説明

網下気室型湿式比重選別機に用いられる被回収物質搬出装置

【課題】被回収物質の種類の如何にかかわらず適用可能な小型で高効率の回収装置を提供する。
【解決手段】ローラ12a〜12fと、ローラ12a〜12fに掛け渡されるエンドレスベルト14と、エンドレスベルト14の進行方向と平行に延びるように配置された一対の波形板16と、エンドレスベルト14の進行方向と直交するように互いに所定間隔隔てて配置された複数の孔開き板18と、ケーシング22とを備え、比重選別機の排出路の下端とケーシング22の被回収物質搬入口22aとが連結し、被回収物質搬出口22bが、ケーシング22の上端近傍、比重選別機の選別室内の選別媒体の液位よりも上方に位置決めされており、エンドレスベルト14上に載せられた被回収物質を、ローラ12a〜12fを駆動させてエンドレスベルト14を移動させることにより被回収物質搬出口22bから外部に排出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、網下気室型湿式比重選別機に関する。より詳細には、本発明は、網下気室型湿式比重選別機に用いられる被回収物質搬出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主として原炭から良質の石炭を選択的に回収する機械として、網下気室型湿式比重選別機が知られている。図7を参照して、網下気室型湿式比重選別機の動作原理について簡単に説明する。網下気室型湿式比重選別機は、選別しようとする物質(以下「被選別物質」という)が入れられる選別室が上方に、水が充填される脈動室が下方に位置し、選別室と脈動室との間に網目が配置されている。脈動室内には、空気を入/出させる空気室が配置されており、空気室内の水位を空気の入/出によって昇降させることにより、選別室内の水位を昇降させることができるようになっている。そして、選別室に入れた物質に適切な水の脈動を与えることによって、選別室内に比重別の物質の層が形成されることとなる。
【0003】
網下気室型湿式比重選別機では通常、回収しようとする物質(以下「被回収物質」という)が、選別室の下部に設けた排出口から排出路を介して外部に回収されるようになっている。また、脈動室の底部に沈降する沈降物を回収する必要もある。従来、このような回収に用いられる装置としては主として、バケットエレベータ(JIS M 4601:1977/廃止)とスクリューコンベアがあげられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者のバケットエレベータは、コンベアチェーンの大きさ、バケットが物質を掬い上げる時の強度の関係から小型のものでも200mmピッチが最小となるため、装置全体が大型になるという課題がある。また、石炭層やズリを掬い上げることはできるが、汚染土壌から回収した鉛玉やシュレッダーダストから回収した金属類を掬い上げるには、噛み込みや強度、バケットの耐磨耗性の点から不適当であるという課題がある。
【0005】
一方、後者のスクリューコンベアでは、土砂や粒径の揃ったプラスチック類を搬送することはできるが、扁平な金属、ひも状のプラスチック、一定粒径以下の土砂を搬送することは困難であり、無理にクリアランスを狭くすると、選別室内の処理水まで排出されてしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて開発されたものであって、被回収物質の種類の如何にかかわらず適用することができるとともに、小型で効率の良い回収作業を実施することができる被回収物質搬出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の被回収物質搬出装置は、複数のローラと、前記ローラに掛け渡されるエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの進行方向と平行に延びるようにエンドレスベルト上に配置された一対の波形板と、前記エンドレスベルトの進行方向と直交するようにエンドレスベルト上に互いに所定間隔隔てて配置された複数の孔開き板と、前記ローラ、前記エンドレスベルト、前記波形板、及び前記孔開き板を収容するケーシングとを備え、比重選別機の排出路の下端又は比重選別機の脈動室の底部と前記ケーシングの被回収物質搬入口とが連結し、被回収物質搬出口が前記ケーシングの上端近傍に設けられており、前記被回収物質搬出口が、前記比重選別機の選別室内の選別媒体の液位