説明

結腸直腸癌の予後のための遺伝子発現マーカー

【課題】 その発現レベルが結腸直腸癌の転帰を予測するのに役立つ遺伝子および遺伝子セットを提供する。
【解決手段】 結腸直腸癌と診断された被験体から得られた癌細胞の生物学的試料において1つ以上の予測的RNA転写産物が発現している証拠、またはそれらの発現産物が存在する証拠を判断することを含む、該被験体における臨床転帰を予測する方法。一実施形態において、この方法は、結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測するためのものであり、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、本明細書に記載の表1A〜B、2A〜B、3A〜B、4A〜B、5A〜B、6、および/または7に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法119(e)の下、2006年1月11日に出願された仮特許出願第60/758,392号、2006年5月12日に出願された仮特許出願第60/758,392号、および2006年5月31日に出願された仮特許出願第60/810,077号への優先権を主張する、米国特許法施行規則1.53(b)の下で出願された非仮特許出願である。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、その発現レベルが結腸直腸癌の転帰を予測するのに役立つ遺伝子および遺伝子セットを提供する。
【背景技術】
【0003】
(関連する技術の記載)
結腸直腸癌は、米国および欧州連合における癌による死亡の第2位の原因であり、すべての癌関連死の10%を占めている。結腸癌および直腸癌は、分子レベルでは同一疾患または類似疾患を示すのかもしれないが、直腸癌の手術は、解剖学的な問題によって困難である。おそらくこの理由で、直腸癌の局所再発率は、結腸癌よりも有意に高く、そのため、治療法が顕著に異なる。米国では、毎年約100,000件の結腸癌が新たに診断されており、それらの約65%が、以下で検討するような第II/III病期の結腸直腸癌であると診断されている。
【0004】
結腸直腸癌の診断を精緻化するには、標準的な分類基準を用いて、癌の進行状態を評価する必要がある。結腸直腸癌では、Duke’sまたはAstler−Collerの病期分類システム(病期A〜D)(非特許文献1)、および最近になって対癌米国合同委員会(the American Joint Committee on Cancer)によって開発されたTNM病期法(病期I〜IV)(非特許文献2)という2つの分類システムが広く用いられてきた。どちらのシステムも、原発腫瘍が結腸壁または直腸壁の層を通って、隣接する器官、リンパ節、および遠位部位に転移したのを測定した結果を利用して腫瘍の進行を評価する。結腸癌における再発リスクの推定値および治療法の決定は、現在のところ、主として腫瘍の病期に基づいている。
【0005】
米国では、新たに第II病期の結腸直腸癌であると診断される例が、毎年約33,000件ある。これらの患者のほぼすべてが、腫瘍の外科的切除による治療を受け、さらに、約40%が、現在、5−フルオロウラシル(5−FU)による化学療法で治療されている。アジュバント化学療法を施すか否かの決定は単純には行かない。手術だけの治療を受けた第II病期の結腸癌患者の5年生存率は約80%である。5−FU+ロイコボリン(フォリン酸)による標準的なアジュバント療法は、この集団において僅か2〜4%が絶対的利益を示すにすぎず、また、化学療法による中毒死の率が1%もの高さであるなど、顕著な毒性を示している。このように、多くの患者が、少しの利益しか得られない有毒な療法を受けていることになる。
【0006】
第II病期の結腸直腸癌患者の手術後の予後を知ることができる検査法は、このような患者に対する治療法の決定を導き出すのに大いに役立つであろう。
第III病期の結腸直腸癌における化学療法の利益は、第II病期におけるよりは明らかである。第III病期の結腸癌であると診断される毎年の患者31,000人の大部分が5−FUによるアジュバント化学療法を受けるが、この場合における5−FU+ロイコボリンの絶対的利益は、用いられる具体的な治療計画にもよるが、およそ18〜24%である。第III病期の結腸癌患者に対する現在の標準治療である化学療法(5−FU+ロイコボリンまたは5−FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)は適度に有効であり、5年生存率を約50%(外科手術単独)から約65%(5−FU+ロイコボリン)または70%(5−FU+ロイコボリン+オキサリプラチン)に向上させることができる。5−FU+ロイコボリン単独、またはオキサリプラチンとの併用による治療は、治療を受けた患者のおよそ1%が中毒死するなど、さまざまな有害な副作用を伴う。さらに、手術のみによる治療を受けた第III病期結腸癌患者の3年生存率は約47%であるが、第III病期の患者の一部に、第II病期の患者に見られる再発リスクに類似した再発リスクが存在するのか否かはまだ確認されていない。
【0007】
腫瘍の病期だけによるのではなく、分子マーカーに基づいて再発リスクを定量できる検査法は、容認できる転帰をもたらすのにアジュバント療法を必要としない一部の第III病期の患者を同定するのに役立つであろう。
【0008】
直腸腫瘍の病期判定は、例えば、流入領域リンパ節の配置が異なることなどによって、いくつかの相違点はあるものの、結腸腫瘍の病期判定と同様の基準に基づいて行われる。その結果、第II/III病期の直腸腫瘍は、それらの進行状態に関して、相応の相関関係をもつ。上記したとおり、局所再発率、およびその他の予後状況は、直腸癌と結腸癌で異なるが、これらの相異は、直腸腫瘍の全切除を行うことが困難であることに起因しているのかもしれない。それにもかかわらず、直腸癌と結腸癌の間には、それぞれの腫瘍の分子的な特徴について違いがあるとの有力な証拠はない。直腸癌の予後検査には、本質的に、結腸癌の予後検査について述べたのと同様の実用性があり、同一の予後マーカーをどちらの癌型にも十分に適用することができるかもしれない。
【0009】
また、結腸癌を治療するためにより安全で有効な薬剤が明らかに必要である。結腸癌に対する現在の化学療法は、分裂する細胞の増殖を一般的に妨害する薬剤を投与するという、比較的大雑把な方法によるものである。最近の臨床実験では、具体的な癌のタイプやサブタイプを詳細に分子的に把握して、より優れた薬剤を開発するということが実現可能になっていることが実証されている。例えば、HER2(ERBB2)遺伝子を増幅し、HER2タンパク質を、乳癌のサブセット中で過剰発現させ、HER2を標的するために開発された薬剤であるHERCEPTIN(登録商標)(Genentech,Inc.)を、HER2が正常なコピー数よりも多いことが蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法(FISH)によって示されたか、または免疫組織化学法によって高レベルのHER2発現が示された患者だけに使用する。その発現がヒトの癌患者の臨床転帰に関連する遺伝子は、薬剤化合物のスクリーニング、さらには創薬活動にとっての標的を選択するための貴重な資源である。
【0010】
HERCEPTIN(登録商標)(Genentech,Inc.)などの分子標的薬は、その薬剤による恩恵にあずかる可能性のある患者を識別することができる診断検査法と一緒に開発および商業化することができるが、このような検査法の一態様は、手術以外の治療をしなくとも良好な転帰を示す可能性のある患者を同定する方法である。例えば、第II病期の結腸癌患者の80%は、手術を受けるだけで5年間以上生存する。さらなる治療を受けなければ癌を再発する20%の患者に含まれる可能性の方が高い患者を同定する遺伝子マーカーが、薬剤開発、例えば、臨床試験に組み込む患者をスクリーニングするときに役立つ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Astler VB,Coller FA.,Ann Surg 1954;139:846−52
【非特許文献2】AJCC Cancer Staging Manual, 6th Edition,Springer−Verlag,New York,2002
【発明の概要】
【0012】
(発明の要旨)
一つの態様において、本発明は、結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A〜B、2A〜B、3A〜B、4A〜B、5A〜B、6、および/または7に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表1A、2A、3A、4A、および/または5Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)表1B、2B、3B、4B、および/または5Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法に関する。有望な臨床転帰の可能性が低いことが予測されれば、その患者は、該外科手術による切除後、さらなる治療を受けると考えられる。さらに、その治療法は化学療法および/または放射線療法であると考えられる。
【0013】
本発明の方法の臨床転帰は、例えば、無再発期間(Recurrence−Free Interval)(RFI)、全生存期間(Overall Survival)(OS)、無病生存期間(Disease−Free Survival)(DFS)、または無遠隔転移生存期間(Distant Recurrence−Free Interval)(DRFI)によって表すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】単変量Cox比例ハザードモデル解析において、無再発期間と統計的に有意に関係していた142の遺伝子(表1.2Aおよび1.2B)の発現クラスター化を表すデンドログラムを示している。このクラスター解析では、非加重群平均融合法(unweighted pair−group average amalgamation method)、および距離測度として1−ピアソンrを用いた。対象とするクラスターにおける具体的な遺伝子の一致率がx軸に沿って示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一つの実施態様において、この癌は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌である。
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無再発期間(RFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A、5A、1B、および/または5Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表1Aまたは5Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記RFIがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表1Bまたは5Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記RFIがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0016】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における全生存期間(OS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表2Aおよび/または2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記OSがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記OSがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0017】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無病生存期間(DFS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表3Aおよび/または3Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表3Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DFSがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表3Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DFSがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0018】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無遠隔転移生存期間(DRFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表4Aおよび/または4Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表4Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DRFIがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表4Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DRFIがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0019】
別の態様において、本発明は、結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1.2A〜B、2.2A〜B、3.2A〜B、4.2A〜B、5.2A〜B、6.2および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む方法において、(a)表1.2A、2.2A、3.2A、4.2A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)表1.2B、2.2B、3.2B、4.2B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法に関する。
【0020】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無再発期間(RFI)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1.2A、1.2B、5.2A、および/または5.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表1.2Aまたは5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記RFIがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表1.2Bまたは5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記RFIがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0021】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における全生存期間(OS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表2.2Aおよび/または2.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表2.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記OSがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表2.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記OSがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0022】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無病生存期間(DFS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表3.2Aおよび/または3.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表3.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DFSがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表3.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DFSがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0023】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無遠隔転移生存期間(DRFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表4.2Aおよび/または4.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表4.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DRFIがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表4.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DRFIがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0024】
