説明

絞り駆動機構、及び、カメラ

【目的】 絞り駆動機構を小型化する。
【構成】 絞り駆動機構12では、カムプレート18が、絞りケース14に回動自在に支持されており、このカムプレート18が、弾性表面波アクチュエータ20によって回動されることで、絞り羽根16が回動されて開口13の径が増減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り駆動機構、及び、絞り駆動機構を備えるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラに備えられた絞り駆動機構では、複数枚の絞り羽根が重なり合って光が通過する開口を形成しており、この複数枚の絞り羽根がカム機構によって回動されて開口の径が増減される。このカム機構は、絞り羽根に形成された突起と、この突起が挿入されるカム溝が形成されたカムプレートとで構成されており、カムプレートが駆動手段によって回動されると突起がカム溝に沿って移動して絞り羽根を回動させる。
【0003】
ここで、駆動手段としては、超音波モータ等が公知となっている(例えば、特許文献1、2参照)。この超音波モータは電磁モータと比較すると小型ではあるが、光軸方向や開口の径方向へ突出してしまうので、その分だけ絞り駆動機構が大型化し、カメラが大型化するという問題があった。
【0004】
ところで、圧電基板上に形成された交差指状電極に電圧を印加して圧電基板に弾性表面波を発生させ、圧電基板に圧接された移動子を移動させるという弾性表面波アクチュエータが考案されている(例えば、特許文献3、4参照)。この弾性表面波アクチュエータの占有スペースは、圧電基板の厚み、面積と移動子の長さの分だけであり、超音波モータと比較して小型である。そこで、本発明者は、絞り駆動機構の駆動源を弾性表面波アクチュエータとすることで、絞り駆動機構を小型化することに着目した。
【特許文献1】特開平7−168245号公報
【特許文献2】特開平11−295777号公報
【特許文献3】特開平9−233865号公報
【特許文献4】特開2001−25570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、絞り駆動機構、及び絞り駆動機構を備えるカメラを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の絞り駆動機構は、光が通過する開口を形成し、回動して前記開口の径を増減する複数枚の絞り羽根と、前記開口回りに回動して前記絞り羽根を回動させるカムプレートと、前記カムプレートを回動させるカムプレート駆動手段と、を備える絞り駆動機構であって、前記カムプレート駆動手段は、前記カムプレートに設けられた移動子と、前記移動子に圧接した圧電基板と、前記圧電基板に設けられ、電圧を印加されて前記圧電基板に弾性表面波を発生させる交差指状電極と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の絞り駆動機構では、複数枚の絞り羽根が、光が通過する開口を形成しており、カムプレートがカムプレート駆動手段によって開口回りに回動されると絞り羽根が回動されて開口の径が増減される。
【0008】
カムプレート駆動手段では、カムプレートに設けられた移動子に圧電基板が圧接し、この圧接基板に交差指状電極が設けられており、交差指状電極に電圧が印加されて圧電基板に弾性表面波が発生する。この弾性表面波によって移動子が移動されてカムプレートが回動し、絞り羽根が回動されて開口の径が増減される。
【0009】
ここで、カムプレート駆動手段の占有スペースは、圧電基板の厚み、面積と移動子の長さの分だけあり、従来のカムプレートを回動させる駆動手段と比して光軸方向及び開口の径方向への拡がりが少なくなっている。これによって、従来と比して絞り駆動機構を小型化できる。
【0010】
請求項2に記載の絞り駆動機構は、請求項1に記載の絞り駆動機構であって、前記移動子が前記カムプレートの外周縁部から前記開口の径方向へ突出し、前記圧電基板が前記カムプレートの外周縁部に沿って延在することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の絞り駆動機構のカムプレート駆動手段では、移動子が、カムプレートの外周縁部から開口の径方向へ突出し、カムプレートの外周縁部に沿って延在する圧電基板に圧接している。
【0012】
