説明

結腸直腸のガンの予後予測

【課題】結腸直腸ガンと診断されるか又は結腸直腸ガンを治療された患者において結腸直腸ガンの再発可能性を評価する方法の提供。
【解決手段】遺伝子プロファイルからなる遺伝子群を含む遺伝子ポートフォリオを作成し、遺伝子群の発現を分析することによって結腸直腸ガンの予後予測をする。様々な媒体、例えばマイクロアレイ、から得られる遺伝子発現プロファイル、及びそれらを含む結腸直腸ガンの予後予測を決定するキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料の遺伝子発現プロファイルに基づく結腸直腸ガンの予後予測に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
本出願は、2003年8月28日に出願された米国特許第号特許出願第10/651,237号の一部の続きである。
【0003】
結腸直腸ガンは、複雑な起源を有する不均一な疾患である。ひとたび、患者が結腸直腸ガンを治療されるなら、再発の可能性は、腫瘍の腸管壁をとおした浸透の程度及び結束併発の有無に関連する。これらの、性質は、デュークの分類によって定義される現在のステージシステムの基礎である。デュークA疾患は、大腸又は直腸の粘膜下層に限局する。デュークB腫瘍は、固有筋層を通して浸潤しかつ大腸又は直腸の壁を浸透する。デュークC疾患は、局所性のリンパ節の転移を有する腸管壁浸潤のいずれかの程度を含む。
【0004】
外科的切除は、結腸直腸ガンの早いステージではとても効果的であり、デュークAでは95%の治癒割合、デュークB患者では75%の治癒割合を提供する。デュークC疾患における陽性リンパ節の存在は、60%の5年以内の再発可能性を予測する。デュークC患者を外科手術後の化学療法で治療することは、再発割合を40%〜50%に減らし、そして今ではデュークC患者の治療の基本である。比較的低い再発割合のため、デュークBにおける手術後の化学療法の利得は、検出することが難しく、議論の余地がある。しかしながら、約20〜30%のデュークB患者がデュークCの様に振る舞い、5年の時間枠内で再発することから、デュークB分類は不完全である。
【0005】
デュークB患者を再発しそうな患者及び生存する患者へと選別することを導くための、結節の併発よりもよい予後予測因子を同定する必要性が明らかにある。一般にWangに所有される米国特許出願第10/403,499号では、大腸ガンを予後予測する遺伝子発現プロファイルが存在する。この明細書は、異なる遺伝子発現プロファイルを示す。
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明は、結腸直腸ガンと診断されるか又は結腸直腸ガンを治療された患者において、結腸直腸ガンの再発可能性を評価する方法である。本方法は、遺伝子発現プロファイルの分析を含む。
【0007】
本発明のある側面においては、遺伝子発現プロファイルは、少なくとも7の特定の遺伝子を含む。
【0008】
本発明の別の側面においては、遺伝子発現プロファイルは、少なくとも15の特定の遺伝子を含む。
【0009】
本発明のさらに別の側面においては、遺伝子発現プロファイルは、上記7の特定の遺伝子並びに15の特定の遺伝子を含む。ある態様においては、遺伝子プロファイルは、23の遺伝子を含む。
【0010】
方法を行う際に使われる物品も、本発明の側面である。そうした物品は、遺伝子発現プロファイル又はその表示を含み、この表示は機械が読み込み可能な媒体、例えばコンピューターが読み込み可能な媒体内に固定される。
【0011】
遺伝子発現プロファイルを同定するために使われる物品は、遺伝子発現の有無又は程度を捕捉し及び/又は示すための基質又は表面、例えばマイクロアレイを含む。
【0012】
本発明のさらに別の側面において、キットは、結腸直腸ガン再発の予後予測の遺伝子発現分析を行うための薬剤を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
組織試料における特定の核酸配列の単なる有無が、診断の又は予後予測の価値を有するとはほとんど見出されていない。その一方で、様々なタンパク質、ペプチド、mRNA、の発現についての情報は、重要であるとますます見られている。ゲノム中にタンパク質、ペプチド、又はmRNAを発現するための潜在能力を持つ核酸配列(そうした配列が「遺伝子」と呼ばれる)が単に存在することは、それ自身では、タンパク質、ペプチド、又はmRNAが、与えられた細胞において存在するかどうかを決定することにはならない。与えられた遺伝子がタンパク質、ペプチド、又はmRNAを発現できるかどうかは、及び発現したとしたらどの程度までそうした発現が起こるかは、様々な複雑な因子によって決定される。これらの因子を理解し、評価する際の難しさにも関わらず、遺伝子発現を評価することは、重要な出来事、例えばガン化、転移、アポトーシス、及び別の治療上関連のある現象の発生について有用な情報を提供しうる。遺伝子が活性又は不活性である段階を相対的に示すことは、遺伝子発現プロファイルにおいて見出されうる。本発明の遺伝子発現プロファイルは、結腸直腸ガンの予後予測及び結腸直腸患者の治療を提供するために使われる。
【0014】
試料調製は、患者試料の採取を必要とする。発明方法において使われる患者の試料は、疾患細胞、例えば大腸試料における初期腫瘍又は外科的余分からとられた上皮細胞を含むとされる試料である。レーザー・キャプチャー・マイクロ・ダイセクション(LCM)技術は、研究される細胞を選択するための一つの方法であり、細胞型の不均一性によりもたらされる可変性を最小限にする。その結果として、通常細胞とガン細胞との間の遺伝子発現における中くらい又は少ない変化は、即座に検出されうる。試料は、抹消血から抽出された循環している上皮細胞も含みうる。これらは多くの方法に従って獲得されうるが、最も好ましい方法は、Immunivest Cropに譲渡された米国特許第6,136,182号において記述される磁性分離技術であり、この特許出願は、本明細書中に援用される。興味のある細胞を含む試料がひとたび獲得されたなら、RNAが抽出及び増幅され、そして適切なポートフォリオ内の遺伝子に対する遺伝子発現プロファイルが、好ましくはマイクロアレイをとおして獲得される。
【0015】
