給紙装置および画像形成装置
【課題】簡素な構成で、環境温度にかかわらず用紙などの記録シートを良好に給紙することができる、給紙装置およびこの給紙装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】搬送ローラ14の周面には、分離パッド15の当接面52がコイルばね31の付勢力によって圧接されている。給紙トレイから送り出される用紙は、搬送ローラ14と分離パッド15との間に受け入れられて捌かれ、1枚の用紙のみがそれらの間を通過する。分離パッド15には、バイメタルの一端部が接続されている。バイメタルの他端部は、その位置が変わらないように固定的に配置されている。
【解決手段】搬送ローラ14の周面には、分離パッド15の当接面52がコイルばね31の付勢力によって圧接されている。給紙トレイから送り出される用紙は、搬送ローラ14と分離パッド15との間に受け入れられて捌かれ、1枚の用紙のみがそれらの間を通過する。分離パッド15には、バイメタルの一端部が接続されている。バイメタルの他端部は、その位置が変わらないように固定的に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置およびこの給紙装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置には、給紙装置が備えられており、この給紙装置から画像形成部に向けて用紙が1枚ずつ送り出され、画像形成部により用紙に画像が形成される。
給紙装置は、用紙が積載される給紙トレイ、給紙トレイから用紙を送り出す給紙ローラおよび給紙ローラに送り出された用紙を分離して1枚ずつ搬送するための分離部などを備えている。分離部は、互いに接触して配置された搬送ローラおよび分離パッドを有している。給紙ローラによって送り出された用紙は、搬送ローラと分離パッドとの間に案内されて、これらの間を通過する際に1枚ずつに捌かれる。
【0003】
このような給紙装置では、環境温度によって用紙の分離性能が変化する。そのため、高温環境下で、用紙を1枚ずつに上手く捌くことができずに、複数枚の用紙を重なった状態で搬送する重送を生じたり、低温環境下で、給紙ローラが空転し、用紙が搬送されない空送を生じたりすることがある。
これらの重送および空送を防止するために、環境温度を検出する温度センサを設け、その温度センサにより検出された環境温度に応じて、分離パッドの角度を変更する構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。たとえば、分離パッドを用紙と平行に近づく方向に寝かせることにより、用紙が分離パッドから受ける摩擦力が低減されるので、給紙ローラと用紙との摩擦係数が低くても、給紙ローラの空転を防止することができ、用紙の空送を防止することができる。また、分離パッドを用紙と垂直に近づく方向に立てることにより、用紙が分離パッドから受ける摩擦力が増加されるので、用紙の重送を防止することができる。その結果、環境温度の変化にかかわらず、用紙を1枚ずつ搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−247467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案に係る給紙装置では、環境温度を検出するための温度センサが必要である。また、分離パッドの角度を変更するために、モータやギヤを含む駆動機構を設ける必要がある。そのため、給紙装置の構成が複雑化し、製造コストが高くつくという問題があった。
そこで、本発明の目的は、簡素な構成で、環境温度にかかわらず用紙などの記録シートを良好に給紙することができる、給紙装置およびこの給紙装置を備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、給紙装置であって、複数枚の記録シートを載置可能な給紙トレイと、前記給紙トレイから送り出される記録シートを搬送するための搬送ローラと、前記搬送ローラの周面に当接する当接面を有し、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間に記録シートを受け入れて、当該記録シートを捌いて、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間を1枚の記録シートを通過させるための分離パッドと、前記分離パッドを前記搬送ローラに向けて付勢するための付勢部材と、一端部が前記分離パッドに接続され、他端部が固定的に配置されて、環境温度が高くなるにつれて、前記当接面と前記給紙トレイから送り出された記録シートの先端縁が前記当接面に当接したときに前記当接面に付与する力とのなす内角が大きくなるように、前記分離パッドの姿勢を変更するバイメタルとを含むことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記バイメタルは、熱膨張率が異なる2種の金属板を貼り合わせて構成され、渦巻状に巻回されており、前記バイメタルの外側の端部が固定的に配置され、前記バイメタルの内側の端部が前記分離パッドに接続されていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸線を中心に揺動可能に設けられ、前記付勢部材は、前記分離パッドに対する付勢力の入力点を通り、その付勢方向に延びる直線と前記揺動軸線とが交差するように設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸を有し、前記揺動軸により揺動可能に支持され、前記バイメタルの前記一端部は、前記揺動軸に接続されていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、画像形成装置であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の給紙装置と、前記給紙装置により供給される記録シートに画像を形成するための画像形成部とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、搬送ローラの周面には、分離パッドの当接面が付勢部材の付勢力によって圧接されている。給紙トレイから送り出される記録シートは、搬送ローラと分離パッドとの間に受け入れられて捌かれ、1枚の記録シートのみがそれらの間を通過する。分離パッドには、バイメタルの一端部が接続されている。バイメタルの他端部は、その位置が変わらないように固定的に配置されている。
【0010】
バイメタルは、環境温度の変化に伴って変形する。バイメタルの他端部が固定的に配置されているので、バイメタルの変形に伴い、バイメタルの一端部が移動する。環境温度が高くなると、バイメタルの一端部の移動に伴い、当接面と給紙トレイから送り出された記録シートの先端縁が当接面に当接したときに当接面に付与する力とのなす内角(以下、単に「分離角度」という。)が大きくなるように分離パッドの姿勢が変更される。これにより、記録シートが当接面から受ける垂直抗力が大きくなる。その結果、記録シートが当接面から受ける摩擦力が大きくなる。よって、環境温度の上昇に伴い、記録シート同士に生じる摩擦係数が大きくなっても、記録シートを1枚ずつ分離させることができ、記録シートの重送を防止することができる。
【0011】
一方、環境温度が低くなると、バイメタルの変形に伴って、分離角度が小さくなるように分離パッドの姿勢が変更される。これにより、記録シートが当接面から受ける垂直抗力が小さくなる。その結果、記録シートが当接面から受ける摩擦力が小さくなる。よって、環境温度の低下に伴い、給紙トレイから記録シートを送り出す力が小さくなっても、搬送ローラと分離パッドとの間を記録シートを確実に通過させることができ、記録シートの空送を防止することができる。
【0012】
さらに、分離パッドの分離角度の変更は、バイメタルの変形によって達成される。したがって、環境温度を検出するための温度センサや、環境温度に応じて分離パッドの角度を変更するための駆動機構などを設ける必要がない。その結果、簡素な構成で、環境温度にかかわらず記録シートを良好に給紙することができる。
請求項2に記載の発明によれば、バイメタルは、熱膨張率の異なる2種の金属板を貼り合わせて構成されている。バイメタルは、渦巻状に巻き回されており、その外側の端部が固定的に配置され、内側の端部が分離パッドに接続されている。
【0013】