ここで、カムプレート駆動手段の占有スペースは、開口の径方向に対してはカムプレートの外周縁部の周囲の移動子の長さと圧電基板の厚み分だけであり、また、光軸方向に対しては圧電基板の幅分だけである。この圧電基板の幅は、交差指状電極を形成できるだけの幅があれば十分である。このため、従来のカムプレートを回動させる駆動機構と比して光軸方向への拡がりを低減でき、従来と比して絞り駆動機構を薄型化できる。
【0013】
請求項3に記載の絞り駆動機構は、請求項1又は2に記載の絞り駆動機構であって、前記カムプレートの前記移動子が形成された面に設けられた磁石と、前記磁石に面して設けられた磁性体と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の絞り駆動機構では、磁石が、カムプレートの移動子が形成された面に設けられ、この磁石に面して磁性体が設けられており、磁性体が磁石に磁気的に吸引されることで、移動子が圧電基板に圧接される。これによって、移動子を圧電基板に圧接するための機構を簡略化できる。
【0015】
請求項4に記載の絞り駆動機構は、請求項3に記載の絞り駆動機構であって、前記磁石の位置を検出する磁気センサと、前記磁気センサによって検出された前記磁石の位置に基づいて、前記開口の径を増減させる絞り制御手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の絞り駆動機構では、カムプレートに設けられた磁石の位置が、磁気センサによって検出され、絞り制御手段が、磁気センサによって検出された磁石の位置に基づいて、開口の径を増減させる。
【0017】
このように、移動子を圧電基板に圧接させるために設けられた磁石が、カムプレートの回動位置を検出するための検出子を兼ねるように構成したことで、カムプレートの回動位置を検出するための機構の部品点数を低減でき、コストを低減できる。
【0018】
請求項5に記載の絞り駆動機構は、光が通過する開口を形成し、回動して前記開口の径を増減する複数枚の絞り羽根と、前記絞り羽根を回動させる絞り羽根駆動手段と、を備える絞り駆動機構であって、前記絞り羽根駆動手段は、前記絞り羽根に形成された移動子と、前記移動子に圧接した圧電基板と、前記圧電基板に形成され、電圧を印加されて前記圧電基板に弾性表面波を発生させる交差指状電極と、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の絞り駆動機構では、複数枚の絞り羽根が、光が通過する開口を形成しており、この絞り羽根が、絞り羽根駆動手段によって回動されて開口の径が増減される。
【0020】
絞り羽根駆動手段では、絞り羽根に設けられた移動子に圧電基板が圧接し、この圧接基板に交差指状電極が設けられており、交差指状電極に電圧が印加されて圧電基板に弾性表面波が発生する。この弾性表面波によって移動子が移動されて絞り羽根が回動し、開口の径が増減される。
【0021】
ここで、絞り羽根駆動手段の占有スペースは、圧電基板の厚み、面積と移動子の長さの分だけあり、従来の絞り羽根を回動させる駆動機構と比して光軸方向及び開口の径方向への拡がりが少なくなっている。これによって、従来と比して絞り駆動機構を小型化できる。
【0022】
請求項6に記載のカメラは、請求項1乃至5の何れか1項に記載の絞り駆動機構を備えることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載のカメラでは、絞り駆動機構の光軸方向及び開口の径方向への拡がりが低減されているので、小型化が可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記構成にしたので、絞り駆動機構、及び絞り駆動機構を備えるカメラを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0026】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るデジタルカメラ10の外観上の構成を説明する。図1に示すように、デジタルカメラ10は、カメラ本体11の正面に、被写体像を結像させるためのレンズ21、撮影時に必要に応じて被写体に照射する光を発するストロボ62、及び撮影する被写体の構図を決定するために用いられるファインダ88を備えている。また、デジタルカメラ10は、カメラ本体11の上面に、撮影を実行する際にユーザによって押圧操作されるレリーズボタン(所謂シャッター)92、及び電源スイッチ94を備えている。
【0027】
