説明

継手部を一体に具えた容器及びその製法

【課題】フッ素系樹脂製容器に相手接続管部材を繋ぐための継手部を一体に形成する。
【解決手段】回転成形金型6に、後工程の穿孔加工及びフレアー加工によって継手部3となり且つ該穿孔加工の際のチャック掴み部32を具えた樹脂ブロック30を保持せしめておき、回転成形の際に成形される容器胴部2と樹脂ブロック30とを融着一体化させ、型開き後に、該樹脂ブロック30上のチャック掴み部32を掴んで、切削加工によって樹脂ブロック30を筒体33に形成し、次にフレアー加工によって筒体の先端にフランジ35を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系樹脂を用いて回転成形した容器及びその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体分野の製造装置における洗浄ラインでは、使用される洗浄液用容器は、薬品の純粋性の保持、耐薬品性、耐熱性が要求される。従って、それらについて優れた特性を有するフッ素系樹脂、例えば、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)を用い、比重の大きなフッ素系樹脂でも中空体の成形が可能な回転成形によって製造した容器が実用されている(例えば、出願人が以前に提案した特許文献1)。
容器を洗浄ラインの相手接続管部材に繋ぐためには、容器口部にフッ素系樹脂製の継手部が突設される。
【0003】
継手部の構造、形状は種々あるが、筒体の先端にフレアー加工によるフランジを具えたものがある。
上記フランジ付き継手部は、容器本体と別個に継手部を形成して容器本体に樹脂溶接にて取り付ける場合(以下、「従来例イ」と呼ぶ)と、容器を回転成形する金型に、継手用のキャビティを形成して容器本体と一体に継手部を形成する場合(以下、「従来例ロ」と呼ぶ)とがある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−114392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例イの場合、継手部の樹脂溶接に手間が掛かり、又、樹脂溶接の信頼性の問題がある。
従来例ロの場合、回転成形の特性上、継手部は、容器の軸芯の延長上に設ける必要があり、継手部の個数と突設位置に制約を受ける。又、継手部用キャビティを設けるために、金型の構成が複雑となって、金型の製作コストが高くつく。更に、容器本体と継手部を別個の材料で形成することができない等の問題がある。
【0006】
本発明は、継手部を形成するための大型の樹脂ブロックに、後の切削加工のためのチャック掴み部を設けておくことにより、容器胴部を回転成形後に、該胴部に融着一体化したフッ素樹脂ブロックに、高精度の切削加工を可能にし、以て、上記問題を解決できる、継手部を一体に具えた容器及びその製法を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の容器の製法は、フッ素系樹脂の回転成形によって形成され相手接続管部材(5)(5a)(5b)に対する継手部(3)を有する容器の製法であって、回転成形金型(6)に、後工程の切削加工及びフレアー加工によって継手部(3)となり且つ該切削加工の際のチャック掴み部(32)を具えたフッ素系樹脂ブロック(30)を保持せしめておき、回転成形の際に、該回転成形によって成形される容器胴部(2)と前記樹脂ブロック(30)とを融着一体化させ、型開き後に、該樹脂ブロック(30)上の前記チャック掴み部(32)を掴んで、切削加工によって樹脂ブロック(30)を筒体(33)に形成し、次にフレアー加工によって該筒体(33)の先端にフランジ(35)を形成する。
【0008】
請求項2は、請求項1の容器(1)の製法において、容器胴部(2)の回転成形の際に、胴部(2)から樹脂ブロック(30)側に低く環状に突出する首部(21)が胴部(2)と一体に回転成形される。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2に記載の容器の製法において、樹脂ブロック(30)の容器胴部(2)側の端面には、予め樹脂ブロック(30)の軸心側に徐々に凹む案内面(36)を形成しておく。
