説明

給湯装置

【課題】追焚回路53で熱交換した湯や沸き上げ回路70で沸き上げた湯を貯湯タンク17の適切な高さ位置に戻す給湯装置11において、沸き上げ回路70を自動的にエア抜きする。
【解決手段】貯湯タンク17の上部、中間部および下部の異なる高さ位置に対して、貯湯タンク17から取り出された湯をそれぞれ戻すことが可能な取入経路48,49,50を切換弁47で切り換える。追焚回路53で熱交換した湯や沸き上げ回路70で沸き上げた湯を貯湯タンク17の適切な高さ位置に戻す。沸き上げ回路70のエア抜き制御の際に、切換弁47を利用して追焚回路53から沸き上げ回路70への接続に切り換え、追焚用循環ポンプ46を駆動する。貯湯タンク17から追焚回路53に取り出した水を沸き上げ回路70に強制的に送り込み、沸き上げ回路70を自動的にエア抜きする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸き上げ用にヒートポンプユニットを用いた給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯装置においては、貯湯タンク内に貯湯する湯を沸き上げるのにヒートポンプを用いた沸き上げ回路を備えているものがある。
【0003】
この沸き上げ回路では、貯湯タンクとヒートポンプユニットとの間に沸き上げ用循環路が接続され、この沸き上げ用循環路にヒートポンプユニットの沸き上げ用熱交換器および沸き上げ用循環ポンプが配設されている。そして、ヒートポンプユニットを運転し、沸き上げ用循環ポンプを動作させることにより、貯湯タンクの下部から水を取り出してヒートポンプユニットで沸き上げるとともに沸き上げた湯を貯湯タンクの上部に取り入れて貯湯している。
【0004】
また、貯湯タンクに貯湯された湯は、給湯に使用される以外に、例えば浴槽水の追い焚きや温水暖房などの熱負荷側との熱交換にも利用されている。この場合、貯湯タンクに対して熱負荷回路が接続され、この熱負荷回路では、貯湯タンクの上部と下部との間に熱負荷用循環路が接続され、この熱負荷用循環路に熱負荷用熱交換器および熱負荷用循環ポンプが配設されている。そして、熱負荷用循環ポンプを動作させることにより、貯湯タンクの上部から湯を取り出して熱負荷用熱交換器で熱負荷側と熱交換するとともに熱負荷用熱交換器を通過した湯を貯湯タンクの下部に戻している。
【0005】
そして、一般的には、熱負荷回路と沸き上げ回路とは、貯湯タンクに対してそれぞれ独立して設けられている。
【0006】
また、このような給湯装置の設置後には、給水路を通じて貯湯タンク内に給水するとともに、沸き上げ回路や熱負荷回路のエア抜きをしている。一般的に、貯湯タンクに近接配置される熱負荷回路の場合には、貯湯タンクへの給水によって熱負荷回路内の空気が自動的に抜けやすいが、沸き上げ回路は、貯湯タンクとヒートポンプユニットとの間の沸き上げ用循環路の配管が長い場合が多く、しかも、いわゆる天井転がし配管や鳥居配管となる場合もあり、貯湯タンクへの給水だけでは沸き上げ回路内の空気が自動的に抜けにくい。そのため、沸き上げ回路にエア抜き弁を予め配設し、作業者がエア抜き弁を操作してエア抜きをする必要があった。
【0007】
そこで、沸き上げ回路のエア抜きを自動化するために、熱負荷用循環路の下流側および沸き上げ用循環路の上流側を切換弁に接続するとともにこの切換弁を介して貯湯タンクの下部に接続し、この切換弁により沸き上げ回路と熱負荷回路とを切り換えるとともに、エア抜き時には沸き上げ回路と熱負荷回路とを接続するように切り換えるものがある。そして、エア抜き時には、貯湯タンク内に給水後、切換弁で沸き上げ回路と熱負荷回路とを接続し、熱負荷用循環ポンプおよび沸き上げ用循環ポンプを動作させることにより、貯湯タンクの上部から熱負荷用循環路に取り出した水を切換弁を通じて沸き上げ用循環路に送り、沸き上げ用循環路の下流側に水を送って貯湯タンクの上部に戻すことにより、沸き上げ回路を自動的にエア抜きしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−118753号公報(第7−8頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の給湯装置では、熱負荷回路において、熱交換して温度低下した湯を貯湯タンクの下部に戻しているが、戻した湯の有する熱量が貯湯タンクの下部の水の温度上昇に使われるだけで、給湯には使用されず、無駄になってしまう。また、貯湯タンクの下部の水の温度を給水温度よりも高くしてしまうために、ヒートポンプユニットで沸き上げる場合に、沸き上げる水の温度が高くなるので、沸き上げ効率(COP)が低下してしまう。