これにより、たとえば、渦巻の外側(径方向の外側面)部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられ、渦巻の内側(径方向の内側面)部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられた場合には、環境温度が高くなると、内側の端部(一端部)は、渦の巻きが強くなる方向に移動する。また、環境温度が低くなると、内側の端部は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。一方、渦巻の外側部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられ、渦巻の内側部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられた場合には、環境温度が高くなると、内側の端部は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。また、環境温度が低くなると、内側の端部は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。その結果、バイメタルの内側の端部の移動に伴って、分離パッドの姿勢を変更することができる。
【0014】
また、バイメタルの一端部の移動量は、一端部から他端部までの総延長に比例する。そのため、バイメタルが渦巻き状に形成されることにより、小さいスペースで一端部の移動量を大きくすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、分離パッドは、搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸線を中心に揺動可能に設けられている。付勢部材は、分離パッドに対する付勢力の入力点から付勢方向に延びる直線と揺動軸線とが交差するように設けられている。これにより、分離パッドの揺動中心に付勢部材の付勢力を入力することができるので、分離パッドの姿勢にかかわらず、分離パッドを搬送ローラにほぼ一定の力で押圧させることができる。したがって、環境温度の変化により、搬送ローラに対する分離パッドの押圧力が大きくなることに起因する音鳴りを防止することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、分離パッドは、搬送ローラの回転軸線と平行な揺動軸を有しており、揺動軸を中心に揺動可能に支持されている。バイメタルの一端部は、揺動軸に接続されている。これにより、バイメタルの一端部の移動に伴って、その移動方向に揺動軸を回転させることができる。その結果、環境温度の変化に伴って、分離パッドの角度を確実に変更することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、画像形成部に向けて記録シートを1枚ずつ良好に搬送することができる。また、記録シートの重送によるジャムの発生や、記録シートの空送による画像形成ミスの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図2は、図1に示す分離部の右後側上方から見た斜視図である。
【図3】図3は、図2に示すフレームの左前側から見た斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す分離パッドの右後側上方から見た斜視図である。
【図5】図5は、フレームに対してバイメタルを固定した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、バイメタルおよび分離パッドの側面図である。
【図7】図7は、分離部の正面図である。
【図8】図8は、図7に示すコイルばねが分離パッドに入力する付勢力の方向を説明するための図解的な側面図である。
【図9A】図9Aは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図であり、環境温度が25℃の状態を示す。
【図9B】図9Bは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図であり、環境温度が40℃の状態を示す。
【図9C】図9Cは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図であり、環境温度が10℃の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
1.プリンタの全体構成
図1は、本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。
プリンタ1は、タンデム型のカラープリンタである。本体ケーシング2内には、画像を形成するための画像形成部3と、画像形成部3に記録シートの一例としての用紙Pを給紙するための給紙装置4とが設けられている。
【0019】
画像形成部3には、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色に対応して、4つのプロセスカートリッジ5が並列に配置されている。各プロセスカートリッジ5は、本体ケーシング2の上面のトップカバー6が開放された状態で、本体ケーシング2内に対して装着および離脱可能である。
各プロセスカートリッジ5は、感光ドラム7を備えている。また、各プロセスカートリッジ5内には、スコロトロン型帯電器8および現像ローラ9などが感光ドラム7の周面に対向配置されている。
【0020】
一方、本体ケーシング2内には、各色に対応した4つのLEDユニット10が各プロセスカートリッジ5に対応して設けられている。各LEDユニット10の先端部は、感光ドラム7の周面に対向配置されている。
感光ドラム7の回転に伴って、感光ドラム7の表面は、スコロトロン型帯電器8によって一様に帯電された後、LEDユニット10の先端部に設けられたLED(図示せず)によって露光される。これにより、感光ドラム7の表面には、画像データに基づく静電潜像が形成される。そして、感光ドラム7の回転に伴って、静電潜像が現像ローラ9に対向すると、静電潜像にトナーが供給され、感光ドラム7の表面にトナー像が形成される。
【0021】
また、画像形成部3には、搬送ベルト16が設けられている。搬送ベルト16は、4つの感光ドラム7に下方から対向して配置されている。各感光ドラム7に対して搬送ベルト16の上側部分を挟んで対向する各位置には、転写ローラ17が配置されている。
給紙装置4は、本体ケーシング2の底部に配置されている。給紙装置4は、給紙トレイ11、給紙ローラ12および分離部13などを備えている。
【0022】
給紙トレイ11には、複数枚の用紙Pが積層して収容される。
給紙ローラ12は、給紙トレイ11に収容された最上の用紙Pに対して上方から圧接している。
分離部13は、互いに接触して配置される搬送ローラ14および分離パッド15を備えている。分離部13については、後に詳述する。
【0023】
給紙トレイ11に収容された用紙Pは、給紙ローラ12によって分離部13へと送られる。そして、分離部13に送られた用紙Pは、搬送ローラ14と分離パッド15との間を通過する際に捌かれて、画像形成部3に1枚ずつ搬送される。
給紙装置4から搬送された用紙Pは、搬送ベルト16上に送られる。搬送ベルト16上に搬送された用紙Pは、搬送ベルト16の走行により、搬送ベルト16と各感光ドラム7との間を順次に通過する。そして、感光ドラム7の表面上のトナー像は、用紙Pと対向したときに、転写ローラ17に印加された転写バイアスによって、用紙Pに転写される。
【0024】
トナー像が転写された用紙Pは、搬送ベルト16の後方に設けられた定着部18に搬送される。定着部18では、加熱および加圧により、トナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着した用紙Pは、各種ローラにより、本体ケーシング2の上面に設けられた排紙トレイ19に排出される。
なお、以下の説明では、搬送ベルト16による用紙Pの搬送方向の上流側を前側(正面側)とし、その反対側の下流側を後側(背面側)とする。また、プリンタ1を前側から見たときを左右の基準とする。
2.分離部
図2は、図1に示す分離部の右後側上方から見た斜視図である。なお、図2では、搬送ローラ14を破線で図示している。
【0025】
分離部13は、搬送ローラ14および分離パッド15の他に、フレーム30、付勢部材の一例としてのコイルばね31およびバイメタル32を備えている。
図2に示すように、搬送ローラ14は、左右方向に延びる円柱形状に形成されている。搬送ローラ14は、その周面が分離パッド15に対して上方から当接するように配置されている。
【0026】
分離パッド15は、フレーム30に対して揺動可能に支持されている。
(1)フレーム
図3は、フレームの左前側から見た斜視図である。
図3に示すように、フレーム30は、左右一対の側壁35、後壁36および底板37を一体的に備えている。
