説明

給紙装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】用紙カセットの筐体内への挿入時に用紙の散乱を防止して給紙動作を円滑に行うことが可能な給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】給紙装置4は、筐体2と、第1方向Aから筐体2内に挿入可能であり、第1方向Aから見て下流側に位置する下流側壁部32を有する用紙カセット3と、用紙カセット3から用紙Sを第1方向Aに沿って取り出して給送する給紙機構40と、用紙カセット3が筐体2内に挿入されたときに下流側壁部32を越えて用紙カセット3から飛び出そうとする用紙Sに当接して該用紙Sを用紙カセット3に戻すための規制面18を有する用紙散乱防止部材10とを含む。用紙散乱防止部材10は、用紙カセット3が筐体2内に挿入されたとき、規制面18が下流側壁部32よりも高い位置に突出する第1姿勢を取り、給紙機構40が用紙Sを給送するとき、規制面18が下流側壁部32の上方から退避する第2姿勢を取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を所定の方向に給送する給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置は、用紙上にトナー像を形成する画像形成部と、画像形成部に用紙を給送する給紙装置とを含む。
【0003】
給紙装置は、例えば特許文献1に示すように、用紙を収容する用紙カセットと、用紙カセットから用紙を一枚ずつ取り出すピックアップローラと、用紙を画像形成部に給送する給紙ローラと、給紙ローラに接触した状態で対向配置され、用紙の重送を防止するリタードローラとを、主要な構成要素として含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−267372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の給紙装置では、用紙カセットが画像形成装置の筐体内に挿入される挿入方向と、ピックアップローラが用紙カセットから用紙を取り出す方向とが同一に構成されている。このような構成では、用紙カセットが筐体内に強く挿入されてしまったとき、用紙カセットの挿入方向から見た下流側において、つまり、ピックアップローラの近傍において、用紙が用紙カセットから飛び出して散乱する場合がある。その場合、ピックアップローラは用紙カセットから用紙を適正に取り出すことができないので、給紙動作が滞ってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、用紙カセットの筐体内への挿入時において用紙の散乱を防止して給紙動作を円滑に行うことが可能な給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る給紙装置は、筐体と、用紙を収容する用紙カセットであって、第1方向から前記筐体内に挿入可能であり、前記第1方向から見て下流側に位置する下流側壁部を有する用紙カセットと、前記用紙カセットから前記用紙を前記第1方向に沿って取り出して給送する給紙機構と、前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されたときに前記下流側壁部を越えて前記用紙カセットから飛び出そうとする用紙に当接して該用紙を前記用紙カセットに戻すための規制面を有する用紙散乱防止部材とを含む。前記用紙散乱防止部材は、前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されたとき、前記規制面が前記下流側壁部よりも高い位置に突出する第1姿勢を取り、前記給紙機構が前記用紙を給送するとき、前記規制面が前記下流側壁部の上方から退避する第2姿勢を取る。
【0008】
本発明に係る給紙装置によれば、前記用紙カセットが筐体内に挿入されたとき、用紙散乱防止部材は、規制面が下流側壁部よりも高い位置に突出する第1姿勢を取るので、規制面は、用紙カセットの挿入時の衝撃によって下流側壁部を越えて用紙カセットから飛び出そうとする用紙に当接して該用紙を用紙カセットに戻すことができる。これにより、用紙の散乱が防止され、その結果、給紙機構による給紙動作を円滑に行うことが可能である。また、給紙機構が用紙を給送するとき、用紙散乱防止部材は、規制面が下流側壁部の上方から退避する第2姿勢を取るので、給紙機構の用紙給送動作を妨げない。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、給紙装置は、さらに、前記用紙散乱防止部材を前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で切り替える切替部材を含み、前記用紙散乱防止部材は揺動軸を有し、前記切替部材は、前記用紙散乱防止部材を前記揺動軸の軸回りに回動させることで、前記用紙散乱防止部材の姿勢を前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で切り替える。
【0010】
この構成によれば、切替部材によって用紙散乱防止部材を回動させるという簡単な構成で、用紙散乱防止部材の姿勢の切り替えを行うことができる。
【0011】
