説明

給電システム

【課題】給電側コイルと受電側コイルとの横ずれに起因する伝送効率の低下を抑制し、給電手段から受電手段へ高効率で電力を供給することができる給電システムを提供する。
【解決手段】給電部には、電力が供給される給電側ヘリカルコイル33が設けられている。受電部には、給電側ヘリカルコイル33と電磁共鳴して給電側ヘリカルコイル33からの電力を受電する受電側ヘリカルコイル51が設けられている。この給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51との中心軸Z1、Z2が互いにずれた位置で給電部及び受電部のインピーダンスが整合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システムに係り、特に、給電側コイルから受電側コイルに非接触で電力を供給する給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した給電システムとして、例えば図5に示すものが知られている(例えば非特許文献1、2)。同図に示すように、給電システム1は、給電手段としての給電部3と、受電手段としての受電部5と、を備えている。上記給電部3は、電力が供給される給電側ループアンテナ32と、給電側ループアンテナ32に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ32に電磁結合された給電側コイルとしての給電側ヘリカルコイル33と、が設けられている。
【0003】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル33に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側コイルとしての受電側ヘリカルコイル51と、この受電側ヘリカルコイル51に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され当該受電側ヘリカルコイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、が設けられている。給電側ヘリカルコイル33に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル51にワイヤレスで送られる。
【0004】
さらに、受電側ヘリカルコイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られ、この受電側ループアンテナ52に接続されたバッテリなどの負荷に供給される。上述した給電システム1によれば、給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51との電磁共鳴により非接触で給電側から受電側に電力を供給することができる。
【0005】
そして、上述した受電部5を自動車4に設け、給電部3を道路2などに設けることにより、上述した給電システム1を利用してワイヤレスで自動車4に搭載されたバッテリに電力を供給することが考えられている。
【0006】
上述した給電側システム1においては、給電側ヘリカルコイル33の中心軸Z1と、受電側ヘリカルコイル51の中心軸Z2と、が一直線状に並んだ横ずれx=0の状態で、伝送効率が最も良くなるように給電部3、受電部5のインピーダンスを調整している(即ち、給電部3と受電部5とのインピーダンスを整合させている)。
【0007】
しかしながら、上述した給電システム1においては、給電側ヘリカルコイル33の中心軸Z1と、受電側ヘリカルコイル51の中心軸Z2と、が同軸となるように、自動車4を停車させることは難しく、図5に示すように、中心軸Z1、Z2の横ずれx(>0)が生じることがある。
【0008】
本発明者らは、中心軸Z1、Z2の横ずれx=0の状態で給電部3及び受電部5のインピーダンスを整合した図5に示す給電システム1である従来品について、横ずれxを0〜0.375D(D=給電側ヘリカルコイル33、受電側ヘリカルコイル51の直径)の範囲で変化させたときの伝送効率をシミュレーションした。結果を図4中において黒丸でプロットした。
【0009】
同図に示すように、横ずれxが0のときは伝送効率が98%程度あるのに対して、横ずれxが0.375Dのときは82%まで下がってしまう、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A.Kurs,A.Karalis,R.Moffatt,J.D.Joannopoulos,P.Fisher,M.Soljacic,"Wireless power transfer via strongly coupled magnetic resonances",Science,Vol.317,pp.83-86,July6,2007
【非特許文献2】M.Soljacic,A.Karalis,J.Joannopoulos,A.Kurs,R.Moffatt,P.fisgeR,"電力を無線伝送する技術を開発 実験で60Wの電球を点灯“、日経エレクトロニクス,3Dec.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、給電側コイルと受電側コイルとの横ずれに起因する伝送効率の低下を抑制し、給電手段から受電手段へ高効率で電力を供給することができる給電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、電力が供給される給電側コイルが設けられた給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルからの電力を受電する受電側コイルが設けられた受電手段と、を備えた給電システムにおいて、前記給電側コイルと前記受電側コイルとの中心軸が互いにずれた位置で前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが整合されていることを特徴とする給電システムに存する。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記給電側コイル及び前記受電側コイルは、円形に巻いて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給電システムに存する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した請求項1記載の発明によれば、給電側コイルと受電側コイルとの中心軸が互いにずれた位置で給電手段及び受電手段のインピーダンスが整合されているので、給電側コイルと受電側コイルとの横ずれに起因する伝送効率の低下を抑制し、給電手段から受電手段へ高効率で電力を供給することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、給電側コイル及び受電側コイルが円形に巻いて設けられているので、伝送効率の異方性をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の給電システムを示す図である。