【0027】
各側壁35は、側面視で縦長の略矩形板状に形成されている。側壁35の後端縁の上端部は、後側下方から前側上方に向けて傾斜している。
図2に示すように、後壁36は、各側壁35の後端縁を連結する略矩形状に形成されている。後壁36において、側壁35の後端縁の上端部に沿って傾斜している部分の左右方向中央部は、その上端縁から矩形状に切り欠かれている。そして、その切り欠かれた部分の左右方向両端部から前方に延びるように、側面視略三角形状のパッド支持部38が一体的に形成されている。パッド支持部38には、その前端縁から後側下方に向けて切り欠かれた形状の案内溝39が形成されている。案内溝39の後端部は、屈曲し、下方へ延びている。また、パッド支持部38には、案内溝39の後端部の下端から、下方に向けて延びるスリット40が形成されている。
【0028】
底板37は、各側壁25および後壁36の下端縁を連結する平面視略矩形状に形成されている。
また、図3に示すように、底板37上には、ベース部44が一体的に形成されている。ベース部44は、正面視略矩形のブロック形状に形成され、後壁36の左右方向中央部の前面に接触して配置されている。
【0029】
ベース部44の上端部は、その上面から矩形状に切り欠かれている。この切欠部41の底面中央部には、上方に向けて延びる略円筒状のばね支持部42が突設されている。
(2)分離パッド
図4は、分離パッドの右後側上方から見た斜視図である。
図4に示すように、分離パッド15は、パッド支持部49、パッド本体50および揺動軸51を備えている。
【0030】
パッド支持部49は、前後方向および左右方向に延びる略矩形板状に形成されている。パッド支持部49の上面の前側部分には、その後側部分よりも一段下がった凹部48が形成されている。また、パッド支持部49には、その前端縁の左右方向途中部から前側上方に延びる2つの案内リブ53が一体的に形成されている。
パッド本体50は、前後方向および左右方向に延びる矩形板状に形成され、パッド支持部49の上面の凹部48に取り付けられている。パッド本体50の上面は、図2に示すように、搬送ローラ14の周面に当接する当接面52となっている。
【0031】
搬送ローラ14と当接面52との間を通過した用紙P(図1参照)は、案内リブ43に沿って案内されながら、画像形成部3へと搬送される。
揺動軸51は、パッド支持部49の前後方向途中部を左右方向に貫通するように配置されている。具体的には、図2に示すように、揺動軸51は、パッド支持部49において、パッド本体50の当接面52と搬送ローラ14の周面とが接触した状態で、その接触位置に対して、接触方向(パッド本体50の当接面52に対して直交する方向)の延長線上の部分を左右方向に貫通している。
(3)バイメタル
図4に示すように、バイメタル32は、揺動軸51において、パッド支持部49から右方に突出した部分の左端部に連結されている。具体的には、バイメタル32は、揺動軸51の周囲に右巻き(外側から内側に向けて、時計周り方向に巻いた形状)となる渦状に巻き回されており、その内側端部54が揺動軸51に連結されている。また、バイメタル32の外側端部55は、渦の最外層から下方に屈曲されている。バイメタル32の外側端部55には、その下端部から右側に延びる被支持部56が形成されている。
【0032】
バイメタル32は、2種類の熱膨張率の異なる金属を貼り合わせて形成されている。本実施形態において、バイメタル32は、その外側(渦の外側面)に相対的に熱膨張率の高い金属(たとえば、70%Mn−Cu−Ni合金)を用い、内側(渦の内側面)に相対的に熱膨張率の低い金属(たとえば、36%Ni−Fe合金)を用いて形成されている。
図5は、フレームに対してバイメタルを固定した状態を示す斜視図である。図5において、図面の煩雑化を回避するために、分離パッド15およびコイルばね31の図示を省略している。
【0033】
図5に示すように、フレーム30のパッド支持部38に形成されたスリット40に対して、被支持部56が差し入れられることにより、バイメタル32の他端部55がフレーム30に固定される。バイメタル32の他端部55がフレーム30に固定された状態で環境温度が変化すると、バイメタル32の変形に伴って、一端部54が移動する。
(4)バイメタルの変形
図6は、バイメタルおよび分離パッドの側面図である。
【0034】
図6では、環境温度が25℃のときの分離パッド15の姿勢を実線で示す。また、環境温度が10℃のときの分離パッド15の姿勢を破線で示す。また、環境温度が40℃のときの分離パッド15の姿勢を一点鎖線で示す。
図6に示すように、環境温度が10℃のときは、バイメタル32の外側の金属が内側の金属よりも大きく収縮するので、バイメタル32の渦が大きくなるような方向に一端部54が移動する。そのため、その一端部54の移動に伴って、分離パッド15の揺動軸51が図6における反時計回り方向に回動される。その結果、環境温度が10℃のときは、環境温度が25℃のときと比較して、分離パッド15が寝る。すなわち、分離パッド15の当接面52が水平方向に近くなる。
【0035】
一方、環境温度が40℃のときは、バイメタル32の外側の金属が内側の金属よりも大きく膨張するので、バイメタル32の渦が小さくなるような方向に一端部54が移動する。そのため、その一端部54の移動に伴って、分離パッド15の揺動軸51が図6における時計回り方向に回動される。その結果、環境温度が40℃のときは、環境温度が25℃のときと比較して、分離パッド15が立つ。すなわち、分離パッド15の当接面52が鉛直方向に近くなる。
(5)コイルばね
図7は、分離部の正面図である。
【0036】
図7に示すように、分離パッド15の下面には、フレーム30のばね支持部42と上下方向に対向する位置に、下方に向けて延びる正面視略T字状の係止部47が形成されている。具体的には、係止部47は、揺動軸51と上下方向に重なる位置、つまり、分離パッド15の当接面42と搬送ローラ14の周面との接触部分と上下方向に重なる位置に形成されている。
【0037】
コイルばね31は、その下端部がフレーム30のばね支持部42に巻き回されている。そして、コイルばね31の上端部は、分離パッド15の下面に形成された係止部47に巻き回されている。
図8は、分離パッドおよびコイルばねを図解的に示す側面図である。
図8に示すように、分離パッド15において、コイルばね31の上端が接続される入力点46(係止部47)には、コイルばね31から上方へ向かう付勢力が入力される。係止部47と揺動軸51とが上下方向に重なっているので、入力点46に入力される付勢力に沿う直線Fsは、揺動軸51と直交する。すなわち、分離パッド15に対する付勢力の入力点46を通り、その付勢方向に延びる直線Fsが揺動軸51と交差するように、コイルばね31が分離パッド15に接続されている。
(6)用紙の分離
図9A,9B,9Cは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図である。図9Aは、環境温度が25℃の状態を示す。図9Bは、環境温度が40℃の状態を示す。図9Cは、環境温度が10℃の状態を示す。
(6−1)環境温度が25℃のときの摩擦力
図9Aに示すように、環境温度が25℃のとき、分離パッド15の当接面52は、水平方向に対して約30度の角度で傾斜している。
【0038】
用紙Pは、給紙ローラ12(図1参照)によって搬送ローラ14と分離パッド15(パッド本体50)の当接面52との接触部分に向けて略水平方向に送り出される。
当接面52に用紙Pの先端が当接すると、当接面52には、用紙Pから略水平方向の力F1が付与される。この力F1は、当接面52に沿う方向の水平成分Fa1と、当接面52に直交する方向の垂直成分Fb1とを含んでいる。そのため、当接面52に用紙Pの先端が当接したときに、用紙Pには、垂直成分Fb1の反力である垂直抗力Fc1が付与される。したがって、用紙Pには、この垂直抗力Fc1に起因する摩擦力が付与される。この摩擦力は、用紙P同士に生じる摩擦力よりも大きくなるように設定されている。
(6−2)環境温度が40℃のときの摩擦力
図9Bに示すように、環境温度が40℃の場合、分離パッド15は、環境温度が25℃の場合の分離パッドよりも鉛直に近づく方向に立っている。
【0039】
当接面52に用紙Pの先端が当接すると、当接面52には、用紙Pから略水平方向の力F2が付与される。この力F2は、当接面52に沿う方向の水平成分Fa2と、当接面52に直交する方向の垂直成分Fb2とを含んでいる。そのため、当接面52に用紙Pの先端が当接したときに、用紙Pには、垂直成分Fb2の反力である垂直抗力Fc2が付与される。したがって、用紙Pには、この垂直抗力Fc2に起因する摩擦力が付与される。
【0040】
