説明

結露センサ

【課題】従来よりも単純な構成であって、冷媒通路の形成部品を腐食させることなく、熱交換器の表面に存在する結露水を検出できる結露センサを提供する。
【解決手段】互いに非接触状態の自然電位が異なる第1、第2金属部材を有し、第1金属部材と第2金属部材との間に結露水が存在する場合に、第1金属部材と第2金属部材とを電極とした局部電池が形成され、局部電池の起電力に基づいて結露水を検出する構成とする。そして、第1金属部材として蒸発器20のサイドプレート26を利用し、サイドプレート26の表面上に第2金属部材としての異種金属部材32を配置し、異種金属部材32とサイドプレート26との間隔d1を、異種金属部材32とチューブ21との最短距離D1よりも小さくする。これにより、異種金属部材32とチューブ21との間での局部電池の形成を防止でき、チューブ21の腐食を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風空気と冷媒との間で熱交換させる熱交換器に設けられ、熱交換器の表面に存在する結露水を検出する結露センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置では、特許文献1に記載のように、車室内に向かう送風空気を冷却する蒸発器の表面に結露水が存在する状態(蒸発器の表面が濡れている状態)の上限温度となるように、蒸発器の温度を制御している。
【0003】
この蒸発器の温度制御では、蒸発器の空気流れ上流側に設けた温・湿度センサによって、蒸発器に吸入される空気の温度および湿度を測定し、その測定結果から吸入空気の露点温度を算出し、この算出した露点温度に応じて、蒸発器の表面に結露が生じるように蒸発器の目標温度を設定している。
【0004】
また、温・湿度センサとしては、一般的に、温度により抵抗値が変化することで温度を検出するサーミスタと湿度により抵抗値(もしくは静電容量)が変化することにより湿度を検出する感湿膜とを一体で構成したものが採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−137532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の温・湿度センサでは、湿度を検出するために乾湿膜という特殊な材料が必要となる。また、温・湿度センサは、空気の温度および湿度を測定するものであるため、温度と湿度の2つの値から露点温度を算出するための複雑な処理回路が必要となる。このため、従来よりも単純な構成で、蒸発器表面に存在する結露水を検出できる結露センサが望まれる。
【0007】
そこで、本発明者は、種類の異なる2種類の金属部材の間に水分などの電解溶液が存在する場合、その2種類の金属部材を電極とした局部電池が形成され、この局部電池から起電力が発生することから、この局部電池を利用して結露水を検出する構成の結露センサを検討した。この結露センサによれば、局部電池を形成する2種類の金属部材と、局部電池の起電力を検出する検出手段とがあれば、結露水が検出できることから、乾湿膜や露点算出用の複雑な処理回路が不要となり、従来よりも単純な構成となる。
【0008】
ところが、局部電池の陽極側では、金属がイオン化し水分中に溶け出して電子が生じる反応が起きるので、陽極側の金属が腐食する。このため、局部電池の形成場所によっては、チューブ等の冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品が、局部電池の陽極側となって腐食し、冷媒が漏れてしまう問題が生じる。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、従来よりも単純な構成であって、冷媒通路の形成部品の腐食を防止しつつ、熱交換器の表面に存在する結露水を検出できる結露センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷媒通路を流れる冷媒と冷媒通路の外側を流れる送風空気との間で熱交換させる熱交換器(20)に設けられ、熱交換器(20)の表面に存在する結露水を検出する結露センサにおいて、
互いに非接触状態の自然電位が異なる第1金属部材(22、26、33)と第2金属部材(32)とを有し、第1金属部材(22、26、33)と第2金属部材(32)との間に結露水が存在する場合に、第1金属部材(22、26、33)と第2金属部材(32)とを電極とした局部電池が形成され、局部電池の起電力に基づいて結露水を検出する構成であって、