【0010】
請求項4は、請求項1乃至3の何れかに記載の容器の製法において、フレアー加工は、容器胴部(2)及び筒体(33)の基端側を保護ケース(4)で覆ってから行ない、該保護ケース(4)のフランジ部(46)から臨出した筒体(33)の先端を、拡げ型にて押し拡げながら該フランジ部(46)に押しつける様にして筒体(33)にフランジ(35)を形成する。
【0011】
請求項5の容器は、フッ素系樹脂の回転成形によって形成された容器胴部(2)と、相手接続管部材(5)(5a)(5b)に対するフッ素系樹脂製の継手部(3)とを一体に具え、請求項1乃至4の何れかに記載の方法で製造される。
【0012】
請求項6は、請求項5に記載の容器において、保護ケース(4)に収容され継手部(3)のフランジ(35)が保護ケース(4)から臨出している。
【0013】
請求項7は、請求項5又は6に記載の容器において、容器胴部(2)には突出高さの低い環状の首部(21)が継手部(3)側に形成され、該首部(21)が継手部(3)に融着して一体に繋がっている。
【0014】
請求項8は、請求項5乃至7の何れかに記載の容器において、フッ素系樹脂ブロック(30)の内端面は、該ブロック(30)の軸心に向けて徐々に凹んでいる。
【0015】
請求項9は、請求項5乃至8の何れかに記載の容器において、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、継手部(3)は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)にて形成されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の容器(1)の製法では、フッ素系樹脂ブロック(30)を、容器胴部(2)の回転成形時に該胴部と一体化させ、該樹脂ブロック(30)を切削加工して筒体(33)を形成し、該筒体(33)の先端にフレアー加工によってフランジ(35)を形成するため、前記従来例イに比べて、樹脂溶接の手間が不要で、又、溶接の信頼性の問題もない。又、前記従来例ロに比べて、回転成形金型に継手部成形用のキャビティは不要であり、回転成形金型の構成及び形状を簡素して、金型制作費を低く抑えることができる。
又、前記従来例ロの様に、継手部(3)の位置、個数に制約を受けることもない。
【0017】
請求項2の容器(1)の製法では、胴部(2)の回転成形の際に、胴部(2)から樹脂ブロック(30)側に環状に突出する首部(21)を形成するために、該首部(21)の環状先端がフッ素系樹脂ブロック(30)の内側と融着する。
これによって、容器胴部(2)が熱収縮した際に、首部(21)が一種の緩衝材としての役割をなして、樹脂ブロック(30)との融着部にクラックが発生することを防止し、該融着部の引っ張り強度を高めることができる。
【0018】
請求項3の容器(1)の製法では、樹脂ブロック(30)の胴部(2)側となる内側端面に予め樹脂ブロック(30)の軸心側に凹む案内面(36)を形成しているため、容器(1)を回転成形金型(6)から取り出してからでは不可能であった樹脂ブロック(30)内面への案内面(36)の形成が可能となった。
尚、上記案内面(36)は、該案内面(36)の中央に位置する貫通孔(34)を液体の排出口とした場合、樹脂ブロック(30)の内端面上に液体が残留することを防止するためのものである。
【0019】
請求項4の容器(1)の製法では、筒体(33)にフランジ(35)を形成するためのフレアー加工は、筒体(33)の基端側を、拡げ型によって押し拡げつつ保護ケース(4)上のフランジ部(46)に押しつける様にして行なうため、フレアー加工時に、筒体(33)を支えるための特別の受け金型は不要である。
又、筒体(33)にフランジ(35)を形成してから、保護ケース(4)を容器にセットする場合、保護ケース(4)を筒体(33)の軸芯を含む面内で分割可能とせねばならないが、容器(1)を保護ケース(4)にセットしてから、容器(1)の筒体(33)にフレアー加工によってフランジ(35)を形成する場合、その必要はなく、保護ケース(4)の構成を簡素化できる。
