給紙装置とその制御方法およびこれを用いた印刷装置
【課題】
エアピック式給紙装置の利点を損なうことなく用紙の分離性能を向上させ、より多様な用紙に対応できる改良されたエアピック式給紙装置を提供する。
【解決手段】
吸着ベルトを挟んだ両端側の用紙搬送路上に、重送した用紙を分離するための摩擦部材からなる重送防止手段と、重送防止手段を用紙に押し付ける弾性体とを設ける。重送防止手段は吸着ベルト及び吸着用紙に対して上下動し任意の位置に退避させ固定可能とする。また、印刷停止時には吸着ベルトを逆回転させて重送防止手段部分での用紙残留を防止する。
エアピック式給紙装置の利点を損なうことなく用紙の分離性能を向上させ、より多様な用紙に対応できる改良されたエアピック式給紙装置を提供する。
【解決手段】
吸着ベルトを挟んだ両端側の用紙搬送路上に、重送した用紙を分離するための摩擦部材からなる重送防止手段と、重送防止手段を用紙に押し付ける弾性体とを設ける。重送防止手段は吸着ベルト及び吸着用紙に対して上下動し任意の位置に退避させ固定可能とする。また、印刷停止時には吸着ベルトを逆回転させて重送防止手段部分での用紙残留を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置等の印刷装置に用いられる給紙装置であって、特に高速印刷に適した空気流を利用した給紙装置とその制御方法およびこれを用いた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の電子写真装置において、空気流および負圧を利用したエアピック式給紙装置を示したものである。図1において、昇降可能な用紙収納テーブル1に積載された用紙2の上面は、用紙上面検出センサ3の情報を基に用紙収納テーブル1の駆動を制御する制御手段4により、基準面に対し常に一定高さに位置するように制御されている。用紙2の上方には吸引チャンバ5に連通する複数個の穴を持つ吸着ベルト6と、吸着ベルト6を駆動する駆動装置7が設置されている。また、用紙の搬送方向前面には、積載された用紙端部に空気を吹き付けて捌いて浮上させるエアノズル8が備えられており、エアノズル8により浮上した最上部の用紙2を吸着ベルト6で吸着し搬送して給紙を行う。用紙搬送方向の下流には、搬送される用紙2を受け取って図示しない画像形成部へと搬送する搬送ローラ21が備えられている。吸着ベルト8下面と搬送ローラ21により用紙搬送路の一部が形成される。このような給紙装置においては、空気の吹き付けによる十分な用紙の分離効果で確実に重送を防止するために、従来から種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば、図2に示すように、エアノズル8を、吸着ベルト6の略中央部を挟んで両端側に配置された空気を噴出する第1噴出口9と、吸着ベルトの略中央部に位置し吸着ベルト6に向って空気を噴出する第2噴出口10に分け、第1噴出口9では主に用紙を浮上させ、第2噴出口10では吸着ベルト6と最上部用紙との間に空気を送り込み、最上部用紙と次の用紙の分離を行うことにより十分な重送防止効果を得る構成が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許番号第2934442号
【特許文献2】特開2005−1855号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、印刷物の多様化及び印刷速度の高速化とそれに伴なう印刷量の増加により、空気流を利用した給紙装置にはさらに高い性能が求められるようになってきている。
【0006】
エアピック式給紙装置の利点の1つは空気流で用紙の分離、吸着、搬送を行なうため、用紙に摩擦材を接触させて分離を行なうロールピック方式等に比較すると、摩擦材や吸着ベルトなどの摩耗の心配がなく高い信頼性が得られることが挙げられる。しかし、用紙の種類や用紙の状態よっては、前記した空気噴出口の機能を分割するなどの工夫を行なっても十分な重送防止効果が得られない場合が出てきている。
【0007】
本発明の目的は上記の状況に鑑み、従来の構成に分離性能を向上させる重送防止手段を追加し、エアピック式給紙装置の利点である高信頼性を残しながら、用紙の分離効果を高めさらに多様な用紙に対応できる給紙装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に対し、請求項1の発明は複数枚の用紙を積載収納する用紙収納テーブルと、積載用紙を一枚ずつ吸着して搬送する吸着ベルトと、前記用紙収納テーブル上部に設けられ、用紙捌き用第1噴出口と、吸着用紙を分離する第2噴出口を有するエアノズルとを備えた給紙装置において、前記用紙搬送路上で、前記吸着ベルトに吸着された用紙に接触する位置に重送防止手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は重送防止手段に摩擦部材を用いることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、前記重送防止手段に、前記吸着ベルトへ吸着された用紙へ前記摩擦部材を付勢する弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、重送防止手