垂直成分Fb2は、図9Aに示す垂直成分Fb1よりも大きい。すなわち、垂直成分Fb2の反力である垂直抗力Fc2は、図9Aに示す垂直抗力Fc1よりも大きい。よって、環境温度が25℃の場合と比較して、用紙Pに付与される摩擦力が大きくなる。
(6−3)環境温度が10℃のときの摩擦力
図9Cに示すように、環境温度が10℃の場合、分離パッド15は、環境温度が25℃の場合の分離パッドよりも水平に近づく方向に寝ている。
【0041】
当接面52に用紙Pの先端が当接すると、当接面52には、用紙Pから略水平方向の力F3が付与される。この力F3は、当接面52に沿う方向の水平成分Fa3と、当接面52に直交する方向の垂直成分Fb3とを含んでいる。そのため、当接面52に用紙Pの先端が当接したときに、用紙Pには、垂直成分Fb3の反力である垂直抗力Fc3が付与される。したがって、用紙Pには、この垂直抗力Fc3に起因する摩擦力が付与される。
【0042】
垂直成分Fb3は、図9Aに示す垂直成分Fb1よりも小さい。すなわち、垂直成分Fb3の反力である垂直抗力Fc3は、図9Aに示す垂直抗力Fc1よりも小さい。よって、環境温度が25℃の場合と比較して、用紙Pに付与される摩擦力が小さくなる。
3.作用効果
以上のように、搬送ローラ14の周面には、分離パッド15の当接面52がコイルばね31の付勢力によって圧接されている。給紙トレイ11から送り出される用紙Pは、搬送ローラ14と分離パッド15との間に受け入れられて捌かれ、1枚の用紙Pのみがそれらの間を通過する。分離パッド15には、バイメタル32の一端部54が接続されている。バイメタル32の他端部55は、その位置が変わらないように固定的に配置されている。
【0043】
バイメタル32は、環境温度の変化に伴って変形する。バイメタル32の他端部55が固定的に配置されているので、バイメタル32の変形に伴い、バイメタル32の一端部54が移動する。環境温度が高くなると、バイメタル32の一端部54の移動に伴い、当接面52と給紙トレイ11から送り出された用紙Pの先端縁が当接面52に当接したときに当接面52に付与する力F2とのなす内角(以下、単に「分離角度」という。)が大きくなるように分離パッド15の姿勢が変更される。これにより、用紙Pが当接面52から受ける垂直抗力Fc2が、環境温度が25℃のときの垂直抗力Fc1よりも大きくなる。その結果、用紙Pが当接面52から受ける摩擦力が大きくなる。よって、環境温度の上昇に伴い、用紙P同士に生じる摩擦係数が大きくなっても、用紙Pを1枚ずつ分離させることができ、用紙Pの重送を防止することができる。
【0044】
一方、環境温度が低くなると、バイメタル32の変形に伴って、分離角度が小さくなるように分離パッド15の姿勢が変更される。これにより、用紙Pが当接面52から受ける垂直抗力Fc3が、環境温度が25℃のときの垂直抗力Fc1よりも小さくなる。その結果、用紙Pが当接面52から受ける摩擦力が小さくなる。よって、環境温度の低下に伴い、給紙トレイ11から用紙Pを送り出す力が小さくなっても、搬送ローラ14と分離パッド15との間を用紙Pを確実に通過させることができ、用紙Pの空送を防止することができる。
【0045】
さらに、分離パッド15の分離角度の変更は、バイメタル32の変形によって達成される。したがって、環境温度を検出するための温度センサや、環境温度に応じて分離パッド15の角度を変更するための駆動機構などを設ける必要がない。その結果、簡素な構成で、環境温度にかかわらず用紙Pを良好に給紙することができる。
また、バイメタル32は、熱膨張率の異なる2種の金属板を貼り合わせて構成されている。バイメタル32は、渦巻状に巻き回されており、その外側端部55が固定的に配置され、内側端部54が分離パッド15に接続されている。
【0046】
渦巻の外側(径方向の外側面)部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられ、渦巻の内側(径方向の内側面)部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられているので、環境温度が高くなると、内側端部54は、渦の巻きが強くなる方向に移動する。また、環境温度が低くなると、内側端部54は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。
また、バイメタル32の内側端部54の移動量は、内側端部(一端部)54から外側端部(他端部)55までの総延長に比例する。そのため、バイメタル32が渦巻き状に形成されることにより、小さいスペースで内側端部54の移動量を大きくすることができる。
【0047】
また、分離パッド15は、搬送ローラ14の回転軸線と平行をなす揺動軸51を中心に揺動可能に設けられている。コイルばね31は、分離パッド15に対する付勢力の入力点から付勢方向に延びる直線と揺動軸線とが交差するように設けられている。これにより、分離パッド15の揺動中心にコイルばね31の付勢力を入力することができるので、分離パッド15の姿勢にかかわらず、分離パッド15を搬送ローラ14にほぼ一定の力で押圧させることができる。したがって、環境温度の変化により、搬送ローラ14に対する分離パッド15の押圧力が大きくなることに起因する音鳴りを防止することができる。
【0048】
また、バイメタル32の内側端部54は、揺動軸51に接続されている。これにより、バイメタル32の内側端部54の移動に伴って、その移動方向に揺動軸51を回転させることができる。その結果、環境温度の変化に伴って、分離パッド15の角度を確実に変更することができる。
そして、画像形成部3に向けて用紙Pを1枚ずつ良好に搬送することができるので、用紙Pの重送によるジャムの発生や、用紙Pの空送による画像形成ミスの発生を防止することができる。
4.変形例
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
【0049】
たとえば、バイメタル32は、渦巻の外側部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられ、渦巻の内側部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられるとしたが、渦巻の外側部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられ、渦巻の内側部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられてもよい。この場合、バイメタル32の一端部54と他端部55との間の途中部は、右側面視で左巻き(外側から内側に向けて、反時計周り方向に巻いた形状)に巻き回された形状に形成されていればよい。これにより、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 プリンタ
3 画像形成部
4 給紙装置
11 給紙トレイ
14 搬送ローラ
15 分離パッド
31 コイルばね
32 バイメタル
46 入力点
51 揺動軸
52 当接面
54 一端部(内側端部)
55 他端部(外側端部)
P 用紙
Fs 直線
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置およびこの給紙装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置には、給紙装置が備えられており、この給紙装置から画像形成部に向けて用紙が1枚ずつ送り出され、画像形成部により用紙に画像が形成される。
給紙装置は、用紙が積載される給紙トレイ、給紙トレイから用紙を送り出す給紙ローラおよび給紙ローラに送り出された用紙を分離して1枚ずつ搬送するための分離部などを備えている。分離部は、互いに接触して配置された搬送ローラおよび分離パッドを有している。給紙ローラによって送り出された用紙は、搬送ローラと分離パッドとの間に案内されて、これらの間を通過する際に1枚ずつに捌かれる。
【0003】
このような給紙装置では、環境温度によって用紙の分離性能が変化する。そのため、高温環境下で、用紙を1枚ずつに上手く捌くことができずに、複数枚の用紙を重なった状態で搬送する重送を生じたり、低温環境下で、給紙ローラが空転し、用紙が搬送されない空送を生じたりすることがある。