【0009】
また、沸き上げ回路において、ヒートポンプユニットで沸き上げられた湯を貯湯タンクの上部に戻しているが、沸き上げ開始直後や条件によって湯の温度が十分に高くならなくても貯湯タンクの上部に戻してしまうため、貯湯タンクの上部に貯湯する湯の温度を低下させてしまう。
【0010】
このようなことから、熱負荷回路で熱交換した湯や沸き上げ回路で沸き上げた湯を、貯湯タンクの上部および下部を含む複数の異なる高さ位置に適切に戻すことが可能であればよいが、そのような構成は従来なかった。さらに、そのような構成においても、専用のエア抜き弁などを用いずに、沸き上げ回路のエア抜きが自動的にできることが望ましい。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、熱負荷回路で熱交換した湯や沸き上げ回路で沸き上げた湯をそれぞれ貯湯タンクの適切な高さ位置に戻すことが可能で、さらに、それが可能な構成において、専用のエア抜き弁などを用いずに、沸き上げ回路のエア抜きが自動的にできる給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の給湯装置は、湯を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯を取り出す取出経路と、前記貯湯タンクの少なくとも上部および下部を含む複数の異なる高さ位置に対して前記貯湯タンクから取り出された湯をそれぞれ戻すことが可能な複数の取入経路と、前記取出経路および取入経路に接続される熱負荷用循環路、この熱負荷用循環路に配設された熱負荷用熱交換器、および前記熱負荷用循環路内に湯を循環させる熱負荷用循環ポンプを有する熱負荷回路と、前記貯湯タンクの下部および前記熱負荷用循環路の熱負荷用循環ポンプよりも下流側に合流する合流部を介して前記取入経路に接続される沸き上げ用循環路、この沸き上げ用循環路に配設されたヒートポンプユニットの沸き上げ用熱交換器、および前記貯湯タンクの下部の水を前記沸き上げ用循環路内に循環させる沸き上げ用循環ポンプを有する沸き上げ回路と、前記複数の取入経路と前記合流部の下流側とがそれぞれ接続され、前記合流部側に対する接続を複数の取入経路のうちのいずれか1つに切り換えるとともに、前記合流部側を開閉可能とする切換手段と、前記貯湯タンク内に注水されている状態での前記沸き上げ回路のエア抜き制御の際に、前記切換手段で前記合流部側を閉止させて前記熱負荷用循環ポンプを駆動させる制御部とを具備しているものである。
【0013】
請求項2記載の給湯装置は、請求項1記載の給湯装置において、取出経路は、貯湯タンクの上部および中間部の異なる高さ位置から湯を取り出し可能とするとともに、これら上部および中間部からの取出比率を調整する取出比率調整手段を有し、制御部は、沸き上げ回路のエア抜き制御の際に、前記取出比率調整手段で中間部の取出経路のみからの取り出しに調整させるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の給湯装置によれば、貯湯タンクの少なくとも上部および下部を含む複数の異なる高さ位置に対して貯湯タンクから取り出された湯をそれぞれ戻すことが可能な複数の取入経路のうちの1つを切換手段で切り換える構成により、熱負荷回路で熱交換した湯や沸き上げ回路で沸き上げた湯をそれぞれ貯湯タンクの適切な高さ位置に戻すことができるとともに、熱負荷回路と沸き上げ回路とで取入経路および切換手段を共用でき、さらに、その構成において、沸き上げ回路のエア抜き制御の際には、その切換手段を利用して熱負荷回路から沸き上げ回路への接続に切り換え、熱負荷用循環ポンプを駆動させることにより、貯湯タンクから熱負荷回路に取り出した水を沸き上げ回路に送るため、専用のエア抜き弁などを用いずに、沸き上げ回路のエア抜きを自動的にできる。