別の態様において、本発明は、結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A〜B、1.2A〜B、2A〜B、2.2A〜B、3A〜B、3.2A〜B、4A〜B、4.2A〜B、5A〜B、5.2A〜B、6、6.2、7および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む方法において、(a)表1A、1.2A、2A、2.2A、3A、3.2A、4A、4.2A、5A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)表1B、1.2B、2B、2.2B、3B、3.2B、4B、4.2B、5B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法に関する。
【0025】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無再発期間(RFI)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A、1.2A、1B、1.2B、5A、5.2A、5B、および/または5.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表1A、1.2A、5A、または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記RFIがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表1B、1.2B、5B、または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記RFIがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0026】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における全生存期間(OS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表2A、2.2A、2B、および/または2.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表2Aおよび/または2.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記OSがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表2Bおよび/または2.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記OSがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0027】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無病生存期間(DFS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表3A、3.2A、3B、および/または3.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表3Aおよび/または3.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DFSがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表3Bおよび/または3.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DFSがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0028】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無遠隔転移生存期間(DRFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表4A、4.2A、4B、および/または4.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)表4Aおよび/または4.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DRFIがより短いと予測されることを示し、かつ、(b)表4Bおよび/または4.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、前記DRFIがより長いと予測されることを示す方法に関する。
【0029】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、WIF、CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法に関する。
【0030】
別の態様において、本発明は、デュークスC(第III病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、SIR2、ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含む方法において、(a)CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、およびSIR2からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法に関する。
【0031】
本発明の方法のすべて態様で、1つ以上の遺伝子の発現レベルの測定は、例えば、遺伝子発現プロファイリングの方法によって得ることができる。遺伝子発現プロファイリングの方法は、例えば、PCRを利用した方法であってもよい。
【0032】
本発明の方法のすべての態様で、遺伝子の発現レベルを、1つ以上の参照遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルに対して正規化することができる。
【0033】
本発明のすべての態様で、被験体は、好ましくはヒト患者である。
【0034】
本発明のすべての態様で、本方法は、少なくとも2つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することをさらに含むことができる。さらに、本発明の方法は、少なくとも3つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することをさらに含むことができると考えられる。また、本発明の方法は、少なくとも4つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することをさらに含むことができると考えられる。また、本発明の方法は、少なくとも5つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することをさらに含むことができると考えられる。
【0035】
本発明のすべての態様で、本方法は、さらに、前記予測をまとめた報告を作成する工程を含むことができる。
【0036】
本発明のすべての態様で、1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物のレベルが1増分増加する毎に、その患者は、臨床転帰を1増分増加させていることが同定されると考えられる。
【0037】
本発明のすべての態様で、発現レベルの測定は1回以上行うことができる。本発明のすべての態様で、発現レベルの測定を、患者が、外科的切除後に何らかの治療を受ける前に行うことができる。
【0038】
異なった態様において、本発明は、結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を含む報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、表1A〜B、2A〜B、3A〜B、4A〜B、5A〜B、6、および/または7に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含む報告において、(a)表1A、2A、3A、4A、および/または5Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)表1B、2B、3B、4B、および/または5Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告に係る。本発明の報告の臨床転帰は、例えば、無再発期間(RFI)、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、または無遠隔転移生存期間(DRFI)によって表すことができる。一つの実施態様において、癌は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌である。臨床転帰の予測は、被験体に対して、特定の臨床転帰の可能性を推定することを含むことができ、あるいは、この推定に基づいて、被験体をリスクグループに分類することを含むことができる。
【0039】
別の態様において、本発明は、結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、表1.2A〜B、2.2A〜B、3.2A〜B、4.2A〜B、5.2A〜B、6.2および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含む報告において、(a)表1.2A、2.2A、3.2A、4.2A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)表1.2B、2.2B、3.2B、4.2B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告に係る。本発明の報告の臨床転帰は、例えば、無再発期間(RFI)、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、または無遠隔転移生存期間(DRFI)によって表すことができる。一つの実施態様において、癌は、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌である。臨床転帰の予測は、被験体に対して、特定の臨床転帰の可能性を推定することを含むことができ、あるいは、この推定に基づいて、被験体をリスクグループに分類することを含むことができる。
【0040】
別の態様において、本発明は、結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、表1A〜B、1.2A〜B、2A〜B、2.2A〜B、3A〜B、3.2A〜B、4A〜B、4.2A〜B、5A〜B、5.2A〜B、6、6.2、7および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含む報告において、(a)表1A、1.2A、2A、2.2A、3A、3.2A、4A、4.2A、5A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)表1B、1.2B、2B、2.2B、3B、3.2B、4B、4.2B、5B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告に係る。臨床転帰の予測は、被験体に対して、特定の臨床転帰の可能性を推定することを含むことができ、あるいは、この推定に基づいて、被験体をリスクグループに分類することを含むことができる。
【0041】
別の態様において、本発明は、デュークスB(第II病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、WIF、CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含む報告において、(a)ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告に係る。臨床転帰の予測は、被験体に対して、特定の臨床転帰の可能性を推定することを含むことができ、あるいは、この推定に基づいて、被験体をリスクグループに分類することを含むことができる。
【0042】
別の態様において、本発明は、デュークスC(第III病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、SIR2、ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含む報告において、(a)CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、およびSIR2からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、(b)ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告に係る。臨床転帰の予測は、被験体に対して、特定の臨床転帰の可能性を推定することを含むことができ、あるいは、この推定に基づいて、被験体をリスクグループに分類することを含むことができる。
【0043】
異なった態様において、本発明は、本発明の方法を行うのに適した(1)抽出用バッファー/試薬およびプロトコル;(2)逆転写用バッファー/試薬およびプロトコル;ならびに(3)qPCR用バッファー/試薬およびプロトコルを含むキットに関する。本キットは、データを検索および解析するためのソフトウェアを含むことも可能である。
【0044】
(好ましい実施形態の詳細な記載)
A.定義
別段の記載がない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994)、およびMarch、Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 4th ed.,John Wiley & Sons(New York,NY 1992)が、当業者にとって、本出願において用いられている用語のうちの数多くのものの一般的な手引きとなる。
【0045】
当業者は、本発明を実施するに際して使用できるであろう、本明細書記載の方法および材料に類似または同等の数多くの方法および材料を認識することができる。実際、本発明は記載された方法および物質に限定されるものではない。本発明において、以下の用語は、下記に定義するとおりである。
【0046】
本明細書において「腫瘍」という用語は、悪性良性にかかわらず、すべての腫瘍細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織を意味する。
【0047】
「癌」および「癌性」という用語は、一般的には無秩序な細胞増殖を特徴とする、哺乳類における生理学的状態を意味するか、または説明する。癌の例には、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、肝臓癌、膀胱癌、尿道癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、および脳腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
癌の「病理」は、患者の健康な状態を含むすべての現象を含む。これは、異常または無制御な細胞増殖、転移、周辺細胞の正常な機能の阻害、異常な量のサイトカインまたはその他の分泌産物の放出、炎症反応または免疫反応の抑制または悪化、腫瘍、前悪性腫瘍、悪性腫瘍、周辺または遠位の組織または器官、例えばリンパ節などの浸潤などを含むが、これらに限定されない。
【0049】
「結腸直腸癌」という用語は最も広義に用いられ、(1)大腸および/または直腸の上皮細胞から生じるあらゆる病期およびあらゆる形態の癌、および/または(2)大腸および/または直腸の上皮を侵すあらゆる病期およびあらゆる形態の癌を意味する。結腸直腸癌を分類するために用いられる病期分類システムにおいて、結腸および直腸は一つの器官として扱われる。
【0050】
対癌米国合同委員会(AJCC)の腫瘍、リンパ節、転移(TNM)の病期分類システム(Greeneら、(eds.),AJCC Cancer Staging Manual.6th Ed.New York,NY:Springer;2002)によれば、結腸直腸癌のさまざまな病期は以下のように定義されている。
【0051】
腫瘍:T1:腫瘍が粘膜下を侵す;T2:腫瘍が固有筋層を侵す;T3:主要が固有筋層を通って髄膜下、または結腸周囲組織もしくは直腸周囲組織に侵入する;T4:腫瘍が他の器官または構造物を直接侵し、および/または穿孔する。
【0052】
リンパ節:N0:局所リンパ節転移なし;N1:1〜3箇所の局所リンパ節における転移;N23:4箇所以上の局所リンパ節における転移。
【0053】
転移:M0:mp遠位転移;M1:遠位転移あり。
【0054】
病期のグループ分け:第I病期:T1 N0 M0;T2 N0 M0;第II病期:T3 N0 M0;T4 N0 M0;第III病期:任意のT、N1〜2;M0;第IV病期:任意のT、任意のN、M1.
修正デューク病期分類法(Modified Duke Staging System)に従って、結腸直腸癌のさまざまな病期を以下のように定義する。
【0055】
