説明

給湯装置

【課題】給湯管と給水管との間に一対のミキシング弁とこの各ミキシング弁に対応する出湯口が並設された給湯装置において、他方の出湯口における出湯如何に関わらず、一方の出湯口の再出湯初期時におけるアンダシュートやオーバシュートを抑制する。
【解決手段】給湯管3と給水管4との間に並設される第1および第2のミキシング弁5、6と、第1および第2の出湯口9、10と、各ミキシング弁5、6を制御する制御装置22と、を備え、第1の出湯口9からの出湯停止後に、第1のミキシング弁5が所定の待機開度を維持して待機状態となる給湯装置において、第1のミキシング弁5が待機状態のときに第2の出湯口10の出湯が開始された場合に、第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量に応じて前記待機開度を補正する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、貯湯した温水と給水管からの水とをミキシング弁で混合して出湯する湯水混合型の給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湯水混合型の貯湯式給湯装置の一構成例を図2に示す。符号1は温水を貯湯する貯湯タンクであり、水道等に接続した給水本管2を介して水が貯湯タンク1に供給される。貯湯タンク1内の温水は、貯湯タンク1の上部に取り付けられた給湯管3を介して給湯される。給湯管3の下流側は給湯分岐管3a、3bに分岐形成されており、各下流端口はそれぞれミキシング弁5(第1のミキシング弁)の温水側ポート5A、ミキシング弁6(第2のミキシング弁)の温水側ポート6Aに接続している。給水本管2から分岐した給水管4の下流側は給水分岐管4a、4bに分岐形成されており、各下流端口はそれぞれミキシング弁5の水側ポート5B、ミキシング弁6の水側ポート6Bに接続している。つまり、ミキシング弁5とミキシング弁6とは、温水を供給する給湯管3と水を供給する給水管4との間に並設された関係にある。
【0003】
ミキシング弁5、6で混合された各湯は、各流出ポート5C、6Cに接続した出湯管7、8を介してそれぞれ出湯口9、10から出湯される。出湯口9は例えばキッチンに備え付けられ、出湯口10は例えば風呂に備え付けられる。出湯管7には上流側から、湯温を検知する温度センサ11、出湯量を計測する流量カウンタ12が設けられ、出湯管8にも同様に、温度センサ13、流量カウンタ14が設けられている。ミキシング弁5、6は共に比例制御が可能な三方弁からなり、図では電動三方弁として示している。代表的なものとしては電動ボール弁が挙げられる。
【0004】
給湯分岐管3aには、出湯口9が出湯していない場合(これを非出湯という)であって、出湯口10が出湯している場合の逆流防止用の逆止め弁15が設けられ、給水分岐管4a、4bには、それぞれミキシング弁5、6を通過してきた温水の流下対流防止用の逆止め弁16、17が設けられている。また、符号18は、貯湯タンク1内の温水を加熱するヒートポンプ式の加熱器であり、往き管19と戻り管20とからなる循環経路により貯湯タンク1と接続されている。往き管19には循環ポンプ21が介設される。なお、加熱器18としては公知のものが適用されるので構造の説明は省略する。
【0005】
以上の貯湯式給湯装置の作動は制御装置22により制御される。ミキシング弁5の制御に関する一例を挙げると、出湯口9が開栓されて流量カウンタ12により出湯が検知されると、制御装置22は、温度センサ11で検知された湯温がリモコン等で予め設定された湯温となるようにミキシング弁5の開度を制御する。制御方式は、フィードフォワード制御とフィードバック制御の併用である。ミキシング弁6側についての制御も同様である。制御装置22は、貯湯タンク1に設けた温度センサ(図示せず)の検知等に基づいて、加熱器18や循環ポンプ21の制御も行う。
【0006】
なお、以上の構成に類似した湯水混合型の貯湯式給湯装置の一例が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003−4303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方のミキシング弁5について説明すると、通常、ミキシング弁5は、出湯口9からの出湯が停止した後も次の出湯(再出湯)に備えて適正な開度(これを待機開度という)を維持して待機した状態となっており、これにより再出湯時のアンダシュート(湯温が設定値を下回る現象)やオーバシュート(湯温が設定値を上回る現象)が抑制されている。
【0008】
しかしながら、従来では、ミキシング弁5の待機開度は出湯口9のみの再出湯に合わせた値として設定されていたことから、ミキシング弁5が前記待機状態にあるときに先ず出湯口10から出湯があり、この出湯口10の出湯中に出湯口9から再出湯させるという条件下では、ミキシング弁5の待機開度は不適正な値となってしまう。この場合、例えば図3の(a)に示すように、再出湯して出湯管7(図2)に停滞していた分が出た後に、待機開度のずれに伴うアンダシュートが発生したり、(b)に示すようなオーバシュートが発生するおそれがある。なお、このアンダシュートやオーバシュートは、温度センサ11に基づいて制御装置22がミキシング弁5をフィードバック制御することにより次第に解消される。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、給湯管と給水管との間に一対のミキシング弁とこの各ミキシング弁に対応する出湯口が並設された給湯装置において、他方の出湯口における出湯如何に関わらず、一方の出湯口の再出湯初期時におけるアンダシュートやオーバシュートを抑制できる給湯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、温水を供給する給湯管と水を供給する給水管との間に並設される第1および第2のミキシング弁と、この各ミキシング弁で混合された湯をそれぞれ外部に出湯する第1および第2の出湯口と、前記各ミキシング弁を制御する制御装置と、を備え、前記第1の出湯口からの出湯停止後に、前記第1のミキシング弁が所定の待機開度を維持して待機状態となる給湯装置において、前記第1のミキシング弁が待機状態のときに前記第2の出湯口の出湯が開始された場合に、前記第2のミキシング弁に流入する温水の流量および水の流量に応じて前記待機開度を補正する構成としたことを特徴とする給湯装置とした。
