説明

給電装置

【課題】フラット回路体がケースの湾曲ガイド面に沿って屈曲しながら摺動することに起因する屈曲耐久性の低下や摩耗の発生等を解消する。
【解決手段】ケース9に回路体導出部7をケース周方向回動自在に設け、ケースの軸部3にフラット回路体6の基端部5側を固定し、フラット回路体をケース内に軸部を中心に巻いて収容し、フラット回路体の先端部30側を回路体導出部からケース周方向に揺動させつつ引き出すと同時に、回路体導出部をフラット回路体の揺動方向に回動させ、フラット回路体を回路体導出部内に略直線的に挿通させた給電装置1を採用する。ケース9をベース部4とカバー部8とで構成し、ベース部に軸部3を立設し、カバー部をベース部に周方向回動自在に装着し、カバー部に回路体導出部7を一体に設けた。回路体導出部7から屈曲性の回路体保護部材10を外部に突出して設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースに対してフラットハーネスを巻き取ったり引き出したりする際にケースのハーネス導出部をフラットハーネスの導出方向に回動させる給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帯状のフラットワイヤハーネス(以下、フラットハーネスと言う)をケース内に巻回させて収容し、フラットハーネスの先端側を給電側に接続して、給電側の移動に伴ってフラットハーネスをケースの開口から引き出させる構造の給電装置として、種々の形態のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベース部とカバー部とで成るケース内のベース部内にフラットハーネスを螺旋状に収容し、ベース部の中心の軸部に固定した複数枚の短いばね部材又は一枚の長いばね部材でフラットハーネスを拡径方向に付勢しつつ、ベース部の開口からフラットハーネスを外部に導出させ、ベース部にカバー部を被せてボルトで取付側に共締めする構造の給電装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ケース内にフラットハーネスを螺旋状に収容し、ばね部材を用いずに(用いることも可能)、フラットハーネスをケースから引き出した際に自らの復元力で引き込ませる構造の給電装置が記載されている。
【0005】
図6〜図7は、上記特許文献1に記載された給電装置の適用例を示すものであり、給電装置51のケース52(カバー部は図示を省略している)が車両ボディ53に水平に配置固定され、ケース52から引き出されたフラットハーネス54の先端部がガイドアーム55を経てスライドドア56側に接続されている。
【0006】
図6のスライドドア56の全開時に、フラットハーネス54はケース52から車両後方に向けて引き出され、ガイドアーム55が車両ボディ側のガイドレール57に沿って案内されつつ、スライドドア56が閉じ方向に移動し、スライドドア56の半開時にフラットハーネス54がばね部材の付勢力でケース内に引き込まれて余長吸収され、図7のスライドドア56の全閉時に、フラットハーネス54はケース52から車両前方に向けて引き出される。
【0007】
図8は、上記特許文献1の給電装置に類似する給電装置61を示すものであり、ケース62の周壁66にハーネス導出用の開口63が設けられ、開口63の左右両側にそれぞれ湾曲ガイド面64,65が設けられ、ケース62の中心の軸部67に基端部68aを固定されたフラットハーネス68がケース内に螺旋状に巻回されつつ開口63から左又は右に屈曲しつつ外部に導出されている。
【0008】
例えば図6のスライドドア56の全開時に、図8のフラットハーネス68は鎖線の如く開口63の左側の湾曲ガイド面64に沿って摺接しつつ矢印FAの如く左側に引き出される。スライドドア56の半開時には、フラットハーネス68は左右の湾曲ガイド面64,65にほぼ接することなく、直線的にケース内に引き込まれる。また、図7のスライドドア56の全閉時に、図8のフラットハーネス68は実線の如く右側の湾曲ガイド面65に沿って摺接しつつ矢印FBの如く右側に引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−16939号公報(図1,図4)
