説明

結晶成長装置

【課題】融液を攪拌する駆動軸の軸受の摩耗を抑制し、大型で高品質の結晶を得る結晶成長装置の提供。
【解決手段】加熱加圧雰囲気下で原料ガスと融液とを反応させて該融液に浸漬された種基板上に結晶を成長させる反応容器10と、反応容器10に挿通して設けられた駆動軸を軸周りに回転させて上記融液を攪拌する攪拌装置と、を備え、上記駆動軸は、反応容器10を挿通する軸体41b1に、軸方向で反応容器10に係止可能な係止部41b2を設けた第2駆動軸41Bを有しており、第2駆動軸41Bと反応容器10との間に設けられ、軸方向において、係止部41b2と対向するすべり面72a及び反応容器10と対向するすべり面72bの少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されたすべり軸受70Bを有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
次世代半導体材料として期待されている窒化ガリウム(GaN)の製法の一つとしては、数十MPaの高圧窒素雰囲気中、800℃〜1000℃のNa/Ga融液に結晶担持体(例えば、サファイヤ+GaN層からなる種基板)を浸漬させ、その結晶担持体上にGaN結晶を成長させる結晶成長方法(所謂、フラックス法)が知られている。
下記特許文献1には、フラックス法において、余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得るべく、融液を攪拌する攪拌装置を備える結晶成長装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−247615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の図3に示すように、駆動軸を挿通させるため反応容器に孔部を形成すると、駆動軸と孔部との隙間から融液成分が抜け出てしまい、結晶育成条件(例えば、NaとGaの比率)の変化を招くため、その隙間を管理する軸受を設ける必要がある。また、この軸受が、駆動軸及びその先端に設けられた攪拌翼の重量を支える場合、駆動軸と反応容器との間でスラスト荷重を受けて摩耗してしまう。さらに、反応容器内は、800℃〜1000℃の高温雰囲気であるから、一般的な玉軸受等では動作保証温度を越えているため用いることができず、軸受の摩耗対策が問題となる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、融液を攪拌する駆動軸の軸受の摩耗を抑制し、大型で高品質の結晶を得る結晶成長装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、加熱加圧雰囲気下で原料ガスと融液とを反応させて該融液に浸漬された結晶担持体上に結晶を成長させる反応容器と、上記反応容器に挿通して設けられた駆動軸を軸周りに回転させて上記融液を攪拌する攪拌装置と、を備え、上記駆動軸は、上記反応容器を挿通する軸体に、軸方向で上記反応容器に係止可能な係止部を設けた駆動軸体を有しており、上記駆動軸体と上記反応容器との間に設けられ、軸方向において、前記係止部と対向するすべり面及び前記反応容器と対向するすべり面の少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されたすべり軸受、または、軸方向と直交する方向において、前記軸体と対向するすべり面及び前記反応容器と対向するすべり面の少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されたすべり軸受を有する結晶成長装置を採用することによって、駆動軸体と反応容器との間に設けられる軸受を、当該結晶育成環境に耐えつつ、動作の頑強性があり、低コストで、且つ、組立性・分解性に優れるすべり軸受とし、さらに、このすべり軸受の駆動軸体及び反応容器と対向するすべり面の少なくともいずれか一方をセラミックス材から形成することで、摺動による摩耗、さらには摺動による熱の影響に対しても強くなるので、軸受の摩耗を抑制することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、融液を攪拌する駆動軸の軸受の摩耗を抑制し、大型で高品質の結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態における窒化ガリウム製造装置を示す構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態における外容器の軸受け構造を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における外容器の軸受け構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、結晶成長装置として窒化ガリウム製造装置を例示して説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における窒化ガリウム製造装置1を示す構成図である。
