説明

絞り装置およびレンズ鏡筒

【課題】絞り羽根の作動音を低減することができる絞り装置およびレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】本発明に係わる絞り装置4は、入射した被写体光が通過する開口を規定するものであって、互いに所定方向に重ね合わせて配置された複数枚の絞り羽根30と、前記開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の絞り羽根30を、所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動手段20、40と、この駆動手段による絞り羽根30の開閉駆動時に、隣接する絞り羽根30同士を離間させる離間手段50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り装置、およびこの絞り装置を備えたレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の光学機器には絞り装置が用いられている。この絞り装置は、複数枚の絞り羽根を光軸周りに開閉駆動することにより、入射した被写体光の開口(通過領域)を形成するとともに、その開口サイズを制御することにより被写体光の光量を調整するものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−337947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の絞り装置を備えたレンズ鏡筒では、駆動時に絞り羽根同士が擦れることにより作動音が発生していた。このようなレンズ鏡筒が装着されたデジタルカメラにおいて動画撮影モードにして撮影した場合、絞り羽根同士の擦れによる作動音が騒音として録音されてしまうことがあった。したがって、従来の絞り装置においては、絞り羽根の作動音を低減することが望まれていた。
【0004】
本発明の課題は、絞り羽根の作動音を低減することができる絞り装置およびレンズ鏡筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、入射した被写体光が通過する開口を規定するものであって、互いに所定方向に重ね合わせて配置された複数枚の絞り羽根(30)と、前記開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の前記絞り羽根を、所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動手段(20、40)と、前記駆動手段による前記絞り羽根の開閉駆動時に、隣接する前記絞り羽根同士を離間させる離間手段(50、50A、50B、60)とを備えることを特徴とする絞り装置(4、4A)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の絞り装置(4)であって、前記離間手段(50、50A、50B)は、前記絞り羽根(30)に設けられた第1突起部(51)と、前記駆動手段(20、40)による前記絞り羽根の開閉駆動時に、前記第1突起部を前記所定方向に押圧することにより隣接する前記絞り羽根同士を前記所定方向に離間させる第2突起部(52)とを備えることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の絞り装置(4)であって、前記第2突起部(52)は、複数枚の前記絞り羽根(30)が特定の絞り値となる位置において前記第1突起部(30)を前記所定方向に押圧しないように前記第1突起部と嵌合する非突起部(52a)を有することを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の絞り装置(4A)であって、前記離間手段60)は、所定電圧の印加により変形する圧電素子からなり、所定電圧が印加されたときは伸び変形して前記絞り羽根を前記所定方向に押圧することより隣接する前記絞り羽根同士を離間させることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の絞り装置であって、前記離間手段(50、50A、50B、60)は、前記絞り羽根(30)の駆動基点(32)近傍に設けられていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の絞り装置(4、4A)と、入射した被写体光を屈折させて射出側に被写体像を形成する光学部材(3)と、前記絞り装置および前記光学部材が収納される筒体とを備えることを特徴とするレンズ鏡筒(2)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、絞り羽根の作動音を低減することができる絞り装置およびレンズ鏡筒を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明に係わる絞り装置およびレンズ鏡筒の実施形態について説明する。