【特許文献2】特開2010−148281号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の図8の給電装置61にあっては、フラットハーネス(フラット回路体)68の引き出し時や引き込み時にフラットハーネス68がケース62の開口(回路体導出部)63の左右何れかの湾曲ガイド面64,65に沿って屈曲しながら摺動するために(屈曲半径を符号RA,RB、摺動力を符号FA,FBで示す)、フラットハーネス68に曲げ応力がかかると共に摩擦を生じて、屈曲耐久性が低下したり摩耗しやすくなるという懸念があった。また、それを避けるために湾曲ガイド面64,65の半径RA,RBを大きくした場合は、開口63が大きくなって、開口63からケース内に粉塵等が侵入しやすくなるという懸念があった。また、フラットハーネス68が湾曲ガイド面64,65で屈曲しながら給電側に配索されるために、軸部67から給電側までのフラットハーネス68の設定長さが長く必要になるという懸念があった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、フラット回路体がケースの湾曲ガイド面に沿って屈曲しながら摺動することに起因する屈曲耐久性の低下や摩耗の発生を防止することができ、しかもフラット回路体の長さを従来よりも短く設定することができ、それに加えて回路体導出部である開口からの異物の侵入を抑止することのできる給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る給電装置は、ケースに回路体導出部がケース周方向回動自在に設けられ、該ケースの軸部にフラット回路体の基端部側が固定され、該フラット回路体が該ケース内で該軸部を中心に巻かれて収容され、該フラット回路体の先端部側が該回路体導出部からケース周方向に揺動しつつ引き出されると同時に、該回路体導出部が該フラット回路体の揺動方向に回動し、該フラット回路体が該回路体導出部内に略直線的に挿通されることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、ケースが例えば電源側に固定され、フラット回路体が回路体導出部から給電側に導出され、給電側の一方向への移動に伴ってフラット回路体がケースから引き出されつつ給電側の移動方向に揺動し、回路体導出部がフラット回路体の揺動方向に回動して、フラット回路体が回路体導出部内を直線的に挿通する。フラット回路体の引き込み時も同様に給電側の他方への移動に伴って回路体導出部が給電側の移動方向(他方向)すなわちフラット回路体の揺動方向に回動して、フラット回路体が回路体導出部内を直線的に挿通する。これにより、従来の回路体導出部の湾曲ガイド面に沿ってフラット回路体が屈曲したり、フラット回路体との摺動摩擦を生じたりすることがなくなり、フラット回路体の屈曲耐久性が高まると共に摩耗が防止され、フラット回路体が屈曲しない分、フラット回路体が短く設定され、回路体導出部の開口が狭く設定されて、異物が侵入し難くなる。なお、他方向への移動の途中でフラット回路体を完全に引き込ませ、さらなる他方向への移動でフラット回路体を他方向へ引き出させることも可能である。
【0014】
回路体導出部は例えばケースの底壁と天壁との間の周壁と一体に周方向に回動する。底壁に軸部が立設され、軸部の先端に天壁が固定され、周壁は底壁と天壁とに周方向スライド自在に係合する。ケースをベース部とカバー部とで構成し、回路体導出部を有するカバー部を回動させてもよい。
【0015】