第1金属部材(22、26、33)と第2金属部材(32)は、熱交換器(20)のうち冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品(21、23、24)とは異なる部位に位置することを特徴としている。
【0011】
これによると、局部電池を利用して結露水を検出する構成としているので、従来よりも単純な構成で、熱交換器の表面に存在する結露水を検出することができる。
【0012】
そして、本発明では、第1、第2金属部材が熱交換器のうち冷媒通路の形成部品とは異なる部位に位置するので、この位置に局部電池を形成させることができ、冷媒通路の形成部品で局部電池が形成されるのを防止できる。この結果、冷媒通路の形成部品の腐食を防止できる。
【0013】
請求項1に記載の第1金属部材としては、請求項2に記載の発明のように、冷媒通路の非形成部品を用いることができる。
【0014】
この場合では、第2金属部材(32)を、冷媒通路の非形成部品(22、26)の表面上に配置し、
第1金属部材(22、26)と第2金属部材(32)との間隔(d1、d2)を、冷媒通路の形成部品(21)と第2金属部材(32)の最短距離(D1、D2)よりも短く設定することが好ましい。
【0015】
これによると、距離が遠い金属同士よりも距離が近い金属同士の方が局部電池を形成しやすいことから、確実に、冷媒通路の非形成部品と第2金属部材の間で局部電池が形成され、冷媒通路の形成部品と第2金属部材との間で局部電池が形成されないようにできる。この結果、冷媒通路の形成部品の腐食を確実に防止できる。
【0016】
また、請求項1に記載の第1金属部材としては、請求項3に記載の発明のように、冷媒通路の非形成部品とは別の部材を用いることができる。
【0017】
この場合では、第1金属部材(33)と第2金属部材(32)を、熱交換器(20)のうち冷媒通路を形成しない冷媒通路の非形成部品(26)の表面上に配置し、
第1金属部材(33)と第2金属部材(32)との間隔(d3)を、冷媒通路の形成部品(21)と第1金属部材(33)との最短距離(D3)および冷媒通路の形成部品(21)と第2金属部材(32)の最短距離(D4)よりも小さく設定することが好ましい。
【0018】
これによると、距離が遠い金属同士よりも距離が近い金属同士の方が局部電池を形成しやすいことから、確実に、第1、第2金属部材の間で局部電池が形成され、冷媒通路の形成部品と第1、第2金属部材の一方との間で局部電池が形成されないようにできる。この結果、冷媒通路の形成部品の腐食を確実に防止できる。
【0019】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態における車両用空調装置の部分断面図であり、(b)は蒸発器の斜視図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ図1(b)中の領域A1の部分断面斜視図、断面図である。
【図3】金属の自然電位を示す図表である。
【図4】第1実施形態の結露センサを用いた蒸発器の濡れ制御を示すタイムチャートである。
【図5】第2実施形態の結露センサの部分断面斜視図である。
【図6】(a)、(b)はそれぞれ第3実施形態の結露センサの部分断面斜視図、断面図である。
【図7】第4実施形態の結露センサの部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態は、車両用空調装置の蒸発器表面に存在する結露水を検出する結露センサに本発明を適用したものである。図1(a)に車両用空調装置の部分断面図を示し、図1(b)に蒸発器の斜視図を示す。なお、図1(a)、(b)の上下方向が車両の上下方向である。
【0023】
図1(a)に示すように、車両用空調装置1は、車室内に向かう送風空気の空気通路を形成する空調ケース10と、空調ケース内に収容された蒸発器20とを備えている。
【0024】
蒸発器20は、送風機によって形成された車室内に向かう送風空気と冷媒との間の熱交換によって、送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器20は、図示しない圧縮機、放熱器、減圧装置とともに冷媒の循環回路を構成し、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成している。
