説明

絞り装置及び撮像装置

【課題】絞り装置を形成する各ブロックの変化速度が等しい絞り装置を提供する。
【解決手段】それぞれEC素子によって構成するブロック11a〜11eによって形成され、撮像素子の撮像面へ入射する光量を調整する絞り部材3において、ブロック11a〜11eを光軸12を中心として同心円形に配置し、ブロック11a〜11eのEC素子の体積を同一体積として、ブロック11a〜11eの光透過率の変化速度を同一速度となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絞り装置及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像素子に入射する光量を調整するために、物性素子における光の透過率を制御するものが特許文献1に開示されている。特許文献1では、物性素子として、例えばエレクトロクロミック素子が用いられている。そして、この物性素子を同心円状の複数の領域に分割し、各領域を独立に制御することで透過率を制御している。
【特許文献1】特開平6−148593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の発明においては、同心円状に分割した各領域では、領域の幅が略同一となっており、各領域の面積が異なっている。そのため、各領域におけるエレクトロクロミック素子が着色、消色する場合には、各領域の応答速度が異なる。特に、特許文献1の構成では、面積が大きくなる径方向外側の領域において応答速度が遅くなる、といった問題点がある。
【0004】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、例えば同心円状に分割した各領域において、エレクトロクロミック素子を着色、消色する際、その応答速度を略同一とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エレクトロクロミック素子によって構成される複数のブロックの光透過率をそれぞれ独立して制御することにより、撮像素子の撮像面へ入射する光量を制御する絞り装置において、複数のブロックのそれぞれは、所定の輪郭形状を有する枠状の形状を有し、複数のブロックは、光軸を中心として入れ子状に配列され、複数のブロックをそれぞれ構成するエレクトロクロミック素子の体積はそれぞれ等しくする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、例えば同心円状に分割した各領域(ブロック)において、エレクトロクロミック素子を着色、消色する際、その応答速度を略同一とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この実施形態の絞り装置が使用されるデジタルスチルカメラについて、図1を用いて説明する。図1はデジタルスチルカメラの概略構成図である。なお、ここでは絞り装置をデジタルスチルカメラに使用した場合について説明するが、これに限られることはなく、その他の撮像装置にも使用することができる。
【0008】
デジタルスチルカメラは、レンズ2a、2bと、撮像素子1と、絞り部材(絞り装置)3と、シャッター5と、コントローラ10と、を備える。
【0009】
レンズ2a、2bは、被写体の像を所定の位置に結像する。撮像素子1は、所定の位置に撮像面が一致するように配置される。絞り部材(絞り装置)3は、撮像素子1の撮像面へ入射する光量を調整する。シャッター5は、レリーズボタン4の操作に応じて開閉動作し、撮像素子1の撮像面への露光動作を行う。コントローラ10は、絞り部材3、シャッター5の動作を制御する。
【0010】
絞り部材3は、エレクトロクロミック素子(以下、EC素子とする)で構成されている。この絞り部材3は、図2に示すように、複数のブロック11a〜11eから形成される。なお、図2においては、5つのブロック11a〜11eを示すが、絞り部材3はこれより多い、または少ないブロックによって形成されてもよい。
【0011】
EC素子は、電気化学的な酸化還元反応によって着色、消色する素子である。EC素子は、印加される電圧に基づいて着色濃度、つまり光透過率が変化する。すなわち、EC素子に印加される電圧を制御することで、EC素子における光透過率を制御することができる。
【0012】
ブロック11a〜11eは光軸12を中心として同心円状(入れ子状)に設けられる。ブロック11aは略円形状(所定の輪郭形状)であり、ブロック11b〜11eは円環形状(所定の輪郭形状)である。ブロック11b〜11eは円形状のブロック11aよりも径方向外側に配置される。ブロック11a〜11eはそれぞれ1つのEC素子によって構成される。ブロック11a〜11eを構成するEC素子の体積は等しい。なお、EC素子の体積とは、EC素子の電極間で構成された領域を示し、この領域内にEC材料、電解質が封入されている。この実施形態においては、EC素子の電極間のブロック11a〜11eの厚さが等しく、各ブロック11a〜11eの面積は等しい。つまり、円環形状のブロック11b〜11eは、径方向外側となるにつれて、内径と外径との差が小さくなり、ブロックの幅が狭くなる。
【0013】
絞り部材3では、ブロック11a〜11eのEC素子の光透過率が制御される。この制御により、絞り部材3において、光を通す光透過領域と光を遮断する光遮断領域との大きさ、着色濃度が変更される。これによって絞り部材3を通る光量を変更することができ、撮像素子1の像面へ入射する光量を調整することができる。
【0014】
次に、絞り部材3における光透過領域の制御動作について、図3を用いて説明する。図3においては、光遮断領域をハッチングで示す。
【0015】
図3(a)は、光透過領域が小さい状態を示している。一方、図3(b)は、光透過領域が大きい状態を示している。図3(a)では、ブロックのEC素子が着色されていない領域が、図3(b)に比べて小さい。図3(a)の状態から、図3(b)の状態に変更するには、例えばブロック11c、11dのEC素子を消色させる。このとき、ブロック11c、11dのEC素子の体積は等しいので、ブロック11c、11dにおける消色の応答速度、応答時間は等しくなる。そのため、ブロック11c、11dに対して同時に光透過領域の変更指令が出された場合、ブロック11c、11dは同時に遮光領域に変化する。
