説明

給送装置及び給送方法

【課題】部品点数の増大を抑制しつつ、長尺状の媒体の巻取り残量を把握することができる給送装置、記録装置、及び給送方法を提供する。
【解決手段】シートSをロール状に巻き重ねたロール体Rを支持する回転軸Jと、シートSをロール体Rから巻き解いて回転軸Jの下方にたるませる方向に回転軸Jを回転させる回転機構と、回転機構による回転軸Jの回転量を検出するロータリーエンコーダーと、回転軸Jの下方に配置され、ロール体Rから自重で垂れ下がるシートSのたるみ部分SGを検出するたるみセンサー20と、たるみセンサー20によるたるみ部分SGの検出状態及び非検出状態が切り替わる第1の時点と該第1の時点よりもシートSがロール体Rに巻き重ねられた状態にある第2の時点との間に、ロータリーエンコーダーが検出する回転軸Jの回転量に基づいて、ロール体Rの巻取り残量を推定するコンピューターとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の媒体を搬送経路に沿って搬送方向の上流側から下流側に向けて給送する給送装置及び給送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロール状に巻き重ねられた長尺状の媒体を巻き解いて給送する給送装置が広く知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の給送装置は、ロール状に巻き重ねられた長尺状のコイル材(媒体)を支持する回転軸と、回転軸をコイル材の繰り出し方向に回転させる駆動モーターと、コイル材の外周面までの距離を検出してコイル材の巻き取り残量を検出する巻取り残量検出センサーとを備えている。
【0003】
そして、上記の給送装置では、巻取り残量検出センサーが検出するコイル材の外径寸法に基づいて、駆動モーターによる回転軸の回転速度を制御することにより、コイル材の巻取り残量に関係なく一定の繰出し速度で回転軸からコイル材を繰り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−139238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の給送装置では、コイル材の巻取り残量を検出するための専用のセンサーとして巻取り残量検出センサーが設けられていたため、部品点数の増大に伴って装置全体が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部品点数の増大を抑制しつつ、長尺状の媒体の巻取り残量を把握することができる給送装置及び給送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の給送装置は、長尺状の媒体を搬送経路に沿って搬送方向の上流側から下流側に向けて給送する給送装置であって、前記媒体をロール状に巻き重ねたロール体を支持する回転軸と、前記媒体を前記ロール体から巻き解いて前記回転軸の下方にたるませる方向に前記回転軸を回転させる回転機構と、前記回転機構による前記回転軸の回転量を検出する回転量検出手段と、前記回転軸の下方に配置され、前記ロール体から自重で垂れ下がる前記媒体のたるみ部分を検出するたるみ検出手段と、前記たるみ検出手段による前記たるみ部分の検出状態及び非検出状態が切り替わる第1の時点と該第1の時点よりも前記媒体が前記ロール体に巻き重ねられた状態にある第2の時点との間に、前記回転量検出手段が検出する前記回転軸の回転量に基づいて、前記ロール体の巻取り残量を推定する残量推定手段とを備えた。
【0008】
媒体のたるみ部分の形態はロール体の巻取り残量に応じて変化するため、たるみ検出手段による媒体のたるみ部分の検出状態及び非検出状態が切り替わる第1の時点と、第1の時点よりも媒体がロール体に巻き重ねられた状態にある第2の時点との間の回転軸の回転量は、ロール体の巻取り残量に応じて変化する。そこで、上記構成では、第1の時点と第2の時点との間に、回転量検出手段が検出する回転軸の回転量に基づいて、ロール体の巻取り残量を推定している。すなわち、上記構成によれば、媒体の給送時における媒体のたるみ量を制御するために用いられるたるみ検出手段の検出結果、及び、媒体の給送時における回転軸からの媒体の繰出し量を制御するために用いられる回転量検出手段の検出結果に基づいて、ロール体の巻取り残量を推定している。そのため、ロール体の巻取り残量を検出するための専用の部材を設けることが不要となる。したがって、部品点数の増大を抑制しつつロール体の巻取り残量を把握することができる。
【0009】