請求項2に係る給電装置は、請求項1記載の給電装置において、前記ケースがベース部とカバー部とで構成され、該ベース部に前記軸部が立設され、該カバー部が該ベース部に周方向回動自在に装着され、該カバー部に前記回路体導出部が一体に設けられたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、給電側の一方向への移動に伴ってフラット回路体がケースから引き出されつつ揺動し、回路体導出部がカバー部と一体にフラット回路体の揺動方向に回動して、フラット回路体が回路体導出部内を直線的に挿通する。フラット回路体の引き込み時も同様に給電側の他方向への移動に伴って回路体導出部がカバー部と一体にフラット回路体の揺動方向(他方向)に回動して、フラット回路体が回路体導出部内を直線的に挿通する。
【0017】
請求項3に係る給電装置は、請求項2記載の給電装置において、前記カバー部に設けた孔部が前記軸部に周方向摺接自在に係合したことを特徴とする。
【0018】
上記構成により、カバー部が軸部を中心に軸部に沿って周方向に低摩擦でスムーズに回動する。例えば、軸部の先端側の小径部を孔部に係合させたり、あるいは均一な外径の軸部の先端部を止めリンク等を境に孔部に係合させたり、あるいはボルト(軸部)を軸部のねじ孔に螺挿固定して、ボルトをカバー部の孔部に係合させたりする。
【0019】
請求項4に係る給電装置は、請求項1〜3の何れかに記載の給電装置において、前記回路体導出部から屈曲性の回路体保護部材が外部に突出して設けられたことを特徴とする。
【0020】
上記構成により、回路体保護部材が回路体導出部の開口を覆って開口からケース内への水や塵等の異物の侵入を阻止する。また、折れ曲がりやすいフラット回路体が回路体保護部材内を挿通して回路体保護部材と共に大きな半径で屈曲することで、フラット回路体の折れ曲がりが防止される。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、フラット回路体をケースから360°の範囲で何れかの方向に引き出した際に、回路体導出部がフラット回路体に追従して周方向に回動して、回路体導出部内をフラット回路体が直線的に挿通するから、従来のケースの湾曲ガイド面に沿ってフラット回路体が屈曲しながら摺動することに起因する屈曲耐久性の低下や摩耗の発生を防ぐことができ、しかもフラット回路体の長さを従来よりも短く設定することができ、さらに回路体導出部の開口を狭く設定してケース内への異物の侵入を抑止することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、回路体導出部をカバー部と一体に回動させることで、ケースの構造を簡素化・低コスト化させ、ベース部に対する回路体導出部すなわちカバー部の回動をよりスムーズ且つ確実に行わせることができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、軸部をカバー部の孔部に係合させて、カバー部を小さな力でスムーズに周方向に回動させることができ、これにより、フラット回路体とカバー部の回路体導出部との摺動抵抗を無視できる程度に極めて小さくすることができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、回路体保護部材で回路体導出部からケース内への異物の侵入を防ぐことができると共に、フラット回路体の不意な折れ曲がりを防いで、フラット回路体の屈曲耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る給電装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】給電装置のカバー部構造を示す斜視図である。
【図3】フラット回路体を一方向に導出させた状態の給電装置を示す平面図である。
【図4】フラット回路体を中間方向に導出させた状態の給電装置を示す平面図である。
【図5】フラット回路体を他方向に導出させた状態の給電装置を示す平面図である。
【図6】従来の給電装置の一形態の適用例でフラット回路体を一方向に導出させた状態の斜視図である。
【図7】同じく従来の給電装置でフラット回路体を他方向に導出させた状態の斜視図である。
【図8】従来の類似の形態の給電装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図5は、本発明に係る給電装置の一実施形態をそれぞれ示すものである。