なお、本実施の形態に係るデジタルカメラ10のレリーズボタン92は、中間位置まで押下される状態(以下、「半押し状態S1」という。)と、当該中間位置を超えた最終押下位置まで押下される状態(以下、「全押し状態S2」という。)と、の2段階の押圧操作が検出可能に構成されている。そして、デジタルカメラ10では、レリーズボタン92を半押し状態S1にすることによりAE(Automatic Explosure、自動露出)機能が働いて露出状態(シャッタースピード、絞りの状態)が設定された後、AF(Auto Focus、自動合焦)機能が働いて合焦制御され、その後、引き続き全押し状態S2にすると露光(撮影)が行われるようになっている。
【0028】
一方、カメラ本体11の背面には、上記ファインダ88の接眼部が設けられている。このファインダ88の接眼部近傍(図1では下方)には、撮影によって得られたデジタル画像データにより示される被写体像や各種メニュー画面、そしてメッセージ等を表示するための液晶ディスプレイ(以下、「LCD」という。)44が設けられている。また、LCD44近傍(図1では上方)にはモード切替スイッチ96が設けられ、またLCD44近傍(図1では右方)には十字カーソルボタン98が設けられている。モード切替スイッチ96は、ユーザによってスライド操作によって、撮影を行うモードである撮影モード、及び撮影によって得られたデジタル画像データにより示される被写体像をLCD44に表示(再生)するモードである再生モードの何れか一方のモードに設定するためのものである。十字カーソルボタン98は、LCD44の表示領域における上・下・左・右の4方向の移動方向を示す4つの矢印キー及び当該4つの矢印キーの中央部に位置された決定キーの合計5つのキーを含んで構成されており、各キーの押圧により該当するコマンドを出力するものである。また、十字カーソルボタン98の近傍(図1では上方)には、ユーザの押圧操作によって、撮影時にストロボ62を強制的に発光させるモードである強制発光モードを設定するための強制発光スイッチ99が設けられている。
【0029】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係るデジタルカメラ10の電気系の構成を説明する。
【0030】
デジタルカメラ10は、レンズ21を含んで構成されたレンズユニット22を備えており、レンズユニット22の射出側でレンズ21の光軸後方には絞り駆動機構12、電荷結合素子(以下、「CCD」という。)24が設けられている。CCD24は、アナログ信号処理部26、アナログ/デジタル変換器(以下、「ADC」という。)28及びデジタル信号処理部30を介してシステムバスBUSに接続されている。アナログ信号処理部26は、CCDの出力信号に含まれるノイズ(特に熱雑音)等を軽減して正確な画素データを得る回路などを含んで構成されている。また、ADC28は、入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換するためのものである。また、デジタル信号処理部30は、所定容量のラインバッファを内蔵し、かつ入力されたデジタル画像データをメモリ72の所定領域に直接記憶させる制御を行うと共に、デジタル画像データに対して各種のデジタル画像処理を行うものである。
【0031】
なお、システムバスBUSには、デジタル信号処理部30,LCDインタフェース42,CPU(中央処理装置)50、メモリインタフェース70、外部メモリインタフェース80、及び圧縮・伸張処理回路86の各々が相互にデータやコマンドを授受可能に接続されている。LCDインタフェース42は、デジタル画像データにより示される画像やメニュー画面等をLCD44に表示させるための信号を生成してLCD44に供給するインタフェース回路である。CPU(中央処理装置)50は、デジタルカメラ10全体の動作を司る処理装置である。メモリ72は、主として撮影により得られたデジタル画像データを記憶するVRAM(Video RAM)により構成されたメモリである。メモリインタフェース70は、メモリ72に対するアクセスのための制御回路である。外部メモリインタフェース80は、スマートメディア(Smart Media(登録商標))等の記録メディアにより構成されたメモリカード82をデジタルカメラ10でアクセス可能とするためのインタフェース回路である。圧縮・伸張処理回路86は、所定の圧縮形式でデジタル画像データに対して圧縮処理を施す一方、圧縮処理されたデジタル画像データに対して圧縮形式に応じた伸張処理を施す処理回路である。
【0032】