段を、用紙搬送路上において吸着ベルトの両側に設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、前記重送防止手段を吸着用紙に対し接触退避可能に設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は請求項1〜5記載の給紙装置を備えた印刷装置を特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1、2、3、4または5記載の給紙装置において、印刷停止時に前記吸着ベルトを印刷動作時の用紙搬送方向と逆方向に回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記の様に構成された給紙装置においては、エアノズルの第1噴出口からの空気流が用紙の間に入り込んで用紙を捌き、吸着ベルトによって最上部の用紙が吸着される際に、第2噴出口から噴出された空気流が最上部の用紙と次の用紙の分離を行なう。次いで、第2噴出口からの空気流では分離されずに搬送された重送用紙については、吸着ベルトを挟んでエアノズルの両端側で且つ前記用紙搬送路上に設置された重送防止手段により分離される。この際、重送防止手段は吸着ベルトと接触しない位置に設置されているため、吸着ベルトを摩耗させることがない。
【0016】
さらに、前記したエアノズルからの空気流のみで十分な分離効果が得られる種類の用紙を扱う場合は、重送防止手段を用紙と接触しない位置に退避させ、重送防止手段の寿命を伸ばし、装置の信頼性を向上させることも可能である。
【0017】
さらに、印刷停止時には吸着ベルトが用紙を搬送する方向とは逆方向に回転し、吸着ベルトと重送防止手段の間に用紙が残った状態で印刷が終了した場合に用紙は用紙収納テーブルの方向へ戻されるため、次回の印刷開始時に不具合を生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
吸着ベルトを挟んだ両端側で且つ前記用紙の用紙搬送路上に、用紙と接触する摩擦パッドからなる重送防止手段と、この重送防止手段を前記用紙へ押し付ける弾性部材を設置し、さらに重送防止手段及び前記弾性部材は、前記用紙の搬送方向に対して上下に移動調整退避可能とし、任意の位置で固定するよう構成する。また、印刷停止時には前記吸着ベルトを印刷動作時の用紙搬送方向と逆方向に回転させ、摩擦パットを取り付けることによる用紙残留の弊害を防止する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明による実施例について図面を参照して説明する。図3、図4は各部位の位置関係を示す図であり、図5、図6はエアノズルから噴出される空気流により用紙が捌かれ、浮上している様子を示す。
【0020】
これらの図において2は用紙、6は吸着ベルト、8は用紙の上層部に向けて空気を噴出する第1噴出口9と、吸着ベルト6に向けて空気を噴出する第2噴出口10を有するエアノズルであり、エアノズル8は図示しない送風装置よりダクト19を通して空気が供給される。また、吸着ベルト6はダクト20を通して空気が吸引される吸引チャンバ5の開口部に接して回転するように二本のローラ間に張り渡されており、吸着ベルト6の表面に明けられた穴を介し、用紙2を吸着する。
【0021】
上記の給紙装置において、用紙2が給紙される動作について模式図7〜10を用いて説明する。まず図7に示すように、第1噴出口9から噴出された空気により用紙2の両端部は分離されながら浮上する。一方、用紙の中央部は第2噴出口10の空気により下方に押し下げられた形状になり、吸着ベルトの中央部にポケット14が形成された状態になる。この状態にて吸着ベルト6の穴が吸引チャンバ5の開口部に位置し吸気が始まると、図8に示すように最上部の用紙、つまり1枚目の用紙11が上昇を始め、これに伴ない1枚目の用紙11以降の用紙も上昇を開始する。この1枚目の用紙11が吸着ベルト6に接近する過程において、図9に示すように第2噴出口10からの空気が1枚目の用紙11と2枚目の用紙12の間に入り込み、1枚目の用紙11と2枚目の用紙12は分離される。
【0022】
その後、図10に示すように、吸着ベルト6に到着した1枚目の用紙11は、吸着ベルト6の回転により搬送されていく。この時2枚目の用紙12以降の用紙は、第2噴出口10からの空気により先端が下方向に押さえられているため、1枚目に引きずられて飛び出し、一緒に搬送されてしまう用紙重送は発生しない。
【0023】
しかしながら、用紙の状態、例えば用紙に吸湿によるカールや波打ちなどの変形がある場合や、用紙の裁断面が粗悪な状態の場合などは、図9に示すステップで上記したエアノズル8からの空気流では十分に分離できず、重送が発生する場合がある。またコーティングを施した用紙や圧着ハガキ用紙、ノンカーボン紙など、用紙の表面に何らかの処理を施している場合なども、用紙の可撓性が小さいため空気流による分離のみでは不十分となり、重送が発生し易くなる。
【0024】