【0015】
請求項2記載の給湯装置によれば、請求項1記載の給湯装置の効果に加えて、取出経路は、貯湯タンクの上部および中間部の異なる高さ位置から湯を取り出し可能とするとともに、これら上部および中間部からの取出比率を調整する取出比率調整手段を有し、沸き上げ回路のエア抜き制御の際に、取出比率調整手段で中間部の取出経路のみからの取り出しに調整することにより、沸き上げ回路から押し出されて貯湯タンク内に入った空気が熱負荷回路に引き込まれることがなく、安定したエア抜きができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
給湯装置11は、本体ユニット12と、湯を沸き上げるための室外機13とを備え、浴槽14に張った浴槽水の追焚機能を有している。
【0018】
本体ユニット12は、湯を貯湯する貯湯タンク17を有し、この貯湯タンク17には、貯湯タンク17の上部位置と、貯湯タンク17の上部から容量に対応した1/5位置、2/5位置、3/5位置、4/5位置と、貯湯タンク17の下部位置とに、貯湯タンク17内の湯水温度を検知する複数の温度検知手段としてのサーミスタ18a〜18fがそれぞれ配設されている。
【0019】
貯湯タンク17の下部には、水道管などの給水源に配管される給水経路20が接続されている。この給水経路20には、給水圧力を減圧する減圧弁21、逆流を規制する逆止弁22が配設されている。
【0020】
貯湯タンク17の上部に上部取出経路25が接続され、貯湯タンク17の上下方向中間位置であって1/5位置のサーミスタ18bと2/5位置のサーミスタ18cとの間に中間部取出経路26が接続されている。中間部取出経路26には貯湯タンク17の中間部から湯を取り出す方向にのみ湯の流れを許容する逆止弁27が配設されている。これら上部取出経路25と中間部取出経路26とは取出比率調整手段としての電動弁である調整弁28に接続され、この調整弁28により、上部取出経路25から取り出す貯湯タンク17の上部の湯と中間部取出経路26から取り出す貯湯タンク17の中間部の湯との混合比率を調整して取り出す。この調整弁28で調整可能とする混合比率には、いずれか一方が100%、他方が0%の場合も含まれる。調整弁28には取り出された湯を給湯する給湯経路29が接続されている。給湯経路29には湯の温度を検知する取出温度検知手段としての取出温度検知センサ30が配設されている。そして、これら上部取出経路25、中間部取出経路26、調整弁28、給湯経路29によって、貯湯タンク17から湯を取り出す取出経路31が形成されている。
【0021】
また、給湯経路29(取出経路31)と給水経路20とが給湯用の湯温調整手段としての混合弁34および浴槽用の湯温調整手段としての混合弁35にそれぞれ接続されている。これら混合弁34,35は、給湯経路29(取出経路31)からの湯と給水経路20からの水とを混合して所定温度の湯を給湯する。これら混合弁34,35で調整可能とする混合比率には、いずれか一方が100%、他方が0%の場合も含まれる。これら混合弁34,35に接続される給湯経路29および給水経路20には、給湯経路29側および給水経路20側への逆流を規制する逆止弁36,37がそれぞれ配設されている。
【0022】
給湯用の混合弁34は、例えば台所などに設置されるメインリモコンや浴室に設置される浴室リモコン等によりそれぞれ設定される給湯設定温度の湯を供給する。この給湯用の混合弁34には所定の給湯場所に給湯する給湯路38が接続され、この給湯路38には流量を測定する流量センサ39および温度を検知する給湯温度センサ40が配設されている。
【0023】