【0027】
図1の如く、この給電装置1は、基板部2に立設された軸部3を有する合成樹脂製のベース部4と、軸部3に基端部5を固定して基板部2の上で軸部3の周囲に螺旋状に巻回されるフラットハーネス(フラット回路体)6と、フラットハーネス6を導出させるハーネス導出部(回路体導出部)7を有してベース部4に対して軸部3の周方向に回動し、ベース部4と共にケース9を構成する合成樹脂製のカバー部8とを備えるものである。
【0028】
本例においてカバー部8のハーネス導出部7には、ハーネス保護部材ないしハーネス外装部材としての屈曲性の良好な合成樹脂製の扁平状のハーネス保護チューブ(回路体保護部材)10の基端部が装着固定されている。ベース部4はロアケース、カバー部8はアッパケースとも呼称される。
【0029】
ベース部4は、水平な円形の基板部2と、基板部2の中央に一体に立設固定された垂直な軸部3と、基板部2の外周下側に短く形成された環状壁11と、基板部2と環状壁11から水平に直交方向に突出した二つの固定用のブラケット12,13とを備えている。
【0030】
環状壁11の一部は切欠されて横長に開口し、例えばフラットハーネス6の基端部5から下向きに直交して折り曲げられて続く固定側のハーネス部分(図示せず)が、この開口14から外部(電源側)に導出されて電源側のワイヤハーネス(図示しない回路)にコネクタ接続される。例えば環状壁11の内側で軸部3の下側に水平なリブ15(図3)が別体に設けられ、固定側のハーネス部分(図示せず)はリブ15の上側に支持され、リブ15は一方のブラケット13と一体化されている。
【0031】
軸部3は、基板部2に続く垂直な長い大径部(軸主体部)3aと、大径部3aの上端面(段差面)3bの中央に一体に垂直に続く円筒形の短い小径部3cとで中空に形成されている。大径部3aにフラットハーネス6の基端部5を挿入固定させる垂直なスリット孔(図3)16が設けられ、小径部3cは回動式のカバー部8の中央の円形の孔部17に係合して、大径部3aの上端面3bと共にカバー部8を回動自在に支持する。小径部3cはカバー部8に対する回転中心軸、上端面3bはカバー部8に対する受け面として作用する。
【0032】
スリット孔16(図3)は軸部3の下端から上向きに切欠形成され、スリット孔16の下端が外部に開放され、下側からスリット孔16にフラットハーネス6の基端部5が上向きに挿入される。スリット孔16の下端は、基板部2の径方向に切欠形成された幅広のスリット18に連通し、スリット18を経てスリット孔16に基端部5が挿入される。図1の基端部5は便宜上斜めに切断して示しているが、実際は基端部5の下側に直交して固定側のハーネス部分(図示せず)が続いている。
【0033】
軸部3の大径部3aの外周面はスリット18の上側において段差状に切欠され、この切欠面19(図3)がスリット孔16に直交して続き、フラットハーネス6の基端部5に直交して続く巻き部分が切欠面19に接して段差を埋めて、軸部3の最大外径と同等の外径をなしている。
【0034】
フラットハーネス6は、銅箔等の複数本の並列な導体部を表裏の絶縁シートで覆って板厚方向の可撓性(屈曲性)を有する既存のものであり、本例で基端部5に続く一巻き目の部分61と二巻き目の部分62と、二巻き目の部分62の終端に続く略1/4周の部分63からほぼ接線方向に延びる真直な部分20と、基端部5から反対側に続く前記固定側のハーネス部分(図示せず)とで構成されている。フラットハーネス6の巻き数は給電側までの距離や余長吸収長さ等に応じて適宜設定される。
【0035】
フラットハーネス6は自由状態で螺旋形状となるように予め巻き癖を付けてあることが、ケース9への組付性の上で好ましい。フラットハーネス6を巻き癖のないストレートな状態で軸部3に巻いてケース9内に収容することも可能ではあるが、巻付け作業や基端部5の折り曲げ作業が面倒である。
【0036】