遺伝子発現プロファイルを確立する好ましい方法は、タンパク質又はペプチドをコードできる遺伝子によって作られるRNAの量を決定する事を含む。このRNA量の決定は、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、競合RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、ディファレンシャルディスプレイRT-PCR、ノーザンブロット分析、及び別の関連試験により達成される。個々のPCR反応を用いてこれらの技術を行うことは可能である一方で、mRNAから作られる相補DNA(cDNA)又は相補RNA(cRNA)を増幅し、そしてマイクロアレイを通して分析することが最良である。多くの異なるアレイ配置及びその生産方法が当業者に知られ、そして米国特許第5,445,934号;5,532,128号;5,556,752号;5,242,974号;5,384,261号;5,405,783号;5,412,087号;5,424,186号;5,429,807号;5,436,327号;5,472,672号;5,527,681号;5,527,681号;5,545,531号;5,554,501号;5,561,071号;5,571,639号;5,593,839号;5,599,695号;5,624,711号;5,658,734号;及び5,700,637号に記述され、これらの開示は本明細書中に援用される。
【0016】
マイクロアレイ技術は、数千の遺伝子の安定状態mRNAを同時に計測することを可能にし、それにより例えば制御できない細胞増殖の開始、停止、又は調節といった影響を同定する強力なツールである。2つのマイクロアレイ技術が現在広く使われている。1つはcDNAアレイであり、2つ目はオリゴヌクレオチドアレイである。これらのチップを作る際に違いが存在するが、実質的に全ての下流のデータ分析及び結果は同じである。これらの分析の成果は、典型的には、マイクロアレイ上の既知の場所における核酸配列へとハイブリダイズする試料由来のcDNA配列を検出するために使われる標識されたプローブから受け取ったシグナル強度を計測することである。典型的には、シグナルの強度は、試料細胞において発現されるcDNA、つまりmRNAの量に比例する。多くのそうした技術が利用できそして有用である。遺伝子発現を決定する好ましい方法は、Linsley et alに対する米国特許第6,271,002号;Fiend, et alに対する6,218,122号;Peck, et al.に対する6,218,114号;及びWang, et al.,に対する6,004,755号において見つかり、それぞれの開示を本明細書中に援用する。
【0017】
発現レベルの分析は、そうしたシグナル強度を比較することにより行われる。比較は、テスト試料における遺伝子の発現強度とコントロール試料における遺伝子の発現強度との比率マトリックスを作ることによって最も良く行われる。例えば、病気の組織からの遺伝子発現強度は、同じ型の通常組織から作られる遺伝子発現強度(例えば病気の直腸組織試料と通常直腸組織試料)と比較される。発現強度の比率は、試験試料とコントロール試料との間における遺伝子発現の倍数変化を示す。
【0018】
遺伝子発現プロファイルは、多くの方法において示されうる。最もよくある方法は、元の蛍光強度又は比率マトリックスを、列がテスト試料を示し、行が遺伝子を示すグラフ状の樹形図へと配列する方法である。各遺伝子に対する発現比率が、色で可視化される。例えば、1未満の比率(発現減少を示す)は、スペクトルの青色部分にあらわされ、一方1以上の比率(発現上昇を示す)は、スペクトルの赤色部分の色として現れされる。商業的に利用できるコンピューターソフトウェアプログラムは、そうしたデータを示すために利用でき、Silicon Genetics, Incの「GENESPRING」、及びPartek,Incの「DISCOVERY」及び「INFER」ソフトウェアを含む。
【0019】
本発明の方法において使われる調整された遺伝子は、実施例中に記述される。異なって発現される遺伝子は、直腸ガンの再発を患う患者において、再発を伴わない患者に比較して発現上昇されるか、発現減少される。発現上昇及び発現減少は比較上の用語であり、検出できる差(遺伝子発現を計測するために使われるシステムにおいてノイズの寄与を超える)が、いくつかの基線に比較して遺伝子発現量において見出されることを意味する。この場合、基線は、非再発患者の計測された遺伝子発現である。(再発患者由来の)病気にかかった細胞に関する興味のある遺伝子は、同じ計測方法を用いて、基線レベルに比較して上方制御されるか又は下方制御される。この脈絡における、「病気の」という用語は、細胞の制御できない増殖を伴って起こるとき、体の機能の適切な遂行を妨げるか又は妨げる潜在能力を有する体の状態の変化を指す。あるヒトは、患者の遺伝子型又は表現型のある側面が、疾患の存在と一致しているとき、疾患に関して診断される。しかしながら、診断又は予後予測を行うことは、疾患/状態問題の決定、例えば再発の可能性を決定する事及び治療をモニターすることを含む。治療のモニターにおいては、治療判断は、遺伝子発現プロファイルが、通常組織に一致したパターンへと変化したか又は変化しているかを決定するために遺伝子発現を何回も比較することにより、あたえられた治療過程の効果に関して行われる。
【0020】
好ましくは、発現減少及び発現上昇のレベルは、ハイブリダイズされたマイクロアレイプローブの強度計測の倍数変化に基づいて区別される。2.0倍の差は、そうした区別をつけるために好ましく、又は0.05未満のp値が好ましい。つまり、遺伝子が、病気/再発細胞 vs. 通常/非再発細胞において異なって発現されると言われる前に、病気の細胞は、コントロールより少なくとも2倍大きい又は2倍小さい強度を産生することが見出される。倍数差が大きければ大きいほど、診断又は予後予測のツールとしてその遺伝子を使うことはより好ましい。本発明の遺伝子発現プロファイルに選ばれる遺伝子は、治療研究機器を用いて、バックグラウンドを超える量で通常の又は非調節型の遺伝子のものから区別できるシグナルの産生をもたらす発現レベルを有する。
【0021】
統計的数値は、非調節性の遺伝子及びノイズから調節された遺伝子を確信的に区別するために使われうる。統計的検定は、試料の様々な群のあいだの最も有意に異なる遺伝子を見出した。スチューデントのt検定は、2つの群間の有意差を見つけるために使われうる強力な統計的検定である。p値が低ければ低いほど、遺伝子が、異なる群間の違いを示しているという証拠をより強力なものとする。それにもかかわらず、マイクロアレイは、1を超える遺伝子を同時に計測するので、何万もの統計的検定が同時に必要とされうる。このことから、偶然小さいp値を見つけることはなく、Sidak補正並びに無作為化/並び替え検定を用いたこの調整が行われうる。t検定による0.05未満のp値は、遺伝子が有意に異なっているという証拠である。さらに強力な証拠は、Sidak補正が計算に入れられた後の0.05未満のp値である。各群における多くの試料では、無作為化/並び替え検定後の0.05未満のp値は、有意差の最も強力な証拠である。
【0022】
非調節性遺伝子又はノイズのシグナルより大きいシグナルを作る遺伝子を選ぶために使われうる別のパラメーターは、シグナルの絶対差計測の使用である。好ましくは、調節性の遺伝子発現によって作られるシグナルは、通常又は非調節性の遺伝子より少なくとも20%の差がある(絶対基底に基づいて)。そうした遺伝子が、通常又は非調節性遺伝子と比較して少なくとも30%の差である発現パターンを産生することはさらに好ましい。