また、本発明の給送装置において、前記残量推定手段は、前記媒体の前記たるみ部分を前記ロール体に巻き戻した状態から、前記媒体を前記ロール体から巻き解いて形成される前記たるみ部分を前記たるみ検出手段が検出するまでの間に、前記回転量検出手段が検出する前記回転軸の回転量に基づいて前記ロール体の巻取り残量を推定する。
【0010】
上記構成によれば、媒体のたるみ部分をロール体に巻き戻して媒体のたるみ量を無くした状態から、媒体をロール体から巻き解いて媒体のたるみ部分を形成する。そして、媒体のたるみ量が所定の大きさに到達した時点で、媒体のたるみ部分がたるみ検出手段によって検出される。そのため、ロール体の巻取り残量を推定する前時点での媒体のたるみ態様に影響を受けることなく、ロール体の巻取り残量を正確に推定することができる。
【0011】
また、本発明の給送装置において、前記媒体は、前記たるみ部分の前記ロール体につながる側を基端側とした場合の先端側が前記ロール体の外周面における前記基端側とは反対側となる位置に巻き掛けられた状態で、前記搬送経路に導かれる。
【0012】
上記構成によれば、媒体は、たるみ部分の先端側がロール体の外周面に巻き掛けられるので、搬送経路に導かれる媒体に対して適度な張力が付与される。そのため、媒体を巻き掛けて媒体に対して張力を付与する従動ローラーを設けない場合であっても、媒体のたるみ部分の形状を所定の形状に維持し易くなる。したがって、部品点数の増大を更に抑制しつつ、ロール体の巻取り残量を正確に推定することができる。
【0013】
また、本発明の給送装置は、前記搬送経路の前記搬送方向における上流端に設けられ、前記媒体における前記ロール体に巻き重ねられる面とは反対側の面に当接する当接部材を更に備えた。
【0014】
上記構成によれば、当接部材は、ロール体から巻き解かれた媒体に対し、媒体に生じるカールの湾曲方向とは反対側から当接することにより、媒体が回転軸から遠ざかる方向に蛇行することを規制している。その結果、媒体のたるみ部分におけるより多くの部分がロール体の外周面に巻き掛けられた状態となり、媒体に対して張力がより確実に作用する。したがって、媒体のたるみ部分の形状が所定の形状に維持され易くなるため、ロール体の巻取り残量をより正確に推定することができる。
【0015】
また、本発明の給送方法は、長尺状の媒体を搬送経路に沿って搬送方向の上流側から下流側に向けて給送する給送方法であって、前記媒体をロール状に巻き重ねたロール体を支持する回転軸を回転させる回転ステップと、前記回転ステップにおいて前記ロール体から自重で垂れ下がる前記媒体のたるみ部分がたるみ検出手段によって検出されるか否かが切り替わる第1の時点と、該第1の時点よりも前記媒体が前記ロール体に巻き重ねられた状態にある第2の時点との間における前記回転軸の回転量に基づいて、前記ロール体の巻取り残量を推定する残量推定ステップとを備えた。
【0016】
上記構成によれば、上記給送装置の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施形態の給紙装置を備えたプリンターの概略構成を示す側面図。
【図2】ロール体を交換するときの収容体の位置を示す側面図。
【図3】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図4】(a)〜(d)はロール体の巻取り残量を推定する際の作用を示す模式図であって、(a)はロール体を交換した直後の状態を示す模式図、(b)はシートのたるみ部分をロール体に巻き戻した状態を示す模式図、(c)はロール体からシートが巻き解かれた状態を示す模式図、(d)は図4(c)に示す状態よりもロール体の巻取り残量が少ない状態で、ロール体からシートが巻き解かれた状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある)に搭載される給送装置に具体化した実施形態を説明する。
図1に示すように、プリンター11は、開閉可能なカバー12a及び排紙部12bを有する本体ケース12と、給送装置13と、記録装置14と、カッター15とを備えている。また、プリンター11は、給送装置13、記録装置14及びカッター15の各種動作を制御するための制御装置100を備えている。なお、本実施形態においては、本体ケース12のカバー12aが設けられた図1における右側の側面をプリンター11の前面とするとともに、本体ケース12の排紙部12bが設けられた図1における左側の側面をプリンター11の背面とする。
【0019】