従って、CPU50は、デジタル信号処理部30及び圧縮・伸張処理回路86の作動の制御、LCD44に対するLCDインタフェース42を介した各種情報の表示、メモリ72及びメモリカード82へのメモリインタフェース70及び外部メモリインタフェース80を介したアクセスを行う。
【0033】
一方、デジタルカメラ10には、主としてCCD24を駆動させるためのタイミング信号を生成してCCD24に供給するタイミングジェネレータ32が備えられており、CCD24の駆動はCPU50によりタイミングジェネレータ32を介して制御される。
【0034】
また、デジタルカメラ10は駆動部34を備えており、レンズユニット22に備えられた焦点調整機構(詳細は後述)やズーム機構及び絞り駆動機構12の駆動もCPU50により駆動部34を介して制御される。
【0035】
CPU50は、光学ズーム倍率を変更する際には図示しないズーム機構を駆動制御してレンズユニット22に含まれるレンズ21の焦点距離を変化させる。また、CPU50は、CCD24による撮像によって得られた画像のコントラスト値が最大となるように上記焦点調整機構(後述)を駆動制御することによって合焦制御する。本実施の形態に係るデジタルカメラ10では、合焦制御として、読み取られた画像のコントラストが最大となるようにレンズの位置を設定する、所謂TTL(Through The Lens)方式を採用している。
【0036】
また、レリーズボタン92、電源スイッチ94、モード切替スイッチ96、十字カーソルボタン98、及び強制発光スイッチ99の各種ボタン類及びスイッチ類(同図では、「操作部90」と総称。)はCPU50に接続されており、CPU50は、これらの操作部90に対する操作状態を常時把握できる。
【0037】
また、デジタルカメラ10は、ストロボ62とCPU50との間に介在され、CPU50の制御によりストロボ62を発光させるための電力を充電する充電部60を備えている。ストロボ62はCPU50にも接続されており、ストロボ62の発光はCPU50によって制御される。
【0038】
次に、本実施の形態に係るデジタルカメラ10の全体的な動作について簡単に説明する。
【0039】
まず、CCD24によりレンズユニット22を介した撮像を行い、被写体像を示すR(赤)、G(緑)、B(青)の信号をアナログ信号処理部26に順次出力する。アナログ信号処理部26は、CCD24から入力された信号に対して相関二重サンプリング処理等のアナログ信号処理を施した後にADC28に順次出力する。ADC28は、アナログ信号処理部26から入力されたR,G,Bの信号を各々12ビットのR,G,Bの信号(デジタル画像データ)に変換してデジタル信号処理部30に順次出力する。デジタル信号処理部30は、内蔵しているラインバッファにADC28から順次出力されるデジタル画像データを蓄積して一旦メモリ72の所定領域に格納する。
【0040】
メモリ72の所定領域に格納されたデジタル画像データは、CPU50による制御によりデジタル信号処理部30によって読み出され、これらに所定の物理量に応じたデジタルゲインをかけることでホワイトバランス調整を行なうと共に、ガンマ処理及びシャープネス処理を行なって8ビットのデジタル画像データを生成し、更にYC信号処理を施して輝度信号Yとクロマ信号Cr,Cb(以下、「YC信号」という。)を生成し、YC信号をメモリ72の上記所定領域とは異なる領域に格納する。
【0041】
なお、LCD44は、CCD24による連続的な撮像によって得られた動画像(スルー画像)を表示してファインダとして使用することができるものとして構成されているが、このようにLCD44をファインダとして使用する場合には、生成したYC信号を、LCDインタフェース42を介して順次LCD44に出力する。これによってLCD44にスルー画像が表示されることになる。
【0042】
ここで、レリーズボタン92がユーザによって半押し状態とされた場合、前述のようにAE機能が働いて露出状態が設定された後、AF機能が働いて合焦制御され、その後、引き続き全押し状態とされた場合、この時点でメモリ72に格納されているYC信号を、圧縮・伸張処理回路86によって所定の圧縮形式(本実施の形態ではJPEG形式)で圧縮した後に外部メモリインタフェース80を介してメモリカード82に記録することにより撮影が行われる。
【0043】
次に、絞り駆動機構12の構造について説明する。
[第1実施形態]
