説明

給紙装置及び画像形成システム

【課題】多種多様な用紙に対応でき、特に高速給紙に際しても確実に1枚ずつ給紙の可能な給紙装置及び、該給紙装置を有する画像形成システムを提供する。
【解決手段】用紙を積載する用紙載置台と、用紙載置台に積載された用紙を搬送経路に搬送する給送機構部と、用紙の側端部側に配置された送風部と、送風部の上方に位置し、用紙側端部上面を所定の押圧力で押圧する第1の位置と、第1の位置よりも用紙上面方向に移動した第2の位置とに変位可能な上面押圧部材と、上面押圧部材を第1の位置と第2の位置に切り替える切替機構部と、送風部による送風中であって、給送機構部の用紙搬送動作の開始以前又は開始と同時に、上面押圧部材を第2の位置に変位させるよう切替機構部を制御する制御部と、を有する給紙装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙載置台に積載した用紙の束から1枚ずつ分離して給送する給紙装置及び、該給紙装置を有する画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複写機やプリンタ等の画像形成装置の画像形成部に用紙を1枚ずつ供給する給紙装置として、用紙側面から送風して用紙を浮揚させるエアアシスト式のものが広く用いられている。
【0003】
近年では、多種多様な用紙、例えばコート紙や厚紙から薄紙のいずれに対しても正確に1枚ずつ分離給送できる給紙装置への要望が高くなっている。
【0004】
例えば、コート紙は、高湿環境では用紙同士の密着力が増し、側面から送風されて用紙が浮揚した際に、複数枚の用紙が密着して束状となる場合があり、そのまま給紙したのでは重送となってしまう。また、厚紙は、カール等のコシがある場合、例えば下カール位置の場合には側面からの送風が用紙間以外に逃げ送風の風圧が低下して用紙の浮揚が困難となる。また、上カール位置の場合には側面からの送風により過剰に浮揚して重送となってしまう。このような問題に対応するため、用紙の最上面に当接する当接部材と、用紙の浮揚に追従して当接部材を当接させる追従手段と、送風口を遮蔽する遮蔽部材を有し、遮蔽部材を当接部材の移動に連動させて、送風口に対する遮蔽部材の相対位置を変化させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、シートの最上位高さを検知する検知手段と、送風手段のエアー吹きつけ位置とシートの最上位高さを相対的に変化させる相対位置可変手段と、検知手段の検知結果に基づいて相対位置可変手段の駆動を制御する制御手段を備えたシート供給装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−35690号公報
【特許文献2】特開2007−91363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の給紙装置は、送風口の用紙上方の空間を遮蔽し、かつ用紙束を当接部材が押圧しているため、用紙間に効率よく送風でき用紙の浮揚に効果があるものである。しかし、給送動作中も当接部材が用紙に当接し押圧しているため、用紙給送時の負荷となり、薄紙のときに当接部材による折れ跡が、希に発生する場合がある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載のシート供給装置は、特に厚紙の場合に最上位の直下の用紙の浮揚が困難であり、最上位と2枚目との間に大きな隙間ができ、特に高速給紙を行う場合に、最上位の用紙を給紙した後、次の用紙を短時間に浮揚できず給紙遅れや不送りとなる問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑み、多種多様な用紙に対応でき、特に高速給紙に際しても確実に1枚ずつ給紙の可能な給紙装置及び、該給紙装置を有する画像形成システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、下記の構成により達成される。
【0011】
(1)用紙を積載する用紙載置台と、前記用紙載置台に積載された用紙を搬送経路に搬送する給送機構部と、用紙の側端部側に配置された送風部と、前記送風部の上方に位置し、用紙側端部上面を所定の押圧力で押圧する第1の位置と、前記第1の位置よりも用紙上面方向に移動した第2の位置とに変位可能な上面押圧部材と、前記上面押圧部材を前記第1の位置と前記第2の位置に切り替える切替機構部と、前記送風部による送風中であって前記給送機構部の用紙搬送動作の開始以前又は開始と同時に、前記上面押圧部材を前記第2の位置に変位させるよう前記切替機構部を制御する制御部と、を有することを特徴とする給紙装置。
【0012】