【0023】
遺伝子は群に分けられ、そして群内の遺伝子セットについて獲得される情報が、治療に関する判断、例えば診断、予後予測、又は治療の選択を行うための正常な基準を提供する。これらの遺伝子セットは、本発明のポートフォリオを作り上げる。この場合、ポートフォリオにより支持される判断は、最も好ましくは、デュークB患者における結腸直腸ガン及び再発の可能性を含む。多くの診断マーカーに関することで、正しい医療判断を行うために十分であって最も少ない数のマーカーの使用が望まれることが多い。このことは、更なる分析までの治療の遅れを防ぎ、並びに不適切な時間及び物質の使用を防ぐ。
【0024】
好ましくは、ポートフォリオは確立され、そしてポートフォリオにおける遺伝子の組み合わせが、個々の遺伝子又は無作為に選ばれた遺伝子の組み合わせに比較して、改良された感受性及び特異性を示した。本発明の脈絡においては、ポートフォリオの感受性は、疾患状態における遺伝子の発現によって示される通常状態に対する倍数差に反映される。特異性は、遺伝子発現のシグナルと興味のある病気との相関を統計的に計測することに反映される。例えば、標準偏差は、そうした計測として使われうる。ポートフォリオ内に含まれる遺伝子の群を考慮する際、発現の計測における小さい標準偏差は、より強い特異性と相関する。変数、例えば相関係数の別の計測は、この限界において使われうる。
【0025】
遺伝子発現ポートフォリオを確立する方法は、株式ポートフォリオを確立する際に広く使われる最適化アルゴリズム、例えば平均値分散アルゴリズムの使用を通した方法である。本方法は、2003年3月21日に、Tim Jatokoe et al.,によって「ポートフォリオ選別」と名づけられた特許出願において詳細に記述される。この方法は本質的に、還付の変量性を最小化しつつ、それを使用するために受け取る還付(例えば、生成するシグナル)を最適化する入力セット(金融工学では株式、本明細書中では強度によって測定される発現量)を確立する必要がある。多くの市販のソフトウェアプログラムは、そうした操作を行うために利用できる。本明細書中を通して「Wargner Software」と呼ばれる「Wargner Associates Mean-Variance Optimization Application」が好ましい。このソフトウェアは、「Wargner Associates Mean-Variance Optimization Library」からの機能を使用して、Markowitz Senseにおける効果的な領域及び最適化されたポートフォリオを決定するために好ましい。この種のソフトウェアを使用することは、このソフトウェアが、本来の金融分析目的に使用されるとき、株の利益及び危険性の計測における入力として処理されるように、マイクロアレイデータは変換されることを必要とする。
【0026】
ポートフォリオを選ぶ過程は、帰納的な法則の適用を含みうる。好ましくは、そうした法則は、生物学及び治療結果を産生するために使われる技術の理解に基づいて公式化される。より好ましくは、最適化方法からの出力に適用される。例えば、ポートフォリオ選択の平均値分散方法は、結腸直腸ガンを患う対象において異なって発現する多くの遺伝子のマイクロアレイデータに適用されうる。この方法からの出力は、最適化された遺伝子セットであり、このセットは抹消血液並びに病気の組織において発現されるいくつかの遺伝子を含みうる。もし、試験方法において使われる試料が抹消血液から獲得され、そして乳ガンの例において異なった発現を示すある遺伝子が、抹消血液においても異なって発現されうるなら、帰納的な法則が適用され、そこにおいてポートフォリオは、抹消血液において異なって発現される遺伝子を除く効果的なフロンティアから選ばれる。もちろん、法則は、効果的なフロンティアの形成する前に、例えば選別前のデータの間に法則を適用することによって、適応されうる。
【0027】
問題の生物学に必ずしも関連しない別の帰納的法則も適用されうる。例えば、ある人は、ある割合のポートフォリオのみが特定の遺伝子又は遺伝子の群によって表されるという法則を適用しうる。商業的に利用可能なソフトウェア、例えばWanger Softwareは、容易にこの種の帰納法を備える。このことは、例えば精度及び精密度以外の因子(例えば予期されるライセンシング料)が、1以上の遺伝子を含む望ましさに影響を有する場合、有用でありうる。
【0028】
本発明の一つの方法は、様々な遺伝子(又はポートフォリオ)の遺伝子発現プロファイルを比較して予後予測を行うことを含む。ポートフォリオを含む各遺伝子の遺伝子発現プロファイルは、媒体、例えばコンピュータが読み込むことができる媒体内で固定される。これは、多様な形態をとりうる。例えば、疾患を指し示すシグナルの範囲(強度の計測)が入力されるところに表が作られる。実際の患者のデータは、患者試料が通常であるか又は病気であるかを決定するための表の数値と比較されうる。より洗練された態様では、発現シグナル(例えば蛍光強度)のパターンが、デジタルで又は画像で記録される。患者試料と組み合わせて使われる遺伝子ポートフォリオからの遺伝子発現パターンは、発現パターンと比較される。パターン比較ソフトウェアは、患者の試料が疾患の再発を指し示すパターンを有するかを決定するために使われうる。もちろん、これらの比較は、患者が疾患の再発を経験しなさそうかどうかを決定するためにも使われうる。試料の発現プロファイルは、コントロール細胞のポートフォリオと比較される。もし、試料の発現パターンが、通常/コントロール細胞からの発現パターンと一致するなら、患者は、結腸直腸ガンに対し陰性であると診断される。
【0029】
好ましい本発明のプロファイルは、表2に示される7遺伝子のポートフォリオであり、表3に示される15の遺伝子のポートフォリオである。7及び15の遺伝子群が混ぜられるポートフォリオの使用はより好ましい。独立して検証される結腸直腸の予後予測遺伝子、例えばカドヘリン17(配列番号6)を表2及び表3の両方の遺伝子と組み合わせて作られる遺伝子発現ポートフォリオが最も好ましい(表4)。この最も好ましいポートフォリオは、再発の危険性が高いデュークB患者を、そうでない患者から良く区別する。ひとたび危険性の高い患者が同定されると、患者は免疫賦活剤で治療されうる。カドヘリン17の代わりに使われうる別の独立して検証された予後予測遺伝子は、非限定的に配列番号29〜94に対応する遺伝子を含みうる。
【0030】