本発明の他の好ましい実施形態では、切替部材によって用紙散乱防止部材を回動させる構成は次のようなものである。すなわち、前記用紙散乱防止部材は、前記筐体内に配置されており、前記切替部材は、前記用紙カセットに配置された第1回動部材と、前記筐体内に配置された付勢部材とを有し、前記第1回動部材は、第1回動軸と、前記第1回動軸を挟んで一端部および他端部とを有し、前記第1回動軸の軸回りに回動可能な部材であって、回動動作を規制することが可能な規制部を前記一端部において有すると共に、前記用紙散乱防止部材に当接することが可能な当接部を前記他端部において有し、前記付勢部材は、前記用紙散乱防止部材が常に前記第2姿勢を取るように前記用紙散乱防止部材を付勢する。前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されたとき、前記当接部は、前記規制部が回動動作を規制した状態で前記用紙散乱防止部材に当接して、前記付勢部材の付勢力に抗しつつ前記用紙散乱防止部材を押圧することにより、該用紙散乱防止部材を前記第2姿勢から前記第1姿勢に切り替え、一方、前記給紙機構が前記用紙を給送するとき、前記規制部は、回動動作を許容して前記当接部と前記用紙散乱防止部材との間の当接状態を解消することにより、前記付勢部材の付勢力によって前記用紙散乱防止部材を前記第1姿勢から前記第2姿勢に切り替える。
【0012】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記用紙カセットは、前記用紙が載置される昇降可能なリフト板を有し、前記リフト板は、前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されるときは下降位置に設定されている一方、前記給紙機構が前記用紙を給送するときは上昇位置に設定され、前記切替部材の前記規制部は、前記リフト板と係合することが可能な形状を有する部分であって、前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されるとき、前記下降位置に設定された前記リフト板と係合した状態を維持することで、前記第1回動部材の回動動作を規制する一方、前記給紙機構が前記用紙を給送するとき、前記上昇位置に設定された前記リフト板と係合状態を解消することで、前記第1回動部材の回動動作を許容する。
【0013】
この構成によれば、リフト板の昇降動作、つまり、用紙カセットの挿入動作および給紙機構による給送動作に合わせて、用紙散乱防止部材の姿勢の切り替えを行うことができる。
【0014】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記当接部は、前記用紙散乱防止部材に当接する第1当接面を有し、前記用紙散乱防止部材は、前記第1当接面に当接する第2当接面を有し、前記付勢部材は、前記第1当接面と前記第2当接面とが当接した状態において前記第2当接面から前記第1当接面に向けて荷重がかかるように付勢力を作用させる。
【0015】
この構成によれば、用紙散乱防止部材の第2当接面から当接部の第1当接部に向けて荷重がかかっているので、用紙散乱防止部材を第1姿勢に保持することが容易となる。
【0016】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記当接部は、第2回動軸と、前記用紙散乱防止部材に当接する第1当接面とを有し、前記第2回動軸の軸回りに前記第1回動部材に対して回動可能に支持されている第2回動部材から構成されており、前記用紙散乱防止部材は、前記第1当接面に当接する第2当接面を有し、前記用紙散乱防止部材が前記第2姿勢に切り替えられたとき、前記第1回動部材は、前記第1当接面が前記第1当接面と前記第2当接面との当接位置から見て前記第1方向の下流側に移動するように回動し、一方、前記用紙散乱防止部材は、前記第2当接面が前記当接位置から見て前記第1方向の上流側に移動するように回動する。
【0017】
用紙散乱防止部材が第2姿勢に切り替えられたとき、第1当接面は当接位置から見て第1方向の下流側に移動するように回動し、一方、第2当接面は当接位置から見て第1方向の上流側に移動するため、用紙カセットを筐体から引き出すとき、第1当接面が第2当接面に当接する。しかしながら、上記構成によれば、第1当接面を有する第2回動部材は、第1回動部材に対して回動することができるので、第1当接面が第2当接面に作用させる当接圧を回動しつつ軽減させることができる。これにより、用紙カセットの筐体からの引き出し動作が円滑に行われる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置によれば、トナー像を用紙上に形成する画像形成部と、前記画像形成部に前記用紙を給送する給紙装置とを含み、前記給紙装置として、請求項1〜6のいずれか一項に記載の給紙装置が用いられている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る給紙装置およびそれを備えた画像形成装置によれば、上記事情に鑑み、用紙カセットが筐体内に強く挿入されてしまった場合であっても用紙の散乱を防止して給紙動作を円滑に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの斜視図であり、(a)は用紙カセットがプリンタの筐体に完全に収容された状態を示し、(b)は用紙カセット全体が筐体から引き出された状態を示し、(c)は用紙カセットの一部が筐体内に挿入された状態を示す。
【図2】図1に示されるプリンタの内部構造を示す図である。
【図3】用紙カセットの背面壁側から見た給紙装置の斜視図であり、用紙散乱防止部材の起立姿勢を示している。
【図4】用紙カセットの上方から見た給紙装置の斜視図であり、用紙散乱防止部材の起立姿勢を示している。
【図5】図3のV−V線に沿って切断した断面図であり、用紙散乱防止部材の起立姿勢を示している。
【図6】用紙散乱防止部材の倒伏姿勢を示す断面図である。
【図7】用紙カセットの上方から見た給紙装置の斜視図であり、用紙散乱防止部材の倒伏姿勢を示している。
【図8】用紙カセットが筐体内に挿入され、用紙散乱防止部材が起立姿勢を取る直前の状態を示している。
【図9】用紙散乱防止部材および切替部材の側面図であり、用紙散乱防止部材が起立姿勢を取った状態を示している。