よりも上方に位置決めされており、前記排出路又は前記脈動室を介して前記エンドレスベルト上に載せられた被回収物質を、前記ローラを駆動させて前記エンドレスベルトを移動させることにより前記被回収物質搬出口から外部に排出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項2に記載の被回収物質搬出装置は、前記請求項1の装置において、前記ケーシングが水平面となす角度が、45°から90°の範囲にあることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項3に記載の被回収物質搬出装置は、前記請求項1又は2の装置において、前記ローラを回転支持するための軸受部が前記ケーシングの外側に位置するケース内に収納されており、前記ケースが、前記ケーシング内の選別媒体が流入しないようにシールされていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項4に記載の被回収物質搬出装置は、前記請求項1から請求項3までのいずれか1項の装置において、前記被回収物質搬入口に配置され、前記排出路から前記エンドレスベルト上に落下した被回収物質の飛散を防止するための手段を更に備え、前記飛散を防止するための手段が、前記孔開き板の前記配置間隔の少なくとも2倍の長さを有する板によって形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被回収物質の種類によらず適用することができる小型で効率的な搬出装置が提供される。請求項3に記載の装置では、軸受部がケーシングの外側に位置するように構成されているので、装置の耐久年数を向上させることができる。また、請求項4に記載の装置では、被回収物質が隙間等に挟まるのを防止することができるので、円滑な搬出作業が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る被回収物質搬出装置について詳細に説明する。図1は、被回収物質搬出装置および被回収物質搬出装置が設置される網下気室型湿式比重選別機を模式的に示した図、図2は、被回収物質搬出装置を模式的に示した断面図である。図1において参照符号A、B、C、D、E、F、Gは、網下気室型湿式比重選別機、被選別物質が投入される選別室、選別媒体(例えば水)が充填される脈動室、網目、被回収物質を排出させるためのエジェクタ、被回収物質が選別機の外部に排出される際の経路となる排出路、脈動室の底部に取り付けられるボックスをそれぞれ示している。
【0013】
図1及び図2において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係る被回収物質搬出装置は、エンドローラ12a、12bと、テンションローラ12c、12d、12e、12fと、エンドローラ12a、12b及びテンションローラ12c、12d、12e、12fに掛け渡されるエンドレスベルト14とを備えている。なお、エンドローラ12aは、駆動ローラの役目も果たしている(エンドローラ12aにモータ(図示せず)の駆動軸が連結されている)。
【0014】
被回収物質搬出装置10は又、エンドレスベルト14の進行方向(図3の矢印参照)と平行に延びるようにエンドレスベルト14上に配置された一対の波形板16と、エンドレスベルト14の進行方向と直交するようにエンドレスベルト14上に互いに所定間隔d隔てて配置された複数の孔開き板18とを備えている。これにより、エンドレスベルト14上に一対の波形板16と孔開き板18によって区切られる複数の空間20が構成されることとなる。
【0015】
なお、波形板16は、ゴム等の弾性材料で形成される。空間20の側壁部を構成する部材を波形板16としたのは、エンドレスベルト14の転回箇所(各ローラ12a〜12fが位置する箇所)においてエンドレスベルト14の動きに追従させるためである。孔開き板18は、任意の適当な材料で形成される。孔開き板18を用いるのは、詳細には後述するように、被回収物質の搬送時に空間20に入った選別液体を排出させるためである。
【0016】
被回収物質搬出装置10は更に、各ローラ12a〜12f、エンドレスベルト14、波形板16、及び孔開き板18を収容するケーシング22を備えている。ケーシング22には、被回収物質がケーシング22内に入る箇所に開口部(即ち、搬入口)22a、被回収物質がケーシング22から出る箇所に開口部(即ち、搬出口)22bが設けられている。なお、搬出口22bは、図1に示されるように、選別室B内の選別媒体の液位Hよりも上方に位置決めされている。