給送装置13は、複数のロール体R(R1,R2)をそれぞれ支持する回転軸J(J1,J2)を備えている。なお、ロール体R(R1,R2)は、長尺状の媒体としてのシートS(S1,S2)をロール状に巻き重ねたものである。また、給送装置13は、ロール体R1,R2をそれぞれ収容可能な収容体16,17と、回転軸Jを回転させる回転機構18(図3参照)とを備えている。さらに、給送装置13は、ロール体Rから巻き解かれたシートSを本体ケース12の前面側から排紙部12bに向かって延びる搬送経路に沿って搬送する搬送機構19と、たるみ検出手段としてのたるみセンサー20とを備えている。
【0020】
収容体16は、底壁部16aと、底壁部16aの幅方向Yにおける両側に設けられた側壁部16bとを有している。そして、収容体16は、常時は本体ケース12の内部に形成された収容空間ALに配置される。なお、本体ケース12のカバー12aは、収容体16の収容空間ALを開閉する。
【0021】
本体ケース12の内部において、収容空間ALの背面側には制御装置100等を収容する収容室STが配置されている。そして、収容体16は背面側に壁部を有していないので、収容位置に配置されたロール体R1は、収容室STの前面側の壁部WLと対向している。
【0022】
本体ケース12の外部において、カバー12aの上方にはシャフト12cが設けられている。そして、収容体17は、シャフト12cを中心にそれぞれ回転可能に設けられた本体部17aと蓋部17bとを有している。
【0023】
図2に示すように、収容体16は、本体ケース12のカバー12aを外側に開いた場合に、本体ケース12の外部へ引き出し可能である。そして、収容体16においては、収容体16を外側に引き出した状態でロール体R1の交換が行われる。なお、本体ケース12の内部に収容された状態の収容体16の位置を「収容位置」(図2に二点鎖線で示す)とするとともに、本体ケース12の外部に引き出された状態の収容体16の位置を「交換位置」(図2に実線で示す)とする。
【0024】
収容体17については、図2に実線で示す位置を「退避位置」とするとともに、図2に二点鎖線で示す位置を「供給位置」とする。そして、ロール体R2から巻き解いたシートS2を記録装置14に向けて給送する場合には、収容体17は供給位置に配置される。また、収容体16においてロール体R1の交換が行われる場合には、収容体17が供給位置から退避位置に移動される。さらに、収容体17においてロール体R1を交換する場合には、収容体17の本体部17aを供給位置に配置した状態で、蓋部17bのみを退避位置と同じ位置に回転させる。
【0025】
図3に示すように、回転機構18は、回転軸Jを正逆両方向に回転させるための回転モーター23と、動力伝達切換装置24とを備えている。動力伝達切換装置24は、記録装置14に対して給送されるシートS1,S2の切り替えに際して、回転モーター23の動力の伝達先を回転軸J1と回転軸J2とで切り換える。なお、回転モーター23の出力軸には、回転量検出手段としてのロータリーエンコーダー23aが設けられている。そして、ロータリーエンコーダー23aは、回転モーター23の出力軸の回転速度、回転位置及び回転方向を検出することにより、回転モーター23による回転軸J1,J2の回転量を検出する。
【0026】
回転モーター23は、記録装置14に向けてシートSを給送する場合には、正転方向に駆動して、シートSをロール体Rから巻き解いて回転軸Jの下方にたるませる方向(図1における反時計回り方向)に回転軸Jを回転させる。また、回転モーター23は、給送されるシートS1,S2の切り替えが行われる前に逆転方向に駆動して、シートSをロール体Rに巻き取る方向(図1における時計回り方向)に回転軸Jを回転させる。
【0027】
図1に示すように、搬送機構19は、搬送経路を形成する搬送経路形成部材26,27,28と、反転経路を形成する反転経路形成部材29と、給紙ローラー30,31と、搬送ローラー32〜37とを備えている。また、搬送機構19は、搬送ローラー32〜37とそれぞれ対をなす従動ローラー42〜47を備えている。さらに、図3に示すように、搬送機構19は、搬送ローラー32〜37を回転させる搬送モーター48と、ロータリーエンコーダー48aと、動力伝達切換装置49とを備えている。
【0028】
ロータリーエンコーダー48aは搬送モーター48の出力軸に設けられ、該出力軸の回転速度、回転位置及び回転方向を検出する。また、動力伝達切換装置49は、シートSの搬送工程に応じて、搬送モーター48と搬送ローラー32〜37との間で動力の伝達先を切り換える。そして、搬送機構19は、搬送モーター48の駆動によって、ロール体Rから巻き解かれたシートSを幅方向Yと交差(直交)する搬送方向Xの上流側から下流側に位置する記録装置14に向けて搬送(給送)する。
【0029】