これらの重送および空送を防止するために、環境温度を検出する温度センサを設け、その温度センサにより検出された環境温度に応じて、分離パッドの角度を変更する構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。たとえば、分離パッドを用紙と平行に近づく方向に寝かせることにより、用紙が分離パッドから受ける摩擦力が低減されるので、給紙ローラと用紙との摩擦係数が低くても、給紙ローラの空転を防止することができ、用紙の空送を防止することができる。また、分離パッドを用紙と垂直に近づく方向に立てることにより、用紙が分離パッドから受ける摩擦力が増加されるので、用紙の重送を防止することができる。その結果、環境温度の変化にかかわらず、用紙を1枚ずつ搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−247467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案に係る給紙装置では、環境温度を検出するための温度センサが必要である。また、分離パッドの角度を変更するために、モータやギヤを含む駆動機構を設ける必要がある。そのため、給紙装置の構成が複雑化し、製造コストが高くつくという問題があった。
そこで、本発明の目的は、簡素な構成で、環境温度にかかわらず用紙などの記録シートを良好に給紙することができる、給紙装置およびこの給紙装置を備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、給紙装置であって、複数枚の記録シートを載置可能な給紙トレイと、前記給紙トレイから送り出される記録シートを搬送するための搬送ローラと、前記搬送ローラの周面に当接する当接面を有し、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間に記録シートを受け入れて、当該記録シートを捌いて、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間を1枚の記録シートを通過させるための分離パッドと、前記分離パッドを前記搬送ローラに向けて付勢するための付勢部材と、一端部が前記分離パッドに接続され、他端部が固定的に配置されて、環境温度が高くなるにつれて、前記当接面と前記給紙トレイから送り出された記録シートの先端縁が前記当接面に当接したときに前記当接面に付与する力とのなす内角が大きくなるように、前記分離パッドの姿勢を変更するバイメタルとを含むことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記バイメタルは、熱膨張率が異なる2種の金属板を貼り合わせて構成され、渦巻状に巻回されており、前記バイメタルの外側の端部が固定的に配置され、前記バイメタルの内側の端部が前記分離パッドに接続されていることを特徴としている。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸線を中心に揺動可能に設けられ、前記付勢部材は、前記分離パッドに対する付勢力の入力点を通り、その付勢方向に延びる直線と前記揺動軸線とが交差するように設けられていることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸を有し、前記揺動軸により揺動可能に支持され、前記バイメタルの前記一端部は、前記揺動軸に接続されていることを特徴としている。
請求項5に記載の発明は、画像形成装置であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の給紙装置と、前記給紙装置により供給される記録シートに画像を形成するための画像形成部とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、搬送ローラの周面には、分離パッドの当接面が付勢部材の付勢力によって圧接されている。給紙トレイから送り出される記録シートは、搬送ローラと分離パッドとの間に受け入れられて捌かれ、1枚の記録シートのみがそれらの間を通過する。分離パッドには、バイメタルの一端部が接続されている。バイメタルの他端部は、その位置が変わらないように固定的に配置されている。
【0010】
バイメタルは、環境温度の変化に伴って変形する。バイメタルの他端部が固定的に配置されているので、バイメタルの変形に伴い、バイメタルの一端部が移動する。環境温度が高くなると、バイメタルの一端部の移動に伴い、当接面と給紙トレイから送り出された記録シートの先端縁が当接面に当接したときに当接面に付与する力とのなす内角(以下、単に「分離角度」という。)が大きくなるように分離パッドの姿勢が変更される。これにより、記録シートが当接面から受ける垂直抗力が大きくなる。その結果、記録シートが当接面から受ける摩擦力が大きくなる。よって、環境温度の上昇に伴い、記録シート同士に生じる摩擦係数が大きくなっても、記録シートを1枚ずつ分離させることができ、記録シートの重送を防止することができる。
【0011】
一方、環境温度が低くなると、バイメタルの変形に伴って、分離角度が小さくなるように分離パッドの姿勢が変更される。これにより、記録シートが当接面から受ける垂直抗力が小さくなる。その結果、記録シートが当接面から受ける摩擦力が小さくなる。よって、環境温度の低下に伴い、給紙トレイから記録シートを送り出す力が小さくなっても、搬送ローラと分離パッドとの間を記録シートを確実に通過させることができ、記録シートの空送を防止することができる。
【0012】
さらに、分離パッドの分離角度の変更は、バイメタルの変形によって達成される。したがって、環境温度を検出するための温度センサや、環境温度に応じて分離パッドの角度を変更するための駆動機構などを設ける必要がない。その結果、簡素な構成で、環境温度にかかわらず記録シートを良好に給紙することができる。
請求項2に記載の発明によれば、バイメタルは、熱膨張率の異なる2種の金属板を貼り合わせて構成されている。バイメタルは、渦巻状に巻き回されており、その外側の端部が固定的に配置され、内側の端部が分離パッドに接続されている。
【0013】
これにより、たとえば、渦巻の外側(径方向の外側面)部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられ、渦巻の内側(径方向の内側面)部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられた場合には、環境温度が高くなると、内側の端部(一端部)は、渦の巻きが強くなる方向に移動する。また、環境温度が低くなると、内側の端部は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。一方、渦巻の外側部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられ、渦巻の内側部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられた場合には、環境温度が高くなると、内側の端部は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。また、環境温度が低くなると、内側の端部は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。その結果、バイメタルの内側の端部の移動に伴って、分離パッドの姿勢を変更することができる。
【0014】
また、バイメタルの一端部の移動量は、一端部から他端部までの総延長に比例する。そのため、バイメタルが渦巻き状に形成されることにより、小さいスペースで一端部の移動量を大きくすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、分離パッドは、搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸線を中心に揺動可能に設けられている。付勢部材は、分離パッドに対する付勢力の入力点から付勢方向に延びる直線と揺動軸線とが交差するように設けられている。これにより、分離パッドの揺動中心に付勢部材の付勢力を入力することができるので、分離パッドの姿勢にかかわらず、分離パッドを搬送ローラにほぼ一定の力で押圧させることができる。したがって、環境温度の変化により、搬送ローラに対する分離パッドの押圧力が大きくなることに起因する音鳴りを防止することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、分離パッドは、搬送ローラの回転軸線と平行な揺動軸を有しており、揺動軸を中心に揺動可能に支持されている。バイメタルの一端部は、揺動軸に接続されている。これにより、バイメタルの一端部の移動に伴って、その移動方向に揺動軸を回転させることができる。その結果、環境温度の変化に伴って、分離パッドの角度を確実に変更することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、画像形成部に向けて記録シートを1枚ずつ良好に搬送することができる。また、記録シートの重送によるジャムの発生や、記録シートの空送による画像形成ミスの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図2は、図1に示す分離部の右後側上方から見た斜視図である。
