説明

継手

【課題】継手と樹脂パイプとの間を相対回動可能に構成し、樹脂パイプに加わる力を抑制して寿命を延長させることができる継手を提供する。
【解決手段】継手10は、筒状をなす継手本体11と、該継手本体11内に一端側が挿入されて支持されると共に他端側に樹脂パイプ12端部の拡径部12aが外嵌されるインサート13と、樹脂パイプ12の拡径部12aをインサート13に締付け固定するスリーブ14とにより構成されている。そして、継手本体11とインサート13との間には継手本体11とインサート13とを相対的に回動させる相対回動手段が設けられている。この相対回動手段は、継手本体11の内周面に形成される第1係合溝21と、インサート13の外周面に形成される第2係合溝25と、これら第1係合溝21及び第2係合溝25に係合する拡縮可能な割りリング27とより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給水系や給湯系の配管システムにおいて樹脂パイプの端部間や樹脂パイプの端部と水栓器具とを接続するために用いられる継手に関するものであり、さらに詳しくは継手本体を給水栓等と接続する場合に樹脂パイプが共回りして捩れ、樹脂パイプの寿命が短くなることを防止することができる継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、給水、給湯用或いは排水用のパイプとして樹脂パイプが広く用いられるようになり、係る樹脂パイプがヘッダーなどの継手に接続されて給水系や給湯系或いは排水系の配管システムが構築されている。最近では樹脂パイプの接続方式について種々の構造が提案されている。係る継手として、例えば特許文献1に記載されている構造のものが知られている。
【0003】
すなわち、当該接続具(継手)は、合成樹脂管(樹脂パイプ)の接続端部に内挿される内挿筒部を備えた接続具本体と、樹脂パイプの接続端部を内挿筒部とで挟み付けて該管を接続すべく、内挿筒部に対し軸方向に移動する移動スリーブとにより構成されている。そして、この継手に樹脂パイプを接続する場合には、樹脂パイプの内径を拡径工具を用いて拡径した後、接続具本体の内挿筒部に差し込む。続いて、移動スリーブを内挿筒部に圧入し、内挿筒部と移動スリーブとの間に樹脂パイプを挟持することで樹脂パイプを継手に接続することができる。
【特許文献1】特開2002−349779号公報(第2頁及び図1〜4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載されている継手においては、樹脂パイプが内挿筒部と移動スリーブとの間で圧着されていることから、樹脂パイプは継手と一体回動する。そのため、継手を給水栓などの給水機器に接続する際には、継手の回動に伴って樹脂パイプも追従して回動する。従って、継手が給水機器に接続された後には、樹脂パイプは捩れた状態で保持され、樹脂パイプの寿命が短くなるという問題があった。さらに、樹脂パイプが継手に接続された後に継手に水撃(ウォーターハンマー)が加わったときには、その衝撃が樹脂パイプに直接作用することから、樹脂パイプの寿命が短くなるという問題があった。
【0005】
そこで本発明の目的とするところは、継手と樹脂パイプとの間を相対回動可能に構成し、樹脂パイプに加わる力を抑制して寿命を延長させることができる継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明の継手は、筒状をなす継手本体と、該継手本体内に一端側が挿入されて支持されると共に他端側に樹脂パイプ端部の拡径部が外嵌されるインサートと、該インサートに樹脂パイプの拡径部が外嵌された状態で樹脂パイプの拡径部に嵌挿されて該拡径部をインサートに締付け固定するスリーブとにより構成され、前記継手本体とインサートとの間には継手本体とインサートとを相対的に回動させる相対回動手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明の継手は、請求項1において、前記相対回動手段は、継手本体の内周面に形成される第1係合溝と、インサートの外周面に形成される第2係合溝と、これら第1係合溝及び第2係合溝に係合する拡縮可能な割りリングとより構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明の継手は、請求項2において、前記継手本体のインサート挿入側の内周縁には、前記割りリングの挿入を容易にするために開口側ほど拡径するテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明の継手は、請求項1