図1に示すように、給送装置13がシートSを給送する場合には、まず回転モーター23を駆動してロール体RからシートSの一部を巻き解いてロール体Rの下方にたるませた状態とした後に、搬送モーター48を駆動する。すなわち、シートSは、ロール体Rの下方に自重で垂れ下がったたるみ部分SGが図1における矢印方向(以下、これを「送り方向」と表記する)に送り出される。
【0030】
また、シートSは、たるみ部分SGのロール体Rにつながる側を基端側とした場合の先端側がロール体Rの外周面における基端側とは反対側となる位置に巻き掛けられた状態で、搬送経路に導かれる。ここで、搬送経路形成部材26,27において、搬送方向Xにおける上流端は、上下方向において、それぞれ対応する回転軸J1,J2と同等かそれより高い位置に配置されている。そのため、巻き解かれたシートSにおいて、ロール体Rの外周面に巻き掛けられる部分はロール体Rの周面の4分の1程度かそれより短くなり、搬送経路に向かうシートSに適度な張力が付与される。また、搬送経路の搬送方向Xにおける上流端に設けられた給紙ローラー30,31は、シートSにおけるロール体Rに巻き重ねられる面とは反対側の面に当接する当接部材として機能する。
【0031】
たるみセンサー20は、ロール体R1,R2から自重で垂れ下がるシートSのたるみ部分SGの下端位置を検出するために、回転軸J1,J2の下方となる収容体16,17の内底部に1つずつ設けられている。図1の部分拡大断面図に示すように、たるみセンサー20は、上部に開口部51aを有するケース51と、ケース51内に配置されるレバー52と、ローラー53と、レバー52の先端部の変位を検知する検知部54とを有している。
【0032】
なお、図1においては、収容体16から給送されるシートSを実線で図示する一方、収容体17から給送されるシートSを仮想的に二点鎖線で図示している。そして、収容体16内に設けられたたるみセンサー20について部分拡大断面図を示して詳細な構成を図示しているが、収容体17内に設けられたたるみセンサー20についても、同様の構成を有している。
【0033】
レバー52の先端側には、ローラー53を支持するための支持部52aが上側に向けて突設されている。なお、レバー52の先端とは、図1では右端であり、たるみ部分SGの送り方向における下流側の端部である。ローラー53は、支持部52aに回転自在に支持されている。また、ローラー53は、シートSのたるみ部分SGに接触した場合にたるみ部分SGが搬送経路に向かって送り出されるのに伴って図1における時計回り方向に従動回転する。
【0034】
レバー52は、たるみ部分SGの送り方向における上流側となる基端側(図1では左端側)に設けられたレバー軸55を中心に傾動可能に構成されている。また、レバー52のレバー軸55の周りには、ねじりコイルばね56が設けられている。
【0035】
レバー52は、ローラー53にたるみ部分SGが接触していない状態では、図1に二点鎖線で示す基準位置に配置される。そして、シートSが巻き解かれてたるみ部分SGがローラー53に接触し、レバー52の先端側がローラー53を介してたるみ部分SGに押圧されると、たるみ部分SGの下端位置の上下方向における変化に伴ってレバー52が傾動する。このとき、レバー52はねじりコイルばね56の付勢力に抗して、図1における時計回り方向に回転する。また、この状態からシートSが搬送されてたるみ部分SGの下端位置が上側に移動すると、ねじりコイルばね56の付勢力によって、レバー52が基準位置に向けて図1における反時計回り方向に回転する。
【0036】
検知部54は、幅方向Yにおいてレバー52を挟むように間隔を有して配置された図示しない光源部と受光部とを有している。そして、光源部は受光部に向けて光を出射するとともに、受光部は受光した光の強さに応じた電気信号を制御装置100に出力する。
【0037】
例えば、図1に二点鎖線で示すように、レバー52の先端部が検知部54から上方に離間した位置にある場合には、受光部は光源部から出射された光を受光して所定の閾値以上のON値を出力する。一方、図1に実線で示すようにレバー52の先端部が光源部から出射された光を遮ると、受光部は前記閾値未満のOFF値を出力する。
【0038】
したがって、受光部からの出力値がON値からOFF値に変化することで、シートSが適度にたるんだ状態になったことが検出される。また、シートSのたるみ部分SGが搬送経路側に送り出されてその下端位置が予め規定された規定位置BLより上側に移動すると、レバー52が図1に二点鎖線で示すように傾動して、受光部からの出力値がOFF値からON値に変化する。これにより、シートSのたるみ部分SGの長さが不足した状態になったことが検出される。
【0039】
次に、記録装置14の構成について説明する。
