説明

絶縁被覆導電粒子、異方導電性材料及び接続構造体

【課題】異方導電性材料を用いた回路部材同士の電気的な接続において、低圧条件であっても回路部材同士の電気的な接続を確実に行うとともに、同一の回路部材上で隣接する電極間の十分な絶縁抵抗を確保すること。
【解決手段】導電粒子8と、導電粒子8の表面に吸着した絶縁性の子粒子6と、を備える絶縁被覆導電粒子10。小粒子6を15〜20MPa1/2の溶解度パラメータを有する溶剤中に分散したときの子粒子6の膨潤度が1.00〜1.15であり、子粒子6がC原子及びSi原子を含み、子粒子6におけるC原子/Si原子数比が1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁被覆導電粒子、異方導電性材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
基材粒子の表面の一部を樹脂で被覆することにより、基材粒子に耐熱性、耐磨耗性、絶縁性、導電性、撥水性、接着性、分散性、光沢、着色等の性能が付与できる。そのような被覆粒子は、種々の充填剤、改質剤としてフィルム、粘着剤、接着剤、塗料等に用いられている。なかでも、金属表面を有する導電粒子の表面を絶縁性樹脂で被覆した絶縁被覆導電粒子と、これが分散する接着剤とから構成される異方導電性フィルム及び異方導電性接着剤等の異方導電性材料によれば、導電粒子を被覆する絶縁性樹脂により、隣接する導電粒子間の導通を防止できることから、接続信頼性の向上が期待される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハイブリダイゼーションにより導電粒子の表面に絶縁層を形成させた絶縁被覆導電粒子が開示されている。特許文献2には、導電粒子の表面を、導電粒子より粒径が小さくかつ導電粒子と電荷の符号が異なる子粒子を用いて被覆した絶縁被覆導電粒子が開示されている。導電粒子を被覆する子粒子としては、主に、有機ポリマー粒子、又はシリカ粒子が用いられている。特許文献3には中空粒子により絶縁被覆された絶縁被覆導電粒子が、特許文献4にはコアシェル粒子により被覆された絶縁被覆導電粒子がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−105716号公報
【特許文献2】特表2003−26813号公報
【特許文献3】特開2005−203319号公報
【特許文献4】特開2005−149764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機ポリマー粒子を小粒子として用いる場合、有機ポリマー粒子の表面に導電粒子と結合する結合性官能基があるときであっても、異方導電性材料を調製するために各成分を溶剤中で混練する際に、有機ポリマー粒子が、表面の部分的な溶解により導電粒子表面から剥離するため、絶縁信頼性が低下するという問題があった。また、有機ポリマー粒子の熱膨張係数が大きいために接続信頼性が不足する場合もあった。
【0006】
一方、シリカ粒子を子粒子として用いる場合、シリカ粒子が変形し難いことから、絶縁信頼性は良好である。また、シリカ粒子の耐溶剤性は高い。しかし、低圧で回路部材を実装すると、子粒子の変形が起き難いために、導通性が低くなるという問題があった。シリカ粒子の代替材料としてシリコーン粒子が考えられるが、粒径の単分散性が高いシリコーン粒子を得ることは困難であるため、採用されていない。
【0007】
中空粒子を子粒子として用いると、中空粒子に起因する気泡が残存することにより導通阻害が生じることがある。更に、中空粒子が、溶剤、及びその他の成分を吸収するため、硬化阻害を起こり易いといった問題もあった。
【0008】
特許文献4に開示される有機ポリマーから構成されるコアシェル粒子を子粒子として用いた場合も、子粒子の耐溶剤性の不足により、導電粒子からの剥離及びこれに起因する絶縁信頼性の低下は避けられなかった。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、異方導電性材料を用いた回路部材同士の電気的な接続において、低圧条件であっても回路部材同士の電気的な接続を確実に行うとともに、同一の回路部材上で隣接する電極間の十分な絶縁抵抗を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、導電性の金属から形成された表面を有する導電粒子と、該導電粒子の表面に吸着した絶縁性の子粒子と、を備える絶縁被覆導電粒子に関する。小粒子を15〜20MPa1/2の溶解度パラメータを有する溶剤中に分散したときの子粒子の膨潤度が1.00〜1.15であり、子粒子がC原子及びSi原子を含み、子粒子におけるC原子/Si原子数比が1以上である。
【0011】
一般に、異方導電性材料は、15〜20MPa1/2の溶解度パラメータを有する溶剤中で調製されることが多い。子粒子を有し、異方導電性材料に用いられる絶縁被覆導電粒子において、子粒子がこのような溶剤中に分散されたときの膨潤度が上記特定の範囲内にあることにより、溶剤と接触したときの子粒子の導電粒子からの剥離が防止されて、高い絶縁信頼性が維持される。更に、子粒子がC原子及びSi原子を含み、子粒子におけるC原子数/Si原子数の比が1以上であることにより、子粒子が適度に変形し易く、低圧条件であっても十分に高い接続信頼性が得られる。すなわち、本発明によれば、低圧条件であっても回路部材同士の電気的な接続を確実に行うとともに、同一の回路部材上で隣接する電極間の十分な絶縁抵抗を確保することができる。
【0012】
上記溶剤は、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル又はこれらの組み合わせである。
【0013】
上記子粒子が、コア粒子と該コア粒子を覆うシェル層とを有し、コア粒子が有機ポリマー粒子であり、シェル層がシリカ及び/又はシリコーンを含むことが好ましい。これにより、本発明による接続信頼性及び絶縁信頼性向上の効果がより顕著に奏される。同様の観点から、子粒子が結合性官能基を有することが好ましい。この結合性官能基は好ましくはグリシジル基である。更にこの場合、子粒子が、結合性官能基を有するシリコーンオリゴマーにより表面処理された粒子であることが好ましい。子粒子が結合性官能基を有していることにより、子粒子と導電粒子との密着性が高くなり、溶剤中での導電粒子からの子粒子の剥離がより効果的に防止される。
【0014】
子粒子の平均粒径は好ましくは100〜500nmである。これにより、本発明による接続信頼性及び絶縁信頼性向上の効果がより顕著に奏される。
【0015】
子粒子の粒径のC.V.値は好ましくは10%以下である。これにより、絶縁特性の再現性を向上することができる。
【0016】
有機ポリマー粒子のガラス転移温度又は軟化温度よりもシェル層のガラス転移温度又は軟化温度が高いことが好ましい。有機微粒子の融点よりもシェル層の融点が高いことが好ましい。これにより、溶剤中での子粒子の膨潤が効果的に抑制される。シェル層の厚みは好ましくは15〜50nmである。
【0017】
本発明はまた、絶縁性のバインダー樹脂と、該バインダー樹脂中に分散している本発明に係る絶縁被覆導電粒子と、を含む異方導電性材料に関する。更に、本発明は、接続端子を有する2つの回路部材と、該2つの回路部材の間に介在し、本発明に係る異方導電性材料から形成された接続部と、を備え、2つの回路部材が、一方の回路部材の接続端子と他方の回路部材の接続端子とが電気的に接続されるように接続部により接着されている、接続構造体にも関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、異方導電性材料を用いた回路部材同士の電気的な接続において、低圧条件であっても回路部材同士の電気的な接続を確実に行うとともに、同一の回路部材上で隣接する電極間の十分な絶縁抵抗を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】絶縁被覆導電粒子を含む異方導電性材料の一実施形態を示す断面図である。