本発明では、大腸ガンの予後予測を決定するための患者の遺伝子発現パターンを分析する最も好ましい方法は、コックスハザード分析プログラムの使用を通してである。最も好ましくは、分析は、S-Plusソフトウェア(Insightful Corporationから商業的に利用できる)をもちいて行われる。そうした方法を用いて、遺伝子発現プロファイルは、再発を確かに示す遺伝子発現プロファイルと比較される(つまり、プロファイルにおける遺伝子の組合せの発現レベルは、再発を示す)。確定された閾値を有するコックスハザードモデルは、二つのプロファイルの類似性を比較するために使われ、そして患者のプロファイルが閾値を超過するかどうかを決定する。もし、プロファイルが閾値を越えたなら、患者は、再発する患者として分類され、治療、例えば免疫賦活剤治療を受ける。もし、患者のプロファイルが、閾値を越えないなら、患者は、非再発型の患者として分類される。別の分析ツールは、同様の質問、例えば線形判別分析、ロジスティック回帰、及び神経回路網アプローチに答えるためにも使われうる。
【0031】
多数の周知のパターン認識方法が利用できる。以下の参考資料はいくつかの例を与える。
【0032】
加重投票(Weighted Voting);
Colub, TR., Slonim, DK., Tamaya, P., Huard, C., Gaasenbeek, M., Mesirov, JP., Coller, H., Loh, L., Downing, JR., Caligiuri, MA., Bloomfield, CD., Lander, ES. Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring. Science 286: 531-537, 1999
【0033】
サポート・ベクター・マシーン(Support Vector Machines):
Su, AI., Welsh, JB., Sapinoso, LM., Kern, SG., Dimitrov, P., Lapp, H., Schultz, PG., Powell, SM., Moskaluk, CA., Frierson, HF. Jr., Hampton, GM. Molecular classification of human carcinomas by use of gene expression signatures. Cancer Resarch 61: 7388-93, 2001
【0034】
Ramaswamy, S., Tamayo, P., Rifkin, R., Mukherjee, S., Yeang, CH., Angelo, M., Ladd, C., Reich, M., Latulippe, E., Mesirov, JP., Poggio, Tl., Gerald, W., Loda, M., Lander, ES., Gould, TR. Multiclass cancer diagnosis using tumor gene expression signatures Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 98: 15149-15154, 2001
【0035】
K-近傍法(K-nearest Neighbors):
Ramaswamy, S., Tamayo, P., Rifkin, R., Mukherjee, S., Yeang, CH., Angelo, M., Ladd, C., Reich, M., Latulippe, E., Mesirov, JP., Poggio, T., Gerald, W., Loda, M., Lander, ES., Gould, TR. Multiclass cancer diagnosis using tumor gene expression signatures Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 98: 15149-15154, 2001
【0036】
相関係数:
van't Veer Lj, Dai H, van de Vijver MJ, He YD, Hart AA, Mao M, Peterse HL, van der Kooy K, Marton MJ, Witteveen AT, Schreiber GJ, Kerkhoven RM, Roberts C, Linsley PS, Bernards R, Friend SH. Gene expression profiling predicts clinical oucome of breast cancer. Nature. 2002 Jan 31; 415(6871):530-6
【0037】
本発明の遺伝子発現プロファイルは、ガン診断、予後予測、又は治療のモニターにおいて有用である別の非遺伝子診断方法と組み合わせて使われうる。例えば、ある状況において、遺伝子発現に基づく上記方法の診断力を、慣用のマーカー、例えば血清タンパク質マーカー(例えば、ガン胎児性抗原)からのデータと併用することは有益である。そうしたマーカーの範囲は、CEAのような分析物を含んで存在する。あるそうした方法において、血液は、治療された患者から定期的に取られ、次に上記の血清マーカーの一つに対して酵素免疫アッセイを受けた。マーカーの濃度が、腫瘍の回復又は治療の失敗を提案するとき、遺伝子発現分析に適した分析できる試料の源が採取される。疑わしい塊が存在するところでは、微細針吸引が行われ、この塊から採取された細胞の遺伝子発現プロファイルが、上記のとおりに分析される。代わりに、組織試料は、腫瘍が以前取り除かれた組織に隣接する部位から採取されうる。この試みは、別の試験があいまいな結果をもたらすときに特に有用でありうる。
【0038】
本発明の物品は、治療、診断、予後予測、及びそうでなければ疾患の評価に有用な遺伝子発現プロファイルの表示を含む。これらのプロファイルの表示は、自動的に機械よって読み取ることができる媒体、例えばコンピューターが読み込み可能な媒体(磁気、光学、及びそのようなもの)に変換される。物品は、そうした媒体における遺伝子発現プロファイルを評価する指示も含みうる。例えば、物品は、上記遺伝子のポートフォリオの遺伝子発現プロファイルを比較するコンピューターの指示を有するCD ROMを含みうる。物品は、患者の試料からの遺伝子発現データと比較されるために物品中にデジタルで記録された遺伝子発現プロファイルを有しうる。代わりに、プロファイルは、異なる表示形式で記録されうる。図示の記録は、そうした形式の一つである。クラスタリング・アルゴリズム、例えば、Partek, Inc.のソフトウェア「DISCOVERY」及び「INFER」に援用されるクラスタリング・アルゴリズムは、そうしたデータの視覚化する際に最良の頼りとなりうる。
【0039】
本発明に従った製造物品の異なる型は、媒体又は遺伝子発現プロファイルを明らかにするために使われる形式化されたアッセイである。相補配列又はプローブがマトリックスへと固定化され、関心遺伝子の複合体を指し示して遺伝子の存在を読み込み可能な決定を行うマイクロアレイを含みうる。代わりに、本発明に従った物品は、ハイブリダイゼーション、増幅、及び結腸直腸ガンを検出するための関心遺伝子の発現レベルを指し示すシグナルの生成を行う試薬キットを形成されうる。
【0040】