【0025】
また、図示しないが、空調ケースには、送風空気を形成する送風機と、蒸発器通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器と、加熱用熱交換器を迂回して流れる蒸発器通過後の空気と加熱用熱交換器通過後の空気との混合割合を調整するエアミックスドアとが収容されている。
【0026】
また、車両用空調装置は、送風機、圧縮機、エアミックスドア等の各種機器を制御する制御装置(ECU)を備えている。
【0027】
図1(b)に示すように、蒸発器20は、冷媒が流れる冷媒通路を形成する複数のチューブ21と、チューブ21の外面に設けられ、冷媒と空気との熱交換を促進させるフィン22と、複数のチューブ21の一端側に連通し、蒸発器20の冷媒入口から流入した冷媒を複数のチューブ21に分配させる入口側タンク23と、複数のチューブ21の他端側に連通し、複数のチューブ21を流れる冷媒を集合させて蒸発器20の冷媒出口から冷媒を流出させる出口側タンク24と、複数本のチューブ21およびフィン22によって構成される熱交換コア部25の端部に設けられ、蒸発器20の形状および強度を保つためのサイドプレート26とを備えている。
【0028】
チューブ21、フィン22、入口側タンク23、出口側タンク24、サイドプレート26は、同じ金属、例えば、Alで構成されている。チューブ21、入口側タンク23および出口側タンク24が冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品であり、フィン22とサイドプレート26が冷媒通路を形成しない冷媒通路の非形成部品である。
【0029】
サイドプレート26は、断面コ字形状であって、熱交換コア部25のうち最も外側に位置するフィン22と接合している。
【0030】
このような構成の蒸発器20は、熱交換コア部25において、チューブ21内を流れる冷媒と、空調ケース10内を流れる空気とが、フィン22を介して熱交換することにより、冷媒が空気の熱を吸熱して、空気を冷却する。
【0031】
そして、図1(a)に示すように、送風により蒸発器20の空気流れ下流側に排出される結露水Wを検出するため、結露センサ30が蒸発器20の空気流れ下流側の部位に設けられている。具体的には、図1(b)に示すように、結露センサ30は、蒸発器20の設けられた一対のサイドプレート26の一方であって、サイドプレート26のうち蒸発器20の空気流れ下流側の部位に設けられている。
【0032】
ここで、図2(a)、(b)に結露センサの拡大図を示す。図2(a)、(b)は、それぞれ、図1(b)中の領域A1の部分断面斜視図、断面図である。
【0033】
図2(a)、(b)に示すように、結露センサ30は、サイドプレート26と、絶縁体31と、異種金属部材32とを有して構成されている。サイドプレート26が本発明の第1金属部材に相当し、異種金属部材32が本発明の第2金属部材に相当する。具体的には、断面コ字形状のサイドプレート26のうちフィン22から離れる側に屈曲している部分26aの上に、平板形状の絶縁体31と、平板形状の異種金属部材32とが順に積層されている。そして、異種金属部材32のフィン22側の端面の位置が、サイドプレート26のフィン22側の端面の位置と一致している。これにより、異種金属部材32とサイドプレート26とにわたって結露水が付着しやすい構成となっている。
【0034】
異種金属部材32は、サイドプレート26を構成する金属(本例では、Al)とは異なる種類の金属材料で構成された部材であり、本例では、Cuで構成されている。
【0035】
絶縁体31は、サイドプレート26と異種金属部材32とを非接触の状態とするために用いられており、サイドプレート26と異種金属部材32との間に配置されている。絶縁体31としては、樹脂、セラミックス等の絶縁材料で構成されたものを用いることができる。絶縁体31は、サイドプレート26および異種金属部材32と接着等によって固定されている。
【0036】
そして、サイドプレート26と異種金属部材32とは、ECU40と電気的に接続されており、ECU40を介して、サイドプレート26と異種金属部材32との間に電流が流れる回路が構成されている。サイドプレート26はECU40内のA/Dコンバータ41に接続され、異種金属部材32はGNDに接続されている。
【0037】