病期A:腫瘍が腸壁の粘膜に侵入しているが、それ以上は侵入していない;病期B:腫瘍が腸壁の固有筋層に侵入し、それを突き抜けている;病期C:腫瘍が腸壁の固有筋層に侵入しているが、それを突き抜けてはおらず、リンパ節に結腸直腸癌の病理学的証拠が存在する;あるいは腫瘍が腸壁の固有筋層に侵入し、それを突き抜けており、リンパ節に癌の病理学的証拠が存在する;病期D:腫瘍がリンパ節の境界を越えて、他の器官、例えば、肝臓、肺または骨などに広がっている。
【0056】
予後因子とは結腸直腸癌の自然経過に関する変数のことであり、これらは、いったん結腸直腸癌を発症した患者の再発率および転帰に影響を及ぼす。予後の悪化に関連した臨床的指標には、例えば、リンパ節転移、および高悪性度の腫瘍が含まれる。予後因子は、しばしば、患者を異なった基礎的再発リスクをもつサブグループに分類するために用いられる。
【0057】
本明細書において「予後」という用語は、結腸癌などの腫瘍性疾患の再発、転移拡散、および薬剤耐性など、癌に起因する死亡または進行が起こる可能性を予測することを意味する。
【0058】
本明細書において「予測」という用語は、原発腫瘍の摘出後に、患者が、良不良を問わず特定の臨床転帰を持つ可能性を意味する。本発明の予測法を臨床的に用いて、特定の患者にとって最適な治療法を選択することによって治療法を決定することができる。本発明の予測法は、患者が治療計画、例えば、外科的介入などに対して良好な反応をする可能性があれば、予測する際の有益な手段となる。予測には予後因子を含むことができる。
【0059】
「有望な臨床転帰」という用語は、患者の状態を測る任意の尺度、例えば、無再発期間(RFI)の持続時間の増大、全生存(OS)期間の増大、無病生存(DFS)期間の増大、無遠隔再発期間(DRFI)の持続時間の増大など、当技術分野において日常的に用いられる尺度における好転を意味する。有望な臨床転帰の可能性の増大は、癌再発の可能性の低下に対応する。
【0060】
「リスク分類」という用語は、被験体が特定の臨床転帰を経験する危険性の程度または予測を意味する。本発明の予測法に基づいて、被験体を、あるリスクグループに分類したり、リスクの程度に基づいて分類したりすることができる。「リスクグループ」とは、特定の診療転帰について同程度のリスクをもつ被験体もしくは個人の集団のことである。
【0061】
本明細書において「長期」生存という用語は、少なくとも3年間、より好ましくは少なくとも5年間生存することを意味する。
【0062】
本明細書において「無再発期間(RFI)」という用語は、再発の証拠のない、最初の事象または死因として別の原発癌が生じたせいで打ち切られた結腸癌の最初の再発までの年数を意味する。
【0063】
本明細書において「全生存期間(OS)」という用語は、手術から任意の原因による死亡までの年数を意味する。
【0064】
本明細書において「無病生存期間(DFS)」という用語は、結腸癌の再発、または任意の原因による死亡までの年数を意味する。
【0065】
本明細書において「無遠隔再発期間(DRFI)」という用語は、手術から最初の解剖学的に遠隔な癌再発までの期間(年数)を意味する。
【0066】
上記に列挙された尺度を実際に計算すると、打ち切るべき事象か、または考慮に入れない事象をどう定義するかによって研究ごとに変動する可能性がある。
【0067】
「マイクロアレイ」という用語は、基板上にハイブリダイズ可能なアレイエレメント、好ましくはポリヌクレオチドプローブを規則正しく配置したものを意味する。
【0068】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数形または複数形で使われる場合、一般に、ポリリボヌクレオチドもしくはポリデオキシリボヌクレオチドを意味し、非修飾型のRNAまたはDNAであっても、修飾型のRNAまたはDNAであってもよい。したがって、例えば、本明細書で定義されたポリヌクレオチドには、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖の領域を含むDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖および二本鎖の領域を含むRNA、一本鎖、より一般的には、二本鎖であるDNAおよびRNA、または一本鎖もしくは二本鎖の領域を含むDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が含まれるが、これらに限定されない。また、本明細書において「ポリヌクレオチド」という用語は、RNA、またはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を意味する。そのような領域の鎖は、同一の分子由来のものであっても異なった分子由来のものであってもよい。それらの領域は、1つ以上の前記分子の全てを含むことができるが、より一般的には、前記分子の一部の一領域のみを含む。三重鎖領域をつくる分子のうちの1つは、しばしばオリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的にはcDNAを含む。この用語は、1つ以上の修飾塩基を含むDNA(cDNAを含む)およびRNAを含む。したがって、安定のため、またはそれ以外の理由で修飾された骨格を持つDNAまたはRNAは、本明細書において、この用語で意図されている「ポリヌクレオチド」である。さらに、異常型塩基、例えばイノシンなど、またはトリチウム化塩基などの修飾塩基を含むDNAまたはRNAも、本明細書に定義されている「ポリヌクレオチド」という用語に含まれる。一般的に、「ポリヌクレオチド」という用語は、未修飾ポリヌクレオチドを化学的、酵素的、および/または代謝的に修飾したものすべて、また、ウイルス、および単純型細胞および複雑型細胞などの細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。
【0069】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、比較的短いポリヌクレオチドを意味し、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本鎖もしくは二本鎖のリボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、および二本鎖DNAを含むが、これらに限定されない。一本鎖DNAプローブ用オリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドは、化学的な方法によって、例えば、市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて、しばしば合成されている。しかし、オリゴヌクレオチドは、インビトロ組み換えDNA技術や細胞および生物体内でDNAを発現させるなど、他のさまざまな方法によって作成することができる。
【0070】
「示差的に発現された遺伝子」、「遺伝子の示差的発現」という用語、およびこれらの同義語は、互換的に用いられ、正常な被験体または対照となる被験体における発現に比べて、病気、特に癌、例えば、結腸癌を患っている被験体においてその発現が高レベルまたは低レベルに活性化される遺伝子を意味する。この用語は、同じ病気の異なる病期においてその発現が高レベルまたは低レベルに活性化される遺伝子も含む。また、当然ながら、示差的に発現される遺伝子は、核酸レベルまたはタンパク質レベルで活性化されるものでも、阻害されるものであってもよく、異なったポリペプチド産物をもたらす選択的スプライシングを受けるものであってもよい。このような差異は、例えば、mRNA量、表面発現、分泌、またはポリペプチドのそのたの分配における変化によって明らかにすることができる。示差的遺伝子発現は、2つ以上の遺伝子、またはそれらの遺伝子産物の間における発現の比較、2つ以上の遺伝子、またはそれらの遺伝子産物の間における発現割合の比較、または、さらに、2つの異なるプロセッシングを受けた同一遺伝子の産物の比較を含むが、これらは、正常な被験体と、病気、特に癌を患う被験体との間、または同一の病気のさまざまな病期の間で異なっている。示差的発現は、例えば、正常な細胞と病気の細胞の間、またはさまざまな病気事象を経たか、またはさまざまな病期にある細胞の間における、ある遺伝子またはその発現産物の時間的な、または細胞内での発現パターンの定量的差異と定性的差異の両方を含む。本発明においては、正常な被験体と病気の被験体において、または病気の被験体における発病のさまざまな病期において、所定の遺伝子の発現の間に少なくとも約2倍、好ましくは、少なくとも約4倍、より好ましくは、少なくとも約6倍、最も好ましくは、少なくとも約10倍の差異があるときに、「示差的遺伝子発現」が存在すると見なされる。
【0071】
RNA転写に関して「過剰発現」という用語は、参照用mRNAの量に対して正規化することによって決定された転写物の量を意味するが、それは、標本内のすべての測定された転写物であるかもしれないし、mRNAの特定の参照用セットであってもよい。
【0072】
「遺伝子増幅」という語句は、特定の細胞または細胞株内で、遺伝子または遺伝子断片の複数のコピーが形成される工程を意味する。重複領域(一続きの増幅DNA)は、しばしば「単位複製配列」と呼ばれる。通常、産生されたメッセンジャーRNA(mRNA)の量、すなわち、遺伝子発現量も、発現された特定の遺伝子から作られたコピーの数に比例して増加する。
【0073】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は当業者によって容易に決定することができ、一般的には、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的な計算法である。一般的に、プローブが長いほど、適当なアニーリングのために高温を必要とし、一方、プローブが短いほど低温を必要とする。ハイブリダイゼーションは、通常、変性されたDNAが、相補鎖の融解温度よりも低い環境内に相補鎖が存在するときに再アニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列の間における所望の相同性の程度が高いほど、用いることができる相対温度が高くなる。その結果、相対温度が高いほど反応条件がよりストリンジェントになり、相対温度が低いほどストリンジェントでなくなるという傾向になる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーについての更なる詳細および説明に関しては、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,(1995)参照。
【0074】
本明細書に定義されている「ストリンジェントな条件」または「高度にストリンジェントな条件」は、一般的に:(1)洗浄のために低イオン強度および高温、例えば、50℃にて0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを用いる;(2)ハイブリダイゼーションの間は、ホルムアミドのような変性剤、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール(Ficoll)/0.1%ポリビニルピロリドン/pH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液を含む50%(v/v)ホルムアミドを、42℃にて750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムとともに用いる;または(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸を42℃で用い、洗浄を、42℃にて0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミド内で行い、その後、55℃にて、EDTAを含む0.1×SSCからなる高ストリンジェンシー洗浄を行う。
【0075】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, New York:Cold Spring Harbor Press,1989によって説明されているようにして確認することができ、上記したような条件よりもストリンジェンシーが低い洗浄溶液および低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度および%SDS)を使用することが含まれる。中程度のストリンジェンシー条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mMNaCl、15mMシュウ酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%デキストラン硫酸、および20mg/ml変性せん断サケ精子DNAを含む溶液中で37℃にて一晩インキュベートし、その後、約37〜50℃にて1×SSCで濾紙を洗浄することである。当業者は、プローブ長などの因子を適合させるための必要に応じて、温度、イオン強度などを調節する方法を知っている。
【0076】
本発明において、任意の具体的な遺伝子セットにリストされた遺伝子の「少なくとも1つ」、「少なくとも2つ」、「少なくとも5つ」などと言うのは、リストされた遺伝子の任意の1つ、またはありとあらゆる組み合わせを意味する。
【0077】
本明細書において、「リンパ節陰性」の結腸癌など、「リンパ節陰性」の癌はリンパ節に拡散していない癌を意味する。
【0078】
「スプライシング」および「RNAスプライシング」という用語は同義的に用いられ、イントロンを除去しエキソンを結合させて、真核細胞の細胞質の内部に移動する連続したコード配列をもつ成熟型mRNAを作出するRNAプロセシングを意味する。
【0079】
理論上、「エキソン」という用語は、成熟型RNA産物に表われる、分断された遺伝子の分節を意味する(B.Lewin.Genes TV Cell Press,Cambridge Mass.1990)。理論上、「イントロン」という用語は、転写されるが、両側にあるエキソンをスプライシングによって結合させることによって転写物内からは除去されるDNAの分節を意味する。操作的には、エキソン配列は、参照用配列番号によって定義された遺伝子のmRNA配列内に存在する。操作的には、イントロン配列は遺伝子のゲノムDNA内部にある介在配列であり、エキソン配列に挟まれ、5’側および3’側の境界部位にGTおよびAGというスプライスコンセンサス配列をもつ。
【0080】
本明細書において「発現クラスター」という用語は、定義された患者群由来の試料の範囲内で調査した場合に類似した発現パターンを示す遺伝子群を意味する。本明細書において、発現クラスターに含まれる遺伝子は、第II病期および/または第III病期の結腸癌および/または直腸癌の患者に由来する試料の範囲内で調査すると同じような発現パターンを示す。
【0081】
B.1 本発明の概要
本発明の実施には、別段の記載がない限り、分子生物学(組み換え技術など)、微生物学、細胞生物学、および生化学の従来技術が用いられるであろうが、これらは当技術分野に含まれる。そのような技術は、以下の文献、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,2nd edition(Sambrookら、1989);“Oligonucleotide Synthesis”(MJ. Gait, ed., 1984);“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney,ed.,1987);“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.);“Handbook of Experimental Immunology”,4th edition(D.M.Weir & C.C.Blackwell,eds.,Blackwell Science Inc.,1987);“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells”(J.M.Miller & M.P.Calos,eds.,1987);“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubelら、eds.,1987);および“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullisら、eds.,1994)などで十分に説明されている。
【0082】
正常細胞および癌細胞でRNA転写物が示差的に発現するという証拠に基づき、本発明は結腸直腸癌用の予後遺伝子マーカーを提供する。すなわち、特定の態様において、本発明は、第II病期または第III病期の病気のいずれかの転帰に対して特異的に予後的なマーカー、およびこれら両病期に予後的な価値のあるマーカーなど、これら2つの病期における、および/または腫瘍進行の程度における腫瘍細胞に内在する差異を反映する、第II病期および/または第III病期の結腸直腸癌の予後遺伝子マーカーを提供する。本発明によって提供される予後マーカーおよびその関連情報によって、内科医はより合理的な治療法を決定し、かつ個々の患者の必要に合わせて結腸直腸癌の治療法をカスタマイズして、治療の利益を極大化し、かつ有意な恩恵をもたらさず、しばしば有害な副作用による深刻なリスクを伴う不要な治療を患者ができるだけ受けないようにすることができるようになる。
【0083】
増殖、アポトーシス、血管形成、および浸潤など、さまざまな生理学的プロセスの正常な機能の破壊が癌の病理に関係している。特定の癌型の病状に対する、特定の生理学的プロセスにおける機能不全の相対的寄与は、十分には特徴づけられていない。何らかの生理学的プロセスが、このプロセスに関与するさまざまな細胞によって発現される多数の遺伝子産物の寄与を統合している。例えば、隣接する正常組織への腫瘍細胞の浸潤、および循環器系への腫瘍細胞の侵入は、腫瘍細胞の凝集、正常細胞および結合組織への腫瘍細胞の接着、腫瘍細胞がまずその形態を変えてから周辺組織を通って移動できること、および腫瘍細胞が周辺の結合組織の構造を分解できることなど、さまざまな細胞の特性に介在する多数のタンパク質によってもたらされる。