窒化ガリウム製造装置1は、フラックス法により種基板(結晶担持体)2上にGaN結晶を成長させ製造するものであり、種基板2及び混合融液(融液)3を保持する坩堝11とその外側を囲う外容器13からなる反応容器10と、反応容器10の外側を囲う断熱容器20と、断熱容器20の外側を囲う圧力容器30と、混合融液3を攪拌する攪拌装置40と、を有する。
【0011】
坩堝11は、内部にNa/Gaからなる混合融液3を保有する。本実施形態の坩堝11は、その底部に種基板2を載置し、内部の混合融液3に浸漬させる構成となっている。また、坩堝11の外側を囲う外容器13には、外部からGaN結晶の原料となる窒素ガス(N)を導入する窒素ガス供給ポート17が接続されており、反応容器10内に窒素ガスが充填されるようになっている。坩堝11は、アルミナ、または、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、または、イットリアからなるセラミックス材から形成されている。外容器13は、ステンレス鋼から形成されている。
【0012】
断熱容器20の断熱材には、例えばグラスウール等の繊維系断熱材が用いられる。断熱容器20の内側には、外容器13を囲んで加熱するヒーター21が設けられる。
圧力容器30は、圧力状態が変化した場合であってもその圧力に耐えられるように略円筒形状に形状設定された真空容器からなり、この円筒形の中心軸が鉛直方向となるように姿勢設定されている。また、圧力容器30には、内部の空気を真空排気する不図示の真空排気ポートが接続されている。
【0013】
攪拌装置40は、磁気結合式の攪拌機であり、駆動軸41と、軸ケース42と、回転駆動装置43と、を有する。駆動軸41の一端側には、永久磁石(磁性体)44を外周面周方向おいて所定間隔を空けて複数備える内筒45が装着されている。軸ケース42は、駆動軸41の一端側を収容する収容空間S1を有する。収容空間S1には、内筒45の周面と接して、駆動軸41を軸周りに回転自在に支持する軸受46が設けられている。この軸ケース42は、非磁性体のステンレス鋼から形成され、圧力容器30に気密に密着固定されている。なお、駆動軸41もステンレス鋼から形成されている。
【0014】
回転駆動装置43は、軸ケース42の外側に、永久磁石47を内周面周方向において所定間隔をあけて複数備える外筒48を備える。外筒48は、軸ケース42の外側に取り付けられた軸受49により軸周りに回転自在に支持されている。また、回転駆動装置43は、外筒48を軸周りに回転させるモーター50を備える。モーター50の回転軸と外筒48とはベルト51で接続されている。上記構成によれば、モーター50の駆動により外筒48が軸周りに回転すると、外筒48に固定された永久磁石47と内筒45に固定された永久磁石44とが軸ケース42を介して磁気的に作用し、駆動軸41が軸周りに回転する。
【0015】
断熱容器20及び圧力容器30には、駆動軸41が挿通する挿通孔(以下、断熱容器20の挿通孔を第1孔部22、圧力容器30の挿通孔を第2孔部31と称する)が形成されている。第1孔部22と第2孔部31との間には、軸方向に伸縮自在で、且つ、軸方向と直交する方向に偏心自在なベローズ管(伸縮管)53が設けられている。ベローズ管53は、断熱容器20と圧力容器30との間において駆動軸41を囲うと共に、その一端側で第1孔部22を気密に囲うように取り付けられ、その他端側で第2孔部31を気密に囲うように取り付けられている。なお、第2孔部31は軸ケース42の収容空間S1と気密に連通しており、第1孔部22より外側には、ベローズ管53、第2孔部31及び収容空間S1が連通した気密空間が形成される構成となっている。この構成によれば、断熱容器20からの高温ガスの流出を抑制することができる。
【0016】
軸ケース42から下方に延びる駆動軸41の他端側は、圧力容器30、断熱容器20、外容器13及び坩堝11を挿通され、混合融液3中に至る構成となっている。駆動軸41は、その他端側先端部に攪拌翼52を備えており、混合融液3中で攪拌翼52が軸周りに回転することで、混合融液3を攪拌する。