【図10】用紙散乱防止部材および切替部材の斜視図であり、用紙散乱防止部材が起立姿勢を取った状態を示している。
【図11】用紙散乱防止部材および第1回動部材の側面図であり、用紙散乱防止部材が倒伏姿勢を取った状態を示している。
【図12】用紙散乱防止部材および第1回動部材の斜視図であり、用紙散乱防止部材が倒伏姿勢を取った状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。尚、以下の説明で用いられる「上」、「下」、「左」や「右」などの方向を表す用語は、単に、説明の明瞭化を目的とするものであり、何ら本発明を限定するものではない。以下の説明において用いられる「用紙」との文言は、一般的に、印刷処理を施される印刷用紙を意味するが、本発明はこれに限られるものではなく、トレーシングペーパ、OHPシート、厚紙や画像形成を施与することが可能な他の用紙も意味する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の外観斜視図であり、(a)は用紙カセットが画像形成装置内に完全に収容された状態を示し、(b)は用紙カセット全体が画像形成装置から引き出された状態を示し、(c)は用紙カセットの一部が画像形成装置内に挿入された状態を示す。尚、図1に示される画像形成装置は、プリンタであるが、本発明はこれに限られるものではなく、コピー機、ファクシミリ装置や用紙に画像を形成することができる他の装置を画像形成装置として用いてもよい。
【0023】
プリンタ1は、全体として、略直方体形状の筐体2を含む。筐体2は、用紙カセット3の挿入口となる略矩形状の開口部211が形成された正面壁21と、正面壁21に対向する位置にある背面壁22と、正面壁21と背面壁22との間で延びるとともにプリンタ1の側面を形成する右側面壁23及び左側面壁24と、正面壁21と背面壁22との間で延びるとともにプリンタ1の上面を形成する天壁25とを含む。
【0024】
正面壁21の開口部211から背面壁22に向けて、略直方体形状の収容空間が延びる。用紙カセット3の外周輪郭は、この収容空間と相補的な形状をなしている。用紙カセット3は、正面壁21側から背面壁22に向けて移動可能である。また、背面壁22から正面壁21に向けて用紙カセット3を引っ張ることにより、筐体2から用紙カセット3を引き出すことも可能である。このように用紙カセット3は、収容空間内で往復移動可能に形成される。
【0025】
筐体2内には、プリンタ1の機能を発揮させるための各種の機器が配設される。右側面壁23には、これら機器から生ずる熱を放出するための放熱口231が形成されている。天壁25上には、正面壁21に向けて狭まる凹空間251が形成され、背面壁22側に位置する凹空間251の基端部は、排出壁252により形成される。排出壁252には、画像形成された用紙を排出する排出口253が形成される。排出口253から画像形成処理が施与された用紙が排出され、天壁25上の凹空間251内で積み重ねられる。
【0026】
用紙カセット3は、用紙カセット3が筐体2内に完全に押し込まれたときに、筐体2の正面壁21とともにプリンタ1の正面側壁面を形成する正面壁31と、正面壁31と対向する位置に存する背面壁32(下流側壁部)と、正面壁31と背面壁32との間で延びるとともに用紙カセット3の側面を形成する右側面壁33及び左側面壁34と、正面壁31と背面壁32との間で延びるとともに用紙カセット3の底面を形成する底壁35とを含む。
【0027】
用紙カセット3の底壁35の上面には、正面壁31から背面壁32に向かう直線上で往復移動可能な第1調整ノブ36と、左右の側面壁33,34を結ぶ直線上で往復移動可能な一対の第2調整ノブ37とが立設される。第1調整ノブ36及び第2調整ノブ37は、用紙カセット3内に収容される用紙の束の側面(積層される用紙の縁部が積み重ねられてなる面)に当接するように位置決めされ、第1調整ノブ36、一対の第2調整ノブ37及び背面壁32の内面とで、用紙を収容するための収容空間38が形成される。
【0028】
図2は、図1に示されるプリンタ1の内部構造を概略的に示す。図2と併せて図1を参照しつつ、プリンタ1の内部構造について説明する。尚、プリンタ1は、パーソナルコンピュータ(PC)(図示せず)等に直接またはLAN経由で接続される。パーソナルコンピュータ等の外部装置は、プリンタ1に画像データを送信する。また、図2に関連して以下に説明される構成要素の他に、プリンタ1は、プリンタ1の動作を制御する制御回路など、一般的なプリンタに設けられた他の構成要素も有している。
【0029】
図2に示されるように、筐体2の内部には、中間転写ユニット92、画像形成ユニット93、露光ユニット94、定着ユニット97、排紙ローラ対96および給紙装置4が設けられている。
【0030】
画像形成ユニット93は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を担持する感光体ドラム931(電子写真方式で潜像が形成される感光体)を含む。感光体ドラム931としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。
【0031】
感光体ドラム931の周囲には、帯電器933、現像装置910(910Y、910M、910C、910K)、転写ローラ932及びクリーニング装置934等が配置されている。帯電器933は、感光体ドラム931の表面を均一に帯電する。帯電後の感光体ドラム931の表面は、露光ユニット94によって露光され、静電潜像が形成される。現像装置910Y、910M、910C、910Kは、それぞれトナーコンテナ900Y、900M、900C、900Kから供給される各色のトナーを用いて、各々の感光体ドラム931上に形成された静電潜像を現像(可視像化)する。転写ローラ932は、中間転写ベルト921を挟んで感光体ドラム931とニップ部を形成し、感光体ドラム931上のトナー像を中間転写ベルト921上に一次転写する。クリーニング装置934は、トナー像転写後の感光体ドラム931の周面を清掃する。