なお、以下の説明に用いる図面には、説明と理解とを容易にするために、適宜にXYZの直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸L1を水平として横長の画像を撮影する場合のカメラ位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZ方向とする。なお、実施形態に示す各部の形状や、長さ、厚みなどの縮尺は必ずしも実物と一致するものではなく、また説明に必要のない部分については適宜に省略又は簡略化して描いている。
(実施形態1)
【0008】
図1は、実施形態1の絞り装置4を備えたレンズ鏡筒2およびそのレンズ鏡筒2が装着されたカメラ1の概略図である。本実施形態のレンズ鏡筒2は、入射した被写体光を屈折させて射出側に被写体像を形成する光学部材としてのレンズ3と、このレンズ3の開口サイズを調節する絞り装置4とを備え、これらが筒体7に収納されている。またカメラ1はカメラボディ5と、レンズ3により形成された被写体像を撮像して電気信号に変換する撮像部6とを備え、レンズ鏡筒2がカメラボディ5に着脱自在に装着される構成となっている。
【0009】
図2は、本実施形態の絞り装置4を組み立てた状態を示す斜視図であり、図3は、その分解斜視図である。絞り装置4は、図3に示すように、中央に円形の開口部11を有する押さえ板10と、同じく中央に円形の開口部21を有するカム板20と、複数枚の絞り羽根30と、中央に円形の開口部41を有する固定環40とを備えている。これら押さえ板10、カム板20、絞り羽根30、固定環40は、光軸L1を中心として配置されている。
【0010】
カム板20は、絞り羽根30のカム軸31と係合する複数のカム溝22が形成された回転部材である。カム板20にはアーム23が設けられ、このアーム23が光軸L1を中心として回転駆動されることにより、複数枚の絞り羽根30が同時に駆動される。アーム23は、図示しないアクチュエータと接続されており、被写体光の開口サイズを小さくするときは、光軸L1を中心として図中A方向(図3参照)に回転し、反対に被写体光の開口サイズを大きくするときは、図中B方向に回転するように構成されている。
上記アクチュエータ、カム板20、固定環40を含む機構は、レンズ3の開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の絞り羽根30を所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動手段として機能する。
【0011】
絞り羽根30は、金属又は樹脂などの薄板状部材により形成され、互いに光軸L1方向に重ね合わせて配置されている。また絞り羽根30には、上記カム板20のカム溝22に係合するカム軸31と、固定環40の軸穴42と係合する回転軸32とが設けられている。この絞り羽根30の形状、及びカム軸31、回転軸32の平面的な位置関係は後述の図4に示している。
【0012】
固定環40は、レンズ鏡筒2の内部に固定配置される部材であり、絞り羽根30の回転軸32が挿入される軸穴42と、絞り羽根30のカム軸31の逃げとなる逃がし溝43とが形成されている。複数枚の絞り羽根30は、この固定環40とカム板20との間に収納され、さらにカム板20の外側から押さえ板10が嵌め込まれて固定環40の外周部と嵌合されることにより、図2に示すような一体的な組み立て部品となる。なお、絞り羽根30の動作については後述する。
【0013】
図4は、実施形態1における絞り装置4の正面図である。この図4では、内部の構造を分かりやすくするため、押さえ板10とカム板20とを省略して描いている。ただし、カム板20に形成されたカム溝22の位置を一点鎖線で示している。また、絞り羽根30は一つのみを描いているが、実際には円周に沿って7枚が均等に配置されている。後の説明で使用する図5、図7、図9も、このような形態で描かれている。
【0014】
図4に示すように、絞り羽根30の内側(裏面側)には、絞り羽根30の開閉駆動時に、隣接する絞り羽根30同士を離間させる絞り羽根離間部50が設けられている。図4では、絞り羽根30を描いた位置にのみ羽根離間部50を描いているが、各絞り羽根30の位置にそれぞれ同一構成の羽根離間部50が設けられている。
【0015】