【0084】
多被検体遺伝子発現検査によって、関連するいくつかの生理学的プロセスまたは構成細胞の特性のそれぞれに寄与する1つ以上の遺伝子の発現量を測定することができる。場合によって、本検査法の予測力、したがって有用性は、個々の遺伝子について得られた発現値を用いて、個々の遺伝子の発現値よりも転帰との相関性が高いスコアを計算することによって改善することができる。例えば、エストロゲン受容体陽性でリンパ節陰性の乳癌の再発の可能性を予測する定量的スコア(再発スコア)の計算法が、同時係属米国特許出願(公開第20050048542号)に記載されている。このような再発スコアを計算するために用いられる数式は、再発スコアを極大化するために遺伝子をグループ化することであるかもしれない。遺伝子のグループ化は、少なくとも部分的には、上記したような生理学的機能または構成細胞の特性に対するそれらの寄与度についての知識に基づいて行われよう。さらに、グループの形成によって、再発スコアに対する、さまざまな発現値の寄与を数学的に重み付けるのが容易になるかもしれない。生理学的プロセスまたは構成細胞の特性を表す重み付けは、このプロセスまたは特性の、癌の病状または臨床転帰に対する寄与度を反映することができる。したがって、重要な態様において、本発明は、まとまって、個々の遺伝子または同定された遺伝子のランダムな組み合わせよりも、信頼性が高く強力な予測因子となる、本明細書において同定された遺伝子の具体的なグループも提供する。
【0085】
また、所定の範囲の値を持つすべての患者が特定のリスクグループに属するものとして分類できる場合には、再発スコアの判定に基づいて、再発スコアの特定の値で患者をサブグループに分割することを選択することができる。すなわち、選択された値によって、患者のサブグループは、それぞれ、より高リスクまたは低リスクと定義される。
【0086】
結腸癌の転帰の予測における遺伝子マーカーの有用性は、そのマーカーに特有のものではないかもしれない。特定の検査マーカーに極めて類似する発現パターンをもつ別のマーカーは、検査マーカーの代わりに、またはそれに加えて使用することができ、その検査の全体的な予測有用性にはほとんど影響を及ぼさないかもしれない。2つの遺伝子の極めて類似した発現パターンは、この両遺伝子が特定のプロセスに関与していること、および/または結腸腫瘍細胞における共通の調節制御下にあることの結果生じるのかもしれない。本発明は、このような遺伝子または遺伝子セットを本発明の方法において使用することを具体的に含み、かつ想定している。
【0087】
結腸および/または直腸の癌の第II病期および/または第III病期における臨床転帰を予測する、本発明によって提供される予後マーカーおよびその関連情報は、第II病期および/または第III病期の結腸および/または直腸の癌を治療する薬剤を開発するのに有用である。
【0088】
結腸および/または直腸癌の第II病期および/または第III病期における臨床転帰を予測する、本発明によって提供される予後マーカーおよびその関連情報は、第II病期および/または第III病期の結腸および/または直腸の癌の患者を治療するための薬剤化合物の有効性を試験する臨床治験に参加させる患者をスクリーニングするのにも有用である。具体的には、この予後マーカーは、臨床試験を受けている患者から採集された試料に対して用いることができ、その検査の結果は、患者のサブグループが、全グループ又はその他のサブグループよりもその薬剤に対して高いまたは低い反応を示す可能性があるか否かを判定するために、患者の転帰と併せて用いることができる。
【0089】
結腸および/または直腸癌の第II病期および/または第III病期における臨床転帰を予測する、本発明によって提供される予後マーカーおよびその関連情報は、臨床試験の対象患者選定基準として有用である。例えば、ある患者が、手術のみの治療を受けても臨床転帰が不良になる可能性が高いことを検査結果が示していれば、その患者は臨床試験に参加させられる可能性が高く、手術のみの治療を受けても患者の臨床転帰が不良となる可能性が低いことを検査結果が示していれば、その患者は臨床治験に参加させられる可能性が低い。
【0090】
特定の実施態様において、予後マーカーおよび関連情報は、遺伝子の転写産物またはその発現産物の量または活性を調節する試薬を設計または製造するために用いられる。該試薬は、アンチセンスRNA、阻害的低分子RNA、リボザイム、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体を含むが、これらに限定されない。
【0091】
さらなる実施態様において、該遺伝子もしくはその転写産物、または、より具体的には、該転写産物の発現産物を、薬剤化合物を同定するための(スクリーニング)アッセイに用いるが、ただし、該薬剤化合物は、第II病期および/または第III病期の結腸癌および/または直腸癌の治療薬の開発に用いられる。
【0092】
本発明のさまざまな実施態様において、開示された遺伝子の発現量を測定するために、RT−PCR法、マイクロアレイ法、連続遺伝子発現解析(SAGE)法、および大規模並行シグネチャー配列決定(MPSS)法による遺伝子発現解析などがあるが、これらに限定されない、さまざまな技術的アプローチが利用可能であり、下記に詳述されるであろう。特定の実施態様において、遺伝子それぞれの発現量は、エキソン、イントロン、タンパク質エピトープ、およびタンパク質活性など、遺伝子の発現産物のさまざまな特徴について決定することができる。他の実施態様において、遺伝子の発現量は、遺伝子構造の解析、例えば、遺伝子のプロモーターのメチル化パターンの解析から推測することができる。
【0093】
B.2 遺伝子発現解析
遺伝子発現解析法には、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション解析に基づく方法、ポリヌクレオチドのシーケンシングに基づく方法、およびプロテオミクスに基づく方法などがある。当技術分野において知られている、試料中におけるmRNA発現を定量化するために最も一般的に用いられている方法には、ノーザンブロット法およびインサイチュハイブリダイゼーション法(Parker & Barnes, Methods in Molecular Biology 106:247−283 (1999));リボヌクレアーゼ保護アッセイ(Hod,Biotechniques 13:852−854(1992));およびPCRに基づく方法、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)(Weisら、Trends in Genetics 8:263−264(1992))などがある。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二本鎖、もしくはDNA−タンパク質二本鎖など、配列特異的な二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。シーケンシングに基づいた遺伝子発現解析のための代表的な方法には、連続遺伝子発現解析(SAGE)法および大規模並行シグネチャー配列決定(MPSS)法などがある。
【0094】
a.逆転写PCR(RT−PCR)法
上記技術のうち、最も感度が高く、かつ最もフレキシブルな定量的方法は、RT−PCR法であり、これを用いて、さまざまな試料中のmRNA量を測定することができる。その結果を用いて、例えば、正常組織と腫瘍組織において、また、薬物治療を受けている患者と受けていない患者とにおいて、試料セット間における遺伝子発現パターンを比較することができる。
【0095】
最初の工程は標的試料からmRNAを単離することである。出発物質は、一般的には、ヒトの腫瘍もしくは細胞株、およびそれぞれ対応する正常な組織もしくは細胞株から単離された全RNAである。すなわち、健康なドナー由来のプールされたDNAを用いて、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、脳腫瘍、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、脾臓癌、胸腺腫瘍、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮癌など、または腫瘍細胞株を含む、さまざまな原発腫瘍からRNAを単離することができる。mRNAの由来源が原発腫瘍であれば、mRNAは、例えば、冷凍組織試料またはパラフィン包埋されて固定された(例えば、ホルマリン固定された)保存組織試料抽出することができる。
【0096】
mRNAを抽出するための一般的な方法は、当技術分野において周知のものであり、Ausubelら、Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley and Sons (1997)など、分子生物学の標準的な教科書に開示されている。パラフィンで包埋された組織からRNAを抽出する方法は、例えば、Rupp and Locker,Lab Invest;56:A67(1987)、およびDe Andresら、BioTechniques 18:42044(1995)に開示されている。具体的には、RNAの単離は、Quiagenのような製造業者から入手した精製キット、緩衝液セットおよびプロテアーゼを用いて、製造業者の使用説明書に従って行うことができる。例えば、培養細胞からの全RNAは、Quiagen RNeasyミニカラムを用いて単離することができる。その他の市販されているRNA単離キットには、商標MasterPure Complete DNA and RNA Purification Kit(登録商標EPICENTRE,Madison,WI)、およびParaffin Block RNA Isolation Kit(Ambion, Inc.)などがある。試料組織からの全RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を用いて単離することができる。腫瘍から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心法によって単離することができる。
【0097】
RNAはPCR用の鋳型となることができないため、RT−PCR法による遺伝子発現解析の最初の工程は、RNA鋳型をcDNAに逆転写し、その後、PCR反応でこれを指数関数的に増幅することである。最も一般的に用いられる2つの逆転写酵素はトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。この逆転写工程では、条件と発現解析の目的に応じて、一般的には、特異的プライマー、ランダム六量体、またはオリゴ−dTプライマーを用いてプライミングする。例えば、抽出されたRNAは、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer,CA,USA)を用い、製造業者の使用説明書に従って逆転写することができる。そして、以後のPCR反応においては、得られたcDNAを鋳型として用いることができる。
【0098】
PCR工程ではさまざまな熱安定性のDNA依存型DNAポリメラーゼを用いることができるが、一般的には、Taq DNAポリメラーゼが用いられる。これは5’−3’ヌクレアーゼ活性は有しているが、3’−5’プルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性をもたない。そのため、登録商標TaqMan PCR法は、一般的には、TaqポリメラーゼもしくはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的である単位複製配列に結合しているハイブリダイゼーションプローブを加水分解しているが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を用いることもできる。2種類のオリゴヌクレオチドを用いて、PCR反応に特有の単位複製配列を生成させる。この2つのPCRプライマー間に存在するヌクレオチド配列を検出するために第三のオリゴヌクレオチド、すなわちプローブを設計する。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼによっては伸長することができず、レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素で標識されている。2つの色素がプローブ上で密着しているときには、レポーター色素からのレーザー誘起発光はクエンチャー色素によって消光されている。増幅反応の過程で、Taq DNAポリメラーゼ酵素が鋳型依存的にプローブを切断する。生じたプローブ断片は溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第二のフルオロフォアの消光効果から解放される。新しい分子が合成されるたびに1分子のレポーター色素が遊離するため、消光されていないレポーター色素を検出することで、データを定量的に解釈するための材料が提供される。
【0099】
登録商標TaqMan RT−PCR法は、市販されている機器、例えば、ABI PRISM 7700(商標)Sequence Detection System(商標)(Perkin−Elmer−Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)、またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)などを用いて実施することができる。好適な実施態様において、ABI PRISM 7700(商標)Sequence Detection System(商標)などのリアルタイム定量PCR装置上で、5’ヌクレアーゼ法を実施する。この装置はサーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラ、およびコンピュータからなる。この装置は、サーモサイクラー上で96ウェル方式の試料を増幅する。増幅過程で、96ウェルすべてについて、光ファイバーケーブルを介してリアルタイムで、レーザー誘起蛍光シグナルを採取して、CCDで検出する。この装置は、機器を作動させるためのソフトウェア、およびデータを解析するためのソフトウェアを含む。
【0100】
5’−ヌクレアーゼアッセイのデータは、まず、Ctすなわちサイクル閾値として表される。上記したように、サイクルごとに蛍光値が記録され、増幅反応においてその時点までに増幅された産物の量を示す。統計学的に有意であるとして蛍光シグナルが最初に記録された時点がサイクル閾値(Ct)である。
【0101】
誤差および試料間での変動効果を最小化するためには、通常、内部標準を用いてRT−PCR法を実施する。理想的な内部標準は、異なった組織間でも一定レベルで発現されて、実験処理による影響を受けないものである。遺伝子発現のパターンを正規化するために最も頻繁に用いられるRNAは、ハウスキーピング遺伝子、グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、およびβ−アクチンに対するmRNAである。
【0102】
RT−PCR技術のより最近の変法はリアルタイム定量PCR法であるが、これは二重標識蛍光性プローブ(すなわち、登録商標TaqManプローブ)によってPCR産物の蓄積を測定するものである。リアルタイムPCR法は、標的配列のそれぞれに対する内部競合配列が正規化のために用いられる競合的定量PCR法にも、試料内部に含まれている正規化用遺伝子、またはRT−PCR用のハウスキーピング遺伝子を用いる相対的定量PCR法にもが適合する。更なる詳細に関しては、例えば、Heldら、Genome Research 6:986−994(1996)を参照。
【0103】
mRNAの単離、精製、プライマー伸長、および増幅を含む、RNA源として固定化パラフィン包埋組織を用いて遺伝子発現を解析するための代表的なプロトコルの工程がさまざまな雑誌の掲載論文に記載されている(例えば:T.E.Godfreyら、J.Molec.Diagnostics 2:84−91(2000);K.Spechtら、Am.J.Pathol.158:419−29(2001))。要するに、代表的な方法は、パラフィン包埋腫瘍組織の試料から約10μm厚の切片を切り取ることから始まる。次に、RNAを抽出し、タンパク質およびDNAを除去する。RNA濃度の解析後に、RNAを修復および/または増幅する工程を含むことができ、必要に応じて、遺伝子特異的なプロモーターを用いてRNAを逆転写してからRT−PCR法を行う。
【0104】
b.マスアレイ(MassARRAY)装置
Sequenom,Inc.(San Diego,CA)によって開発された、MassARRAY法に基づく遺伝子発現解析法では、RNAの単離および逆転写の後に、得られたcDNAを合成DNA分子(競合分子)と混合するが、このDNA分子は一塩基を除くすべての位置で標的cDNA領域に一致するため、内部標準として利用される。cDNA/競合分子混合物をPCR増幅し、これにPCR後のエビアルカリホスファターゼ(SAP)酵素処理を施すと、残ったヌクレオチドの脱リン酸化が起こる。アルカリホスファターゼを不活性化させた後、競合分子およびcDNAから得られたPCR産物をプライマー伸長させると、競合分子由来およびcDNA由来のPCR産物について別々の塊となったシグナルが生成される。精製後に、これらの産物を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)解析法による解析に必要な成分が予め装着されているチップアレイ上に分注する。次に、作成された質量スペクトルのピーク面積の比率を解析して、反応物中に存在するcDNAを定量化する。更なる詳細については、例えば、Ding and Cantor,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:3059−3064(2003)を参照。