【図3】図3は、図2に示すフレームの左前側から見た斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す分離パッドの右後側上方から見た斜視図である。
【図5】図5は、フレームに対してバイメタルを固定した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、バイメタルおよび分離パッドの側面図である。
【図7】図7は、分離部の正面図である。
【図8】図8は、図7に示すコイルばねが分離パッドに入力する付勢力の方向を説明するための図解的な側面図である。
【図9A】図9Aは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図であり、環境温度が25℃の状態を示す。
【図9B】図9Bは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図であり、環境温度が40℃の状態を示す。
【図9C】図9Cは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図であり、環境温度が10℃の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
1.プリンタの全体構成
図1は、本発明の画像形成装置の一例としてのプリンタの一実施形態を示す側断面図である。
プリンタ1は、タンデム型のカラープリンタである。本体ケーシング2内には、画像を形成するための画像形成部3と、画像形成部3に記録シートの一例としての用紙Pを給紙するための給紙装置4とが設けられている。
【0019】
画像形成部3には、ブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色に対応して、4つのプロセスカートリッジ5が並列に配置されている。各プロセスカートリッジ5は、本体ケーシング2の上面のトップカバー6が開放された状態で、本体ケーシング2内に対して装着および離脱可能である。
各プロセスカートリッジ5は、感光ドラム7を備えている。また、各プロセスカートリッジ5内には、スコロトロン型帯電器8および現像ローラ9などが感光ドラム7の周面に対向配置されている。
【0020】
一方、本体ケーシング2内には、各色に対応した4つのLEDユニット10が各プロセスカートリッジ5に対応して設けられている。各LEDユニット10の先端部は、感光ドラム7の周面に対向配置されている。
感光ドラム7の回転に伴って、感光ドラム7の表面は、スコロトロン型帯電器8によって一様に帯電された後、LEDユニット10の先端部に設けられたLED(図示せず)によって露光される。これにより、感光ドラム7の表面には、画像データに基づく静電潜像が形成される。そして、感光ドラム7の回転に伴って、静電潜像が現像ローラ9に対向すると、静電潜像にトナーが供給され、感光ドラム7の表面にトナー像が形成される。
【0021】
また、画像形成部3には、搬送ベルト16が設けられている。搬送ベルト16は、4つの感光ドラム7に下方から対向して配置されている。各感光ドラム7に対して搬送ベルト16の上側部分を挟んで対向する各位置には、転写ローラ17が配置されている。
給紙装置4は、本体ケーシング2の底部に配置されている。給紙装置4は、給紙トレイ11、給紙ローラ12および分離部13などを備えている。
【0022】
給紙トレイ11には、複数枚の用紙Pが積層して収容される。
給紙ローラ12は、給紙トレイ11に収容された最上の用紙Pに対して上方から圧接している。
分離部13は、互いに接触して配置される搬送ローラ14および分離パッド15を備えている。分離部13については、後に詳述する。
【0023】
給紙トレイ11に収容された用紙Pは、給紙ローラ12によって分離部13へと送られる。そして、分離部13に送られた用紙Pは、搬送ローラ14と分離パッド15との間を通過する際に捌かれて、画像形成部3に1枚ずつ搬送される。
給紙装置4から搬送された用紙Pは、搬送ベルト16上に送られる。搬送ベルト16上に搬送された用紙Pは、搬送ベルト16の走行により、搬送ベルト16と各感光ドラム7との間を順次に通過する。そして、感光ドラム7の表面上のトナー像は、用紙Pと対向したときに、転写ローラ17に印加された転写バイアスによって、用紙Pに転写される。
【0024】
トナー像が転写された用紙Pは、搬送ベルト16の後方に設けられた定着部18に搬送される。定着部18では、加熱および加圧により、トナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着した用紙Pは、各種ローラにより、本体ケーシング2の上面に設けられた排紙トレイ19に排出される。
なお、以下の説明では、搬送ベルト16による用紙Pの搬送方向の上流側を前側(正面側)とし、その反対側の下流側を後側(背面側)とする。また、プリンタ1を前側から見たときを左右の基準とする。
2.分離部
図2は、図1に示す分離部の右後側上方から見た斜視図である。なお、図2では、搬送ローラ14を破線で図示している。
【0025】
分離部13は、搬送ローラ14および分離パッド15の他に、フレーム30、付勢部材の一例としてのコイルばね31およびバイメタル32を備えている。
図2に示すように、搬送ローラ14は、左右方向に延びる円柱形状に形成されている。搬送ローラ14は、その周面が分離パッド15に対して上方から当接するように配置されている。
【0026】
分離パッド15は、フレーム30に対して揺動可能に支持されている。
(1)フレーム
図3は、フレームの左前側から見た斜視図である。
図3に示すように、フレーム30は、左右一対の側壁35、後壁36および底板37を一体的に備えている。
【0027】
各側壁35は、側面視で縦長の略矩形板状に形成されている。側壁35の後端縁の上端部は、後側下方から前側上方に向けて傾斜している。
図2に示すように、後壁36は、各側壁35の後端縁を連結する略矩形状に形成されている。後壁36において、側壁35の後端縁の上端部に沿って傾斜している部分の左右方向中央部は、その上端縁から矩形状に切り欠かれている。そして、その切り欠かれた部分の左右方向両端部から前方に延びるように、側面視略三角形状のパッド支持部38が一体的に形成されている。パッド支持部38には、その前端縁から後側下方に向けて切り欠かれた形状の案内溝39が形成されている。案内溝39の後端部は、屈曲し、下方へ延びている。また、パッド支持部38には、案内溝39の後端部の下端から、下方に向けて延びるスリット40が形成されている。
【0028】
底板37は、各側壁25および後壁36の下端縁を連結する平面視略矩形状に形成されている。
また、図3に示すように、底板37上には、ベース部44が一体的に形成されている。ベース部44は、正面視略矩形のブロック形状に形成され、後壁36の左右方向中央部の前面に接触して配置されている。
【0029】
ベース部44の上端部は、その上面から矩形状に切り欠かれている。この切欠部41の底面中央部には、上方に向けて延びる略円筒状のばね支持部42が突設されている。
(2)分離パッド
図4は、分離パッドの右後側上方から見た斜視図である。
図4に示すように、分離パッド15は、パッド支持部49、パッド本体50および揺動軸51を備えている。
【0030】
パッド支持部49は、前後方向および左右方向に延びる略矩形板状に形成されている。パッド支持部49の上面の前側部分には、その後側部分よりも一段下がった凹部48が形成されている。また、パッド支持部49には、その前端縁の左右方向途中部から前側上方に延びる2つの案内リブ53が一体的に形成されている。
パッド本体50は、前後方向および左右方向に延びる矩形板状に形成され、パッド支持部49の上面の凹部48に取り付けられている。パッド本体50の上面は、図2に示すように、搬送ローラ14の周面に当接する当接面52となっている。
【0031】
搬送ローラ14と当接面52との間を通過した用紙P(図1参照)は、案内リブ43に沿って案内されながら、画像形成部3へと搬送される。
揺動軸51は、パッド支持部49の前後方向途中部を左右方向に貫通するように配置されている。具体的には、図2に示すように、揺動軸51は、パッド支持部49において、パッド本体50の当接面52と搬送ローラ14の周面とが接触した状態で、その接触位置に対して、接触方向(パッド本体50の当接面52に対して直交する方向)の延長線上の部分を左右方向に貫通している。
(3)バイメタル