次に、羽根離間部50の構成について説明する。図5は、図4の部分拡大図である。図5に示すように、羽根離間部50は、絞り羽根30の駆動基点である回転軸32の近傍に設けられている。このように、羽根離間部50を回転軸32の近傍に設けるのは、絞り羽根30同士が擦れることにより発生する作動音を効率良く低減するためである。すなわち、被写体光の開口サイズが小さくなるように絞り羽根30が駆動されたときに、絞り羽根30同士の接触面積は先端部分で大きく、根元部分では小さくなる。絞り羽根30同士が擦れることにより発生する作動音は、接触面積の小さい根元部分よりも接触面積の大きな先端部分で大きくなる。このため、各絞り羽根30の根元部分を持ち上げて絞り羽根30同士を離間させることにより、各絞り羽根30の回転動作を妨げることなく、先端部分での絞り羽根30同士の接触面積を小さくすることができる。したがって、絞り羽根30同士が擦れることにより発生する作動音を効率良く低減することができる。
【0016】
また、絞り羽根30は先端部分よりも根元部分の方が硬いため、絞り羽根30同士が擦れることにより発生する作動音は、薄く柔らかい先端部分よりも根元部分の方が振動しずらいために小さくなる。すなわち、各絞り羽根30の根元部分を持ち上げて絞り羽根30同士を離間させた場合、根元部分は先端部分に比べて離間距離は少なくなるが、この部分は元々擦れによる作動音が少ないため、全体としては擦れによる作動音を低減できることになる。
【0017】
さらに、羽根離間部50は、回転軸32を中心とする円弧の一部をなすように配置されている。これは、絞り羽根30が回転軸32を中心として回転動作したときに、第1突起部51と第2突起部52との係合が維持されるようにするためである。また、絞り羽根30が回転軸32を中心として回転動作したときに、絞り羽根30を光軸L1のZ方向に押圧する位置が回転軸32からほぼ同じ距離となるようにするためである。
【0018】
図6(a)〜(c)は、図5に示す羽根離間部50の概略断面図である。なお図5に示すように、羽根離間部50は平面的に円弧状に形成されているが、図6では直線的に描いている。
【0019】
図6(a)に示すように、本実施形態の羽根離間部50は、絞り羽根30の裏面側、すなわち固定環40と対向する側に設けられた複数の第1突起部51と、固定環40の絞り羽根30と対向する側の面に設けられた複数の第2突起部52とから構成されており、平面的に円弧状となるように交互に配置されている。第1突起部51は半球状の凸部であり、本実施形態では絞り羽根30と一体に形成されている。第2突起部52は、角柱状の凸部であり、本実施形態では固定環40と一体に形成されている。ただし、第1突起部51と第2突起部52とは、それぞれを別体の部品として作製されたものを接着などで貼り付けたものであってもよい。
【0020】
図6(a)は、絞り羽根30が収納された位置(図4参照)での状態を示している。この状態では、第1突起部51と第2突起部52は、それぞれ交互に配置されるように係合しているため、隣接する絞り羽根30同士は接触している。この状態から、被写体光が通過する開口の開口サイズを小さくする方向に絞り羽根30が回転駆動されると、第2突起部52に対して第1突起部51が水平方向に移動するため、第2突起部52の先端に第1突起部51が乗り上げて、第1突起部51と第2突起部52とが互いに当接した状態となる。この状態では、第1突起部51が第2突起部52により光軸L1のZ方向(図3参照)に押圧されるため、隣接する絞り羽根30同士は光軸L1のZ方向に離間することになる。
【0021】
また、図6(a)に示すように、隣接する第2突起部52との間には、絞り羽根30が特定の絞り値となる位置において、第1突起部51を光軸L1のZ方向に押圧しないように第1突起部51と嵌合する非突起部52aが形成されている。この非突起部52aは第2突起部52の一部として形成されており、図6(a)に示すように、固定環40の表面と同一面(平坦部)となっている。ただし、非突起部52aの高さは、第1突起部51と当接しない範囲で適宜に定められる。
【0022】
第1突起部51が非突起部52aと嵌合している状態では、第1突起部51が光軸L1のZ方向に押圧されないので、隣接する絞り羽根30同士は離間せず、接触状態となる。一方、第1突起部51と第2突起部52とが互いに当接した状態では、第1突起部51が光軸L1のZ方向に押圧されるため、隣接する絞り羽根30同士は離間して、非接触状態となる。
【0023】
また、隣接する第2突起部52の配置方向の間隔は、複数枚の絞り羽根30が回転駆動されたときに、特定の絞り値となる位置に設定されている。すなわち、絞り値が開放から「2.8」、「4」、「5.6」、「8」、「11」、・・というように1段ずつ変化する場合、図6(a)の状態から第1突起部51が水平方向に1つずつ移動して非突起部52aと嵌合すると、被写体光の通過する開口サイズは上記の絞り値から1段ずつ絞られることになり、光量は1段絞られる毎に1/2ずつ少なくなる。