記録装置14は、搬送経路の上側に配置されたガイド軸61と、ガイド軸61に支持されたキャリッジ62と、キャリッジ62に支持された記録ヘッド63とを備えている。また、記録装置14は、搬送経路を挟んで記録ヘッド63と対向する位置に配置された支持部材64を備えている。
【0040】
ガイド軸61は、幅方向Yに沿って延びるように設けられている。そして、キャリッジ62は、ガイド軸61に案内されつつ幅方向Yに往復移動する。支持部材64は、給送装置13によって搬送されるシートSを支持する。記録ヘッド63には、インクを噴射する複数のノズル(図示略)が設けられている。そして、支持部材64に支持されたシートSの表面(図1では上面)に向けて記録ヘッド63からインクが噴射されることで、シートSに印刷処理(記録処理)が施される。
【0041】
なお、プリンター11では、1つの印刷ジョブに含まれる印刷データを複数に分割し、分割された印刷処理をキャリッジ62の走査毎に行うとともに、各印刷処理の合間に、シートSの印刷処理が施された部分を搬送機構19によって間欠的に搬送(給送)する。すなわち、記録装置14では、幅方向Yが長手方向となる帯状の画像の形成と紙送りとが交互に繰り返されることで、1つの印刷ジョブに基づく画像が形成される。
【0042】
カッター15は、搬送方向Xにおいて記録装置14の下流側となる位置に配置されている。カッター15は、シートSの印刷処理が施された先端側を幅方向Yに切断することで、切断されたシートSの先端側の一部を所定のプリントサイズのカットシートCS(単票)とする。
【0043】
シートSの切断は、印刷処理のために搬送を停止したタイミングで行われる。そして、印刷及び切断が完了したカットシートCSは、搬送機構19によって排紙部12bに向けて停止されることなく連続的に搬送され、排紙部12bで反転された後、本体ケース12の上面側に排出される。
【0044】
なお、本実施形態では、搬送機構19によって印刷処理のためにシートSを間欠的に搬送することを「給送」(給紙)という。これに対して、印刷及び切断が完了したカットシートCSを排紙部12bに向けて連続的に搬送することは「排出」(排紙)にあたるが、給送と排出とを含む場合や、給送と排出とを区別しない場合などには「搬送」ということがある。
【0045】
次に、プリンター11の電気的構成について説明する。
図3に示すように、制御装置100は、コンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103,104とを備えている。コンピューター101は、バス108を介して、ヘッド駆動回路102及びモーター駆動回路103,104に電気的に接続されている。
【0046】
コンピューター101は、ASIC109(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU110、ROM111、RAM112、不揮発性メモリー113を備えている。ROM111には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。不揮発性メモリー113には、ファームウェアプログラムを始めとする各種プログラム及び印刷処理に必要な各種データなどが記憶されている。RAM112には、CPU110によって実行されるプログラムデータや、CPU110による演算結果及び処理結果である各種データ、並びにASIC109で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0047】
コンピューター101は、CPU110がROM111等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介して記録ヘッド63を制御するとともに、モーター駆動回路103,104を介してそれぞれ回転モーター23と搬送モーター48とを制御する。なお、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー48aからの検出信号に基づいて搬送モーター48を制御するとともに、ロータリーエンコーダー23a及びたるみセンサー20からの検出信号に基づいて回転モーター23を制御する。
【0048】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について、特に、回転軸J1,J2に支持されるロール体Rの巻き径を推定する際の作用に着目して以下説明する。なお、収容体16及び収容体17において各々が収容するロール体Rの巻き径を推定する際の作用は共通であるため、以下の説明においては、収容体16に収容されるロール体Rの巻き径を推定する際の作用について説明する。
【0049】