浴槽用の混合弁35は、例えば台所などに設置されるメインリモコンや浴室に設置される浴室リモコン等によりそれぞれ設定される湯張り設定温度の湯を供給したり、浴室リモコンによる追い焚き操作時に浴槽水の追い焚き能力に応じた温度の湯を供給し、さらに、湯の循環流量を調整する循環流量調整手段としても機能する。この浴槽用の混合弁35には浴槽14に給湯する浴槽用給湯経路41が接続され、この浴槽用給湯経路41には流路を開閉する浴槽用給湯手段としての給水電磁弁などを備えたホッパ42が配設されている。
【0024】
また、給湯経路29(取出経路31)の混合弁34,35の接続箇所より下流側には、上流側への逆流を規制する逆止弁43、および熱負荷側である浴槽14の浴槽水と熱交換する熱負荷用熱交換器としての追焚用熱交換器44を介して、この追焚用熱交換器44を通過した湯を貯湯タンク17に戻す戻り経路45が接続されている。この戻り経路45には、貯湯タンク17から取出経路31を通じて湯を取り出すとともに追焚用熱交換器44を通過した湯を戻り経路45を経て貯湯タンク17に戻すように湯を循環させる熱負荷用循環ポンプとしての追焚用循環ポンプ46が配設され、追焚用熱交換器44を通過した湯の温度を検知する取入温度検知センサ51が配設されている。
【0025】
戻り経路45には切換手段としての切換弁47が接続され、この切換弁47には、貯湯タンク17の上部に接続される上部取入経路48、貯湯タンク17の上下方向中間位置であって3/5位置のサーミスタ18dと4/5位置のサーミスタ18eとの間に接続される中間部取入経路49、給水経路20を通じて貯湯タンク17の下部に接続される下部取入経路50が接続されている。この切換弁47により、戻り経路45に対して、上部取入経路48、中間部取入経路49および下部取入経路50のいずれか1つが接続するように切り換えられるとともに、戻り経路45側の流路を開閉可能とする。切換弁47には、戻り経路45側の流路を開閉可能とするために、例えばボールベアリングを用い、通常の使用位置でない位置にボールを位置させることにより閉止できる。そして、戻り経路45と上部取入経路48、中間部取入経路49および下部取入経路50とで、貯湯タンク17の上部、中間部および下部の複数位置に追焚用熱交換器44を通過した湯を戻す複数の取入経路52が形成されている。
【0026】
そして、取出経路31および複数の取入経路52によって熱負荷用循環路としての追焚用循環路53aが形成され、この追焚用循環路53a、追焚用熱交換器44および切換弁47を含めて熱負荷回路としての追焚回路53が形成されている。
【0027】
また、追焚用熱交換器44と浴槽14とが浴槽用循環経路54によって接続されている。この浴槽用循環経路54は、浴槽14の浴槽水を取り込んで追焚用熱交換器44に導く戻り配管55、追焚用熱交換器44を通過した浴槽水を浴槽14に導く往き配管56を有している。戻り配管55には、浴槽14から取り込んだ浴槽水の温度を検知するサーミスタ57、浴槽14の水位を検知する圧力センサ58、浴槽14への自動湯張り時に流路を切り換えるための切換弁59、浴槽水を循環させる浴槽用循環ポンプ60、浴槽水の循環を検知するフロースイッチ61が配設されている。往き配管56には、浴槽14に導入する浴槽水の温度を検知するサーミスタ62が配設されている。
【0028】
切換弁59には浴槽用給湯経路41が接続され、浴槽用給湯経路41から給湯される湯を戻り配管55の1管、または戻り配管55と往き配管56との2管を通じて浴槽14に給湯可能になっている。
【0029】
また、貯湯タンク17の上部取出経路25には、沸き上げ時の過剰な圧力を逃す逃し弁65が接続され、この逃し弁65は排水経路66に接続されている。貯湯タンク17の下部と排水経路66との間は、貯湯タンク17内の水を排水する排水バルブ67を介して接続されている。
【0030】
