説明

絞り機構及び光学機器

【課題】小型化された絞り機構及び光学機器を提供する。
【解決手段】絞り機構(50)は、絞り動作に応じて駆動される駆動部材(60)と、駆動部材(60)に駆動されて絞り動作を行う絞り部材(72)と、駆動部材(60)及び絞り部材(72)の少なくとも一方に設けられた第1の係合部(62)と、駆動部材(60)及び絞り部材(72)の他方に設けられ、第1の係合部(62)と係合する第2の係合部(74)と、駆動部材(60)及び絞り部材(72)の少なくとも一方に設けられ、第1の係合部(62)と第2の係合部(74)とが対向する方向に付勢する付勢部材(76)等とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り機構及び光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、絞り込みレバーの作動調子や耐久性の向上を図ることができる交換レンズの絞り装置が知られている。例えば、特許文献1が知られている。
しかし、近年、カメラは、そのサイズが小型化される傾向にあり、絞り機構もより小型化されたものが望まれていた。
【特許文献1】実用新案登録第2559958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、小型化された絞り機構及び光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の一実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、絞り動作に応じて駆動される駆動部材(60)と、前記駆動部材(60)に駆動されて絞り動作を行う絞り部材(72)と、前記駆動部材(60)及び前記絞り部材(72)の少なくとも一方に設けられた第1の係合部(62)と、前記駆動部材(60)及び前記絞り部材(72)の他方に設けられ、前記第1の係合部(62)と係合する第2の係合部(74)と、前記駆動部材(60)及び前記絞り部材(72)の少なくとも一方に設けられ、前記第1の係合部(62)と前記第2の係合部(74)とが対向する方向に付勢する付勢部材(76)と、を備える絞り機構(50)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載された絞り機構(50)であって、前記第1の係合部(62)及び前記第2の係合部(74)の少なくとも一方は、突起であること、を特徴とする絞り機構(50)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載された絞り機構(50)であって、前記付勢部材(76)は、板バネであること、を特徴とする絞り機構(50)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された絞り機構(50)であって、前記付勢部材(76)は、かしめ固定されていること、を特徴とする絞り機構(50)である。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された絞り機構(50)であって、前記付勢部材(76)は、付勢対象物(62)から外れることを防止する外れ防止部(76b)を備えること、を特徴とする絞り機構(50)である。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された絞り機構(50)を備える光学機器(10)である。
なお、符号を付して説明した構成は適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、小型化された絞り機構及び光学機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。なお、本発明の光学機器は、例えば、スチルカメラ、ビデオカメラ、レンズ鏡筒等とすることができるが、以下の実施形態では、一眼レフ型のカメラを例にとって説明する。
【0007】
[実施形態]
図1は、実施形態のカメラを示す模式図である。
カメラ10は、カメラボディ20と、レンズ鏡筒30とを備える。
カメラボディ20は、被写体の光学像を電気信号に変換する撮像素子21と、絞りの設定を行うボディ側のボディ側連動部22と、ボディ側連動部22を駆動する駆動部23とを備える。
レンズ鏡筒30は、カメラボディ20に着脱可能な交換レンズである。なお、本実施形態では、レンズ鏡筒30は、交換レンズである例を示したが、これに限らず、カメラボディと一体型のレンズ鏡筒としてもよい。
【0008】
レンズ鏡筒30は、レンズ40と、レンズ40の絞り具合を調整する絞り機構50とを備える。絞り機構50は、絞りの設定を行うレンズ側のレンズ側連動部61等を有する絞り板部材60と、支持部材71,カム部材72及び絞り羽根73等を有する絞りユニット70等とを備える。なお、絞り機構50の詳細は後述する。
【0009】
図2は、実施形態の絞り機構の詳細を示す図である。
絞り機構50は、カメラボディ20(図1参照)側に配置された絞り板部材60と、レンズ40(図1参照)側に配置された絞りユニット70と、絞り板部材60と絞りユニット70との間に配置された開放制限板80とを備える。
絞り板部材60は、円環状の回転部材であって、絞り動作に応じて駆動される部材であり、レンズ側連動部61と、絞り板部材突起部62と、バネかけ部63とを備える。