図3乃至図5に示すように、絞り駆動機構12は、絞りケース14と、5枚の絞り羽根16と、カムプレート18と、弾性表面波アクチュエータ20と、を備える。絞りケース14は、底付きの円筒体で、底面14Aには、円状の開口14Bが穿設され、5本のピン14Cが開口14Bの周囲に約72度の間隔で立設されている。また、絞り羽根16の基端部には、ピン14Cが挿入される支持孔16Aが形成されており、絞り羽根16が、絞りケース14にピン14C回りに回動自在に支持されている。また、5枚の絞り羽根16の自由端部は、開口14Bの周方向に順に重なり合って開口13を形成している。
【0044】
また、カムプレート18は、絞りケース14に回動可能に支持され、絞り羽根16を間に置いて底面14Aに対向した円板である。また、カムプレート18の中央部には円状の開口18Aが穿設されている。また、絞り羽根16には、カムプレート18側に突出するカムフォロアピン16Bが立設されており、カムプレート18には、カムフォロアピン16Bが摺動する非貫通孔であるカム溝18Bが形成されている。このカム溝18Bは、周方向に延びており、図中時計回り方向へかけて外周側から内周側へ屈折している。
【0045】
また、弾性表面波アクチュエータ20は、カムプレート18に立設された2本のピン18Cと、圧電基板40と、圧電基板40上に蒸着された交差指状電極42A、42Bと、を備える。2本のピン18Cは、カムプレート18のカム溝18Bが形成された面の裏面に、約180度の間隔で立設されている。圧電基板40は、ニオブ酸リチウムで形成された円状の板で、絞りケース14に回動不能に支持されてピン18Cに圧接されている。また、圧電基板40の中央部には円状の開口40Aが穿設されている。
【0046】
また、圧電基板40上には、ピン18Cが圧接する圧接地点を間に置いて開口40Aの接線方向に対向する交差指状電極42A、42Bが形成されており、この交差指状電極42A、42Bにはそれぞれ、高周波電源(図示省略)が接続されている。図6(A)に示すように、交差指状電極42Aに高周波電圧が印加されると、交差指状電極42Aが励振し、圧電基板40に交差指状電極42B側へ進行する弾性表面波Hが発生する。この弾性表面波Hは、進行方向に対して後方楕円運動をしながら進行するので、圧電基板40に圧接されているピン18Cは、弾性表面波Hの進行方向と逆方向(図中矢印A方向)へ移動する。これによって、図6(B)に示すように、カムプレート18が図中時計回り方向に回転し、カムフォロアピン16Bがカム溝18Bに沿って外周側へ移動し、そして、図6(C)に示すように、絞り羽根16が外周側へ回動して開口13の径が増大する。
【0047】
一方、図7(A)に示すように、交差指状電極42Bに高周波電圧が印加されると、交差指状電極42Bが励振し、圧電基板40に交差指状電極42A側へ進行する弾性表面波Hが発生する。そして、圧電基板40に圧接されているピン18Cは、弾性表面波Hの進行方向と逆方向(図中矢印B方向)へ移動する。これによって、図7(B)に示すように、カムプレート18が図中反時計回り方向に回転し、カムフォロアピン16Bがカム溝18Bに沿って内周側へ移動し、そして、図7(C)に示すように、絞り羽根16が内周側へ回動して開口13の径が減少する。
【0048】
ここで、弾性表面波アクチュエータ20の占有スペースは、圧電基板40の厚み、面積とピン18Cの長さ分だけあり、従来のカムプレートを回動させる駆動機構と比して光軸L方向及び開口13の径方向への拡がりが少なくなっている。これによって、従来と比して絞り駆動機構12を小型化できる。
[第2実施形態]
次に、絞り駆動機構の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0049】
図8乃至図10に示すように、絞り駆動機構52は、絞りケース15と、5枚の絞り羽根16と、カムプレート54と、弾性表面波アクチュエータ56と、を備える。絞りケース15は、底付きの円筒体で、底面15Aには、円状の開口15Bが穿設され、5本のピン15Cが開口15Bの周囲に約72度の間隔で立設されており、このピン15Cが支持羽根16に形成された支持孔16Aに挿入されて、絞り羽根16が、絞りケース15にピン15C回りに回動自在に支持されている。カムプレート54は、絞りケース15に回動可能に支持され、絞り羽根16を間に置いて底面15Aに対向した円板である。また、カムプレート54の中央部には円状の開口54Aが穿設されている。また、カムプレート54には、カムフォロアピン16Bが摺動する非貫通孔であるカム溝54Bが形成されている。このカム溝54Bは、周方向に延びており、図中時計回り方向へかけて外周側から内周側へ屈折している。
【0050】