また、貯湯タンク17側と室外機13とが沸き上げ用循環路70aを有する沸き上げ回路70によって接続されている。この沸き上げ回路70の沸き上げ用循環路70aは、貯湯タンク17の下部と室外機13の入口側とを接続する沸き上げ用取出経路71、室外機13の出口側と貯湯タンク17とを接続する沸き上げ用取入経路72を有している。この沸き上げ用取入経路72は、追焚回路53の戻り経路45の途中の合流部73で接続され、切換弁47、上部取入経路48、中間部取入経路49および下部取入経路50を共用している。そして、切換弁47により、室外機13の出口側に対する接続が上部取入経路48、中間部取入経路49および下部取入経路50のいずれか1つに切り換えられる。
【0031】
また、室外機13には、湯を沸き上げるヒートポンプユニット75が配設されている。このヒートポンプユニット75は、圧縮機、凝縮器として機能する沸き上げ用熱交換器76、膨張弁、蒸発器等で構成される冷媒回路を有している。このヒートポンプユニット75の沸き上げ用熱交換器76に沸き上げ回路70が接続されている。このヒートポンプユニット75の沸き上げ用熱交換器76の上流側に、貯湯タンク17の下部の水を沸き上げ用取出経路71側から沸き上げ用取入経路72側に循環させる沸き上げ用循環ポンプ77が配設されている。
【0032】
また、給湯装置11は、この給湯装置11を制御する制御部81を備えている。この制御部81は、次のような機能を有している。
【0033】
追焚運転の際に、サーミスタ18a〜18fの検知に基づいて取入経路52が接続される貯湯タンク17の上部、中間部および下部の各位置付近での貯湯タンク17内の湯水の温度が給湯に使える温度以上にあるか判定し、給湯に使える温度以上にあると判定される貯湯タンク17の位置に追焚用熱交換器44を通過した湯を戻す取入経路52に切り換えるように切換弁47を制御する機能。より詳細には、貯湯タンク17の下部の位置付近での湯水の温度が給湯に使える温度以上にあれば、貯湯タンク17の下部に追焚用熱交換器44を通過した湯を戻す下部取入経路50に切り換えるように切換弁47を制御し、また、貯湯タンク17の下部の位置付近での湯水の温度が給湯に使える温度よりも低くかつ貯湯タンク17の中間部の位置付近での湯水の温度が給湯に使える温度以上にあれば、貯湯タンク17の中間部に追焚用熱交換器44を通過した湯を戻す中間部取入経路49に切り換えるように切換弁47を制御し、また、貯湯タンク17の中間部の位置付近での湯水の温度が給湯に使える温度よりも低ければ、貯湯タンク17の上部に追焚用熱交換器44を通過した湯を戻す上部取入経路48に切り換えるように切換弁47を制御する機能。
【0034】
沸き上げ運転の際に、ヒートポンプユニット75からの出湯温度を検知する図示しない出湯温度検知センサの検知に基づいて切換弁47を切り換える機能。
【0035】
貯湯タンク17内に注水されている状態での沸き上げ回路70のエア抜き制御の際に、切換弁47で合流部73側を閉止させて追焚用循環ポンプ46を駆動させる機能。
【0036】
沸き上げ回路70のエア抜き制御の際に、調整弁28で中間部取出経路26のみからの取り出しに調整させる機能。
【0037】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0038】
まず、給湯装置11の設置後の給水およびエア抜きについて説明する。
【0039】
逃し弁65および各弁28,34,35,47などを開き、給水経路20を通じて貯湯タンク17内に給水する。これにより、貯湯タンク17内に給水されていくとともに貯湯タンク17に接続されている各配管内にも給水されていき、貯湯タンク17内および配管内から抜ける空気は逃し弁65から排出される。特に、追焚回路53は貯湯タンク17に近接配置されているため、追焚回路53には、貯湯タンク17への給水によって追焚回路53内に容易に給水され、追焚回路53内の空気が自動的に抜けやすい。それに対して、沸き上げ回路70は、貯湯タンク17とヒートポンプユニット75との間の沸き上げ用循環路70aの配管が長い場合が多く、しかも、いわゆる天井転がし配管や鳥居配管となる場合もあり、貯湯タンク17への給水だけでは沸き上げ回路70内への給水が十分でなく、沸き上げ回路70内の空気が自動的に抜けにくい。
【0040】
貯湯タンク17内に満水状態となって、逃し弁65から水が溢れれば、給水を止め、逃し弁65を機能する状態に戻し、給水完了となる。