さて、図4(a)に示すように、回転軸J1に支持されるロール体R1の交換が行われた直後では、ロール体R1から巻き解かれて搬送ローラー32に巻き掛けられるシートS1には若干の緩みが生じている。そのため、ロール体R1から巻き解かれたシートS1のたるみ部分SGが重力に従ってロール体R1の下方に形成される。
【0050】
そして次に、図4(b)に示すように、コンピューター101は、回転モーター23を逆転方向に駆動させることにより、回転軸J1を図4(b)に示す時計回り方向に回転させる。すると、シートS1のたるみ部分SGがロール体R1に巻き取られることにより、シートS1がロール体R1と搬送ローラー32との間にたるみなく掛装される(以下、この巻き取り完了の時点を「第2の時点」と称す)。
【0051】
続いて、図4(c)に示すように、回転ステップとして、コンピューター101は、回転モーター23を正転方向に駆動させることにより、回転軸J1を図4(c)に示す反時計周り方向に回転させる。すると、ロール体R1から巻き解かれたシートS1のたるみ部分SGが重力に従ってロール体R1の下方に形成され始める。そして、シートS1のたるみ部分SGの下端位置がたるみセンサー20によって検出されると、たるみセンサー20の出力値がON値からOFF値になる(以下、この出力値切り替わりの時点を「第1の時点」と称す)。
【0052】
ここで、残量推定ステップとして、コンピューター101は、第2の時点から第1の時点までの間の回転軸J1の回転量を、ロータリーエンコーダー23aから出力される検出信号に基づいて算出する。この場合、図4(c)に示すようにロール体R1の巻取り残量が相対的に多い場合には、図4(d)に示すようにロール体R1の巻取り残量が相対的に少ない場合よりも、たるみセンサー20がシートS1のたるみ部分SGを検出する段階でロール体R1から巻き解かれているシートS1のたるみ部分SGの大きさが小さい。また、巻取り残量が多いほどロール体R1の外径が大きいため回転軸J1が1回転することによって巻き解かれるシートS1の長さが長くなる。そのため、ロール体R1の巻取り残量が相対的に多い場合には、第2の時点から第1の時点までの間に要する回転軸J1の回転数が比較的小さくなる。
【0053】
すなわち、第2の時点から第1の時点までの間の回転軸J1の回転量とロール体R1の巻取り残量とは一定の相関関係を有している。この相関関係のデータについては、予め実験によって定められた上でROM111に記憶されている。そして、コンピューター101は、第2の時点から第1の時点までの間に要した回転軸J1の回転数と、ROM111から読み出した上記の相関関係のデータとを比較することにより、ロール体R1の巻取り残量を推定する。すなわち、コンピューター101は、たるみセンサー20によるたるみ部分SGの検出状態及び非検出状態が切り替わる第1の時点と、第1の時点よりもシートSがロール体Rに巻き重ねられた状態にある第2の時点との間に、ロータリーエンコーダー23aが検出する回転軸Jの回転量に基づいて、ロール体Rの巻取り残量を推定する残量推定手段として機能する。
【0054】
その後、ロール体R1から巻き解かれたシートS1は、常時、たるみセンサー20によってシートS1のたるみ部分SGの下端位置が検出されつつ記録装置14に向けて給送され、記録装置14において印刷処理が施される。
【0055】
なお、本実施形態では、ロール体R1を交換した直後に生じるシートS1のたるみ部分SGを一旦消失させてから、たるみセンサー20がシートS1のたるみ部分SGを検出するまでの間の回転軸J1の回転数を算出し、その算出結果に基づいてロール体R1の巻取り残量を推定する。そのため、ロール体R1を交換した直後におけるシートS1のたるみ態様が多様にばらついても、回転軸J1の回転数を算出する際の起点となる第2の時点においてシートS1のたるみが常に無い状態となるため、ロール体R1の巻取り残量を精度良く推定することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、シートS1は、たるみ部分SGのロール体R1につながる側を基端側とした場合の先端側がロール体R1の外周面における基端側とは反対側となる位置に巻き掛けられるので、シートS1に対して適度な張力が付与される。そのため、シートS1のたるみ部分SGの形状が所定の形状に維持され易くなるため、ロール体R1の巻取り残量を正確に推定することが可能となる。
【0057】