【0105】
c.PCRに基づくその他の方法
PCR法に基づくさらなる方法には、例えば、ディファレンシャルディスプレイ法(LiangとPardee,Science 257:967−971(1992));(Kawamotoら、Genome Res.12:1305−1312(1999));増幅断片長多型(iAFLP)法(Kawamotoら、Genome Res.12:1305−1312(1999));商標BeadArray技術(Illumina,San Diego,CA;Oliphantら、Discovery of Markers for Disease (Supplement to Biotechniques),June 2002;Fergusonら、Analytical Chemistry 72:5618(2000));遺伝子発現迅速アッセイ法において、市販されているLuminex100 LabMAP装置および多色コード化微小球(multiple color−coded microspheres)(Luminex Corp.,Austin,TX)を用いる遺伝子発現検出BeadArray(BADGE)法(Yangら、Genome Res.11:1888−1898(2001));および高カバー率遺伝子発現プロファイリング(HiCEP)解析法(Fukumuraら、Nucl.Acids.Res.31(16)e94(2003))などがある。
【0106】
d.マイクロアレイ
マイクロアレイ技術を用いて、示差的遺伝子発現を同定したり確認したりすることができる。したがって、マイクロアレイ技術を用いて、新鮮な腫瘍組織またはパラフィン包埋腫瘍組織における結腸癌関連遺伝子の発現プロフィールを測定することができる。この方法では、目的とするポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドなど)をマイクロチップ基板上にプレートするか並べる。そして、並べられた配列を、目的とする細胞または組織に由来する特異的DNAプローブとハイブリダイズさせる。RT−PCR法と同様、mRNAの由来源は、一般には、ヒトの腫瘍もしくは腫瘍細胞株、および対応する正常な組織または細胞株から単離された全RNAである。このように、さまざまな原発腫瘍もしくは腫瘍細胞株からRNAを単離することができる。mRNA源が原発腫瘍であれば、例えば、冷凍組織試料またはパラフィン包埋されて固定された(例えば、ホルマリン固定された)保存組織試料からmRNAを抽出することができるが、これらの試料は、日常の臨床診断業務において調製および保存されている。
【0107】
マイクロアレイ技術の具体的な実施態様において、cDNAクローンをPCR増幅した挿入断片を、基板の高密度アレイに適用する。好ましくは少なくとも10,000個のヌクレオチド配列を基板に適用する。それぞれ10,000エレメントずつマイクロチップ上に固定された、マイクロアレイ化遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに適している。目的とする組織から抽出されたRNAを逆転写して蛍光ヌクレオチドを取り込ませることによって、蛍光標識されたcDNAを作成することができる。チップに適用された標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAスポットのそれぞれに特異的にハイブリダイズする。ストリンジェントな洗浄を行って非特異的に結合したプローブを除去した後、チップを共焦点レーザー電子顕微鏡、または、例えば、CCDカメラなど、別の検出法によってスキャンする。各アレイ化エレメントのハイブリダイゼーションを定量化することによって、対応するmRNAの存在量を評価することができる。2色蛍光を用いて、2つのRNA源から作成された、別々に標識されたcDNAプローブを対にして、アレイにハイブリダイズさせる。こうして、特定の遺伝子のそれぞれに対応する2つの由来源からの転写産物の相対量が同時に測定される。ハイブリダイゼーションを小型化することによって、多数の遺伝子の発現パターンを簡便かつ迅速に評価することが可能になる。このような方法は、細胞あたり数コピーずつ発現される希少な転写産物を検出するため、および、発現量の少なくとも約2倍の差異を再現性よく検出するために必要とされる感度をもつことが示されている(Schenaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106−149(1996))。マイクロアレイ解析法は、製造業者のプロトコルに従って、例えば、Affymetrix GenChip技術、またはIncyte’s マイクロアレイ技術を用いるなどして、市販の機器によって実施することができる。
【0108】
遺伝子発現を大規模に解析するためのマイクロアレイ法の開発により、さまざまな腫瘍型において、癌を分類し、転帰を予測する分子マーカーを体系的に探すことが可能になる。
【0109】
e.遺伝子発現連続解析(SAGE)法
遺伝子発現連続解析(SAGE)法は、各転写産物に対して個別のハイブリダイゼーションプローブを用意することを必要とせずに、多数の遺伝子転写産物を同時かつ定量的に解析することを可能にする方法である。まず、転写産物を特異的に同定するのに十分な情報を含む短い配列タグ(約10〜14bpの)を生成するが、ただし、このタグは、各転写産物の内部にあるユニークな場所から得られるものである。そして、数多くの転写産物を一緒に結合させて、配列決定することができる長い連続分子を形成させ、複数のタグの同一性を同時に明らかにする。任意の転写産物集団の発現パターンを、個々のタグの存在量を測定し、各タグに対応する遺伝子を同定することによって定量的に評価することができる。更なる詳細に関しては、例えば、Velculescuら、Science 270:484−487(1995);およびVelculescuら、Cell 88:243−51(1997)を参照。
【0110】
f.大規模並列シグネチャー配列決定(MPSS)法による遺伝子発現解析
この方法は、Brennerら、Nature Biotechnology 18:630−634(2000)で説明されており、ゲルを利用しないシグネチャー配列決定法を、分離した直径5μmのマイクロビーズ上で数百万もの鋳型をインビトロでクローニングする方法と組み合わせた配列決定法である。まず、DNA鋳型のマイクロビーズライブラリーを、インビトロクローニングによって作成する。次に、鋳型含有マイクロビーズの平面アレイを、フローセル内において高密度(一般的には3×10マイクロビーズ/cmよりも大きい)で組み立てる。各マクロビーズ上のクローン化鋳型の自由末端を、DNA断片の分離を必要としない蛍光によるシグネチャー配列決定法を用いて解析する。この方法は、1回の操作で、数十万もの遺伝子シグネチャー配列を、酵母cDNAライブラリーから同時かつ正確に提供することが明らかになっている。
【0111】
g.免疫組織化学法
免疫組織化学法も、本発明の予後マーカーの発現量を検出するのに適している。すなわち、各マーカーに特異的な抗体もしくは抗血清、好ましくはポリクローナル抗血清、最も好ましくはモノクローナル抗体を用いて発現を検出する。これらの抗体は、抗体自体を、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋わさびペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素で直接標識することによって検出することができる。あるいは、非標識一次抗体を、一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清、またはモノクローナル抗体からなる標識二次抗体とともに用いる。免疫組織化学法のプロトコルおよびキットは当技術分野において周知のものであり、市販されている。
【0112】
h.プロテオミクス
「プロテオーム」という用語は、ある時点において試料(例えば、組織、生物、または細胞培養物)の中に存在するタンパク質の全体と定義されている。プロテオミクスには、とろわけ、ある試料におけるタンパク質発現の全体的な変化を研究することが含まれる(「発現プロテオミクス」とも呼ばれる)。プロテオミクスは、一般的には、以下の工程含む:(1)2−Dゲル電気泳動(2−D PAGE)によって試料中の個々のタンパク質を分離する工程;(2)例えば、質量分析法またはN−末端配列決定法によって、ゲルから回収された各タンパク質を同定する工程;および(3)バイオインフォマティクスを用いてデータを解析する工程。プロテオミクス法は、他の遺伝子発現解析法を補完するのに役立つものであり、単独で、または他の方法と組み合わせて、本発明の予後マーカーの産物を検出するために用いることができる。
【0113】
i.プロモーターメチル化解析法
RNA転写産物(遺伝子発現解析)またはその翻訳産物を定量化するための方法がいくつか本明細書で検討されている。遺伝子の発現量は、クロマチン構造、例えば、遺伝子プロモーターおよびその他の調節因子のメチル化状態、ならびにヒストンのアセチル化状態に関する情報からも推測できる。
【0114】
特に、プロモーターのメチル化状態は、そのプロモーターによって調節される遺伝子の発現量に影響を及ぼす。特定の遺伝子プロモーターの異常なメチル化は、発現調節、例えば、腫瘍抑制遺伝子のサイレンシングなどに関係している。したがって、遺伝子のプロモーターのメチル化状態を調べることを、RNA量を直接定量化する代わりとして利用することができる。
【0115】
特定のDNA要素のメチル化状態を測定するための方法がいくつかの考案されており、メチル化特異的PCR法(Herman J.G.ら(1996)Methylation−specific PCR:a novel PCR assay for methylation status of CpG islands.Proc.Natl Acad.Sci.USA.93,9821−9826.)および重亜硫酸塩DNA配列決定法(Frommer M.ら(1992)A genomic sequencing protocol that yields a positive display of 5−methylcytosine residues in individual DNA strands.Proc.Natl Acad.Sci.USA.89,1827−1831.)などがある。最近になって、マイクロアレイを利用する技術を用いて、プロモーターのメチル化状態の特徴が調べられている(Chen C.M.(2003)Methylation target array for rapid analysis of CpG island hypermethylation in multiple tissue genomes.Am.J.Pathol.163,37−45.)。
【0116】
j.遺伝子同時発現法
本発明のさらなる態様は、遺伝子発現クラスターを同定することである。ピアソン相関係数に基づく相関関係の対合解析法(Pearson K.and Lee A.(1902)Biometrika 2,357)など、当技術分野において周知の統計的解析法を用いて発現データを解析することによって、遺伝子発現クラスターを同定することができる。
【0117】
一つの実施態様において、本明細書において同定されている発現クラスターは、主に間質細胞によって合成され、細胞外基質のリモデリングに関与することが知られているBGN、CALD1、COL1A1、COL1A2、SPARC、VIM、およびその他の遺伝子を含む。この発現クラスターは、本明細書では細胞外基質リモデリング/間質細胞クラスターと呼ばれている。
【0118】
別の実施態様において、本明細書において同定されている発現クラスターは、ANXA2、KLK6、KLK10、LAMA3、LAMC2、MASPIN、SLPI、および上皮細胞分泌産物をコードするその他の遺伝子を含むが、これらの大部分は、主に上皮細胞によって分泌されるが他の細胞型によっても分泌されているかもしれない。この発現クラスターは、本明細書では上皮/分泌クラスターと呼ばれている。
【0119】
さらに別の実施態様において、本明細書において同定されている発現クラスターは、DUSP1、EGR1、EGR3、FOS、NR4A1、RHOB、および細胞を一定の刺激に暴露すると早期に転写が上方制御されるその他の遺伝子を含む。さまざまな刺激が初期応答遺伝子の転写を誘発するが、例えば、成長因子に暴露することで、細胞の運動性急速に増加させることができ、ブドウ糖などの栄養分を輸送する能力を促進することができる。この発現クラスターは、本明細書では初期応答クラスターを呼ばれている。
【0120】
さらに別の実施態様において、本明細書において同定されている発現クラスターは、MCP1、CD68、CTSB、OPN、および通常は免疫系細胞に関連したタンパク質をコードするその他の遺伝子を含む。この発現クラスターは、本明細書では免疫クラスターと呼ばれている。
【0121】
さらなる実施態様において、本明細書において同定されている発現クラスターは、CCNE2、CDC20、SKP2、CHK1、BRCA1、CSEL1、ならびに細胞増殖および細胞周期の調節に関係するその他の遺伝子を含む。この発現クラスターは、本明細書では増殖/細胞周期クラスターを呼ばれている。
【0122】
k.mRNA単離の一般的説明
精製および増幅
mRNAの単離、精製、プライマー伸長、および増幅を含む、RNA源として固定化パラフィン包埋組織を用いて遺伝子発現を解析するための代表的なプロトコルの工程がさまざまな雑誌の掲載論文に記載されている(例えば:T.E.Godfreyら、J.Molec.Diagnostics 2:84−91(2000);K.Spechtら、Am.J.Pathol.158:419−29(2001))。要するに、代表的な方法は、パラフィン包埋腫瘍組織の試料から約10μm厚の切片を切り取ることから始まる。次に、RNAを抽出し、タンパク質およびDNAを除去する。RNA濃度の解析後に、RNAを修復および/または増幅する工程を含むことができ、必要に応じて、遺伝子特異的なプロモーターを用いてRNAを逆転写してからRT−PCR法を行う。最後に、検査した腫瘍試料内で同定された特徴的な遺伝子発現パターンに基づいて、その患者に利用可能な最善の治療法の選択肢を確認するためにデータを解析する。
【0123】
l.結腸癌遺伝子セット、アッセイされた遺伝子サブ配列、および遺伝子発現データの臨床的応用
本発明の重要な態様は、測定されている、結腸癌組織による一定の遺伝子発現を用いて、予後情報を提供することである。この目的のためには、アッセイされたRNA量の差異、および用いられるRNAの品質の変動の両方について補正(正規化)することが必要である。したがって、このアッセイは、一般的には、周知のハウスキーピング遺伝子、例えば、GAPDHおよびCyp1など、一定の正規化遺伝子の発現を測定して取り込む。あるいは、正規化は、アッセイされた遺伝子、またはその大規模なサブセット全部の平均シグナルまたは中央シグナル(Ct)に基づくこともできる(包括的正規化法)。遺伝子毎に、測定された正規化量の患者の腫瘍mRNAを、結腸癌組織の参照用セットに存在する量と比較する。この参照用セット中の結腸癌組織の数(N)は、さまざまな参照用セットが(全体として)、実質的に同じ挙動をすることを保証できるほど十分に多くなければならない。この条件に合えば、特定のセットに存在する個々の結腸癌組織の同一性は、アッセイされた遺伝子の相対量には顕著な影響を及ぼさない。通常、結腸癌組織の参照用セットは、少なくとも約30個、好ましくは少なくとも約40個の異なったFPE結腸癌組織検体からなる。別段の記載がない限り、各mRNA/検査された腫瘍/患者について正規化された発現量は、参照用セットにおいて測定された発現量のパーセンテージとして表される。より具体的には、十分に数が多い(例えば、40個の)腫瘍の参照用セットで、各mRNA検体の正規化された量の分布が得られる。解析すべき特定の腫瘍試料内で測定された量は、この範囲内のパーセンタイル値となり、それは、当技術分野において周知の方法によって判定することができる。以下、別段の記載のない限り、遺伝子の発現量という場合、参照用セットに対する正規化発現量をいうものと見なす、ただし、このことは必ずしも明記されているとは限らない。
【0124】
m.イントロンを利用したPCRプライマーおよびプローブの設計
本発明の一つの態様によれば、増幅すべき遺伝子内に存在するイントロン配列を利用してPCRプライマーおよびプローブを設計する。したがって、プライマー/プローブの設計の最初の工程は、遺伝子内部にあるイントロン配列を明確にすることである。これは、例えば、Kent,W.J.,Genome Res.12(4):656−64(2002)によって開発されたDNA BLATソフトウェアなどの公開されているソフトウェアによって、またはその改変を含むBLASTソフトウェアによって行うことができる。その後の工程は、PCRプライマーおよびプローブについての十分に確立されている方法に従う。
【0125】
非特異的シグナルを回避するためには、イントロンおよびプローブを設計する際に、イントロン内部の反復配列をマスクすることが重要である。これは、反復要素のライブラリーに対してDNA配列をスクリーニングし、反復要素がマスクされているクエリー配列を返してくれる、the Baylor College of Medicineを介してオンラインで利用可能なRepeat Maskerプログラムを用いることによって容易に行うことができる。そして、このマスクされたイントロン配列を用い、市販されているか、さもなければ公開されているプライマー/プローブ設計用のパッケージ、例えば、Primer Express(Applied Biosystems);MGB assay−by−design(Applied Biosystems);Primer3(Krawetz S,Misener S(eds)Bioinformatics Methods and Protocols:Methods in Molecular Biology.Humana Press,Totowa,NJ,pp 365−386に掲載されているSteve RozenとHelen J.Skaletsky(2000)Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers)などを用いてプライマー配列およびプローブ配列を設計することができる。