本実施形態の駆動軸41は、第1駆動軸41Aと第2駆動軸(駆動軸体)41Bとが軸継手60により係合して構成されている。なお、第1駆動軸41Aは、軸ケース42によって回転自在に支持され、第2駆動軸41Bは、坩堝11に設けられたすべり軸受70Aにより回転自在に支持され、さらに、外容器13に設けられたすべり軸受70Bにより回転自在に支持されている。
【0017】
第2駆動軸41Bは、反応容器10に挿通する軸体41b1と、軸方向(鉛直方向)で外容器13に係止可能に設けられた係止部41b2と、を有する。
すべり軸受70Aは、軸体41b1が挿通する坩堝11に形成された挿通孔(以下、第3孔部11aと称する)に載置されている。すべり軸受70Aは、その内周面(すべり面)で軸体41b1を軸支する構成となっている。本実施形態のすべり軸受70Aは、高温雰囲気下におかれるため、耐熱性、耐摩耗性を併せ持つ、アルミナ、または、YAG、または、イットリアから形成されたセラミックス軸受から構成されている。
【0018】
すべり軸受70Aと軸体41b1との間には隙間が形成されている。この隙間は、すべり軸受70Aの内周径を、軸体41b1の外周径より大きく設計することにより形成される。この隙間は、Na蒸気の漏出を防ぎつつ窒素ガスを坩堝11内に供給することができる大きさに管理されている。この機能を十分に発揮できる隙間の大きさは、実験結果や経験則から、1mm以下が適当であるとされている。本実施形態では、加熱による熱膨張率を考慮して、この隙間の片側の大きさが0.1mm〜0.2mmとなるように、製作時にすべり軸受70Aの内周径及び駆動軸41の外周径を精度管理している。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態における外容器13の軸受け構造を示す断面図である。
係止部41b2は、軸継手60の一部を構成する。係止部41b2は、軸体41b1の端部から半径方向(水平方向)両側に延在する略板形状を有する。一方、第1駆動軸41Aは、係止部41b2を跨ぎ、且つ、係止部41b2の厚みより大きな距離で設けられる一対の棒体41a1を有する。
上記構成の軸継手60によれば、第1駆動軸41Aが軸周り(例えば平面視時計回り)に回転すると、一対の棒体41a1が係止部41b2を厚み方向で挟み込むように接触し、係合する。そして、第1駆動軸41Aと第2駆動軸41Bとが一体回転することとなる。
【0020】
すべり軸受70Bは、軸体41b1が挿通する外容器13に形成された挿通孔(以下、第4孔部13aと称する)に載置されている。すべり軸受70Bは、第4孔部13aよりも小径の小径部71と、第4孔部13aよりも大径の大径部72とを有する。すべり軸受70Bは、外容器13に対して固定されておらず、大径部72が第4孔部13aの縁部に係止し、小径部71が第4孔部13aに遊嵌することで、外容器13に対して第2駆動軸41B周りに回転自在に設けられている。
【0021】
すべり軸受70Bは、第2駆動軸41Bと対向するすべり面71a,72a及び外容器13と対向するすべり面71b,72bの少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されている。本実施形態のすべり軸受70Bは、すべり面71a,71b及びすべり面72a,72bの両方が、セラミックス材から形成されている。本実施形態のすべり軸受70Bは、高温雰囲気下におかれるため、耐熱性、耐摩耗性を併せ持つ、アルミナ、または、YAG、または、イットリアから形成されたセラミックス軸受から構成されている。また、すべり面72aは、係止部41b2と軸方向(鉛直方向)で対向し、第2駆動軸41Bの自重の少なくとも一部(本実施形態では第2駆動軸41Bの自重の略全て)を軸方向で受ける構成となっている。
【0022】
続いて、上記構成の窒化ガリウム製造装置1の動作及び作用について説明する。なお、本実施形態の窒化ガリウム製造装置1は、不図示の制御部を備えている。そして、特に断りが無い限り、当該制御部が、主体者として以下の動作を制御する。
先ず、圧力容器30内部の空気を真空排気ポートから真空排気する。真空状態となった後、窒素ガス供給ポート17から窒素ガスを供給して反応容器10内を充填させる。この際、窒素ガス供給ポート17から供給された窒素ガスは、先ず外容器13内に充填される。外容器13内が充填されて加圧されると、すべり軸受70Aと駆動軸41との間の隙間がガス流路として機能し、外容器13内の窒素ガスが、坩堝11内に供給される。そして、内部圧力を、数十MPaまで加圧する。また、ヒーター21を駆動させて、内部温度を800℃〜1000℃まで加熱し、高温高圧雰囲気を形成する。
