説明

給湯管

【課題】給湯器からの湯水を湯使用端末に送る給湯管において、給湯管路中での放熱による湯温の低下を抑制することができ、これにより、給湯管路中の温湯を循環させる即湯システムでの即湯循環運転の頻度を抑えてランニングコストの低減を図る。
【解決手段】給湯管1は、湯水を送る給湯管路9と、給湯管路9に近接配置又は接触配置され、給湯管路9を通る湯水の放熱を抑制するための温湯の通る保温管路10とを備える。給湯管路9から保温管路10内の温湯へ熱交換が行われるようにしたので、給湯管路9での周囲雰囲気への放熱ロスが少なくなり、給湯管路9を通る温湯の保温性を高めることができる。従って、湯の使用が一定期間無かった場合においても、給湯管路9に滞留した湯水の温度が下がり難くなり、その結果、給湯管1を用いた給湯システム50での即湯循環運転の頻度が少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器などで用いられる給湯管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給水を沸き上げるヒートポンプやガス加熱器などの熱源機を有し、沸き上げた湯を給湯管路を通じてカランや食器洗浄機などの湯使用端末に供給する給湯器がある。このような給湯器においては、湯の使用が一定期間無かった場合、給湯管路に滞留した湯水の温度が放熱により低下するため、湯の使用開始時に、低温の湯水が湯使用端末から出力されることがある。そこで、湯の使用開始時に、沸き上げられた湯を直ぐに出湯すること(これを「即湯」という)ができるように、給湯管路の湯使用端末近傍から給湯器に湯水を戻す戻り配管を設けて、給湯管路と戻り配管に沸き上げられた湯をポンプにより循環させることで、給湯管路中の湯温を維持する即湯システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−24981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような即湯システムにおいては、給湯管路中の湯温が低くなったときにポンプによる即湯循環運転を行うが、この即湯循環運転に併せて、給湯管路での放熱により失われた熱量を補完するために給湯器は戻り湯を昇温する必要があり、ランニングコストの上昇を招来していた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、給湯器からの湯水を湯使用端末に送る給湯管において、給湯管路中での放熱による湯温の低下を抑制することができ、これにより、給湯管路中の温湯を循環させる即湯システムでの即湯循環運転の頻度を抑えてランニングコストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の給湯管は、湯水を送る給湯管路と、この給湯管路に近接配置又は接触配置され、該給湯管路を通る湯水の放熱を抑制するための温湯の通る保温管路とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この給湯管において、前記給湯管路と前記保温管路とは二重管構造とし、外側に保温管路、内側に給湯管路を配置することが好ましい。
【0008】
この給湯管において、前記保温管路は、前記給湯管路の外周にらせん状に配置されていることが好ましい。
【0009】
この給湯管において、前記保温管路は、前記給湯管路の給湯送り方向下流端から分岐した、給湯送り方向とは逆方向に湯水を流す戻り配管により構成され、給湯管路からの戻り湯を保温用熱源として使用することが好ましい。
【0010】
この給湯管において、前記給湯管路の下流端近くに、該給湯管路から保温管路に湯水を通す連通孔が設けられていることが好ましい。
【0011】
この給湯管において、前記保温管路は、前記給湯管路の給湯送り方向下流端に接続された湯使用端末から排出された湯水を給湯送り方向とは逆方向に通す排水管により構成され、該排水を保温用熱源として使用することが好ましい。
【0012】
この給湯管において、前記保温管路は、その上流側に、前記湯使用端末から排水された湯水を導入する開口を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の給湯管によれば、保温管路を給湯管路に近接配置又は接触配置して、給湯管路から保温管路内の温湯へ熱交換が行われるようにしたので、給湯管路での周囲雰囲気への放熱ロスが少なくなり、給湯管路を通る温湯の保温性を高めることができる。従って、湯の使用が一定期間無かった場合においても、給湯管路に滞留した湯水の温度が下がり難くなり、その結果、即湯システムでの即湯循環運転の頻度が少なくなり、ランニングコストの低減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る給湯管を備えた給湯システムの構成図。
【図2】(a)は上記給湯管を示す側断面図、(b)は(a)のX−X線断面図。
【図3】(a)は同給湯管の湯使用端末側を示した部分断面斜視図、(b)はその側断面図。
【図4】上記実施形態の変形例に係る給湯管を備えた給湯システムの構成図。
【図5】上記給湯管の湯使用端末側を示した側断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る給湯管を備えた給湯システムの構成図。
【図7】上記給湯管を示した側断面図。
【図8】上記実施形態の変形例に係る給湯管を備えた給湯システムの構成図。