【0011】
この給湯装置によれば、制御装置が、第2のミキシング弁に流入する温水の流量および水の流量に応じて第1のミキシング弁の待機開度を補正する。これにより、第1の出湯口の再出湯初期時におけるアンダシュートやオーバシュートが抑制される。
【0012】
また、本発明は、前記第2のミキシング弁側に分岐した前記給湯管に温水の流量を検知する流量カウンタを設け、この流量カウンタの出力信号と、前記第2のミキシング弁の開度に関する信号とに基づいて前記待機開度を補正することを特徴とする給湯装置とした。
【0013】
この給湯装置によれば、容易に検知できる第2のミキシング弁の開度と温水の流量とに基づいて、温水と水の各流量を求めることができるため、経済的で精度良く第1のミキシング弁の待機開度を補正することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、他方の出湯口における出湯如何に関わらず、一方の出湯口の再出湯時におけるアンダシュートやオーバシュートを抑制でき、再出湯初期時の温度特性に優れた給湯装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明について前記した図2および図1を用いて説明し、「背景技術」の欄で説明した構成部材に関し重複する事項については説明を省略する。図1は本発明の作用を示すフロー図である。本発明は、温水を供給する給湯管3と水を供給する給水管4との間に並設される第1および第2のミキシング弁5、6と、この各ミキシング弁5、6で混合された湯をそれぞれ外部に出湯する第1および第2の出湯口9、10と、各ミキシング弁5、6を制御する制御装置22と、を備え、第1の出湯口9からの出湯停止後に、第1のミキシング弁5が所定の待機開度を維持して待機状態となる構成の給湯装置に関するものであって、その主な特徴部は、第1のミキシング弁5が待機状態のときに第2の出湯口10の出湯が開始された場合に、第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量に応じて前記待機開度を補正する構成としたことにある。
【0016】
作用を説明すると、先ず第1の出湯口9が閉栓されると、制御装置22は流量カウンタ12の信号に基づいて第1の出湯口9の出湯停止を検知し(図1のST1)、次いで、制御装置22は、第1のミキシング弁5を、出湯停止時の開度、つまり制御装置22が第1の出湯口9の出湯停止を検知したときの開度(待機開度)で待機させる(ST2)。この状態で、制御装置22は流量カウンタ12の信号に基づいて第1の出湯口9における出湯の有無を監視する(ST3)。そして、第1の出湯口9から出湯があった場合には(ST3のYES)、第1のミキシング弁5がST2で設定された待機開度にある状態で、出湯が行われる。
【0017】
第1の出湯口9から出湯がない場合(ST3のNO)、次のステップST4で制御装置22は流量カウンタ14の信号に基づいて第2の出湯口10における出湯の有無を判断し、出湯がない場合には(ST4のNO)、ステップST3に戻る。第2の出湯口10からの出湯があると(ST4のYES)、制御装置22は、第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量に応じて、第1のミキシング弁5の待機開度を補正する(ST5)。
【0018】
ステップST5の処理について説明する。例えば出湯の温度設定が「第2の出湯口10>第1の出湯口9」の関係にある場合を想定すると、第2のミキシング弁6に流入する水に対する温水の割合は、第1のミキシング弁5における割合よりも多いことになるから、両ミキシング弁5、6が給湯管3と給水管4との間に並設されるという構造上、第1の出湯口9を再出湯させると、第1のミキシング弁5に流入する水に対する温水の割合は本来よりも少なくなりやすい。したがって、そのままの待機開度では図3(a)に示したアンダシュートが発生する。このような場合、制御装置22は、第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量に関するデータに基づいて、第1のミキシング弁5の弁体(図示せず)を、水に対する温水の混合比率が大きくなる方向に開度の補正を行う。これにより、第1の出湯口9の再出湯初期時におけるアンダシュートを抑制できる。
【0019】
同様に、出湯の温度設定が「第2の出湯口10<第1の出湯口9」の関係にある場合を想定すると、第2のミキシング弁6に流入する水に対する温水の割合は、第1のミキシング弁5における割合よりも少ないことになるから、第1の出湯口9を再出湯させると、第1のミキシング弁5に流入する水に対する温水の割合は本来よりも多くなりやすい。したがって、そのままの待機開度では図3(b)に示したオーバシュートが発生する。このような場合、制御装置22は、第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量に関するデータに基づいて、第1のミキシング弁5の弁体(図示せず)を、水に対する温水の混合比率が小さくなる方向に開度の補正を行う。これにより、第1の出湯口9の再出湯初期時におけるオーバシュートを抑制できる。