【0023】
そして、この高温高圧状態を維持し、坩堝11の混合融液3中で、Ga(ガリウム)とN(窒素)とを反応させて、種基板2上にGaN結晶を成長させる。この結晶の成長速度は、数十μm/hrと遅く、十分なサイズの結晶を得ようとすると、長時間の育成が必要不可欠となる。
この結晶成長過程において余分な核発生を抑え、大型で高品質のGaN結晶を得るべく、攪拌装置40で混合融液3を攪拌させる。具体的には、モーター50の駆動により外筒48を軸周りに回転させて、磁気的作用により攪拌翼52を有する駆動軸41を軸周りに回転させ、攪拌翼52で混合融液3を攪拌する。駆動軸41は、第1駆動軸41Aと第2駆動軸41Bと備えており、軸継手60によって、第2駆動軸41Bが第1駆動軸41Aと共に一体回転する。
【0024】
本実施形態では、第2駆動軸41Bを、セラミックスからなるすべり軸受70A,70Bによって支持しているので、長時間の結晶育成において、結晶育成条件の変化を抑制することができる。すなわち、反応容器10に第2駆動軸41Bを挿通するために、単に、第3孔部11a、第4孔部13aを形成すると、軸体41b1との隙間から融液成分(Naガス)が抜け出てしまい、結晶育成条件(例えば、NaとGaの比率)の変化を招くことから、すべり軸受70A,70Bによって、その隙間を小さく管理することで、結晶育成条件の変化を抑制することができる。
【0025】
また、すべり軸受70A,70Bは、セラミックス軸受からなるので高温(800℃〜1000℃)の結晶育成環境下にも耐え得ることができる。すなわち、一般的な玉軸受等では、動作保証温度が800℃未満であり、当該結晶育成環境下にそのまま適用することは難しい。また、総セラミックス製玉軸受は、価格が非常に高く、納期も長いというデメリットがある。また、この玉軸受は、反応容器10への固定が必要となると共に構造が複雑となり、結晶育成後、反応容器10を分解するとなると、分解作業が困難となる。さらに、構造が複雑であるため、反応容器10の製作誤差や熱変形等による位置ずれが発生した場合、軸体41b1との間で抉りが生じ、円滑な回転を阻害してしまう。一方、すべり軸受70A,70Bは、構造が簡単であるため、動作の頑強性があり、低コストで、且つ、組立性・分解性に優れる。さらに、すべり軸受70A,70Bは、第3孔部11a、第4孔部13aに固定せずに載置しているため、位置ずれが発生した場合でもその隙間(ガタ)が吸収してくれるので、軸体41b1の抉りを防止した円滑な回転を維持できる。
【0026】
また、すべり軸受70A,70Bは、第2駆動軸41Bと摺動し、また、第3孔部11a、第4孔部13aに固定せずに載置しているため、第2駆動軸41Bと共に連れ周り、坩堝11あるいは外容器13とも摺動するが、それらと対向するすべり面がセラミックス材から形成されているので、当該摺動による摩耗を抑制し、さらに、第2駆動軸41Bとの摺動による摩擦熱(周囲環境温度+数十℃)にも耐え得ることができる。
特に、すべり軸受70Bにおいては、図2に示すように、係止部41b2と軸方向で対向するすべり面72aを有し、第2駆動軸41Bの自重の少なくとも一部を軸方向で受けているので、すべり面72aにおいては他のすべり面より相対的に摩耗し易くなるが、すべり軸受70Bが外容器13に対しても相対回転するため、自重を受けて摺動する部位がすべり面72bにも分散され、摩耗の発生を抑制することができる。すなわち、すべり面72bでは環状の広い面で外容器13と摺動するので、すべり面72aのように局所荷重を受けることはないため、すべり面72b側が摺動すればそれだけ摩耗に対して強くなる。
【0027】
具体的に、約100時間、攪拌翼52を回して摩耗の度合いを大径部72の厚みtで計測したところ、すべり軸受70Bをアルミナで形成した場合は、運転前が4.5mmであったのに対し、運転後が4.6mm(計測誤差を含む)で約2%増加した。一方、すべり軸受70BをYAGで形成した場合は、運転前が4.5mmであったのに対し、運転後も4.5mm(計測誤差を含む)で変化がなかった。これらの計測結果から、すべり軸受70Bは、長時間の運転に耐え得る耐摩耗性を有していることが分かる。一方で、すべり軸受70Bから微量の摩耗粉が発生した場合であっても、坩堝11とすべり軸受70Bのすべり面のセラミックス材を同質のセラミックス材としているため、坩堝11は通常、結晶成長に影響を与えないセラミックス材で形成されているので、摩耗粉が仮に混合融液3に混入した場合であっても結晶成長に影響を与えないようにすることができる。