【図9】上記給湯管を示した側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る給湯管について図1乃至図3を参照して説明する。図1は本実施形態に係る給湯管1を用いた給湯システム50の構成を示す。給湯システム50は、給湯器2と、この給湯器2により加熱された湯水を湯使用端末3に送る給湯管1とを備える。
【0016】
給湯器2は、加熱された湯を貯える貯湯タンク4と、この貯湯タンク4内の水を沸き上げる熱源機であるヒートポンプ5とを有する。貯湯タンク4は、底部において給水配管6と繋がっており、給水配管6からの給水を貯留する。ヒートポンプ5は、送湯ポンプを内蔵しており、貯湯タンク4底部の水を送水配管7を通じて吸引して沸き上げ、この沸き上げた湯を送湯配管8を通じて貯湯タンク4頂部に送り込む。貯湯タンク4内の湯は、給水配管6の給水圧によって、給湯管1を通り湯使用端末3へと供給される。湯使用端末3は、例えば、シンクに取り付られたカランや、食器洗浄機などである。
【0017】
給湯管1は、給湯器2から湯使用端末3へ湯水を送る給湯管路9と、給湯管路9を通る湯水を保温するための保温管路10とを有する。保温管路10は、給湯管路9の外周に近接配置又は接触配置されており、給湯管路9中の湯水の放熱を抑制するための温湯が通るようになっている。給湯管路9は、給湯送り方向上流端が給湯器2の貯湯タンク4頂部に接続されており、下流端が湯使用端末3の出湯口に接続されている。保温管路10は、給湯管路9の湯使用端末3近傍から給湯器2に湯水を戻す即湯循環用の戻り配管として設けてあり、給湯管路9からの戻り湯を保温用熱源として使用するものとなっている。保温管路10は、給湯管路9の給湯送り方向下流端から分岐しており、湯水を給湯送り方向とは逆方向に流すようになっている。保温管路10は、湯使用端末3とは反対側の一端部が配管11を介して貯湯タンク4の中層部へと繋がっている。配管11には、即湯用に湯水を循環させる循環ポンプ12と開閉弁13とが設けられ、この循環ポンプ12及び開閉弁13は、給湯システム50に備えられた制御部14によって制御される。制御部14は、給湯管路9中の湯水の温度を温度センサを用いて検知し、この検知温度が閾値を下回ったとき、開閉弁13を開き、かつ循環ポンプ12を駆動することにより、給湯管路9、保温管路10及び配管11に貯湯タンク4内の湯を循環させる即湯循環運転を行う。また、配管11には、循環ポンプ12による湯水の循環方向とは逆方向に湯水が流れないようにするための逆止弁15が設けられている。
【0018】
次に、給湯管1の配管構造を詳細説明する。給湯管1は、図2に示すように、給湯管路9と保温管路10と組み合わせて成る二重管構造であり、外側に保温管路10、内側に給湯管路9を配置している。保温管路10の外周は、配管断熱材16により覆うようにしている。この配管断熱材16は、例えば、ロックウールやウレタンフォームなどを用いて形成される。このような構成により、保温管路10を流れる温湯の熱で給湯管路9の保温性が高まるため、給湯管路9中の湯温が低下し難くなる。給湯管路9と保温管路10とは、互いに接することなく配置されていてもよいし、給湯管路9が保温管路10に内接していてもよい。
【0019】
給湯管路9の下流端は、図3に示すように、保温管路10及び配管断熱材16を挿通して湯使用端末3へと繋がれる。給湯管路9の下流端近くには、給湯管路9から保温管路10に湯水を通す連通孔17が設けられている。この連通孔17は、給湯管路9の全周にわたって複数形成されている。これにより、循環ポンプ12による即湯循環運転時、給湯管路9中の湯水が連通孔17を通過して保温管路10へとスムーズに流れる。
【0020】
上記のような給湯管1を備えた給湯システム50での湯水の流れを説明する。制御部14は、給湯管路9中の湯温をリアルタイムに検知し、検知温度が設定温度を下回ったときに、開閉弁13を開状態として、循環ポンプ12を駆動させる。循環ポンプ12が駆動すると、貯湯タンク4内の温湯が、給湯管路9、保温管路10及び配管11より成る循環経路に循環され、これにより、給湯管路9及び保温管路10中に滞留していた低温の湯水は、貯湯タンク4からの高温の温湯と置換される。制御部14は、循環ポンプ12による即湯循環運転を開始してから所定時間経過すると、開閉弁13を閉状態とし、循環ポンプ12の駆動を停止する。即湯循環運転の実行時間は、循環経路の長さを基に予め算出しておく。ここに、湯使用端末3の出湯口が開かれたときには、貯湯タンク4内の湯が給湯管路9を通って該出湯口から給湯される。
【0021】
このように、本実施形態に係る給湯管1によれば、保温管路10を給湯管路9に近接配置又は接触配置して、給湯管路9から保温管路10内の温湯へ熱交換が行われるようにしたので、給湯管路9での周囲雰囲気への放熱ロスが少なくなり、給湯管路9を通る温湯の保温性を高めることができる。従って、湯の使用が一定期間無かった場合においても、給湯管路9に滞留した湯水の温度が下がり難くなり、その結果、給湯システム50での即湯循環運転の頻度が少なくなり、ランニングコストの低減が期待できる。
【0022】
また、給湯管路9と保温管路10とは二重管構造となっているので、給湯システム50での配管設計の自由度が高まり、給湯器2及び湯使用端末3への施工スペースが狭い場合であっても、給湯管路9及び保温管路10を容易に取り付けることが可能となる。また、給湯管路9からの戻り湯を保温管路10に通して保温用熱源として使用するようになっているので、保温管路10への温湯供給系統を別途設ける必要がなく、経済的である。