(2)前記給送機構部は、複数の貫通孔が形成されたベルトと、前記ベルトの内側に位置し前記貫通孔を通して空気を吸引する空気吸引部と、を有し、前記空気吸引部により空気を吸引して用紙を前記ベルトに吸着させ、搬送経路に搬送する吸着搬送装置であり、前記給送機構部の用紙搬送動作の開始は、前記ベルトを駆動する駆動ローラの駆動の開始であることを特徴とする前記(1)に記載の給紙装置。
【0013】
(3)前記給送機構部の下流側に搬送ローラ及び該搬送ローラの下流側に用紙を検知する検知部材を有し、前記制御部は、前記検知部材の用紙の先端検知と同時もしくは以降に、前記上面押圧部材を前記第1の位置に変位させるよう前記切替機構部を制御することを特徴とする前記(2)に記載の給紙装置。
【0014】
(4)前記給送機構部は、用紙上面に配置された給送ローラ、用紙を1枚に分離する分離用ローラ及び、前記分離用ローラの下流側に配置された搬送ローラにより搬送経路に搬送するものであり、前記給送機構部の用紙搬送を行う動作の開始は、前記用紙上面に配置されたローラの駆動の開始であることを特徴とする前記(1)に記載の給紙装置。
【0015】
(5)前記搬送ローラの下流側に用紙を検知する検知部材を有し、前記制御部は、前記検知部材の用紙の先端検知と同時もしくは以降に、前記上面押圧部材を前記第1の位置に変位させるよう前記切替機構部を制御することを特徴とする前記(4)に記載の給紙装置。
【0016】
(6)前記送風部の風圧が260Pa〜320Paであって、前記上面押圧部材が前記第1の位置にあるときの用紙に対する押圧力が、0.4N〜2.4Nであることを特徴とする前記(1)から(5)までのいずれかに記載の給紙装置。
【0017】
(7)前記送風部の風圧が260Pa〜380Paであって、前記上面押圧部材が前記第1の位置にあるときの用紙に対する押圧力が、0.4N〜1.2Nであることを特徴とする前記(1)から(5)までのいずれかに記載の給紙装置。
【0018】
(8)前記(1)から(7)までのいずれかに記載の給紙装置と、該給紙装置から供給された用紙に画像を形成する画像形成装置を有することを特徴とする画像形成システム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多種多様な用紙に対応でき、特に高速給紙に際しても確実に1枚ずつ給紙の可能な給紙装置及び、該給紙装置を有する画像形成システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像形成装置、画像読取装置、自動原稿送り装置、大容量給紙装置から構成された画像形成システムの全体構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る給紙装置本体の要部を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る給紙装置本体の概略断面図である。
【図4】第1送風部の一例を示す模式図である。
【図5】第1の実施の形態に係る給紙装置の制御の構成を示すブロック図である。
【図6】第1の実施形態に係る給紙装置の動作概略を示すフローチャートである。
【図7】用紙束と庇部の位置関係を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る給紙装置本体の要部の概略断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る給紙装置の動作概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0023】
[画像形成装置]
図1は、画像形成装置A、画像読取装置SC、自動原稿送り装置DF、大容量給紙装置LTから構成された画像形成システムの全体構成図である。
【0024】
図示の画像形成装置Aは、感光体(像担持体)1、帯電手段2、像露光装置3、現像装置4、転写手段5、クリーニング手段6、等から成る画像形成部と、定着装置7及び用紙搬送系と、から構成されている。
【0025】
用紙搬送系は、給紙カセット10、第1給紙手段11、第2給紙手段12、排紙手段14、搬送路切換手段15、循環再給紙手段16、反転排紙手段17等から構成されている。
【0026】
自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは搬送されて、画像読取装置SCの光学系により原稿の片面又は両面の画像が読みとられ、イメージセンサCCDにより読み込まれる。イメージセンサCCDにより光電変換されたアナログ信号は、制御部20の画像処理部で、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、像露光装置3に画像信号を送る。