また、弾性表面波アクチュエータ56は、圧電基板58と、圧電基板58上に蒸着された交差指状電極42A、42B、カムプレート54に立設された2本のピン54Cと、を備える。圧電基板58は、ニオブ酸リチウムで形成された細長い板材で、絞りケース14の内周面に固定されてカムプレート18の外周縁部に沿って延在している。また、2本のピン54Cは、カムプレート54の外周縁部に約180度の間隔で立設されており、開口54Aの径方向へ突出して圧電基板58に圧接している。
【0051】
また、圧電基板58上には、ピン54Cが圧接する圧接地点を間に置いてカムプレート54の周方向に対向する交差指状電極42A、42Bが形成されており、この交差指状電極42A、42Bにはそれぞれ、高周波電源(図示省略)が接続されている。図11(A)に示すように、交差指状電極42Aに高周波電圧が印加されると、交差指状電極42Aが励振し、圧電基板58に交差指状電極42B側へ進行する弾性表面波Hが発生する。この弾性表面波Hは、進行方向に対して後方楕円運動をしながら進行するので、圧電基板58に圧接されているピン54Cは、弾性表面波Hの進行方向と逆方向(図中矢印A方向)へ移動する。これによって、図11(B)に示すように、カムプレート54が図中時計回り方向に回転し、カムフォロアピン16Bがカム溝18Bに沿って外周側へ移動し、そして、図11(C)に示すように、絞り羽根16が外周側へ回動して開口13の径が増大する。
【0052】
一方、図12(A)に示すように、交差指状電極42Bに高周波電圧が印加されると、交差指状電極42Bが励振し、圧電基板58に交差指状電極42A側へ進行する弾性表面波Hが発生する。そして、圧電基板58に圧接されているピン54Cは、弾性表面波Hの進行方向と逆方向(図中矢印B方向)へ移動する。これによって、図12(B)に示すように、カムプレート54が図中反時計回り方向に回転し、カムフォロアピン16Bがカム溝18Bに沿って内周側へ移動し、そして、図12(C)に示すように、絞り羽根16が内周側へ回動して開口13の径が減少する。
【0053】
ここで、弾性表面波アクチュエータ56の占有スペースは、開口13の径方向に対してはピン54Cの長さと圧電基板58の厚みの分だけであり、また、光軸L方向に対しては圧電基板58の幅分だけである。この圧電基板58の幅は、交差指状電極42A、42Bを形成できるだけの幅があれば十分である。このため、従来のカムプレートを回動させる駆動機構と比して光軸L方向への拡がりを低減でき、従来と比して絞り駆動機構52を薄型化できる。
[第3実施形態]
次に、絞り駆動機構の第3実施形態について説明する。なお、第1、第2実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0054】
図13乃至図15に示すように、絞り駆動機構62は、絞りケース17と、5枚の絞り羽根16と、カムプレート64と、支持板65と、弾性表面波アクチュエータ66と、を備える。絞りケース17は、底付きの円筒体で、底面17Aには、円状の開口17Bが穿設され、5本のピン17Cが開口17Bの周囲に約72度の間隔で立設されており、このピン17Cが支持羽根16に形成された支持孔16Aに挿入されて、絞り羽根16が、絞りケース17にピン17C回りに回動自在に支持されている。カムプレート64は、絞りケース17に回動不能に支持されて絞り羽根16を間に置いて底面17Aに対向した円板である。またカムプレート64の中央部には円状の開口64Aが穿設されている。また、カムプレート64には、カムフォロアピン16Bが摺動する貫通孔であるカム孔64Bが形成されている。このカム孔64Bは、周方向に延びており、図中時計回り方向へかけて外周側から内周側へ屈折している。また、支持板65は、絞りケース17に回動不能に支持されてカムプレート64に対向した円板である。また、支持板65の中央部には開口65Aが形成されている。
【0055】
また、弾性表面波アクチュエータ66は、5枚の圧電基板68と、各圧電基板68上に蒸着された交差指状電極42A、42B、絞り羽根16に立設された2本のカムフォロアピン16Bと、を備える。各圧電基板68は、ニオブ酸リチウムで形成された板材で、支持板65に固定されて各カムフォロアピン16Bに圧接されている。
【0056】