【0041】
貯湯タンク17に給水された状態で、沸き上げ回路70のエア抜き制御を実施する。この沸き上げ回路70のエア抜き制御では、図1の配管経路の黒表示、および矢印にて示すように、調整弁28で中間部取出経路26のみからの水の取り出しに調整し、切換弁47で合流部73側を閉止して追焚回路53から沸き上げ回路70への接続に切り換え、追焚用循環ポンプ46を駆動する。これにより、貯湯タンク17内の水を中間部取出経路26、調整弁28、給湯経路29(取出経路31)、混合弁35、追焚用熱交換器44、追焚用循環ポンプ46、戻り経路45、合流部73、沸き上げ回路70の沸き上げ用循環路70aを経て貯湯タンク17の下部に戻す経路を構成し、すなわち、追焚回路53から沸き上げ回路70に水を強制的に送り込む経路を構成する。
【0042】
そのため、沸き上げ用循環路70aの配管、ヒートポンプユニット75の沸き上げ用熱交換器76、沸き上げ用循環ポンプ77内の水が流れ込み、これらに存在していた空気が貯湯タンク17内に押し出され、エア抜きされる。
【0043】
このとき、調整弁28で中間部取出経路26のみからの水の取り出しに調整しているため、沸き上げ回路70から押し出されて貯湯タンク17内に入った空気が追焚回路53に引き込まれることがなく、安定したエア抜きができる。
【0044】
次に、貯湯タンク17への湯の貯湯動作について説明する。
【0045】
特定の沸き上げ時間帯として例えば時間帯別電灯制度の夜間時間帯において、室外機13のヒートポンプユニット75および沸き上げ用循環ポンプ77を作動させる。図2の配管経路の黒表示、および矢印にて示すように、沸き上げ用循環ポンプ77の作動により、貯湯タンク17の下部の水を沸き上げ用取出経路71から取り出してヒートポンプユニット75に送り、このヒートポンプユニット75で沸き上げた湯を沸き上げ用取入経路72から貯湯タンク17に戻す。
【0046】
室外機13のヒートポンプユニット75からの湯の出湯温度が低いときには、切換弁47で下部取入経路50または中間部取入経路49に切り換え、貯湯タンク17の下部または中間部に温度の低い湯水を戻し、貯湯タンク17の上部の湯の温度低下を防止する。また、室外機13のヒートポンプユニット75で沸き上げられた湯の出湯温度が沸き上げ目標温度以上のときには、切換弁47で上部取入経路48に切り換え、貯湯タンク17の上部に沸き上げ目標温度以上の湯を送り込んで貯湯する。これにより、貯湯タンク17の上部に低温湯を貯湯することがなくなり、貯湯温度を高温にできる。
【0047】
次に、給湯動作について説明する。
【0048】
給湯路38の下流側に配設される給湯栓等を開くことにより、給水圧力により貯湯タンク17内の湯を押し出し、上部取出経路25、中間部取出経路26、調整弁28および給湯経路29を通じて貯湯タンク17から取り出される湯と給水経路20から給水される水とを給湯用の混合弁34で混合して給湯設定温度の湯とし、この湯を給湯路38から給湯する。給湯経路29に取り出す湯は、調整弁28により、上部取出経路25から取り出す貯湯タンク17の上部の湯と中間部取出経路26から取り出す貯湯タンク17の中間部の湯との混合比率を調整して取り出す。
【0049】
次に、浴槽14の利用について説明する。
【0050】
浴槽14に湯張りする場合には、ホッパ42の給水電磁弁を開くことにより、給水圧力により貯湯タンク17内の湯を押し出し、上部取出経路25、中間部取出経路26、調整弁28および給湯経路29を通じて貯湯タンク17から取り出される湯と給水経路20から給水される水とを浴槽用の混合弁35で混合して湯張り設定温度の湯とし、この湯を供給し、浴槽用給湯経路41およびこの浴槽用給湯経路41の一部を構成する浴槽用循環経路54を通じて浴槽14に給湯する。浴槽14に湯張りする場合、切換弁59で戻り配管55と往き配管56との2管に湯が流れるように切り換えることにより、所定量の湯を迅速に給湯して湯張りできる。なお、浴槽14に湯張りする場合、切換弁59で往き配管56の1管のみに湯が流れるように切り換え、戻り配管55の圧力センサ58で水位を監視しながら給湯することにより、浴槽14の湯の水位が設定水位に正確に一致するように湯張りできる。また、給湯経路29に取り出す湯は、調整弁28により、上部取出経路25から取り出す貯湯タンク17の上部の湯と中間部取出経路26から取り出す貯湯タンク17の中間部の湯との混合比率を調整して取り出す。