【0020】
請求項5の容器(1)は、フッ素系樹脂の回転成形によって形成された容器胴部(2)と、相手接続管部材(5)(5a)(5b)に対するフッ素系樹脂製の継手部(3)とを一体に具えているから、請求項1と同様の効果を奏する。
【0021】
請求項6の容器(1)は、保護ケース(4)に収容され継手部(3)のフランジ(35)が保護ケース(4)から臨出しているから、前記請求項4の容器の製法が採用できる。
【0022】
請求項7の容器(1)は、容器胴部(2)に形成した首部(21)が、該胴部成形時の熱収縮に対して緩衝材の役割をなして、継手部(3)との溶着部にクラックが生じることを防止できる。
【0023】
請求項8の容器(1)は、フッ素系樹脂ブロック(30)の内端面に、該ブロック(30)の軸心に開設した貫通孔(34)側に凹んでいるから、該樹脂ブロック(30)の内端面上に液体が残留することを防止できる。
【0024】
請求項9の容器(1)は、容器胴部(2)は四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、継手部(3)は該PFAよりも融点の高い四フッ化エチレン樹脂(PTFE)にて形成されるから、回転成形金型(6)に予め継手部(3)の素材となるPTFEブロック(30)をセットしておき、PFAをその溶融温度に加熱して容器胴部(2)を回転成形する際に、PTFEブロック(30)を溶融させることを防止できる。このため、PTFE製ブロック(30)とPFA製の容器胴部(2)の融着一体化、及び後工程でのPTFEブロック(30)に対する切削加工、該切削加工のためのPTFEブロック(30)に対するチャックキング保持に支障を来すことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、回転成形により形成された本発明の容器(1)を剛性の高い保護ケース(4)に収容し、脚部材(9)によって、保護ケース(4)と一緒に容器(1)を支持した状態を示し、図2はその断面図である。
容器(1)は、全体がフッ素系樹脂にて形成され、容器胴部(2)上に、相手接続管部材(5)(5a)(5b)に接続するための1又は複数の継手部(3)(3)(3)を突設している。
実施例の容器(1)は、上端に2つの継手部(3)(3)、下端に1つの継手部(3)を有している。
上部の2つの継手部(3)(3)の内、一方の継手部(3)は、容器(1)内の液体を使用場所へ送るための第1管部材(5)接続用であり、他方の継手部(3)は、窒素ガス等、容器(1)内の液体に対して不活性な圧力ガスを容器(1)内に導入するための第2管部材(5a)接続用である。
容器(1)下端の継手部(3)は、使い残りの液を排出するための第3管部材(5b)接続用である。
第1管部材(5)は、継手部(3)から外向きに延びる主管(50a)と、継手部(3)から容器(1)内の底側へ延びる補助管(50b)とからなり、両管(50a)(50b)は互いの対向端に鍔部(51)(51)を形成している。
尚、上記不活性ガスは、容器(1)内の液体の送給速度を調整するためのものである。
【0026】
実施例の容器胴部(2)は、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)にて形成され、継手部(3)は、PFAよりも融点の高い四フッ化エチレン樹脂(PTFE)にて形成される。該継手部(3)は、後記の如く、インサート成形により容器胴部(2)と融着一体化している。
容器胴部(2)は、外部から容器(1)内の液面高さが分かる程度の乳白色半透明、継手部(3)は白色不透明である。
容器胴部(2)の肉厚は、2〜10mm程度であるが、容器(1)の大きさ、必要強度、経済性、外部から液面高さを判別できる必要性の有無等を考慮して適宜決めればよい。回転成形の場合、回転成形金型(6)への材料樹脂の投入量によって、胴部(2)の肉厚を容易に調整できる。
【0027】