そこで本発明の実施例においては、図3、4に示すように吸着ベルト6を挟んで両端側の用紙搬送路上の、用紙搬送方向前端と接触する位置に摩擦パッド13からなる重送防止手段と、この摩擦パッド13を吸着ベルトおよび吸着用紙方向に押し上げるバネ15を取付け、用紙2が吸着ベルト6により搬送される際に摩擦パッド13から抵抗を受ける構造とする。摩擦パット13の摩擦係数とバネ15による押し付け力を適当に設定することにより、図11に示すように重送した用紙を分離する。このように摩擦パッド13を設置すれば、吸着ベルト6と接触しないため、吸着ベルトの摩耗の心配がない。摩擦パッド13の用紙前端と対向する部分は傾斜面を設け、スムーズな用紙のピックアップを実現する。摩擦パッド13は、用紙の摩擦抵抗に応じ、金属、プラスチック、コルクその他の、重送分離に最適な抵抗を与える材料を用いることができる。また、摩擦パッド自体をスポンジ等の弾性材料で形成すれば弾性体をパッドと一体化することもできる。
【0025】
また、摩擦パッド13及びバネ14はホルダ16に保持されており、このホルダ16はエアノズル8に形成された溝部17に嵌め込まれて上下動し、任意の位置でネジ18により固定が可能としている。これにより前記したエアノズル8からの空気流のみで十分な重送防止効果が期待できる種類の用紙に対しては、摩擦パッド13を用紙2に接触させない位置に退避させ、摩擦パッド13及び吸着ベルト6の摩耗なくし、部品の寿命を伸ばし装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0026】
さらに、摩擦パッド13と吸着ベルト6の間に重送を阻止された用紙が挟まったまま印刷が終了した場合や、用紙づまりなどの異常により印刷が停止し、用紙が摩擦パッド13と吸着ベルト6の間に残った場合などは、図12に示す様に印刷停止を契機に吸着ベルト6を逆転させ用紙を用紙収納テーブルに戻すため、次の印刷開始時に不具合が生じることがない。
【0027】
以上、本発明実施例によれば、扱える用紙の幅が広がり、エアピック式給紙装置の利点である高信頼性を損なわず、より多様な用紙に対応することが可能な給紙装置を提供できる。
【0028】
なお、本実施例においては、摩擦パッド13の用紙に対する摩擦係数を1.3程度、バネ15による押し付け力を50(gf)程度に設定することで良好な分離性能が得られたが、摩擦パッド13の用紙に対する摩擦係数とバネ15による押し付け力は、吸着ベルト6の搬送力、エアノズル8からの空気噴出圧、用紙の加速度等の関係によって適正な値が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の空気流を利用した給紙装置を示す斜視図である。
【図2】従来の空気流を利用した給紙装置を示す正面図である。
【図3】本発明の実施例を示す正面図である。
【図4】本発明の実施例を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例を示す正面図である。
【図6】本発明の実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図8】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図9】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図10】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図11】本発明の実施例を示す側面図である。
【図12】本発明の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1は用紙収納テーブル、2は用紙、3は用紙上面検出センサ、4は制御手段、5は吸引チャンバ、6は吸着ベルト、7は駆動装置、8はエアノズル、9は第1噴出口、10は第2噴出口、11は1枚目の用紙、12は2枚目の用紙、13は摩擦パッド、14はポケット、15はバネ、16はホルダ、17は溝部、18はネジ、19はダクト、20はダクト、21は搬送ローラである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置等の印刷装置に用いられる給紙装置であって、特に高速印刷に適した空気流を利用した給紙装置とその制御方法およびこれを用いた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の電子写真装置において、空気流および負圧を利用したエアピック式給紙装置を示したものである。図1において、昇降可能な用紙収納テーブル1に積載された用紙2の上面は、用紙上面検出センサ3の情報を基に用紙収納テーブル1の駆動を制御する制御手段4により、基準面に対し常に一定高さに位置するように制御されている。用紙2の上方には吸引チャンバ5に連通する複数個の穴を持つ吸着ベルト6と、吸着ベルト6を駆動する駆動装置7が設置されている。また、用紙の搬送方向前面には、積載された用紙端部に空気を吹き付けて捌いて浮上させるエアノズル8が備えられており、エアノズル8により浮上した最上部の用紙2を吸着ベルト6で吸着し搬送して給紙を行う。用紙搬送方向の下流には、搬送される用紙2を受け取って図示しない画像形成部へと搬送する搬送ローラ21が備えられている。吸着ベルト8下面と搬送ローラ21により用紙搬送路の一部が形成される。このような給紙装置においては、空気の吹き付けによる十分な用紙の分離効果で確実に重送を防止するために、従来から種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば、図2に示すように、エアノズル8を、吸着ベルト6の略中央部を挟んで両端側に配置された空気を噴出する第1噴出口9と、吸着ベルトの略中央部に位置し吸着ベルト6に向って空気を噴出する第2噴出口10に分け、第1噴出口9では主に用紙を浮上させ、第2噴出口10では吸着ベルト6と最上部用紙との間に空気を送り込み、最上部用紙と次の用紙の分離を行うことにより十分な重送防止効果を得る構成が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許番号第2934442号
