説明

継合部材の段差修正治具装置及び継合部材の製造方法

【課題】継合部材の製造において作業性と仕上がり品質とを向上させる。
【解決手段】複数の板状体bが継ぎ合わされていると共に互いに隣接する二つの前記板状体bの端縁が突き合わされて突合部tが形成された継合部材Tの製造において、突合部tに形成された段差の修正に用いられる継合部材の段差修正治具装置Mであって、継合部材Tの突合部tに対応する形状となった受け部32を含む治具2と、継合部材Tと受け部32との間に間隙を形成した状態で治具2を支持可能な支持具1と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板状体が継ぎ合わされた継合部材の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの燃焼器の燃焼筒や尾筒は、例えばプレス加工によって湾曲形成された複数の板状体が、互いに隣接する二つの板状体の端縁を突き合わすように、筒状に継ぎ合わされて形成されている(例えば、下記特許文献1)。
このような燃焼筒や尾筒は、複数の板状体を仮組みしてワークを製作し、互いに隣接する二つの板状体の端縁が突き合わされて形成された突合部を、溶接等で接合して製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−148363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の燃焼筒や尾筒の製造においては、ワークの突合部を接合する前に、突合部に形成された段差(目違い)を修正しており、基準面から突出した板状体(以下、適宜「突出板状体」という。)をジャッキで押し込んでいる。具体的には、門型に形成された門型枠の内方にワークを配置すると共に、ワークに向けて延びるスペーサ部材を門型枠に固定し、スペーサ部材と突出板状体との間にジャッキを噛ませ、このジャッキをジャッキアップすることにより、突出板状体を押し込んでいる。
【0005】
しかしながら、上記の修正作業においては、ワークの突合部の複数箇所で段差が生じている場合に、段差毎に、ワークと門型枠とが所定の位置関係となるようにワークを設置し直したり、スペーサ部材を固定し直したりしなければならず、作業性が悪いという問題があった。
また、ワークの再設置やスペーサ部材の再固定により、スペーサ部材とワークとの間隙の大きさが段差毎に変化することから、スペーサ部材とワークとにジャッキが傾いて噛んでしまって、ジャッキが片当たりして板状体に凹みが生じてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、継合部材の製造において作業性と仕上がり品質とを向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る継合部材の段差修正治具装置は、複数の板状体が継ぎ合わされて形成されていると共に、互いに隣接する二つの前記板状体の端縁が突き合わされて突合部が形成された継合部材の製造において、前記突合部に形成された段差の修正に用いられる継合部材の段差修正治具装置であって、前記継合部材の前記突合部に対応する形状となった受け部を含む治具と、前記継合部材と前記受け部との間に間隙を形成した状態で前記治具を支持可能な支持具と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、継合部材の突合部に対応する形状となった受け部を、突合部に沿わすことで、突合部と受け部との間隙を突合部の延在方向に亘って略一定に形成することが可能となる。これにより、突合部において、段差毎に継合部材や治具を再設置する必要がなくなるので、作業性を向上させることができる。
また、突合部と受け部との間隙を突合部の延在方向に亘って略一定に形成することで、受け部と継合部材との間の複数箇所に工具を当接させた場合に、工具の姿勢が定め易くなる。従って、継合部材に対して工具が傾いてしまうことを抑制して、継合部材に対する工具の片当たりを抑制することができる。よって、板状体に凹みが生じ難くなるので、仕上がり品質を向上させることができる。
【0008】
また、前記受け部は、前記受け部の延在方向に湾曲していることを特徴とする。
この構成によれば、受け部がその延在方向に湾曲しているので、延在方向に湾曲する突合部に対応して、受け部と突合部との間隙を略一定に形成することが可能となる。
【0009】
また、前記治具は、前記受け部の延在方向に交差する方向に平行移動可能に前記支持具に支持されていることを特徴とする。