また、圧電基板68上には、カムフォロアピン16Bが圧接する圧接地点を間に置いて開口65Aの周方向に対向する交差指状電極42A、42Bが形成されており、この交差指状電極42A、42Bにはそれぞれ、高周波電源(図示省略)が接続されている。図16(A)に示すように、交差指状電極42Aに高周波電圧が印加されると、交差指状電極42Aが励振し、圧電基板68に交差指状電極42B側へ進行する弾性表面波Hが発生する。この弾性表面波Hは、進行方向に対して後方楕円運動をしながら進行するので、圧電基板68に圧接されているカムフォロアピン16Bは、弾性表面波Hの進行方向と逆方向(図中矢印A方向)へ移動する。これによって、図16(B)に示すように、カムフォロアピン16Bがカム溝64Bに沿って内周側へ移動し、そして、図16(C)に示すように、絞り羽根16が内周側へ回動して開口13の径が減少する。
【0057】
一方、図17(A)に示すように、交差指状電極42Bに高周波電圧が印加されると、交差指状電極42Bが励振し、圧電基板68に交差指状電極42A側へ進行する弾性表面波Hが発生する。そして、圧電基板68に圧接されているカムフォロアピン16Bは、弾性表面波Hの進行方向と逆方向(図中矢印B方向)へ移動する。これによって、図17(B)に示すように、カムフォロアピン16Bがカム溝64Bに沿って外周側へ移動し、そして、図17(C)に示すように、絞り羽根16が外周側へ回動して開口13の径が増大する。
【0058】
ここで、弾性表面波アクチュエータ62の占有スペースは、圧電基板68の厚み、面積とカムフォロアピン16Bの長さの分だけあり、従来の絞り羽根16を回動させる駆動機構と比して光軸L方向及び開口13の径方向への拡がりが少なくなっている。これによって、従来と比して絞り駆動機構62を小型化できる。
[第4実施形態]
次に、絞り駆動機構の第4実施形態について説明する。なお、第1乃至第3実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0059】
図18乃至図20に示すように、絞り駆動機構72は、絞りケース14と、5枚の絞り羽根16と、カムプレート18と、弾性表面波アクチュエータ20と、を備える。これらは、第1実施形態の絞り駆動機構12と同様の構成である。
【0060】
カムプレート18のピン18Cが形成された面には、2ケの磁石74がカムプレート18の回転中心に対して略対称に取付けられている。また、圧電基板40のカムプレート18と対向する面には、2枚の磁性体76が取付けられており、各磁性体76が各磁石74に対向している。このため、各磁性体76が各磁石74に磁気的に吸引されてカムプレート18が圧電基板40側へ引寄せられてピン18Cが圧電基板40に圧接される。これによって、ピン18Cを圧電基板40に圧接するための機構を簡略化できる。
【0061】
また、絞りケース14の内周面には、ホール素子等の磁気センサ78が取付けられており、磁石74の位置が磁気センサ78によって検出される。また、磁気センサ78の出力には、CPU50(図2参照)が接続されており、CPU50が、磁気センサ78によって検出された磁石74の位置に基づいて、弾性表面波アクチュエータ20を制御して開口13の径を増減させる。
【0062】
このように、ピン18Cを圧電基板40に圧接させるために設けられた磁石74が、カムプレート18の回動位置を検出するための検出子を兼ねるように構成したことで、カムプレート18の回動位置を検出するための機構の部品点数を低減でき、コストを低減できる。
【0063】
なお、第1乃至第4実施形態では、デジタルカメラを例に取って本発明を説明したが、アナログカメラ等の他のカメラにも本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態のデジタルカメラの外観図である。
【図2】本発明の実施形態のデジタルカメラの制御系の概略ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態の絞り駆動機構を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態の絞り駆動機構を示す斜視図で、(A)は(B)のA矢視図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の絞り機構を示す側断面図である。
【図6】(A)〜(C)は、本発明の第1実施形態の絞り駆動機構の動作を示す概略図である。
【図7】(A)〜(C)は、本発明の第1実施形態の絞り駆動機構の動作を示す概略図である。
【図8】本発明の第2実施形態の絞り駆動機構を示す分解斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態の絞り駆動機構を示す斜視図で、(A)は(B)のA矢視図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図10】本発明の第2実施形態の絞り機構を示す上断面図である。