【特許文献2】特開2005−1855号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、印刷物の多様化及び印刷速度の高速化とそれに伴なう印刷量の増加により、空気流を利用した給紙装置にはさらに高い性能が求められるようになってきている。
【0006】
エアピック式給紙装置の利点の1つは空気流で用紙の分離、吸着、搬送を行なうため、用紙に摩擦材を接触させて分離を行なうロールピック方式等に比較すると、摩擦材や吸着ベルトなどの摩耗の心配がなく高い信頼性が得られることが挙げられる。しかし、用紙の種類や用紙の状態よっては、前記した空気噴出口の機能を分割するなどの工夫を行なっても十分な重送防止効果が得られない場合が出てきている。
【0007】
本発明の目的は上記の状況に鑑み、従来の構成に分離性能を向上させる重送防止手段を追加し、エアピック式給紙装置の利点である高信頼性を残しながら、用紙の分離効果を高めさらに多様な用紙に対応できる給紙装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に対し、請求項1の発明は複数枚の用紙を積載収納する用紙収納テーブルと、積載用紙を一枚ずつ吸着して搬送する吸着ベルトと、前記用紙収納テーブル上部に設けられ、用紙捌き用第1噴出口と、吸着用紙を分離する第2噴出口を有するエアノズルとを備えた給紙装置において、前記用紙搬送路上で、前記吸着ベルトに吸着された用紙に接触する位置に重送防止手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は重送防止手段に摩擦部材を用いることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、前記重送防止手段に、前記吸着ベルトへ吸着された用紙へ前記摩擦部材を付勢する弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、重送防止手段を、用紙搬送路上において吸着ベルトの両側に設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、前記重送防止手段を吸着用紙に対し接触退避可能に設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は請求項1〜5記載の給紙装置を備えた印刷装置を特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1、2、3、4または5記載の給紙装置において、印刷停止時に前記吸着ベルトを印刷動作時の用紙搬送方向と逆方向に回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記の様に構成された給紙装置においては、エアノズルの第1噴出口からの空気流が用紙の間に入り込んで用紙を捌き、吸着ベルトによって最上部の用紙が吸着される際に、第2噴出口から噴出された空気流が最上部の用紙と次の用紙の分離を行なう。次いで、第2噴出口からの空気流では分離されずに搬送された重送用紙については、吸着ベルトを挟んでエアノズルの両端側で且つ前記用紙搬送路上に設置された重送防止手段により分離される。この際、重送防止手段は吸着ベルトと接触しない位置に設置されているため、吸着ベルトを摩耗させることがない。
【0016】
さらに、前記したエアノズルからの空気流のみで十分な分離効果が得られる種類の用紙を扱う場合は、重送防止手段を用紙と接触しない位置に退避させ、重送防止手段の寿命を伸ばし、装置の信頼性を向上させることも可能である。
【0017】
さらに、印刷停止時には吸着ベルトが用紙を搬送する方向とは逆方向に回転し、吸着ベルトと重送防止手段の間に用紙が残った状態で印刷が終了した場合に用紙は用紙収納テーブルの方向へ戻されるため、次回の印刷開始時に不具合を生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
吸着ベルトを挟んだ両端側で且つ前記用紙の用紙搬送路上に、用紙と接触する摩擦パッドからなる重送防止手段と、この重送防止手段を前記用紙へ押し付ける弾性部材を設置し、さらに重送防止手段及び前記弾性部材は、前記用紙の搬送方向に対して上下に移動調整退避可能とし、任意の位置で固定するよう構成する。また、印刷停止時には前記吸着ベルトを印刷動作時の用紙搬送方向と逆方向に回転させ、摩擦パットを取り付けることによる用紙残留の弊害を防止する。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明による実施例について図面を参照して説明する。図3、図4は各部位の位置関係を示す図であり、図5、図6はエアノズルから噴出される空気流により用紙が捌かれ、浮上している様子を示す。