ところで、ロール体R1から巻き解かれて繰り出されるシートS1は、回転軸J1から遠ざかる方向に凸状に湾曲したカールを生じる。こうしたカールは、ロール体R1の巻取り残量が少なくなった場合に特に顕著となる。この点、本実施形態では、図4(c)及び図4(d)に示すように、給紙ローラー31は、ロール体R1から巻き解かれたシートS1に対し、シートS1に生じるカールの湾曲方向とは反対側から当接することにより、シートS1が回転軸J1から遠ざかる方向に蛇行することを規制している。その結果、シートS1のたるみ部分SGにおけるより多くの部分がロール体R1の外周面に巻き掛けられた状態となり、シートS1に対して張力がより確実に作用する。したがって、シートS1のたるみ部分SGの形状が所定の形状に維持され易くなるため、ロール体R1の巻取り残量をより正確に推定することが可能となる。
【0058】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)シートSの給送時におけるシートSのたるみ量を制御するために用いられるたるみセンサー20の検出結果、及び、シートSの給送時における回転軸JからのシートSの繰出し量を制御するために用いられるロータリーエンコーダー23aの検出結果に基づいて、ロール体Rの巻取り残量を推定している。そのため、ロール体Rの巻取り残量を検出するための専用の部材を設けることが不要となる。したがって、部品点数の増大を抑制しつつロール体Rの巻取り残量を把握することができる。
【0059】
(2)シートSのたるみ部分SGをロール体Rに巻き戻してシートSのたるみ量を無くした状態から、シートSをロール体Rから巻き解いてシートSのたるみ部分SGを形成する。そして、シートSのたるみ量が所定の大きさに到達した時点で、シートSのたるみ部分SGがたるみセンサー20によって検出される。そのため、ロール体Rの巻取り残量を推定する前時点でのシートSのたるみ態様に影響を受けることなく、ロール体Rの巻取り残量を正確に推定することができる。
【0060】
(3)シートSは、たるみ部分SGの先端側がロール体Rの外周面に巻き掛けられるので、搬送経路に導かれるシートSに対して適度な張力が付与される。そのため、シートSを巻き掛けてシートSに対して張力を付与する従動ローラーを設けない場合であっても、シートSのたるみ部分SGの形状を所定の形状に維持し易くなる。したがって、部品点数の増大を更に抑制しつつ、ロール体Rの巻取り残量を正確に推定することができる。
【0061】
(4)給紙ローラー30,31は、ロール体Rから巻き解かれたシートSに対し、シートSに生じるカールの湾曲方向とは反対側から当接することにより、シートSが回転軸Jから遠ざかる方向に蛇行することを規制している。その結果、シートSのたるみ部分SGにおけるより多くの部分がロール体Rの外周面に巻き掛けられた状態となり、シートSに対して張力がより確実に作用する。したがって、シートSのたるみ部分SGの形状が所定の形状に維持され易くなるため、ロール体Rの巻取り残量をより正確に推定することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、給紙ローラー30及び給紙ローラー31のうち少なくとも一方は、シートSにおけるロール体Rに巻き重ねられる面に当接するようにしてもよい。
【0063】
・上記実施形態において、ロール体Rから巻き解かれたシートSのたるみ部分SGの形状を所定の形状に維持できるのであれば、シートSのたるみ部分SGの先端側をロール体Rの外周面に巻き掛けることなく搬送経路に導くようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態において、コンピューター101は、シートSにたるみ部分SGを形成した状態で回転モーター23を逆転方向に駆動させ、たるみセンサー20の出力値がOFF値からON値になった第1の時点からシートSのたるみ部分SGがロール体Rに巻き戻された第2の時点までの間の回転軸Jの回転量に基づいてロール体Rの巻取り残量を推定してもよい。
【0065】
・上記実施形態において、コンピューター101は、シートSのたるみ部分SGがロール体Rに巻き戻された状態からシートSがロール体Rから所定量巻き解かれた時点を第2の時点としてもよい。そして、この第2の時点からたるみセンサー20の出力値がON値からOFF値になる第1の時点までの回転軸Jの回転量に基づいてロール体Rの巻取り残量を推定してもよい。
【0066】
・上記実施形態において、収容体16及び収容体17に収容されるロール体Rの巻き径を推定するタイミングは、ロール体Rの交換時に限定されず、例えば、プリンター11の電源を入れた際にロール体Rの巻き径の推定を行ってもよい。
【0067】
・上記実施形態において、給送装置13は、ロール体Rを収容する収容体を1つのみ備えるようにしてもよい。
・上記実施形態において、媒体は用紙に限らず、金属やプラスチックフィルム、布など、任意の素材から構成することができる。