【0024】
上記構成によれば、絞り羽根30が回転駆動されたときのみ隣接する絞り羽根30同士は離間することになり、絞り羽根30が特定の絞り値の位置で停止したときには隣接する絞り羽根30同士は接触状態となる。
【0025】
図6(b)は、羽根離間部の他の構成例を示す概略断面図であり、図6(a)と同一構成については同一符号を付している。本構成例の羽根離間部50Aでは、第2突起部52、非突起部52aが一体に形成された第2突起ベース53が固定環40の表面に接着により貼り付けられている。本構成例では、第2突起部52と非突起部52aを備えた第2突起ベース53を用いているため、第2突起部52と非突起部52aを個別に固定環40に形成するようにしたものと比べて、第1突起部51の配置数や形状に合わせて、第2突起部52、非突起部52aの配置や形状を容易に変更することができる。また、本構成例においても、非突起部52aの高さは、第1突起部51と当接しない範囲で適宜に定められる。
【0026】
図6(c)は、羽根離間部のさらに他の構成例を示す概略断面図であり、図6(a)と同一構成については同一符号を付している。本構成例の羽根離間部50Bでは、第2突起部52と非突起部52bとが一体に形成された第2突起ベース54が、固定環40の表面に接着により貼り付けられている。本構成例の非突起部52bは、断面形状が凹形状ではなく、略V字形状となっている。このような断面形状とすることにより、第1突起部51が第2突起部52を乗り越えながら水平方向に移動するときの摩擦抵抗を減らすことができる。また、第1突起部51の磨耗も少なくすることができる。
【0027】
次に、上記のように構成された絞り装置4の動作を図4および図7を用いて説明する。図7は、絞り羽根30を回転駆動したときの絞り装置4の正面図であり、図4と同等部分を同一符号で示している。図4の状態から、図示しないカム板20が反時計回りに回転駆動されると、カム板20に形成されたカム溝22も反時計回りに回転する。このカム溝22は、絞り羽根30のカム軸31と係合しているため、カム軸31はカム溝22に沿って反時計回りの方向に移動する。
【0028】
この結果、図7に示すように、絞り羽根30は回転軸32を中心として反時計回りに回転することになる。図示しないカム板20は、すべての絞り羽根30のカム軸31と係合しているため、上記のように図示しないカム板20が反時計回りに回転駆動されると、すべての絞り羽根30が回転軸32を中心として反時計回りに回転することになる。したがって、被写体光が通過する開口が閉じられて、開口サイズは小さくなる。なお、図示しないカム板20が時計回りに回転駆動されたときには、上記と反対の動作となり、すべての絞り羽根30は回転軸32を中心として時計回りに回転することになる。したがって、図4に示すように、被写体光が通過する開口が開かれて、開口サイズは大きくなる。
【0029】
次に、上記のように絞り羽根30が回転駆動されたときの羽根離間部50の動作について説明する。図8(a)、(b)は、絞り羽根30が回転駆動されたときの羽根離間部50示す側面図である。図8(a)に示すように、絞り羽根30が収納された位置(図4参照)では、第1突起部51と第2突起部52は、それぞれ交互に配置されるように係合している、すなわち第1突起部51が非突起部52aと嵌合しているため、第1突起部51が第2突起部52により光軸L1のZ方向に押圧されることはなく、隣接する絞り羽根30同士は接触している。
【0030】
一方、被写体光が通過する開口の開口サイズを小さくする方向に絞り羽根30が回転駆動されると、第2突起部52に対して第1突起部51が水平方向に移動するため、図8(b)に示すように、第2突起部52の先端に第1突起部51が乗り上げて、第1突起部51と第2突起部52とが互いに当接した状態となる。この状態では、第2突起部52が第1突起部51をZ方向に押圧するため、隣接する絞り羽根30同士は光軸L1のZ方向に離間することになる。したがって、隣接する絞り羽根30の間には、隙間Gが形成されることになる。その後、絞り羽根30が特定の絞り値となる位置に達すると、第1突起部51が図示しない非突起部52aと嵌合するため、図8(a)に示すように、第2突起部52が第1突起部51を光軸L1のZ方向に押圧しなくなり、隣接する絞り羽根30同士は接触することになる。
【0031】
上記実施形態1によると、以下の効果を奏する。