【0126】
PCRプライマー設計において最も重要だと思われる因子には、プライマー長、融解温度(Tm)、およびC/C含量、特異性、相補的なプライマー配列、ならびに3’−末端配列が含まれる。一般に、最適なPCRプライマーは、通常、長さが17〜30塩基で、約20〜80%の、例えば、約50〜60%などのG+C塩基を含む。50℃から80℃の間のTm、例えば、約50〜70℃が一般的には好ましい。
【0127】
PCRプライマーおよびプローブの設計のためのガイドラインに関しては、例えば、PCR Primer,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,1995,pp.133−155に収録されたDieffenbach,C.W.ら、「General Concepts for PCR Primer Design」;PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,CRC Press,London,1994,pp.5−11に収録されたInnisとGelfand,「Optimization of PCRs」;およびPlasterer,T.N.Primerselect:Primer and probe design.Methods Mol.Biol.70:520−527(1997)」)を参照。これらの開示内容はすべて、参照されて本明細書に明示して組み込まれる。
【0128】
n.本発明のキット
本発明の方法において用いられる材料は、周知の手順に従って製造されるキットを調製するのに適している。したがって、本発明は、予後成績もしくは治療に対する反応を予測するための開示遺伝子の発現を定量化するための薬剤を含むキットを提供するが、遺伝子特異的または遺伝子選択性なプローブおよび/またはプライマーを含むことができる。このようなキットは、任意で、腫瘍試料、特に、固定されたパラフィン包埋組織試料からRNAを抽出するための試薬、および/またはRNA増幅用の試薬を含むことができる。また、本キットは、任意で、識別用の説明、ラベル、または本発明の方法でそれらを使用することに関する指示とともに試薬を含むことができる。本キットは、容器(本方法を自動化して実施するのに適したマイクロプレートなど)を含んでいてもよく、それぞれの容器には、本発明において利用されるさまざまな(一般的には濃縮された形態の)試薬のうちの1種類以上、例えば、作成済みのマイクロアレイ、緩衝液、適当なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP;またはrATP、rCTP、rGTP、およびUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、および本発明の1つ以上のプローブおよびプライマー(例えば、適当な長さのポリ(T)、またはRNAポリメラーゼと反応するプロモーターに結合するランダムプライマー)などが入っている。予後情報または予測情報を評価したり定量化したりするために用いられる数学アルゴリズムも、まさしく可能性のあるキットの構成要素である。
【0129】
o.本発明の報告
本発明の方法は、商業的な診断目的のために実施される場合、一般的に、選択された遺伝子の1つ以上の正規化された発現量についての報告または要約を作成する。本発明の方法は、結腸直腸がんと診断された被験体の該癌の外科的切除後の臨床転帰の予測を含む報告を作成する。本発明の方法および報告は、さらに、この報告をデータベース内に保存することも含むことができる。あるいは、本方法は、さらに、被験体のためにデータベース内で記録を作成し、この記録をデータに投入することができる。一つの実施態様において、報告は紙の報告であり、別の実施態様において、報告は音声による報告であり、別の実施態様において、報告は電子的記録である。報告は、医師および/または患者に提供されることを想定している。報告を受け取ることには、さらに、データおよび報告を含むサーバーコンピューターとのネットワーク接続を構築すること、およびサーバーコンピューターにデータおよび報告を要求することが含まれうる。
【0130】
本発明によって提供される方法は、全体または一部を自動化することができる。
【0131】
また、本発明のすべての態様は、例えば、ピアソン相関係数が高いことから明らかなように、開示遺伝子と同時発現される、限られた数の追加的な遺伝子が、開示遺伝子に加えて、および/またはその代わりに、予後検査または予測検査に含まれるように実施することも可能である。
【0132】
本発明を説明してきたが、以下の実施例を参照すれば、同じことがより容易に理解されるであろう。実施例は例示目的で提示されているものであり、如何なる意味においても本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0133】
ゲノムにおける腫瘍発現プロファイルと結腸切除によって治療されたデュークスBおよびデュークスCの患者における再発の可能性との関係を調査する研究
本研究の主な目的は、表Bで規定されている757個の単位複製配列のそれぞれの発現と、化学療法を受けずに結腸切除(手術)を受ける第II病期および第III病期の結腸癌患者の臨床転帰との間に有意な関係があるか否かを判定することであった。
【0134】
研究デザイン
本研究は、結腸切除(手術)のみ、あるいは手術と術後カルメット・ゲラン菌(BCG)を投与された、最大400人のデュークスB(第II病期)およびデュークスC(第III病期)の患者における、全米乳・腸がん手術補助療法プロジェクト(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP))研究C−01およびC−02からの組織データおよび転帰データを用いた予備的研究であった。
【0135】
検査対象患者基準
患者は、NSABP研究C−01:「切除可能な結腸癌の管理における、術後免疫療法および術後化学療法を評価するための臨床試験」、またはNSABP研究C−02:「結腸の腺癌において、5−フルオロウラシルおよびヘパリンの術後門脈内投与を評価するためのプロトコル」のいずれかに参加した。C−01およびC−02の詳細については、以下のURLにあるNSABPのウェブサイトで見ることができる:http://www.nsabp.pitt.edu/NSABP_Protocols.htm#treatment%20closed。
【0136】
NSABPのC01の手術のみの治療群および手術+手術後BCGの治療群に由来する組織試料、ならびにNSABPのC02手術の手術のみの治療群に由来する組織試料を合わせて1つの試料セットとした。
【0137】
除外基準
NSABP研究C−01またはNSABP研究C−02に参加した患者が、以下のものの1つ以上にあてはまる場合には、本研究から除外した。
NSABPの記録中の初回診断から入手可能な腫瘍ブロックがない。
・ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)のスライドを調べて評価したところ、ブロック内の腫瘍が不十分。
・RT−PCR解析用の組織切片から回収されたRNA(<700ng)が不十分。
【0138】
NSABP研究C−01またはNSABP研究C−02に参加した1943人の患者のうち、除外基準を適用したところ、270人分の患者の試料が利用可能であったため、本明細書に開示された遺伝子発現研究に用いた。この270人分の試料の人口統計学的および臨床的な全体的特徴は、元のNSABP複合コホートに類似していた。
【0139】
遺伝子パネル
発現解析のために、7つの参照用遺伝子を含む761個の遺伝子を選択した。これらの遺伝子を、発現量を測定するためにqRT−PCRで使用されるプライマーおよびプローブの配列とともに表Aに示す。
【0140】
実験材料および実験法
750個の癌関連遺伝子の発現、および参照用遺伝子として使用するために指定された7個の遺伝子の発現を、各患者について、登録商標TaqMan RT−PCR法を用いて定量的に評価したが、この方法は、反応あたり1ナノグラムのRNAを投入して1回実施した。
【0141】
データ解析法
参照値の正規化
外部からの影響を正規化するために、RT−PCR法によって得られたサイクル閾値(C)の測定値を、6つの参照用遺伝子のセットの平均発現量に対して正規化した。得られた参照によって正規化された発現測定量は、一般的には0から15までの範囲になるが、ただし、1ユニットの増加は、通常、RNA量の2倍の増加を示す。
【0142】
研究用コホートと、元のNSABP研究用集団との比較
本発明者らは、臨床変数および人口統計学的変数の分布を、評価可能な腫瘍組織ブロックをもつ今回の研究コホートと元となったNSABPのC−01研究およびC−02研究の対象集団とで比較した。分布に臨床的に意味のある差は見られなかった。
【0143】
単変量解析
研究中の757個の単位複製配列のそれぞれについて、本発明者らは、Cox比例ハザードモデルを用いて、遺伝子発現と無再発期間(RFI)の間の関係を調べた。尤度比を統計学的有意性の検定に用いた。ベンジャミンとホックベルグの方法(Benjamini,Y. and Hochberg,Y.(1995).Controlling the false discovery rate:a practical and powerful approach to multiple testing.J.R.Statist.Soc.B 57,289−300)、および再サンプリングおよび並べ替えに基づいた方法(Tusher VG,Tibshirani R,Chu G(2001)Significance analysis of microarrays applied to the ionizing radiation response.Proc Natl Acad Sci USA,98:5116−5121.;Storey JD,Tibshirani R(2001)Estimating false discovery rates under dependence,with applications to DNA microarrays.Stanford: Stanford University,Department of Statistics; Report No.:Technical Report 2001−28.;Korn EL,Troendle J,McShane L,Simon R(2001)Controlling the number of false discoveries:Application to high−dimensional genomic data.Technical Report 003.2001.National Cancer Institute.)を、得られたp−値のセットに適用して偽発見率を推定した。すべての解析を、別の評価項目、すなわち、無遠隔転移生存期間(DRFI)、全生存期間(OS)、および無病生存期間(DFS)のそれぞれについて繰り返した
多変量解析
研究中の757個の単位複製配列のそれぞれについて、本発明者らは、他の標準的な臨床的共変量(腫瘍部位、手術タイプ、腫瘍の悪性度、調べたリンパ節数、および陽性リンパ節の数など)の影響を調節しながら、Cox比例ハザードモデルを用いて遺伝子発現とRFIの関係を調べた。標準的な臨床的共変量のみを含む(縮小)モデルと、標準的な臨床的共変量+遺伝子発現を含む(完全)モデルの対数尤度の差を統計学的有意性の検定法として用いた。
【0144】
非線形的解析法
研究中の757個の単位複製配列のそれぞれについて、本発明者らは、いくつかの異なる方法を用いて、遺伝子発現と再発との間に別の関数関係がないかを調べた。各単位複製配列について、自由度(DF)2の自然スプラインを用いて、遺伝子発現の関数としてRFIのCox比例ハザードモデルに適合させた(Stone C,Koo C.(1985)In Proceedings of the Statistical Computing Section ASA.Washington,DC,45−48)。このモデルについて、2DF尤度比検定によって統計学的有意性を評価した。また、厳密な一次関数として遺伝子発現のRFIの単変量Cox比例ハザードモデルから導き出された(平滑化)マルチンゲール残差のパターンを調べることによって、関数関係も探った(Gray RJ(1992)Flexible methods for analyzing survival data using splines,with applications to breast cancer prognosis.Journal of the American Statistical Asssociation,87:942−951.;Gray RJ(1994)Spline−based tests in survival analysis.Biometrics,50:640−652.;Gray RJ(1990)Some diagnostic methods for Cox regression models through hazard smoothing.Biometrics,46:93−102.)。さらに、各Cox比例ハザードモデルからのマルチンゲール残差の累積合計を用いて、線形性からの逸脱を検出した(Lin D,Wei L,Ying Z.(1993)Checking the Cox Model with Cumulative Sums of Martingale−Based Residuals.Vol.80,No.3,557−572)。
【0145】
病期との相互作用
本発明者らは、遺伝子発現と、第II病期および第III病期の患者のRFIとの間に有意に異なった関係があるか否かを判定した。757個の単位複製配列について、本発明者らは、遺伝子発現および腫瘍病期の(縮小)比例ハザードモデルと、遺伝子発現、腫瘍病期、およびこれらの相互作用に基づく(完全)比例ハザードモデルとの間に有意な差異があるという仮説を検定した。縮小モデルと完全モデルとの対数尤度の違いを、統計学的有意性の検定として用いた。
【0146】
表Aは、実施例に記載した研究に含まれるすべての遺伝子に対するqRT−PCR用プローブとプライマーの配列を示している。
【0147】
表Bは、実施例に記載した研究に含まれるすべての遺伝子の標的単位複製配列を示す。
【0148】
第一の解析研究結果
第一の解析のための参照用遺伝子セットはCLTC、FZD6、NEDD8、RPLPO、RPS13、UBB、UBCなどであった。
【0149】
表1Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無再発期間(RFI)の短期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0150】
表1Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無再発期間(RFI)の長期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0151】
表2Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が全生存(OS)の減少率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0152】
表2Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が全生存(OS)の増加率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0153】
表3Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無病生存期間(DFS)の減少率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0154】
表3Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無病生存期間(DFS)の増加率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0155】
表4Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が遠隔無再発期間(DRFI)の短期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0156】
表4Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が遠隔無再発期間(DRFI)の長期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0157】
表5Aは、解析の対象になった患者の人口統計学的および臨床的な特定の特性を調節する多変量解析に基づき、その遺伝子発現の増加が、無再発期間(RFI)の短期化を予測する指標となる遺伝子について、遺伝子発現とRFIとの間の関連を示している。
【0158】
表5Bは、解析の対象になった患者の人口統計学的および臨床的な特定の特性を調節する多変量解析に基づき、その遺伝子発現の増加が、無再発期間(RFI)の長期化を予測する指標となる遺伝子について、遺伝子発現とRFIとの間の関連性を示している。
【0159】
表6は、自由度2の自然スプラインを用いた非直線比例ハザード解析法に基づいて、遺伝子発現と臨床転帰の間の関連性が測定された遺伝子を示している。
【0160】
表7は、腫瘍の病期に相互作用(p値<0.05)を示すすべての遺伝子を示している。
【0161】
表1Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0162】
【表1】