【0020】
また、たとえ出湯の温度設定が「第2の出湯口10=第1の出湯口9」の関係にある場合であっても、配管の引き回し構造や外気温の変化等の要因により、第2の出湯口10の出湯時に第1の出湯口9を再出湯させると、そのままの待機開度ではアンダシュートやオーバシュートが発生することもあり得る。したがって、このような場合も、制御装置22は、第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量に関するデータに基づいて、適宜に第1のミキシング弁5の待機開度の補正を行う。
【0021】
以上の待機開度の補正値、つまり第1のミキシング弁5における弁体(図示せず)の補正角度の値は、第1の出湯口9、第2の出湯口10の各温度設定値や第2の出湯口10の開栓度合いをパラメータとしたシミュレーションで予め求めておき、制御装置22に記憶させておく。制御装置22は、第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量に関するデータに基づき、記憶したシミュレーションデータから適正な補正値を割り出し、待機開度の補正を行う。
【0022】
ここで、第1のミキシング弁5の待機開度の補正が行われた後、第1の出湯口9から再出湯する前の段階で、第2の出湯口10からの出湯を停止させた場合には、待機開度は元の状態に戻るように構成されている。
【0023】
待機開度の補正値を決定する要素である「第2のミキシング弁6に流入する温水の流量および水の流量」に関するデータとしては、様々なものが挙げられる。例えば、給湯分岐管3b、給水分岐管4bにそれぞれ流量カウンタを設け、それらの出力信号を前記データとすることができる。また、出湯管8に設けた流量カウンタ14の出力信号と、第2のミキシング弁6の開度に関する信号とを前記データとすることもできる。なぜなら、前者の出力信号で割り出される出湯量と、後者の信号によって割り出される温水と水の混合比率とから、温水の流量と水の流量とを求めることができるからである。また、第2の出湯口10おけるリモコン等による温度設定に関する信号は、第2のミキシング弁6の開度に関する信号と相関関係にあるので、出湯管8に設けた流量カウンタ14の出力信号と、第2の出湯口10おけるリモコン等による温度設定に関する信号とを前記データとすることもできる。
【0024】
本実施形態では、給湯分岐管3bに流量カウンタ23を設け、この流量カウンタ23の出力信号と、第2のミキシング弁6の開度に関する信号とに基づいて、第1のミキシング弁5の待機開度を補正する構成としている。この場合、前者の出力信号から第2のミキシング弁6に流入する温水の流量が求められ、後者の信号によって割り出される温水と水の混合比率からミキシング弁6に流入する水の流量が求められる。この構成によれば、経済的で精度良く第1のミキシング弁5の待機開度を補正することができる。
【0025】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。実施形態では、給湯管3と給水管4との間に2つのミキシング弁5、6(出湯口9、10)を並設した場合について説明したが、3つ以上のミキシング弁(出湯口)が並設されている場合であっても、その内の2つのミキシング弁(出湯口)の作用関係が、実施形態で説明したミキシング弁5、6(出湯口9、10)と同一の作用関係を有するものであれば、本発明に包含される。また、実施形態では、一方のミキシング弁5についてのみ待機開度を補正する構成として説明したが、両ミキシング弁5、6のそれぞれについて待機開度を補正する構成とした場合も本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の作用を示すフロー図である。
【図2】給湯装置の一例を示す回路構成図である。
【図3】再出湯初期時の出湯特性を示すグラフであり、(a)はアンダシュートが生じた場合、(b)はオーバシュートが生じた場合を示す。
【符号の説明】
【0027】
3 給湯管
3a、3b 給湯分岐管
4 給水管
4a、4b 給水分岐管
5 第1のミキシング弁
6 第2のミキシング弁
9 第1の出湯口
10 第2の出湯口
22 制御装置
23 流量カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を供給する給湯管と水を供給する給水管との間に並設される第1および第2のミキシング弁と、この各ミキシング弁で混合された湯をそれぞれ外部に出湯する第1および第2の出湯口と、前記各ミキシング弁を制御する制御装置と、を備え、
前記第1の出湯口からの出湯停止後に、前記第1のミキシング弁が所定の待機開度を維持して待機状態となる給湯装置において、
前記第1のミキシング弁が待機状態のときに前記第2の出湯口の出湯が開始された場合に、前記第2のミキシング弁に流入する温水の流量および水の流量に応じて前記待機開度を補正する構成としたことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
前記第2のミキシング弁側に分岐した前記給湯管に温水の流量を検知する流量カウンタを設け、この流量カウンタの出力信号と、前記第2のミキシング弁の開度に関する信号とに基づいて前記待機開度を補正することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−132528(P2007−132528A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322975(P2005−322975)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】