【図11】(A)〜(C)は、本発明の第2実施形態の絞り駆動機構の動作を示す概略図である。
【図12】(A)〜(C)は、本発明の第2実施形態の絞り駆動機構の動作を示す概略図である。
【図13】本発明の第3実施形態の絞り駆動機構を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の第3実施形態の絞り駆動機構を示す斜視図で、(A)は(B)のA矢視図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図15】本発明の第3実施形態の絞り機構を示す側断面図である。
【図16】(A)〜(C)は、本発明の第3実施形態の絞り駆動機構の動作を示す概略図である。
【図17】(A)〜(C)は、本発明の第3実施形態の絞り駆動機構の動作を示す概略図である。
【図18】本発明の第4実施形態の絞り駆動機構を示す分解斜視図である。
【図19】本発明の第4実施形態の絞り駆動機構を示す斜視図で、(A)は(B)のA矢視図、(B)は(A)のB矢視図である。
【図20】本発明の第4実施形態の絞り機構を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 デジタルカメラ(カメラ)
12 絞り駆動機構
16 絞り羽根
16B カムフォロアピン(移動子)
18 カムプレート
18C ピン(移動子)
20 弾性表面波アクチュエータ(カムプレート駆動手段)
40 圧電基板
42A 交差指状電極
42B 交差指状電極
52 絞り駆動機構
54 カムプレート
54C ピン(移動子)
56 弾性表面波アクチュエータ(カムプレート駆動手段)
58 圧電基板
62 絞り駆動機構
64 カムプレート
66 弾性表面波アクチュエータ(カムプレート駆動手段)
68 圧電基板
72 絞り駆動機構
74 磁石
76 磁性体
78 磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過する開口を形成し、回動して前記開口の径を増減する複数枚の絞り羽根と、
前記開口回りに回動して前記絞り羽根を回動させるカムプレートと、
前記カムプレートを回動させるカムプレート駆動手段と、を備える絞り駆動機構であって、
前記カムプレート駆動手段は、
前記カムプレートに設けられた移動子と、
前記移動子に圧接した圧電基板と、
前記圧電基板に設けられ、電圧を印加されて前記圧電基板に弾性表面波を発生させる交差指状電極と、
を有することを特徴とする絞り駆動機構。
【請求項2】
前記移動子が前記カムプレートの外周縁部から前記開口の径方向へ突出し、
前記圧電基板が前記カムプレートの外周縁部に沿って延在することを特徴とする請求項1に記載の絞り駆動機構。
【請求項3】
前記カムプレートの前記移動子が形成された面に設けられた磁石と、
前記磁石に面して設けられた磁性体と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の絞り駆動機構。
【請求項4】
前記磁石の位置を検出する磁気センサと、
前記磁気センサによって検出された前記磁石の位置に基づいて、前記開口の径を増減させる絞り制御手段と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の絞り駆動機構。
【請求項5】
光が通過する開口を形成し、回動して前記開口の径を増減する複数枚の絞り羽根と、
前記絞り羽根を回動させる絞り羽根駆動手段と、
を備える絞り駆動機構であって、
前記絞り羽根駆動手段は、
前記絞り羽根に設けられた移動子と、
前記移動子に圧接した圧電基板と、
前記圧電基板に設けられ、電圧を印加されて前記圧電基板に弾性表面波を発生させる交差指状電極と、
を有することを特徴とする絞り駆動機構。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の絞り駆動機構を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−292882(P2006−292882A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111027(P2005−111027)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】