【0163】
【表2】

【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

【0166】
【表5】

表1Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0167】
【表6】

【0168】
【表7】

【0169】
表2Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてOSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0170】
(表2A)
【表8】

【0171】
【表9】

【0172】
【表10】

【0173】
【表11】

表2Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてOSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0174】
【表12】

【0175】
【表13】

表3Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDFSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0176】
【表14】

【0177】
【表15】

【0178】
【表16】

【0179】
【表17】

【0180】
【表18】

表3Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDFSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0181】
【表19】

【0182】
【表20】

表4Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0183】
【表21】

【0184】
【表22】

【0185】
【表23】

【0186】
【表24】

【0187】
【表25】

表4Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0188】
【表26】

【0189】
【表27】

表5Aは、本解析に含まれた患者の具体的な人口統計学上の特性および臨床的特性を調節して、遺伝子発現とRFIの間の関連を示している。その発現がRFIに相関し(p<0.1)、以下の変数を含む多変量解析において危険率>1を示したすべての遺伝子が列挙されている:腫瘍部位、手術、腫瘍悪性度、調べられたリンパ節、および陽性リンパ節の数。
【0190】
【表28】

【0191】
【表29】

【0192】
【表30】

表5Bは、本解析に含まれた患者の特定の人口統計学上の特性および臨床的特性を調節した、遺伝子発現とRFIの間の関連を示している。その発現がRFIに相関し(p<0.1)、以下の変数を含む多変量解析において危険率<1を示したすべての遺伝子が列挙されている:腫瘍部位、手術、腫瘍悪性度、調べられたリンパ節、および陽性リンパ節の数。
【0193】
【表31】

表6は、自由度2の天然スプラインを用いて、非線形型比例ハザード解析に基づく遺伝子発現と臨床転帰との間の関連を示す。第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団において、RFIとの厳密な線形関係(p<0.05)からの逸脱を示したすべての遺伝子が列挙されている。遺伝子発現とRFIとの関係は、本研究において観察された発現値の範囲全体にわたって一定ではなく、例えば、遺伝子発現の増加は、観察された範囲の一部分ではRFIの持続期間の増加と関係があったかもしないし、また、この範囲の異なった部分ではRFIの持続期間の減少と関係があったかもしれない。
【0194】
【表32】

【0195】
【表33】

【0196】
【表34】

表7は、腫瘍の病期との相互作用(p値<0.05)を示すすべての遺伝子を示している。このデータは、RFIの比例ハザードモデルを、予測指標としての遺伝子発現、腫瘍病期、およびのこれらの相互作用とともに用いてモデル化されたものである。
【0197】
【表35】

【0198】
【表36】

第2の解析研究結果
第2の解析の参照用遺伝子セットはATP5E、CLTC、GPXl、NEDD8、PGKl、UBBなどであった。
【0199】
表1.2Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無再発期間(RFI)の短期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0200】
表1.2Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無再発期間(RFI)の長期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0201】
表2.2Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が全生存(OS)の減少率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0202】
表2.2Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が全生存(OS)の増加率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0203】
表3.2Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無病生存期間(DFS)の減少率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0204】
表3.2Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が無病生存期間(DFS)の増加率を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0205】
表4.2Aは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が遠隔無再発期間(DRFI)の短期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している。
【0206】
表4.2Bは、単変量比例ハザード解析に基づき、その発現増加が遠隔無再発期間(DRFI)の長期化を予測する指標となる遺伝子についての関連性を示している
表5.2Aは、本解析の対象となった患者の特定の人口統計学上の特性および臨床的特性を調節した多変量解析に基づき、その発現増加が無再発期間(RFI)の短期化を予測する指標となる遺伝子について、遺伝子発現とRFIの間の関連性を示す。
【0207】
表5.2Bは、本解析の対象となった患者の特定の人口統計学上の特性および臨床的特性を調節した多変量解析に基づき、その発現増加が無再発期間(RFI)の長期化を予測する指標となる遺伝子について、遺伝子発現とRFIの間の関連性を示す。
【0208】
表6.2は、遺伝子発現と臨床転帰との関連が、非線形型比例ハザードモデルに基づいて、自由度2の自然スプラインを用いて同定された遺伝子を示す。
【0209】
表7.2は、腫瘍の病期との相互作用(p値<0.05)を示すすべての遺伝子を示している。
【0210】
表1.2Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0211】
【表37】

【0212】
【表38】

【0213】
【表39】

【0214】
【表40】

【0215】
【表41】

表1.2Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0216】
【表42】

【0217】
【表43】

【0218】
【表44】

表2.2Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてOSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0219】
【表45】

【0220】
【表46】

【0221】
【表47】

【0222】
【表48】

【0223】
【表49】

表2.2Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてOSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0224】
【表50】

【0225】
【表51】

表3.2Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDFSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0226】
【表52】

【0227】
【表53】

【0228】
【表54】

【0229】
【表55】

【0230】
【表56】

表3.2Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDFSを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0231】
【表57】

【0232】
【表58】

表4.2Aは、危険率>1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0233】
【表59】

【0234】
【表60】

【0235】
【表61】

【0236】
【表62】

【0237】
【表63】

表4.2Bは、危険率<1.0かつp<0.1を示した遺伝子について、臨床転帰と遺伝子発現との間の関連を示している。臨床転帰の測定基準としてDRFIを用いて、第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団に、単変量Cox比例ハザード回帰分析を適用した。
【0238】
【表64】

【0239】
【表65】

表5.2Aは、本解析に含まれた患者の特定の人口統計学上の特性および臨床的特性を調節した、遺伝子発現とRFIの間の関連を示している。その発現がRFIに相関し(p<0.1)、以下の変数を含む多変量解析において危険率>1を示したすべての遺伝子が列挙されている:腫瘍部位、手術後年数、腫瘍の悪性度、治療プロトコル(C−01またはC−02)、BCG治療の有無、および以下のようなリンパ節の状態に応じた患者の分類:陽性リンパ節0個および検査されたリンパ節12個より少、陽性リンパ節0個かつ検査されたリンパ節が12個よりも少ない、陽性リンパ節0個かつ試験されたリンパ節が12個以上、陽性リンパ節が1〜3個、および陽性リンパ節が4個以上。
【0240】
【表66】