【図2】接続構造体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、絶縁被覆導電粒子を含む異方導電性材料の一実施形態を示す断面図である。図1に示す異方導電性材料50は、絶縁性のバインダー樹脂12と、バインダー樹脂12中に分散している絶縁被覆導電粒子10と、を含む異方導電性材料がフィルム状に成形された異方導電性フィルムである。
【0022】
絶縁被覆導電粒子10は、導電性の金属から形成された表面を有する導電粒子8と、導電粒子8の表面に吸着した絶縁性の子粒子6とから構成される。導電粒子8の表面の一部が、子粒子6によって被覆されている。
【0023】
小粒子6を15〜20MPa1/2の溶解度パラメータを有する溶剤中に分散したときの子粒子6の膨潤度は、好ましくは1.00〜1.15である。この膨潤度は、所定の溶剤に分散された子粒子の平均粒径、及び、水に分散された子粒子の平均粒径を、室温(25℃)において光散乱法により測定し、下記式により算出される値である。
膨潤度=(溶剤中における子粒子の光散乱平均粒径)/(水中における子粒子の光散乱平均粒径)
膨潤度は、上記溶媒中において顕微鏡などで観察した粒径(粒子100個の平均)から算出したものでも構わない。
【0024】
子粒子の膨潤度が1.15よりも大きいと、子粒子の耐溶剤性が不足して、絶縁信頼性が低下する傾向がある。膨潤度が1.00よりも小さいと、子粒子の吸湿率が高くなって、絶縁信頼性が低下する傾向がある。同様の観点から、子粒子の膨潤度は好ましくは1.00〜1.10である。
【0025】
膨潤度を測定するために用いられる溶剤は、好ましくは、異方導電性材料を調製するために用いられる溶剤が選択される。この溶剤は、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン又はこれらの組み合わせから構成される混合溶媒である。
【0026】
子粒子6におけるC原子/Si原子数比は、好ましくは1以上である。この比は、例えば、子粒子を元素分析して得られるC原子及びSi原子の濃度から算出することができる。あるいは、子粒子を合成するときの原料の仕込み量からこの比を算出することもできる。C原子/Si原子数比が1未満であると、子粒子が硬くなって、低圧実装の際に良好な導通抵抗を得にくくなる。C原子/Si原子数比は、好ましくは50以下、更に好ましくは20以下である。C原子/Si原子数比が大きくなりすぎると、子粒子の耐溶剤性が低下する傾向がある。
【0027】
以上説明したような膨潤度及び原子組成を有する子粒子は、例えば、以下に説明するような構成を有する。
【0028】
好ましい一実施形態に係る子粒子は、コア粒子と該コア粒子の表面の一部又は全部を覆うシェル層とを有するコアシェル粒子である。係るコアシェル粒子を構成するコア粒子及びシェル層の材料は、絶縁性材料であれば特に限定されないが、コア粒子は有機ポリマー粒子であることが好ましく、シェル層はシリカ及び/又はシリコーンからなることが好ましい。コア粒子及びシェル層を構成する材料の種類を適宜選択することにより、コアシェル粒子の熱的特性を調整することができる。その結果、加熱及び加圧により子粒子が変形しやすくなり、回路部材同士を圧着したときの良好な導通性が得られる。コア粒子及びシェル層の材料として、必要に応じて、熱特性、光学特性及び力学特性等が互いに異なる材料を選択することができる。
【0029】
コア粒子としての有機ポリマー粒子は、1種又は2種以上の絶縁性の有機ポリマーから構成される絶縁性粒子である。コア粒子は、1種又は2種以上の重合性モノマーを重合することにより生成させることができる。例えば、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、マイクロサスペンジョン重合法、ミニエマルション重合法及び分散重合法のような通常の方法によりコア粒子を製造することができる。これらの中でも、粒子径の制御が容易であり、工業生産にも適する点から、ソープフリー乳化重合法によりコア粒子を製造することが好ましい。
【0030】
コア粒子を得るために用いる重合性モノマーは、例えば、スチレン、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを含む。重合性モノマーは、カルボキシル基、アミノ基、又は第4級アンモニウム基を有する少なくとも1種の官能基含有モノマーを更に含むことが好ましい。官能基含有モノマーを用いることにより、コア粒子表面にカルボキシル基、アミノ基、第4級アンモニウム基又はこれらの組み合わせが導入され、シェル層を形成し易くなる。これは、静電相互作用及び/又は水素結合により、シリカ及びシリコーンが吸着し易くなるためである。
【0031】
カルボキシル基を有するモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸等の不飽和カルボン酸、イタコン酸モノブチル等のイタコン酸モノC1〜8アルキルエステル、マレイン酸モノブチル等のマレイン酸モノC1〜8アルキルエステル、ビニル安息香酸等のビニル基含有芳香族カルボン酸、並びにこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の化合物である。カルボキシル基を有するモノマーは、中和によりNaなどの対イオンを有していてもよい。
【0032】
アミノ基を有するモノマーは、例えば、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸−N−プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−エチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N−フェニルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸−N−シクロヘキシルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル誘導体、アリルアミン及びN−メチルアリルアミン等のアリルアミン誘導体、p−アミノスチレン等のスチレン誘導体、並びに、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン等のトリアジン誘導体から選ばれる1種又は2種以上の化合物である。これらの中でも1級または2級アミノ基を有する化合物が好ましい。
【0033】
第4級アンモニウム(塩)基を有するモノマーとしては、例えば、C1〜12アルキルクロライド、ジアルキル硫酸、ジアルキルカーボネート及びベンジルクロライド等の4級化剤により、3級アミンを4級化した化合物が挙げられる。係る化合物の具体例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド及び(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルモルホリノアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリレートの第4級アンモニウム塩、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロライド及び(メタ)アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアルキル(メタ)アクリルアミドの第4級アンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウムメチルサルフェート、トリメチルビニルフェニルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレート、並びに、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートが挙げられる。これらの化合物は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。これらの化合物の重合性モノマーの割合は、子粒子の単分散性向上の点から、好ましくは0.1mol%から5mol%、より好ましくは0.1mol%から2.5mol%、更に好ましくは0.1mol%から1mol%である。