【0027】
画像形成部においては、帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行われる。
【0028】
画像形成部においては、感光体1に対し、帯電手段2により電荷が付加され、像露光装置3からのレーザ光照射により静電潜像が形成され、現像装置4により静電潜像が顕像化されてトナー像となる。次いで、給紙カセット10に収容された用紙Pが第1給紙手段11から搬送される。一方、クリーニング手段6により感光体1上の転写残のトナーが除去される。
【0029】
用紙Pは、大容量給紙装置LTまたは給紙カセット10から供給され、レジストローラから成る第2給紙手段12でトナー像との同期がとられて搬送される。その後、用紙Pは、転写手段5でトナー像が転写されてから定着装置7により定着される。定着後の用紙Pは、排紙手段14により装置外に排出される。
【0030】
なお、両面コピーの場合は、第1面に画像形成された用紙Pは、循環再給紙手段16に送り込まれて反転され、再び画像形成部において第2面に画像形成後、排紙手段14により装置外に排出される。反転排紙の場合は、通常の排紙通路から分岐した用紙Pは、反転排紙手段17においてスイッチバックして表裏反転された後、排紙手段14により装置外に排出される。
【0031】
[給紙装置]
(第1の実施形態)
画像形成装置Aに接続された大容量給紙装置LTは、内部に複数の給紙装置本体30を有し、大量の用紙を収容して、画像形成装置Aに用紙を1枚ずつ給送する。
【0032】
第1の実施形態に係る給紙装置本体30は、用紙載置台31、用紙先端規制部材32、用紙後端規制部材33、ガイドレール34を有する。本例では、用紙載置台31は3段に構成され、各用紙載置台31は、ガイドレール34により大容量給紙装置LTから引き出し可能に構成されている。例えば、大容量給紙装置LTには、第1段のトレイに1300枚、第2段及び第3段のトレイに1850枚を収容でき、全体として5000枚程度の用紙を収容できる。
【0033】
図2は、第1の実施形態に係る給紙装置本体30の要部を示す斜視図であり、図3は、第1の実施形態に係る給紙装置本体30の概略断面図である。なお、図2、図3は、用紙載置台に積載された用紙を搬送経路に搬送する給送機構部として、用紙をベルトに吸着させ搬送経路に搬送する吸着搬送装置を用いた例である。なお、図2においては、給送機構部は実際に給紙装置本体30に設置された位置より、用紙搬送方向の下流側に若干水平に移動させた仮の位置で示している。
【0034】
図2、図3に示すように、用紙束Psは用紙載置台31の上に載置され、不図示の用紙載置台移動機構により用紙載置台31と共に昇降可能に収容されている。用紙を搬送する際には、図3に示す用紙高さセンサPS3が、最上位の用紙P1が所定の高さとなったことを検知するまで用紙載置台31を上昇させる。
【0035】
一対の用紙側端規制部41は用紙搬送方向と直交する方向の側面側において用紙束Psを規制するものである。用紙側端規制部材41は、用紙の幅方向において相対距離が自在に変更でき、用紙サイズに対応して用紙束Psの幅方向の位置を規制している。
【0036】
この一対の用紙側端規制部材41には開口部41kが形成され、この開口部41kより最上位の用紙P1の送り出し方向に直交する側方から積層された用紙束Psの上部領域に、エアーを吹き付ける第1送風部40が両側面にそれぞれ配置されている。
【0037】
また、用紙の送り方向における用紙載置台31の下流側には、用紙分離手段である第2送風部50が配設されている。
【0038】
また、大容量給紙装置LTの出口側には、第1の実施形態の給送機構部である吸着搬送装置60によって搬送された用紙を画像形成装置Aに搬送する搬送ローラ対39及び、その下流側には搬送される用紙の有無を検知する用紙検知センサPS1が配設されている。
【0039】
また、第1の実施形態の給送機構部である吸着搬送装置60の用紙の送り方向下部には、第2送風部50が配設されている。
【0040】
(第1送風部)
図4は、第1送風部40の一例を示す模式図である。
【0041】
図4(a)は、第1送風部40を送風口44側から見た前面図である。第1送風部40は、送風口44が形成された送風部ユニット45と、送風口44の下方に送風のためのファンユニット42を有している。ファンユニット42は、用紙側端規制部材41に固定されており、送風部ユニット45はファンユニット42に対し用紙積載方向である上下方向にスライド移動可能となされている。また、送風部ユニット45の上面は、図2に示すように、用紙上方に庇状の形状で用紙束Ps側に突出した庇部47が形成されており、用紙載置台31が上昇した際に、最上位の用紙P1の側端部上面に当接し押圧する。すなわち、庇部47は上面押圧部材として機能する。また、送風部ユニット45には、ワイヤ46が連結されており、ワイヤ46の他端部にはソレノイドSLのプランジャーが連結されている(図2参照)。