A/Dコンバータ41は、ECU40の入力部および起電力の検出部として機能する部分であり、サイドプレート26と異種金属部材32との間に発生した電圧をアナログ値からデジタル値に変換するものである。
【0038】
本実施形態の結露センサ30は、サイドプレート26の空気流れ下流側の部位に局部電池(腐食電池もしくは水電池とも言われる)を形成し、この局部電池の起電力に基づいて、蒸発器表面に存在する結露水を検出するものである。
【0039】
ここで、局部電池は、互いに非接触状態である種類の異なる2種類の金属の間(異種金属間)に水分などの電解溶液が存在する場合に形成されるものであり、両者の自然電位が異なることから、異種金属間に電位差(電圧、起電力)が生じ、電流が流れる。
【0040】
図3に、Al、Cuおよび他の金属の自然電位を示す。本実施形態では、サイドプレート26と異種金属部材32とを非接触状態としており、サイドプレート26を構成するAlと、異種金属部材を構成するCuの自然電位は、図3に示すように、それぞれ、「−0.75」V、「−0.2」Vであり、両者の自然電位は異なっている。
【0041】
このため、図2(b)に示すように、サイドプレート26と異種金属部材32の両方のフィン22側の端面にわたって結露水Wが存在すると、サイドプレート26と異種金属部材32とを電極とした局部電池が形成され、この局部電池で発生した電圧が結露センサ30から出力される。このときの結露センサ30の出力電圧Vsは、Vs=−0.2−(−0.75)=0.55(V)となる。
【0042】
したがって、サイドプレート26と異種金属部材32との間の電圧を測定し、測定した電圧値が0よりも大きな所定値となっていれば、サイドプレート26と異種金属部材32との間に結露水Wが存在することがわかる。
【0043】
このように、本実施形態の結露センサ30は、サイドプレート26の上に、絶縁体31、異種金属部材32を積層した構造であり、サイドプレート26と異種金属部材32との間の電圧を検出する構成なので、上記背景技術の欄で説明した温・湿度センサと比較して、乾湿膜や露点算出用の複雑な処理回路が不要となり、従来よりも単純な構成となっている。
【0044】
ところで、上記発明が解決しようとする課題の欄で説明した通り、局部電池では、自然電位の低い方の金属が陽極側となり、陽極側の金属がイオン化し水分中に溶け出すので、陽極側の金属が腐食し、やせ細ってしまう。
【0045】
このため、局部電池を形成する場所として、本実施形態と異なり、チューブ21の位置を選び、チューブ21の表面上に異種金属部材32を配置して、チューブ21と異種金属部材32との間で局部電池を形成させると、チューブ21を構成するAlは、異種金属部材32を構成するCuよりも自然電位が低いので、チューブ21が陽極側となり、腐食によってチューブ21の機械的強度が低下して、チューブ21内を流れる冷媒が漏れてしまうことが考えられる。
【0046】
そこで、本実施形態では、チューブ21を電極として局部電池が形成されず、サイドプレート26を電極として局部電池が形成されるように、サイドプレート26の表面上に異種金属部材32を配置している。
【0047】
さらに、絶縁体31の厚さd1、すなわち、サイドプレート26と異種金属部材32との間隔d1を、チューブ21と異種金属部材32との最短距離D1よりも小さく設定している。これは、金属同士の間に存在する水分は電気抵抗となり、金属同士の距離が遠いほど電気抵抗が大きくなるため、距離が遠い金属同士よりも距離が近い金属同士の方が、局部電池が形成されやすいからである。
【0048】
これにより、本実施形態では、確実に、サイドプレート26と異種金属部材32との間で局部電池が形成され、チューブ21と異種金属部材32との間で局部電池が形成されないようになっている。
【0049】
この結果、腐食は、サイドプレート26で発生し、チューブ21で発生しないので、冷媒漏れが発生することを確実に防止できる。
【0050】
なお、蒸発器20の表面に発生した結露水は、送風によって空気流れ下流側に流されるため、チューブ21とサイドプレート26とを繋ぐように結露水が存在することはない。そこで、本実施形態では、異種金属部材32のフィン22側の端面の位置を、サイドプレート26のフィン22側の端面に一致させて、チューブ21と異種金属部材32との間に結露水が存在しないようにしている。これによっても、本実施形態では、チューブ21と異種金属部材32との間で局部電池が形成されないようになっている。
【0051】