(1)絞り羽根30の開閉駆動時には、羽根離間部50により、隣接する絞り羽根30同士が離間して隙間が形成されるため、絞り羽根同士の擦れによる作動音を低減することができる。したがって、動画撮影モード時に絞り装置4が動作した場合でも、絞り羽根同士の擦れによる作動音が騒音として録音されてしまうことがなく、録画画像の品質低下を防ぐことができる。なお、絞り羽根同士の擦れによる作動音は、絞り羽根30を所望の開口サイズまで閉じるときだけでなく、閉じた絞り羽根30を開くときにも発生するため、動作撮影モードのように連続して絞り羽根30を回転駆動する場合に有効なものとなる。
(2)羽根離間部50は、絞り羽根30に設けた第1突起部51と、固定環40に設けられた第2突起部52とから構成されているため、駆動に際して電気的な制御が不要であり、構造も簡素化することができる。したがって、低コストで作製することができる。
(3)図6(a)に示すように、第1突起部51を絞り羽根30と一体に形成し、且つ第2突起部52を固定環40と一体に形成した場合は、それぞれを別体の部品として作製したものを接着などで貼り付ける場合に比べて部品点数を減らすことができ、また製造時の作業工数を減らすことができる。
(4)図6(b)に示すように、第2突起部52と非突起部52aを備えた第2突起ベース53を用いた場合は、第1突起部51の配置数や形状に合わせて、第2突起部52、非突起部52aの配置や形状を容易に変更することができる。
(5)図6(c)に示すように、非突起部52bの断面形状を略V字形状とした場合は、第1突起部51が第2突起部52を乗り越えながら水平方向に移動するときの摩擦抵抗を減らすことができるので、羽根離間部50Bで発生する作動音を低減することができる。また、第1突起部51の磨耗が少なくなるため、長期間に亘って動作が安定するとともに、耐久性を向上させることができる。
(6)絞り羽根30が特定の絞り値となる位置において、第1突起部51を光軸L1のZ方向に押圧しないように第1突起部51と嵌合する非突起部52aを設けているため、絞り羽根30が所望の絞り値の位置で停止したときには隣接する絞り羽根30同士は接触状態となり、絞り羽根30の隙間から光が漏れるのを防ぐことができる。これにより、撮像した画像の画質低下を防ぐことができる。
(7)羽根離間部50を絞り羽根30の駆動基点である回転軸32の近傍に設けているため、絞り羽根30の回転動作を妨げることなく、先端部分での絞り羽根30同士の接触面積を小さくすることができる。したがって、絞り羽根30同士が擦れることにより発生する作動音を効率良く低減することができる。また、上記構成によれば、アクチュエータの駆動負荷を軽減することができるので、省電力化を図ることができる。
【0032】
また、絞り羽根30は先端部分よりも根元部分の方が硬いので、絞り羽根30同士が擦れることにより発生する作動音は、薄く柔らかい先端部分よりも根元部分の方が小さくなる。このため、絞り羽根30をその根元部分で持ち上げて絞り羽根30同士を離間させた場合、根元部分は先端部分に比べて離間距離は少なくなるが、この部分は元々擦れによる作動音が少ないため、全体としては擦れによる作動音を低減できる。
(8)羽根離間部50を、回転軸32を中心とする円弧の一部をなすように配置しているため、絞り羽根30が回転軸32を中心として回転動作したときに、第1突起部51と第2突起部52との係合を維持することができる。また、このような配置とすることにより、絞り羽根30が回転軸32を中心として回転動作したときに、絞り羽根30を光軸L1のZ方向に押圧する位置、すなわち絞り羽根30を持ち上げる位置を回転軸32からほぼ同じ距離とすることができる。これによれば、絞り羽根30が回転軸32を中心として回転動作したときに、その回転位置にかかわらず、隣接する絞り羽根30同士の離間する距離をほぼ等間隔とすることができる。
(実施形態2)
【0033】
図9は、実施形態2における絞り装置4Aの正面図である。先に説明したように、この図9についても、図4と同様に、押さえ板10とカム板20とを省略して描いている。本実施形態では、所定電圧の印加により変形する圧電素子からなる羽根離間部60を固定環40に設けている。この羽根離間部60は、所定電圧が印加されたときに伸び変形して、絞り羽根30を光軸L1のZ方向(図3参照)に押圧することにより、隣接する絞り羽根30同士を離間させるものである。
【0034】
本実施形態においては、羽根離間部60の平面的な形状を、回転軸32を中心とする円弧の一部をなすような形状としている。これは、絞り羽根30が回転軸32を中心として回転動作したときに、絞り羽根30を光軸L1のZ方向に押圧する位置が回転軸32からほぼ同じ距離となるようにするためである。ただし、本実施形態の羽根離間部60は、実施形態1のように上下に配置した突起部を係合させる構造ではないため、羽根離間部60を平面的に直線となるような形状としてもよい。また、図9では、絞り羽根30を描いた位置にのみ羽根離間部60を描いているが、固定環40上の各絞り羽根30の位置にそれぞれ同一構成の羽根離間部60が設けられている。