この構成によれば、受け部と突合部との位置決めが容易になると共に、一方の突合部と平行な他の突合部がある場合に、支持具と共に治具を平行移動するだけで治具の位置決めをすることが可能となる。
【0010】
また、前記治具は、前記支持具に対して着脱可能であることを特徴とする。
この構成によれば、治具が支持具に対して着脱可能であるので、治具を交換することで、複数種の突合部や異なる継合部材に対応することが可能となる。
【0011】
また、前記支持具は、前記継合部材を内側に導入可能な支持枠と、前記治具を支持すると共に前記支持枠に保持され、前記受け部の延在方向に交差する方向に平行移動可能な支持器とを備えることを特徴とする。
また、前記支持具は、前記継合部材を内側に導入可能な支持枠と、前記治具を支持すると共に前記支持枠に対して着脱可能な支持器とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、支持具が継合部材を内側に導入可能な支持枠と、治具を支持すると共に、平行移動可能又は支持枠に対して着脱可能な支持器とを備えるので、治具と継合部材との位置決めを容易にすることができる。
【0012】
また、前記治具は、板状に形成されており、前記受け部が側縁に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、治具が板状に形成されており、受け部が側縁に形成されているので、治具を比較的に軽量にすることができる。また、治具が幅を取らないので、工具を配置する際に作業スペースを十分確保することができる。
【0013】
また、前記治具は、前記受け部を下方に向けて支持されていることを特徴とする。
この構成によれば、治具が受け部を下方に向けて支持されているので、治具の姿勢を定め易くなる。
【0014】
また、前記継合部材は、ガスタービン燃焼器の尾筒であることを特徴とする。
この構成によれば、継合部材がガスタービン燃焼器の尾筒であるので、複雑な形状の尾筒に対応して、作業性と仕上がり品質を向上させることができる。
【0015】
また、複数の板状体が継ぎ合わされて形成されていると共に、互いに隣接する二つの前記板状体の端縁が突き合わされて突合部が形成された継合部材の製造方法であって、二つの板状体の端縁を互いに突き合わして仮組みする仮組工程と、前記継合部材の前記突合部に対応する形状となった受け部を含む治具を、前記受け部と前記継合部材とに間隙が形成されるように前記継合部材の突合部に沿わして配置する治具配置工程と、前記受け部と前記治具との間に工具を設けて、前記突合部に形成された段差を修正する修正工程と、前記段差を修正した前記突合部を接合する接合工程と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、治具の受け部を継合部材の突合部に沿わすので、受け部と継合部材との間の間隙が突合部の延在方向に略一定に定まる。これにより、突合部に生じた段差毎に継合部材を再設置する必要がなくなるので、作業性を向上させることができる。
また、受け部と継合部材との間の間隙が略一定に定まるので、受け部と継合部材との間に適切な姿勢の工具を当接させ易くなる。これにより、継合部材に工具が片当たりし難くなり、板状体に凹みが生じることを抑制することができるので、仕上がり品質を向上させることができる。
【0016】
また、前記仮組工程において複数の前記突合部を形成し、前記突合部毎に、前記治具配置工程と前記修正工程と前記接合工程とを繰り返すことを特徴とする。
この構成によれば、突合部毎に、治具配置工程と修正工程とを繰り返すので、突合部が複数形成された場合において、段差の修正を終えた突合部に、他の突合部の段差の修正によって段差が再形成されることを抑制することができる。
【0017】
また、前記継合部材は、環状であり、前記仮組工程の前に、前記継合部材の内側輪郭をかたどった面板に対して、前記複数の板状体のうち二つの前記板状体が相互に対向するように仮接合する仮接合工程を有し、前記仮組工程は、前記面板に仮接合した二つの前記板状体の間に、他の前記板状体を配置して、前記他の板状体の一対の端縁と前記二つの板状体の端縁とに二つの突合部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、仮組工程において、対向する二つの板状体を面板に仮接合する仮接合工程と、仮接合した二つの板状体の間に、他の板状体を配置して突合部を形成する配置工程とを有するので、継合部材が環状であっても正確に板状体を継ぎ合わせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る継合部材の修正装置によれば、作業性と仕上がり品質とを向上させることができる。