本発明に従って作られたキットは、遺伝子発現プロファイルを決定するための形式化されたアッセイを含む。これらは、アッセイを行うため必要とされる全ての又はいくらかの材料、例えば試薬及び説明書を含みうる。
【0041】
本発明は、さらに、以下の非限定的な実施例によりさらに説明される。
【実施例1】
【0042】
本発明に従った遺伝子分析は、典型的には、タンパク質又はペプチドの生産をコードする全長核酸配列に関する。当業者は、分析的観点からは、全長配列の同定は必要ないと認識するだろう。つまり、配列又はESTの部分が周知の原理によって選択され、その原理によりプローブは設計され、対応する遺伝子の遺伝子発現を評価できる。
【0043】
実施例1-試料の取り扱い及びLCM
新鮮な凍結組織試料は、結腸直腸ガンの外科手術を受けた患者から集められた。使われた試料は、通常の治療診断及び病態に従いデュークBのステージとされる63人の患者由来であった。患者の治療結果は周知であった。36人の患者は、3年以上疾患を患わないままであり、一方27人の患者は、3年以内に腫瘍の再発を有した。
【0044】
組織を採取後20〜30分のうちに液体窒素中で瞬間凍結し、その後−80℃で貯蔵した。レーザーキャプチャー用に、試料は切断され(6μm)、そして1個の切片はスライドグラス上に載せられ、第2の切片は、スライドグラス(Micro Slides Colorfrost, VWR Scientific, Media, PA)上に固定されたフイルム(P.A.L.M)上に載せられた。スライドグラス上に載せられた切片を冷アセトン中で固定後、マイヤーのヘマトキシリン(Sigma, St. Louis, MO)で染色した。病理学者は、診断及び類別について試料を分析した。治療ステージは、付随して行った外科的病理学及びデュークの分類を検証する治療レポートから評価された。フィルム上に載せられた切片を100%エタノール中で5分間固定後、エオジン/100%エタノール(エオジン100μg/無水エタノール100ml)中で1分間対比染色し、100%エタノール中に一回素早く浸して遊離の色素を取り除き、そして10分間風乾した。
【0045】
LCMで使う前に、膜(LPC-MEMBRANE PEN FOIL 1.35μm No8100, P.A.L.M. GmbH Mikrolaser Technologie, Bernried, Germany)及びスライドは、RNaseを不活化するため、そして組織試料がフィルム上に接着性を高めるために、前処理を行われた。簡潔にいうと、スライドをDEP H2Oで洗い、そしてフィルムをRNase AWAY(Molecular Bioproducts, Inc., San Diego, CA)で洗い、DEP H2Oですすいだ。フィルムをスライドグラスに付着後、スライドを+120℃で8時間焼成し、TI-SAD(Diagnostic Products Corporation, Los Angeles, CA, DEP H2O中で1:50、脱脂綿でろ過後)、そして+37℃で30分間インキュベーションした。使用直前に、10μLの一定量のRNase阻害剤溶液(Rnase阻害剤2500U=33U/μl N211A、Promega GmbH, Mannheim, Germany, 0.5μlを0.15mol NaCl、10mmol Tris pH 8.0, 0.25mmolジチオスレイトールから成る400μlの凍結溶液中に溶解したもの)をフィルム上に広げ、ここに組織試料を載せた。
【0046】
フィルム上の組織切片をLCMに使用した。おおよそ2000個の上皮細胞/試料は、Zeiss Axiovert 135Microscope(Carl Zeiss Jena GmbH, Jena, Germany)につながれるPALM Robot-Microbeam technology(P.A.L.M. Mikrolaser Technologie, Carl Zeiss, Inc., Thornwood, NY)を用いてキャプチャーされた。通常の粘膜における周辺間質、及びガン試料中に介入する間質の構成要素が含まれた。キャプチャーされた細胞は、100%エタノール中のチューブに入れられて、-80℃で保存された。
【0047】
実施例2-RNA抽出と増幅
Zymo-Spin Column(Zymo Research, Orange, CA 92867)を使用してLCMがキャプチャーした試料から全RNAを抽出した。約2ngの全RNAを10μlの水中に懸濁し、そして2回のT7RNAポリメラーゼに基づく増幅を行ない、約50ugの増幅されたRNAを生成した。
【0048】
実施例3-DNAマイクロアレイハイブリダイゼーションと定量
約23,000個のヒトDNAクローンからなるDNAマイクロアレイのセットを使用し、Affymetrix, Incから商業的に利用でき、獲得されるヒトU133aチップの使用により試料を試験した。全RNAを上で要約したように獲得及び調製し、そしてチップに使用し、製品プロトコルに従ってAgilent BioAnalyzerにより分析した。全ての63試料は、品質管理基準を通過し、そしてデータをマーカー選別に使用した。
【0049】
チップの強度データをAffymetrix, Inc.(“MAS 5.0”)から商業的に利用できるMAS Version 5.0ソフトウェアをもちいて分析された。監督なし分析は、再発する患者を再発しない患者とを区別する2つの遺伝子を同定するために使われた。
【0050】
記述されたように獲得されたチップの強度データは、PARTEK version 5.1ソフトウェアとして商業的に利用できる監督なしクラスタリング・ソフトウェアへの入力であった。この監督なしクラスタリング・アルゴリズムは、高頻度の再発を有する(13が再発及び7が生存者)20の患者の群を同定した。元の23,000遺伝子から、t-検定分析は、これらの患者において有意に異なって発現する276の遺伝子を選んだ。この群から、再発しない患者から再発患者を最もよく区別される2つの遺伝子が選ばれた:ヒト腸ペプチド関連トランスポーター(配列番号3)及びホモサピエンス脂肪酸結合タンパク質1(配列番号1)である。これらの二つの遺伝子は、この患者の群からの再発患者において、発現減少(実際は、遮断されるか、発現していない)される。
【0051】
監督付き分析は、次に残りの43人の患者において、再発する患者を再発しない患者からさらに区別するために行われた。この群の患者データは、以下の群へと分けられた:27人の患者は、訓練セットとして、そして16人の患者は試験セットとして割り当てられた。このことは、同じデータが、マーカーを同定するため及びその有用性を確認するために使われないことを保証する。
【0052】
不等分散t-検定は、訓練セット上で行われた。有意に補正されたp値を有する28遺伝子のリストから、MHC II-DR-Bが選ばれた。これらの遺伝子は、再発患者において発現減少される。MHC II-DR-B(配列番号2)は、最も小さいp値を持った。
