説明

給湯装置

【課題】形状に制約を受けない大気開放式の貯湯缶体を利用しながら、衛生的な給湯が効率よく行える給湯装置を提供する。
【解決手段】加熱手段2で加熱された温水を貯湯する貯湯缶体1と、前記貯湯缶体1には少なくとも給水電磁弁11を備えた補水管7が連通し、この給水電磁弁11を貯湯缶体1内の水位を検知する水位検知手段14で水位に応じて開閉し常に一定水位を保持して、貯湯缶体1上部に大気開放室16を形成したもので、前記貯湯缶体1内の湯水中の下部から上部に渡り位置する給湯用熱交換器17を備え、この給湯用熱交換器17の上端部には給湯管21が接続すると共に、この給湯管21の接続部分より下方には給水管19から分岐した複数の供給管28〜31及び該供給管28〜31を選択的に開閉する開閉手段32〜35が接続し、貯湯缶体1内の高温水槽の上昇に応じて給湯用熱交換器17の吸熱位置を可変するから、衛生的な給湯が効率よく行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯缶体内に給水圧がかからずに、大気開放状態とした貯湯式の貯湯缶体内に給水圧が作用する給湯用熱交換器を備えた給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の開放式給湯装置では、機械式のボールタップ弁を利用することで、給水と縁切りして貯湯缶体内を大気開放状態として、使用圧力の制限をなくし、貯湯缶体の材料や構造を安価なものにするものであった。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】実公昭60−35004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、貯湯缶体内の貯湯水を直接給湯に使用する為に、給湯用の加圧ポンプが必要であり、又貯湯式であるので、衛生面に問題を有し積極的に使用されることがないものであり、しかも時間とともに高温水槽の位置が徐々に上昇して行き効率の良い給湯が出来ないと言う問題点を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明はこの点に着目し、上記欠点を解決する為、特にその構成を、加熱手段で加熱された温水を貯湯する貯湯缶体と、前記貯湯缶体には少なくとも給水電磁弁を備えた補水管が連通し、この給水電磁弁を貯湯缶体内の水位を検知する水位検知手段で水位に応じて開閉し常に一定水位を保持して、貯湯缶体上部に大気開放室を形成したものに於いて、前記貯湯缶体内の湯水中の下部から上部に渡り位置する給湯用熱交換器を備え、この給湯用熱交換器の上端部には給湯管が接続すると共に、この給湯管の接続部分より下方には給水管から分岐した複数の供給管及び該供給管を選択的に開閉する開閉手段が接続し、貯湯缶体内の高温水槽の上昇に応じて給湯用熱交換器の吸熱位置を可変するものである。
【発明の効果】
【0005】
この発明によれば、貯湯缶体内は水位検知手段による給水電磁弁の開閉制御で大気開放状態が維持出来、確実であり誤動作の心配がまったくなく常に安心して使用出来るものであり、貯湯缶体の形状を扁平状にして設置スペースを取らず小さな隙間に容易に設置出来るものであり、更に給湯は貯湯缶体内の湯水と熱交換する給湯用熱交換器を介して供給されるので、加圧ポンプ不用で安価であり、しかも衛生的で安心して使用出来るものである。
【0006】
又貯湯式である為に、貯湯缶体内の高温水槽が給湯使用及び時間経過の放熱等により、徐々に上昇するが、これに応じて給湯用熱交換器の吸熱部分も可変できるので、常に最適な吸熱位置が得られ効率の良い吸熱が行え、良好な給湯を得ることが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次にこの発明の給湯装置の一実施形態について説明する。
1は温水を貯湯する貯湯缶体、2は温水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、3は浴槽である。
【0008】
4は貯湯缶体1とヒートポンプユニット2を循環可能に接続する加熱循環回路で、加熱循環ポンプ5を有し貯湯缶体1の下部に接続されたヒーポン往き管4a及び貯湯缶体1上部に接続されたヒーポン戻り管4bより構成され、貯湯缶体1下部の冷水をヒーポン往き管4aを介してヒートポンプユニット2で加熱し、加熱された高温の温水をヒーポン戻り管4bで貯湯缶体1上部に戻して貯湯缶体1内に温水を加熱貯湯するものである。なお、貯湯缶体1の外周面には縦に複数個の貯湯温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6gを有しており、この貯湯温度センサが所定温度以上を検出することで貯湯量を検知するものである。