また、本発明に係る継合部材の製造方法によれば、作業性と仕上がり品質とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る燃焼器尾筒Tの概略構成斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る段差修正治具装置Mの概略構成斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る段差修正治具装置Mの正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る段差修正治具装置Mの側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る燃焼器尾筒Tの突合部tの段差を修正する方法のフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る仮接合工程を示す概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係る治具配置工程を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係る修正工程を示す概略図である。
【図9】本発明の実施形態に係るワークWの突合部t1の段差修正前の拡大図である。
【図10】本発明の実施形態に係るワークWの突合部t1の段差修正後の拡大図である。
【図11】本発明の実施形態に係る接合工程を示す概略図である。
【図12】本発明の実施形態に係る支持器21A,21Bと治具2とを突合部t2の上方にスライドさせた状況を示した図である。
【図13】本発明の実施形態に係るワークWの突合部t3,t4の段差修正前の状態を示した概略図である。
【図14】本発明の実施形態に係る燃焼器尾筒Tの完成状況を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る燃焼器尾筒(継合部材)Tの概略構成斜視図である。
図1に示すように、燃焼器尾筒Tは、燃焼器尾筒Tの軸方向において屈曲しており、上流端T1の断面形状が真円状に形成されている一方で、下流端T2の断面形状が円弧帯状に形成されている(図1参照)。
この燃焼器尾筒Tは、四枚の板状体b(b1〜b4)が継ぎ合わされて形成されており、互いに隣接する二つの板状体b(b1〜b4)の端縁が突き合わされて突合部t(t1〜t4)を形成している。各板状体b(b1〜b4)は、例えばプレス成形されており、それぞれの長手方向及び幅方向に湾曲している。また、板状体b1,b2の下流端T2側は、幅方向の両端縁が折り曲げられている一方で(図1参照)、上流端T1側が四半円弧状に形成されている。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係る段差修正治具装置Mの概略構成斜視図であり、図3は段差修正治具装置Mの正面図であり、図4は段差修正治具装置Mの側面図である。
段差修正治具装置Mは、図3及び図4に示すように、燃焼器尾筒Tの製造において用いられるものであり、支持具1と、支持具1に支持された治具2とを備えている。
【0022】
支持具1は、図2に示すように、二つの支持枠11(11A,11B)と、これら二つの支持枠11(11A,11B)にそれぞれ取り付けられた二つの支持器21(21A,21B)とを有している。
【0023】
支持枠11A,11Bは、図2から図4に示すように、それぞれ、門型に形成されており、作業床Cにおいて所定の間隔を空けて立設された支柱12,13と、支柱12,13の上部に掛け渡された梁14とを備えている。
【0024】
二つの支持器21(21A,21B)は、図2に示すように、それぞれ、梁14に設けられたブラケット22(22A,22B)と、ブラケット22(22A,22B)に螺着された固定ボルト23(23A,23B)と、ブラケット22(22A,22B)と治具2とを連結する複数の支持ピン24とを備えている。
【0025】
ブラケット22(22A,22B)は、例えば鋼板によって形成されており、図3に示すように、側面から見てF字状に形成されている。このブラケット22は、図3に示すように、短辺縁25bの略中間の位置から長手方向に切れ込み25aが延びる矩形板25と、矩形板25の一方の板面から該板面の法線方向に向けて互いに沿うように延出する一組の挟持板26,27とを有している。