から請求項3のいずれか1項において、前記インサートの外周面には、樹脂パイプの拡径部の抜け出しを防止する抜け止め突起が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明の継手は、請求項1から請求項4のいずれか1項において、前記スリーブの嵌挿方向先端部の内周縁には、スリーブの挿入を容易にするための面取り部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明の継手では、継手本体と樹脂パイプ端部の拡径部との間には樹脂パイプの拡径部が締付け固定されたインサートが介在され、該インサートと継手本体との間にはインサートと継手本体とを相対的に回動させる相対回動手段が設けられている。このため、継手本体が回動したときにはインサート、すなわち樹脂パイプは回動することなく元の状態を保持することができる。従って、継手と樹脂パイプとの間を相対回動可能に構成し、樹脂パイプに加わる力を抑制して寿命を延長させることができる。
【0012】
請求項2に係る発明の継手では、相対回動手段が継手本体の内周面に形成される第1係合溝と、インサートの外周面に形成される第2係合溝と、これら第1係合溝及び第2係合溝に係合する拡縮可能な割りリングとより構成されている。そのため、請求項1係る発明の効果に加え、相対回動手段を簡易に構成することができると共に、継手本体からのインサートの引き抜きを防止することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の継手では、継手本体のインサート挿入側の内周縁には、開口側ほど拡径するテーパ面が形成されている。このため、請求項2に係る発明の効果に加えて、継手本体へのインサートの挿入時に割りリングがテーパ面に案内され、第1係合溝及び第2係合溝への割りリングの挿入を容易に行うことができる。
【0014】
請求項4に係る発明の継手では、インサートの外周面には、樹脂パイプの拡径部の抜け出しを防止する抜け止め突起が設けられている。このため、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、樹脂パイプの内周面に抜け止め突起が係合し、インサートに対する樹脂パイプの固定を強固に行うことができる。
【0015】
請求項5に係る発明の継手では、スリーブの嵌挿方向先端部の内周縁には、スリーブの挿入を容易にするための面取り部が形成されている。従って、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加えて、樹脂パイプの外周面へのスリーブの装着を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良と思われる実施形態につき、図面を用いて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1(a)に示すように、本実施形態の継手10は、ほぼ円筒状をなす継手本体11と、該継手本体11内に基端側が挿入されて支持されると共に先端側に樹脂パイプ12が外嵌される円筒状のインサート13と、樹脂パイプ12をインサート13に締付け固定するスリーブ14とにより構成されている。なお、本実施形態では、図1(a)の左端側を基端側と称し、右端側を先端側と称する。
【0017】
図1(b)に示すように、継手本体11の基端側には図示しない給水栓などの給水機器に接続するための雄ねじ部15が設けられ、中央部には雄ねじ部15を給水機器の雌ねじ部に螺合操作する工具を係合するための工具係合用突部16が設けられている。継手本体11の先端部には、スリーブ14を装着するための工具係止用突部17が設けられている。
【0018】
継手本体11の先端側内周部には、基端側の通水孔18よりも拡径されて形成された嵌合穴19が穿設され、該嵌合穴19にインサート13の基端側が嵌合されるように構成されている。嵌合穴19の内端部は段差状に形成された当接面20となり、インサート13の基端面が当接するようになっている。継手本体11の内周面(嵌合穴19の開口端側)には、円環状をなし断面U字状に形成された第1係合溝21が凹設されている。継手本体11の先端部内周面(第1係合溝21より先端側)には、開口側ほど拡径する第1テーパ面22が形成されている。
【0019】