【0051】
そして、浴槽14に湯張りした後は、所定時間毎に、浴槽用循環ポンプ60を作動させて浴槽14の浴槽水を浴槽用循環経路54内に循環させ、サーミスタ57で浴槽水の温度を検知し、保温の必要つまり追い焚き動作の必要があるか監視する。
【0052】
また、浴槽水の温度が設定温度よりも低下した際には自動的に追い焚き動作し、また、浴槽リモコンなどの手動操作によっても追い焚き動作する。
【0053】
追い焚き動作では、図3の配管経路の黒表示、および矢印にて示すように、まず、浴槽用循環ポンプ60を作動させ、浴槽水を浴槽用循環経路54内に取り込んで追焚用熱交換器44に循環させる。その状態で、追焚用循環ポンプ46を作動させることにより、貯湯タンク17内の湯を、上部取出経路25、中間部取出経路26、調整弁28、給湯経路29(取出経路31)を通じて取り出して追焚用熱交換器44に送り込み、この追焚用熱交換器44で貯湯タンク17からの湯と浴槽14からの浴槽水とで熱交換させ、この熱交換により温度上昇した浴槽水を浴槽14に戻し、浴槽14内の湯温を上昇させる。なお、給湯経路29(取出経路31)に取り出す湯は、調整弁28により、上部取出経路25から取り出す貯湯タンク17の上部の湯と中間部取出経路26から取り出す貯湯タンク17の中間部の湯との混合比率を調整して取り出す。
【0054】
さらに、追焚用熱交換器44を通過して温度低下した貯湯タンク17からの湯は、戻り経路45、切換弁47、上部取入経路48、中間部取入経路49および下部取入経路50のいずれか1つを通じて貯湯タンク17に戻す。
【0055】
このとき、貯湯タンク17の各サーミスタ18a〜18fの検知に基づいて上部取入経路48、中間部取入経路49および下部取入経路50が接続される貯湯タンク17の上部、中間部および下部の各位置付近での貯湯タンク17内の湯水の温度が給湯に使える温度以上にあるか判定し、給湯に使える温度以上にあると判定される貯湯タンク17の位置に追焚用熱交換器44を通過した湯を戻すように切換弁47を切り換える。
【0056】
このように、追焚用熱交換器44を通過して温度低下した湯を貯湯タンク17に戻す場合、各取入経路48,49,50が接続される貯湯タンク17の上部、中間部および下部の各位置付近での貯湯タンク17内の湯水の温度が給湯に使える温度以上にあるか判定し、給湯に使える温度以上にあると判定される貯湯タンク17の位置に追焚用熱交換器44を通過した湯を戻すように各取入経路48,49,50のうちの1つに切り換えるため、追焚用熱交換器44を通過した追い焚き後の湯の熱量を貯湯タンク17の給湯に使える温度の湯の領域に戻し、給湯に使えない貯湯タンク17の下部の水の領域に戻すことがなくなり、湯の熱量を無駄にすることなく給湯に有効に利用でき、給湯に使える湯を多くできる。
【0057】
以上のように構成された給湯装置11によれば、貯湯タンク17の上部、中間部および下部の異なる高さ位置に対して貯湯タンク17から取り出された湯をそれぞれ戻すことが可能な取入経路48,49,50のうちの1つを切換弁47で切り換える構成により、追焚回路53で熱交換した湯や沸き上げ回路70で沸き上げた湯をそれぞれ貯湯タンク17の適切な高さ位置に戻すことができるとともに、追焚回路53と沸き上げ回路70とで取入経路31および切換弁47を共用できる。さらに、その構成において、沸き上げ回路70のエア抜き制御の際には、その切換弁47を利用して追焚回路53から沸き上げ回路70への接続に切り換え、追焚用循環ポンプ46を駆動させることにより、貯湯タンク17から追焚回路53に取り出した水を沸き上げ回路70に送るため、専用のエア抜き弁などを用いずに、沸き上げ回路70のエア抜きを自動的にできる。