【0068】
・上記実施形態において、ロール体Rから巻き解かれたシートSの巻き癖を矯正するためのデカール機構を搬送経路中に設けてもよい。シートSの巻き癖は、ロール体Rの巻取り残量が多い状態から巻き解かれた場合と比較して、巻取り残量が少ない状態から巻き解かれた場合の方が巻き癖が強いので、巻取り残量が少なくなるにしたがってデカール量を大きくすることが好ましい。このような場合、上記のようにして推定されたロール体R1の巻取り残量に応じて、デカール量を調整することができる。
【0069】
・上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0070】
・給送装置は、記録装置に備えられるものに限らない。例えば、媒体に対するシールの貼付処理や、箔の転写処理や、染色処理などの各種処理装置に対する媒体の給送装置としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
13…給送装置、18…回転機構、20…たるみ検出手段としてのたるみセンサー、23a…回転量検出手段としてのロータリーエンコーダー、30,31…当接部材としての給紙ローラー、63…記録手段としての記録ヘッド、101…残量推定手段としてのコンピューター、J,J1,J2…回転軸、R,R1,R2…ロール体、S,S1,S2…媒体としてのシート、SG…たるみ部分、X…搬送方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の媒体を搬送経路に沿って搬送方向の上流側から下流側に向けて給送する給送装置であって、
前記媒体をロール状に巻き重ねたロール体を支持する回転軸と、
前記媒体を前記ロール体から巻き解いて前記回転軸の下方にたるませる方向に前記回転軸を回転させる回転機構と、
前記回転機構による前記回転軸の回転量を検出する回転量検出手段と、
前記回転軸の下方に配置され、前記ロール体から自重で垂れ下がる前記媒体のたるみ部分を検出するたるみ検出手段と、
前記たるみ検出手段による前記たるみ部分の検出状態及び非検出状態が切り替わる第1の時点と該第1の時点よりも前記媒体が前記ロール体に巻き重ねられた状態にある第2の時点との間に、前記回転量検出手段が検出する前記回転軸の回転量に基づいて、前記ロール体の巻取り残量を推定する残量推定手段と
を備えたことを特徴とする給送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給送装置において、
前記残量推定手段は、前記媒体の前記たるみ部分を前記ロール体に巻き戻した状態から、前記媒体を前記ロール体から巻き解いて形成される前記たるみ部分を前記たるみ検出手段が検出するまでの間に、前記回転量検出手段が検出する前記回転軸の回転量に基づいて前記ロール体の巻取り残量を推定することを特徴とする給送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の給送装置において、
前記媒体は、前記たるみ部分の前記ロール体につながる側を基端側とした場合の先端側が前記ロール体の外周面における前記基端側とは反対側となる位置に巻き掛けられた状態で、前記搬送経路に導かれることを特徴とする給送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の給送装置において、
前記搬送経路の前記搬送方向における上流端に設けられ、前記媒体における前記ロール体に巻き重ねられる面とは反対側の面に当接する当接部材を更に備えたことを特徴とする給送装置。
【請求項5】
長尺状の媒体を搬送経路に沿って搬送方向の上流側から下流側に向けて給送する給送方法であって、
前記媒体をロール状に巻き重ねたロール体を支持する回転軸を回転させる回転ステップと、
前記回転ステップにおいて前記ロール体から自重で垂れ下がる前記媒体のたるみ部分がたるみ検出手段によって検出されるか否かが切り替わる第1の時点と、該第1の時点よりも前記媒体が前記ロール体に巻き重ねられた状態にある第2の時点との間における前記回転軸の回転量に基づいて、前記ロール体の巻取り残量を推定する残量推定ステップと
を備えたことを特徴とする給送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−28412(P2013−28412A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164027(P2011−164027)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】