【0020】
これらの図において2は用紙、6は吸着ベルト、8は用紙の上層部に向けて空気を噴出する第1噴出口9と、吸着ベルト6に向けて空気を噴出する第2噴出口10を有するエアノズルであり、エアノズル8は図示しない送風装置よりダクト19を通して空気が供給される。また、吸着ベルト6はダクト20を通して空気が吸引される吸引チャンバ5の開口部に接して回転するように二本のローラ間に張り渡されており、吸着ベルト6の表面に明けられた穴を介し、用紙2を吸着する。
【0021】
上記の給紙装置において、用紙2が給紙される動作について模式図7〜10を用いて説明する。まず図7に示すように、第1噴出口9から噴出された空気により用紙2の両端部は分離されながら浮上する。一方、用紙の中央部は第2噴出口10の空気により下方に押し下げられた形状になり、吸着ベルトの中央部にポケット14が形成された状態になる。この状態にて吸着ベルト6の穴が吸引チャンバ5の開口部に位置し吸気が始まると、図8に示すように最上部の用紙、つまり1枚目の用紙11が上昇を始め、これに伴ない1枚目の用紙11以降の用紙も上昇を開始する。この1枚目の用紙11が吸着ベルト6に接近する過程において、図9に示すように第2噴出口10からの空気が1枚目の用紙11と2枚目の用紙12の間に入り込み、1枚目の用紙11と2枚目の用紙12は分離される。
【0022】
その後、図10に示すように、吸着ベルト6に到着した1枚目の用紙11は、吸着ベルト6の回転により搬送されていく。この時2枚目の用紙12以降の用紙は、第2噴出口10からの空気により先端が下方向に押さえられているため、1枚目に引きずられて飛び出し、一緒に搬送されてしまう用紙重送は発生しない。
【0023】
しかしながら、用紙の状態、例えば用紙に吸湿によるカールや波打ちなどの変形がある場合や、用紙の裁断面が粗悪な状態の場合などは、図9に示すステップで上記したエアノズル8からの空気流では十分に分離できず、重送が発生する場合がある。またコーティングを施した用紙や圧着ハガキ用紙、ノンカーボン紙など、用紙の表面に何らかの処理を施している場合なども、用紙の可撓性が小さいため空気流による分離のみでは不十分となり、重送が発生し易くなる。
【0024】
そこで本発明の実施例においては、図3、4に示すように吸着ベルト6を挟んで両端側の用紙搬送路上の、用紙搬送方向前端と接触する位置に摩擦パッド13からなる重送防止手段と、この摩擦パッド13を吸着ベルトおよび吸着用紙方向に押し上げるバネ15を取付け、用紙2が吸着ベルト6により搬送される際に摩擦パッド13から抵抗を受ける構造とする。摩擦パット13の摩擦係数とバネ15による押し付け力を適当に設定することにより、図11に示すように重送した用紙を分離する。このように摩擦パッド13を設置すれば、吸着ベルト6と接触しないため、吸着ベルトの摩耗の心配がない。摩擦パッド13の用紙前端と対向する部分は傾斜面を設け、スムーズな用紙のピックアップを実現する。摩擦パッド13は、用紙の摩擦抵抗に応じ、金属、プラスチック、コルクその他の、重送分離に最適な抵抗を与える材料を用いることができる。また、摩擦パッド自体をスポンジ等の弾性材料で形成すれば弾性体をパッドと一体化することもできる。
【0025】
また、摩擦パッド13及びバネ14はホルダ16に保持されており、このホルダ16はエアノズル8に形成された溝部17に嵌め込まれて上下動し、任意の位置でネジ18により固定が可能としている。これにより前記したエアノズル8からの空気流のみで十分な重送防止効果が期待できる種類の用紙に対しては、摩擦パッド13を用紙2に接触させない位置に退避させ、摩擦パッド13及び吸着ベルト6の摩耗なくし、部品の寿命を伸ばし装置の信頼性を向上させることが可能である。
【0026】
さらに、摩擦パッド13と吸着ベルト6の間に重送を阻止された用紙が挟まったまま印刷が終了した場合や、用紙づまりなどの異常により印刷が停止し、用紙が摩擦パッド13と吸着ベルト6の間に残った場合などは、図12に示す様に印刷停止を契機に吸着ベルト6を逆転させ用紙を用紙収納テーブルに戻すため、次の印刷開始時に不具合が生じることがない。
【0027】
以上、本発明実施例によれば、扱える用紙の幅が広がり、エアピック式給紙装置の利点である高信頼性を損なわず、より多様な用紙に対応することが可能な給紙装置を提供できる。
【0028】
なお、本実施例においては、摩擦パッド13の用紙に対する摩擦係数を1.3程度、バネ15による押し付け力を50(gf)程度に設定することで良好な分離性能が得られたが、摩擦パッド13の用紙に対する摩擦係数とバネ15による押し付け力は、吸着ベルト6の搬送力、エアノズル8からの空気噴出圧、用紙の加速度等の関係によって適正な値が決定される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の空気流を利用した給紙装置を示す斜視図である。
【図2】従来の空気流を利用した給紙装置を示す正面図である。
【図3】本発明の実施例を示す正面図である。
【図4】本発明の実施例を示す側面図である。