【0034】
コア粒子を合成するための反応液における、重合性モノマーの量は、全反応液の質量を基準として好ましくは1〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%、より一層好ましくは3〜15質量%である。重合性モノマーの量が50質量%を超えると、粒子を単分散化した状態で、高収率で得ることが困難になる。一方、重合性モノマーの量が1質量%未満であると、反応が完結するまでに長時間を要し、また工業的観点から、あまり実用的ではない。
【0035】
重合の反応温度は、使用する反応溶媒の種類によっても変化するが、通常、10〜200℃程度であり、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜90℃である。反応時間は、目的とする反応がほぼ完結するのに要する時間であれば特に限定されるものではなく、モノマー種およびその配合量、官能基の種類、溶液の粘度、その濃度並びに目的の粒子径等に大きく左右される。例えば、反応温度が40〜90℃の場合、反応時間は好ましくは1〜72時間、より好ましくは2〜24時間程度である。
【0036】
重合のために、開始剤を使用することができる。開始剤としては、2’−アゾビス{2−[N−(2−カルボキシエチル)アミジノプロパン、2,2’−アゾビス[2−(フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−545、和光純薬製)、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−546、和光純薬製)、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−ドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−548、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−552、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−553、和光純薬製)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)、2,2’−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−558、和光純薬製)、2,2−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−041、和光純薬製)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−044、和光純薬製)、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−054、和光純薬製)、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−058、和光純薬製)、2,2−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(VA−059、和光純薬製)、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド(VA−060、和光純薬製)、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](VA−061、和光純薬製)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン](VA−057、和光純薬製)、ペルオキソ二硫酸カリウム(和光純薬製)、及びペルオキソ二硫酸アンモニウム(和光純薬製)が挙げられる。これらは1種単独で、または2種類以上組み合わせて使用することができる。また、粒子活性水素基または親水性官能基を有する重合性モノマーを使用しない場合は、上記開始剤中で活性水素基または親水性官能基を有する化合物を使用することが粒子の分散性を向上する上で好ましい。上記ラジカル重合開始剤の配合量は、通常、重合性モノマー100質量部に対して、0.1〜10質量部である。
【0037】
高分子分散剤又は界面活性剤をコア粒子に吸着させることにより、アミノ基、カルボキシル基をコア粒子表面に導入してもよい。
【0038】
コア粒子の分散性を向上するために乳化剤を使用することができる。乳化剤としてはアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤が好適に使用されうる。アニオン系乳化剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどが挙げられる。特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好適である。ノニオン系乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0039】
コア粒子のガラス転移温度(Tg)は、重合性モノマーの組み合わせを選択することにより、任意に調整可能である。例えば、単独で重合したときにTg又は軟化点温度が60℃以下のポリマーを生成するモノマーとしては、イソブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。Tgが60℃以上のスチレンやメタクリル酸メチル等とTgが60℃未満のブチルアクリレートやドデシルメタクリレート等とを適当な比率で共重合させることによりコア粒子のTgを60℃以下にすることができる。また、Tgが80℃以上の樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、コア粒子の溶剤への溶出を防止するためには、有機ポリマーの架橋度は5%未満であることが好ましい。
【0040】
シェル層は、シリカ及び/又はシリコーンからなる。言い換えると、シェル層は、SiO4/2単位、RSiO3/2単位およびRSiO2/2単位からなる群より選ばれる1単位又は2単位以上から構成される。複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0041】
SiO4/2単位は、例えば、四塩化ケイ素、テトラアルコキシシラン、水ガラスおよび金属ケイ酸塩からなる群より選択される1種または2種以上のケイ素化合物から形成される。テトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、およびそれらの縮合物が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
RSiO3/2単位中のRは、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜24の芳香族基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基、又は、SH基を有する有機基である。場合により、Rとして、少量のビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基、又は、SH基を有する有機基と、多量のアルキル基または芳香族基とを選択することもありうる。
【0043】
RSiO3/2単位の原料としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシラン、3,3,3,トリフルオロプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
SiO2/2単位(Rは、RSiO3/2単位中のRと同様の群から選択されうる。)の原料としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、直鎖状若しくは分岐状のオルガノシロキサン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、及び3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて適宜使用できる。