レンズ側連動部61は、カメラボディ20(図1参照)側に延在して設けられ、カメラボディ20に設けられたボディ側連動部22と連動して動作する部材である。
絞り板部材突起部62は、絞りユニット70側に延在して設けられた腕状の部材であり、後述する第1のカム部材突起部74と係合する。
バネかけ部63は、不図示のバネをかける部材であり、そのバネによって、絞り板部材60は、矢印Aの方向に付勢されている。
【0010】
絞りユニット70は、絞り板部材60に駆動されて絞り動作を行うユニットであり、支持部材71と、カム部材72と、絞り羽根73と、第1のカム部材突起部74と、第2のカム部材突起部75と、板バネ76とを備える。
【0011】
支持部材71は、いわゆる蜂の巣と呼ばれる部材であって、レンズ鏡筒30(図1参照)内に設けられ、レンズ40を含む撮影光学系のズーム動作時に、光軸に沿った方向に移動する円環状の部材であり、不図示の孔を備える。
カム部材72は、いわゆる矢車と呼ばれる部材であって、回転自在な円環状の部材であり、カム溝72aを備える。
絞り羽根73は、支持部材71とカム部材72との間に複数枚配置され、絞りの開閉を制御する弓形の部材である。各絞り羽根73には、支持部材71側に突出し、支持部材71の孔に嵌められる不図示のピンと、カム部材72側に突出し、カム部材72のカム溝72aと係合するピン73aとが形成されている。
【0012】
第1のカム部材突起部74は、絞り板部材60側に延在して設けられた腕状の部材であって、先端にL字型のL字型係合部74aが形成されており、そのL字型係合部74aで絞り板部材突起部62と係合する。
第2のカム部材突起部75は、第1のカム部材突起部74と同一面側の対称となる部分に、かつ、絞り板部材60側に延在して設けられた腕状の部材であり、後述する開放制限板80と係合するL字型のL字型係合部75aと、バネかけ部75bとを備える。
バネかけ部75bは、不図示のバネをかける部材であり、そのバネによって、カム部材72は、矢印Bの方向に付勢されている。
【0013】
板バネ76は、かしめ部76aによってカム部材72に対してかしめ固定されており、絞り板部材突起部62と第1のカム部材突起部74とが当て付く方向(対向する方向)に付勢する部材である。
具体的には、板バネ76は、この板バネ76と第1のカム部材突起部74との間に、カム部材72及び絞り板部材60の回転方向に沿った方向で絞り板部材突起部62を挟み込んでおり、カム部材72及び絞り板部材60の回転時にがたつかない力量でばね付勢されている。
また、板バネ76は、絞り板部材突起部62と第1のカム部材突起部74とが係合している部分の近傍(L字型係合部74aの近傍)を付勢している。
さらに、板バネ76の先端には、カム部材72及び絞り板部材60の径方向に沿った方向で絞り板部材突起部62を挟み込み、この板バネ76が絞り板部材突起部62から外れることを防止する挟み込み部76bが形成されている。
【0014】
開放制限板80は、レンズ鏡筒30(図1参照)内に固定され、第2のカム部材突起部75のL字型係合部75aと当接することによってカム部材72の回転を制限する部材である。
また、開放制限板80は、ズーミングによってカム部材72の回転量を補正するF値補正勾配面80aを備える。このF値補正勾配面80a上を第2のカム部材突起部75がスライドすることによって、第2のカム部材突起部75の初期位置が変わり、絞り径を補正することができる。
例えば、ズーム位置が広角端(Wide)にある場合には、絞りユニット70が絞り板部材60に最も近づくので、第2のカム部材突起部75の初期位置が図2中において上昇し、カム部材72が矢印Bとは逆の方向に回転し、絞り羽根73が出て、絞り径が小さくなる。一方、ズーム位置が望遠端(Tele)にある場合には、絞りユニット70が絞り板部材60から最も遠ざかるので、第2のカム部材突起部75の初期位置が図2中において下降し、カム部材72が矢印Bの方向に回転し、絞り羽根73が引っ込み、絞り径が大きくなる。
【0015】
次に、図1及び図2を用いて、本実施形態の絞り機構50の動作について説明する。
絞り動作が開始されると、まず、カメラボディ20(図1参照)に設けられたボディ側連動部22が、レンズ鏡筒30のレンズ側連動部61から退避し、絞り板部材60が図2中矢印Aの方向に回転する。
そして、絞り板部材60の絞り板部材突起部62と、絞りユニット70の第1のカム部材突起部74との係合連結により、絞り板部材60の回転運動は、カム部材72に伝達される。このとき、板バネ76は、絞り板部材突起部62と第1のカム部材突起部74とが当て付く方向(対向する方向)に付勢しているので、カム部材72は、絞り板部材60の回転運動にがたなく追従することができる。
カム部材72の回転に伴い、カム部材72に設けられたカム溝72a(図2参照)に係合するピン73aを有する絞り羽根73は、回転しつつ、絞り径を縮小する。なお、上述した動作とは逆に、ボディ側連動部22が、レンズ鏡筒30のレンズ側連動部61を押し上げれば、絞り径を拡大することができる。
【0016】
このように、本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)カム部材72は、板バネ76によって絞り板部材60の回転運動にがたなく追従することができるので、高精度で絞り羽根73を開閉して所望の絞り径を出すことができる。