【0032】
各現像装置910Y、910M、910C、910Kは、筐体911を含み、この筐体911の内部には、磁性キャリアとトナーとを有する2成分現像剤が収納されている。また、筐体911内には、2本の攪拌ローラ912、913が回転可能に配置される。2本の攪拌ローラ912、913は、筐体911の底部近傍で互いに並列に延設する。
【0033】
筐体911の内部底面には、現像剤の循環経路が形成されている。攪拌ローラ912、913は循環経路内に配設されている。攪拌ローラ912、913の間において、筐体911の底部から立設された仕切り壁914が攪拌ローラ912、913の軸方向に延びる。この仕切り壁914は、循環経路を区画する。仕切り壁914の周囲を周回するように循環経路が形成される。2成分現像剤は、この循環経路を攪拌ローラ912及び913によって攪拌、搬送されながら帯電される。
【0034】
2成分現像剤は、攪拌ローラ912及び913によって攪拌されつつ筐体911内を循環し、トナーが帯電されるとともに、攪拌ローラ912上の2成分現像剤が上側に位置する磁気ローラ915に吸引されて搬送される。吸引された2成分現像剤は磁気ローラ915上に磁気ブラシを形成する。磁気ブラシは、ドクターブレード916によって層厚規制される。現像ローラ917上のトナー層は、磁気ローラ915と現像ローラ917との間の電位差によって形成され、トナー層によって感光体ドラム931上の静電潜像が現像される。
【0035】
露光ユニット94は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、画像形成ユニット93の各々に設けられた感光体ドラム931の周面に、例えば、外部装置から送信された画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
【0036】
中間転写ユニット92は、中間転写ベルト921、駆動ローラ922及び従動ローラ923を含む。中間転写ベルト921には、複数の感光体ドラム931からトナー像が一次転写され、各感光体ドラム931からの像が重ね塗りされる。この重ね塗りされたトナー像を、中間転写ベルト921は、後述する給紙装置4から供給される用紙Sに二次転写部980において二次転写する。駆動ローラ922及び従動ローラ923は、中間転写ベルト921を周回駆動させる。駆動ローラ922及び従動ローラ923は、プリンタ1の筐体2で回転自在に支持される。なお、本実施形態では、画像形成ユニット93、中間転写ユニット92および二次転写部980が、トナー像を用紙S上に形成する画像形成部を構成する。
【0037】
定着ユニット97は、中間転写ユニット92から二次転写された用紙S上のトナー像に対し、定着処理を施す。定着処理の完了したカラー画像付の用紙Sは、筐体2の内部空間の上部に形成された排出ローラ対96へ向けて排出される。排紙ローラ対96は、定着ユニット97から搬送された用紙Sを、排出壁252に形成された排出口253を介して凹空間251に排出する(図1参照)。
【0038】
給紙装置4は、用紙Sを二次転写部980に給送するための装置であって、上述した用紙カセット3と、給紙機構40と、用紙カセット3および給紙機構40を収容する筐体2とから構成されている。
【0039】
用紙カセット3は、図1を参照して説明した構造を有すると共に、用紙収容空間38内において複数枚の用紙Sからなる用紙束Tを積載するリフト板381を含む。リフト板381の上流側端部(図では左側端部)は、支持部382により回動可能に支持されている。リフト板381は、用紙収容空間38内において、下流側端部(図2では右側端部)を自由端として支持部382により底壁35に対して上下方向に回動可能となっている。支持部382は、用紙Sの幅方向に対向配置された左右の側面壁33,34(図1参照)に設けられる。
【0040】
リフト板381の下流側端部の下方には、リフト板381を昇降させる昇降機構として、駆動シャフト383及び押し上げ部材384が設けられる。駆動シャフト383は、駆動モータ(図示せず)に接続される。プリンタ1の動作全般の制御を司る制御部による制御下で、駆動モータが作動すると、駆動シャフト383が回転し、リフト板381に接続される押し上げ部材384の先端部が上昇し、リフト板381の下流側端部が上昇する。
【0041】
給紙機構40は、用紙カセット3が筐体2内に完全に挿入され、所定の給紙位置にセットされたときに用紙Sを用紙カセット3から二次転写部980に給送する。給紙機構40が用紙Sを給送する給送動作が行われる前に、リフト板381はその下流側端部が前記昇降機構によって上昇して上昇位置に設定される。なお、リフト板381の下流側端部は、新たな用紙束Tが補給されるときには下降した下降位置に設定されている。
【0042】
給紙機構40は、具体的には、プリンタ1の筐体2内に挿入された状態の用紙カセット3の背面壁32とプリンタ1の筐体2の背面壁22との間に配設された機構であって、リフト板381の下流側端部の上方に配設されたピックアップローラ41と、ピックアップローラ41の下流側に配設された給紙ローラ42と、給紙ローラ42に圧接される分離ローラ43とを含む。ピックアップローラ41から、給紙ローラ42と分離ローラ43との間のニップ部にかけて用紙Sが給送される給送経路が設定されている。
【0043】
用紙カセット3が給紙位置にセットされると、リフト板381の下流側端部が上昇し、リフト板381上に積載された用紙束Tの下流側端部がピックアップローラ41に当接する。ピックアップローラ41が回転すると、リフト板381上の用紙束Tの最上位に位置する用紙Sが用紙カセット3から取り出される。用紙Sの取り出し方向は、プリンタ1の筐体2内への用紙カセット3の挿入方向A(第1方向)に沿う方向(正面壁21から背面壁22に向かう方向)である。