また、本実施形態では、図1(a)、(b)に示すように、異種金属部材32を入口側、出口側タンク23、24から離して配置しており、図1(b)に示すように、サイドプレート26と異種金属部材32との間隔d1を、異種金属部材32と入口側タンク23との最短距離D5および異種金属部材32と出口側タンク24との最短距離D6よりも小さく設定している。
【0052】
これにより、異種金属部材32と入口側、出口側タンク23、24との間で局部電池が形成されないようになっており、入口側タンク23および出口側タンク24で腐食が発生せず、冷媒漏れが発生することを確実に防止できる。
【0053】
ちなみに、本実施形態では、サイドプレート26が陽極側となることから、腐食を考慮して、サイドプレート26の肉厚を従来よりも厚く設定している。これにより、蒸発器20全体の耐久性を持たせている。
【0054】
また、本実施形態では、サイドプレート26が陽極側となるように、異種金属部材32をCuで構成したが、Cuに限らず、蒸発器20(チューブ21)を構成するAlよりも自然電位が高い他の金属で構成しても良い。
【0055】
次に、このような構成の結露センサ30を用いたECU40の蒸発器20の温度制御について説明する。図4は、ECUが実行する蒸発器の濡れ制御を示すタイムチャートである。
【0056】
この蒸発器20の濡れ制御とは、臭い発生の防止と省エネの両立を図るために、蒸発器20の表面を濡れた状態での上限温度、すなわち、ほぼ露点温度となるように蒸発器の温度を制御するものである。
【0057】
ECU40は、蒸発器表面の濡れ状況に応じて、フィン22の温度を検出する蒸発器温度センサの検出温度が目標の蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機の冷媒吐出能力(例えば、可変容量式の圧縮機では、圧縮機の冷媒吐出容量)を制御する。
【0058】
具体的には、図4に示すように、時刻t0で、エンジンON→A/CスイッチONとなったとき、ECU40は、初期設定等を実施して圧縮機の作動を開始する。このとき、目標蒸発器温度TEOとして、外気温等の空調熱負荷に基づいて算出した初期値を用いる。
【0059】
そして、時刻t0から時間が経過して、実際の蒸発器温度が露点よりも下がると、蒸発器表面が結露し始める(濡れ始める)。この結露水が結露センサ30に接触すると、結露センサ30が電気化学反応(局部電池反応)を開始して起電力が発生する。この起電力はA/Dコンバータ41によって検出されるので、時刻t1〜t2のように、結露センサの出力電圧が所定値となった場合に、ECU40は、蒸発器表面が濡れていると判定する。
【0060】

ECU40は、蒸発器表面が濡れていると判定している間(時刻t1〜t2の間)、TEOを所定値(例えば、0.5℃)ずつ段階的に上昇させる。すなわち、時刻t0〜t1の間は、TEOを初期値で固定していたが、時刻t1〜t2の間では、TEOを初期値から所定時間毎に所定値ずつ上昇させる。
【0061】
このように、TEOを少しずつ段階的に上昇させていくと、実際の蒸発器温度は、いつか露点温度以上の範囲となる。この範囲では、結露水が発生せず、蒸発器表面に結露水が存在しなくなるため、結露センサ30の出力電圧は0Vとなる(時刻t2)。この場合、ECUは、蒸発器表面が乾いていると判定し、TEOを所定値(例えば0.5℃もしくはそれ以上)ずつ段階的に下降させる(時刻t2〜t3)。
【0062】
これにより、実際の蒸発器温度が露点よりも下がり、再度、蒸発器表面に結露水が発生する。
【0063】
時刻t3以降では、このようなTEOの上昇と下降とを繰り返すことで、蒸発器温度をほぼ露点温度となるよう制御でき、蒸発器表面を濡れた状態に維持することが可能となる。
【0064】
(第2実施形態)
図5に、本実施形態の結露センサ30の部分断面斜視図を示す。
【0065】
第1実施形態では、異種金属部材32を、チューブ21を構成するAlよりも自然電位が高い金属で構成したが、本実施形態では、異種金属部材32を、チューブ21を構成するAlよりも自然電位が低い金属、例えば、Zn、Mg等で構成している(図3参照)。
【0066】
そして、異種金属部材32をECU40内のA/Dコンバータ41に接続し、サイドプレート26をGNDに接続している。なお、結露センサ30の他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態では、異種金属部材32の方がサイドプレート26よりも自然電位が低い金属で構成されているので、異種金属部材32が陽極側となる。この結果、腐食は異種金属部材32で発生し、サイドプレート26で発生しないので、サイドプレート26の腐食を防止できる。