【0045】
粒子に柔軟性を付与するためにRSiO2/2単位をシェル層に少量混入することができる。シェル層中のRSiO2/2単位の割合は好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。RSiO2/2単位の割合が20モル%を越えるとコアシェル粒子が柔軟になり過ぎて形状保持性に問題が起こる場合がある。シェル層中のRSiO2/2単位の割合の下限値は0モル%である。
【0046】
シェル層は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でRSiO1/2単位を少量含んでいてもよい。シェル層中のRSiO1/2単位の割合は好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下である。RSiO1/2単位の割合が5モル%を越えると、コアシェル粒子の耐熱性が不足する可能性がある。シェル層中のRSiO1/2単位の割合の下限値は0モル%である。
【0047】
シェル層が主としてシリコーンから構成される場合、コアシェル粒子は、例えば、コア粒子と、シェル形成触媒と、溶媒とを含む分散液に対して、SiO4/2単位の原料、RSiO3/2単位の原料及びRSiO2/2単位の原料から選ばれるケイ素化合物と水との混合液を乳化した乳化液を加える方法により、得ることができる。
【0048】
ケイ素化合物を含む混合液は、ラインミキサー又はホモジナイザーにより乳化することができる。得られた乳化液は一括又は連続的に分散液に加えられる。時間的には長くなるが、ラテックス状粒子の安定性及び粒子径分布を重視すれば、連続追加を採用することが好ましい。シェル形成触媒としての酸触媒を分散液に含ませて、乳化液の添加後直ちに加水分解及び縮合反応が進む条件で乳化液を連続的に分散液に加えると、コアシェル粒子は時間とともに大きく成長し、通常のシード重合のように、狭い粒子径分布を示すコアシェル粒子を得ることができる。30分〜1時間の比較的短い時間をかけて連続追加を行うと、比較的良い生産性と狭い粒子径分布を両立することができる。
【0049】
シェル層が主としてシリカから構成される場合、コアシェル粒子は、例えば、コア粒子とシェル形成触媒と溶媒とを含む分散液に対し、SiO4/2単位の原料と、水及び/又はアルコールとを含む溶液を一括又は連続的に追加する方法により、得ることができる。
【0050】
コアシェル粒子において、コア粒子の粒径及びシェル層の厚さは特に限定されないが、シェル層の厚さは、コア粒子の粒径に対して好ましくは1/100以上、より好ましくは1/50以上である。
【0051】
シェル層のガラス転移温度は、コア粒子のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。シェル層の軟化温度は、コア粒子の軟化温度よりも高いことが好ましい。シェル層の融点は、コア粒子の融点よりも高いことが好ましい。
【0052】
シェル層の厚みは15〜50nmであることが好ましい。シェル層の厚みが50nmを超えると、コアシェル粒子の物性がシェル層の物性に支配されてコアシェル粒子が変形しにくくなる傾向がある。そうすると導電粒子表面が露出しにくくなって、回路部材の導電接続を行うときに接続端子間の導通不良が生じ易くなる可能性がある。
【0053】
シェル形成触媒は、シリコンアルコキシドのゾルゲル反応に用いる触媒のことであり、酸触媒又はアルカリ触媒が用いられる。酸触媒としては、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸及び脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類、並びに硫酸、塩酸及び硝酸などの鉱酸が挙げられる。これらの中でも、オルガノシロキサンの乳化安定性に優れる観点から、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。アルカリ触媒としては、例えば、メチルアミン、エーテルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、カテコールアミン、フェネチルアミン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(プロトンスポンジ)、アミノ酸、アマンタジン、スペルミジン、及びスペルミンが挙げられる。3級アミノ基を有する化合物、特にトリエチルアミンが好ましい。
【0054】
子粒子6の平均粒径は、導電粒子8の粒径及び絶縁被覆導電粒子の用途等によっても異なるが、100〜500nmであることが好ましい。子粒子の粒径が大きいと、絶縁被覆導電粒子10の物性が、子粒子の物性によって支配されることがあり、導電粒子を用いる効果が得られにくくなる。子粒子の平均粒径の好ましい下限は150nmであり、子粒子の平均粒径の好ましい上限は400nmである。子粒子の粒径が小さいと、隣接する絶縁被覆導電粒子間の距離が電子のホッピング距離より小さくなり、リークが起こりやすくなる傾向がある。子粒子の平均粒径が500nmを超えると、低圧力での実装時に導通抵抗が高くなることがある。粒子径の異なる2種以上の子粒子を併用してもよい。この場合、大きな子粒子の間の隙間に小さな粒子が入り込むことにより、子粒子による導電粒子の被覆密度を向上できる。小さな子粒子の粒子径は大きな粒子の粒子径の1/2以下であることが好ましい。小さな粒子の数は大きな粒子の数の1/4以下であることが好ましい。
【0055】
子粒子の粒径のC.V.値は、10%以下であることが好ましい。C.V.値が10%を超えると、絶縁被覆導電粒子の大きさが不均一となるために、回路部材を圧着する際に絶縁被覆導電粒子に加えられる圧力の均一性が低下して、接続信頼性が低下する傾向がある。同様の観点から、粒径のC.V.値は、より好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下である。
【0056】
粒径のC.V.値は、下記式により算出することができる。
粒径のC.V.値(%)=(粒径の標準偏差)/平均粒径×100
【0057】
子粒子の平均粒径及び粒径のC.V.値を求めるための粒径分布は、SEM写真の画像解析により測定することができる。SEM写真の画像解析における子粒子の粒径は、SEM写真における子粒子の最大幅である。子粒子100個の粒径を求め、それらの測定値から平均粒径及び粒径のC.V.値が算出される。
【0058】
子粒子は、結合性官能基により形成された共有結合を介して導電粒子と結合していることが好ましい。これにより、ファンデルワールス力又は静電気力のみによる結合に比べて、強い結合力により子粒子が導電粒子に吸着される。したがって、絶縁被覆導電粒子がバインダー樹脂等とともに混練される際に子粒子が剥がれ落ちたり、隣接する絶縁被覆導電粒子との接触により子粒子が剥がれ落ちてリークが起こったりすることを効果的に防ぐことができる。共有結合は導電粒子と子粒子との間にのみ形成され、子粒子同士は共有結合により結合していないことが好ましい。この場合、導電粒子は、単層の子粒子により被覆され易い。したがって、導電粒子及び子粒子として粒径が揃ったものを用いれば、絶縁被覆導電粒子の粒径を容易に均一なものとすることができる。
【0059】
結合性官能基は、共有結合を形成し得る基であれば特に限定されず、シラノール基、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基、水酸基、カルボニル基、チオール基、スルホン酸基、スルホニウム基、エポキシ基、グリシジル基等が挙げられる。グリシジル基が反応の速さの観点から好ましい。この結合性官能基は、シェル層を形成するときに、結合性官能基を有するケイ素化合物を用いる方法、又は、結合性官能基を有する界面活性剤又は高分子分散剤により子粒子を表面処理する方法により子粒子表面に付与することができる。子粒子の導電粒子への吸着性を向上させる観点から、結合性官能基を有するシリコーンオリゴマーによってコアシェル粒子を表面処理することが好ましい。シリコーンオリゴマーによって表面処理されたコアシェル粒子の膨潤度は、表面処理される前のコアシェル粒子の膨潤度と実質的に同じである。