【0044】
その後、用紙カセット3から取り出された用紙Sは、給紙ローラ42によって下流へと給送される。用紙カセット3から複数の用紙Sが同時に取り出されたとき、分離ローラは重なって取り出された用紙Sのうち下方に位置する用紙Sを用紙カセット3へ押し戻す方向に回転する。これにより、用紙Sは1枚ずつ下流へと前記給送経路に沿って搬送される。このようにして、給紙機構40は用紙カセット3から用紙Sを二次転写部980に給送する。
【0045】
給紙機構40の下流側には、給紙機構40の上方に位置する二次転写部980に向けて延びる搬送路が形成され、その搬送路に沿って用紙Sを搬送する搬送ローラ対44が配設されている。給紙ローラ42により用紙カセット3から給送された用紙Sは、その後、搬送ローラ対44により二次転写部980まで搬送され、画像形成部93で形成されたトナー画像が用紙S上に転写される。
【0046】
給紙装置4は、さらに、用紙散乱防止部材10を含む。用紙カセット3が筐体2内に挿入されて給紙位置にセットされたとき、その衝撃によって用紙収容空間38内の用紙Sが背面壁32を越えて用紙カセット3から飛び出す場合がある。用紙散乱防止部材10は、そのような飛び出そうとする用紙Sに当接してその用紙Sを用紙カセット3に戻すための部材である。用紙散乱防止部材10により、用紙カセット3の挿入方向Aから見た下流側において、つまり、ピックアップローラ41の下方において用紙Sが散乱することが防止される。
【0047】
用紙散乱防止部材10は、起立した起立姿勢(第1姿勢)と、倒伏した倒伏姿勢(第2姿勢)との間で切り替えられることが可能に構成されている。用紙散乱防止部材10は、用紙カセット3が筐体2内に挿入されたときに起立姿勢を取り、一方、給紙機構40が給送動作を行うときに倒伏姿勢を取る。図3〜図5は、用紙散乱防止部材10の起立姿勢を示しており、図6および図7は、用紙散乱防止部材10の倒伏姿勢を示している。
【0048】
まず、図3〜図5を参照して用紙散乱防止部材10の起立姿勢について説明する。図3は、用紙カセットの背面壁側から見た給紙装置の斜視図であり、用紙散乱防止部材の起立姿勢を示す。図4は、用紙カセットの上方から見た給紙装置の斜視図であり、用紙散乱防止部材の起立姿勢を示す。図5は、図3のV−V線に沿って切断した断面図であり、用紙散乱防止部材の起立姿勢を示す。用紙散乱防止部材10は、図示の実施形態では、一対配置されており、用紙Sの幅方向、つまり用紙カセット3の挿入方向Aと直交する方向に所定の間隔をあけて互いに離間している。各用紙散乱防止部材10は、細長のブロック状の本体部11と、突出部12とを有する。
【0049】
細長本体部11は、用紙散乱防止部材10が起立姿勢を取っているとき、用紙カセット3の背面壁32に沿って延びる形状を有している。隣り合う細長本体部11は、後述する図10に示すように、下端部同士が連結部材15によって連結されている。また、連結部材15には、その両端部から、用紙カセット3の挿入方向Aと直交する方向に突出する一対の揺動軸16が形成されている。用紙散乱防止部材10は、後述する第2姿勢にあるとき、筐体2内において用紙カセット3の背面壁32側に配置されたハウジング45(図7)内に収容される。連結部材15、ひいては一対の用紙散乱防止部材10は、一対の揺動軸16を介してハウジング45に回動可能に支持されている。
【0050】
突出部12は、図5に示すように、細長本体部11の上端から背面壁32よりも上方に延び、かつ背面壁32を越えて用紙収容空間38の上方に突出する部分である。突出部12は、背面壁32を越えて用紙カセット3から飛び出そうとする用紙Sに当接する規制面18を有する。規制面18は、第1面18aと、第1面18aから連続する第2面18bとからなる。第1面18aは、背面壁32を越えつつ斜め上方(図5では左斜め上方)に延びる斜面状の面である。第2面18bは、第1面18aの上縁から用紙収容空間38上を略水平方向に延びる面である。規制面18の第1面18aおよび第2面18bは、飛び出そうとする用紙Sに当接してその用紙Sを用紙カセット3に戻す。上述から明らかなように、起立姿勢とは、各用紙散乱防止部材10の細長本体部11が背面壁32に沿って起立し、突出部12が背面壁32を越えて用紙収容空間38の上方に位置した状態のことである。
【0051】
次に、図6および図7を参照して用紙散乱防止部材10の倒伏姿勢について説明する。一方の用紙散乱防止部材10の細長本体部11には、起立姿勢のときに背面壁32と対向する面とは反対側の面においてフック13が形成されている。フック13には、ばね部材14(付勢部材)の一端が係止されている。ばね部材14の他端はハウジング45の適所に係止されている。
【0052】
ばね部材14は、細長本体部11を付勢して下方に引っ張るように位置設定されている。そのため、一対の用紙散乱防止部材10は、揺動軸16(図3および図10)の軸回りに図6では時計回り方向に回動する。この回動動作により、各用紙散乱防止部材10の突出部12(つまり、規制面18)は背面壁32の上方から退避する。また、突出部12は給紙機構40の前記給送経路から外れるように退避する。細長本体部11が回動して突出部12が退避した用紙散乱防止部材10は、図7に示すように、ハウジング45に形成された凹部46内に収納される。
【0053】
上述から明らかなように、倒伏姿勢とは、突出部12が背面壁32の上方から退避した状態のことであり、ばね部材14は用紙散乱防止部材10が常に倒伏姿勢を取るように用紙散乱防止部材10を付勢している。
【0054】
