説明

絶縁電線及び同軸ケーブル

【課題】内部導体と絶縁体間に空隙を保ち、低誘電率化、高速伝送化を実現すること、ケーブルの長手方向の空隙率安定性に優れ、且つ容易に内部導体周りの空隙率を調整すること、圧縮に強く、真円を保つことを可能とすることを目的とする。
【解決手段】内部導体2に、絶縁体たる、横断面が放射状に分岐した形状の樹脂繊維3を同心撚りに配置したことを特徴とする絶縁電線1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な伝送特性を有する絶縁電線及び同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信の高速化に伴い、同軸ケーブルにも高速伝送性能が要求されている。良好な伝送特性を得るためには、導体の外周に形成される絶縁体の誘電率を出来るだけ小さくすることが重要であり、低誘電率化に向けて、ポリオレフィン樹脂やフッ素樹脂の発泡体など様々な技術開発が行なわれてきた。
【0003】
しかし、絶縁体樹脂を発泡させる場合、その発泡制御が難しく、ケーブルの長手方向の押出安定性の確保に困難な問題があった。そのため、近年さらなる低誘電率化を目的に、ケーブルの長手方向に連続した空隙部を設けた同軸ケーブルの提案も行なわれている。
【0004】
このような同軸ケーブルとして、中心導体を覆う被覆層と外部シールド導体層とを備え、被覆層は環状部と柱状部を有し、柱状部は横断面内において等角度間隔で放射状に伸び、ケーブルの長手方向に沿ってこの間隔を維持し、外部シールド導体層が柱状部の外周に接するようにして設けられ、外部シールド導体層の内部には、ケーブルの長手方向に連続した4個の空隙部が設けられたもの(特許文献1参照。)が提案されている。
【0005】
又、内部導体の外周にテープ巻層を設け、その周りに、外周にテープ巻層を設けたチューブを同心撚りして配置し、該チューブを被覆し、内部導体に固定させるためのテープ巻層を設け、その周りに外部導体を設けたもの(特許文献2参照。)が提案されている。
【0006】
又、中心導体とその外側に設けられた外部導体との間に、誘電率が2〜5のガラス繊維及び/又はセラミックス繊維が設置されたもの(特許文献3参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−55144号公報
【特許文献2】特開2001−338536号公報
【特許文献3】特開平7−169341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の同軸ケーブルでは、断面方向での空隙分布が不均一で圧縮に弱く、真円度が保てないという問題点があった。
【0009】
又、特許文献2に記載の同軸ケーブルは、チューブと内部導体や外部導体との密着性が低いという問題点があり、その対策として内部導体及びチューブにテープ巻層を設けているので、構造・製造工程が複雑になるという問題点、コスト的に高価になるという問題点を有していた。
【0010】
又、特許文献3に記載の同軸ケーブルは、ポリオレフィン樹脂やフッ素樹脂と比較して、誘電率が高いという問題点を有していた。
【0011】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題を解決し、内部導体と絶縁体間に空隙を保ち、低誘電率化、高速伝送化を実現することを目的とする。特に、ケーブルの長手方向の空隙率安定性に優れ、且つ容易に内部導体周りの空隙率を調整することを可能とすることを目的とする。
【0012】
又、同軸ケーブルの断面方向の空隙分布を一様として、圧縮に強く、真円を保つことを可能とすること、構造・製造工程が簡易で、低コストとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような従来技術の課題を解決するための本発明は、内部導体に、絶縁体たる、横断面が放射状に分岐した形状の樹脂繊維を同心撚りに配置したことを特徴とする絶縁電線である。
【0014】
又、上記絶縁電線において、前記絶縁電線の横断面において、空隙部の断面積が、前記樹脂繊維の断面積の10%以上であることを特徴とする絶縁電線である。
【0015】
又、上記絶縁電線において、前記樹脂繊維が、ポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする絶縁電線である。
【0016】
又、上記絶縁電線において、前記樹脂繊維は、横断面がY字型、T字型又はX字型であることを特徴とする絶縁電線である。
【0017】
更に、上記絶縁電線を用いて構成したことを特徴とする同軸ケーブルである。
【0018】
更に、上記絶縁電線を用いて構成したことを特徴とする2芯ケーブルである。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明によれば、内部導体に横断面が放射状に分岐した形状の樹脂繊維を同心撚りに配置することによって、内部導体と絶縁体間に空隙を保ち、低誘電率化、高速伝送化を実現することが可能となった。又、絶縁体樹脂を発泡させる場合と比べて、ケーブルの長手方向の空隙率安定性を優れたものとすることが出来た。
【0020】
更に、使用する横断面が放射状に分岐した形状の樹脂繊維の形状を変更させることによって、容易に内部導体周りの空隙率を調整することが可能となった。
【0021】
更に、断面方向の空隙分布を一様とすることが出来るので、圧縮に強く、真円を保つことが可能となった。又、内部導体と絶縁体の密着性がよく、構造・製造工程が簡易で、低コストとすることが可能となった。更に、ポリオレフィン樹脂やフッ素樹脂を用いることで、ガラス繊維及び/又はセラミックス繊維に比べ繊維自身の誘電率が優れ、より低誘電率化を図ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明絶縁電線の第一実施例横断面図
【図2】本発明絶縁電線の第一実施例斜視図
【図3】本発明絶縁電線の第二実施例横断面図
【図4】本発明同軸ケーブルの第一実施例横断面図
【図5】本発明同軸ケーブルの第二実施例横断面図