【0060】
子粒子6の表面積のうち20%以下が、導電粒子8と接触していることが好ましい。この割合が20%を超えると、子粒子の変形が大きく、絶縁被覆導電粒子の大きさが不均一となったり、シェル層が破壊されてコアシェル構造を維持できなくなったりする。この割合の下限は特に限定されず、子粒子と導電粒子とが、例えば鎖長の長いポリマー等を介して結合されている場合、実質的に0%であってもよい。
【0061】
導電粒子8の表面のうち5%以上が子粒子6により被覆されていることが好ましい。言い換えると、子粒子による導電粒子表面の被覆率は5面積%以上であることが好ましい。被覆率が5%未満であると、絶縁被覆導電粒子の絶縁性を確保しにくくなる傾向がある。絶縁被覆導電粒子が異方導電性材料に用いられる場合、子粒子の被覆率は好ましくは5〜60%である。被覆率が5%未満であると、隣接粒子間で導電粒子が接触して、同一回路部材の接続端子間でリークが起こりやすくなる傾向がある。被覆率が60%を超えると、充分な導通性を確保することができなくなる可能性がある。導電粒子表面の子粒子による被覆率は、子粒子の添加量(濃度)、導電粒子表面に導入する官能基の量(密度)、反応溶媒の種類等によって制御できる。
【0062】
絶縁被覆導電粒子からアンモニウムイオンが溶出すると、異方導電性フィルムの硬化阻害が生じ得る。そのため、絶縁被覆導電粒子からのアンモニウムイオンの溶出量は100ppm以下であることが好ましい。
【0063】
子粒子の吸湿量は、好ましくは5質量%以下である。これにより、イオンマイグレーション等に起因するショートの発生を抑制できる。この吸湿量は、子粒子を高温高湿度環境(温度60℃、湿度90%)に18時間放置したときに子粒子が吸収する水分量の、初期の子粒子の質量に対する割合である。
【0064】
絶縁被覆導電粒子10を構成する導電粒子8は、導電性の金属から形成された表面を有する。導電粒子8は、無機化合物及び/又は有機化合物を含む芯材粒子と、該芯材粒子を覆う導電性の金属層とから構成される複合粒子であってもよいし、導電性金属から構成される金属粒子であってもよい。なかでも、有機化合物からなる芯材粒子及び金属層を有する複合粒子は、回路部材間を導電接続する際の圧着時に変形しやすく、接合面積を増やすことができることから、接続安定性の点で好ましい。
【0065】
導電粒子を構成する導電性の金属は、特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、パラジウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウムから選ばれる少なくとも1種である。ITO、ハンダ等の金属化合物を用いることもできる。
【0066】
上記複合粒子を構成する金属層は、単層構造を有していてもよいし、複数の層からなる積層構造を有していてもよい。積層構造の最外層は金、パラジウム、又はニッケルからなることが好ましい。最外層が金層であると、耐食性が高く接触抵抗も小さいので、絶縁被覆導電粒子は更に優れたものとなる。
【0067】
有機化合物からなる芯材粒子の表面に導電性の金属層を形成する方法は特に限定されず、例えば、物理的な金属蒸着法、化学的な無電解メッキ法等の公知の方法が挙げられるが、工程の簡便さから無電解メッキ法が好適である。無電解メッキ法で形成できる金属層としては、例えば、金、銀、銅、プラチナ、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、コバルト、錫及びこれらの合金等が挙げられる。均一な被覆を高密度で形成できることから金属層の一部又は全部が無電解ニッケルメッキによって形成されたものであることが好ましい。
【0068】
金属層の最外層に金層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、無電解メッキ、置換メッキ、電気メッキ、スパッタリング等の既知の方法等が挙げられる。
【0069】
金属層の厚みは特に限定されないが、厚みの好ましい下限は0.005μm、厚みの好ましい上限は2μmである。金属層の厚みが0.005μm未満であると、導電層としての充分な効果が得られないことがあり、金属層の厚みが2μmを超えると、絶縁被覆導電粒子の比重が高くなりすぎたり、導電粒子が硬くなって充分変形できなったりすることがある。金属層の厚みのより好ましい下限は0.01μmであり、金属層の厚みのより好ましい上限は1μmである。
【0070】
金属層の最外層が金層である場合、金層の厚みの好ましい下限は0.001μmであり、金層の厚みの好ましい上限は0.5μmである。金層の厚みが0.001μm未満であると、均一に金属層を被覆することが困難になり耐食性や接触抵抗値の向上効果が低下することがある。金層の厚みが0.5μmを超えると、その効果の割には製造コストが高くなる。金層の厚みのより好ましい下限は0.01μmであり、金層の厚みのより好ましい上限は0.3μmである。
【0071】
上記複合粒子を構成する芯材粒子は特に限定されず、例えば、均一な組成からなる粒子や、複数の原料が層状に構成された多層構造の粒子等が挙げられる。なかでも、導電粒子に機械的特性や電気的特性等の種々の特性を付与したい場合には、多層構造の粒子が好適である。
【0072】
芯材粒子を構成する材料は特に限定されず、公知のシリカ等の無機材料や有機材料等が挙げられる。なかでも、絶縁被覆導電粒子が異方導電性材料に用いられる場合に、回路部材間を導電接続する際の圧着時に変形して導電粒子表面と接続端子との接合面積を増やすことができ、接続安定性に優れることから、有機材料が好ましい。
【0073】
上記有機材料は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂等のフェノール樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等のメラミン樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂等のベンゾグアナミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、(不)飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種又は2種以上重合させて形成される樹脂から形成される芯材粒子は、好適な硬さを得やすいことから好ましい。
【0074】
非架橋性単量体として具体的には、i)スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン類、(ii)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(iii)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、(iv)N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、(v)フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピル等のフッ化アルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(vi)ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類等が挙げられる。
【0075】
架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン;ジビニルビフェニル;ジビニルナフタレン;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体等が挙げられる。なお、製品名としては新中村化学工業(株)製のNKエステル[A−TMPT−6P0、A−TMPT−3E0、A−TMM−3LMN、A−GLYシリーズ、A−9300、AD−TMP、AD−TMP−4CL、ATM−4E、A−DPH]等が挙げられる。