挟持板26と挟持板27とは、双方の間に梁14を配置可能な寸法だけ離間している。
【0026】
このような構成により、ブラケット22A,22Bは、互いに矩形板25を背向させた状態で、それぞれの挟持板26,27で支持枠11A,11bの梁14を上下に挟んでいる。
【0027】
固定ボルト23(23A,23B)は、図3及び図4に示すように、挟持板26の中央に形成されたネジ孔26aに螺着している。この固定ボルト23(23A,23B)は、挟持板27(27A,27B)に対して螺進することで、固定ボルト23(23A,23B)の先端と挟持板27(27A,27B)との間に梁14を挟み込んで、ブラケット22(22A,22B)の梁14に対する変位を拘束する。
【0028】
治具2は、平面視で略D字形に形成された板状部材であり、例えば鋼材で形成されている。この治具2は、板面31a,31bに貫通孔が形成されており、その側縁に、円弧状に形成された受け部32と、受け部32に背向する長辺部33とを有している。
【0029】
図4に示すように、長辺部33の一端と他端とには、それぞれ内方に向かって直角状に切り欠かれた切欠部34,35が形成されている。
切欠部34の長縁部34a(図4参照)には、図2に示すように、板面31a側に一対の突片34A,34Bが、板面31b側に一対の突片34C,34Dが、それぞれ板面の法線方向に突出している。
切欠部35の長縁部35a(図4参照)には、図1に示すように、板面31a側に一対の突片35A,35Bが、板面31b側に一対の突片35C,35Dが、それぞれ板面の法線方向に突出している。
【0030】
治具2は、切欠部34の長縁部34a(図4参照)が、ブラケット22Aの矩形板25の切れ込み25aに挿入されていると共に、図2に示すように、矩形板25が一対の突片34A,34Bの間と、一対の突片34C,34Dの間とに、それぞれ挿入されている。そして、一対の突片34A,34B及び矩形板25と、一対の突片34C,34D及び矩形板25とを、それぞれ支持ピン24が貫通することによって、治具2とブラケット22Aとが連結されている。
同様に、切欠部35の長縁部35a(図4参照)が、ブラケット22Bの矩形板25の切れ込み25aに挿入されていると共に、図2に示すように、矩形板25が一対の突片35A,35Bの間と、一対の突片35C,35Dの間とに、それぞれ挿入されている。そして、一対の突片35A,35B及び矩形板25と、一対の突片35C,35D及び矩形板25とを、それぞれ支持ピン24が貫通することによって、治具2とブラケット22Bとが連結されている。
このような構成により、治具2は、長辺部33の一端側と他端側とのそれぞれにおいて板面31a側と板面31b側とを支持されており、受け部32を下方に向けた状態で変位が拘束されている。なお、治具2は、各支持ピン24を脱挿することにより、支持器21A,21Bから取り外すことが可能である。
【0031】
受け部32は、燃焼器尾筒Tの突合部t1,t2(図1参照)に対応する形状となっている。すなわち、治具2の長手方向を燃焼器尾筒Tの開口方向に向けて、燃焼器尾筒Tを段差修正治具装置Mに設定された基準位置に配置したときに、図4に示すように、受け部32の一端側が燃焼器尾筒Tの突合部t1,t2に沿うようになっている。そして、受け部32と突合部t1,t2との間の間隙が突合部t1,t2の延在方向に略一定となる。
なお、突合部t1と突合部t2とは、燃焼器尾筒Tの幅方向において対称的に形成されている。
【0032】
この段差修正治具装置Mは、図2及び図3に示すように、燃焼器尾筒Tの下流端T2の内側輪郭をかたどった円弧帯状の面板41と、上流端T1の内側輪郭をかたどった真円状の面板42とを備えている(図3において不図示)。
【0033】
次に、段差修正治具装置Mを用いて、燃焼器尾筒Tの突合部t(t1〜t4)の段差G(図9参照)を修正する方法について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明においては、治具2の初期位置が図3に示す位置に設定されているものとする。
まず、図5及び図6に示すように、燃焼器尾筒Tを構成する板状体b1〜b4(図2参照)のうち、互いに対向する二つの板状体b1,b2を、面板41及び面板42に仮接合する(ステップS1(仮接合工程))。
これら板状体b1,b2を面板41に仮接合する際には、板状体b1,b2のそれぞれの下流端T2の端面が一致するように、板状体b1,b2の下流端T2側をそれぞれ面板41の線縁部41a,41bに嵌合させる(図3参照)。そして、図6に示すように、面板41を板状体b1,b2の下流端T2の端面から僅かに突出させて、線縁部41a,41bと板状体b1,b2とをスポット溶接する(図中、仮接合箇所を白抜きの丸印で示す。)。
