説明

給排水システムおよび金属製品の製造ライン

【課題】水資源の効率的な活用を可能にすると共に、冷却装置におけるノズルの詰まりを抑制して金属製品を均一に冷却することが可能な、給排水システムおよび金属製品の製造ラインを提供する。
【解決手段】金属製品を製造する製造ラインに設置され、該製造ライン内で使用された工業用水を回収し再利用する給排水システムであって、製造ラインに備えられている冷却装置で金属材を冷却する際に使用された工業用水を回収する第1の水処理系統と、製造ラインに備えられている冷却装置以外の装置で使用された工業用水を回収可能な第2の水処理系統と、を具備する給排水システム、および、該給排水システムと、冷却装置と、金属材を処理する処理装置と、を備える金属製品の製造ラインとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品を製造する製造ラインに設置され、製造ライン内で使用された工業用水を回収し再利用する給排水システム、および、該給排水システムを備える金属製品の製造ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
板状体、管状体などの製品素材を含めた金属製品は、通常、製造ライン上で加熱、冷却などの過程を経て製造される。このとき、加熱された金属材の表面には酸化物の薄片(スケール)が形成され、このスケールは、工業用水などを用いて、金属材の表面から剥離される。例えば厚鋼板の場合、加熱炉にて1000〜1200℃程度まで加熱されたスラブが、デスケーリング装置でスケールが剥離され、圧延機で圧延され、冷却装置により水冷され、矯正装置により形状を矯正されるなどの過程を経て、所定の板厚を有する厚鋼板が製造される。このようにして厚鋼板を製造する製造ラインでは、例えば、スケールを剥離させるデスケーリング装置や冷却装置において、鋼板表面へと直接噴射される形態で、工業用水が使用される。このほか、厚鋼板の製造ラインでは、加熱された鋼板と接触することにより加温される圧延機や矯正装置のロール等を冷却する目的でも工業用水が使用される。すなわち、厚鋼板の製造ラインにおける工業用水の使用形態には、鋼板に直接接触させる使用形態(直接水としての使用形態)のほか、製造ライン上の加工装置に接触させて当該加工装置を冷却する形態(間接水としての使用形態)がある。
【0003】
このように金属製品の製造ラインでは様々な工程において工業用水が使用され、その使用量もかなりのものとなる。このため、使用した工業用水を回収し再利用することが通常行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、間接水系から直接水系に給水するように工業用水を使用し、直接水系で使用した工業用水をろ過し間接水系に戻して再利用することにより効率的な工業用水の使用を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−212762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工業用水の再利用は、水資源の効率的な活用として重要な問題である。通常、製造ライン上の装置群から排出される工業用水を回収する排水装置(例えば、直接水系で使用した工業用水を回収する排水装置)は、冷却装置を含め、複数の加工装置で使用した排水を同一の水処理系統で回収するように設計されている。この場合、冷却装置で用いられた比較的汚れの少ない排水から、デスケーリング装置でスケールの除去に用いられたスケール等の不純物を多量に含む排水まで、様々な排水を同一の水処理系統で扱うことになる。このような水処理系統で扱われる、スケール等の不純物を多量に含む排水は、製造ラインの配管を詰まらせる原因となる。そのため、従来の水処理系統では、排水に含まれる不純物を除去した上で再利用していた。しかしながら、鉄粉(粉末状態になったスケール)などの完全な除去は容易にはできないため、従来の水処理系統では、特に冷却装置のノズルの詰まりを防止することが困難であった。特に冷却装置には、金属材を均一に冷却することが求められているため、冷却装置のノズルには径の小さいものが採用されることが多い。冷却水中の不純物はノズルの詰まりの直接的な原因になり、ノズルの詰まりは金属材の不均一冷却の一因になるため、排水を冷却水として再利用する場合には、十分な水質管理が重要となる。
【0007】
そこで、本発明は、水資源の効率的な活用を可能にすると共に、冷却装置におけるノズルの詰まりを抑制して金属製品を均一に冷却することが可能な、給排水システムおよび金属製品の製造ラインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