フラットハーネス6は巻き癖を付けた状態で図4のようにハーネス自体の復元力(反発力)で拡径することが好ましく、これによりばね部材が不要となる。ばね部材(図示せず)を用いてハーネス引き込み力を補助する場合は、従来のように螺旋帯状の長いあるいは中程度の長さの一本の板ばねや複数枚の短い板ばね等を用いてフラットハーネス6の巻き部の屈曲内側面を径方向外向き(拡径方向)に押圧させる。
【0037】
図1,図2の如く、カバー部8は、略円形のハーネス収容部21と、ハーネス収容部21から接線方向に一体に突出形成されたハーネス導出部7とで成り、ハーネス収容部21は中心を境に平面視で一方の半円状部21aと他方の扇状部21bとで成り、扇状部21bにハーネス導出部7が一体に突出形成されている。ハーネス収容部21は略環状の垂直な周壁22の下端内側に略円形の下部開口23を有し、下部開口23は周壁22と水平な天壁(上壁)24とで囲まれたハーネス収容空間25に続いている。
【0038】
周壁22は半円状部21aから扇状部21bにかけて円弧状ないし湾曲状に続き、扇状部21bのハーネス導出部7側で直線的に続いて(直線部を符号22aで示す)、ハーネス導出部7の右側の側壁7aに同一面に続き、半円状部21aからハーネス導出部7の左側の側壁7b(図1)にほぼ直交して続いている。周壁22の下端には外向きの短い鍔部26が一体に形成されている。
【0039】
天壁24はハーネス導出部7の天壁7cに同一面で続いている。天壁24の中央に、軸部3の小径部3cを回動自在(周方向摺動自在)に挿入させる円形の孔部17が設けられ、孔部17は少なくとも天壁24から上方に突出した円形環状のリブ27の内周面17aを含んでいる。天壁24から下方に円形環状のリブを突出させて孔部17の内周面17aすなわち軸部3の小径部3cに対する摺接面を軸方向に一層長く(接触面積を広く)してもよい。
【0040】
下向きの円形環状のリブを突設した場合は、下向きのリブの下端面が軸部3の水平な受け面3bに当接(回動時に摺接)し、下向きのリブを設けない場合は、天壁24の水平な内面が軸部3の受け面3bに直接当接(回動時に摺接)する。軸部3の小径部3cはカバー部8の孔部17に挿通された後、Cリング等で抜け止めされる。孔部17と小径部3cとに抜け止め用の係止部(例えば周溝とそれに係合する爪等)を設けることも可能である。
【0041】
カバー部8はベース部4の基板部2よりも大径に形成され、本例では図3の如くカバー部8の下端の鍔部26が基板部2と同一水平面の他方のブラケット12の上面に接触(回動時に摺接)し、カバー部8の周壁22の下端内面は基板部2の外周端にほぼ隙間なく接する(近接する)。図1において他方のブラケット12を一方のブラケット13のように環状壁11の下側に配置し、カバー部8の周壁22の下部内面を環状壁11の外周面にほぼ隙間なく接触(摺接)させることも可能である。
【0042】
図1,図2の如く、カバー部8のハーネス導出部7は少なくとも左右と前側の垂直な壁部7a,7b,7dと上側の水平な壁部7cとで囲まれて(好ましくは下側の水平な壁部とで囲まれて)内側に中空の開口(空間)を有し、開口はハーネス収容部21内の略円形の空間25と、前壁7dにおけるハーネス保護チューブ10の端部を挿入固定させる縦長の扁平状(長円形状)の孔部28とに連通している。
【0043】
ハーネス保護チューブ10が例えば既存の柔軟な網状チューブやビニルチューブないしゴムチューブ等である場合、ハーネス保護チューブ10の端部は例えば前壁7dの孔部28から挿入されて接着ないし溶着等でハーネス導出部7内に固定される。
【0044】
ハーネス保護チューブ10が既存のコルゲートチューブ(波形チューブ)である場合は、ハーネス導出部7の下側の水平な壁部を係止手段(例えば図4の符号29)で着脱可能とし、下側と上側の各壁部の内面に突設したチューブ保持用のU字状のリブ(図示せず)でコルゲートチューブ(10)の周方向の谷部を上下に挟み係合させつつ、下側の壁部を装着する。この構造を上記網状チューブ等にも適用して上下の壁部でハーネス保護チューブ10を挟んだ状態で接着等で固定することも可能である。
【0045】