【0076】
シリル基を有するモノマーも架橋性単量体として用いることができる。具体的にはγ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ―アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―メタクリロキシプロピルビス(トリメトキシ)メチルシラン、11―メタクリロキシウンデカメチレントリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4―ビニルテトラメチレントリメトキシシラン、8―ビニルオクタメチレントリメトキシシラン、3―トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、ビニルトリアセトキシシラン、p―トリメトキシシリルスチレン、p―トリエトキシシリルスチレン、p―トリメトキシシリル−α―メチルスチレン、p―トリエトキシシリル−α―メチルスチレン、γ―アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル−γ―アミノプロピル)トリメトキシシラン・塩酸塩が挙げられる。
【0077】
これらモノマーは、一種または二種以上混合使用されてもよい。芯材粒子の製造方法としては、従来公知の方法を用いることができ特に限定されないが、例えば、エマルジョン重合法、転相乳化重合、懸濁重合法、分散重合法、シード重合法、ソープフリー析出重合法等が挙げられる。なかでも粒径の制御性に優れるシード重合法が好適である。また、市販の有機粒子を芯材粒子として用いることもできる。
【0078】
異方導電性材料1を構成する絶縁性のバインダー樹脂12は、例えば、エポキシ樹脂及びその硬化剤等を含む熱硬化性樹脂組成物である。バインダー樹脂は、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂、アクリルゴム等のエラストマーを含んでいてもよい。
【0079】
図2は、接続構造体の一実施形態を示す断面図である。図2に示す接続構造体100は、基板21及び基板21の主面21a上に設けられた第一の接続端子22を有する第一の回路部材20と基板31及び基板31の主面31a上に設けられた第二の接続端子32を有する第二の回路部材30と、これら2つの回路部材20,30の間に介在する接続部12とから主として構成される。接続部12は、上述の異方導電性材料50を硬化して形成される。2つの回路部材20,30が、第一の回路部材20の接続端子22と第二の回路部材30の接続端子32とが電気的に接続されるように接続部12により接着されている。例えば、一方の回路部材が半導体素子等の小型電子部品であってもよい。
【実施例】
【0080】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(コア粒子1の合成)
500mlフラスコに下記に示した各化合物を一括して仕込んで、反応液を調製した。窒素により1時間溶存酸素を置換した後、70℃のウォーターバスで加熱しながら、反応液を約6時間撹拌して、コア粒子1を生成させた。
スチレン 40.4g
γ−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−503) 3.5g
2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン](VA−057)
1.4g
メタクリル酸ジメチルアミノエチルの1,3−プロパンスルトン付加物(DMAEMAPS) 0.6g
水 400g
コア粒子1をSEMにより観察したところ、平均粒径が262nmで、粒径のC.V.が4.1%であった。
【0082】
(コア粒子2の合成)
500mlフラスコに下記に示した各化合物を一括して仕込んで、反応液を調製した。窒素により1時間溶存酸素を置換した後、70℃のウォーターバスで加熱しながら、反応液を約6時間撹拌して、コア粒子2を生成させた。
スチレン 40.4g
KBE−503 3.5g
2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン](VA−057)
1.4g
p−スチレンスルホン酸Na 0.4g
水 400g
コア粒子2をSEMにより観察したところ、平均粒径が120nmで、粒径のC.V.が3.0%であった。
【0083】
(コア粒子3の合成)
500mlフラスコに下記に示した各化合物を一括して仕込んで、反応液を調製した。窒素により1時間溶存酸素を置換した後、70℃のウォーターバスで加熱しながら、反応液を約6時間撹拌して、コア粒子3を生成させた。
スチレン 40.4g
KBE−503 3.5g
2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン](VA−057)
1.4g
DMAEMAPS 0.3g
水 400g
コア粒子3をSEMにより観察したところ、平均粒径が360nmで、粒径のC.V.が4.8%であった。
【0084】
(コア粒子4の合成)
500mlフラスコに下記に示した各化合物を一括して仕込んで、反応液を調製した。窒素により1時間溶存酸素を置換した後、70℃のウォーターバスで加熱しながら、反応液を約6時間撹拌して、コア粒子4を生成させた。
スチレン 20.8g
アクリル酸ブチル 25.6g
KBE−503 3.5g
VA−057 1.4g
DMAEMAPS 0.6g
水 400g
コア粒子4をSEMにより観察したところ、平均粒径225nmで、粒径のC.V.が5.2%であった。
【0085】
(子粒子1)
500mlフラスコに下記に示した各成分を一括して仕込んで、コア粒子1を含む反応液を調製した。反応液を35℃のウォーターバスで加温し、撹拌しながら、下記のシェル原料分散液を1時間かけて滴下し、滴下後6時間加熱及び撹拌を続けた。
反応液:
5質量%コア粒子1水溶液 100g
エタノール 100g
トリエチルアミン 2g
シェル原料分散液:
テトラエトキシシラン 12.5g
エタノール 300g
【0086】
得られた粒子分散液について、遠心分離及びメタノールへの再分散を数回繰り返した後、粒子をSEMにより観察したところ、平均粒径が300nmで、粒径のC.V.が4.2%であった。粒子をメチルエチルケトン、又は水中に分散し、その状態で粒子の光散乱平均粒径を光散乱法により測定したところ、それぞれ310nm、又は319nmであった。すなわち、メチルエチルケトン中における子粒子の膨潤度は1.03であった。得られた粒子1gを高温高湿度試験槽(温度60℃、湿度90%)に18時間放置した後、再度粒子質量を測定することにより吸湿量を測定した。吸湿量は1.5質量%であった。
【0087】
続いて、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン60g、メタノール3g、水14g、及び塩酸(全量の1質量%)の混合液を60℃で4時間撹拌して、グリシジル基を有するシリコーンオリゴマーを生成させた。得られたシリコーンオリゴマーを粒子分散液に粒子質量と同量添加し、2時間撹拌を行い、子粒子1を得た。
【0088】
(子粒子2の合成)
シェル原料分散液のテトラエトキシシランの量を2倍に変更したこと以外は子粒子1と同様にして、子粒子2を得た。SEMにより観察したところ、平均粒径が325nmで、粒径のC.V.が4.0%であった。膨潤度は1.02、吸湿量は2.0質量%であった。
【0089】
(子粒子3の合成)
シェル原料分散液のテトラエトキシシランの量を3倍に変更したこと以外は子粒子2と同様にして、子粒子3を得た。SEMにより観察したところ、平均粒径が363nmで、粒径のC.V.が4.4%であった。膨潤度は1.02、吸湿量は3.0質量%であった。
【0090】
(子粒子4の合成)
シェル原料分散液のテトラエトキシシラン12.5gをテトラエトキシシラン6.7g及びメチルトリエトキシシラン5.8gに変更したこと以外は子粒子1同様にして、子粒子4を得た。SEMにより観察したところ、平均粒径が316nmで、粒径のC.V.が4.1%であった。膨潤度は1.05、吸湿量は1.0質量%であった。