【0241】
【表67】

【0242】
【表68】

【0243】
【表69】

表5.2Bは、本解析に含まれた患者の特定の人口統計学上の特性および臨床的特性を調節した、遺伝子発現とRFIの間の関連を示している。その発現がRFIに相関し(p<0.1)、以下の変数を含む多変量解析において危険率<1を示したすべての遺伝子が列挙されている:腫瘍部位、手術後年数、腫瘍の悪性度、治療プロトコル(C−01またはC−02)、BCG治療の有無、および以下のようなリンパ節の状態に応じた患者の分類:陽性リンパ節0個および検査されたリンパ節12個より少、陽性リンパ節0個かつ検査されたリンパ節が12個よりも少ない、陽性リンパ節0個かつ試験されたリンパ節が12個以上、陽性リンパ節が1〜3個、および陽性リンパ節が4個以上。
【0244】
【表70】

【0245】
【表71】

表6.2は、自由度2の天然スプラインを用いて、非線形型比例ハザード解析に基づく遺伝子発現と臨床転帰との間の関連を示す。第II病期(デュークスB)および第III病期(デュークスC)の患者の混合集団において、RFIとの厳密な線形関係(p<0.05)からの逸脱を示したすべての遺伝子が列挙されている。遺伝子発現とRFIとの関係は、本研究において観察された発現値の範囲全体にわたって一定ではなく、例えば、遺伝子発現の増加は、観察された範囲の一部分ではRFIの持続期間の増加と関係があったかもしないし、また、この範囲の異なった部分ではRFIの持続期間の減少と関係があったかもしれない。
【0246】
【表72】

【0247】
【表73】

【0248】
【表74】

表7.2は、腫瘍の病期との相互作用(p値<0.1)を示すすべての遺伝子を示している。このデータは、RFIの比例ハザードモデルを、予測指標としての遺伝子発現、腫瘍病期、およびのこれらの相互作用とともに用いてモデル化されたものである。リンパ節陽性0個であるが、検査されたリンパ節12個より少ない患者は、これらの解析から除外した。
【0249】
【表75】

【0250】
【表76】

【0251】
【表77】

【0252】
【表78】

【0253】
【表79】

【0254】
【表80】

【0255】
【表81】

【0256】
【表82】

【0257】
【表83】

【0258】
【表84】

【0259】
【表85】

【0260】
【表86】

【0261】
【表87】

【0262】
【表88】

【0263】
【表89】

【0264】
【表90】

【0265】
【表91】

【0266】
【表92】

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【表93】

【0268】
【表94】

【0269】
【表95】

【0270】
【表96】

【0271】
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【0272】
【表98】

【0273】
【表99】

【0274】
【表100】

【0275】
【表101】

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【表115】

【0290】
【表116】

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【表125】

【0300】
【表126】

【0301】
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【表129】

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【0310】
【表136】

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【表137】

【0312】
【表138】

【0313】
【表139】

【0314】
【表140】

【0315】
【表141】

【0316】
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【0317】
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【0320】
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【表151】

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【0330】
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【表162】

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【0340】
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【0341】
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【表170】

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【表173】

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【表174】

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【0350】
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【0351】
【表177】

【0352】
【表178】

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【0354】
【表180】

【0355】
【表181】

【0356】
【表182】

【0357】
【表183】

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【表184】

【0359】
【表185】

【0360】
【表186】

【0361】
【表187】

【0362】
【表188】

【0363】
【表189】

【0364】
【表190】

【0365】
【表191】

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【表192】

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【表193】

【0368】
【表194】

【0369】
【表195】

【0370】
【表196】

【0371】
【表197】

【0372】
【表198】

【0373】
【表199】

【0374】
【表200】

【0375】
【表201】

【0376】
【表202】

【0377】
【表203】

【0378】
【表204】

【0379】
【表205】

【0380】
【表206】

【0381】
【表207】

【0382】
【表208】

【0383】
【表209】

【0384】
【表210】

【0385】
【表211】

【0386】
【表212】

【0387】
【表213】

【0388】
【表214】

【0389】
【表215】

【0390】
【表216】

【0391】
【表217】

【0392】
【表218】

【0393】
【表219】

【0394】
本発明は以下の態様を含んでいる。
(1)結腸直腸癌と診断された被験体の該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A〜B、2A〜B、3A〜B、4A〜B、5A〜B、6、および/または7に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含み、ここで
(a)表1A、2A、3A、4A、および/または5Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)表1B、2B、3B、4B、および/または5Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法。
(2)前記被験体がヒト患者である、(1)の方法。
(3)前記発現レベルの証拠が、遺伝子発現プロファイリング法によって得られる、(2)の方法。
(4)前記方法がPCRに基づく方法である、(3)の方法。
(5)前記発現レベルが、1つ以上の参照遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルに対して正規化される、(4)の方法。
(6)前記臨床転帰が、無再発期間(RFI)、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、または無遠隔転移生存期間(DRFI)によって表される、(2)の方法。
(7)前記癌が、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌である、(2)の方法。
(8)前記癌が、デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌である、(7)の方法。
(9)少なくとも2つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(2)の方法。
(10)少なくとも3つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(2)の方法。
(11)少なくとも4つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(2)の方法。
(12)少なくとも5つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(2)の方法。
(13)予測を要約した報告を作成する工程をさらに含む、(2)の方法。
(14)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無再発期間(RFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1Aおよび1Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表1Aまたは5Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該RFIがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表1Bまたは5Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該RFIがより長いと予測されることを示す方法。
(15)前記被験体がヒト患者である、(14)の方法。
(16)前記発現レベルの証拠が、遺伝子発現プロファイリング法によって得られる、(15)方法。
(17)前記方法がPCRに基づく方法である、(16)の方法。
(18)前記RFIがより短いと予測された場合に、前記患者が、外科的除去の後にさらなる療法を受ける、(17)の方法。
(19)前記さらなる療法が、化学療法および/または放射線療法である、(18)の方法。
(20)予測を要約した報告を作成する工程をさらに含む、(15)の方法。
(21)少なくとも2つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(15)の方法。
(22)少なくとも3つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(15)の方法。
(23)少なくとも4つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(15)の方法。
(24)少なくとも5つの前記遺伝子、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含む、(15)の方法。
(25)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における全生存期間(OS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表2Aおよび2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該OSがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該OSがより長いと予測されることを示す方法。
(26)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無病生存期間(DFS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表3Aおよび3Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表3Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DFSがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表3Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DFSがより長いと予測されることを示す方法。
(27)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無遠隔転移生存期間(DRFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表4Aおよび4Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表4Aに列挙された一つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DRFIがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表4Bに列挙された一つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DRFIがより長いと予測されることを示す方法。
(28)デュークスB(第II病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、WIF、CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法。
(29)デュークスC(第III病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、SIR2、ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、およびSIR2からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法。
(30)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1.2A〜B、2.2A〜B、3.2A〜B、4.2A〜B、5.2A〜B、6.2および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含み、ここで
(a)表1.2A、2.2A、3.2A、4.2A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)表1.2B、2.2B、3.2B、4.2B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法。
(31)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無再発期間(RFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1.2A、1.2B、5.2A、および5.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表1.2Aまたは5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該RFIがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表1.2Bまたは5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該RFIがより長いと予測されることを示す方法。
(32)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における全生存期間(OS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表2.2Aおよび2.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表2.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該OSがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表2.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該OSがより長いと予測されることを示す方法。
(33)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無病生存期間(DFS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表3.2Aおよび3.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表3.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DFSがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表3.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DFSがより長いと予測されることを示す方法。
(34)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無遠隔転移生存期間(DRFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表4.2Aおよび4.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表4.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DRFIがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表4.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DRFIがより長いと予測されることを示す方法。
(35)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A〜B、1.2A〜B、2A〜B、2.2A〜B、3A〜B、3.2A〜B、4A〜B、4.2A〜B、5A〜B、5.2A〜B、6、6.2、7および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含み、ここで
(a)表1A、1.2A、2A、2.2A、3A、3.2A、4A、4.2A、5A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)表1B、1.2B、2B、2.2B、3B、3.2B、4B、4.2B、5B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法。
(36)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸直腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無再発期間(RFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A、1.2A、1B、1.2B、5A、5.2A、5B、および5.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表1A、1.2A、5A、または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該RFIがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表1B、1.2B、5B、または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該RFIがより長いと予測されることを示す方法。
(37)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における全生存期間(OS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表2A、2.2A、2B、および2.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表2Aまたは2.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該OSがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表2Bまたは2.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該OSがより長いと予測されることを示す方法。
(38)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無病生存期間(DFS)を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表3A、3.2A、3B、および3.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表3Aまたは3.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DFSがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表3Bまたは3.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DFSがより長いと予測されることを示す方法。
(39)デュークスB(第II病期)またはデュークスC(第III病期)の結腸癌であると診断された被験体の、該癌の外科的切除後における無遠隔転移生存期間(DRFI)の持続期間を予測する方法であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表4A、4.2A、4B、および4.2Bに列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを測定することを含み、ここで
(a)表4Aまたは4.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DRFIがより短いと予測されることを示し、かつ、
(b)表4Bまたは4.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、該DRFIがより長いと予測されることを示す方法。
(40)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、表1A〜B、2A〜B、3A〜B、4A〜B、5A〜B、6、および/または7に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含み、ここで
(a)表1A、2A、3A、4A、および/または5Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)表1B、2B、3B、4B、および/または5Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告。
(41)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、表1.2A〜B、2.2A〜B、3.2A〜B、4.2A〜B、5.2A〜B、6.2および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含み、ここで
(a)表1.2A、2.2A、3.2A、4.2A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)表1.2B、2.2B、3.2B、4.2B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告。
(42)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、表1A〜B、1.2A〜B、2A〜B、2.2A〜B、3A〜B、3.2A〜B、4A〜B、4.2A〜B、5A〜B、5.2A〜B、6、6.2、7および/または7.2に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含み、ここで
(a)表1A、1.2A、2A、2.2A、3A、3.2A、4A、4.2A、5A、および/または5.2Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)表1B、1.2B、2B、2.2B、3B、3.2B、4B、4.2B、5B、および/または5.2Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告。
(43)デュークスB(第II病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、WIF、CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含み、ここで
(a)ALCAM、CD24、CDH11、CENPE、CLTC、CYR61、EMR3、ICAM2、LOX、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SIR2、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)CAPG、CD28、CDC20、CKS1B、DKK1、HSD17B2、およびMMP7からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告。
(44)デュークスC(第III病期)結腸直腸癌と診断された被験体の、該癌の外科的切除後の臨床転帰を予測する報告であって、該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料における、CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、SIR2、ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の予測的RNA転写産物、またはそれらの発現産物の発現レベルを含む情報に基づいた臨床転帰の予測を含み、ここで
(a)CAPG、CD28、CKS1B、CYR61、DKK1、HSD17B2、LOX、MMP7、およびSIR2からなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)ALCAM、CD24、CDC20、CDH11、CENPE、CLTC、EMR3、ICAM2、MADH2、MGAT5、MT3、NUFIP1、PRDX6、SOS1、STAT5B、TFF3、TMSB4X、TP53BP1、およびWIFからなる群から選択される1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す報告。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸癌と診断された被験体の該癌の外科的切除後における臨床転帰を予測する方法であって、
該被験体から得られた癌細胞を含む生物学的試料において、表1A〜B、2A〜B、3A〜B、4A〜B、5A〜B、6、および/または7に列挙された予測的RNA転写産物の1つ以上、またはそれらの発現産物の発現レベルの証拠を測定することを含み、ここで
(a)表1A、2A、3A、4A、および/または5Aに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が低いことを示し、かつ、
(b)表1B、2B、3B、4B、および/または5Bに列挙された1つ以上の遺伝子、またはそれに対応する発現産物の発現が増加しているという証拠が、有望な臨床転帰の可能性が高いことを示す方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−74894(P2013−74894A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272400(P2012−272400)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−550454(P2008−550454)の分割
【原出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504345126)ジェノミック ヘルス, インコーポレイテッド (17)
【出願人】(507145488)エヌエスエービーピー ファウンデーション, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】