【図5】本発明の実施例を示す正面図である。
【図6】本発明の実施例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図8】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図9】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図10】本発明の実施例における給紙装置の原理を示す模式図である。
【図11】本発明の実施例を示す側面図である。
【図12】本発明の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1は用紙収納テーブル、2は用紙、3は用紙上面検出センサ、4は制御手段、5は吸引チャンバ、6は吸着ベルト、7は駆動装置、8はエアノズル、9は第1噴出口、10は第2噴出口、11は1枚目の用紙、12は2枚目の用紙、13は摩擦パッド、14はポケット、15はバネ、16はホルダ、17は溝部、18はネジ、19はダクト、20はダクト、21は搬送ローラである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙を積載収納する用紙収納テーブルと、前記用紙収納テーブル上部に設けられ積載用紙を一枚ずつ吸着して用紙搬送路へ搬送する吸着ベルトと、前記用紙収納テーブル上部に設けられたエアノズルであって、複数枚の積載用紙を捌く第1噴出口と、吸着ベルトへ吸着された用紙を次の積載用紙から分離する第2噴出口を有するエアノズルとを備えた給紙装置において、
前記用紙搬送路上で、前記吸着ベルトに吸着された用紙に接触する位置に重送防止手段を設けたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記重送防止手段は、摩擦部材を有することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記重送防止手段に、前記吸着ベルトに吸着された用紙へ前記重送防止手段を付勢する弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の給紙装置。
【請求項4】
重送防止手段を、用紙搬送路上において吸着ベルトの両側に設けたことを特徴とする請求項1、2または3記載の給紙装置。
【請求項5】
前記重送防止手段は、吸着ベルトに吸着された用紙に対し接触退避可能に設けたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の給紙装置を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5記載の給紙装置において、印刷停止時には前記吸着ベルトを印刷動作時の用紙搬送方向と逆方向に回転させることを特徴とする給紙装置の制御方法。
【請求項1】
複数枚の用紙を積載収納する用紙収納テーブルと、前記用紙収納テーブル上部に設けられ積載用紙を一枚ずつ吸着して用紙搬送路へ搬送する吸着ベルトと、前記用紙収納テーブル上部に設けられたエアノズルであって、複数枚の積載用紙を捌く第1噴出口と、吸着ベルトへ吸着された用紙を次の積載用紙から分離する第2噴出口を有するエアノズルとを備えた給紙装置において、
前記用紙搬送路上で、前記吸着ベルトに吸着された用紙に接触する位置に重送防止手段を設けたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記重送防止手段は、摩擦部材を有することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記重送防止手段に、前記吸着ベルトに吸着された用紙へ前記重送防止手段を付勢する弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の給紙装置。
【請求項4】
重送防止手段を、用紙搬送路上において吸着ベルトの両側に設けたことを特徴とする請求項1、2または3記載の給紙装置。
【請求項5】
前記重送防止手段は、吸着ベルトに吸着された用紙に対し接触退避可能に設けたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の給紙装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の給紙装置を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4または5記載の給紙装置において、印刷停止時には前記吸着ベルトを印刷動作時の用紙搬送方向と逆方向に回転させることを特徴とする給紙装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−331905(P2007−331905A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167235(P2006−167235)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】
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