【0023】
次に、図4及び図5を用いて上記実施形態に係る給湯管の変形例を説明する。本変形例の給湯管1において、保温管路10は、湯使用端末3から排出された湯水を給湯送り方向とは逆方向に通す排水管として設けてあり、該排水を保温用熱源として使用するものとなっている。湯使用端末3からの排水は、放熱により温度が若干低下しているものの、給湯管1の周囲雰囲気よりも高温である。保温管路10は、その上流側において湯使用端末3の排水口と配管10aを介して繋がれており、この配管10aを通して送られてくる排水を開口10bより導入する。保温管路10に導入された湯水は、保温管路10の湯使用端末とは反対側の配管10cから排出される。給湯管路9は、保温管路10より給湯送り方向下流側において、貯湯タンク4へと繋がる戻り配管18に分岐しており、この戻り配管18には、循環ポンプ12、開閉弁13及び逆止弁15が設けられている。
【0024】
上記のような給湯管1を備えた給湯システム50での湯水の流れを説明する。制御部14が循環ポンプ12による即湯循環運転を行うと、貯湯タンク4内の温湯が、給湯管路9、戻り配管18より成る循環経路に循環され、これにより、給湯管路9中に滞留していた低温の湯水は、貯湯タンク4からの高温の温湯と置換される。湯使用端末3の出湯口が開かれると、この出湯口から出湯された温湯が、湯使用端末3の排水口より保温管路10へと流れ込み、保温管路10中の湯温の熱により、給湯管路9の保温性が高まる。
【0025】
このような給湯管1においても、上記と同様の作用効果が得られる。また、湯使用端末3から排出された湯水を保温管路10に通して保温用熱源として使用するようになっているので、経済的である。
【0026】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る給湯管について図6及び図7を参照して説明する。本実施形態の給湯管1は、保温管路10が給湯管路9の外周にらせん状に配置されている点で第1の実施形態と異なる。保温管路10は、即湯循環用の戻り配管として設けてあり、給湯管路9からの戻り湯を連通孔17を通して導入し、湯水を給湯送り方向とは逆方向に流すようになっている。
【0027】
このような給湯管1においても、上記と同様の作用効果が得られる。ここに、保温管路10は、給湯管路9に接触配置することが好ましいが、保温管路10及び給湯管路9の間に隙間があったとしても、保温管路10中の湯水の熱で、配管断熱材16で覆われた給湯管路9の周囲空間が暖められるため、給湯管路9を保温する一応の効果は得られる。
【0028】
次に、図8及び図9を用いて上記実施形態に係る給湯管の変形例を説明する。本変形例の給湯管1において、保温管路10は、湯使用端末3から排出された湯水を通す排水管として設けてあり、その上流端及び下流端に配管10a,10cを有する。この保温管路10は、湯使用端末3の排水を開口10bより導入して保温用熱源として使用するものとなっている。このような給湯管1においても、上記と同様の作用効果が得られる。
【0029】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、給湯器2は、上記ヒートポンプ式の給湯器に限られず、ガス給湯器や電気温水器、太陽熱を利用した給湯器などであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 給湯管
3 湯使用端末
9 給湯管路
10 保温管路
10a 開口
17 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を送る給湯管路と、この給湯管路に近接配置又は接触配置され、該給湯管路を通る湯水の放熱を抑制するための温湯の通る保温管路とを備えたことを特徴とする給湯管。
【請求項2】
前記給湯管路と前記保温管路とは二重管構造とし、外側に保温管路、内側に給湯管路を配置したことを特徴とする請求項1に記載の給湯管。
【請求項3】
前記保温管路は、前記給湯管路の外周にらせん状に配置されていること特徴とする請求項1に記載の給湯管。
【請求項4】
前記保温管路は、前記給湯管路の給湯送り方向下流端から分岐した、給湯送り方向とは逆方向に湯水を流す戻り配管により構成され、給湯管路からの戻り湯を保温用熱源として使用することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の給湯管。
【請求項5】
前記給湯管路の下流端近くに、該給湯管路から保温管路に湯水を通す連通孔が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の給湯管。
【請求項6】
前記保温管路は、前記給湯管路の給湯送り方向下流端に接続された湯使用端末から排出された湯水を給湯送り方向とは逆方向に通す排水管により構成され、該排水を保温用熱源として使用することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の給湯管。
【請求項7】
前記保温管路は、その上流側に、前記湯使用端末から排水された湯水を導入する開口を有していることを特徴とする請求項6に記載の給湯管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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