説明

給紙装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】記録材Pの厚みに影響されることなく最適な搬送性能及び捌き性能を得られる給紙装置11を提供する。
【解決手段】本願発明の手差し給紙装置11は、載置部12に載置された記録材Pを1枚ずつ繰り出すピックアップローラ21と、ピックアップローラ21の搬送下流側に配置された給紙ローラ22と、給紙ローラ22と協働して記録材Pを捌く捌き部材23と、給紙ローラ22と捌き部材23との間の給紙ニップ部Nを通るニップ接線TLに対するピックアップローラ21の記録材接触位置を、記録材Pの厚みに応じて可変にするローラ可変機構17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、記録材の束を1枚ずつ分離して搬送する給紙装置及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録材の束を1枚ずつ分離して搬送する給紙装置としては、駆動側である給紙ローラと、捌きパッドや捌きローラ等の捌き部材とによって、最上層の記録材だけを送り出す摩擦分離方式が広く用いられている。また、この種の給紙装置では、記録材の厚み(腰の強さ)に応じて、捌き部材に対する記録材の突入角度若しくは記録材の突入角度に対する捌き部材の姿勢を変更することによって、給紙ローラと捌き部材との間の給紙ニップ部における搬送性能や捌き性能を良好にすることが行われている(例えば特許文献1及び2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−81780号公報
【特許文献2】特開2000−185837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は電子写真方式やインクジェット方式を採用した画像形成装置の普及が拡大しており、その用途が多方面に広がっている。特に、画像形成装置に設けられた給紙装置では、これまで使用されてきた以上の厚手の記録材にも、画質を維持して支障なく記録できることが要望されている。この点、坪量300g/m以上の極めて熱い記録材(超厚紙)と、坪量90g/m程度の記録材(普通紙、薄紙)とでは、厚みの差が大きく、給紙ニップ部における搬送性能や捌き性能への影響も大きく相違するものと解される。
【0005】
しかし、前記従来の給紙装置は、超厚紙の使用まで考慮した上で設計されたものではない。仮に記録材として超厚紙を用いた場合は、その剛性の高さが災いして給紙ニップ部にスムーズに入り込めず、突入不良(通紙不良)を招来し易いと考えられる。本願発明は、上記のような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、記録材の厚みに影響されることなく最適な搬送性能及び捌き性能を得られる給紙装置と、これを備えた画像形成装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る給紙装置は、載置部に載置された記録材を1枚ずつ繰り出すピックアップローラと、前記ピックアップローラの搬送下流側に配置された給紙ローラと、前記給紙ローラと協働して前記記録材を捌く捌き部材と、前記給紙ローラと前記捌き部材との間の給紙ニップ部を通るニップ接線に対する前記ピックアップローラの記録材接触位置を、前記記録材の厚みに応じて可変にするローラ可変機構とを備えているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した給紙装置において、前記ローラ可変機構は、前記記録材の坪量が基準値を上回るときに、前記ピックアップローラの記録材接触位置を前記ニップ接線よりも下方の前記捌き部材側に設定するというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載した給紙装置において、前記ローラ可変機構は、前記記録材の坪量が基準値を下回るときに、前記ピックアップローラの記録材接触位置を前記ニップ接線よりも上方の前記給紙ローラ側に設定するというものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した給紙装置を有する画像形成装置に係るものであり、前記載置部上にある前記記録材の坪量又は紙種といった記録材情報を選択して設定する設定手段を備えているというものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項に記載された発明に係る給紙装置によると、載置部に載置された記録材を1枚ずつ繰り出すピックアップローラと、前記ピックアップローラの搬送下流側に配置された給紙ローラと、前記給紙ローラと協働して前記記録材を捌く捌き部材と、前記給紙ローラと前記捌き部材との間の給紙ニップ部を通るニップ接線に対する前記ピックアップローラの記録材接触位置を、前記記録材の厚みに応じて可変にするローラ可変機構とを備えているから、前記記録材の厚みに影響されることなく、最適な搬送性能及び捌き性能を得て、安定的な給紙機能と十分な記録材積載枚数とを確実に確保できる。
【0011】
特に、上記の給紙装置を有する画像形成装置において、前記載置部上にある前記記録材の坪量又は紙種といった記録材情報を選択して設定する設定手段を備えているから、前記ピックアップローラの記録材接触位置を手動で位置決めする必要がないし、前記記録材情報を検出する専用のセンサ等が要らないので、部品点数も少なくでき、コスト抑制に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】MFPの外観斜視図である。
【図2】MFPの拡大斜視図である。
【図3】手差し給紙部の側面断面図である。
【図4】薄紙供給時の態様を示す手差し給紙部の要部拡大説明図である。
【図5】厚紙供給時の態様を示す手差し給紙部の要部拡大説明図である。
【図6】超厚紙供給時の態様を示す手差し給紙部の要部拡大説明図である。
【図7】コントローラの機能ブロック図である。
【図8】ピックアップローラ位置制御の流れを示すフローチャートである。
【図9】記録材情報を示す操作パネルの画面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(1).画像形成装置の概要
図1に示す画像形成装置の一例としての複合機1(以下、MFPという)は、コピー機能、スキャナ機能、プリンタ機能、ファックス機能といった多くの機能を有するものであり、例えばLANや電話回線といったネットワーク(通信網)を介してのデータ送受信が可能になっている。すなわち、MFP1は、原稿から読み取った画像データをネットワーク経由で他のコンピュータに出力したり、ネットワーク経由で他のコンピュータから画像データを入力して該画像データに基づく印刷を実行したり、FAXデータの送受信をしたりできるものである。
【0015】
MFP1における装置本体2の上部に、スキャナ部3と自動原稿搬送部4(以下、ADFという)とからなる画像読取部5が設けられている。画像読取部5は、スキャナ部3とADF4とを同期して作動させ、ADF4にセットされた原稿1枚ずつから画像を光学的に読み取ることにより、画像データを取得するように構成されている。すなわち、ADF4はスキャナ部3に向けて原稿を1枚ずつ搬送し、スキャナ部3は、原稿が所定の読取位置を通過する際に画像を読み取って、画像データを取得するように構成されている。
【0016】
装置本体2の下部には、記録材Pを収容する給紙部7が設けられている。装置本体2のうち画像読取部5と給紙部7との間には、記録材P上にトナー画像を印刷する画像形成部6が設けられている。給紙部7は記録材Pを1枚ずつ画像形成部6に供給し、画像形成部6は画像読取部5やネットワーク経由で取得された画像データに基づき、記録材P上にトナー画像を印刷するように構成されている。装置本体2のうち画像読取部5と画像形成部6との間にある凹みスペースは排紙貯留部8になっている。画像形成部6によってトナー画像が印刷された記録材Pは排紙貯留部8に排出される。
【0017】
装置本体2の正面側(前面側)には、複数のキー(ボタン)を有する設定手段としての操作パネル9が設けられている。ユーザは、操作パネル9の表示画面等を見ながらキー操作をすることによって、MFP1の各種機能の中から選択した機能について設定操作をしたり、MFP1に作業実行を指示したりできる。
【0018】
(2).手差し給紙部の構造
次に、図2及び図3等を参照しながら、給紙装置の一例である手差し給紙部11の構造を説明する。図2に示すように、装置本体2の一側部には、外部から所定サイズの記録材Pを給紙可能な手差し給紙部11が設けられている。手差し給紙部11は、装置本体2内にある通常の給紙部7とは別にして、装置本体2の一側部に補助的に設けられたものであり、装置本体2の一側部に対して開閉回動可能に取り付けられた載置部としての手差しトレイ12を備えている。手差しトレイ12は、その先端側と装置本体2の一側部とをつなぐ一対の枢支ピン軸13(図3に一方のみ示す)を支点として上下に開閉回動するように構成されている。