図5に示す如く、容器胴部(2)には、継手部(3)の位置に対応して口部が形成されている。実施例の口部は、胴部(2)に単に丸孔(22)を形成しただけではなく、孔縁が低く外側に突出して環状の首部(21)を形成している。首部(21)は外側へ徐々に肉厚となり、継手部(3)との融着部で最大肉厚となっている。
容器首部(21)の内面は、全周に亘って胴部から継手部(3)端面へ、断面が円弧状を呈する様に縮径しており、首部(21)内面に突出物は存在しない。
【0028】
実施例の継手部(3)は、丸軸状PTFE樹脂ブロック(30)の軸芯に、ドリル、バイト等の切削刃によって貫通孔(34)を開設して筒体(33)を形成し、該筒体(33)の先端にフレアー加工によってフランジ(35)を形成している。
樹脂ブロック(30)の基端側は、切削によって貫通孔(34)を開設する際に、樹脂ブロック(30)を掴むためのチャック掴み部(32)となるものであって、少なくともチャックの掴み代分の長さを有している。
【0029】
図1、図2に示す保護ケース(4)は、ステンレス鋼、PVC(硬化ポリ塩化ビニル)等、耐食性及び剛性に優れた金属材料或いは合成樹脂にて、容器(1)の胴部及び継手部(3)の基端部をそれらの形状に沿って包囲する様に形成される。保護ケース(4)は、上下に2分割可能なケース本体(41)と蓋体(42)とからなり、本体ケース(41)の上端縁と、蓋体(42)の下端縁に突設されたフランジ(43)(44)どうしがボルト止めされている。
保護ケース(4)には、適所に窓孔(45)が開設され、容器(1)内の液面高さをケース外から目視できる。
保護ケース(4)には、前記容器(1)の各フランジ(35)が重なるフランジ部(46)(46)(46)が形成されており、
【0030】
前記第1管部材(5)は、主管(50a)と補助管(50b)の夫々の鍔部(51)(51)を対向させ、主管(50a)に嵌めた環状の押え板(54)と保護ケース(4)のフランジ部(46)とをボルト止めして容器(1)に固定される。
主管(50a)と補助管(50b)の夫々の鍔部(51)(51)の間に環状のガスケット(52)が介装され、補助管(50b)の鍔部(51)と容器(1)のフランジ(35)との間にも環状のガスケット(53)が介装されている。
【0031】
前記第2管部材(5a)及び第3管部材(5b)は、夫々の鍔部(51)(51)を容器(1)のフランジ(35)(35)に対向させ、管部材(5a)(5b)に嵌めた環状の押え板(54)(54)と保護ケース(4)のフランジ部(46)(46)とをボルト止めして容器(1)に固定される。
管部材(5a)(5b)の鍔部(51)(51)と容器(1)のフランジ(35)との間に、環状のガスケット(53)(53)が介装されている。
【0032】
上記の如く、容器(1)の上下のフランジ(35)(35)(35)が、保護ケース(4)上のフランジ(46)(46)(46)に外側から重なっており、容器(1)は、保護ケース(4)内に宙吊り状態に支持されている。
必要に応じて、保護ケース(4)と容器(1)との間に、弾性部材(図示せず)を介装すれば、保護ケース(4)内に容器(1)を一層安定して保持できる。
【0033】
次に、上記保護ケース(4)に収容された容器(1)の製法について説明する。説明を簡潔にするため、容器(1)の継手部(3)は1つとする。
図3a、bに示す回転成形金型(6)を準備する。
回転成形金型(6)は、一端中央部に筒状の保持部(62)を突設し、保持部(62)の軸心を含む面で2分割可能である。
図3aに示す如く、金型半体(61)に、容器胴部(2)と前記図5に示す容器首部(21)を形成するに足りる量のPFA樹脂の粉末(20)を投入し、該金型半体(61)の保持部半体(62a)に、継手部(3)となるPTFE製の円柱状樹脂ブロック(30)を配置する。このとき、図5に示す如く、金型(6)の保持部(62)に対して、PTFE樹脂ブロック(30)の内側端面の位置が、保持部(62)の基端から少し先端側にずれた位置になる様に位置決めしてセットする。これは、容器胴部(2)と一体に突出高さの低い首部(21)を形成するためである。
【0034】
図3bに示す如く、2つの金型半体(61)(61)を閉じて回転成形金型(6)を組み立て、図3cに示す如く、加熱炉(7)内の回転支持枠(8)にセットする。