【0053】
付加的な一回の監督付き分析において、線形判別分析の可変性の選択手順は、訓練セットにおいて生存者から再発患者を分けるために、Partek Version 5.0ソフトウェアを用いて実行された。検索方法は、前方選択であった。最も低い事後誤差で選ばれる可変性は、免疫グロブリン様転写物5タンパク質(配列番号4)であった。コックス比例ハザードモデル(Inssightful,Inc.からの「S Plus」ソフトウェアが使われる)は、遺伝子選別に使用されて、上で同定された生存時間に対する遺伝子選別を確かめた。全27サイクルの各サイクルにおいて、訓練セットにおける27人の患者の各々が提供され、残りの26人の患者は、一変量のコックス・モデル回帰において使われて、遺伝子発現と患者の生存時間との関連の強さを評価した。そうした相関の強さは、対応する評価された標準化パラメーター評価及びコックス・モデル回帰から得られたp値により評価された。0.01のp値は、一点除外(Leave-one-out)遺伝子選別の各サイクルからトップの遺伝子を選ぶための閾値として使用された。各サイクルから選ばれるトップ遺伝子は、27回の一点除外(Leave-one-out)遺伝子選別サイクルの全部において、少なくとも26回現れるそうした遺伝子を選別するために比較される。全ての70遺伝子が選ばれ、MHC II-DR-B及び免疫グロブリン様転写物5タンパク質は、その中に存在した(再び発現減少が示される)。
【0054】
多遺伝子予測指数の作成
二つの遺伝子、MHC II-DR-B及び免疫グロブリン様転写物5タンパク質は、線形判別分析を用いて、予測指数を作るために使われた。投票スコアは、後の再発可能性として定義された。もし、患者スコアが0.5より大きかったなら、患者は生存者として分類された。予測指数は、訓練セット上で試験された。
【0055】
予測指数の相互検証と評価
予測指数の性能は、独立のデータセットを基に判定するべきである。というのは、多くの分類方法は、その確立において使われる例の上でうまく働くからである。16人の患者試験セットは、予測の正確性を評価するために使われた。分類の区分は、ROCカーブをもちいて決定された。選ばれた区分を伴い、試験セットにおける再発及び生存患者の正しい予想の数が決定された。
【0056】
全体の予測
63人のデュークB大腸ガン患者の遺伝子発現プロファイリングは、これらの患者において発現差(発現減少又は遮断)を有する4の遺伝子の同定された。これらの遺伝子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4である。36人の患者は、3年以上疾患を患わないままであったが、一方27人の患者は、3年内に腫瘍再発を患った。配列番号2、配列番号3、及び配列番号4の3つの遺伝子マーカー・ポートフォリオを用いて、27人の再発患者のうち22人、及び36人の疾患を患わない患者のうち27人は、正しく同定される。この結果は82%の感受性,及び75%の特異性を示す。陽性予想値は71%であり、陰性予測値は84%である。
【0057】
実施例4:更なるサンプリング
74人のコード化されたB大腸ガン患者からの凍結腫瘍試料が研究された。主な腫瘍及び隣接する非腫瘍性大腸組織は、外科手術のときに採取された。各試料の組織病理学は、診断及び腫瘍を一様に含むかを確定するために再調査された。分析のために選ばれた場所は、混合されていない組織学を有する50%を超える腫瘍細胞割合を含んだ。統一追跡情報は、利用できた。
【0058】
実施例5:遺伝子発現分析
全RNAは、実施例1〜3に記載される方法に従って実施例4の試料から抽出された。アレイは、基本のアフィメトリックス・プロトコル及びスキャナーを用いて調べられた。続く分析では、各プローブセットは、分離遺伝子として考慮された。各遺伝子の発現値は、アフィメトリックスGeneCHip分析ソフトウェアMAS5.0をもちいて計算された。後の分析のために使われたすべてのデータは、品質管理基準を通過した。
【0059】
統計的手法
遺伝子発現データは、全ての試料において「存在しない」と呼ばれる遺伝子を除く変異フィルターを受けた。考慮される22,000の遺伝子のうち17,616が、このフィルターを通過し、そしてクラスタリングに使われた。階層的なクラスタリングに先立って、各遺伝子は、患者における発現レベルの中央値によって分けられた。少なくとも10%の患者において平均発現レベルに対し4倍以上の変化を示す遺伝子は、クラスタリングに含められた。異なる遺伝子プロファイルを有する患者のサブグループを同定するために、GeneSpring5.0(San Jose, CA)及びPartek 5.1ソフトウェア(St. Louis, MO)をそれぞれ用いることによって、平均結合階層クラスタリング及びK-平均値クラスタリングは行われた。ボンフェローニ補正を伴うt-検定は、遺伝子を同定するために使われ、クラスタリング結果によって示唆される2人の患者のサブグループ間における異なる発現レベルを有する遺伝子を同定するために使われた。0.01のボンフェローニの補正されたP値は、遺伝子選別の閾値として選ばれた。区別された発現プロファイルを有するそれぞれのクラスター内の患者は、さらに結果の情報に関してさらに試験された。
【0060】
再発及び疾患を患わない患者を区別できる遺伝子マーカーを同定するために、患者の各サブグループは、以下においてさらに記述されるように別々に分析された。全ての統計的分析は、S-Plusソフトウェア(Insightful, VA)を用いて使われた。
【0061】
患者及び腫瘍の性質
患者及びその腫瘍の治療上の及び病態学上の特徴は、表1において要約される。患者は、年齢、性別、TNMステージ、段階、腫瘍の大きさ、及び腫瘍の位置に関する情報を有した。74人の患者のうち73人は、検査されたリンパ節の数に関するデータを有し、74人の患者のうち72人は、推定の腫瘍サイズ評価された情報を有した。患者及び腫瘍の性質は、再発した患者と再発しない患者との間で有意に異ならなかった。患者は、手術前の治療を受けなかった。最小限3年の追跡データは、本研究における全ての患者で利用できた。
【0062】
遺伝子プロファイルによって同定される患者のサブグループ
監督なし階層クラスタリング分析は、17000個の意味ある遺伝子に渡って計測された遺伝子発現プロファイルの類似性に基く74人の患者のクラスターをもたらす。その間で異なって発現される(P<0.00001)600を超える遺伝子を有する患者の二つのサブグループが同定された。大きいサブグループ及び小さいサブグループは、54人及び20人の患者をそれぞれ含んだ。54人の患者の大きいサブグループにおいて、18人の患者(33%)だけが、3年以内に腫瘍の再発を発症し、一方20人の患者の小さいサブグループにおいては、13人の患者(65%)が、進行性の疾患を有した。カイ2乗分析は、0.028のp値を与えた。
【0063】