【0091】
(子粒子5の合成)
500mlフラスコに下記に示した各化合物を一括して仕込んで、反応液を調製した。反応液を80℃のウォーターバスで加温し、撹拌しながら、下記のシェル原料分散液を1時間かけて滴下し、滴下後5時間加熱及び撹拌を続け、20時間静置して、子粒子5を得た。
反応液:
2.5質量%コア粒子1水溶液 200g
ドデシルベンゼンスルホン酸Na 2g
ドデシルベンゼンスルホン酸 2g
シェル原料分散液:
メチルトリメトキシシラン 15.0g
水 20.0g
ドデシルベンゼンスルホン酸Na 0.1g
【0092】
得られた粒子分散液について、遠心分離及びメタノールへの再分散を数回繰り返した後、粒子をSEMにより観察したところ、平均粒径が312nmで、粒径のC.V.が4.5%であった。膨潤度は1.10で、吸湿量は1.2質量%であった。
【0093】
(子粒子6の合成)
500mlフラスコに下記に示した各化合物を一括して仕込んで、反応液を調製した。反応液を80℃のウォーターバスで加温し、撹拌しながら、下記のシェル原料分散液を1時間かけて滴下し、滴下後5時間加熱及び撹拌を続け、20時間静置して、子粒子6を得た。
反応液:
2.5質量%コア粒子1水溶液 200g
ドデシルベンゼンスルホン酸Na 2g
ドデシルベンゼンスルホン酸 2g
シェル原料分散液:
テトラメトキシシラン 7.0g
ジメチルジメトキシシラン 5.5g
ドデシルベンゼンスルホン酸Na 0.1g
水 20g
【0094】
得られた粒子分散液について、遠心分離及びメタノールへの再分散を数回繰り返した後、粒子をSEMにより観察したところ、平均粒径が320nmで、粒径のC.V.が5%であった。膨潤度は1.15で、吸湿量は0.7質量%であった。
【0095】
(子粒子7の合成)
コア粒子1をコア粒子2に変更したこと以外は子粒子1と同様にして、子粒子7を得た。SEMにより観察したところ、平均粒径が152nm、粒径のC.V.が4.8%であった。膨潤度は1.03で、吸湿量は1.0質量%であった。
【0096】
(子粒子8の合成)
コア粒子1をコア粒子3に変更したこと以外は子粒子1と同様にして、子粒子8を得た。SEMにより観察したところ、平均粒径が395nmで、粒径のC.V.が5.0%であった。膨潤度は1.02で、吸湿量は1.2質量%であった。
【0097】
(子粒子9)
コア粒子1をそのまま子粒子9として用いた。膨潤度は1.16で、吸湿量は0.5質量%であった。
【0098】
(子粒子10の合成)
コア粒子4分散液に、下記成分を含む混合物を1時間かけて滴下し、その後、4時間重合を行って、子粒子10を生成させた。
スチレン 40.4g
ジビニルベンゼン 1.6g
VA−057 1.4g
DMAEMAPS 0.6g
【0099】
粒子をSEMにより観察したところ、平均粒径が320nmで、粒径のC.V.が6%であった。膨潤度は1.20で、吸湿量は0.5質量%であった。
【0100】
(子粒子11の合成)
500mlフラスコに下記に示した各化合物を一括して仕込んで、反応液を調製した。窒素により1時間かけて溶存酸素を置換した後、反応液を80℃のウォーターバスで加熱しながら6時間攪拌して、子粒子11を得た。
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 7.5g
アクリル酸メチル 4.1g
メタクリル酸 6.9g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.36g
アセトニトリル 350g
粒子をSEMにより観察したところ、平均粒径が320nmで、粒径のC.V.が5.1%であった。膨潤度は0.95で、吸湿量は15.0質量%であった。
【0101】
(子粒子12)
市販のコロイダルシリカ分散液(濃度20質量%、扶桑化学工業社製、製品名クオートロンPL−13、平均粒子径130nm)中のシリカ粒子を子粒子12とした。膨潤度は1.00で、吸湿量は4.0質量%であった。
【0102】
(小粒子13)
水954gに、酸濃度5×10−55規定となるように塩酸を添加して、塩酸水溶液を準備した。この塩酸水溶液にメチルトリメトキシシラン1モル及びテトラメトキシシラン0.08モルを添加し、5時間撹拌した後、10℃まで冷却して、シラノール溶液を得た。得られたシラノール溶液を10℃で撹拌しながら0.37質量%のアンモニア水溶液を7×10−3モル添加し、50rpmで4時間撹拌を続け、小粒子13を生成させた。平均粒径は330nmで、粒径のC.V.は8.3%であった。膨潤度は1.10で、吸湿量は1.0質量%であった。
【0103】
表1に各子粒子の構成と評価結果を示す。表中のシェル層厚みは、シェル形成前後の平均粒径差により求めた値である。
【0104】
【表1】

【0105】
評価例1〜6
(導電粒子の絶縁被覆)
平均粒径3.0μmの架橋ポリスチレン粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を無電界めっきにより形成し、さらにニッケル層の外側に厚み0.04μmのパラジウム層を形成させて、導電粒子を得た。
【0106】
メルカプト酢酸8mmoLをメタノール200mLに溶解させて反応液を作製した。この反応液に上記導電粒子を10g加え、直径45mmの攪拌羽を装着したスリーワンモーターを用いて室温で2時間攪拌して、導電粒子の表面をメルカプト酢酸で処理した。φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により処理後の導電粒子を取出し、取り出された導電粒子をメタノールで洗浄して、表面にカルボキシル基を有する導電粒子1gを得た。
【0107】
分子量70000の30質量%ポリエチレンイミン水溶液(和光純薬社製)を超純水で希釈して、0.3質量%ポリエチレンイミン水溶液を得た。このポリエチレンイミン水溶液に、上記で得た表面にカルボキシル基を有する導電粒子1gを加え、室温で15分攪拌した。次にφ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により導電粒子を取出し、取り出された導電粒子を超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。その後、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により導電粒子を取出し、メンブレンフィルタ上の導電粒子を200gの超純水で2回洗浄して、吸着していないポリエチレンイミンを除去した。以上の操作により、表面にポリエチレンイミンが吸着した導電粒子を得た。
【0108】
ポリエチレンイミンで処理した導電粒子をイソプロピルアルコールに浸漬し、そこに子粒子1〜13の分散液を滴下することにより、導電粒子に子粒子を吸着させて、子粒子による被覆率が30%の絶縁被覆導電粒子を作製した。被覆率は子粒子の滴下量によって調整した。
【0109】
次いで、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により絶縁被覆導電粒子を取出し、取り出された絶縁被覆導電粒子を超純水200gに入れて室温で5分攪拌した。その後、φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)を用いた濾過により絶縁被覆導電粒子を取出し、メンブレンフィルタ上の絶縁被覆導電粒子を200gの超純水で2回洗浄して、導電粒子に吸着していない子粒子を除去した。次いで80℃で30分、120℃で1時間の順で加熱して、絶縁被覆導電粒子を乾燥した。
【0110】
乾燥後の絶縁被覆導電粒子10gを、絶縁被覆導電粒子の質量と同量のシリコーンオリゴマー(信越化学KR−212)が溶解している処理液100gに入れ、常温1時間の条件でスリーワンモーターを用いて攪拌した。その後、濾過により粒子を取出し、取り出された絶縁被覆導電粒子をメタノールで洗浄してから乾燥することで、表面にシリコーンオリゴマーが付着した絶縁被覆導電粒子1〜11を得た。
【0111】
(絶縁被覆導電粒子の耐溶剤性試験)