【0042】
図4(b)は、第1送風部40の背面側を示す図である。第1送風部40の背面側には、ファンユニット42に形成されたピン42pと、送風部ユニット45に形成されたピン45pの間に、バネ43が掛けられている。このバネ43の付勢力により、送風部ユニット45はファンユニット42方向に引っ張られている。このため、用紙載置台31が所定の高さまで上昇すると、庇部47が、最上位の用紙P1の上面に当接して図4(a)、(b)に示す送風口44が露呈する位置まで上昇し、用紙束Psに対しバネ43により押圧力が作用するようになっている。
【0043】
押圧力が弱すぎると、ファンの風圧だけで上面押圧部材である庇部47が押し上げられ、押圧力を用紙上面側端部に及ぼすことができなくなる。また、逆に押圧力が強すぎると用紙が十分に浮揚している状態を更に押圧して用紙同士を圧着させてしまい、重送の原因となる。
【0044】
このため、第1送風部40の風圧が260Pa〜320Paのときは、用紙載置台31が所定の高さまで上昇した際の、庇部47の用紙に対する押圧力(片側あたり)は0.4N以上、2.4N以下であることが好ましい。
【0045】
また、350g/m以下の坪量の用紙に対応する給紙装置においては、第1送風部40の風圧を260Pa〜380Paとし、庇部47の押圧力(片側あたり)を0.4N以上、1.2N以下とすると好ましい。
【0046】
図4(c)は、ワイヤ46の他端部に連結されたソレノイドSL(図2参照)を動作させた状態を示している。ソレノイドSLを動作させると、プランジャーが電磁石により引き寄せられ、図示の如く、バネ43の付勢力に抗して、送風部ユニット45は上方に移動させられる。
【0047】
図4に示すH1の位置は、用紙高さセンサPS3(図3参照)により用紙束の最上部が検出され用紙載置台31が停止させられたときの最上位の用紙P1の高さを示し、庇部47により用紙束Psを押圧している状態である。
【0048】
すなわち、上面押圧部材である庇部47は、用紙側端部上面を押圧する第1の位置(図示H1の高さ)と、第1の位置よりも用紙上面方向に移動した第2の位置(図示H2の高さ)とに変位可能となされている。また、この変位はソレノイドSLとバネ43で構成された切替機構部により行われている。
【0049】
なお、第1送風部40は、用紙の種類に応じて風圧を変化させてもよい。
【0050】
また、本例では、上面押圧部材に相当する部材を送風部ユニット45に一体的に庇部47として形成した例で説明しているが、これに限るものでなく、送風部ユニット45とは別体で形成されたものであってもよい。また、上面押圧部材の押圧及び変位の機構も、これに限るものでなく、第1の位置で所定の押圧力を付与でき、第2の位置に変位可能な機構であればよい。例えば、変位をモータ駆動でおこない、第1の位置に於ける押圧力をトルクリミッタにより制限するような方式でもよい。
【0051】
(給送機構部)
図2、図3に示すように、第1の実施形態の給送機構部である吸着搬送装置60は用紙載置台31に積載する用紙束Psの上方に位置し用紙搬送方向の下流側に配設されている。
【0052】
吸着搬送装置60は、多数の小径の貫通孔が形成された無端ベルト63(以下、吸着ベルトと称す)の一方の端部内側に配置され、吸着ベルト63に不図示のモータにより駆動力が供給される第1のローラ61と、吸着ベルト63の他方の端部内側に配置され従動回転する第2のローラ62(本例では、小径のローラ2つを使用しているが、1つであってもよい)で張架されている。
【0053】
また、吸着ベルト63の内側には、貫通孔を通して空気を吸引する空気吸引部64が配置されている。空気吸引部64は吸引ダクトと、吸引ダクト内に吸引ファンが配置されており、吸引ファンにより吸引されたエアーは吸引ダクトを介して側方に排出されるようになっている。
【0054】
空気吸引部64の吸引により、吸着ベルト63に吸着された最上位の用紙P1は、第1のローラ61及び第2のローラ62の回転により、搬送路70に搬送される。
【0055】
(第2送風部)
第2送風部50のファンユニット51は送風口53を上向きにして取り付けられている。上向きに吹き付けられたエアーは、ガイド板52により向きを変えられ、斜め上方に送風口53から吹き出され、吸着搬送装置60の吸着ベルト63の近傍に送風する。
【0056】
第2送風部50は、用紙の種類に応じて駆動が制御される。即ち、OHPフィルム、トレース用紙、表面が平滑な塗工紙、ミシン目や筋押し等の加工が施された用紙、オフセット印刷済みの用紙に打ち粉が塗布されている場合などで用紙間にエアーを吹き込んで分離を確実にする。