図1(c)に示すように、インサート13の基端部外周面には2条の環状溝23が形成され、これらの環状溝23にはゴム製のシールリング24が嵌着され、インサート13と継手本体11との間を水密に保持するようになっている。インサート13外周面の環状溝23よりも先端側には、円環状をなし断面U字状の第2係合溝25が凹設されている。この第2係合溝25は前記継手本体11の第1係合溝21と、インサート13を継手本体11に装着したとき継手10の軸線方向における同一位置に形成されている。また、第2係合溝25の深さは、継手本体11の嵌合穴19へのインサート13の挿入時に後述する割りリング27を収容すべく割りリング27の直径以上の大きさに設定される。
【0020】
インサート13外周面の第2係合溝25より基端側には、基端側ほど拡径する第2テーパ面26が形成されている。前記継手本体11の第1係合溝21とインサート13の第2係合溝25には、割りリング(Cリング)27が収容されている。該割りリング27は、リン青銅、ステンレス鋼等のばね性を有する金属により、拡縮可能に構成されている。図1(a)の状態では、割りリング27は拡径方向に付勢されている。そして、これらの第1係合溝21、第2係合溝25及び割りリング27によって継手本体11とインサート13との相対回動手段が構成されている。インサート13の内周部の流通孔13aは、前記継手本体11の通水孔18とほぼ同じ直径を有し、流通する水が抵抗なく流れることができるようになっている。
【0021】
前記第1テーパ面22及び第2テーパ面26は、インサート13を継手本体11の嵌合穴19に嵌入して割りリング27を縮径させながら第1係合溝21及び第2係合溝25へ割りリング27の挿入を案内するものである。インサート13の先端部外周縁は断面円弧状に形成されたガイド面28となり、樹脂パイプ12端部の拡径部12aがインサート13に外嵌されやすいようになっている。インサート13の外径は、樹脂パイプ12の内径より若干小さく設定されている。樹脂パイプ12はポリオレフィン(架橋ポリエチレン、ポリブテン等)等の合成樹脂により形成され、インサート13への挿入側の端部が拡径治具によってインサート13の外径とほぼ同じになるまで拡径され、その拡径部12aがインサート13に外嵌されるようになっている。このように樹脂パイプ12に拡径部12aを設け、該拡径部12aで継手10に接続されるため、樹脂パイプ12の内径とインサート13の流通孔13a及び継手本体11の通水孔18の直径がほぼ一致し、継手10における流量損失を回避することができる。
【0022】
インサート13の先端側外周面には、樹脂パイプ12の抜け出しを防止するための円環状をなす3条の抜け止め突起29、すなわち先端部の第1抜け止め突起29aと基端側の一対の第2抜け止め突起29bが設けられている。先端部の第1抜け止め突起29aは、第2抜け止め突起29bよりも幅広に形成されている。樹脂パイプ12の拡径部12aの外周には、円環状をなすスリーブ14が嵌挿され、スリーブ14内周の締付け面43が樹脂パイプ12の拡径部12aを締付け、該拡径部12aがスリーブ14とインサート13との間で挟着される。この場合、樹脂パイプ12の外周にスリーブ14を押し込んで装着することにより、前記抜け止め突起29が樹脂パイプ12の内周部に食い込み、インサート13に対して樹脂パイプ12が固定される。図1(d)に示すように、スリーブ14の両端内周縁には、スリーブ14を樹脂パイプ12の拡径部12aの外周面へ円滑に挿入できるようにするための断面円弧状をなす面取り部30が形成されている。スリーブ14の内径は、インサート13の外径に樹脂パイプ12の厚さを加えた外径より若干小さく設定されている。前記継手本体11、インサート13及びスリーブ14は、ステンレス鋼、真鍮等の剛性の高い金属材料で形成されている。
【0023】
次に、以上のように構成された継手10に樹脂パイプ12を接続する方法について説明する。
図2(a)に示すように、まず継手本体11の嵌合穴19にインサート13をその先端が継手本体11の当接面20に当接するまで嵌入し、割りリング27を継手本体11の第1係合溝21とインサート13の第2係合溝25に係合させる。このとき、継手本体11には第1テーパ面22が設けられ、インサート13には第2テーパ面26が設けられていることから、これら第1テーパ面22及び第2テーパ面26により割りリング27が縮径されながら第1係合溝21及び第2係合溝25内へ円滑に誘導される。割りリング27が第1係合溝21及び第2係合溝25内へ収容された状態では、拡径方向に付勢されている。一方、樹脂パイプ12の端部にはスリーブ14を嵌挿しておく。
【0024】
続いて、図2(b)に示すように、樹脂パイプ12の端部を拡径治具を用いて拡径し、拡径部12aを形成する。この場合、拡径部12aの長さはインサート13の継手本体11からの露出部分の長さに形成され、内径はインサート13の外径より大きくなるように形成される。