本実施形態では、用紙散乱防止部材10の姿勢を起立姿勢と倒伏姿勢との間で切り替えるために切替部材を用いている。まず、切替部材により、用紙カセット3が筐体2内に挿入されたときに用紙散乱防止部材10の姿勢を倒伏姿勢から起立姿勢に切り替える構成について、図5に加え、図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、用紙カセット3が筐体2内に挿入され、用紙散乱防止部材10が起立姿勢を取る直前の状態を示している。図9は、用紙散乱防止部材10および切替部材の側面図であり、用紙散乱防止部材10が起立姿勢を取った状態を示している。図10は、用紙散乱防止部材10および切替部材の斜視図であり、用紙散乱防止部材10が起立姿勢を取った状態を示している。
【0055】
切替部材は、第1回動部材50と、上述したばね部材14とから構成されている。第1回動部材50は、用紙散乱防止部材10を、図6に示す状態から揺動軸16の軸回りに図5および図8では反時計回り方向に回動させることで、用紙散乱防止部材10の姿勢を倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えることが可能に構成されている。ばね部材14は、上述したように、用紙散乱防止部材10を揺動軸16の軸回りに時計回り方向に、つまり第1回動部材50とは反対の方向に回動させて、用紙散乱防止部材10が常に倒伏姿勢を取るように付勢力を作用させている。そのため、第1回動部材50は、ばね部材14の付勢力に抗して用紙散乱防止部材10を回動させる必要がある。
【0056】
まず、第1回動部材50の構成について説明する。第1回動部材50は、用紙カセット3の背面壁32の外面側に配置されると共に、その外面側において一対の用紙散乱防止部材10の間に位置するように配置された部材である。第1回動部材50は、回動部材本体51と、回動片52(第2回動部材)とを含む。
【0057】
回動部材本体51は、図10に示すように、用紙カセット3の挿入方向Aと直交する方向に隣り合う一対の側壁56と、それらの側壁56を連結する連結壁58と、第1回動軸53とを有する。
【0058】
第1回動軸53は、両側壁56を貫通して用紙カセット3の挿入方向Aと直交する方向に背面壁32に沿って延びる軸であり、回動部材本体51を回動可能としている。第1回動軸53の設置位置は、回動部材本体51が自重で図5および図8では時計回り方向に回動するように設定されている。
【0059】
また、回動部材本体51は、第1回動軸53を挟んで一端部および他端部を有する。前記一端部は、背面壁32の下部に形成された貫通孔32aを通って用紙カセット3内に延在する部分であって、規制部55として構成されている。規制部55は、回動部材本体51が自重で時計回り方向に回動しないように規制する部分であって、リフト板381の先端部381aと係合可能な形状を有している。規制部55およびリフト板381の先端部381aは共に、フック形状に設定されている。リフト板381は、用紙カセット3が筐体2内に挿入されるときは下降位置に設定され、先端部381aが規制部55と係合した状態にある。この状態では、規制部55は先端部381aによって上方から押圧されている。そのため、回動部材本体51の時計回りの回動が規制部55によって規制されている。
【0060】
一方、リフト板381が上昇位置に設定されたとき、先端部381aは規制部55から離間し、先端部381aと規制部55との係合状態が解消される。その状態では、規制部55は回動部材本体51の時計回りの回動動作を許容する。なお、規制部55やリフト板381の先端部381aの形状は、フック形状に限定されず、先端部381aが規制部55を上方から押圧することができる形状であればよい。
【0061】
回動部材本体51の前記他端部は、用紙散乱防止部材10に当接することが可能な当接部として作用する。そして、本実施形態では、当接部は回動片52により構成されている。図10に示すように、回動部材本体51の上部には、一対の側壁56の間に開口が形成されており、その開口に回動片52が配置されている。
【0062】
回動片52は、両側壁56を貫通して第1回動軸53と平行に延びる第2回動軸54を有し、第2回動軸54の軸回りに回動部材本体51に対して回動可能に支持されている。回動部材本体51の連結壁58における背面壁32に向く部分とは反対側の部分には、図10に示すように、前記開口に突出する規制壁57が形成されている。回動片52は、図5に示すように、時計回りの回動動作が連結壁58によって規制され、反時計回りの回動動作が規制壁57によって規制されている。
【0063】
回動片52の上端部は、前記開口から上方に突出しており、その上面は、用紙散乱防止部材10と当接する第1当接面59として構成されている。一方、用紙散乱防止部材10は第1当接面59と当接することが可能な第2当接面17を有する。第2当接面17は、実際には、一対の用紙散乱防止部材10を連結する連結部材15上に設定されている。第2当接面17は、連結部材15の底面における一方の用紙散乱防止部材10の近傍位置に設定されている。
【0064】
次に、上記構成の第1回動部材50によって用紙散乱防止部材10の姿勢が倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えられる手順について説明する。まず、図8に示すように、用紙カセット3の挿入動作に伴って第1回動部材50がハウジング45(図7)内で倒伏姿勢にある用紙散乱防止部材10に接近すると、第1回動部材50の回動片52の第1当接面59が用紙散乱防止部材10の第2当接面17の縁部(図8では右縁部)に当接する。第1当接面59が第2当接面17に当接したとき、その衝撃によって回動片52は反時計回りに回動しようとするが、その回動動作は第1回動部材50の規制壁57によって規制される。そして、第1回動部材50がさらに進入するにつれて、回動片52は、ばね部材14の付勢力に抗しつつ、第1当接面59を介して第2当接面17を押圧する。そのため、用紙散乱防止部材10は、押し上げられつつ、反時計回りの方向に回動し始める。
