説明

給水用の異物トラップ

【課題】エコノマイザセクション内の管への異物の引っ掛かりを防止し、かくして管の損耗及び打損を最小化する異物トラップを有する貫流蒸気発生器を提供することである。
【解決手段】異物トラップ46が環状の降水管通路34の底部付近に位置付けられる。入口ノズル28を通して圧力容器11に流入した給水が、異物トラップ46に強制流通された後、流れ空間36に排出され、エコノマイザチャンバ38内に位置決めした管16のセクションに入る。異物トラップ46は、エコノマイザセクション32の、下方シュラウド25により画定される如き壁と、圧力容器11の内壁との間を横断して掛け渡した環状支持リング48から成り、下方シュラウド25の下端付近に位置付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に原子力発電プラント用の貫流蒸気発生器に関し、詳しくは、貫流蒸気発生器の圧力容器内に一体的に格納したエコノマイザ内に位置決めした管セクション同士間の空間内への、給水の異物侵入を防止するトラップに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所に関連する加圧型蒸気発生器、または熱交換機は、一次冷却材からの反応生成熱を二次冷却材に移行させ、移行させた熱でプラントのタービンを駆動させる。大抵のこうした蒸気発生器の圧力容器にはエコノマイザが一体化され、サブクール給水が当該エコノマイザの管束の下方セクション中に直接流入する。圧力容器は長さ約22.5m(約75フィート)、直径約3.6m(約12フィート)である。こうした蒸気発生器圧力容器(以下、単に圧力容器とも称する)の1つでは、一次冷却材貫流用の直管の外径は代表的には約1.4cm(5/8インチ)であるが、管端部マウントと、管板の対向面との間の実効長は約15.6m(52フィート)あるいはそれ以上である。これらの蒸気発生器圧力容器の1つには、代表的には15000本以上の管から成る管束が収納され得る。給水系から給水流れによって移行する異物は管束の各管間に引っ掛かり、各管を損耗及びまたは打損させ得る。
エコノマイザを一体化させた蒸気発生器圧力容器は、米国特許第3,356,135号、同第3,547,084号、同第3,771,497号に示されるように既知のものではあるが、何れも、給水により運ばれる異物の捕捉及びエコノマイザ管セクションへの侵入防止用の異物トラップは圧力容器中に設けられない。
原子力蒸気発生器の特徴の一般的説明については、ここに参照することによりその全てを本命最初の一部とする米国オハイオ州バーベルトンのBabcock & Wilcox社の2005年の“Steam/its generation and use,41st Edition,Kitto and Stultz,Eds.,”を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,356,135号明細書
【特許文献2】米国特許第3,547,084号明細書
【特許文献3】米国特許第3,771,497号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Babcock & Wilcox社の2005年の“Steam/its generation and use,41st Edition,Kitto and Stultz,Eds.,”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エコノマイザセクション内の管への異物の引っ掛かりを防止し、かくして管の損耗及び打損を最小化する異物トラップを有する貫流蒸気発生器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、圧力容器と、当該圧力容器内を伸延する複数の熱交換管とを有する蒸気発生器にして、各熱交換管が高温の一次流体を受け且つそこを貫流させる蒸気発生器が提供される。圧力容器内には、当該圧力容器から離間する関係下にエコノマイザが配置され、かくして環状の降水管通路と、この降水管通路で包囲された管束の下方部分とが画定される。給水は、各管の熱交換表面におけるエコノマイザ部分で、各管から移行される熱により予熱される。給水により運ばれる異物を捕捉及び維持してそれら異物のエコノマイザへの侵入を防止する異物フィルタートラップが設けられる。
【0007】
異物フィルタートラップ(以下、単にフィルタートラップとも称する)は降水管通路内に位置付けられる。環状の支持リングがフィルタートラップを支持し、降水管通路の断面に掛け渡される。支持リングは、当該支持リングの円周方向に等間隔に配置した複数の開口を有する。フィルタートラップは、各々が開放底部及び閉鎖頂部を有する細長円筒状のフィルター管列構造を含む。各フィルター管の開放底部は環状の支持リングに固定されると共に、支持リングの相当する開口を覆う。フィルター管の全体に円筒の部分には複数の半径方向孔が形成される。各半径方向孔は、エコノマイザ内に位置決めした各管同士の空間よりも大きい異物を二次流体流れから除去する寸法を有する。
【0008】