【図2】図1に示す給電システムを構成する給電側ループアンテナ、給電側ヘリカルコイル、受電側ヘリカルコイル及び受電側ループアンテナの斜視図である。
【図3】(A)は本発明の最も伝送効率が良くなる位置を説明するための図であり、(B)は従来の最も伝送効率が良くなる位置を説明するための図である。
【図4】中心軸Z1、Z2の横ずれx=0で給電部及び受電部のインピーダンスを整合した従来品と、中心軸Z1、Z2の横ずれxを0.0625D、0.125D、0.1875D、0.25D、0.3125D、0.375Dとした状態で給電部及び受電部のインピーダンスを整合した本発明品A〜Fと、について各々、中心軸Z1、Z2のずれが0〜0.375Dの範囲で変動したときの伝送効率を示すグラフである。
【図5】従来の給電システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の給電システムを図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明の給電システムを示す図である。図2は、図1に示す給電システムを構成する給電側ループアンテナ、給電側ヘリカルコイル、受電側ヘリカルコイル及び受電側ループアンテナの斜視図である。同図に示すように、給電システム1は、道路2上などに設けられた給電手段としての給電部3と、自動車4の腹部分などに設けられた受電手段としての受電部5と、を備えている。
【0018】
上記給電部3は、直流電源6から供給される直流電力を交流電力に変換するDC/AC変換器31と、DC/AC変換器31により変換された交流電力が供給される給電側ループアンテナ32と、給電側ループアンテナ32に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ32に電磁結合された給電側コイルとしての給電側ヘリカルコイル33と、給電側ヘリカルコイル33に並列接続されたキャパシタC1と、が設けられている。
【0019】
上記給電側ループアンテナ32は、円ループ状に設けられていて、その中心軸が道路2から自動車4の腹部分に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。この給電側ループアンテナ32の両端には、DC/AC変換器31が接続されていて、上述したようにDC/AC変換器31により変換された交流電力が供給される。
【0020】
上記給電側ヘリカルコイル33は、例えば巻線を円形のヘリカル状に巻いて構成されている。本実施形態においては、給電側ヘリカルコイル33は、その巻数が2巻に設けられている。また、給電側ヘリカルコイル33は、上記給電側ループアンテナ32の自動車4側に、給電側ループアンテナ32と同軸上に配置されている。上記給電側ループアンテナ32と給電側ヘリカルコイル33とは、互いに電磁結合できる範囲内、即ち、給電側ループアンテナ32に交流電力が供給され、交流電流が流れると給電側ヘリカルコイル33に電磁誘導が発生するような範囲内で、互いに離間して設けられている。上記コンデンサC1は、共鳴周波数を調整するために設けられている。
【0021】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル33と電磁共鳴する受電側コイルとしての受電側ヘリカルコイル51と、この受電側ヘリカルコイル51に対してその中心軸方向に対向するように配置され、受電側ヘリカルコイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、受電側ループアンテナ52が受電した交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換器53と、受電側ヘリカルコイル51に並列接続されたコンデンサC2と、が設けられている。
【0022】
上記受電側ループアンテナ52には、AC/DC変換器53を介して車載バッテリなどの負荷7が接続されている。また、受電側ループアンテナ52は、円形のループ状に設けられていて、その中心軸が自動車4の腹部分から道路2に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。また、本実施形態においては、図2に示すように、上記受電側ループアンテナ52は、上述した給電側ループアンテナ32と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側ループアンテナ52の径が、上述した給電側ループアンテナ32の径よりも小さく設けられていても良い。
【0023】
上記受電側ヘリカルコイル51は、例えば巻線を円形のヘリカルコイル状に巻いて構成されている。本実施形態においては、受電側ヘリカルコイル51は、給電側ヘリカルコイル33と同様に、その巻数が2巻に設けられている。また、上記受電側ヘリカルコイル51は、上述した給電側ヘリカルコイル33と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側ヘリカルコイル51の径が、上述した給電側ヘリカルコイル33の径よりも小さく設けられていてもよい。
【0024】
また、受電側ヘリカルコイル51は、上述した受電側ループアンテナ52の道路2側に、受電側ループアンテナ52と同軸上に配置されている。これにより、受電側ループアンテナ52と受電側ヘリカルコイル51とは、互いに電磁結合する範囲内、即ち、受電側ヘリカルコイル51に交流電流が流れると受電側ループアンテナ52に誘導電流が発生する範囲内に、互いに離間して設けられている。上記コンデンサC2は、コンデンサC1と同様に、共鳴周波数を調整するために設けられている。これらコンデンサC1、C2は、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の共鳴周波数が所望の周波数f0(例えば10MHz)となるように容量が予め調整されている。
【0025】
上述した給電システム1によれば、自動車4の受電部5が道路2に設けた給電部3に近づいて給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51とが中心軸方向に互いに間隔を空けて対向したとき、給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51とが電磁共鳴して給電部3から受電部5に非接触で電力を供給できる。
【0026】