【0035】
また、羽根離間部60を構成する圧電素子には、正負の電圧を印加するための電圧供給線61、62が接続されている。これらの配線は、固定環40の裏面側に貫通しており、同じく固定環40の外周に沿って配線された電圧供給環状線71、72と接続されている。そして、この電圧供給環状線71、72は固定環40の裏面に配置された電圧供給部73と接続されている。この電圧供給部73は、複数枚の絞り羽根30が回転駆動されるのと同期して所定電圧を印加し、特定の絞り値となる位置で電圧の印加を停止するような制御を行っている。圧電素子は、所定電圧の印加により伸び変形し、電圧の印加を停止すると元の長さに戻る特性を有する部材である。
【0036】
本実施形態においても、絞り羽根30が回転駆動されたときのみ隣接する絞り羽根30同士は離間することになり、絞り羽根30が特定の絞り値の位置で停止したときには隣接する絞り羽根30同士は接触状態となる。
【0037】
次に、上記のように構成された絞り装置4Aの動作を図9および図10を用いて説明する。なお、絞り羽根30を回転駆動するカム機構は実施形態1と同じであるため説明を省略する。
【0038】
図10(a)、(b)は、絞り羽根30が回転駆動されたときの羽根離間部60示す側面図である。このうち、図10(a)では、電圧供給線61,62と電圧供給環状線71,72の接続を模式的に示している。
【0039】
図10(a)に示すように、絞り羽根30が収納された位置(図9参照)では、羽根離間部60の圧電素子は伸び変形前の長さとなっているため、絞り羽根30が光軸L1のZ方向に押圧されることはなく、隣接する絞り羽根30同士は接触している。
【0040】
一方、被写体光が通過する開口の開口サイズを小さくする方向に絞り羽根30が回転駆動されると、電圧供給部73(図9参照)から羽根離間部60を構成する圧電素子に所定電圧が印加される。これにより、圧電素子は伸び変形して絞り羽根30を光軸L1のZ方向に押圧するため、図10(b)に示すように、隣接する絞り羽根30同士は光軸L1のZ方向に離間することになる。したがって、隣接する絞り羽根30の間には、隙間Gが形成されることになる。その後、絞り羽根30が特定の絞り値となる位置に達すると、電圧供給部73からの電圧の印加が停止するため、図10(a)に示すように、羽根離間部60を構成する圧電素子は絞り羽根30を光軸L1のZ方向に押圧しなくなり、隣接する絞り羽根30同士は接触することになる。
【0041】
上記実施形態2によると、以下の効果を奏する。
(1)絞り羽根30の開閉駆動時には、羽根離間部60により、隣接する絞り羽根30同士が離間して隙間が形成されるため、絞り羽根30同士の擦れによる作動音を低減することができる。したがって、動画撮影モード時に絞り装置4が動作した場合でも、絞り羽根30同士の擦れによる作動音が騒音として録音されてしまうことがなく、録画画像の品質低下を防ぐことができる。
(2)羽根離間部60が圧電素子により構成されているため、実施形態1の構成に比べて機械的な磨耗を少なくすることができる。したがって、長期間に亘って動作が安定するとともに、耐久性を向上させることができる。また、羽根離間部60で発生する作動音自体も小さくすることができる。
(3)羽根離間部60の動作位置を電気的に制御することができるので、絞り羽根30を回転駆動した際に、絞り羽根30を光軸L1のZ方向に押圧する位置を任意に設定することができる。
(変形形態)
【0042】
以上、説明した実施形態に限定されることなく、本発明は以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)実施形態1では、カム板20をアーム23により回転する構成について示したが、カム板20はモータ駆動されるものであってもよい。例えば、カム板20の外縁部にセグメントギヤを設け、これをステッピングモータと連結したピニオンギヤと噛み合わせ、ステッピングモータの回転力によりカム板20を回転させる構成としてもよい。
(2)実施形態1において、第1突起部51を固定環40に設け、第2突起部52を絞り羽根30に設けた構成としてもよい。
(3)実施形態2において、絞り羽根30の裏面に実施形態1と同じ第1突起部51を設けた構成としてもよい。また、羽根離間部60は、複数の圧電素子を、回転軸32を中心とする円弧状に配置したものであってもよい。さらに、圧電素子の代わりに圧電ブロアーにより羽根離間部60を構成してもよい。
(4)上記各実施形態では、絞り羽根30を7枚設けた例について示したが、絞り羽根30の数は7枚に限定されるものではなく、それ以上の枚数であってもよいし、それ以下の枚数であってもよい。