【0009】
7は貯湯缶体1に水を供給する補水管で、途中には貯湯缶体1側から2個の逆止弁8、9と給水圧で閉じられ断水による負圧で大気開放する逆流水開放弁10と、給水の開始、停止を制御する給水電磁弁11とが一つのセットとして備えられており、又給水電磁弁11より給水側には異常遮断用の電磁弁12と減圧逆止弁13が備えられている。
【0010】
14は貯湯缶体1の上端から内方に垂下された2本の電極から成る水位検知手段で、370Lを貯湯する為に、貯湯量が下がればこれを検知して給水電磁弁11を開成し水を補給し、そして所定量になればこれを検知して給水電磁弁11を閉成し水の補給を停止するものであり、湯水の最上面と貯湯缶体1上端面との間には、エアー抜き管15を介して大気開放された大気開放室16が形成されている。
【0011】
17は貯湯缶体1の貯湯水内を下部から上部に掛けて備えられた蛇腹状の給湯用熱交換器で、一端を減圧逆止弁13より上流側の水道管18に直結した給水管19に連通し、他端には先端に蛇口20を備えた給湯管21が連通し、給水圧で給湯を行うようにしたものであり、給湯管21には他にフロースイッチ22、流量カウンタ23、給湯サーミスタ24、給湯混合弁25、湯温センサ26が備えられ、更に給湯混合弁25には給水管19から分岐した給水バイパス管27が接続し、湯水と給水とを設定温度の給湯となるように混合して供給するものである。
【0012】
前記給水管19は複数に分岐され、給湯用熱交換器17の最下端と接続し該給湯用熱交換器17全体を吸熱部分とする第1供給管28と、給湯用熱交換器17の4分の3下端と接続し該給湯用熱交換器17の4分の3を吸熱部分とする第2供給管29と、給湯用熱交換器17の2分の1下端と接続し該給湯用熱交換器17の半分を吸熱部分とする第3供給管30と、給湯用熱交換器17の上4分の1と接続し該給湯用熱交換器17の上4分の1のみを吸熱部分とする第4供給管31とに分割されており、更にこの第1から第4供給管28から31には、それぞれ供給路を開閉制御する第1から第4開閉手段32、33、34、35が備えられている。
【0013】
36は貯湯缶体1内上部の湯水中に位置された風呂熱交換器で、風呂往き管37と風呂戻り管38を介して浴槽3と連通して、風呂の保温及び追い焚きを行う風呂循環回路39を構成するもので、この風呂循環回路39には水位センサー40、風呂電動弁41、風呂循環ポンプ42、循環温サーミスタ43、風呂フロースイッチ44、風呂熱交換器36のバイパス路を形成する風呂保温三方弁45、追い焚き検知サーミスタ46とが備えられている。
【0014】
47は給湯管21の給湯混合弁25より上流側と風呂循環回路39を結ぶ湯張り回路で、給湯水に給水を混ぜて風呂設定温度に設定する風呂混合弁48と、湯張り電磁弁49、風呂流量カウンタ50、風呂逆流開放弁51、2個の逆止弁52、53がそれぞれ備えられている。
【0015】
更に図2に示す電気回路の要部ブロック図について説明すれば、マイコンから成る給湯制御部54の入力側には、前記貯湯缶体1内の湯温を検知する貯湯温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6gが接続し、出力側には第1開閉手段32、第2開閉手段33、第4開閉手段34、第5開閉手段35が接続され、貯湯缶体1内で給湯使用及び時間経過による放熱等で変化する高温水槽を貯湯温度センサ6a、6b、6c、6d、6e、6f、6gで正確に検知し、これに応じて第1開閉手段32、第2開閉手段33、第4開閉手段34、第5開閉手段35のうち最適なものを選択して開閉制御するものである。
【0016】
次に、この給湯装置の作動を以下に説明する。
前記貯湯缶体1内の湯水は、時間帯別電灯契約や深夜電力等の安価な電力を利用し、ヒートポンプユニット2に加熱循環回路4を介して順次循環させることで、翌朝には90℃の湯水を370L貯湯するものである。
【0017】
そして、蛇口20を開くと給湯用熱交換器17内に給水圧による湯水の流れが出来、該給湯用熱交換器17で貯湯缶体1内の高温水と熱交換した湯水が給湯管21を流通し、湯温センサ26及び給湯サーミスタ24による湯温検知で、給湯混合弁25による給水と湯水の混合量を調整して設定温度の給湯を蛇口20から順次供給されるものである。