水資源を効率的に使用するためには、排水を再利用することが好ましい。一方、金属製品の製造により発生した排水は少なからず使用前に比べて水質が悪化する。
【0009】
本発明者らは、特に厚鋼板の製造に当たり、各製造工程における排水の汚れについて着目した。これによれば、デスケーリング装置でのスケール(酸化物)除去工程、圧延機や矯正装置での加工工程では、剥離されたスケールが排水に混入するので水質の悪化度が高いのに対し、デスケーリング装置よりも鋼板の搬送方向下流側にあり、加工を行わない冷却装置からの排水は、スケールの混入もほとんどなく水質の悪化度が低いことが判明した。
【0010】
冷却装置は、厚鋼板の製造ラインに備えられている様々な装置の中でも最も工業用水が必要とされる装置である。特に厚鋼板を製造する場合には、潜熱が大きいために冷却には大量の工業用水が必要とされる。よって、水質の悪化度が低い冷却装置からの排水を冷却装置に用いる工業用水として再利用すれば、効率的な水資源の活用ができる。
【0011】
そこで、本発明者らは、冷却装置からの排水を流入させ必要に応じて不純物を除去した後、冷却装置から排出された工業用水を冷却装置で再利用するための水処理系統を、デスケーリング装置や圧延機など既設設備からの排水が流入する水処理系統から分離して、スケール等の不純物が混入しない独立した冷却装置専用の水処理系統を設置することにより、上記課題の解決が可能になることを知見し、本発明を完成させた。
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするため、添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明の第1の態様は、金属製品を製造する製造ライン(10)に設置され、該製造ライン内で使用された工業用水を回収し再利用する給排水システム(7)であって、製造ラインに備えられている冷却装置(4)で金属材を冷却する際に使用された工業用水を回収する第1の水処理系統(8)と、製造ラインに備えられている冷却装置以外の装置(1、2、3、5、6)で使用された工業用水を回収可能な第2の水処理系統(9)と、を具備することを特徴とする、給排水システムである。
【0014】
ここに、本発明における「冷却装置以外の装置(1、2、3、5、6)」には、例えば、加熱炉(1)、デスケーリング装置(2)、圧延機(3)、熱処理装置(5)および、矯正装置(6)等が含まれ得る。
【0015】
また、上記本発明の第1の態様において、第1の水処理系統(8)のうち、少なくとも、冷却装置(4)で金属材を冷却する際に使用された工業用水を回収する部位が、第2の水処理系統(9)よりも鉛直方向上側に配置されていることが好ましい。
【0016】
本発明の第2の態様は、冷却装置(4)と、金属材を処理する処理装置(1、2、3、5、6)と、上記本発明の第1の態様にかかる給排水システム(7)と、を備えることを特徴とする、金属製品の製造ライン(10)である。
【0017】
ここに、本発明における「金属材を処理する処理装置(1、2、3、5、6)」は、金属材の製造ライン(10)を搬送される金属材に何らかの処理(例えば、加熱処理、表面処理、形状矯正処理など)を施す装置であって、冷却装置(4)以外の装置をいう。「金属材を処理する処理装置(1、2、3、5、6)」には、例えば、加熱炉(1)、デスケーリング装置(2)、圧延機(3)、熱処理装置(5)および、矯正装置(6)等が含まれ得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の給排水システム(7)には、冷却装置(4)専用の第1の水処理系統(8)が、第2の水処理系統(9)とは別に備えられている。そのため、第1の水処理系統(8)には、冷却装置(4)から排出された冷却水(工業用水)が流入し、デスケーリング装置(2)から排出されたスケール等の不純物は流入しない。冷却装置(4)から排出された工業用水に含有されている不純物は、第2の水処理系統(9)へと流入する工業用水に含有されている不純物よりも少ないので、第1の水処理系統(8)へと流入した工業用水を冷却装置(4)へと供給し再度冷却水として使用しても、冷却装置(4)のノズル(4x、4x、…、4y、4y、…)は詰まり難い。ノズル(4x、4x、…、4y、4y、…)の詰まりを抑制することにより、金属製品を均一に冷却しやすくなる。また、冷却水を繰り返し使用することで、水資源の効率的な使用が可能になる。したがって、本発明の第1の態様によれば、水資源の効率的な活用を可能にすると共に、冷却装置(4)におけるノズル(4x、4x、…、4y、4y、…)の詰まりを抑制して金属製品を均一に冷却することが可能な、給排水システム(7)を提供することができる。