【0019】
手差しトレイ12には、該手差しトレイ12に載置された記録材Pの先端側を押し上げる押上板14、並びに、給紙前の記録材Pをセンター基準に幅寄せする一対の側部ガイド板15等が設けられている。
【0020】
押上板14は、その基端側の回動支軸16を介して、手差しトレイ12に上下回動可能に軸支されている。押上板14は、正逆回転可能な駆動モータ18と、回動支軸16の一端側に配置されたギヤ部材19とからなる伝動機構17により、回動支軸16回りに上下回動(上下揺動)するように構成されている。ギヤ部材19は、駆動モータ18のモータ軸に固着された駆動ギヤ19aと、回動支軸16の一端部に固着された従動ギヤ19bとを有している。両ギヤ19a,19bを噛み合わせることによって、駆動モータ18の回転動力が押上板14に伝達されることになる。
【0021】
押上板14は印刷時のみ、伝動機構17(駆動モータ18及びギヤ部材19)によって上向き回動し、印刷が終了すると元の位置に戻る構成になっている。なお、押上板14に対する伝動機構17は、前述の形態のものに限らない。例えばカム部材と駆動モータとの組み合わせによって、押上板14を上下回動させる構成であってもよい。
【0022】
一対の側部ガイド板15は、左右幅方向に互いに連動して遠近移動するように構成されている。手差しトレイ12上の記録材Pを一対の側部ガイド板15にて左右幅方向両側から挟持することによって、手差しトレイ12上の記録材Pがその規格に拘らずセンター基準にセットされる。
【0023】
装置本体2側には、手差しトレイ12に載置された記録材Pを1枚ずつ繰り出すピックアップローラ21と、ピックアップローラ21の搬送下流側に配置された給紙ローラ22と、給紙ローラ22と協働して記録材Pを捌く捌き部材としての捌きローラ23とがそれぞれ回転可能に配置されている。給紙ローラ22の支軸に連結アーム24の基端部が回動可能に取り付けられている。連結アーム24の先端部にピックアップローラ21が回転可能に軸支されている。従って、ピックアップローラ21は、連結アーム24を介して給紙ローラ22の支軸回りに上下回動(上下揺動)可能に支持されている。
【0024】
ピックアップローラ21は押上板14の上面に対峙している。図示は省略するが、連結アーム24は、手差しトレイ12上の記録材Pに適正な圧力で接するように、例えばバネといった公知の付勢手段によって常時下向きに付勢されている。従って、手差しトレイ12上にある記録材Pの先端側は、押上板14とピックアップローラ21とによって上下に挟み付けられることになる。また、ピックアップローラ21と給紙ローラ22とは、共通する手差し給紙モータ(図示省略)によって回転駆動するように構成されている。
【0025】
ピックアップローラ21と給紙ローラ22との間には、記録材Pに接触した状態でのピックアップローラ21の上下回動位置(以下、記録材接触位置という)を検出する位置検出手段としての位置センサ25が複数個配置されている。実施形態の位置センサ25は、例えば連結アーム24との当接によってオン作動する接触式のものであり、坪量256g/m以下の薄紙に対応する薄紙用位置センサ25aと、坪量256g/m超300g/m以下の厚紙に対応する厚紙用位置センサ25bと、坪量300g/m超の超厚紙に対応する超厚紙用位置センサ25cとに分けられている(図4〜図6参照)。
【0026】
捌き部材としての捌きローラ23は給紙ローラ22に下方から当接している。捌きローラ23には給紙を妨げる方向に所定のトルクが加えられていて、記録材Pの重送(2枚以上重ねて搬送すること)を防止するように構成されている。給紙ローラ22と捌きローラ23との当接部分は給紙ニップ部Nになっている。なお、捌き部材としては前述の捌きローラ23に限定されるものではなく、例えば板片状の捌きパッドであってもよい。給紙ローラ22の搬送下流側には、ガイド体によって手差し経路26が形成されている。手差し経路26は給紙部7からの搬送経路27と合流している。
【0027】