【図6】本発明2芯ケーブルの第一実施例横断面図
【図7】絶縁体たる樹脂繊維の複数実施例を示す斜視図であり、断面Y字型(a)、断面T字型(b)、断面X字型(c)の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図に従って詳細に説明する。図4に示すように、同軸ケーブル5は、絶縁電線1の外周に外部導体6を設け、外部導体6を外部絶縁層7で被覆して構成している。
【0024】
絶縁電線1は、図1及び2に示すように、内部導体2に絶縁体たる、横断面が放射状に分岐した形状の樹脂繊維3を同心撚りに配置して構成している。
【0025】
内部導体2は、例えば横断面略円形の銅線、銅合金線等公知の導体で構成されている。
【0026】
樹脂繊維3は、横断面が放射状に分岐した形状であれば特に限定されず、この形状には、V字型、かぎ型、レ字型、へ字型等の2方向に分岐した形状も含まれるが、特に3方向以上に枝分れしていることが、圧縮に強く、真円を保つために好ましく、図7に示すように、3方向に分岐している形状として、横断面Y字型の樹脂繊維31(a)、横断面T字型の樹脂繊維(b)、4方向に分岐している形状として、横断面X字型の樹脂繊維(c)等を採用することが出来る。その他放射状に分岐した先端或いは中間部から更に分岐した形状、更には、放射状に分岐した先端から曲折した突出片を備える形状等、例えば横断面E、F、H、K、M、N、W又はZ字型等としてもよい。
【0027】
樹脂繊維3は電気絶縁性を備えれば特に限定されないが、PFA、FEP、PTFE等のフッ素樹脂、或いはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
又、樹脂繊維3は絶縁体として機能すれば、その設置本数に限定はないが、3本以上配置することが、電気絶縁性を確実とするため好ましい。又、絶縁電線1の横断面において、空隙部9の断面積を、絶縁体たる樹脂繊維3の断面積の10%以上とすることが好ましい。このような構成とすることで、確実に低誘電率化、高速伝送化を実現することが可能となるからである。
【0029】
外部導体6は絶縁電線1の外周に金属テープを巻き付け、或いは編組や、コルゲート層を形成することにより設け、外部導体6の外周に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等を被覆して外部絶縁層7を形成している。
【0030】
同軸ケーブル5は、例えば、内部導体2が0.38mm、樹脂繊維3の外径0.18mm、外部絶縁層7の厚さ0.1mm、コア外径0.95mmと構成することにより、差動インピーダンス100Ωとすることが出来、又、内部導体2が0.30mm、樹脂繊維3の外径0.11mm、外部絶縁層7の厚さ0.1mm、コア外径0.73mmと構成することで、差動インピーダンス100Ωとすることが出来る。
【0031】
又、本発明の絶縁電線の他の実施の形態として、図3に示すように、上記絶縁電線1の外周に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等を被覆して内部第二絶縁層4を形成して、絶縁電線10を構成することも可能である。
【0032】
従って、本発明の同軸ケーブルの他の実施の形態として、図5に示すように、絶縁電線10の外周に、上述の同軸ケーブル5と同様に、外部導体6を設け、外部導体6を外部絶縁層7で被覆して、同軸ケーブル50を構成することとしてもよい。
【0033】
又、絶縁電線10を2本まとめて、遮蔽層を設けた2芯ケーブル(Twinax)を形成することにより、低誘電率化、高速伝送化を実現した双方向通信のデータケーブルを提供することが出来る。このような2芯ケーブル(Twinax)の具体例として、図6に示すように、絶縁電線10を2本並列させ、ドレイン線81と共に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の遮蔽テープ82で被覆して形成して2芯ケーブル8を構成することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 絶縁電線
10 絶縁電線
2 内部導体
3 絶縁体たる樹脂繊維
4 内部第二絶縁層
5 同軸ケーブル
50 同軸ケーブル
6 外部導体
7 外部絶縁層
8 2芯ケーブル(Twinax)
81 ドレイン線
82 遮蔽テープ
9 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体に、絶縁体たる、横断面が放射状に分岐した形状の樹脂繊維を同心撚りに配置したことを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記絶縁電線の横断面において、空隙部の断面積が、前記樹脂繊維の断面積の10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
【請求項3】
前記樹脂繊維が、ポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁電線。
【請求項4】
前記樹脂繊維は、横断面がY字型、T字型又はX字型であることを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項に記載の絶縁電線。
【請求項5】
請求項1から4のうち何れか1項に記載の絶縁電線を用いて構成したことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項6】
請求項1から4のうち何れか1項に記載の絶縁電線を2本用いて構成したことを特徴とする2芯ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−218748(P2010−218748A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61213(P2009−61213)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】