【0018】
又この貯湯缶体1内での熱交換であるが、図3の(ア)に示すように当初貯湯缶体1内の高温水層が斜線のように全体にある時には、第1開閉手段32のみを開成し第1供給管28からの給水で、給湯用熱交換器17全体を利用した吸熱を行うようにし、図3の(イ)に示すように貯湯缶体1内の高温水層が斜線のようにやや減少した時には、第2開閉手段33のみを開成し第2供給管29からの給水で、給湯用熱交換器17の4分の3を利用した吸熱を行うようにし、図3の(ウ)に示すように貯湯缶体1内の高温水層が斜線のように約半分まで減少した時には、第3開閉手段34のみを開成し第3供給管30からの給水で、給湯用熱交換器17の半分を利用した吸熱を行うようにし、図3の(エ)に示すように貯湯缶体1内の高温水層が斜線のように上部のみとなった時には、第4開閉手段35のみを開成し第4供給管31からの給水で、給湯用熱交換器17の上部を利用した吸熱を行うようにしたものである。
【0019】
更にこれ以上高温水槽が減少した場合には、ヒートポンプユニット2を駆動して沸き増し運転を行うことも可能である。
【0020】
一方貯湯缶体1では、貯湯温水が減少することにより、水位検知手段14がこれを検知して給水電磁弁11を開成することで、供給管7から貯湯缶体1底部へ給水圧で補水がなされ貯湯水位が上昇し所定水位に達すると、水位検知手段14がこれを検知して給水電磁弁11を閉成して給水が停止されるものである。
【0021】
又この補水管7には、2個の逆止弁8、9があり、しかも給水電磁弁11がその上流側に備えられているので、貯湯缶体1内の湯水の逆流は確実に阻止されるものであり、更に断水等による負圧に対しては、給水電磁弁11で遮断するが、給水時については、逆流水開放弁10が給水圧がなくなることで開放して、負圧が解消されることで、逆流が確実に防止されるものであり、水位検知手段14による貯湯缶体1の水位を見ながらの給水電磁弁11の制御で、貯湯缶体1に給水圧がかからない給湯を、機械的な部品の使用をなくして信頼性の高い構成で実現したので、貯湯缶体1の形状や材料を強度をあまり気にすることなく、容易に変更出来、安価に提供出来ると共に、故障等の心配もなく安心して使用出来るものである。
【0022】
このように、大気に開放した貯湯缶体1内に高温水を貯湯し、この高温水と熱交換した温水を給湯に使用することで、衛生的で安心の給湯を得ることが出来るものであり、しかも貯湯缶体の形状に制約を受けず扁平状にして設置スペースを取らず小さな隙間に容易に設置出来るものである。
【0023】
又貯湯式である為に、貯湯缶体内の高温水槽が給湯使用及び時間経過の放熱等により、徐々に上昇するが、これに応じて給湯用熱交換器の吸熱部分も可変できるので、常に最適な吸熱位置が得られ効率の良い吸熱が行え、良好な給湯を得ることが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同電気回路の要部ブロック図。
【図3】同吸熱状態の変化を示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
1 貯湯缶体
2 ヒートポンプユニット(加熱手段)
7 補水管
11 給水電磁弁
14 水位検知手段
16 大気開放室
17 給湯用熱交換器
19 給水管
21 給湯管
28 第1供給管
29 第2供給管
30 第3供給管
31 第4供給管
32 第1開閉手段
33 第2開閉手段
34 第3開閉手段
35 第4開閉手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段で加熱された温水を貯湯する貯湯缶体と、前記貯湯缶体には少なくとも給水電磁弁を備えた補水管が連通し、この給水電磁弁を貯湯缶体内の水位を検知する水位検知手段で水位に応じて開閉し常に一定水位を保持して、貯湯缶体上部に大気開放室を形成したものに於いて、前記貯湯缶体内の湯水中の下部から上部に渡り位置する給湯用熱交換器を備え、この給湯用熱交換器の上端部には給湯管が接続すると共に、この給湯管の接続部分より下方には給水管から分岐した複数の供給管及び該供給管を選択的に開閉する開閉手段が接続し、貯湯缶体内の高温水槽の上昇に応じて給湯用熱交換器の吸熱位置を可変する事を特徴とする給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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