二つの腫瘍型との間で劇的に異なった発現を有する2つの優勢な遺伝子クラスターは、選ばれそして試験された。最初の遺伝子クラスターは、20人の患者の小さいサブグループにおける発現減少した遺伝子の群を有し、肝臓-腸特異的カドヘリン17、脂肪酸結合タンパク質1、末端型ホメオボックス転写因子CDX1及びCDX2、ムチン及びカドヘリン様タンパク質MUCDHLに代表される。第二の遺伝子クラスターは、血清-誘導性キナーゼSNK、アネキシンA1、B細胞RAG関連タンパク質、カルビンジン2、及び腫瘍抗原L6を含む小さいサブグループにおいて発現上昇された遺伝子の群によって表される。20人の患者の小さいサブグループは、その遺伝子プロファイルに基づいた分化していない腫瘍を示す。
【0064】
遺伝子特性と予測値
再発及び疾患-を患わない患者を区別できる遺伝子マーカーを同定するために、患者の各サブグループは、別々に分析された。各サブグループ内の患者は、大体同じ数でまず治療セットと試験セットへと分けられた。訓練セットは、遺伝子マーカーを選択し、そして予後予測の特性を確立するために使われた。試験セットは、独立確証として使われた。54人の腫瘍の多いサブグループにおいて、36人の患者が、最初の診断後少なくとも3年間疾患を患わないままであり、18人の患者は、3年以内に腫瘍の再発を発生した。54人の患者は、2つの群に分けられた。訓練セットは、21人の疾患を患わない患者及び6人の再発患者を含んだ。20腫瘍の小さいサブグループにおいては、7人の患者が、少なくとも3年間疾患を患わず、そして13人の患者が3年以内に腫瘍の再発を発生した。20人の患者は、2つの群に分けられた。訓練セットは、4人の疾患を患わない患者と7人の再発患者を含んだ。良性の予後予測の群を悪性の予後予測の群から区別する遺伝子特性を同定するために、監督付き分類方法が各訓練セットに関して使われた。一変量性コックス比例ハザード回帰は、その発現レベルが患者の生存期間に相関する遺伝子を同定するために使われた。遺伝子は、0.02未満のp値を、分類の判定基準として使って選ばれた。次に、t検定は、選ばれた遺伝子上で行われて、再発及び疾患を患わない患者(P<0.01)との発現の有意差を決定した。試験セットに過度に適合する遺伝子の選択を避けるため、100回の再サンプリングは、80%以上の再サンプリング試験における有意なp値を有する遺伝子を検索するため、t検定に関して行われた。7の遺伝子(表2)は、27人の患者の訓練セットから選ばれ、そして15の遺伝子(表3)が11人の患者の訓練セットから選ばれた。22の遺伝子をカドヘリン17と一緒にする事で、患者の再発を予測するコックスモデルは、S‐Plusソフトウェアを用いて確立された。カプラン-マイヤーの生存分析は、良性の予後予測と予想される群と悪性の予後予測と予想される群との間で、患者が疾患を患わないままでいる可能性における明白な差を示した(図3)。
【0065】
各遺伝子は、細胞増殖又は腫瘍の進行に関する。例えば、チロシン3モノオキシゲナーゼ・トリプトファン5-モノオキシゲナーゼ活性タンパク質(YWHAH)は、ヒト細胞においてDNA損傷に応答してG2細胞周期の制御に責任があるタンパク質の14-3-3ファミリーに属する。RCC1は、別の細胞周期遺伝子であり、染色体凝集の開始の制御に関与する。BTEB2は、ジンクフィンガー転写因子であり、β-カテニン独立のWnt-1応答遺伝子として関連付けられてきている。少しの遺伝子は局所的免疫応答に関わっているようである。免疫グロブリン-様転写産物5たんぱく質は、MHC I分子の共通の阻害性受容体である。タンパク質をキャッピングするゲルソリン/ビリンファミリーの独特のメンバー、つまりCAPGは、主にマクロファージにおいて発現される。LATは、T細胞受容体を細胞活性と結びつけるチロシンが高度にリン酸化されたタンパク質である。このように、両方の腫瘍細胞-及び免疫細胞-発現性遺伝子は、患者の再発に対する予後予測因子として使われうる。
【0066】
23の遺伝子の予後予測特性を確証するために、大きいサブグループから27人の患者及び小さいサブグループから9人の患者を含む二つの試験セットにおいて患者は混ぜられ、そして結果は、試験セットにおける36人の独立した患者に対して予測された。試験セットは、3年以内に腫瘍の再発を発達させる18人の患者及び、3年以上疾患を患わないままでいる18人の患者から成った。予測は、13人の補正された再発分類及び15の疾患を患わない補正された分類をもたらした。全体の性能の正確さは78%(36人中28人)であり、72%の感受性(18人中13人)及び83%の特異性(18人中15人)を有した。この性能は、予後予測特性の閾値未満の数値を有するデュークB患者が、予後予測特性の閾値以上の数値を有する患者と比較して、3年以内に13倍の割合で(95% CI:2.6,65;p=0.003)腫瘍の再発を発症するということを示す。さらに、カプラン-マイヤーの生存分析は、良性の予後予測で予想される群と悪性の予後予測で予想される群との間で患者が疾患を患わないままでいる可能性における有意差を示した(P<0.0001)。多変量コックス比例ハザード回帰において、腫瘍再発の評価されたハザード割合は、0.41であり(95%信頼区間、0.24〜0.71;P=0.001)、23遺伝子セットは、予後予測特性を示し、そして逆に、腫瘍再発の高い危険性と関連する。7の遺伝子ポートフォリオ(表2)を用いるとき、83%の感受性と80%の特異性が(12の再発及び15の生存試料セットに基づき)獲得される。15の遺伝子ポートフォリオ(表3)を用いるとき、50%の感受性と100%の特異性が(6の再発及び3の生存試料セットに基づき、)獲得される。図1及び図2は、7と15の遺伝子ポートフォリオに対するカプラン−メイヤー分析を図示したものである。
【0067】
さらに、これらの結果が指し示すとき、よそくは、初期腫瘍の遺伝子発現プロファイルから由来されうる。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、7遺伝子ポートフォリオの分析のための実施例において記述される、27人の患者(14人が生存患者、13人が再発患者)の独立した患者データセットから構成される基本的なカプラン-マイヤープロットである。チップデータから予想されるとき、患者の二つのクラスが示唆される。垂直方向の軸は、各クラス内の患者の間で疾患を患わない生存の可能性を示す。
【0069】
【図2】図2は、15の遺伝子ポートフォリオ分析のための実施例において記述されるように9人の患者(6人が生存患者、3人が再発患者)の独立した患者データセットから構成される基本的なカプラン-マイヤープロットである。チップデータから予想されるとき、患者の二つのクラスが示唆される。垂直方向の軸は、各クラス内の患者の間で疾患を患わない生存の可能性を示す。
【0070】