ハーネス保護チューブ10の長さは図4の中立(中間)位置においてハーネス保護チューブ10がスライドドア等の可動構造体に干渉しない長さ(例えば図1のハーネス保護チューブ10の図示の長さ)であることが好ましい。ハーネス保護チューブ10はカバー部8のハーネス導出部7内のフラットハーネス6の折れ曲がりを防いでフラットハーネス6を大きな半径でスムーズに屈曲可能とする。ハーネス保護チューブ10の先端の開口10aは短径方向に狭めて水等の侵入を防ぐことが好ましい。
【0046】
なお、柔軟なハーネス保護チューブ10の端部10bをハーネス導出部7に固定せずに、ケース9内でフラットハーネス6に固定した場合は、ハーネス保護チューブ10の長さをケース9内から可動構造体までの長さとすることも可能である。この場合、ハーネス保護チューブ10はケース9内でフラットハーネス6と共に巻き取られる。
【0047】
防水性等の面からは網状チューブ以外の隙間のない保護チューブ10を用いることが好ましい。ハーネス導出部7の開口(孔部)28を隙間のないハーネス保護チューブ10で塞ぐことで、ハーネス導出部7からケース9内への水や粉塵等の異物の侵入が確実に防止される。
【0048】
防水や防塵の必要がない場合は、ハーネス導出部7の縦長の開口(孔部)28からフラットハーネス6を直接外部へ導出させる。ハーネス導出部7の下側の壁部を用いずに縦長の開口(28)の下端を外部に開放して、フラットハーネス6を下方からハーネス幅方向に開口(28)内に挿通させることも可能である。後述のようにフラットハーネス6はハーネス導出部7に強く摺接しないので、ハーネス導出部7は狭く設定して水や粉塵を入り難くすることが可能である。
【0049】
図1において、フラットハーネス6の基端部5を軸部3に固定した後、フラットハーネス6の先端部30をカバー部8のハーネス導出部7及びハーネス保護チューブ10内に挿通させ、カバー部8をベース部4に回転自在に装着する。ハーネス保護チューブ10を用いない場合は、ハーネス導出部7の開口28の下端を外部に開放させた状態で、フラットハーネス6を幅方向に開口28内に挿入しつつカバー部8をベース部4に装着する。あるいは、フラットハーネス6の先端部30を先にカバー部8のハーネス導出部7やハーネス保護チューブ10内に挿通させ、次いでフラットハーネス6の基端部5を軸部3に固定させ、カバー部8をベース部4に回転自在に装着することも可能である。
【0050】
図3〜図5は、上記給電装置1を用いた回路体配索構造の一実施形態として、自動車のスライドドアやスライドシート等といった可動構造体(図示せず)を車両ボディ等の固定構造体(図示せず)に対して移動させた際の各移動位置における給電装置1の状態を示すものである。
【0051】
ケース9のベース部4はブラケット12,13を固定構造体にボルト締め等で固定され、カバー部8はベース部4に対して回動自在である。フラットハーネス6の先端部30(図1)は可動構造体側のハーネス固定部(図示せず)に固定されている。
【0052】
図3は、可動構造体を一方(図で左側)に移動させた際の状態を示しており、給電装置1のカバー部8はフラットハーネス6の引き出し方向に反時計回り(左回り)に回動し(本例で回動角度は図4の中立位置に対して左に略45°程度である)、カバー部8のハーネス導出部7が可動構造体に向けて斜め略45°程度の角度で傾斜して位置し、フラットハーネス6はケース9内でフラットハーネス6の拡径方向の弾性反力又は不図示のばね部材の付勢力に抗して小径に縮径されて略二周に巻かれ、略二周目の巻き部62の終端から略接線方向にハーネス導出部7に向けて内向きの大きな屈曲半径R1で伸びて、ハーネス導出部7からハーネス保護チューブ10と共に逆向き(外向き)の大きな屈曲半径R2で湾曲しながら可動構造体に向けて略直線的に導出されている。
【0053】
図4の中立位置から図3の如く、フラットハーネス6が可動構造体の移動に伴って一方向に引っ張られつつ移動(揺動)し、フラットハーネス6の移動に伴ってカバー部が一方向に回動し、すなわちフラットハーネス6の外側面6aがハーネス導出部7の開口28の左側内面を一方向に押圧して、ハーネス導出部7をカバー部8と一体に一方向に回動させる。
【0054】