手差しトレイ12に記録材Pを載置してMFP1の印刷ボタン(図示省略)を押下すると、駆動モータ18の回転駆動によって押上板14が上向き揺動し、記録材Pの先端側を押し上げる。ピックアップローラ21が所定の記録材接触位置に到達すると、駆動モータ18が停止し、次いで、手差し給紙モータの回転駆動によってピックアップローラ21及び給紙ローラ22を回転させ、ピックアップローラ21の回転にて最上層の記録材Pが給紙ローラ22と捌きローラ23との間の給紙ニップ部Nに搬送される。給紙ニップ部Nに到達した記録材Pは、給紙ローラ22の回転によって手差し経路26を経て搬送経路27に送り出される。
【0028】
実施形態では、給紙ローラ22と捌きローラ23との間の給紙ニップ部Nを通るニップ接線TLに対するピックアップローラ21の記録材接触位置を、記録材Pの厚みに応じて可変にするローラ可変機構を備えている。この場合、記録材Pを挟んでピックアップローラ21と反対側の押上板14に対する伝動機構17が、ローラ可変機構を構成している。伝動機構17にて押上板14を上下揺動させることによって、記録材Pを挟んで反対側にあるピックアップローラ21が給紙ローラ22の支軸を中心に上下揺動し、ピックアップローラ21の記録材接触位置が変更されることになる。
【0029】
(3).ピックアップローラ位置制御の関連構成
次に、図7等を参照しながら、ピックアップローラ位置制御に関連する構成を説明する。さて、装置本体2内には、MFP1の制御全般を司る制御手段としてのコントローラ30が配置されている。コントローラ30は、各種演算処理や制御を実行するCPU31のほか、外部端末との接続用の通信インターフェイス(I/F)部32、EEPROMやフラッシュメモリ等の記憶手段33、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM34等を備えている。コントローラ30には、スキャナ部3、ADF4、画像形成部6、給紙部7及び操作パネル9が接続されている。また、コントローラ30には、前述した3種類の位置センサ25a〜25c、及び、伝動機構17を構成する駆動モータ18も接続されている。
【0030】
コントローラ30は、操作パネル9の特定操作によって、手差しトレイ12上にある記録材Pの厚みに関する記録材情報を選択し、該選択結果に基づく伝動機構17の駆動制御によって、給紙ローラ22と捌きローラ23との間の給紙ニップ部Nを通るニップ接線TLに対するピックアップローラ21の記録材接触位置を変更するピックアップローラ位置制御を実行するように構成されている。実施形態では、記録材Pの坪量が基準値S(例えば256g/m)を上回れば、ピックアップローラ21の記録材接触位置をニップ接線TLよりも下方の捌きローラ23側とし(図5及び図6参照)、記録材Pの坪量が基準値Sを下回れば、ピックアップローラ21の記録材接触位置をニップ接線TLよりも上方の給紙ローラ22側とする(図4参照)設定が採用されている。なお、基準値Sそれ自体は上回る側に含めてもよいし、下回る側に含めてもよい。実施形態では下回る側に含めた場合を示している。
【0031】
薄紙用位置センサ25aのオン作動時は、記録材Pの坪量が基準値Sを下回る場合に相当する。このため、ピックアップローラ21の記録材接触位置がニップ接線TLよりも上方の給紙ローラ22側となるように、伝動機構17を駆動制御することになる。側面視においてピックアップローラ21の記録材接触位置と給紙ニップ部Nとを結ぶ直線をlとすると、ニップ接線TLと直線lとのなす角度θは、例えば0(零)°以上+20°未満の範囲内になる(ニップ接線TLを挟んで上側を正、下側を負と規定した場合)。
【0032】
厚紙用位置センサ25b又は超厚紙用位置センサ25cのオン作動時は、記録材Pの坪量が基準値Sを上回る場合に相当する。ピックアップローラ21の記録材接触位置をニップ接線TLよりも下方の捌きローラ23側となるように、伝動機構17を駆動制御することになる。厚紙用位置センサ25bのオン作動時にニップ接線TLと直線lとのなす角度θは、例えば−5°以上0(零)°未満の範囲内になる。また、超厚紙用位置センサ25cのオン作動時にニップ接線TLと直線lとのなす角度θは、例えば−20°以上−5°未満の範囲内になる。
【0033】
(4).ピックアップローラ位置制御の説明
次に、図4〜図9を参照しながら、ピックアップローラ位置制御の一例について説明する。なお、図8のフローチャートにて示されるアルゴリズムは、コントローラ30の記憶手段33にプログラムとして記憶されており、RAM34に読み出されてからCPU31にて実行される。この場合、手差しトレイ12に記録材Pを載置した状態でMFP1の印刷ボタンを押下すると、ピックアップローラ位置制御が開始され、選択すべき記録材情報35(図9参照)が操作パネル9に表示される(S01)。図9に示す記録材情報35の画面には、例えば「紙種を入力してください」の文字データ36と、「薄紙」、「厚紙」及び「超厚紙」という3種類の選択ボタン37〜39とが表示される。