【0057】
以上が、第1の実施形態に係る給紙装置の概略機構である。
【0058】
図5は、第1の実施の形態に係る給紙装置の制御の構成を示すブロック図である。図4においては、本発明に係る構成要素以外は省略している。
【0059】
大容量給紙装置LTの制御部70は、画像形成装置Aの制御部20と連携して、その動作が制御される。大容量給紙装置LTの制御部70は、第1の実施形態の給送機構部である吸着搬送装置60、第1送風部40、第2送風部50、切替機構部のアクチュエータであるソレノイドSL及び、用紙載置台移動機構の動作を制御する。また、制御部70には、用紙高さセンサPS3、用紙検知センサPS1の検知結果や、用紙サイズ、用紙種等が入力されるようになっている。
【0060】
図6は、第1の実施形態に係る給紙装置の動作概略を示すフローチャートである。以下、第1の実施の形態に係る給紙装置の動作概略をフローに従い説明する。なお、図6に示すフローは、既に用紙載置台31が上昇し、用紙高さセンサPS3(図3参照)により用紙束Psの最上位の用紙P1が所定の高さに位置している状態(第1送風部は、図4(a)、(b)に示す状態)となっているものとする。
【0061】
オペレータにより画像形成動作のスタートが指示されると、画像形成装置Aの作像部と連携し、第1送風部40、第2送風部50を駆動し送風を開始すると共に、吸着搬送装置60の吸引を開始する(ステップS101)。このとき、切替機構部のアクチュエータであるソレノイドSLは、OFFされており、上面押圧部材である庇部47は第1の位置で、最上位の用紙側端部上面を押圧した状態である。
【0062】
図7は、用紙束Psと庇部47の位置関係を示す図である。
【0063】
用紙載置台31が上昇し、用紙高さセンサPS3(図3参照)により用紙束Psの最上位の用紙P1が所定の高さに位置して、送風を行っていないときは、図7(a)に示すように、用紙に対する押圧状態を維持した状態である。
【0064】
ステップS101の動作により、図7(b)に示すように、用紙束Psの上層の用紙が第1送風部40、第2送風部50の送風によってさばかれ、かつ吸着搬送装置60の吸引により最上位の用紙P1が吸着ベルト63に吸着される。
【0065】
このとき、上面押圧部材である庇部47は、バネ43の付勢力による最上位の用紙P1に対する押圧状態を維持しており、送風による用紙端部の浮揚による浮揚力と押圧力が平衡状態を保つ位置となる。このように、最上位の用紙P1が吸着ベルト63に吸着されるまでは、用紙に対する押圧状態を維持するようにすることで、最上位の用紙P1の上側に送風が逃げることを防止し、最上位の用紙P1より下の用紙間に効率よく送風を行うことが可能となり、用紙の種別を問わず、用紙の分離を良好にすることができる。
【0066】
図6に戻り、次いで、所定のタイミングで切替機構部のアクチュエータであるソレノイドSLをONし、上面押圧部材である庇部47を上方に上げ、第2の位置に変位させる(ステップS102)。これにより最上位の用紙P1への押圧が解除される。
【0067】
図7(c)は、庇部47を上方に上げ、第2の位置に変位させた状態を示している。
【0068】
図6に戻り、次いで、用紙搬送動作を開始する(ステップS103)。第1の実施形態においては用紙搬送動作の開始は用紙送り出しローラの回転、すなわち吸着ベルト63に駆動力を供給する第1のローラ61の回転の開始が相当する。
【0069】
用紙搬送動作が開始されたときは、上面押圧部材である庇部47が第2の位置にあるため、最上位の用紙P1との摩擦が低減され、用紙の搬送をよりスムーズに行うことができる。
【0070】
なお、ステップS102の上面押圧部材である庇部47を第2の位置に変位させる動作と、ステップS103の用紙搬送動作の開始とは、同時におこなってもよい。
【0071】
図6に戻り、次いで、用紙検知センサPS1が搬送されている用紙の先端を検知するのを待機する(ステップS104)。用紙検知センサPS1が搬送されている用紙の先端を検知(ステップS104;Yes)すると、用紙送り出しローラの回転を停止させ(ステップS105)、切替機構部のアクチュエータであるソレノイドSLをOFFし、バネ43の付勢力が庇部47に作用する状態とする(ステップS106)。これにより、庇部47による用紙に対する押圧状態が再開される。この、押圧状態の再開は、用紙検知センサPS1が用紙の先端を検知したと同時もしくは、それ以降であればよい。
【0072】
用紙検知センサPS1が搬送されている用紙の先端を検知した場合には、最上位の用紙P1が搬送ローラ対39により搬送されているということであり、庇部47による用紙への押圧をおこなっても搬送に支障を起こすことはない。