【0028】
したがって、上述した第1実施形態によれば、混合融液3を攪拌する第2駆動軸41Bの軸受の摩耗を抑制し、大型で高品質の結晶を得ることができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図3は、本発明の第2実施形態における外容器13の軸受け構造を示す断面図である。
なお、第2実施形態では、すべり軸受70Bを窒化ホウ素で形成している。
【0030】
窒化ホウ素は、セラミックス材であり、耐熱性及び自己潤滑性を有するので、円滑な第2駆動軸41Bの回転のためには有用であるが、反面、柔らかく摩耗が激しいという性質を有する。具体的に、すべり軸受70Bを窒化ホウ素で形成し、約100時間、攪拌翼52を回して摩耗の度合いを大径部72の厚みtで計測したところ、運転前が4.5mmであったのに対し、運転後が3.7mm(計測誤差を含む)で約18%減少した。また、摩耗粉が、外容器13との隙間に入り込み、外容器13との固着が確認された。固着の原因としては、外容器13との隙間に摩耗粉が入り込んだことと、摩耗粉に含まれる(Si)と僅かながら装置内に残っている酸素が高温雰囲気下で反応し、ガラス状の物質が生成される等したことが原因と考えられる。
【0031】
そこで、第2実施形態では、図3に示すように、軸方向において係止部41b2とすべり軸受70Bとの間に設けられ、係止部41b2とすべり軸受70Bとのそれぞれに対して第2駆動軸41B周りに相対回転自在な第1のワッシャ80、及び、軸方向においてすべり軸受70Bと外容器13との間に設けられ、すべり軸受70Bと外容器13とのそれぞれに対して第2駆動軸41B周りに相対回転自在な第2のワッシャ81の少なくともいずれか一方(本実施形態では両方)を有している。第1のワッシャ80及び第2のワッシャ81は、共に金属製のワッシャから形成される。
【0032】
上記構成によれば、第1のワッシャ80が係止部41b2とすべり軸受70Bとのそれぞれに対して相対回転すると共に、第2のワッシャ81がすべり軸受70Bと外容器13とのそれぞれに対して相対回転するため、摺動する部位が分散され、結果、摩耗の発生が抑制される。さらに、第1のワッシャ80は、すべり面71bに対して環状に広い接触面積で当接するため、係止部41b2から受ける局所荷重を分散させることができ、摩耗の発生が抑制される。
具体的に、すべり軸受70Bを窒化ホウ素で形成し、図3のように第1のワッシャ80及び第2のワッシャ81を設けて、約100時間、攪拌翼52を回して摩耗の度合いを大径部72の厚みtで計測したところ、運転前が4.5mmであったのに対し、運転後が4.45〜4.5mm(計測誤差を含む)で約0〜1%の減少に留まった。また、外容器13との固着も確認されなかった。
【0033】
したがって、上述した第2実施形態によれば、混合融液3を攪拌する第2駆動軸41Bの軸受の摩耗を抑制し、大型で高品質の結晶を得ることができる。
【0034】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0035】
例えば、すべり軸受70A,70Bを形成するセラミックス材をイットリアとする構成であっても良い。イットリアは、上述したアルミナやYAGと同様の耐磨耗性を有するためである。
【0036】
また、例えば、すべり軸受70A,70Bを形成するセラミックス材をアルミナ、または、YAG、または、イットリアとしたものであっても、第1のワッシャ80及び第2のワッシャ81の少なくともいずれか一方を設けても良い。これにより、摩耗を抑制し、さらに長時間の運転が可能になる。
【0037】
また、例えば、上記実施形態では、反応容器10を坩堝11と外容器13とからなる構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、反応容器10は坩堝11のみで構成しても良いし、坩堝11と外容器13との間にさらに中容器を設ける構成であっても良い。
【0038】
また、例えば、上記実施形態では、すべり軸受70Bは、第2駆動軸41Bと対向するすべり面71a,72a及び外容器13と対向するすべり面71b,72bの両方がセラミックス材から形成されていると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