【0034】
それから、「薄紙」ボタン37を押下したか否かを判別し(S02)、「薄紙」ボタン37を押下していれば(S02:YES)、押上板14が上向き回動するように駆動モータ18を回転駆動させる(S03)。薄紙用位置センサ25aがオン作動したら(S04:YES)、駆動モータ18を停止させて押上板14の姿勢を保持する(S05)。この場合、ピックアップローラ21の記録材接触位置は、ニップ接線TLよりも上方の給紙ローラ22側となり、ニップ接線TLと直線lとのなす角度θは、例えば0°以上+20°未満の範囲内になる(図4参照)。その後、この状態で手差し給紙モータを回転駆動させて手差し給紙を開始する(S06)。
【0035】
ステップS02に戻り、「薄紙」ボタン37を押下していない場合は(S02:NO)、次いで「厚紙」ボタン38を押下したか否かを判別する(S07)。「厚紙」ボタン38を押下していれば(S08:YES)、押上板14が上向き回動するように駆動モータ18を回転駆動させ(S08)、厚紙用位置センサ25bがオン作動したら(S09:YES)、ステップS05に移行して、駆動モータ18を停止させて押上板14の姿勢を保持する。この場合、ピックアップローラ21の記録材接触位置は、ニップ接線TLよりも下方の捌きローラ23側となり、ニップ接線TLと直線lとのなす角度θは、例えば−5°以上0°未満の範囲内になる(図5参照)。
【0036】
ステップS07に戻り、「厚紙」ボタン38を押下していない場合は(S07:NO)、次いで「超厚紙」ボタン39を押下したか否かを判別する(S10)。「超厚紙」ボタン39を押下していない場合は(S10:NO)、ステップS02に戻る。「超厚紙」ボタン39を押下していれば(S10:YES)、押上板14が上向き回動するように駆動モータ18を回転駆動させ(S11)、超厚紙用位置センサ25cがオン作動したら(S12:YES)、ステップS05に移行して、駆動モータ18を停止させて押上板14の姿勢を保持する。この場合も、ピックアップローラ21の記録材接触位置は、ニップ接線TLよりも下方の捌きローラ23側となり、ニップ接線TLと直線lとのなす角度θは、例えば−20°以上−5°未満の範囲内になる(図6参照)。
【0037】
上記のように制御すると、手差しトレイ12に載置される記録材Pが坪量の小さい薄紙であれば、ピックアップローラ21の記録材接触位置がニップ接線TLよりも上方の給紙ローラ22側となり、給紙ニップ部Nに送られる際の記録材Pの突入角度θが例えば0°以上+20°未満の範囲内になる。つまり、ピックアップローラ21にて繰り出される記録材Pは給紙ニップ部Nにおける捌きローラ23側に向けて突入することになる。このため、複数枚重なった記録材P(薄紙)を給紙ニップ部Nに供給したとしても、捌きローラ23にて記録材Pをスムーズに捌き易く、記録材Pを1枚ずつに分離させて給紙ニップ部Nに供給できる(記録材Pの重送を抑制できる)。従って、薄紙の場合において、給紙ニップ部Nでの記録材Pの捌き性能を向上できる。また、押上板14とピックアップローラ21とによって記録材Pの先端側を上下に挟み付ける構成を採用しているから、記録材Pの束高さH(積載高さ)の確保も容易なのである。
【0038】
手差しトレイ12に載置される記録材Pが坪量の大きい超厚紙であれば、ピックアップローラ21の記録材接触位置がニップ接線TLよりも下方の捌きローラ23側となり、給紙ニップ部Nに送られる際の記録材Pの突入角度θが例えば−20°以上−5°未満の範囲内になる。つまり、ピックアップローラ21にて繰り出される記録材Pは給紙ニップ部Nにおける給紙ローラ22側(駆動側)に向けて突入することになる。このため、剛性の高い記録材P(超厚紙)であっても、駆動側である給紙ローラ22にて記録材Pの先端側をスムーズに給紙ニップ部Nに送り込める。従って、超厚紙の場合において、給紙ニップ部Nでの記録材Pの突入性能を向上できる。また、押上板14とピックアップローラ21とによって記録材Pの先端側を上下に挟み付ける構成を採用しているから、記録材Pの束高さH(積載高さ)を小さく限定するのも容易である。このため、剛性の高さに起因する記録材P後端側のストレスを軽減することが可能である。
