、結晶成長用液滴から離し、その後、X線回折装置に取り付けることができる。
【0174】
別の例として、ポリペプチド結晶を結晶化溶液から取り出し、洗浄するかまたはリンスして、結晶化溶液の大部分を結晶から除去し、別の溶液で置き換えることもできる。この方法では、結晶化手順に使用した特定の塩を、結晶格子中で、別の塩と置き換えることができる。本発明の1つの実施形態においては、結晶化TNFR2ポリペプチド、例えば、結晶性エタナーセプトは、結晶化緩衝液から分離され、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウムの塩(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、または硫酸マグネシウム)を含む溶液に入れられる。X線回折のためには、置換溶液に、結晶化ポリペプチドの原子座標を決定することにおいて有用である重原子を含めることができる。さらなる実施形態においては、TNFR2ポリペプチドは、それらのリガンドとともに共結晶化させることができ、例えば、エタナーセプトは、TNFR−リガンド相互作用の詳細な構造の決定のために、TNF−αと共に結晶化させることができる。
【0175】
さらなる例においては、ポリペプチドの結晶を、結晶化溶液から取り出し、さらなる試験のための適切な緩衝液、例えば、ゲル電気泳動によって結晶化させられたポリペプチドの分析のためのSDSを含む緩衝液の中に溶解させることができる。ゲル電気泳動によりタンパク質を分析するための方法は当該分野で周知であり、これには、銀またはクマシーブルー色素でのゲルの染色、および既知の分子量のポリペプチドマーカーの移動と結晶化させられたポリペプチドの電気泳動による移動を比較することが含まれる。別の方法においては、ポリペプチドは、ポリペプチドに特異的に結合する標識抗体の使用によって、ゲル中で視覚化させられる。結晶化させられたポリペプチドはまた、エドマン分解によるアミノ酸配列決定のための、質量スペクトル分析のための、他の分光学的分散、屈折、回折、もしくは吸光の研究のための、あるいは、ポリペプチドに対する標識分子の結合によりポリペプチドを標識するための、適切な緩衝液中に溶解させることもできる。
【0176】
(実施例5)
(ENBREL(登録商標)の結晶のタンパク質内容物のアッセイ)
上記の実施例1に記載したような、結晶化の「懸滴」方法を、エタナーセプトの別の結晶を調製するために使用した。それぞれのウェルには、容器中に100マイクロリットルの結晶化試薬を含めた。この実験では、結晶化試薬は、0.2Mの酢酸アンモニウム、0.1MのTris(pH8.5)、および45%の2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)とした。エタナーセプトを、25mMのリン酸ナトリウム(pH6.3)、100mMのNaClを含む溶液中に入れ、その後、29〜30mg/mLに、例えば、29.6mg/mLに濃縮した。液滴を、液滴中の最終的なエタナーセプトの濃度がおよそ14.5〜15mg/mLとなるように、1マイクロリットルの結晶化試薬に対してこの29mg/mLのエタナーセプトの溶液を1マイクロリットル添加することによって生成した。液滴中の最終的なエタナーセプト濃度は、これらの特定の結晶化条件下で結晶化を達成することにおいて重要な要因であり、およそ15mg/mLの最終的なエタナーセプト濃度が、繰り返した実験において結晶化に有効であることがわかったが、10mg/mL未満、または25mg/mLより高い最終濃度は有効ではなかった。液滴を、室温(20±3℃)でおよそ1週間から3週間の間、容器中の試薬と蒸気交換させた。結晶は、通常は1つの液滴についての2個から4個の核として、複数の分岐を持った構造または樹状構造として形成されて現われ、主構造に多数の突起や分岐が伴う。それぞれの分岐全体の全寸法は、核の中心からおよそ50マイクロメートルの長さ、およそ30マイクロメートルの幅、そしておよそ10マイクロメートルの厚みもしくは深さである。枝の1つは、ナイロンの輪で結晶からはずすことができ、3回の連続する洗浄において上記の結晶化試薬で洗浄し、4×SDS Laemmli緩衝液中に溶解させ、その後、SDS−ポリアクリルアミドゲルのウェルに入れ、電気泳動を行った。電気泳動の後、ゲルを銀で染色すると、結晶化させられたタンパク質を泳動させたレーンの中に、結晶を生じさせるために使用したエタナーセプト調製物に由来するタンパク質と同じ程度移動した明確に見ることができる銀染色されたバンドが生じる。このSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動アッセイを、これらの実験で生じた結晶に由来する他の枝を使用して繰り返した。エタナーセプトと同じ電気泳動による移動度を有する溶解させた結晶物質のバンドの染色は、クマシーブルー染色を使用しても行うことができる。したがって、エタナーセプト溶液から形成された結晶には、明らかにエタナーセプトである物質が含まれる。なぜなら、これは、エタナーセプトタンパク質の既知の試料と同じ様式で、SDS−ポリアクリルアミドゲル中で移動し、ゲル中にタンパク質のバンドを生じるからである。