【0065】
回動片52がばね部材14の付勢力に抗しつつ第1当接面59から第2当接面17に当接圧をさらに伝達し続けると、用紙散乱防止部材10は反時計回りの方向にさらに回動して、第2当接面17が図5に示すように第1当接面59に重なる。これにより、用紙散乱防止部材10は倒伏姿勢から起立姿勢となる。
【0066】
付勢部材は、図9に示すように、用紙散乱防止部材10が起立姿勢にあるとき、第2当接面17から第1当接面59に向けて荷重Fがかかるように用紙散乱防止部材10に付勢力を作用させている。これにより、用紙散乱防止部材10を起立姿勢に保持することが容易となる。
【0067】
そして、本実施形態では、用紙散乱防止部材10を起立姿勢に確実に保持するために、第1当接面59に対して荷重Fがかかる位置を、回動片52の第2回動軸54に対して上下方向に延びる垂線Lから見て用紙散乱防止部材10の揺動軸16側に設定している。そのように荷重作用位置を設定することで、回動片52が時計回り方向に回動することを防止できる。また、荷重位置を上記のように設定することで、回動片52は荷重Fによって反時計回りの方向に回動しようとするが、その回動動作は第1回動部材50の規制壁57によって規制される。これにより、用紙散乱防止部材10を起立姿勢に確実に保持できる。なお、第1当接面59に対して荷重Fがかかる位置を、垂線Lから見て揺動軸16とは反対の側に設定した場合、回動片52は荷重Fによって時計回り方向に回動しやすくなってしまい、用紙散乱防止部材10を起立姿勢に保持することが難しくなる。
【0068】
次に、用紙散乱防止部材10が起立姿勢から倒伏姿勢に切り替えられる手順について、図6に加え、図11および図12を参照しながら説明する。図11は、用紙散乱防止部材10および第1回動部材50の側面図であり、用紙散乱防止部材10が倒伏姿勢を取った状態を示している。図12は、用紙散乱防止部材10および第1回動部材50の斜視図であり、用紙散乱防止部材10が倒伏姿勢を取った状態を示している。なお、図12では、ばね部材14は省略している。
【0069】
給紙機構40が用紙Sを用紙カセット3から取り出して前記給送経路に沿って給送する前に、用紙カセット3のリフト板381は前記昇降機構によって上昇位置に設定される。リフト板381が上昇位置に設定されると、リフト板381の先端部381aは第1回動部材50の規制部55から上方に離間するので、先端部381aと規制部55との係合状態が解消される。これにより、規制部55は、第1回動部材50の回動部材本体51が自重によって時計回り方向に回動することを許容する。これに伴い、回動片52も時計回り方向に回動するので、回動片52の第1当接面59は、用紙散乱防止部材10の第2当接面17から離間して当接状態が解消される。そのため、用紙散乱防止部材10は、ばね部材14の付勢力によって時計回り方向に回動されて倒伏姿勢を取る。倒伏姿勢の用紙散乱防止部材10は、ハウジング45(図7)の凹部46内に収容された状態となる。
【0070】
用紙散乱防止部材10が倒伏姿勢を取ったとき、第1回動部材50は上述のように自重で時計回り方向に回動するため、第1当接面59は、該第1当接面59と第2当接面17との当接位置Bから見て挿入方向Aの下流側に移動する。一方、用紙散乱防止部材10はばね部材14によって時計回り方向に回動するため、第2当接面17は、当接位置Bから見て挿入方向Aの上流側に移動する。
【0071】
そのため、用紙カセット3を筐体2から挿入方向Aとは反対の方向に引き出すとき、挿入方向Aから見た第1当接面59の上流縁部(図11では右縁部)が、連結部材15における第2当接面17を規定する部分に当接する。しかしながら、本実施形態では、回動片52は、時計回り方向に回動することができるので、第1当接面59が前記部分に作用させる当接圧を時計回り方向に回動しつつ軽減させることができる。これにより、用紙カセット3の筐体2からの引き出しが円滑に行われる。
【0072】
以上説明した本実施形態に係る給紙装置4によれば、用紙カセット3が筐体2内に挿入されたとき、用紙散乱防止部材10は、規制面18が背面壁32よりも高い位置に突出する第1姿勢を取るので、規制面18は、用紙カセット3の挿入時の衝撃によって背面壁32を越えて用紙カセット3から飛び出そうとする用紙Sに当接して該用紙Sを用紙カセット3に戻すことができる。これにより、用紙Sの散乱が防止され、その結果、給紙機構40による給送作を円滑に行うことが可能である。また、給紙機構40が用紙Sを給送するとき、用紙散乱防止部材10は、規制面18が背面壁32の上方から退避する第2姿勢を取るので、給紙機構40の用紙給送動作を妨げない。
【0073】
また、給紙装置4では、第1回動部材50によって用紙散乱防止部材10を回動させてその姿勢を倒伏姿勢から起立姿勢に切り替えると共に、ばね部材14によって用紙散乱防止部材10を回動させてその姿勢を起立姿勢から倒伏姿勢に切り替えているので、用紙散乱防止部材10の姿勢切替のために、モータ等を用いる駆動機構を用いていない。その分、給紙装置4の構成を簡単化できる。
【0074】
さらに、給紙装置4では、リフト板381の昇降動作、つまり、用紙カセット3の挿入動作および給紙機構40による給送動作に合わせて、用紙散乱防止部材10の姿勢の切り替えを行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置
2 筐体
3 用紙カセット
4 給紙装置
10 用紙散乱防止部材
14 ばね部材(付勢部材)
15 連結部材
16 揺動軸
17 第2当接面
18 規制面
32 背面壁(下流側壁部)
40 給紙機構
45 ハウジング
50 第1回動部材
51 回動部材本体
52 回動片(第2回動部材)
53 第1回動軸
54 第2回動軸
55 規制部
59 第1当接面
A 挿入方向(第1方向)
S 用紙