同様に、二つの板状体b1,b2の上流端T1側を面板42に沿わせて仮接合する(図1参照)。
【0034】
次に、図5及び図6に示すように、面板41と面板42とに仮接合した板状体b1,b2の間に板状体b3を配置する(ステップS2(仮組工程))。このようにすることで、板状体b3の一方の端縁と板状体b1の端縁とが突き合わされて突合部t1が形成されると共に、板状体b3の他方の端縁と板状体b2の端縁とが突き合わされて突合部t2が形成される。この際、突合部t1,t2には、段差G(目違い)が生じることがある。以下、突合部t1,t2に段差Gが生じた場合について説明する。この説明においては、面板41,42に板状体bを仮組みしたものをワークWと称する。
【0035】
次に、図5及び図7に示すように、ワークWを支持枠11A,11Bの内方に配置し、治具2の受け部32がワークWの突合部t1に沿うように、ワークWと治具2との位置合わせをする(ステップS3(治具配置工程))。
図7に示すように、治具2の受け部32をワークWの突合部t1に沿わせると、受け部32と突合部t1との間隙寸法Lが突合部t1の延在方向に亘って略一定となる(図4,図8参照)。
【0036】
次に、図5及び図8に示すように、治具2とワークWとの間にジャッキJを配置して突合部t1に生じた段差Gを修正する(ステップS4(修正工程))。具体的には、図9に示すように、突合部t1において段差Gが生じている箇所の板状体b3の端縁と、受け部32との間にジャッキJを噛ませてジャッキアップすることにより、図10に示すように段差Gを修正する。この際、図3に示すように、突合部t1と受け部32との間隙寸法Lが突合部t1の延在方向に亘って略一定に形成されていることから、複数の段差Gに応じてジャッキJを噛ませる際に、ワークWに対してジャッキJを同様の姿勢にし易くなる。すなわち、図9に示すように、ジャッキJを板状体b3の外表面に略垂直の姿勢にし易くなり、板状体b3の外表面の垂直方向から板状体b3を容易に押し込める。そうすると、ジャッキJが板状体b3に対して均等に当たることから、板状体b3に局所的な凹みが生じ難くなる。
一方、ワークWの、板状体b1,b2の上流端T1側は、下流端T2側に比べて、それぞれの長手方向の曲率が緩やかであり、比較的に単純な形状となっていることから(図1参照)、治具2を用いずに突合部t1の段差Gを押し込んでもよい。
このようにして、突合部t1において形成された段差Gを全て修正する。
【0037】
次に、図5及び図11に示すように、突合部t1を溶接して接合する(ステップS5(接合工程))。このようにして、板状体b1と板状体b3とを継ぎ合わせる。
【0038】
次に、固定ボルト23A,23Bを緩めることにより(図1参照)、支持器21A,21Bの支持枠11A,11Bに対する拘束をそれぞれ解放し、図12に示すように、支持器21A,21Bと共に治具2を突合部t2の上方にスライドさせる。換言すれば、受け部32の延在方向に直交する方向(本実施形態においては梁14の延在方向)に平行移動させる。そして、再びステップS3〜ステップS5を繰り返す(図5参照)。
【0039】
突合部t2を接合して、板状体b3と板状体b1,b2との継ぎ合わせを終了したら、図13に示すように、ワークWを裏返す。
そして、上記と同様に板状体b4を板状体b1,b2に継ぎ合わせる。
具体的には、板状体b3に対向するように、板状体b1と板状体b2との間に板状体b4を配置する(ステップS2)。この際、板状体b4の一方の端縁と板状体b1の端縁とを突き合わされて突合部t3が形成されると共に、板状体b4の他方の端縁と板状体b2の端縁とが突き合わされて突合部t4が形成される。
そして、治具2を、受け部32が突合部t3,t4に対応した治具2´に交換した上で、突合部t3,t4毎に上記のステップS3〜ステップS5を繰り返す。
このようにして、板状体b1,b2,b3,b4を環状に継ぎ合わせる。
【0040】
最後に、面板41,42の仮接合した箇所をグラインダーで削って、燃焼器尾筒Tから面板41,42を取り外し、燃焼器尾筒Tの製造を完了する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、燃焼器尾筒Tの突合部t(t1〜t4)に対応する形状となった受け部32を、突合部t(t1〜t4)に沿わすことで、突合部t(t1〜t4)と受け部32との間隙を、突合部t(t1〜t4)の延在方向に亘って略一定に形成することが可能となる。これにより、各突合部t(t1〜t4)を修正する際に、その突合部tの段差G毎に、ワークWや治具2を再設置する必要がなく、作業性を向上させることができる。