【0025】
次いで、図2(c)に示すように、樹脂パイプ12の拡径部12aをインサート13の外周部に差し込む。このとき、インサート13の先端外周縁にはガイド面28が設けられていることから、樹脂パイプ12の内周面を傷付けることなく、樹脂パイプ12の拡径部12aをインサート13の外周部に円滑に差し込むことができる。
【0026】
最後に、図2(d)に示すように、スリーブ装着用の工具を用い、スリーブ14を樹脂パイプ12の拡径部12a外周にその先端が工具係止用突部17の側面に当接するまで押し込む。この場合、スリーブ14の内径がインサート13の外径に樹脂パイプ12の厚さを加えた外径より若干小さく設定されていることから、樹脂パイプ12の拡径部12aは縮径され、インサート13外周面の抜け止め突起29が樹脂パイプ12の拡径部12a内周面に食い込む。さらに、スリーブ14の端部内周縁には面取り部30が形成されていることから、樹脂パイプ12の外周面を傷付けることなく、スリーブ14を樹脂パイプ12の拡径部12a外周に容易に押し込むことができる。このようにして、樹脂パイプ12がインサート13に対して抜け止めされると共に、樹脂パイプ12の拡径部12aとインサート13との間が止水される。
【0027】
以上の第1実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 第1実施形態の継手10においては、継手本体11と樹脂パイプ12との間には樹脂パイプ12の拡径部12aが締付け固定された継手本体11とは別体のインサート13が介在され、該インサート13と継手本体11との間にはインサート13と継手本体11とを相対的に回動させる相対回動手段が設けられている。このため、継手本体11が回動したときにはインサート13、すなわち樹脂パイプ12は回動することなく元の状態を保持することができる。従って、継手本体11を給水栓等と接続する場合に樹脂パイプ12が共回りして捩れることがなく、さらに継手本体11に水撃が加わったときには、その衝撃が樹脂パイプ12に直接作用することがない。よって、継手10と樹脂パイプ12との間を相対回動可能に構成し、樹脂パイプ12に加わる力を抑制して樹脂パイプ12の損傷を防止し、その寿命を延長させることができる。
【0028】
・ 前記相対回動手段は、継手本体11の内周面に形成される第1係合溝21と、インサート13の外周面に形成される第2係合溝25と、これら第1係合溝21及び第2係合溝25に係合する拡縮可能な割りリング27とより構成されている。そのため、相対回動手段を簡易に構成することができると共に、継手本体11からのインサート13の引き抜きを防止することができる。
【0029】
・ 継手本体11のインサート13挿入側の内周縁には、開口側ほど拡径する第1テーパ面22が形成されると共に、インサート13の第2係合溝25より基端側には第2テーパ面26が形成されている。このため、インサート13を継手本体11の嵌合穴19に挿入するとき、割りリング27が第1テーパ面22及び第2テーパ面26に案内されて縮径されながら第1係合溝21及び第2係合溝25に収容される。従って、第1係合溝21及び第2係合溝25への割りリング27の挿入を容易に行うことができる。
【0030】
・ インサート13の外周面には、樹脂パイプ12の抜け出しを防止する抜け止め突起29が設けられている。このため、樹脂パイプ12の拡径部12aの外周にスリーブ14を差し込んで拡径部12aをインサート13に圧接し、拡径部12aの内周面に抜け止め突起29が食い込む。従って、インサート13に対する樹脂パイプ12の固定を強固に行うことができると共に、樹脂パイプ12の拡径部12aとインサート13との間の止水を図ることができる。
【0031】
・ スリーブ14の挿入側内周縁には、スリーブ14の挿入を容易にするための面取り部30が形成されている。従って、樹脂パイプ12の拡径部12a外周面へのスリーブ14の装着時にスリーブ14の面取り部30が樹脂パイプ12の拡径部12a外周面に摺接しながら円滑に行うことができる。
(第2実施形態)
この第2実施形態においては主としてスリーブ14の形状及び抜け止め突起29の形状を変更し、その他は第1実施形態と同じ構成を採用したので、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。
【0032】
図3(d)に示すように、スリーブ14の基端側内周面には膨らみ吸収用凹部35が環状に形成されると共に、先端側内周面には抜け止め用凹所36がインサート13の第1抜け止め突起29aと同じ深さ(幅)になるように環状に形成されている。膨らみ吸収用凹部35は、スリーブ14が樹脂パイプ12の拡径部12aに嵌挿されたとき、該拡径部12aの基端側の膨らみを吸収するためのものである。膨らみ吸収用凹部35の内奥部(先端側)には斜面37が設けられ、樹脂パイプ12の拡径部12aへスリーブ14を嵌挿しやすくしている。