T 用紙束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
用紙を収容する用紙カセットであって、第1方向から前記筐体内に挿入可能であり、前記第1方向から見て下流側に位置する下流側壁部を有する用紙カセットと、
前記用紙カセットから前記用紙を前記第1方向に沿って取り出して給送する給紙機構と、
前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されたときに前記下流側壁部を越えて前記用紙カセットから飛び出そうとする用紙に当接して該用紙を前記用紙カセットに戻すための規制面を有する用紙散乱防止部材と、
を備え、
前記用紙散乱防止部材は、前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されたとき、前記規制面が前記下流側壁部よりも高い位置に突出する第1姿勢を取り、前記給紙機構が前記用紙を給送するとき、前記規制面が前記下流側壁部の上方から退避する第2姿勢を取る給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給紙装置において、さらに、前記用紙散乱防止部材を前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で切り替える切替部材を備え、
前記用紙散乱防止部材は揺動軸を有し、
前記切替部材は、前記用紙散乱防止部材を前記揺動軸の軸回りに回動させることで、前記用紙散乱防止部材の姿勢を前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で切り替える給紙装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給紙装置において、前記用紙散乱防止部材は、前記筐体内に配置されており、
前記切替部材は、前記用紙カセットに配置された第1回動部材と、前記筐体内に配置された付勢部材とを有し、
前記第1回動部材は、第1回動軸と、前記第1回動軸を挟んで一端部および他端部とを有し、前記第1回動軸の軸回りに回動可能な部材であって、回動動作を規制することが可能な規制部を前記一端部において有すると共に、前記用紙散乱防止部材に当接することが可能な当接部を前記他端部において有し、
前記付勢部材は、前記用紙散乱防止部材が常に前記第2姿勢を取るように前記用紙散乱防止部材を付勢し、
前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されたとき、前記当接部は、前記規制部が回動動作を規制した状態で前記用紙散乱防止部材に当接して、前記付勢部材の付勢力に抗しつつ前記用紙散乱防止部材を押圧することにより、該用紙散乱防止部材を前記第2姿勢から前記第1姿勢に切り替え、
一方、前記給紙機構が前記用紙を給送するとき、前記規制部は、回動動作を許容して前記当接部と前記用紙散乱防止部材との間の当接状態を解消することにより、前記付勢部材の付勢力によって前記用紙散乱防止部材を前記第1姿勢から前記第2姿勢に切り替える給紙装置。
【請求項4】
請求項3に記載の給紙装置において、前記用紙カセットは、前記用紙が載置される昇降可能なリフト板を有し、
前記リフト板は、前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されるときは下降位置に設定されている一方、前記給紙機構が前記用紙を給送するときは上昇位置に設定され、
前記切替部材の前記規制部は、前記リフト板と係合することが可能な形状を有する部分であって、前記用紙カセットが前記筐体内に挿入されるとき、前記下降位置に設定された前記リフト板と係合した状態を維持することで、前記第1回動部材の回動動作を規制する一方、前記給紙機構が前記用紙を給送するとき、前記上昇位置に設定された前記リフト板と係合状態を解消することで、前記第1回動部材の回動動作を許容する給紙装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の給紙装置において、前記当接部は、前記用紙散乱防止部材に当接する第1当接面を有し、
前記用紙散乱防止部材は、前記第1当接面に当接する第2当接面を有し、
前記付勢部材は、前記第1当接面と前記第2当接面とが当接した状態において前記第2当接面から前記第1当接面に向けて荷重がかかるように付勢力を作用させる給紙装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の給紙装置において、前記当接部は、第2回動軸と、前記用紙散乱防止部材に当接する第1当接面とを有し、前記第2回動軸の軸回りに前記第1回動部材に対して回動可能に支持されている第2回動部材から構成されており、
前記用紙散乱防止部材は、前記第1当接面に当接する第2当接面を有し、
前記用紙散乱防止部材が前記第2姿勢に切り替えられたとき、前記第1回動部材は、前記第1当接面が前記第1当接面と前記第2当接面との当接位置から見て前記第1方向の下流側に移動するように回動し、一方、前記用紙散乱防止部材は、前記第2当接面が前記当接位置から見て前記第1方向の上流側に移動するように回動する給紙装置。
【請求項7】
トナー像を用紙上に形成する画像形成部と、
前記画像形成部に前記用紙を給送する給紙装置と、
を備え、
前記給紙装置として、請求項1〜6のいずれか一項に記載の給紙装置が用いられている画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−201682(P2011−201682A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72153(P2010−72153)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】