また、突合部t(t1〜t4)と受け部32との間隙を突合部t(t1〜t4)の延在方向に亘って略一定に形成することで、受け部32とワークWとの間の複数箇所にジャッキJを噛ませた場合に、ジャッキJの姿勢が定め易くなる。従って、燃焼器尾筒Tに対してジャッキJが傾いてしまうことを抑制することができ、ワークWに片当たりが生じることを抑制することができる。よって、板状体b(b1〜b4)に凹みが生じ難くなるので、仕上がり品質を向上させることができる。
【0042】
また、受け部32がその延在方向に湾曲しているので、延在方向に湾曲する突合部t(t1〜t4)に対応して、受け部32と突合部t(t1〜t4)との間隙を略一定に形成することが可能となる。
【0043】
また、支持枠11(11A,11B)と、治具2を支持すると共に、平行移動可能及び支持枠11(11A,11B)に対して着脱可能な支持器21(21A,21B)とを備えるので、治具2とワークWとの位置決めを容易にすることができる。
【0044】
また、治具2が板状に形成されており、受け部32が側縁に形成されているので、治具2を比較的に軽量にすることができる。また、治具2が幅を取らないため、ジャッキJを配置する際に作業スペースを十分確保することができる。
また、治具2が支持具1に対して着脱可能であるので、異なる治具2´を支持具1に交換することで、複数種の突合部(t1・t2),(t3・t4)に対応することが可能となる。
また、治具2が受け部32を下方に向けて支持されているので、治具2の姿勢を定め易くなる。
【0045】
また、突合部t(t1〜t4)毎に、治具配置工程(ステップS3)と修正工程(ステップS4)と接合工程(ステップS5)を繰り返すので、突合部t(t1〜t4)が複数形成された場合において修正した突合部t(t1〜t4)の段差Gが順次接合される。これにより、段差Gの修正を終了した突合部t(t1〜t4)に、他の突合部tの段差Gの修正によって再度段差Gが生じることを抑制することができる。
【0046】
また、対向する二つの板状体b(b1〜b4)を面板41,42に仮接合する仮接合工程(ステップS1)と、仮接合した二つの板状体b(b1〜b4)の間に、他の板状体b(b1〜b4)を配置して突合部t(t1〜t4)を形成する仮組工程(ステップS2)とを有するので、複雑な形状の燃焼器尾筒Tであっても良好に段差Gを修正することができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、図4に示すように、予め受け部32から位置決め用の部材111を延出させておき、この部材111に下流端T2の端面が当接した場合に、治具2の受け部32がワークWの突合部tに沿うように設定しておくことで、ワークWと治具2との位置合わせを容易に行うことが可能である。
【0048】
また、上述した実施の形態においては、受け部32の端面の向きを下方に向ける構成としたが、突合部tに向ける構成としても構わない。また、受け部32とジャッキJとの間にスペーサ部材等を設けてもよく、ジャッキJの固定機構や係止機構を設けてもよい。
【0049】
また、上述した実施の形態においては、突合部t1,t2の段差Gを修正した後に、ワークWを裏返して突合部t3,t4を修正したが、支持枠11(11A,11B)の中央に板状体b1〜b4を仮接合したワークWを保持して突合部t1,t2,t3,t4の段差Gを同時に修正してもよい。
【0050】
また、上述した実施の形態においては、治具2を支持器21(21A,21B)でピン支持する構成としたが、治具2を他の支持機構で支持してもよい。
また、上述した実施の形態においては、燃焼器尾筒Tに本発明を適用したが、他の継合部材に本発明を適用してよい。また、燃焼器尾筒Tの形状は、他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…支持具
2…治具
11(11A,11B)…支持枠
21(21A,21B)…支持器
41,42…面板
G…段差
J…ジャッキ(工具)
M…段差修正治具装置
T…燃焼器尾筒(継合部材)
b(b1,b2,b3,b4)…板状体