【0073】
次いで、最上位の用紙P1が用紙束Ps上から完全に離脱したか否か判断する(ステップS107)。この判断は、用紙検知センサPS1が用紙後端を検知したことで離脱したと判断してもよいし、用紙サイズと搬送速度から算出した時間の経過から離脱したと判断してもよい。また、図3に示す吸着搬送装置60と搬送ローラ対39の間に用紙後端を検知するセンサを配置し、このセンサの用紙後端検知により判断してもよい。
【0074】
最上位の用紙P1が用紙束Ps上から完全に離脱したと判断された場合(ステップS107;Yes)は、指定の枚数の給送終了か否か判断する(ステップS108)。指定の枚数の給送が終了していない場合(ステップS108;No)は、ステップS102に戻り、上述の動作を繰り返す。
【0075】
指定の枚数の給送終了の場合(ステップS108;Yes)は、送風・吸引等の駆動を停止して終了する。
【0076】
なお、用紙搬送動作の開始以前に、上面押圧部材である庇部47を第2の位置に変位させるタイミングとしては、例えば第1枚目の用紙の搬送のときは、予め決められた時間をタイマー等でカウントして用紙搬送動作の開始以前に第2の位置に変位させ、2枚目以降は、前の用紙の後端を用紙検知センサPS1が検知したと同時、もしくは検知して以降の用紙搬送動作の開始以前に第2の位置に変位させればよい。
【0077】
また、第1枚目の予め決められた時間については、庇部47の第2の位置への変位から用紙搬送動作の開始までの時間をtとすると、例えば80枚/分程度の処理速度の場合、0<t≦300(mS)とするのが好ましい。なお、tは、この範囲に限るものでなく、画像形成装置の作像部の速度や給紙装置の搬送速度に対応して決められるものである。また、2枚目以降の用紙の搬送に対しても、この時間tを適用してもよい。
【0078】
以上が、第1の実施形態に係る給紙装置の動作概略である。
【0079】
このように、用紙搬送前の用紙を浮揚させるときには上面押圧部材を押圧状態として、第1送風部の送風が最上位の用紙の上方から逃げてしまうことを防止することで、コート紙、厚紙等の重い用紙に対しては確実に1枚に分離して搬送できるようになる。
【0080】
さらに、給送機構部の用紙搬送動作の開始と同時又は、開始以前に、上面押圧部材を上方に退避させて押圧を解除することで、搬送中の用紙との摩擦を無くし、特に薄紙の場合の上面押圧部材による折れ跡の発生が解消できる。
【0081】
第1の実施形態では、給送機構部に吸着搬送装置を適用した例で説明したが、給送機構部をローラで構成したものにも適用可能である。以下に、給送機構部をローラで構成した例を、第2の実施形態として説明する。
【0082】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る給紙装置本体30の要部の概略断面図である。図8は庇部47が第1の位置に有る場合を図示している。第2の実施形態に係る給送機構部は、用紙上面に配置された給送ローラ、用紙を1枚に分離する分離用ローラ及び、前記分離用ローラの下流側に配置された搬送ローラにより搬送経路に搬送するものである。
【0083】
図8において、積層された用紙束Psは、不図示の用紙載置台上に載置され用紙載置台移動機構により、昇降可能に支持されている。
【0084】
第1の実施形態と同様に、一対の用紙側端規制部41が用紙搬送方向と直交する方向の側面側に配置されている。用紙側端規制部材41は、用紙の幅方向において相対距離が自在に変更でき、用紙サイズに対応して用紙束Psの幅方向の位置を規制している。
【0085】
この一対の用紙側端規制部材41には開口部41kが形成され、この開口部41kより最上位の用紙P1の送り出し方向に直交する側方から積層された用紙束Psの上部領域に、エアーを吹き付ける第1送風部40が両側面にそれぞれ配置されている。第1送風部40の構成は、第1の実施形態と同様であり、送風口44が形成された送風部ユニット45と、送風口44の下方に送風のためのファンユニット42を有している。ファンユニット42は、用紙側端規制部材41に固定されており、送風部ユニット45はファンユニット42に対し用紙積載方向である上下方向にスライド移動可能となされている。また、送風部ユニット45の上面は、用紙上方に庇状の形状で用紙束Ps側に突出した庇部47が形成されており、用紙載置台31が上昇した際に、最上位の用紙P1の側端部上面に当接し押圧する。送風部ユニット45には、ワイヤ46が連結されており、ワイヤ46の他端部にはソレノイドSLのプランジャーが連結されている。
【0086】
最上位の用紙P1上の送り方向先端には、給送ローラ81が配置されており、図示矢印方向に回転して第1送風部40の送風により浮揚した最上位の用紙P1を分離上ローラ82と分離下ローラ83の間に送る。