環状の支持リングはエコノマイザ及び圧力容器の両方またはその少なくとも一方に装着される。環状の支持リングをエコノマイザまたは圧力容器の一方のみに装着する場合は、環状の支持リングの自由縁部と、エコノマイザまたは圧力容器の何れかとの間の間隙幅をフィルター管の半径方向孔の幅と同じまたはそれ未満とすることにより、フィルター管の半径方向孔よりも大きい異物が環状の支持リングの自由縁部位置の間隙から侵入しないことを保証するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の原理を実施し得る従来型貫流蒸気発生器の速報断面図である。
【図2】図2は、本発明の異物フィルタートラップを組み込んだ貫流蒸気発生器の下方セクションを表す速報断面図である。
【図3】図3は、図2の貫流蒸気発生器の下方セクションの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の異物フィルタートラップに関わるフィルター管の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1には従来型の貫流蒸気発生器10が示され、垂直方向に細型で全体に円筒状を有し、各端部が上方ヘッド12及び下方ヘッド13で閉鎖された圧力容器またはシェル11を含んでいる。原子炉(図示せず)からの冷却剤の如き高温の一次流体が圧力容器11を通過し、当該圧力容器内で、圧力容器11内に送給される水の如き二次流体と間接熱交換される。一次流体は圧力容器11の上方ヘッド12位置でプレナムチャンバ14に入り、上方管シート18及び下方管シート20に受けられた管16を通過した後、冷却材出口ノズル22を通して排出され、原子炉に再循環される。
【0011】
圧力容器11内には、何れも端部開放され且つ管16の管束を包囲する、上方シュラウド24及び下方シュラウド25が配置される。上方シュラウド24にその内側縁部を結合し、その外側縁部を圧力容器11に結合した環状リングプレート26が、2本の給水入口ノズル28を通して導入される流入水を、2本の蒸気出口ノズル30を通して排出される蒸気から分離させる。
【0012】
下方シュラウド25は、一体収納型のエコノマイザセクション32として機能する構造とされ、圧力容器11に関して離間して位置決めされ、この離間部分には環状の降水管通路34を画定する。環状の降水管通路34は、下方管シート20に関して離間して位置決めされ、当該離間部分に、エコノマイザチャンバ38の底部と連通する流れ空間36を画定する。エコノマイザセクション32は管16の熱交換表面の一部を包囲する。
【0013】
給水入口ノズル28を通して圧力容器11に入る給水は、環状リングプレート26の拘束下に環状の降水管通路34を下方に流れ、流れ空間36を経てエコノマイザチャンバ38に流入及び通過し、かくして、エコノマイザチャンバ38内に配置した熱交換表面の当該部分で管16を流通する高温の一次流体の熱により余熱される。従って、給水への吸熱はエコノマイザチャンバ38流通時に生じる。加熱され、エコノマイザチャンバ38を出た給水は高温の一次流体から管16を介して移行する熱により蒸発される。また、この上記は管16の頂部に達する前に過熱される。生成過熱蒸気は上方シュラウド24の開放上端40を出た後、上方シュラウド24と圧力容器11の内壁との間で且つ環状リングプレート26の上方の環状通路42を下方に流れ、蒸気出口ノズル30から出る。
【0014】
図1及び特に図2〜4を参照するに、貫流蒸気発生器10の一体収納型のエコノマイザセクション32の内部に位置決めした管16のセクションへの、圧力容器11に流入する給水により運ばれる有害異物の侵入を防ぐ異物トラップ46が示される。異物トラップ46は管16同士の空間よりも大きな異物を給水流れから除去し、かくして、管16同士間の空間に引っ掛かるに十分大きい粒状異物の、エコノマイザセクション32への侵入を防止する。管同士間の空間に引っ掛かった異物は管を損耗及びまたは打損させ得る。
【0015】
異物トラップ46は環状の降水管通路34の底部付近に位置付けられる。入口ノズル28を通して圧力容器11に流入した給水は、異物トラップ46に強制流通された後、流れ空間36に排出され、エコノマイザチャンバ38内に位置決めした管16のセクションに入る。
異物トラップ46は、エコノマイザセクション32の、下方シュラウド25により画定される如き壁と、圧力容器11の内壁との間を横断して掛け渡した環状支持リング48から成り、下方シュラウド25の下端付近に位置付けられる。環状支持リング48はフィルター管50の管列を支持するプレートであり、各フィルター管は、当該環状支持リングの周囲に沿って円周方向に等間隔で配置されると共に、円筒状の管壁に形成した複数の半径方向孔52を有することが好ましい。フィルター管50の底端は開放され且つ環状支持リング48を貫いて伸延する相当する開口または孔(図示せず)と整列される。各フィルター管50の上端49は、降水管の給水流れをフィルター管の半径方向孔52に強制流通させるようにシールされる。
【0016】