t(t1,t2,t3,t4)…突合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状体が継ぎ合わされて形成されていると共に、互いに隣接する二つの前記板状体の端縁が突き合わされて突合部が形成された継合部材の製造において、前記突合部に形成された段差の修正に用いられる継合部材の段差修正治具装置であって、
前記継合部材の前記突合部に対応する形状となった受け部を含む治具と、
前記継合部材と前記受け部との間に間隙を形成した状態で前記治具を支持可能な支持具と、
を備えることを特徴とする継合部材の段差修正治具装置。
【請求項2】
前記受け部は、前記受け部の延在方向に湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項3】
前記治具は、前記受け部の延在方向に交差する方向に平行移動可能に前記支持具に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項4】
前記治具は、前記支持具に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項5】
前記支持具は、前記継合部材を内側に導入可能な支持枠と、前記治具を支持すると共に前記支持枠に保持され、前記受け部の延在方向に交差する方向に平行移動可能な支持器とを備えることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項6】
前記支持具は、前記継合部材を内側に導入可能な支持枠と、前記治具を支持すると共に前記支持枠に対して着脱可能な支持器とを備えることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか一項に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項7】
前記治具は、板状に形成されており、前記受け部が側縁に形成されていることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか一項に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項8】
前記治具は、前記受け部を下方に向けて支持されていることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか一項に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項9】
前記継合部材は、ガスタービン燃焼器の尾筒であることを特徴とする請求項1から8のうちいずれか一項に記載の継合部材の段差修正治具装置。
【請求項10】
複数の板状体が継ぎ合わされて形成されていると共に、互いに隣接する二つの前記板状体の端縁が突き合わされて突合部が形成された継合部材の製造方法であって、
二つの板状体の端縁を互いに突き合わして仮組みする仮組工程と、
前記継合部材の前記突合部に対応する形状となった受け部を含む治具を、前記受け部と前記継合部材とに間隙が形成されるように前記継合部材の突合部に沿わして配置する治具配置工程と、
前記受け部と前記治具との間に工具を設けて、前記突合部に形成された段差を修正する修正工程と、
前記段差を修正した前記突合部を接合する接合工程と、を有することを特徴とする継合部材の製造方法。
【請求項11】
前記仮組工程において複数の前記突合部を形成し、
前記突合部毎に、前記治具配置工程と前記修正工程と前記接合工程とを繰り返すことを特徴とする請求項10に記載の継合部材の製造方法。
【請求項12】
前記継合部材は、環状であり、
前記仮組工程の前に、前記継合部材の内側輪郭をかたどった面板に対して、前記複数の板状体のうち二つの前記板状体が相互に対向するように仮接合する仮接合工程を有し、
前記仮組工程は、前記面板に仮接合した二つの前記板状体の間に、他の前記板状体を配置して、前記他の板状体の一対の端縁と前記二つの板状体の端縁とに二つの突合部を形成することを特徴とする請求項10又は11に記載の継合部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−135802(P2012−135802A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290954(P2010−290954)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【特許番号】特許第4814393号(P4814393)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】