図4に示すように、バイメタル32は、揺動軸51において、パッド支持部49から右方に突出した部分の左端部に連結されている。具体的には、バイメタル32は、揺動軸51の周囲に右巻き(外側から内側に向けて、時計周り方向に巻いた形状)となる渦状に巻き回されており、その内側端部54が揺動軸51に連結されている。また、バイメタル32の外側端部55は、渦の最外層から下方に屈曲されている。バイメタル32の外側端部55には、その下端部から右側に延びる被支持部56が形成されている。
【0032】
バイメタル32は、2種類の熱膨張率の異なる金属を貼り合わせて形成されている。本実施形態において、バイメタル32は、その外側(渦の外側面)に相対的に熱膨張率の高い金属(たとえば、70%Mn−Cu−Ni合金)を用い、内側(渦の内側面)に相対的に熱膨張率の低い金属(たとえば、36%Ni−Fe合金)を用いて形成されている。
図5は、フレームに対してバイメタルを固定した状態を示す斜視図である。図5において、図面の煩雑化を回避するために、分離パッド15およびコイルばね31の図示を省略している。
【0033】
図5に示すように、フレーム30のパッド支持部38に形成されたスリット40に対して、被支持部56が差し入れられることにより、バイメタル32の他端部55がフレーム30に固定される。バイメタル32の他端部55がフレーム30に固定された状態で環境温度が変化すると、バイメタル32の変形に伴って、一端部54が移動する。
(4)バイメタルの変形
図6は、バイメタルおよび分離パッドの側面図である。
【0034】
図6では、環境温度が25℃のときの分離パッド15の姿勢を実線で示す。また、環境温度が10℃のときの分離パッド15の姿勢を破線で示す。また、環境温度が40℃のときの分離パッド15の姿勢を一点鎖線で示す。
図6に示すように、環境温度が10℃のときは、バイメタル32の外側の金属が内側の金属よりも大きく収縮するので、バイメタル32の渦が大きくなるような方向に一端部54が移動する。そのため、その一端部54の移動に伴って、分離パッド15の揺動軸51が図6における反時計回り方向に回動される。その結果、環境温度が10℃のときは、環境温度が25℃のときと比較して、分離パッド15が寝る。すなわち、分離パッド15の当接面52が水平方向に近くなる。
【0035】
一方、環境温度が40℃のときは、バイメタル32の外側の金属が内側の金属よりも大きく膨張するので、バイメタル32の渦が小さくなるような方向に一端部54が移動する。そのため、その一端部54の移動に伴って、分離パッド15の揺動軸51が図6における時計回り方向に回動される。その結果、環境温度が40℃のときは、環境温度が25℃のときと比較して、分離パッド15が立つ。すなわち、分離パッド15の当接面52が鉛直方向に近くなる。
(5)コイルばね
図7は、分離部の正面図である。
【0036】
図7に示すように、分離パッド15の下面には、フレーム30のばね支持部42と上下方向に対向する位置に、下方に向けて延びる正面視略T字状の係止部47が形成されている。具体的には、係止部47は、揺動軸51と上下方向に重なる位置、つまり、分離パッド15の当接面42と搬送ローラ14の周面との接触部分と上下方向に重なる位置に形成されている。
【0037】
コイルばね31は、その下端部がフレーム30のばね支持部42に巻き回されている。そして、コイルばね31の上端部は、分離パッド15の下面に形成された係止部47に巻き回されている。
図8は、分離パッドおよびコイルばねを図解的に示す側面図である。
図8に示すように、分離パッド15において、コイルばね31の上端が接続される入力点46(係止部47)には、コイルばね31から上方へ向かう付勢力が入力される。係止部47と揺動軸51とが上下方向に重なっているので、入力点46に入力される付勢力に沿う直線Fsは、揺動軸51と直交する。すなわち、分離パッド15に対する付勢力の入力点46を通り、その付勢方向に延びる直線Fsが揺動軸51と交差するように、コイルばね31が分離パッド15に接続されている。
(6)用紙の分離
図9A,9B,9Cは、分離パッドの角度と用紙が受ける摩擦力との関係を示す模式図である。図9Aは、環境温度が25℃の状態を示す。図9Bは、環境温度が40℃の状態を示す。図9Cは、環境温度が10℃の状態を示す。
(6−1)環境温度が25℃のときの摩擦力
図9Aに示すように、環境温度が25℃のとき、分離パッド15の当接面52は、水平方向に対して約30度の角度で傾斜している。
【0038】
用紙Pは、給紙ローラ12(図1参照)によって搬送ローラ14と分離パッド15(パッド本体50)の当接面52との接触部分に向けて略水平方向に送り出される。
当接面52に用紙Pの先端が当接すると、当接面52には、用紙Pから略水平方向の力F1が付与される。この力F1は、当接面52に沿う方向の水平成分Fa1と、当接面52に直交する方向の垂直成分Fb1とを含んでいる。そのため、当接面52に用紙Pの先端が当接したときに、用紙Pには、垂直成分Fb1の反力である垂直抗力Fc1が付与される。したがって、用紙Pには、この垂直抗力Fc1に起因する摩擦力が付与される。この摩擦力は、用紙P同士に生じる摩擦力よりも大きくなるように設定されている。
(6−2)環境温度が40℃のときの摩擦力
図9Bに示すように、環境温度が40℃の場合、分離パッド15は、環境温度が25℃の場合の分離パッドよりも鉛直に近づく方向に立っている。
【0039】
当接面52に用紙Pの先端が当接すると、当接面52には、用紙Pから略水平方向の力F2が付与される。この力F2は、当接面52に沿う方向の水平成分Fa2と、当接面52に直交する方向の垂直成分Fb2とを含んでいる。そのため、当接面52に用紙Pの先端が当接したときに、用紙Pには、垂直成分Fb2の反力である垂直抗力Fc2が付与される。したがって、用紙Pには、この垂直抗力Fc2に起因する摩擦力が付与される。
【0040】
垂直成分Fb2は、図9Aに示す垂直成分Fb1よりも大きい。すなわち、垂直成分Fb2の反力である垂直抗力Fc2は、図9Aに示す垂直抗力Fc1よりも大きい。よって、環境温度が25℃の場合と比較して、用紙Pに付与される摩擦力が大きくなる。
(6−3)環境温度が10℃のときの摩擦力
図9Cに示すように、環境温度が10℃の場合、分離パッド15は、環境温度が25℃の場合の分離パッドよりも水平に近づく方向に寝ている。
【0041】
当接面52に用紙Pの先端が当接すると、当接面52には、用紙Pから略水平方向の力F3が付与される。この力F3は、当接面52に沿う方向の水平成分Fa3と、当接面52に直交する方向の垂直成分Fb3とを含んでいる。そのため、当接面52に用紙Pの先端が当接したときに、用紙Pには、垂直成分Fb3の反力である垂直抗力Fc3が付与される。したがって、用紙Pには、この垂直抗力Fc3に起因する摩擦力が付与される。
【0042】
垂直成分Fb3は、図9Aに示す垂直成分Fb1よりも小さい。すなわち、垂直成分Fb3の反力である垂直抗力Fc3は、図9Aに示す垂直抗力Fc1よりも小さい。よって、環境温度が25℃の場合と比較して、用紙Pに付与される摩擦力が小さくなる。
3.作用効果
以上のように、搬送ローラ14の周面には、分離パッド15の当接面52がコイルばね31の付勢力によって圧接されている。給紙トレイ11から送り出される用紙Pは、搬送ローラ14と分離パッド15との間に受け入れられて捌かれ、1枚の用紙Pのみがそれらの間を通過する。分離パッド15には、バイメタル32の一端部54が接続されている。バイメタル32の他端部55は、その位置が変わらないように固定的に配置されている。
【0043】
バイメタル32は、環境温度の変化に伴って変形する。バイメタル32の他端部55が固定的に配置されているので、バイメタル32の変形に伴い、バイメタル32の一端部54が移動する。環境温度が高くなると、バイメタル32の一端部54の移動に伴い、当接面52と給紙トレイ11から送り出された用紙Pの先端縁が当接面52に当接したときに当接面52に付与する力F2とのなす内角(以下、単に「分離角度」という。)が大きくなるように分離パッド15の姿勢が変更される。これにより、用紙Pが当接面52から受ける垂直抗力Fc2が、環境温度が25℃のときの垂直抗力Fc1よりも大きくなる。その結果、用紙Pが当接面52から受ける摩擦力が大きくなる。よって、環境温度の上昇に伴い、用紙P同士に生じる摩擦係数が大きくなっても、用紙Pを1枚ずつ分離させることができ、用紙Pの重送を防止することができる。
【0044】
一方、環境温度が低くなると、バイメタル32の変形に伴って、分離角度が小さくなるように分離パッド15の姿勢が変更される。これにより、用紙Pが当接面52から受ける垂直抗力Fc3が、環境温度が25℃のときの垂直抗力Fc1よりも小さくなる。その結果、用紙Pが当接面52から受ける摩擦力が小さくなる。よって、環境温度の低下に伴い、給紙トレイ11から用紙Pを送り出す力が小さくなっても、搬送ローラ14と分離パッド15との間を用紙Pを確実に通過させることができ、用紙Pの空送を防止することができる。