【0177】
(実施例6)
(結晶化したポリペプチドの生物学的活性の試験)
上記の実施例に記載したように、ポリペプチドの結晶を、結晶化溶液から回収し、状況に応じて、別の溶液に入れ、洗浄し、そして/または乾燥させて結晶化緩衝液を除去し、その後、さらなるアッセイのために適切な溶液中に溶解させることができる。TNFR2ポリペプチドの生物学的活性は、多数のアッセイのうちのいずれか、例えば、予め結晶化させたTNFR2(すなわち、再構成させたTNFR2ポリペプチド)についてそのリガンドに結合する能力を決定するための結合アッセイを使用して、試験することができる。以下の実施例では、TNF−αに結合するそのようなTNFR2ポリペプチド、例えば、エタナーセプトの生物学的活性を測定するためのアッセイを説明する(例えば、Mohler et al.,1993,J Immunol 151:1548−1561を参照のこと)。当業者は、このようなアッセイに、他のTNFR2ポリペプチドの生物学的活性を測定することにおいて使用するために変更を加えることができることを認識しているであろう。
【0178】
(結合競合アッセイ)
0.5nMの標識したヒトTNF−α、例えば、[125I]TNF−αを、結合媒体(RPMI 1640、2.5%のBSA、50mMのHEPES(pH7.4)、0.4%のNaN)中で4℃で2時間、段階希釈した競合結合因子(例えば、結晶形態から再構成したエタナーセプト、または結晶形態から再構成した別のTNF−α−結合TNFR2ポリペプチド、あるいは、対照としての未標識のヒトTNF−αまたは結晶化させていないエタナーセプト)、および2×10個のU937細胞とともにインキュベートした。その後、2連のアリコートを取り出し、遊離のリガンドと結合したリガンドを分けるためにフタル酸エステルの油混合物を通じて遠心分離し、放射活性(細胞に結合した[125I]TNF−α)を、ガンマカウンターを使用して測定した。非特異的結合値を、200倍モル過剰の未標識のTNF−αを含めることによって決定し、全結合データから引き算して特異的結合値を得た(例えば、Park et al.,1990、J Exp Med 171:1073−1089を参照のこと)。
【0179】
(LPSによって誘導される死亡率からの救出)
致死量のLPS(リポ多糖)の注射により、マウスにおいて血清TNF−αレベルを上昇させて、TNF−αの作用を中和する十分な量の試薬を投与していない場合の死亡率を生じさせた(例えば、Mohler et al.,1993,J Immunol 151:1548−1561を参照のこと)。LPS、例えば、大腸菌(E.coli)由来の細菌LPSを、10mg/mLの滅菌した生理食塩水に再懸濁させ、少量のアリコートとして−20℃で保存した。LPSを適切な濃度に希釈し、注射の前に1分間超音波処理した。BALB/cの雌マウス(18から20g)のようなマウスに、LD60からLD100用量のLPS(300〜400マイクログラム)を、0.2mLの生理食塩水溶液で静脈注射した。LPSは、単独で、または結晶形態から再構成させたエタナーセプトと、もしくは結晶形態から再構成させた別のTNF−α結合TNFR2ポリペプチド、あるいは、結晶化させていないエタナーセプトもしくはヒトIgGのような対照タンパク質と組み合わせてのいずれかで注射した。生存性を、少なくとも5日間モニターした。活性のある再構成したTNF−α−結合TNFR2ポリペプチドの存在は、十分な量の再構成されたTNF−α−結合TNFR2ポリペプチドが投与された場合の、LPSを注射したマウスの生存性の増大によって示される。
【0180】
本発明は、本発明の実施のための特定の態様を含むように見られるかまたはそのように提案される特定の実施形態に関して記載されている。本発明の開示を参照して、本発明の意図される範囲から逸脱することなく、多数の変更および変化を説明される特定の実施形態の中で行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【0181】
(配列表に示された配列)
【0182】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図1は、以下の実施例1にさらに記載されるように、1ミリリットルあたり50.96mgのエタナーセプトを含むポリペプチド溶液から形成させられたエタナーセプト結晶の写真である。結晶保存緩衝液は、0.1MのHEPES(pH7.0)、30%のPEG 6000、0.7Mの塩化リチウムとした;室温で7日間の後、結晶を、手で回収し、上記の保存緩衝液中で十分に洗浄し、写真を撮影した。このグループによる結晶を、N末端のアミノ酸配列分析に供した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタナーセプトの結晶。
【請求項2】
前記結晶が桿状形態である、請求項1に記載のエタナーセプトの結晶。
【請求項3】
前記結晶が、0.5ミリメートルから1.5ミリメートルの間の最大長を有する、請求項1に記載のエタナーセプトの結晶。
【請求項4】