【0019】
また、本発明の第1の態様において、第1の水処理系統(8)のうち、少なくとも、冷却装置(4)で金属材を冷却する際に使用された工業用水を回収する部位が、第2の水処理系統(9)よりも鉛直方向上側に配置されていることにより、第1の水処理系統(8)で回収できなかった冷却装置(4)の排水を第2の水処理系統(9)で回収することが容易になる。これにより、第1の水処理系統(8)および第2の水処理系統(9)以外の箇所へと飛散する、冷却装置(4)の排水の量を低減しやすくなるので、水資源を効率的に活用しやすくなる。
【0020】
本発明の第2の態様には、本発明の第1の態様にかかる給排水システム(7)が備えられている。したがって、本発明の第2の態様によれば、水資源の効率的な活用を可能にすると共に、冷却装置(4)におけるノズル(4x、4x、…、4y、4y、…)の詰まりを抑制して金属製品を均一に冷却することが可能な、金属製品の製造ライン(10)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】給排水システム7を備えた厚鋼板の製造ライン10を説明する図である。
【図2】給排水システム7を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の給排水システムを、厚鋼板の製造ラインの給排水システムへと適用した場合について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の給排水システム7を備えた厚鋼板の製造ライン10を説明する図である。図1の紙面左側から右側へと向かう直線矢印は、鋼板の搬送方向である。図1では、製造ライン10を簡略化して示しており、一部符号の記載を省略している。
図1に示す厚鋼板の製造ライン10は、鋼板の搬送方向上流側から順に、加熱炉1、デスケーリング装置2、圧延機3、冷却装置4、熱処理装置5、および、矯正装置6(レベラー6)を備え、さらに、これらの装置で使用された工業用水を回収し、回収した工業用水を再利用可能なように構成された給排水システム7を備えている。給排水システム7は、冷却装置4から排出された工業用水を回収する第1の水処理系統8と、冷却装置4以外の装置から排出された工業用水を回収可能な第2の水処理系統9とを具備しており、第1の水処理系統8は第2の水処理系統9の鉛直方向上側に配置されている。
【0024】
図1に示すように、厚鋼板の製造ライン10で厚鋼板を製造する際には、まず、連続鋳造法などで製造されたスラブが加熱炉1で1000〜1200℃程度まで加熱される。加熱によりスラブ表面には酸化物(スケール)が形成される(以下において、加熱炉で形成されるスケールを「一次スケール」ということがある。)。スケールは後の工程や厚鋼板の品質にも影響するため、デスケーリング装置2で表面に高圧水を噴射することにより、スケールが剥離除去される。その後、一次スケールが除去された鋼板は、圧延機3により所定厚まで減厚され、冷却装置4により冷却され、必要に応じて熱処理装置5により所定特性を得るための加熱処理が行われ、最終的にレベラー6により成形される。このときも、高温下にある鋼板は空気にさらされているため少量のスケール(二次スケール)が形成される。この後、最終製品とするまでに切断工程などの工程を経て最終製品としての厚鋼板が製造されるが、図1では、レベラー6よりも下流側に配置された装置の記載を省略している。
【0025】
厚鋼板の製造時には、工業用水が、例えばスケール除去のための高圧水や、冷却のための冷却水として、直接水の形態で使用される。このほか、工業用水は、例えば圧延機3やレベラー6のロールを冷却する冷却水として、間接水の形態でも使用される。厚鋼板の製造ライン10内で使用された工業用水は、給排水システム7によって回収され、再利用される。
【0026】
図2は、給排水システム7を説明する図である。図2(a)は図1のIIA−IIA断面図であり、図2(b)は図1のIIB−IIB断面図である。以下、図1および図2を参照しつつ、本発明の給排水システム7について説明を続ける。
【0027】
第1の水処理系統8は、第2の水処理系統9から独立して存在している。第1の水処理系統8は、冷却装置4によって鋼板を冷却する際に使用された冷却水(排水)を回収し、冷却装置4以外の装置(加熱炉1、デスケーリング装置2、圧延機3、熱処理装置5、および、レベラー6。以下において同じ。)からの排水は、第2の水処理系統9によって回収される。図2(a)に示すように、第1の水処理系統8は、冷却装置4からの排水を回収する水路(排水回収水路8a)を有し、回収した排水を水処理装置(不図示)へと導く。図1に示すように、排水回収水路8aには傾斜がつけられており、傾斜に沿って移動した排水は、図2(a)に示す排水管8bを通って水処理装置へと導かれる。そして、水処理装置へと導かれた排水には、必要に応じて浄化処理が施され、水処理装置を経た排水が、冷却装置4へと供給される。