【図3】図3は、実施例において記述されかつカドヘリン17(配列番号6)をポートフォリオに含む22遺伝子プロファイルを用いるとき患者データから構成される基本的なカプラン-マイヤープロットである。36の試料がテストされた(20人が生存患者、16人が再発患者)。患者の二つのクラスが、23の遺伝子のチップデータにより予想されるとき、示される。垂直方向の軸は、各クラス内の患者の間で疾患を患わない生存の可能性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7〜13からなる群から選ばれる遺伝子の組み合わせにおける調節の差を同定することを含む、結腸直腸ガンの状態の評価方法。
【請求項2】
前記遺伝子の発現パターンが、再発患者を指し示す発現パターンと比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発現パターンの比較が、パターン認識法で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パターンの認識法が、コックス比例ハザード分析の使用を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
初期の腫瘍試料上で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組み合わせが、配列番号7〜13に対応する遺伝子の全てを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
配列番号14〜28からなる群から選ばれる遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組み合わせが、配列番号14〜28に対応する遺伝子の全てを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
配列番号14〜28を含む遺伝子の組み合わせをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
調節された遺伝子の発現において少なくとも2倍の差がある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記調節の差を示すp値が、0.05未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
遺伝子に基づかない結腸直腸診断をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
配列番号6を含む遺伝子と配列番号7〜13からなる群から選ばれる遺伝子との組み合わせの単離された核酸配列、その相補配列、又はその部分を含む、予後予測のポートフォリオ。
【請求項14】
前記組み合わせが、配列番号14〜28に対応する遺伝子の全てを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配列番号14〜28からなる群から選ばれる遺伝子をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記組み合わせが、請求項15に記載の遺伝子の全てを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
マトリックス中に含まれる遺伝子の発現差を同定するために適切であるマトリックスにおける、請求項13に記載のポートフォリオ。
【請求項18】
前記マトリックスが、マイクロアレイにおいて使用される、請求項17に記載のポートフォリオ。
【請求項19】
前記マイクロアレイが、cDNAマイクロアレイである、請求項18に記載のポートフォリオ。
【請求項20】
前記マイクロアレイが、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイである、請求項18に記載のポートフォリオ。
【請求項21】
配列番号6を含む遺伝子と配列番号7〜13からなる群から選ばれる遺伝子との組み合わせの単離された核酸配列、その相補配列、又はその一部を検出する器具を含む、結腸直腸ガン患者の予後予測を決定するキット。
【請求項22】
前記遺伝子が、配列番号7〜13に対応する遺伝子の全てである、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
配列番号14〜28からなる群から選ればれる遺伝子をさらに含む、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記遺伝子が、配列番号14〜28に対応する遺伝子の全てである、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
マイクロアレイ分析を行うための試薬をさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項26】
前記核酸配列、その相補配列、又はその部分がアッセイされる媒体をさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項27】
配列番号6を含む遺伝子と配列番号7〜13からなる群から選ばれる遺伝子との組み合わせの核酸配列、その相補配列、又はその一部を同定する器具を含む、結腸直腸ガンの状態を評価するための物品。
【請求項28】
前記遺伝子が、配列番号7〜13に対応する遺伝子の全てである、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
配列番号14〜28からなる群から選ばれる遺伝子をさらに含む、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
前記遺伝子が、配列番号14〜28に対応する遺伝子の全てである、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
配列番号7〜13の発現を検出するための試薬を含む、結腸直腸ガンを評価するためのキット。
【請求項32】
配列番号14〜28の発現を検出するための試薬をさらに含む、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
配列番号7〜28を有する遺伝子の発現に基づいて、患者を再発の危険性が高いかまたはそうでないか特徴づけ、そしてもし患者が危険性の高い患者なら、免疫賦活剤治療で患者を治療することを含む、結腸直腸ガン患者の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−101701(P2006−101701A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2004−248898(P2004−248898)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(504129755)ベリデックス リミティド ライアビリティー カンパニー (2)
【Fターム(参考)】