【0068】
(第3実施形態)
図6(a)、(b)にそれぞれ本実施形態の結露センサ30の部分断面斜視図、断面図を示す。本実施形態の結露センサ30は、フィン22の位置に局部電池を形成するようにしたものである。
【0069】
具体的には、本実施形態の結露センサ30は、図6(a)、(b)に示すように、第1実施形態の図2(a)の結露センサ30に対して、異種金属部材32の位置をフィン22側にずらしたものである。異種金属部材32は、チューブ21を電極として局部電池が形成されず、フィン22を電極として局部電池が形成されるように、フィン22の表面上のチューブ21から離れた位置に配置されている。フィン22が本発明の第1金属部材に相当し、異種金属部材32が本発明の第2金属部材に相当する。
【0070】
また、異種金属部材32は、絶縁体31の上に積層されているため、異種金属部材32とフィン22との間が空いており、両者が非接触の状態となっている。このため、図6(b)に示すように、異種金属部材32とフィン22との間に結露水Wが付着しやすい構成となっている。
【0071】
異種金属部材32は、第1実施形態と同様に、フィン22を構成するAlよりも自然電位が高い金属、例えば、Cu等で構成されている。このため、本実施形態では、フィン22が陽極側となる。
【0072】
また、フィン22と異種金属部材32とは、ECU40を介して、両者の間に電流が流れる回路が構成されており、陽極側のフィン22がサイドプレート26を介してECU40内のA/Dコンバータ41に電気的に接続され、異種金属部材32がGNDに接続されている。
【0073】
また、図6(b)に示すように、異種金属部材32は、フィン22と異種金属部材32との間隔d2は、チューブ21と異種金属部材32との最短距離D2よりも小さく設定されている。
【0074】
これにより、本実施形態では、確実に、フィン22と異種金属部材32との間で局部電池が形成され、チューブ21と異種金属部材32との間で局部電池が形成されないようになっている。この結果、腐食は、フィン22で発生し、チューブ21で発生しないので、冷媒漏れが発生することを確実に防止できる。
【0075】
同様に、入口側タンク23および出口側タンク24で腐食が発生しないように、異種金属部材32は、入口側、出口側タンク23、24から離れた位置に配置されており、フィン22と異種金属部材32との間隔d2を、異種金属部材32と入口側タンク23との最短距離D5および異種金属部材32と出口側タンク24との最短距離D6よりも小さくしている。
【0076】
なお、本実施形態では、フィン22と異種金属部材32との間隔d2は、サイドプレート26と異種金属部材32との間隔d1と同じであるため、サイドプレート26と異種金属部材32との間に結露水が存在すれば、第1実施形態と同様に、サイドプレート26と異種金属部材32との間でも局部電池が形成される。しかし、本実施形態は、サイドプレート26と異種金属部材32との間よりも、フィン22と異種金属部材32との間に、結露水が付着しやすいので、局部電池は、主に、フィン22と異種金属部材32との間で形成される。
【0077】
また、本実施形態では、フィン22を構成するAlよりも自然電位が高い金属で異種金属部材32を構成したが、第2実施形態のように、フィン22を構成するAlよりも自然電位が低い金属で異種金属部材32を構成することもできる。これにより、フィン22の腐食を防止できる。
【0078】
(第4実施形態)
図7に本実施形態の結露センサの部分断面斜視図を示す。第1、第2実施形態では、サイドプレート26を局部電池の一方の電極として用いたが、本実施形態では、サイドプレート26の代わりに、サイドプレート26とは別の金属部材33を局部電池の一方の電極として用いている。
【0079】
すなわち、図7に示すように、サイドプレート26の表面上に、第1異種金属部材33と第2異種金属部材32とを配置している。第1異種金属部材33がサイドプレート26側に位置し、第2異種金属部材32がサイドプレート26から離れた側に位置し、第2異種金属部材32が第1実施形態の異種金属部材32に対応している。なお、本実施形態の第1、第2異種金属部材33、32が、それぞれ、本発明の第1、第2金属部材に相当する。