【0016】
これとは逆に、図3(b)の状態から、図3(a)の状態へ変更する場合には、例えばブロック11c、11dの素子を着色させる。この場合でも光透過領域の変更指令に対してブロック11c、11dにおける着色の応答速度、応答時間は等しくなる。
【0017】
なお、ここでは、ブロック11c、11dを着色、消色させることによって、光透過領域の大きさを変更した場合について説明した。しかしながら、他のブロックを着色、消色させて、光透過領域の大きさ、着色濃度を変更することもできる。このようにしても、撮像素子1の撮像面に入射する光量を変更することができる。当然、この場合も同様に、各ブロックにおける着色、消色の応答速度、応答時間は等しくなる。
【0018】
この実施形態では、各ブロックの厚さを一定としたが、各ブロックの厚さが異なる場合には、各ブロックの面積をブロックの厚さに応じて変更すればよい。このように、各ブロックの体積を一定とすることで、各ブロックの応答速度を等しくすることができる。
【0019】
なお、絞り部材3のブロックの形状は同心円状に配置することに限られない。ブロックの形状は、例えば四角形や他の多角形、楕円形状、角丸四角形および中抜きの同形状とすることができる。そして、このような形状のブロックを、光軸を中心として光軸に近い位置から外側へ順次配置してもよい。
【0020】
また、この実施形態では、1つのブロックを1つのEC素子によって形成したが、1つのブロックを複数のEC素子によって形成してもよい。この場合、例えばブロックを更に複数の円環形状のEC素子によって形成してもよい。これによって、ブロックの反応速度を更に早くすることができる。なお、1つのブロックにおいて、各EC素子の体積を等しくすることが望ましい。また、ブロックの面積に応じて、例えば体積の小さいブロックは1つのEC素子で形成し、体積の大きいブロックは複数のEC素子によって形成してもよい。この場合には、それぞれのEC素子の体積を等しくする。
【0021】
また、この実施形態では、絞り部材3を撮像素子1に入射する光量を調整するためにのみ用いたが、絞り部材3をシャッターとして用いてもよい。シャッターは、撮像素子の撮像面上の各部分において、露光時間を等しくし、入射する光量を一定とすることが望ましい。本実施形態によれば、ブロックの応答速度を等しくすることで、撮像面上の各部分において露光時間が等しくなる。よって、シャッターとして用いた場合であっても、撮像面上の各部分において入射する光量を一定とすることができる。
【0022】
この実施形態の効果について説明する。
【0023】
撮像装置の絞り装置として、EC素子によって構成するブロックを同心円形状に配置した場合に、従来の技術に係るものでは各ブロックの幅が等しい。このような構成だと、径方向外側となるにつれて、ブロックの体積が大きくなる。そのため、従来の技術に係るものでは、ブロックの着色、消色の変更指令に対して着色、消色する応答速度が遅くなる。
【0024】
この実施形態では、絞り装置において、絞り部材3を形成するブロックを同心円状に配置しているが、各ブロックのEC素子の体積を等しくしている。これによって、どのブロックに対しても、着色、消色の指令に対する応答速度を等しくすることができる。そのため、デジタルスチルカメラなどの撮像装置に使用しても、絞り装置としての機能を十分果たすことができる。また、径方向外側のブロックの応答速度を早くすることができるので、撮像素子1の撮像面へ入射する光量を素早く変更することができる。
【0025】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の絞り装置を用いたデジタルスチルカメラを示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態の絞り部材を示す概略構成図である。
【図3】絞り部材の光透過領域の変化状態を示す図であり、(a)光透過領域が小さい状態を示す図である。(b)光透過領域が大きい状態を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 撮像素子
3 絞り部材
10 コントローラ
11a〜11e ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミック素子によって構成される複数のブロックの光透過率をそれぞれ独立して制御することにより、撮像素子の撮像面へ入射する光量を制御する絞り装置において、
前記複数のブロックのそれぞれは、所定の輪郭形状を有する枠状の形状を有し、前記複数のブロックは、光軸を中心として入れ子状に配列され、前記複数のブロックをそれぞれ構成する前記エレクトロクロミック素子の体積はそれぞれ等しいことを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記ブロックは、1つのエレクトロクロミック素子から構成されることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記ブロックは、1または複数のエレクトロクロミック素子から構成されることを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項4】
前記エレクトロクロミック素子は同心円状に配列されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1つに記載の絞り装置を有する撮像装置において、前記絞り装置は前記撮像素子の撮像面への露光動作を行うシャッターの機能を有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−104044(P2009−104044A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277568(P2007−277568)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】