回転支持枠(8)は、回転駆動装置(図示せず)に連繋された駆動軸(81)と、該駆動軸(81)に直交し回転成形金型(6)を支持する支持軸(82)の2軸で回転成形金型(6)を3次元的に回転させる。
成形温度は、320〜400℃が好ましく、PFA樹脂の融点である310℃、PTFE樹脂の融点である327℃よりも少し高温度の340〜380℃とすることが一層望ましい。
成形時間は2〜4時間とする。
成形温度が320℃以下では、容器胴部(2)を形成するPFA樹脂と、継手部(3)となるPTFE樹脂ブロック(30)の溶着が不十分となる。400℃を越えるとPFA樹脂とPTFE樹脂ブロック(30)の熱分解が進行し易くなる。
図5に示す如く、容器胴部(2)を形成するPFA樹脂はPTFE樹脂ブロック(30)の内側端面の外周部に環状に融着するだけで、該端面の中央部側には融着しない。これは、該端面の中央部側ではPFA樹脂と融着する温度に達しないためである。
加熱炉(7)から回転成形金型(6)を取り出して、冷却炉(図示せず)中にて冷却させると、樹脂の熱収縮によって、容器(1)が金型(6)内面から離型する。
【0035】
図3dに示す如く、回転成形金型(6)を型開きして容器(1)を取り出し、PTFE樹脂ブロック(30)基端側のチャック掴み部(32)を、旋盤、マシニングセンター等の切削機のチャック(図示せず)で掴んで支持し、容器(1)を静止保持したまま、ドリル、バイト等の切削刃(図示せず)を回転させ、PTFE樹脂ブロック(30)の軸芯に、図4aに示す如く、貫通孔(34)を開設して筒体(33)を形成する。
【0036】
尚、図4aに示すPTFE樹脂ブロック(30)に対する切削穿孔加工の際に、必要に応じて容器胴部(2)を保持部材(図示せず)によって補助的に保持しておいてもよい。容器胴部(2)が大型になるほど、該胴部を補助的に支持した方が、切削穿孔加工を安定して精度よく行うことができる。
【0037】
次に、図4bに示す如く、容器(1)に保護ケース(4)である本体ケース(41)と蓋体(42)を被せ、図4cに示す如く、本体ケース(41)と蓋体(42)のフランジ(43)(44)をボルトで締付け固定し、保護ケース(4)のフランジ部(46)から容器(1)の筒体(33)の先端側を突出させる。
【0038】
次に、図4cに示す如く、保護ケース(4)のフランジ部(46)から臨出した筒体(33)の先端にフレアー加工を行ない、図4dに示す如く、外向きフランジ(35)を形成する。
フレアー加工は、筒体(33)の先端を加熱軟化させて拡げ型(図示せず)の円錐面を押し当てて行う。押し拡げられた筒体(33)の先端は保護ケース(4)のフランジ部(46)に押しつけられてフランジ(35)を形成する。
上記フレアー加工では、円錐面の角度が異なる複数の拡げ型を用いて段階的に行う。
筒体(33)の加熱軟化は、ヒータ内蔵の拡げ型を用いて行う、或いは、熱風を筒体の先端側に吹き付けて行う等、手段は問わない。
【0039】
上記フレアー加工は、筒体(33)の先端側を、拡げ型によって押し拡げつつ保護ケース(4)上のフランジ部(46)に押しつける様にして行なうため、筒体(33)の押し拡がり部分を支えるための特別の受け金型は不要である。
又、筒体(33)にフランジ(35)を形成してから、保護ケース(4)を容器(1)にセットする場合であれば、保護ケース(4)を筒体(33)の軸芯を含む面内で分割可能とせねばならないが、実施例の様に、容器(1)を保護ケース(4)にセットしてから、容器(1)の筒体(33)にフレアー加工によってフランジ(35)を形成する場合、その必要はなく、保護ケース(4)の構成を簡素化できる。
【0040】
尚、前記容器の製法において、回転成形の工程で、回転成形金型(6)に対する加熱と冷却による、金型(6)内の空気の膨張、収縮に対処するため、金型(6)の内と外を連通させるためのガス抜きパイプ(図示せず)が必要である。ガス抜きパイプは、PTFE樹脂ブロック(30)を貫通して配備しておく。
実施例の様に、継手部(3)が複数の場合、1つの継手部用の樹脂ブロック(30)をガス抜きパイプ挿通用に肉厚筒状体とし、他の継手部用樹脂ブロック(30)は中実体で可い。