【0080】
第1異種金属部材33と第2異種金属部材32は、互いに種類が異なる金属で構成された金属部材であり、蒸発器20を構成する金属(Al)よりも自然電位が高い金属、例えば、CuとAuで構成されている。
【0081】
そして、サイドプレート26と第1異種金属部材33との間には、断面コ字形状の絶縁体31の一部分31aが位置し、第1異種金属部材33と第2異種金属部材32との間には、絶縁体31の他の部分31bが位置している。これにより、サイドプレート26と第1異種金属部材33とは絶縁され、第1異種金属部材33と第2異種金属部材32とは非接触状態となっている。
【0082】
また、第1異種金属部材33と第2異種金属部材32とは、ECU40と電気的に接続されており、ECU40を介して、両者の間に電流が流れる回路が構成されている。第1異種金属部材33がECU40内のA/Dコンバータ41に接続され、第2異種金属部材32がGNDに接続されている。
【0083】
これにより、第1異種金属部材33と第2異種金属部材32との間に結露水が存在すると、第1異種金属部材33と第2異種金属部材32との間で局部電池を形成する構成となっている。
【0084】
ここで、局部電池を形成する場所として、チューブ21の位置を選び、第1、第2異種金属部材33、32をチューブ21の表面上に配置すると、第1、第2異種金属部材33、32はチューブ21よりも自然電位が高い金属で構成されているので、チューブ21と第1、第2異種金属部材33、32との間で局部電池が形成され、チューブ21が陽極側となって腐食してしまう恐れがある。
【0085】
そこで、本実施形態では、チューブ21を電極として局部電池が形成されないように、チューブ21から離れたサイドプレート26の表面上に第1、第2異種金属部材33、32を配置して、サイドプレート26の位置で局部電池が形成されるようにしている。
【0086】
さらに第1異種金属部材33と第2異種金属部材32との間隔d3を、チューブ21と第1異種金属部材33との最短距離D3およびチューブ21と第2異種金属部材32との最短距離D4よりも小さく設定している。
【0087】
これにより、確実に、第1、第2異種金属部材33、32間で局部電池が形成され、チューブ21と第1、第2異種金属部材33、32との間で局部電池が形成されないようになっている。この結果、腐食は、第1、第2異種金属部材33、32のうち自然電位が低い第1異種金属部材32で発生し、チューブ21で発生しないので、冷媒漏れが発生することを確実に防止できる。
【0088】
また、図示しないが、入口側タンク23および出口側タンク24についても、チューブ21と同様に、第1異種金属部材33と第2異種金属部材32との間隔d3が、入口側、出口側タンク23、24と第1異種金属部材33との最短距離および入口側、出口側タンク23、24と第2異種金属部材32との最短距離よりも小さく設定されている。これにより、入口側タンク23および出口側タンク24において、第1、第2異種金属部材33、32との間で局部電池が形成されないようになっている。
【0089】
なお、本実施形態では、サイドプレート26に近い側の第1異種金属部材33を、蒸発器20を構成する金属(Al)よりも自然電位が高い金属で構成したが、蒸発器20を構成する金属と同じ金属(Al)で構成しても良い。これにより、第1異種金属部材33とフィン22、サイドプレート26との間での局部電池が形成されるのを防止でき、フィン22、サイドプレート26の腐食を防止できる。なお、この効果については、第1異種金属部材33を、蒸発器20と同じ金属で構成する場合だけでなく、蒸発器20を構成する金属と自然電位が同程度の金属で構成した場合でも得られる。ちなみに、ここでいう自然電位が同程度とは、自然電位差が±0.25V程度以内を意味する。
【0090】
また、フィン22、サイドプレート26の腐食を防止するという観点より、第1異種金属部材33を、蒸発器20を構成する金属(Al)よりも自然電位が低い金属で構成しても良い。
【0091】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、蒸発器20の設けられた一対のサイドプレート26の一方に、結露センサ30を設けたが、一対のサイドプレート26の両方に結露センサ30を設けても良い。
【0092】
また、異種金属部材32の大きさは、図1(a)、(b)に示す大きさに限らず、他の大きさに変更しても良い。