【0039】
更に、手差しトレイ12に載置される記録材Pが坪量中程度の厚紙であれば、ピックアップローラ21の記録材接触位置がニップ接線TLよりも下方の捌きローラ23側となり、給紙ニップ部Nに送られる際の記録材Pの突入角度θが例えば−5°以上0°未満の範囲内になる。つまり、ピックアップローラ21にて繰り出される記録材Pは、ニップ接線TLと略重なるような姿勢で、給紙ニップ部Nに突入することになる。このため、突入角度をニップ接線TLに対して0(零)°近くにした理想的な姿勢で、記録材P(厚紙)を給紙ニップ部Nに供給でき、手差し給紙を安定的に実現できる(給紙ニップ部Nでの記録材Pの搬送性能を向上できる)。
【0040】
以上まとめると、上記の手差し給紙部11は、手差しトレイ12に載置された記録材Pを1枚ずつ繰り出すピックアップローラ21と、ピックアップローラ21の搬送下流側に配置された給紙ローラ22と、給紙ローラ22と協働して記録材Pを捌く捌きローラ23と、給紙ローラ22と捌きローラ23との間の給紙ニップ部Nを通るニップ接線TLに対するピックアップローラ21の記録材接触位置を、記録材Pの厚みに応じて可変にする伝動機構17とを備えているから、記録材Pの厚みに影響されることなく、最適な搬送性能及び捌き性能を得て、安定的な給紙機能と十分な記録材P積載枚数とを確実に確保できる。
【0041】
また、上記の手差し給紙部11付きのMFP1は、手差しトレイ12上にある記録材Pの坪量又は紙種といった記録材情報35を選択して設定する操作パネル9を備えているから、ピックアップローラ21の記録材接触位置を手動で位置決めする必要がないし、記録材情報35を検出する専用のセンサ等が要らないので、部品点数も少なくでき、コスト抑制に貢献できる。
【0042】
(5).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、画像形成装置としてMFP1を例に説明したが、これに限らず、プリンタ等でもよい。給紙装置としては、手差し給紙部11に限らず、給紙部7を採用してもよい。実施形態では、押上板14側に伝動機構17を設けたが、これをピックアップローラ21側に設けることも可能である。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 MFP(画像形成装置)
2 装置本体
3 スキャナ部
4 ADF
5 画像読取部
6 画像形成部
7 給紙部
9 操作パネル(設定手段)
11 手差し給紙部(給紙装置)
12 手差しトレイ(載置部)
14 押上板
16 回動支軸
17 伝動機構
18 駆動モータ
19 ギヤ部材
21 ピックアップローラ
22 給紙ローラ
23 捌きローラ(捌き部材)
24 連結アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部に載置された記録材を1枚ずつ繰り出すピックアップローラと、前記ピックアップローラの搬送下流側に配置された給紙ローラと、前記給紙ローラと協働して前記記録材を捌く捌き部材と、前記給紙ローラと前記捌き部材との間の給紙ニップ部を通るニップ接線に対する前記ピックアップローラの記録材接触位置を、前記記録材の厚みに応じて可変にするローラ可変機構とを備えている、
給紙装置。
【請求項2】
前記ローラ可変機構は、前記記録材の坪量が基準値を上回るときに、前記ピックアップローラの記録材接触位置を前記ニップ接線よりも下方の前記捌き部材側に設定する、
請求項1に記載した給紙装置。
【請求項3】
前記ローラ可変機構は、前記記録材の坪量が基準値を下回るときに、前記ピックアップローラの記録材接触位置を前記ニップ接線よりも上方の前記給紙ローラ側に設定する、
請求項1に記載した給紙装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれかに記載した給紙装置を有する画像形成装置であって、
前記載置部上にある前記記録材の坪量又は紙種といった記録材情報を選択して設定する設定手段を備えている、
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−51705(P2012−51705A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196807(P2010−196807)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】