異物トラップの環状支持リング48は圧力容器11の内壁またはエコノマイザの、下方シュラウド25により画定される如き壁の何れかの少なくとも一方に装着する。仮に当該環状支持リング48を圧力容器11またはエコノマイザセクション32の一方のみに装着する場合は、当該環状支持リング48の自由縁部をフィルター管の半径方向孔52の幅と同じまたはそれ未満に維持する必要がある。これにより、フィルター管の半径方向孔52よりも大きい異物が環状支持リング48の周囲の隙間から侵入しないことが保障される。
【0017】
給水用の異物トラップ46を横断しての圧力降下を最小化させることで、給水ポンピングパワーを少なくし且つ異物トラップに対する構造的負荷を低減させる。圧力降下は、フィルター管50の数及びフィルター管当たりの半径方向孔52の数を最大化することで低下させる。また、各半径方向孔52は、圧力降下を更に最小化させるために入口ジオメトリに勾配付けした輪郭とさせ得る。
【0018】
本発明の利益には、給水用の異物トラップ46が、一体型のエコノマイザセクション32内に位置決めした各管16間に引っ掛かるに十分大きい異物を阻止し、かくして管の損耗及び打損が最小化され、フィルター管50の最も下方の半径方向孔52の列を、環状支持リング48の高さより十分高く位置決めし得るので、フィルター管50により濾別された異物が、半径方向孔52よりも下方の環状支持リング48の上部に溜まり、かくして、異物がフィルター管50の半径方向孔52を損傷させる恐れが最小化される点がある。
圧力容器11を貫く1つ以上の手孔を設けることで、異物の検査及び除去のための環状支持リング48の頂部及びフィルター管50へのアクセスが可能となる。
フィルター管50はフィルター管50を使用中の劣化から保護し得る耐侵食及び耐腐食性の鋼材から作製し得る。
【0019】
フィルター管50が円筒形状であることにより、仮に送給ラインが破裂した場合に受ける如き圧力負荷はフィルター管内で膜応力及び最小曲げ応力化されるので、フィルター管50の構造強度が最大化される。フィルター管50は、円筒状であることにより、大きな圧力負荷に耐え得る。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0020】
10 貫流蒸気発生器
11 シェル、圧力容器
12 上方ヘッド
13 下方ヘッド
14 プレナムチャンバ
16 管
18 上方管シート
20 下方管シート
22 冷却材出口ノズル
24 上方シュラウド
25 下方シュラウド
26 環状リングプレート
28 給水入口ノズル
30 蒸気出口ノズル
32 エコノマイザセクション
34 降水管通路
36 空間
38 エコノマイザチャンバ
40 開放上端
42 環状通路
46 異物トラップ
48 環状支持リング
49 上端
50 フィルター管
52 半径方向孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器であって、
圧力容器と、
該圧力容器内を伸延され、高温の一次流体を収受する複数の熱交換管にして、一次流体を流通させる複数の熱交換管と、
圧力容器内で該圧力容器から離間して配置したエコノマイザにして、圧力容器との間に環状の降水管通路を確定し且つ熱交換管の熱交換表面の一部を包囲して該エコノマイザに導入される給水流れを予熱するエコノマイザと、
を含み、
給水流れにより運ばれる異物を捕捉及び維持して、当該異物のエコノマイザへの侵入を防止する手段を含む蒸気発生器。
【請求項2】
異物を捕捉及び維持する手段が降水管通路内に位置付けられる請求項1の蒸気発生器。
【請求項3】
異物を捕捉及び維持する手段が、孔開けした少なくとも1本の管を含む請求項1の蒸気発生器。
【請求項4】
降水管通路の断面に掛け渡され且つ少なくとも1つの開口を有する環状支持リングと、前記開口を覆うフィルターにして、エコノマイザに導入される二次流体をフィルタリングするフィルターと、を含む請求項1の蒸気発生器。
【請求項5】
環状リングの周囲で円周方向に間隔を置いて複数の開口を配置し、各開口をフィルターで覆った請求項4の蒸気発生器。
【請求項6】
フィルターが、上端部を閉鎖した細長の円筒状の管であり、該管の円筒状部分に複数の半径方向孔を形成した請求項4の蒸気発生器。
【請求項7】
フィルターの半径方向孔が、二次流体流れから、エコノマイザ以内に位置決めした各管間の空間より大きな異物を除去する寸法とされる請求項6の蒸気発生器。
【請求項8】
フィルターの半径方向孔の入口が傾斜した幾何学的輪郭を有する請求項6の蒸気発生器。
【請求項9】
環状支持リングがエコノマイザ及び圧力容器に装着される請求項4の蒸気発生器。
【請求項10】
環状支持リングがエコノマイザ及び圧力容器の何れかに装着される請求項4の蒸気発生器。
【請求項11】
環状支持リングの自由縁部と、エコノマイザ及び圧力容器の何れかとの間に間隙を有し、該間隙が、管の孔の幅と同じまたはそれ未満である請求項10の蒸気発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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