筒状体の樹脂ブロックに対しても、前記切削加工によって、筒孔を拡げて相手管部材を挿入する貫通孔(34)を形成するから、切削加工前の樹脂ブロックが肉厚の筒状体であることに問題はない。
【0041】
上記容器の製法では、胴部(2)の回転成形の際に、胴部(2)からPTFE樹脂ブロック(30)側に低く環状に突出する首部(21)が形成されるために、該首部(21)の環状先端が該樹脂ブロック(30)の内側と融着する。
上記首部(21)は、容器胴部(2)と継手部(3)との融着部の引っ張り強度を高めることに寄与している。
即ち、容器回転成形の冷却工程において、容器胴部(2)が熱収縮した際に、PTFE樹脂ブロック(30)を胴部側に引っ張る力が作用する。PTFE樹脂ブロック(30)は金型(6)の保持部(62)を滑って容器(1)側に移動して、胴部(2)との間にクラックが生じることを防止する役割をなす。首部(21)が一種の緩衝材としての役割を果たして、樹脂ブロック(30)との融着部にクラックが発生することを防止したと言える。
然も、首部(21)の存在によって、PTFE樹脂ブロック(30)が容器胴部(2)の肉厚に食い込むことは防止される。
【0042】
図5は、首部(21)の突出高さが1.5mmの場合、図6は首部が存在せず、容器胴部(2)に外面にPTFE樹脂ブロック(30)が融着している場合(首部高さ0mm)、図7は、PTFEブ樹脂ブロック(30)が容器胴部の肉厚に食い込んだ状態の場合(首部)高さ−2.0mm)を示しており、下記の表に、それらの融着部の強度を、回転成形温度別で示す。
【表1】

但し、+10℃の場合、成形品(容器)は離型しなかった。

首部(21)の高さ−2.0mmの場合のみ容器胴部(2)との融着強度は、成形温度により大きく左右され、±0mm、+1.5mmでは成形温度による強度に余り差は生じない。
数値だけ見ると、首部(21)高さが±0mmの方が、首部(21)高さ+1.5mmよりも良好である。しかし、首部(21)の高さが±0mmとなる様に、PTFE樹脂ブロック(30)を回転成形金型(6)の保持部(62)にセットした場合、位置決めの誤差によって、首部(21)がマイナス高さになる虞れがあり、この場合のPTFE樹脂ブロック(30)とPFA樹脂である容器胴部(2)の融着強度の信頼性に問題が生じる。
首部(21)の高さを必要以上に大きくすることは、PFA樹脂を無駄に消費することになるだけであり、PTFE樹脂ブロック(30)との融着強度の向上に寄与しない。
以上のことから、首部(21)の高さは、0mm以上とし、望ましくは3mm以下とする。
【0043】
図8は、上記引張り強度の試験機を示している。
容器胴部(2)のPTFE樹脂ブロック(30)の付け根近傍を該樹脂ブロックと同心の略円形に切り取り、試験機の挟み部材(101)(102)の間に切取り胴部(2)を挟圧保持し、PTFE樹脂ブロック(30)の軸心を貫通させた引張り治具(103)によって該樹脂ブロック(30)引っ張り、該樹脂ブロック(30)と胴部(2)の融着部が破断したときの荷重を計測した。
【0044】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0045】
例えば、上記実施例では、継手部(3)の切削穿孔加工は、継手部(3)の素材であるフッ素系樹脂ブロック(30)を掴んで容器(1)を静止保持し、ドリル等の切削刃を回転させて行なったが、場合によっては、フッ素系樹脂ブロック(30)を掴んだ状態で該樹脂ブロックを含む容器を回転させ、切削刃を該樹脂ブロックに当てて、貫通孔(34)を切削加工することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】保護ケースに収容した容器の正面図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】図3回転成形工程の説明図である。
【図4】容器を保護ケースに収容して、容器筒部にフレアー加工を施す工程の説明図である。
【図5】首部高さが1.5mmのフッ素系樹脂ブロックと胴部の融着部の断面図である。