前記結晶が、0.05ミリメートルから0.3ミリメートルの間の最大長を有する、請求項1に記載のエタナーセプトの結晶。
【請求項5】
前記結晶が、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムからなる群より選択される塩を含む、請求項1に記載のエタナーセプトの結晶。
【請求項6】
前記結晶が、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、および塩化ナトリウムからなる群より選択される塩を含む、請求項1に記載のエタナーセプトの結晶。
【請求項7】
エタナーセプトの結晶を生成する方法であって、該方法は、エタナーセプトポリペプチドの溶液を、塩を含む結晶化緩衝液と組み合わせる工程を包含する、方法。
【請求項8】
前記組み合わせが、結晶化緩衝液の容器との蒸気平衡中に位置する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶化緩衝液が4.0から10.5の間のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記塩が、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記結晶化緩衝液中の塩の濃度が、0.04Mから1.2Mの間である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶化緩衝液が、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(MPD)またはポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
結晶が形成した後、前記結晶化緩衝液の少なくとも一部を除去する工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記結晶化緩衝液の一部が遠心分離によって除去される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記結晶が、有機添加物を含む溶液中に入れられる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
賦形剤の添加をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記賦形剤が、スクロース、トレハロース、またはソルビトールからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記有機添加物が、エタノールまたはイソプロパノールである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
形成した結晶を乾燥させる工程をさらに包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記結晶が、空気に対する暴露によって、または減圧に対する暴露によって、または窒素ガスに対する暴露によって、乾燥させられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項7〜20のいずれか1項に記載の方法によって生成されたエタナーセプトの結晶。
【請求項22】
結晶形態のエタナーセプトを含む組成物。
【請求項23】
結晶性エタナーセプトを再構成することによって生成される組成物。
【請求項24】
医薬品の調製における、請求項1〜21のいずれか1項に記載のエタナーセプトの結晶または請求項22〜23のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項25】
前記医薬品が、過剰なTNF−αレベルにより特徴付けられる状態を処置するためのものである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記医薬品が、被験体の血清または組織中のTNF−αレベルを低下させる、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記状態が、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、または強直性脊椎炎である、請求項25に記載の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−521315(P2007−521315A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522109(P2006−522109)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024738
【国際公開番号】WO2005/012353
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506031074)アムジェン インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】