【0033】
抜け止め用凹所36は、スリーブ14が樹脂パイプ12の拡径部12aに嵌挿されて該拡径部12aをインサート13に締付けたとき、インサート13の第1抜け止め突起29aにより拡径部12aが抜け止め用凹所36に入り込んでスリーブ14を抜け止め保持するためのものである。そのため、抜け止め用凹所36が形成されている部分におけるスリーブ14の内径は、樹脂パイプ12の拡径部12aの直径よりも小さく設定されることが好ましい。抜け止め用凹所36の基端の係合面38はスリーブ14の軸線と直交する面内に設けられ、スリーブ14の抜け止めが有効に機能するように構成されている。
【0034】
図3(b)及び図3(c)に示すように、第1抜け止め突起29aの基端縁は円弧面39になっており、該第1抜け止め突起29aがインサート13に嵌挿される樹脂パイプ12の拡径部12aに食い込んで拡径部12aが切れることのないように構成されている。第1抜け止め突起29aの中間部は平坦部44となり、拡径部12aを抜け止め用凹所36に押し込むようになっている。一対の第2抜け止め突起29bの基端縁は尖鋭部40となり、該尖鋭部40がインサート13に嵌挿される樹脂パイプ12の拡径部12aに食い込んで拡径部12aの抜け止めを有効にするようになっている。第2抜け止め突起29bの先端縁は円弧面41となり、インサート13への樹脂パイプ12の拡径部12aの嵌挿が円滑に行われるようになっている。
【0035】
そして、図3(a)に示すように、樹脂パイプ12の拡径部12aにスリーブ14を嵌挿すると、スリーブ14内周の締付け面43が樹脂パイプ12の拡径部12a内周面をインサート13に締付けることにより、一対の第2抜け止め突起29bが拡径部12a内周面に食い込んで樹脂パイプ12がインサート13に抜け止め保持される。さらに、樹脂パイプ12の拡径部12aがインサート13の第1抜け止め突起29aの平坦部44によって膨出してスリーブ14の抜け止め用凹所36に入り込み、スリーブ14が樹脂パイプ12の拡径部12aに対して抜け止めされる。従って、スリーブ14を嵌め込むだけで樹脂パイプ12の抜け止めとスリーブ14の抜け止めとを同時に行うことができる。
【0036】
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図4(a)に示すように、スリーブ14の両端部内周縁に前記実施形態の断面円弧状をなす面取り部30に代えて、段差状面取り部31を形成することもできる。また、図4(b)に示すように、実施形態の断面円弧状をなす面取り部30に代えて、傾斜状面取り部32を形成することもできる。
【0037】
・ 実施形態の継手10としては、インサート13を共通にし、継手本体11の雄ねじ部15の種類、大きさなどが異なるもの、例えば雌ねじ、フランジ付きのものを使用することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
・ 前記継手本体11の先端部内周縁に設けられた第1テーパ面22及びインサート13に設けられた第2テーパ面26を、テーパの傾斜角度を変更したり、断面円弧状の形状に変更したりすることもできる。
【0039】
・ 前記インサート13の先端部外周縁に形成された断面円弧状のガイド面28を、傾斜面で形成したりすることも可能である。
・ 前記インサート13外周面の抜け止め突起29を、断面台形状、断面三角形状等の形状に形成することができ、また抜け止め突起29を1条又は2条にすることもでき、或いは抜け止め突起29を省略することも可能である。
【0040】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記インサートの外周面には、基端側ほど拡径し第2係合溝に連なるテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の継手。このように構成した場合、請求項3から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加えて、割りリングをテーパ面を介して第1係合溝及び第2係合溝に容易に収容させることができる。
【0041】