詳しく説明すると、上記給電側ループアンテナ32に交流電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側ヘリカルコイル33に送られる。即ち、給電側ヘリカルコイル33には、給電側ループアンテナ32を介して電力が供給される。給電側ヘリカルコイル33に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル51にワイヤレスで送られる。さらに、受電側ヘリカルコイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られ、この受電側ループアンテナ52に接続された負荷7にAC/DC変換器53を介して供給される。
【0027】
これら給電システム1は、図3(A)に示すように、給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51との中心軸Z1、Z2がxだけ(>0)横ずれした位置で最も伝送効率が高くなるように給電部3及び受電部5のインピーダンスが調整されている(即ち、給電部3及び受電部5のインピーダンスが整合されている)。この中心軸Z1、Z2の横ずれxは、中心軸方向に給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51とが互いに重なる範囲内でずらされている。
【0028】
給電部3及び受電部5のインピーダンスを整合させる方法としては、例えば給電側、受電側ヘリカルコイル33、51や給電側、受電側ループアンテナ32、52の両端に整合器を設け、この整合器を用いてインピーダンスを調整したり、DC/AC変換器31、AC/DC変換器53のインピーダンスを調整することが考えられる。
【0029】
図3(B)に示す従来のように中心軸Z1、Z2の横ずれx=0の位置で給電部3及び受電部5のインピーダンスを整合した場合、中心軸Z1上の点Pが最も効率良く、受電側ヘリカルコイル51の中心軸Z2がこの点Pから離れるに従って伝送効率が低下してしまう。
【0030】
これに対して、図3(A)に示すように給電側、受電側ヘリカルコイル33、51との中心軸Z1、Z2がxだけ横ずれした位置で給電部3及び受電部5のインピーダンスを整合すると、中心軸Z1を中心とした半径xの円R上が最も効率良く、受電側ヘリカルコイル51の中心軸Z2がこの円Rから離れるに従って伝送効率が低下する。図3(A)及び(B)を比較しても明らかなように、従来は点Pの一点のみが最も伝送効率が良かったが、本実施形態では、円R上が最も伝送効率が良い点となる。このため、給電側、受電側ヘリカルコイル33、51との位置ずれxに起因する伝送効率の低下を抑制し、給電部3から受電部5へ高効率で電力を供給することができる。
【0031】
次に、本発明者らは、図3(B)に示すように中心軸Z1、Z2の横ずれx=0で給電側、受電側ヘリカルコイル33、51のインピーダンスを整合した従来品と、図3(A)に示すように中心軸Z1、Z2の横ずれを0.0625D、0.125D、0.1875D、0.25D、0.3125D、0.375Dとした状態で給電側、受電側ヘリカルコイル33、51のインピーダンスを整合した本発明品A〜Fと、について中心軸Z1、Z2の横ずれxが0〜0.375Dの範囲で変動するときの伝送効率をシミュレーションした。結果を図4に示す。
【0032】
同図に示すように、従来品は、横ずれx=0のときの伝送効率が98%であるが、横ずれx=0.375Dのときは82%まで低下してしまう。これに対して、横ずれx=0.0625D、0.125Dでインピーダンス整合した従来品A、Bは、ずれx=0.375Dのときは約85%までに低下を抑えることができる。また、横ずれx=0.1875Dでインピーダンス整合した本発明品Cは、横ずれx=0のときの伝送効率が97.5%と若干低下してしまうが、横ずれx=0.375Dのときは89%近くまで低下を押さえることができる。
【0033】
また、横ずれx=0.25Dでインピーダンス整合した本発明品Dは、横ずれx=0のときの伝送効率が95.5%であるが、横ずれx=0.375Dのときは92%と伝送効率の低下を大きく抑えることができる。また、横ずれx=0.3125Dでインピーダンス整合した本発明品Eは、横ずれx=0のときの伝送効率が91%まで低下してしまうが、横ずれx=0.375Dのときは96%まで大きくすることができる。
【0034】
さらに、横ずれx=0.375Dでインピーダンス整合した本発明品Fは、横ずれx=0のときの伝送効率が84%まで低下してしまうが、横ずれ0.375Dのときは98%まで大きくすることができる。以上のことから明らかなように従来品では、0〜0.375Dの範囲で横ずれxが生じると伝送効率が82%まで低下してしまうのに対して、本発明品A〜Fは、0〜0.375Dの範囲で横ずれxが生じたとしても84%以上の伝送効率を得ることができ、横ずれに起因する伝送効率の低下を抑制し、給電部3から受電部5へ高効率で電力を供給することができることが分かった。
【0035】
また、上述した実施形態によれば、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51は、円形に巻いて設けられているので、伝送効率の異方性をなくすことができる。
【0036】
なお、上述した実施形態によれば、給電側、受電側ヘリカルコイル31、51は円形に巻いて設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。給電側、受電側ヘリカルコイル31、51の形状としては、円形でなくてもよく、四角形や三角形であってもよい。
【0037】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 給電システム
3 給電部(給電手段)
5 受電部(受電手段)
33 給電側ヘリカルコイル(受電側コイル)
51 受電側ヘリカルコイル(受電側コイル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給される給電側コイルが設けられた給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルからの電力を受電する受電側コイルが設けられた受電手段と、を備えた給電システムにおいて、
前記給電側コイルと前記受電側コイルとの中心軸が互いにずれた位置で前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが整合されている
ことを特徴とする給電システム。
【請求項2】
前記給電側コイル及び前記受電側コイルは、円形に巻いて設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−13275(P2013−13275A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145297(P2011−145297)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】