この際、カバー部8は周方向に回動自在であるから、ハーネス導出部7とフラットハーネス6との摩擦(摺動K1による抵抗)F1が極めて小さく、フラットハーネス6の引き出しに要する力が小さくて済むと共にフラットハーネス6の摩耗が防止され、且つハーネス導出部7におけるフラットハーネス6の屈曲半径R2が従来の図8のフラットハーネスの屈曲半径に較べて十分に大きいから、フラットハーネス6の屈曲耐久性が高まる。また、図8の従来例のようにフラットハーネスが湾曲面に沿って大きな角度で屈曲する場合に較べて、フラットハーネス6がハーネス導出部7に沿ってほぼ直線的に近い角度で屈曲するので(屈曲半径をR2で示す)、ケース9の軸部3から可動構造体のハーネス固定部(図示せず)までのフラットハーネス6の所要長さが短くて済む。
【0055】
図4は、図3の状態から可動構造体を他方向(図で右側)に移動させる途中(中間位置)において、可動構造体側のハーネス固定部(図示せず)が給電装置1に最接近した状態を示しており、図3の状態からフラットハーネス6が可動構造体と一体に他方向に向けて移動し、フラットハーネス6の内側面6bがハーネス導出部7の開口28の右側内面を他方向に押圧して、ハーネス導出部7をカバー部8と一体に時計回り(右回り)に略45°程度の角度で他方向に回動させ、ハーネス導出部7が可動構造体側のハーネス固定部(図示せず)に向けて位置し、フラットハーネス6はケース9内にフラットハーネス6の復元力又はばね部材の付勢力で引き込まれて余長(弛み)吸収され、ケース9内で大径に拡径し、二巻き目62の終端から三巻き目の部分63が略90°巻いた位置で接線方向に直線状に伸びて可動構造体のハーネス固定部に続いている。
【0056】
図4において、フラットハーネス6は可動構造体のハーネス固定部(図示せず)から直線的にハーネス導出部7を挿通して最終の巻き部63に至るから、ハーネス導出部との摺動K2による摩擦抵抗が極めて小さく、フラットハーネス6の引き込みに要する力(フラットハーネス6自体の復元力又は不図示のばね部材の付勢力)が小さくて済むと共に、フラットハーネス6の摩耗が防止される。
【0057】
図5は、可動構造体を他方(図で右側)に移動させた状態を示しており、図4の状態からカバー部8がフラットハーネス6の引き出し方向に時計回り(右回り)に回動し(本例で回動角度は図4の中立位置に対して左に略90°である)、カバー部8のハーネス導出部7が可動構造体に向けて略平行に位置し、フラットハーネス6はケース9内でフラットハーネス6の弾性反力又は不図示のばね部材の付勢力に抗して小径に縮径されて略二周半に巻かれ、略二周半の巻き部63の終端から略接線方向にハーネス導出部7に向けて内向きの大きな屈曲半径R3で伸びて、ハーネス導出部7からハーネス保護チューブ10と共に可動構造体に向けて略直線的に導出されている。
【0058】
図4の状態から図5の如く、フラットハーネス6が可動構造体の移動に伴って他方に引っ張られつつ移動(揺動)し、フラットハーネス6の移動に伴ってカバー部8が他方に回動し、すなわちフラットハーネス6の内側面6bがハーネス導出部7の開口の右側内面を他方向に押圧して、ハーネス導出部7をカバー部8と一体に他方に回動させる。
【0059】
カバー部8は周方向に回動自在であるから、カバー部8のハーネス導出部7とフラットハーネス6との摩擦(摺動K3による抵抗)F2が極めて小さく、フラットハーネス6の引き出しに要する力が小さくて済むと共にフラットハーネス6の摩耗が防止され、且つハーネス導出部7の近傍におけるフラットハーネス6の屈曲半径R3が従来の図8のフラットハーネスの屈曲半径に較べて十分に大きく、フラットハーネス6の屈曲耐久性が高まる。また、図8の従来例のようにフラットハーネスが湾曲面に沿って大きな角度で屈曲する場合に較べて、フラットハーネス6がハーネス導出部7の手前で大きな半径で屈曲しつつ(屈曲半径をR3で示す)ハーネス導出部7から可動構造体までほぼ直線的に配索されるので、軸部3から可動構造体までのフラットハーネス6の設定長さが短くて済む。
【0060】