(2)板バネ76がない状態であれば、絞り板部材60,カム部材72とも、各々の突起部の当接部に一方向の力がかかるため、係合がたによってあおりが生じてしまう可能性があるが、本実施形態では、カム部材72に板バネ76を取り付けて付勢しているので、板バネ76の付勢力が絞り板部材60とカム部材72のみに作用し(内力化)、あおりを防止することができる。
【0017】
(3)従来のあおり防止の方法の一つとして、絞り板部材60と絞りユニット70との間に、あおり防止部材を設け、あおり防止板とカム部材とをバネにより付勢する方法もあるが、この従来の方法の構成と比べると、本実施形態ではあおり防止部材をなくすことができ、光軸方向のスペース、及び、径方向のスペースをともに稼ぐことができ、レンズ鏡筒30やカメラ10の全長を短縮させ、径小化・小型化を図ることができる。
(4)板バネ76を用いているので、簡単な構成かつ小さなスペースで付勢することができる。
【0018】
(5)板バネ76は、ビス止めではなく、かしめによって取り付けているので、カム部材72の光軸方向の厚さを薄くすることができ、絞り羽根73との余裕を確保できるとともに、カム部材72の重量、慣性を小さくすることができる。
(6)板バネ76の先端には、挟み込み部76bが形成されているので、板バネ76が絞り板部材突起部62から外れることを防止することができ、確実に付勢することができる。
(7)板バネ76は、絞り板部材突起部62と第1のカム部材突起部74とが係合している部分の近傍(L字型係合部74aの近傍)を付勢しているので、付勢がより安定する。
【0019】
[変形形態]
上述した実施形態は、以下の変形も可能である。
(1)板バネ76の例で説明したが、例えば、棒状のバネ、リング状のバネ等を用いて、絞り板部材突起部62と第1のカム部材突起部74とが当て付く方向(対向する方向)に付勢してもよい。
(2)板バネ76は、カム部材72に取り付ける例で説明したが、絞り板部材60に取り付けてもよく、また、カム部材72と絞り板部材60との両方に取り付けてもよい。
(3)板バネ76は、かしめ固定する例で説明したが、ビスや接着など他の固定方法によって取り付けてもよい。
【0020】
(4)絞り板部材突起部62と第1のカム部材突起部74とは、絞りユニット70と絞り板部材60との中間付近で係合する例で説明したが、いずれかに寄った位置で係合させてもよい。
(5)絞り板部材突起部62と第1のカム部材突起部74とによって、腕状の部材同士を係合させる例で説明したが、一方の腕状の部材を長くして、他方を溝にして係合させてもよい。この場合は、板バネ76で腕状の部材を付勢し、溝に当て付けるようにする。
なお、上述した実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は、以上説明した実施形態や変形形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態のカメラを示す模式図である。
【図2】実施形態の絞り機構の詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
10:カメラ、50:絞り機構、60:絞り板部材、62:絞り板部材突起部、72:カム部材、74:第1のカム部材突起部、76:板バネ、76b:挟み込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り動作に応じて駆動される駆動部材と、
前記駆動部材に駆動されて絞り動作を行う絞り部材と、
前記駆動部材及び前記絞り部材の少なくとも一方に設けられた第1の係合部と、
前記駆動部材及び前記絞り部材の他方に設けられ、前記第1の係合部と係合する第2の係合部と、
前記駆動部材及び前記絞り部材の少なくとも一方に設けられ、前記第1の係合部と前記第2の係合部とが対向する方向に付勢する付勢部材と、
を備える絞り機構。
【請求項2】
請求項1に記載された絞り機構であって、
前記第1の係合部及び前記第2の係合部の少なくとも一方は、突起であること、
を特徴とする絞り機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された絞り機構であって、
前記付勢部材は、板バネであること、
を特徴とする絞り機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された絞り機構であって、
前記付勢部材は、かしめ固定されていること、
を特徴とする絞り機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された絞り機構であって、
前記付勢部材は、付勢対象物から外れることを防止する外れ防止部を備えること、
を特徴とする絞り機構。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された絞り機構を備える光学機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−158341(P2008−158341A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348242(P2006−348242)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】