【0045】
さらに、分離パッド15の分離角度の変更は、バイメタル32の変形によって達成される。したがって、環境温度を検出するための温度センサや、環境温度に応じて分離パッド15の角度を変更するための駆動機構などを設ける必要がない。その結果、簡素な構成で、環境温度にかかわらず用紙Pを良好に給紙することができる。
また、バイメタル32は、熱膨張率の異なる2種の金属板を貼り合わせて構成されている。バイメタル32は、渦巻状に巻き回されており、その外側端部55が固定的に配置され、内側端部54が分離パッド15に接続されている。
【0046】
渦巻の外側(径方向の外側面)部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられ、渦巻の内側(径方向の内側面)部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられているので、環境温度が高くなると、内側端部54は、渦の巻きが強くなる方向に移動する。また、環境温度が低くなると、内側端部54は、渦の巻きが弱くなる方向に移動する。
また、バイメタル32の内側端部54の移動量は、内側端部(一端部)54から外側端部(他端部)55までの総延長に比例する。そのため、バイメタル32が渦巻き状に形成されることにより、小さいスペースで内側端部54の移動量を大きくすることができる。
【0047】
また、分離パッド15は、搬送ローラ14の回転軸線と平行をなす揺動軸51を中心に揺動可能に設けられている。コイルばね31は、分離パッド15に対する付勢力の入力点から付勢方向に延びる直線と揺動軸線とが交差するように設けられている。これにより、分離パッド15の揺動中心にコイルばね31の付勢力を入力することができるので、分離パッド15の姿勢にかかわらず、分離パッド15を搬送ローラ14にほぼ一定の力で押圧させることができる。したがって、環境温度の変化により、搬送ローラ14に対する分離パッド15の押圧力が大きくなることに起因する音鳴りを防止することができる。
【0048】
また、バイメタル32の内側端部54は、揺動軸51に接続されている。これにより、バイメタル32の内側端部54の移動に伴って、その移動方向に揺動軸51を回転させることができる。その結果、環境温度の変化に伴って、分離パッド15の角度を確実に変更することができる。
そして、画像形成部3に向けて用紙Pを1枚ずつ良好に搬送することができるので、用紙Pの重送によるジャムの発生や、用紙Pの空送による画像形成ミスの発生を防止することができる。
4.変形例
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は他の形態で実施することもできる。
【0049】
たとえば、バイメタル32は、渦巻の外側部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられ、渦巻の内側部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられるとしたが、渦巻の外側部分に相対的に熱膨張率の小さな金属が用いられ、渦巻の内側部分に相対的に熱膨張率の大きな金属が用いられてもよい。この場合、バイメタル32の一端部54と他端部55との間の途中部は、右側面視で左巻き(外側から内側に向けて、反時計周り方向に巻いた形状)に巻き回された形状に形成されていればよい。これにより、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 プリンタ
3 画像形成部
4 給紙装置
11 給紙トレイ
14 搬送ローラ
15 分離パッド
31 コイルばね
32 バイメタル
46 入力点
51 揺動軸
52 当接面
54 一端部(内側端部)
55 他端部(外側端部)
P 用紙
Fs 直線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の記録シートを載置可能な給紙トレイと、
前記給紙トレイから送り出される記録シートを搬送するための搬送ローラと、
前記搬送ローラの周面に当接する当接面を有し、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間に記録シートを受け入れて、当該記録シートを捌いて、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間を1枚の記録シートを通過させるための分離パッドと、
前記分離パッドを前記搬送ローラに向けて付勢するための付勢部材と、
一端部が前記分離パッドに接続され、他端部が固定的に配置されて、環境温度が高くなるにつれて、前記当接面と前記給紙トレイから送り出された記録シートの先端縁が前記当接面に当接したときに前記当接面に付与する力とのなす内角が大きくなるように、前記分離パッドの姿勢を変更するバイメタルとを含む、給紙装置。
【請求項2】
前記バイメタルは、熱膨張率が異なる2種の金属板を貼り合わせて構成され、渦巻状に巻回されており、
前記バイメタルの外側の端部が固定的に配置され、
前記バイメタルの内側の端部が前記分離パッドに接続されている、請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸線を中心に揺動可能に設けられ、
前記付勢部材は、前記分離パッドに対する付勢力の入力点を通り、その付勢方向に延びる直線と前記揺動軸線とが交差するように設けられている、請求項1または2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸を有し、前記揺動軸により揺動可能に支持され、
前記バイメタルの前記一端部は、前記揺動軸に接続されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置により供給される記録シートに画像を形成するための画像形成部とを含む、画像形成装置。
【請求項1】
複数枚の記録シートを載置可能な給紙トレイと、
前記給紙トレイから送り出される記録シートを搬送するための搬送ローラと、
前記搬送ローラの周面に当接する当接面を有し、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間に記録シートを受け入れて、当該記録シートを捌いて、前記搬送ローラの周面と前記当接面との間を1枚の記録シートを通過させるための分離パッドと、
前記分離パッドを前記搬送ローラに向けて付勢するための付勢部材と、
一端部が前記分離パッドに接続され、他端部が固定的に配置されて、環境温度が高くなるにつれて、前記当接面と前記給紙トレイから送り出された記録シートの先端縁が前記当接面に当接したときに前記当接面に付与する力とのなす内角が大きくなるように、前記分離パッドの姿勢を変更するバイメタルとを含む、給紙装置。
【請求項2】
前記バイメタルは、熱膨張率が異なる2種の金属板を貼り合わせて構成され、渦巻状に巻回されており、
前記バイメタルの外側の端部が固定的に配置され、
前記バイメタルの内側の端部が前記分離パッドに接続されている、請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸線を中心に揺動可能に設けられ、
前記付勢部材は、前記分離パッドに対する付勢力の入力点を通り、その付勢方向に延びる直線と前記揺動軸線とが交差するように設けられている、請求項1または2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記分離パッドは、前記搬送ローラの回転軸線と平行をなす揺動軸を有し、前記揺動軸により揺動可能に支持され、
前記バイメタルの前記一端部は、前記揺動軸に接続されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の給紙装置と、
前記給紙装置により供給される記録シートに画像を形成するための画像形成部とを含む、画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公開番号】特開2010−195526(P2010−195526A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42463(P2009−42463)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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