【0093】
(2)第1、第2実施形態では、サイドプレート26と異種金属部材32とを非接触の状態とするために、サイドプレート26と異種金属部材32との間に、絶縁体31を配置したが、サイドプレート26と異種金属部材32とを非接触の状態にできれば、絶縁体31を省略しても良い。
【0094】
同様に、第4実施形態における第1異種金属部材33と第2異種金属部材32とを非接触状態にできれば、その間に配置した絶縁体31を省略しても良い。
【0095】
(3)上述の各実施形態では、局部電池の起電力、すなわち、出力電圧の大きさから結露水を検出したが、局部電池の電流の大きさから結露水を検出するようにしても良い。ちなみに、一般的に、電圧を用いて電流が測定されることから、電流の大きさから結露水を検出する場合も、起電力(電圧)に基づいて、結露水を検出していると言える。
【0096】
(4)上述の各実施形態では、結露センサによる結露水の検出対象が、車両用空調装置の熱交換器であったが、結露センサによる結露水の検出対象を、車両以外の他の空調装置の熱交換器とすることもできる。また、結露センサによる結露水の検出対象の熱交換器は、冷媒と送風空気との熱交換によって冷媒が蒸発する蒸発器に限らず、冷媒が蒸発しない熱交換器であっても良い。
【0097】
(5)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0098】
20 蒸発器(熱交換器)
21 チューブ(冷媒通路の形成部品)
22 フィン(冷媒通路の非形成部品、第1金属部材)
23 入口側タンク(冷媒通路の形成部品)
24 出口側タンク(冷媒通路の形成部品)
26 サイドプレート(冷媒通路の非形成部品、第1金属部材)
30 結露センサ
31 絶縁体
32 異種金属部材、第2異種金属部材(第2金属部材)
33 第1異種金属部材(第1金属部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒通路を流れる冷媒と冷媒通路の外側を流れる送風空気との間で熱交換させる熱交換器(20)に設けられ、前記熱交換器(20)の表面に存在する結露水を検出する結露センサにおいて、
互いに非接触状態の自然電位が異なる第1金属部材(22、26、33)と第2金属部材(32)とを有し、前記第1金属部材(22、26、33)と前記第2金属部材(32)との間に結露水が存在する場合に、前記第1金属部材(22、26、33)と前記第2金属部材(32)とを電極とした局部電池が形成され、前記局部電池の起電力に基づいて結露水を検出する構成であって、
前記第1金属部材(22、26、33)と前記第2金属部材(32)は、前記熱交換器(20)のうち前記冷媒通路を形成する冷媒通路の形成部品(21、23、24)とは異なる部位に位置することを特徴とする結露センサ。
【請求項2】
前記第1金属部材は、前記熱交換器(20)のうち前記冷媒通路を形成しない冷媒通路の非形成部品(22、26)であり、
前記第2金属部材(32)は、前記冷媒通路の非形成部品(22、26)の表面上に配置されており、
前記第1金属部材(22、26)と前記第2金属部材(32)との間隔(d1、d2)が、前記冷媒通路の形成部品(21)と前記第2金属部材(32)の最短距離(D1、D2)よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の結露センサ。
【請求項3】
前記第1金属部材(33)と前記第2金属部材(32)は、前記熱交換器(20)のうち冷媒通路を形成しない冷媒通路の非形成部品(26)の表面上に配置されており、
前記第1金属部材(33)と前記第2金属部材(32)との間隔(d3)が、前記冷媒通路の形成部品(21)と前記第1金属部材(33)との最短距離(D3)および前記冷媒通路の形成部品(21)と前記第2金属部材(32)の最短距離(D4)よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の結露センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−209013(P2011−209013A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75124(P2010−75124)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】