【図6】首部高さが0mmのフッ素系樹脂ブロックと胴部の融着部の断面図である。
【図7】首部高さが−0.2mmのフッ素系樹脂ブロックと胴部の融着部の断面図である。
【図8】フッ素系樹脂ブロックと胴部の融着強度を求めるための引張り試験機の使用状態の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 容器
2 容器胴部
3 継手部
30 樹脂ブロック
32 チャック掴み部
33 筒体
34 貫通孔
35 フランジ
4 保護ケース
46 フランジ部
6.回転成形金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂の回転成形によって形成され相手接続管部材(5)(5a)(5b)に対する継手部(3)を有する容器(1)の製法であって、回転成形金型(6)に、後工程の切削加工及びフレアー加工によって継手部(3)となり且つ該切削加工の際のチャック掴み部(32)を有するフッ素系樹脂ブロック(30)を保持せしめておき、回転成形の際に、該回転成形によって成形される容器胴部(2)と前記樹脂ブロック(30)とを融着一体化させ、型開き後に、該樹脂ブロック(30)上の前記チャック掴み部(32)を掴んで、切削加工によって樹脂ブロック(30)を筒体(33)に形成し、次にフレアー加工によって該筒体(33)の先端にフランジ(35)を形成する、継手部を一体に具えた容器の製法。
【請求項2】
容器胴部(2)の回転成形の際に、該胴部(2)から樹脂ブロック(30)側に低く環状に突出する首部(21)が胴部(2)と一体に回転成形される、請求項1又は2に記載の、継手部を一体に具えた容器の製法。
【請求項3】
樹脂ブロック(30)の容器胴部(2)側の端面には、予め樹脂ブロック(30)の軸心側に徐々に凹む案内面(36)を形成しておく請求項1又は2に記載の、継手部を一体に具えた容器の製法。
【請求項4】
フレアー加工は、容器胴部(2)及び筒体(33)の基端側を保護ケース(4)で覆ってから行ない、該保護ケース(4)のフランジ部(46)から臨出した筒体(33)の先端を加熱軟化させ、拡げ型にて押し拡げながら該フランジ部(46)に押しつける様にして筒体(33)にフランジ(35)を形成する請求項1乃至3の何れかに記載の、継手部を一体に具えた容器の製法。
【請求項5】
フッ素系樹脂の回転成形によって形成された容器胴部(2)と、相手接続管部材(5)(5a)(5b)に対するフッ素系樹脂製の継手部(3)とを一体に具え、請求項1乃至4の何れかに記載の方法で製造された、継手部を一体に具えた容器。
【請求項6】
保護ケース(4)に収容され継手部(3)のフランジ(35)が保護ケース(4)から臨出している、請求項5に記載の継手部を一体に具えた容器。
【請求項7】
容器胴部(2)には突出高さの低い環状の首部(21)が継手部(3)側に形成され、該首部(21)が継手部(3)に融着して一体に繋がっている、請求項5又は6に記載の継手部を一体に具えた容器。
【請求項8】
フッ素系樹脂ブロック(30)の内端面は、該ブロック(30)の軸心に向けて徐々に凹んでいる、請求項5乃至7の何れかに記載の継手部を一体に具えた容器。
【請求項9】
容器胴部(2)は、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、継手部(3)は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)にて形成されている請求項5乃至87の何れかに記載の、継手部を一体に具えた容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−334783(P2006−334783A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158277(P2005−158277)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(591056097)淀川ヒューテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】