【0087】
給送ローラ81で複数枚の用紙が分離上ローラ82と分離下ローラ83の間に送られると、分離下ローラ83により2枚目以降の用紙が押し戻され、最上部の1枚だけが分離上ローラ82と分離下ローラ83の間を通過し、下流側の搬送ローラ対39で画像形成部へと送り込まれる。搬送ローラ対39の下流側には搬送される用紙の有無を検知する用紙検知センサPS1が配設されている。
【0088】
このような構成の第2の実施形態においても、第1送風部40の風圧が260Pa〜320Paのとき、用紙載置台31が所定の高さまで上昇した際の、庇部47の用紙に対する押圧力(片側あたり)は0.4N以上、2.4N以下であることが好ましい。
【0089】
また、350g/m以下の坪量の用紙に対応する給紙装置においては、第1送風部40の風圧を260Pa〜380Paとし、庇部47の押圧力(片側あたり)を0.4N以上、1.2N以下とすると好ましい。
【0090】
第2の実施形態に係る給紙装置の場合のブロック図は、図5に示す吸着搬送装置が図8に示す各ローラにより搬送経路に搬送するものとなり、第2送風部が省かれたものとなる。
【0091】
図9は、第2の実施形態に係る給紙装置の動作概略を示すフローチャートである。図9に示すフローは、図6に示すフローのステップS101〜ステップS103が異なるものである。このため、図9に示すフローのうち、異なるステップS201〜ステップS203のみ説明する。
【0092】
図9に示すフローにおいて、オペレータにより画像形成動作のスタートが指示されると、画像形成装置Aの作像部と連携し、第1送風部40を駆動し送風を開始する(ステップS201)。このとき、切替機構部のアクチュエータであるソレノイドSLは、OFFされており、上面押圧部材である庇部47は第1の位置で、最上位の用紙側端部上面を押圧した状態である。
【0093】
次いで、所定のタイミングで切替機構部のアクチュエータであるソレノイドSLをONし、上面押圧部材である庇部47を上方に上げ、第2の位置に変位させる(ステップS202)。これにより最上位の用紙P1への押圧が解除される。
【0094】
次いで、用紙搬送動作を開始する(ステップS203)。第2の実施形態においては用紙搬送動作の開始は用紙送り出しローラの回転、すなわち最上位の用紙P1上の送り方向先端に配置された給送ローラ81の回転の開始が相当する。
【0095】
用紙搬送動作が開始されたときは、上面押圧部材である庇部47が第2の位置にあるため、最上位の用紙P1との摩擦が低減され、用紙の搬送をよりスムーズに行うことができる。
【0096】
なお、ステップS202の上面押圧部材である庇部47を第2の位置に変位させる動作と、ステップS203の用紙搬送動作の開始とは、同時におこなってもよい。
【0097】
また、第2の実施の形態においても、上面押圧部材である庇部47を第2の位置に変位させるタイミングは、上記第1の実施の形態で説明したのと同様である。
【0098】
これ以降は、図6に示すステップS104以降と同様であり、説明は省略する。
【0099】
すなわち、第2の実施形態のような、給送機構部が用紙上面に配置された給送ローラ、用紙を1枚に分離する分離用ローラ及び、分離用ローラの下流側に配置された搬送ローラで構成された給紙装置においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0100】
上面押圧部材である庇部47が第1の位置にあるときの用紙に対する適切な押圧力について、実施例に基づき説明する。
【0101】
製品Aに図2に示す用紙側端規制部材41及び図4に示す第1送風部40を組み付け、通紙試験を行った。
【0102】
試験条件は、
・環境 :高温高湿(温度30℃、湿度80%)
・紙種 :上質紙(坪量350g/m
・紙サイズ:幅330mm×長さ482mm
・庇部 :両側2箇所
・押圧力 :0.1N、0.2N、0.4N、0.8N、1.2N、2.4N、3N
(庇部の片側あたりの押圧力)
・風圧(第1送風部片側あたり):220Pa、260Pa、320Pa、380Pa
・給送機構:吸着搬送
・通紙枚数:各500枚
とした。
【0103】
評価は、問題なく通紙を○、不具合が1回発生を△、不具合が2回以上発生を×とした。結果を以下の(表1)に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
表中の※1は、ノーフィードの発生を示している。これは、用紙束の隙間に風圧が掛からず、用紙同士が分離できなかったと推察される。
【0106】
表中の※2は、連れ送りの発生を示している。これは、用紙束に過剰な風圧が掛かり、送り出し時に用紙同士が強く擦れるためと推察される。
【0107】