【0028】
鋼板の有する潜熱が大きいため、また、材質制御のため、厚鋼板の製造時には、大量の冷却水が必要とされる。冷却装置4は、デスケーリング装置2よりも搬送方向下流側に設置されており、加熱炉1で形成された一次スケールは、既にデスケーリング装置2によって除去されている。そのため、冷却装置4からの排水には、スケールがほとんど混入せず、排水の水質は比較的良好である。このような排水が第1の水処理系統8へと流入するため、第1の水処理系統8では、水処理装置による排水の浄化処理が必須ではなく、浄化処理を行う場合であっても、従来必要とされていた浄化処理よりも簡略化した処理を行うことにより、排水を再利用することができる。なお、鋼板を冷却するために使用された冷却水は、鋼板の潜熱を吸収して高温化する。そのため、再利用に際しては、必要に応じて、回収した排水を冷却してから冷却装置4へと供給し、冷却水として使用する。
【0029】
このように、冷却装置4からの排水を回収する第1の水処理系統8を、冷却装置4以外の装置からの排水を回収可能な第2の水処理系統9から独立して存在させることにより、第1の水処理系統8へと混入する、スケール等に代表される不純物の量を低減することが可能になる。混入する不純物の量を低減することにより、冷却装置4で再利用される工業用水に含まれる不純物の量を低減することができるので、冷却装置4におけるノズル4x、4x、…、および、ノズル4y、4y、…の詰まりの発生を抑制することができ、鋼板を均一に冷却することが可能になる。さらに、工業用水を再利用することにより、水資源の効率的な活用が可能になる。
【0030】
また、図1及び図2(a)に示すように、給排水システム7では、第1の水処理系統8が第2の水処理系統9の鉛直方向上側に配置されている。このような構成とすることにより、第1の水処理系統8によって回収しきれなかった飛散した排水を、第2の水処理系統9によって回収しやすくなる。また、第2の水処理系統9を第1の水処理系統8の鉛直方向下側に配置することにより、冷却装置4から排出された排水の量が第1の水処理系統8の処理能力以上となり、排水回収水路8aから排水があふれ出た場合であっても、あふれ出た排水を第2の水処理系統9によって回収することが可能になる。それゆえ、かかる形態の給排水システム7とすることにより、水資源を効率的に活用することが容易になる。
【0031】
上述のように、第2の水処理系統9は、冷却装置4以外の装置からの排水のほか、冷却装置4からの排水をも回収可能なように構成されている。図2(b)に示すように、第2の水処理系統9は、製造ライン10に設置された各装置からの排水を回収する水路(排水回収水路9a)を有し、回収した排水を水処理装置へと導く。図1に示すように、排水回収水路9aには傾斜がつけられており、傾斜に沿って移動した排水は、図2(b)に示す排水管9bを通って水処理装置へと導かれる。そして、水処理装置へと導かれた排水には、浄化処理が施され、水処理装置を経た排水が、製造ライン10に設置された装置へと導かれる。
【0032】
以上、説明したように、第1の水処理系統8および第2の水処理系統9を備えた給排水システム7では、排水を再利用するので、水資源を効率的に活用することができる。また、給排水システム7では、第1の水処理系統8を第2の水処理系統9から独立して存在させているので、冷却装置4におけるノズル4x、4x、…、および、ノズル4y、4y、…の詰まりを低減することができ、これにより、鋼板を均一に冷却することが可能になる。
【0033】
本発明に関する上記説明では、冷却装置以外の装置(金属材を処理する処理装置)として、加熱炉1、デスケーリング装置2、圧延機3、熱処理装置5、および、レベラー6を例示したが、本発明における、冷却装置以外の装置(金属材を処理する処理装置)は、これらに限定されるものではない。本発明が適用される製造ラインに、これら以外の装置が設置されている場合には、その装置も、本発明における冷却装置以外の装置(金属材を処理する処理装置)に含まれる。
【0034】
また、本発明に関する上記説明では、一の排水回収水路8aを有し排水回収水路8aで回収した排水を水処理装置へと導く第1の水処理系統8、および、一の排水回収水路9aを有し排水回収水路9aで回収した排水を水処理装置へと導く第2の水処理系統9を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。本発明に備えられる第1の水処理系統および第2の水処理系統は、複数の排水回収水路を有し、これら複数の排水回収水路で回収した排水を一の水処理装置へと導く形態であっても良い。