(5)上記各実施形態では、本発明に係わる絞り装置およびレンズ鏡筒を、カメラボディに対してレンズ鏡筒が着脱自在に装着されるデジタルカメラに適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、レンズ一体型カメラ、ビデオカメラに設けられた絞り装置、レンズ鏡筒にも適用することができる。
【0043】
なお、上記実施形態および変形形態は適宜に組み合わせて用いることができるが、各実施形態の構成は図示により明らかであるため、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態1の絞り装置を備えたレンズ鏡筒およびそのレンズ鏡筒が装着されたカメラの概略図である。
【図2】実施形態1の絞り装置を組み立てた状態を示す斜視図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】実施形態1における絞り装置の正面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】(a)〜(c)は図5に示す羽根離間部の概略断面図である。
【図7】絞り羽根を回転駆動したときの絞り装置の正面図である。
【図8】(a)、(b)は絞り羽根が回転駆動されたときの実施形態1の羽根離間部を示す側面図である。
【図9】実施形態2における絞り装置の正面図である。
【図10】(a)、(b)は絞り羽根が回転駆動されたときの実施形態2の羽根離間部示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1:カメラ、2:レンズ鏡筒、3:レンズ、4,4A:絞り装置、20:カム板、30:絞り羽根、31:カム軸、32:回転軸、40:固定環、22,43:逃がし溝、42:軸穴、50,50A,50B、60:羽根離間部、51:第1突起部、52:第2突起部、52a:非突起部、53,54:第2突起ベース、61,62:電圧供給線、71、72:電圧供給環状線、73:電圧供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した被写体光が通過する開口を規定するものであって、互いに所定方向に重ね合わせて配置された複数枚の絞り羽根と、
前記開口が所望の開口サイズとなるように、複数枚の前記絞り羽根を、所望の絞り値に応じて開閉駆動する駆動手段と、
前記駆動手段による前記絞り羽根の開閉駆動時に、隣接する前記絞り羽根同士を離間させる離間手段と、
を備えることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
請求項1に記載の絞り装置であって、
前記離間手段は、
前記絞り羽根に設けられた第1突起部と、
前記駆動手段による前記絞り羽根の開閉駆動時に、前記第1突起部を前記所定方向に押圧することにより隣接する前記絞り羽根同士を前記所定方向に離間させる第2突起部と、
を備えることを特徴とする絞り装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の絞り装置であって、
前記第2突起部は、
複数枚の前記絞り羽根が特定の絞り値となる位置において前記第1突起部を前記所定方向に押圧しないように前記第1突起部と嵌合する非突起部を有すること、
を特徴とする絞り装置。
【請求項4】
請求項1に記載の絞り装置であって、
前記離間手段は、
所定電圧の印加により変形する圧電素子からなり、所定電圧が印加されたときは伸び変形して前記絞り羽根を前記所定方向に押圧することより隣接する前記絞り羽根同士を離間させること、
を特徴とする絞り装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の絞り装置であって、
前記離間手段は、前記絞り羽根の駆動基点近傍に設けられていることを特徴とする絞り装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の絞り装置と、
入射した被写体光を屈折させて射出側に被写体像を形成する光学部材と、
前記絞り装置および前記光学部材が収納される筒体と、
を備えることを特徴とするレンズ鏡筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−78956(P2010−78956A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247589(P2008−247589)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】