得られた絶縁被覆導電粒子を、トルエン/酢酸エチル(質量比:5/5)溶液に浸漬し、5分超音波照射(24kHz)した。その後、SEMにより絶縁被覆導電粒子を観察して、子粒子が剥離しているかどうかを確認した。子粒子の吸着量に変化が無い場合を「A」、子粒子が部分的に剥離した場合を「C」とした。
【0112】
(異方性導電接着フィルムの作製及びこれを用いた回路接続)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製商品名、PKHC)100gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部、エチルアクリレート30質量部、アクリロニトリル30質量部、及びグリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、分子量:85万)75gとを酢酸エチル400gに溶解し、30質量%の溶液を得た。この溶液に、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エボキシ当量185、旭化成エポキシ株式会社製、ノバキュアHX−3941)300gを加え、撹拌して、接着剤溶液を準備した。
【0113】
接着剤溶液に、表面にシリコーンオリゴマーが付着した絶縁被覆導電粒子を分散させた。その濃度は接着剤溶液の量を基準として9体積%とした。得られた分散液をセパレータ(シリコーン処理されたポリエチレンテレフタレートフイルム、厚み40μm)にロールコータを用いて塗布し、90℃で10分の加熱により乾燥して、厚み25μmの異方性導電接着フィルムをセパレータ上に形成させた。
【0114】
作製した異方性導電接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:30×90μm、スペース12μm、高さ:15μm、バンブ数362)付きチップ(1.7×1.7mm、厚み:0.5μm)と、ITO回路付きガラス基板(厚み:0.7mm)との接続を、以下に示すi)〜iii)の手順に従って行った。
i)異方性導電接着フィルム(2×19mm)を、ITO回路付きガラス基板に、80℃に加熱しながら、0.98MPa(10kgf/cm2)の圧力で貼り付ける。
ii)セパレータを剥離し、チップのバンプとITO回路付きガラス基板との位置合わせを行う。
iii)190℃、40MPa(低圧実装条件)、10秒の条件でチップ上方から加熱及び加圧を行い、本接続を行う。
【0115】
(絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験)
上記の回路接続により作製したサンプルの絶縁抵抗試験及び導通抵抗試験を行った。異方性導電接着フィルムによる回路接続においては、チップ電極間の絶縁抵抗が高く、チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗が低いことが重要である。10サンプルのチップ電極間の絶縁抵抗を測定した。絶縁抵抗は初期値と、気温60℃、湿度90%、20V印加の条件で1000時間放置する信頼性試験(マイグレーション試験)後の値を測定した。信頼性試験後の絶縁抵抗が>10(Ω)であったものを良品とした場合の歩留まりを算出した。チップ電極/ガラス電極間の導通抵抗に関しては、14サンプルの平均値を測定した。導通抵抗は初期値と気温85℃、湿度85%の条件で1000時間放置する信頼性試験(吸湿耐熱試験)後の値を測定した。測定結果を表2に示す。
【0116】
表2の結果のまとめを表3に示す。導通抵抗評価として信頼性試験前の導通抵抗が1Ω以下の場合を「A」、1〜5Ωの場合を「B」、5Ω以上の場合を「C」とした。絶縁信頼性の評価として歩留まりが100〜80%の場合を「A」、80〜50%の場合を「B」、50%以下の場合を「C」とした。さらに、接続信頼性の評価として、信頼性試験後の導通抵抗が0〜50Ωの場合を「A」、50〜100Ωの場合を「B」、100Ω以上の場合を「C」とした。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
表3に示されるように、小粒子を膨潤度が1.00〜1.15の範囲内にあり、記子粒子におけるC原子/Si原子数比が1以上である評価例1〜8のサンプルは、信頼性試験前後ともに良好な導通抵抗、絶縁信頼性及び接続信頼性を示した。これは、子粒子に十分な耐熱性及び耐溶剤性を付与できたためであると推定される。これらサンプルは、信頼性試験後も歩留まり100%を維持した。
【0120】
子粒子として有機ポリマー粒子又はコアシェル型有機ポリマー粒子を用いた評価例9〜11の場合、初期導通抵抗は良好であったものの、絶縁信頼性、接続信頼性が劣る結果となった。これは、有機ポリマー粒子の耐溶剤性が不足するために、樹脂混練中に子粒子が剥離したためであるとなったと推定される。また、子粒子の耐熱性、熱膨張係数が高いために、接続信頼性に影響を与えたと推定される。子粒子がSi含有量の多いシリカ粒子(評価例12)又はシリコーン粒子(評価例13)の場合、導通抵抗が高かった。これは子粒子の弾性率が高いために子粒子の変形が困難となり、導通が困難となったためと推定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の金属から形成された表面を有する導電粒子と、該導電粒子の表面に吸着した絶縁性の子粒子と、を備える絶縁被覆導電粒子であって、
前記小粒子を15〜20MPa1/2の溶解度パラメータを有する溶剤中に分散したときの前記子粒子の膨潤度が1.00〜1.15であり、前記子粒子がC原子及びSi原子を含み、前記子粒子におけるC原子/Si原子数比が1以上である、絶縁被覆導電粒子。
【請求項2】
前記溶剤が、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項3】
前記子粒子が、コア粒子と該コア粒子を覆うシェル層とを有し、前記コア粒子が有機ポリマー粒子であり、前記シェル層がシリカ及び/又はシリコーンを含む、請求項1又は2に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項4】
前記子粒子が結合性官能基を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項5】
前記結合性官能基がグリシジル基である、請求項4に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項6】
前記子粒子が、前記結合性官能基を有するシリコーンオリゴマーにより表面処理された粒子である、請求項4又は5に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項7】
前記子粒子の平均粒径が100〜500nmで、前記子粒子の粒径のC.V.値が10%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項8】
前記コア粒子のガラス転移温度又は軟化温度よりも前記シェル層のガラス転移温度又は軟化温度が高い、及び/又は、前記コア粒子の融点よりも前記シェル層の融点が高い、請求項1〜7のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項9】
前記シェル層の厚みが15〜50nmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子。
【請求項10】
絶縁性のバインダー樹脂と、該バインダー樹脂中に分散している請求項1〜9のいずれか一項に記載の絶縁被覆導電粒子と、を含む異方導電性材料。
【請求項11】
接続端子を有する2つの回路部材と、該2つの回路部材の間に介在し、請求項10に記載の異方導電性材料から形成された接続部と、を備え、前記2つの回路部材が、一方の回路部材の接続端子と他方の回路部材の接続端子とが電気的に接続されるように前記接続部により接着されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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