【0035】
また、本発明に関する上記説明では、第1の水処理系統8が第2の水処理系統9の鉛直方向上側に配置されている形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。ただし、水資源を効率的に活用しやすい形態にする等の観点からは、第1の水処理系統が第2の水処理系統の鉛直方向上側に配置されている形態とすることが好ましい。
【0036】
また、本発明に関する上記説明では、本発明の給排水システム7が厚鋼板の製造ライン10に適用される場合を例示したが、本発明は、当該形態に限定されるものではない。本発明の給排水システムは、厚鋼板以外の金属製品(製造途中の金属半製品も含む)を製造する製造ラインにも適用することができ、本発明の金属製品の製造ラインは、厚鋼板以外の金属製品(製造途中の金属半製品も含む)を製造する製造ラインとすることも可能である。
【実施例】
【0037】
厚鋼板の製造ラインにおいて、従来から存在していた水処理系統(第2の水処理系統9に相当。以下において同じ。)に加え、冷却装置の下方、且つ、従来からあった水処理系統の上部に、冷却装置から排出された冷却水を回収する新たな水処理系統(第1の水処理系統8に相当。以下において同じ。)を追加設置した。追加設置した水処理系統で回収した排水は必要に応じて水処理設備で水質の悪化を改善した後、冷却装置へと再供給可能なようにすると共に、追加設置した水処理系統を流通する排水を冷却する排水冷却装置を設置した。このような給排水システムを有する厚鋼板の製造ラインにおいて、標準的な方法で厚鋼板を製造した。
【0038】
追加設置した水処理系統で回収した排水は、スケールの混入もなく水質も良好であったので、そのまま、あるいは簡略化した水質処理を行うだけで再度冷却水として使用することができた。この結果、ノズル(ノズル4x、4x、…、および、ノズル4y、4y、…に相当。)の詰まりもなく厚鋼板の温度むらを抑制することができたので、品質むらのない厚鋼板を製造することができた。
【0039】
また、追加設置した水処理系統の直下に、従来から存在していた水処理系統を配置させたので、追加設置した水処理系統の外側へと飛散した冷却水を、従来から存在していた水処理系統で回収することができた。これにより、水資源の効率的な活用を実現することができた。
【0040】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う給排水システムおよび金属製品の製造ラインもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、厚鋼板などに代表される金属製品を製造する製造ラインに用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…加熱炉
2…デスケーリング装置
3…圧延機
4…冷却装置
4x…ノズル
4y…ノズル
5…熱処理装置
6…矯正装置(レベラー)
7…給排水システム
8…第1の水処理系統
8a…排水回収水路
8b…排水管
9…第2の水処理系統
9a…排水回収水路
9b…排水管
10…厚鋼板の製造ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製品を製造する製造ラインに設置され、該製造ライン内で使用された工業用水を回収し再利用する給排水システムであって、
前記製造ラインに備えられている冷却装置で金属材を冷却する際に使用された工業用水を回収する第1の水処理系統と、
前記製造ラインに備えられている前記冷却装置以外の装置で使用された工業用水を回収可能な第2の水処理系統と、
を具備することを特徴とする、給排水システム。
【請求項2】
前記第1の水処理系統のうち、少なくとも、前記冷却装置で前記金属材を冷却する際に使用された工業用水を回収する部位が、前記第2の水処理系統よりも鉛直方向上側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の給排水システム。
【請求項3】
冷却装置と、金属材を処理する処理装置と、請求項1または2に記載の給排水システムと、を備えることを特徴とする、金属製品の製造ライン。

【図1】
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【図2】
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