(2) 前記インサートの先端部外周縁には、樹脂パイプの挿入を容易にするガイド面が形成されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の継手。このように構成した場合、請求項4又は請求項5に係る発明の効果に加えて、ガイド面によりインサートに対する樹脂パイプの挿入を円滑に行うことができる。
【0042】
(3) 前記スリーブの嵌挿方向後端部の内周面には樹脂パイプの拡径部がインサートの先端部に設けられる抜け止め突起により膨出して入り込みスリーブの抜け止めを行う抜け止め用凹所が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の継手。このように構成した場合、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、樹脂パイプの拡径部に対するスリーブの抜け止めを図ることができる。
【0043】
(4) 前記インサートの先端部に設けられる抜け止め突起には、樹脂パイプの拡径部を膨出させてスリーブの抜け止め用凹所に入り込ませるための平坦部が設けられていることを特徴とする技術思想(3)に記載の継手。この場合、技術思想(3)に係る発明の効果に加えて、樹脂パイプの拡径部を傷付けることなく、拡径部を膨出させることができる。
【0044】
(5) 前記スリーブの抜け止め用凹所を形成する内端には、スリーブの軸線と直交する面内に係合面が設けられていることを特徴とする技術思想(3)又は技術思想(4)に記載の継手。この場合、技術思想(3)又は技術思想(4)に係る発明の効果に加え、樹脂パイプの拡径部を係合面に係合させて効果的にスリーブの抜け止めを行うことができる。
【0045】
(6) 前記抜け止め突起の頂部には、樹脂パイプの拡径部に食い込む尖鋭部を設けたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の継手。このように構成した場合、請求項4又は請求項5に係る発明の効果に加え、インサートに対する樹脂パイプの拡径部の抜け止めを有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)は第1実施形態における樹脂パイプを接続した状態の継手を示す断面図、(b)は継手本体を示す半断面図、(c)はインサートを示す半断面図及び(d)はスリーブを示す半断面図。
【図2】(a)〜(d)は、継手の作用を示す断面図。
【図3】(a)は第2実施形態における樹脂パイプを接続した状態の継手を示す断面図、(b)はインサートを示す半断面図、(c)はインサートを示す部分拡大断面図、(d)はスリーブを示す断面図。
【図4】(a)及び(b)は、スリーブの別例を示す半断面図。
【符号の説明】
【0047】
10…継手、11…継手本体、12…樹脂パイプ、12a…拡径部、13…インサート、14…スリーブ、21…相対回動手段を構成する第1係合溝、22…第1テーパ面、25…相対回動手段を構成する第2係合溝、27…相対回動手段を構成する割りリング、29…抜け止め突起、30…面取り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなす継手本体と、該継手本体内に一端側が挿入されて支持されると共に他端側に樹脂パイプ端部の拡径部が外嵌されるインサートと、該インサートに樹脂パイプの拡径部が外嵌された状態で樹脂パイプの拡径部に嵌挿されて該拡径部をインサートに締付け固定するスリーブとにより構成され、前記継手本体とインサートとの間には継手本体とインサートとを相対的に回動させる相対回動手段が設けられていることを特徴とする継手。
【請求項2】
前記相対回動手段は、継手本体の内周面に形成される第1係合溝と、インサートの外周面に形成される第2係合溝と、これら第1係合溝及び第2係合溝に係合する拡縮可能な割りリングとより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記継手本体のインサート挿入側の内周縁には、前記割りリングの挿入を容易にするために開口側ほど拡径するテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の継手。
【請求項4】
前記インサートの外周面には、樹脂パイプの拡径部の抜け出しを防止する抜け止め突起が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の継手。
【請求項5】
前記スリーブの嵌挿方向先端部の内周縁には、スリーブの挿入を容易にするための面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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