【0058】
なお、上部取出経路25が貯湯タンク17の最上部になければ、沸き上げ回路70のエア抜き制御の際に、中間部取出経路26のみからでなく、上部取出経路25と中間部取出経路26との混合取出とし、これら上部取出経路25および中間部取出経路26の配管内のエア抜きが確実にできる。
【0059】
また、沸き上げ用循環ポンプ77に自吸式ポンプを利用すれば、沸き上げ回路70のエア抜き制御の際に、沸き上げ用循環ポンプ77も駆動して貯湯タンク17内の水を追焚回路53から沸き上げ回路70に引き込み、より確実で安定したエア抜きができる。
【0060】
また、取入経路52は、貯湯タンク17の上部、中間部および下部に各取入経路48,49,50を1つずつ接続したが、貯湯タンク17の中間部に接続する中間部取入経路49については、複数とし、貯湯タンク17の中間部の上下方向に異なる複数位置に接続するようにしてもよい。
【0061】
また、熱負荷回路の熱負荷用熱交換器で貯湯タンク17の湯と熱交換する熱負荷としては、浴槽14の浴槽水の追い焚きに限らず、温水暖房する場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施の形態を示す給湯装置のエア抜き制御を示す構成図である。
【図2】同上給湯装置の沸き上げ運転を示す構成図である。
【図3】同上給湯装置の追焚運転を示す構成図である。
【符号の説明】
【0063】
11 給湯装置
17 貯湯タンク
28 取出比率調整手段としての調整弁
31 取出経路
44 熱負荷用熱交換器としての追焚用熱交換器
46 熱負荷用循環ポンプとしての追焚用循環ポンプ
47 切換手段としての切換弁
52 取入経路
53 熱負荷回路としての追焚回路
53a 熱負荷用循環路としての追焚用循環路
70 沸き上げ回路
70a 沸き上げ用循環路
73 合流部
75 ヒートポンプユニット
76 沸き上げ用熱交換器
77 沸き上げ用循環ポンプ
81 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯を貯湯する貯湯タンクと、
前記貯湯タンク内の湯を取り出す取出経路と、
前記貯湯タンクの少なくとも上部および下部を含む複数の異なる高さ位置に対して前記貯湯タンクから取り出された湯をそれぞれ戻すことが可能な複数の取入経路と、
前記取出経路および取入経路に接続される熱負荷用循環路、この熱負荷用循環路に配設された熱負荷用熱交換器、および前記熱負荷用循環路内に湯を循環させる熱負荷用循環ポンプを有する熱負荷回路と、
前記貯湯タンクの下部および前記熱負荷用循環路の熱負荷用循環ポンプよりも下流側に合流する合流部を介して前記取入経路に接続される沸き上げ用循環路、この沸き上げ用循環路に配設されたヒートポンプユニットの沸き上げ用熱交換器、および前記貯湯タンクの下部の水を前記沸き上げ用循環路内に循環させる沸き上げ用循環ポンプを有する沸き上げ回路と、
前記複数の取入経路と前記合流部の下流側とがそれぞれ接続され、前記合流部側に対する接続を複数の取入経路のうちのいずれか1つに切り換えるとともに、前記合流部側を開閉可能とする切換手段と、
前記貯湯タンク内に注水されている状態での前記沸き上げ回路のエア抜き制御の際に、前記切換手段で前記合流部側を閉止させて前記熱負荷用循環ポンプを駆動させる制御部と
を具備していることを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
取出経路は、貯湯タンクの上部および中間部の異なる高さ位置から湯を取り出し可能とするとともに、これら上部および中間部からの取出比率を調整する取出比率調整手段を有し、
制御部は、沸き上げ回路のエア抜き制御の際に、前記取出比率調整手段で中間部の取出経路のみからの取り出しに調整させる
ことを特徴とする請求項1記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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