図3〜図5において、可動構造体として車両左側のスライドドア(図示せず)を用いた場合は、ケース9が車両ボディに水平に配置され、図3がスライドドアの全開時で、フラットハーネス6は車両後方に引き出され、図5がスライドドアの全閉時で、フラットハーネス6は車両前方に引き出される。また、可動構造体としてスライドシート(図示せず)を用いた場合は、ケース9が車両フロアに垂直に配置され、図3がスライドシートの最前端位置で、フラットハーネス6が車両前方に引き出され、図5がスライドシートの最後端位置で、フラットハーネス6が車両後方に引き出される。可動構造体として車両のフロントやリアのヒンジ回動式のドアやバックドアやトランク等を用いることも可能である。ケース9を固定構造体ではなく可動構造体に搭載することも可能である。この場合、フラットハーネス6の可動側の先端部30が電源側に接続され、基端部5に続く固定側のハーネス部分(図示せず)が給電側に接続される。
【0061】
なお、上記実施形態においては、ハーネス導出部7を一体に有するカバー部8を別体のベース部4に回動自在に装着したが、例えば、ハーネス導出部7を含む部分をカバー部(8)に周方向回動自在に設け、カバー部(8)をベース部4に不動に固定し、図3〜図5の可動構造体の移動に伴って、ハーネス導出部7を含む部分を図3〜図5のハーネス導出部7と同様に回動させることも可能である。この場合、例えば、ベース部4の軸部3の先端(小径部3c)にカバー部(8)の天壁24を不動に固定し、カバー部(8)の円形環状の周壁22がベース部4と天壁24との間に周方向回動(スライド)自在に嵌合し、周壁22にハーネス導出部7が一体に突設される。
【0062】
本発明は、給電装置1として以外に、給電装置1を用いた回路体配索構造や、フラット回路体を用いた給電構造等としても有効なものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る給電装置は、自動車のスライドドアやスライドシート等といった給電側に常時給電を行うべく、フラットハーネスの長さを短く設定しつつ、ケースとフラットハーネスとの摺動摩擦を軽減させ、且つフラットハーネスの屈曲耐久性を高めるために利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 給電装置
3 軸部
4 ベース部
5 基端部
6 フラットハーネス(フラット回路体)
7 ハーネス導出部(回路体導出部)
8 カバー部
9 ケース
10 ハーネス保護チューブ(回路体保護部材)
30 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに回路体導出部がケース周方向回動自在に設けられ、該ケースの軸部にフラット回路体の基端部側が固定され、該フラット回路体が該ケース内で該軸部を中心に巻かれて収容され、該フラット回路体の先端部側が該回路体導出部からケース周方向に揺動しつつ引き出されると同時に、該回路体導出部が該フラット回路体の揺動方向に回動し、該フラット回路体が該回路体導出部内に略直線的に挿通されることを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記ケースがベース部とカバー部とで構成され、該ベース部に前記軸部が立設され、該カバー部が該ベース部に周方向回動自在に装着され、該カバー部に前記回路体導出部が一体に設けられたことを特徴とする請求項1記載の給電装置。
【請求項3】
前記カバー部に設けた孔部が前記軸部に周方向摺接自在に係合したことを特徴とする請求項2記載の給電装置。
【請求項4】
前記回路体導出部から屈曲性の回路体保護部材が外部に突出して設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−60846(P2012−60846A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204110(P2010−204110)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)