実験は、高温高湿環境下で、坪量の大きな紙種とし、用紙が水分を吸収し浮上不足による給送不良の発生し易い厳しい条件を設定した。このため、本条件で問題なければ、坪量の小さな紙種では問題ないといえる。
【0108】
以上の結果より、風圧が260Pa〜320Paの場合、0.4N〜2.4Nの押圧力(片側あたり)が適切であることがわかる。また、風圧が260Pa〜380Paの場合、0.4N〜1.2Nの押圧力(片側あたり)が適切であることがわかる。
【符号の説明】
【0109】
30 給紙装置本体
31 用紙載置台
39 搬送ローラ対
40 第1送風部
41 用紙側端規制部材
41k 開口部
42 ファンユニット
43 バネ
44、53 送風口
45 送風部ユニット
46 ワイヤ
47 庇部(上面押圧部材)
50 第2送風部
60 吸着搬送装置
63 無端ベルト(吸着ベルト)
64 空気吸引部
A 画像形成装置
DF 自動原稿送り装置
LT 大容量給紙装置
SC 画像読取装置
SL ソレノイド
Ps 用紙束
P1 最上位の用紙
PS1 用紙検知センサ
PS3 用紙高さセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を積載する用紙載置台と、
前記用紙載置台に積載された用紙を搬送経路に搬送する給送機構部と、
用紙の側端部側に配置された送風部と、
前記送風部の上方に位置し、用紙側端部上面を所定の押圧力で押圧する第1の位置と、前記第1の位置よりも用紙上面方向に移動した第2の位置とに変位可能な上面押圧部材と、
前記上面押圧部材を前記第1の位置と前記第2の位置に切り替える切替機構部と、
前記送風部による送風中であって前記給送機構部の用紙搬送動作の開始以前又は開始と同時に、前記上面押圧部材を前記第2の位置に変位させるよう前記切替機構部を制御する制御部と、を有することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記給送機構部は、複数の貫通孔が形成されたベルトと、前記ベルトの内側に位置し前記貫通孔を通して空気を吸引する空気吸引部と、を有し、前記空気吸引部により空気を吸引して用紙を前記ベルトに吸着させ、搬送経路に搬送する吸着搬送装置であり、
前記給送機構部の用紙搬送動作の開始は、前記ベルトを駆動する駆動ローラの駆動の開始であることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記給送機構部の下流側に搬送ローラ及び該搬送ローラの下流側に用紙を検知する検知部材を有し、
前記制御部は、前記検知部材の用紙の先端検知と同時もしくは以降に、前記上面押圧部材を前記第1の位置に変位させるよう前記切替機構部を制御することを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記給送機構部は、用紙上面に配置された給送ローラ、用紙を1枚に分離する分離用ローラ及び、前記分離用ローラの下流側に配置された搬送ローラにより搬送経路に搬送するものであり、
前記給送機構部の用紙搬送を行う動作の開始は、前記用紙上面に配置されたローラの駆動の開始であることを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記搬送ローラの下流側に用紙を検知する検知部材を有し、
前記制御部は、前記検知部材の用紙の先端検知と同時もしくは以降に、前記上面押圧部材を前記第1の位置に変位させるよう前記切替機構部を制御することを特徴とする請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記送風部の風圧が260Pa〜320Paであって、
前記上面押圧部材が前記第1の位置にあるときの用紙に対する押圧力が、0.4N〜2.4Nであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記送風部の風圧が260Pa〜380Paであって、
前記上面押圧部材が前記第1の位置にあるときの用紙に対する押圧力が、0.4N〜1.2Nであることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の給紙装置と、該給紙装置から供給された用紙に画像を形成する画像形成装置を有することを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−246204(P2011−246204A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118109(P2010−118109)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】