係止部41b2から荷重を受けるすべり軸受70Bにおいては、軸方向において、係止部41b2と対向するすべり面72a及び外容器13と対向するすべり面72bの少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されていれば、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、係止部41b2から荷重を受けないすべり軸受70Aにおいては、軸方向と直交する方向において、軸体41b1と対向するすべり面71a及び外容器13と対向するすべり面71bの少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されていれば、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0039】
また、例えば、上記実施形態では、結晶担持体として種基板2を用いたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、基板以外にも、円柱や四角柱等の種々の形状がありうる。
【符号の説明】
【0040】
1…窒化ガリウム製造装置(結晶成長装置)、2…種基板(結晶担持体)、3…混合融液(融液)、10…反応容器、11…坩堝、13…外容器、40…攪拌装置、41…駆動軸、41B…第2駆動軸(駆動軸体)、41b1…軸体、41b2…係止部、70A…すべり軸受、70B…すべり軸受、71a…すべり面、71b…すべり面、72a…すべり面、72b…すべり面、80…第1のワッシャ、81…第2のワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱加圧雰囲気下で原料ガスと融液とを反応させて該融液に浸漬された結晶担持体上に結晶を成長させる反応容器と、
前記反応容器に挿通して設けられた駆動軸を軸周りに回転させて前記融液を攪拌する攪拌装置と、を備え、
前記駆動軸は、前記反応容器を挿通する軸体に、軸方向で前記反応容器に係止可能な係止部を設けた駆動軸体を有しており、
前記駆動軸体と前記反応容器との間に設けられ、軸方向において、前記係止部と対向するすべり面及び前記反応容器と対向するすべり面の少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されたすべり軸受を有することを特徴とする結晶成長装置。
【請求項2】
加熱加圧雰囲気下で原料ガスと融液とを反応させて該融液に浸漬された結晶担持体上に結晶を成長させる反応容器と、
前記反応容器に挿通して設けられた駆動軸を軸周りに回転させて前記融液を攪拌する攪拌装置と、を備え、
前記駆動軸は、前記反応容器を挿通する軸体に、軸方向で前記反応容器に係止可能な係止部を設けた駆動軸体を有しており、
前記駆動軸体と前記反応容器との間に設けられ、軸方向と直交する方向において、前記軸体と対向するすべり面及び前記反応容器と対向するすべり面の少なくともいずれか一方がセラミックス材から形成されたすべり軸受を有することを特徴とする結晶成長装置。
【請求項3】
前記すべり軸受は、前記係止部と軸方向で対向するすべり面を有し、前記駆動軸体の自重の少なくとも一部を軸方向で受けることを特徴とする請求項1または2に記載の結晶成長装置。
【請求項4】
前記すべり軸受は、前記反応容器に対して前記駆動軸周りに相対回転自在に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の結晶成長装置。
【請求項5】
軸方向において前記係止部と前記すべり軸受との間に設けられ、前記係止部と前記すべり軸受とのそれぞれに対して前記駆動軸周りに相対回転自在な第1のワッシャ、及び、軸方向において前記すべり軸受と前記反応容器との間に設けられ、前記すべり軸受と前記反応容器とのそれぞれに対して前記駆動軸周りに相対回転自在な第2のワッシャの少なくともいずれか一方を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の結晶成長装置。
【請求項6】
前記反応容器は、前記融液を保持する坩堝を有しており、
前記すべり軸受のセラミックス材は、前記坩堝と同質のセラミックス材から形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の結晶成長装置。
【請求項7】
前記セラミックス材は、アルミナ、または、YAG、または、イットリアからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の結晶成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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