【0017】
ケーシング22は、図1に示されるように、水平線に対してαの傾斜角度を有している。角度αは、45°〜90°に設定するのが好ましい。角度αを45°以上にすることにより、被回収物質搬出装置10の全体寸法を小型化することができる。
【0018】
図4(a)は、被回収物質搬出装置の下部分を網下気室型湿式比重選別機Aの底部の方向から見た図である。被回収物質搬出装置10には、エンドレスベルト14を移送するための複数のローラ12a〜12fが設けられており、これらのローラを回転支持するための軸受部が、ケーシング22の外側に位置するケース24内に収納されている。比重選別機Aの作動時に選別媒体の液位が図1に示されるような高さに位置することとなるためケーシング22内の大部分が選別媒体で満たされることとなるが、軸受部を収納するケース24をケーシング22の外側に配置することにより、軸受部が選別媒体の浸漬により劣化することを回避することができるとともに、ケーシング22の寸法(横幅)を小型化することができる。なお、ケース24は、ケーシング22内の選別媒体が流入しないように、図4(b)に示されるように、任意の適当な耐液性パッキン26でシールされている。或いは、ケース24の内部において耐液性パッキン26によるシールを行ってもよい(図4(c)参照)。
【0019】
図5は、比重選別機Aの排出路Fの下部及び被回収物質搬出装置10の搬入口22aの箇所を示した拡大断面図である。搬入口22aは、比重選別機Aの排出路Fの下部F1と接続されており、比重選別機Aの作動時に被回収物質が、搬入口22aを通って、波形板16と孔開き板18によって構成される空間20内に落下するようになっている。しかしながら、選別媒体の脈動により被回収物質が空間20内に勢いよく落下するため、一旦空間20内に落下した被回収物質が飛散して空間20から飛び出し、ケーシング22との間の隙間に挟まってしまうことがある。このような事態の招来を防止するため、好ましくは、搬入口22aに被回収物質の飛散を防止するための手段28が配置されている。被回収物質の飛散を防止するための手段28は、或る空間20が搬入口22aと一致する場合に隣接する前後の空間の上面を覆う板によって形成されている(図5(a)参照)。このような手段28を配置しておけば、或る空間20が搬入口22aと一致する場合に当該空間に入った被回収物質が仮に飛散したとしても再び当該空間に入らざるを得ず、また、隣接する2つの空間が搬入口22aに跨がっている場合(図5(b)参照)にも、飛散した物質は当該2つの空間以外に入ることがなくなるため、被回収物質がケーシング22との間の隙間に挟まるような事態を回避することができる。
【0020】
以上のように構成された被回収物質搬出装置10の作動について説明する。比重選別機Aの選別作業が開始されると、被回収物質がエジェクタEによって排出路Fに排出され、排出路Fの下端F1から被回収物質搬出装置10の空間20内に落下する。その際、飛散を防止するための手段28が設けられている場合には、一旦空間20内に落下した被回収物質が空間20から飛び出るおそれはない。モータを駆動させると、エンドローラ12aが回転駆動され、これによりエンドレスベルト14が図2の矢印の方向に移動する。被回収物質とともに選別媒体も排出路Fから空間20内に流入するが、各空間20の仕切りが孔開き板18で構成されているため、選別媒体は孔開き板18の孔から流下する。そして、被回収物質は、ケーシング22の搬出口22bから搬出される。なお、搬出口22bが選別室B内の選別媒体の液位Hよりも上方に位置決めされているため、選別媒体が搬出口22bから出ることはなく、孔開き板18の孔から全て流下する。
【0021】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0022】
例えば、前記実施の形態では、被回収物質搬出装置10が比重選別機Aの排出路Fの下部F1に連結されるように配置されているが、脈動室Cの底部に沈降する物質を回収すべく、被回収物質搬出装置10を脈動室Cの下端に連結するように配置してもよい(図6参照)。また、図示されている孔開き板18の孔の個数、大きさ、配列等は、単なる例示にすぎず、図示されたものと異なる個数、大きさ、配列等を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】被回収物質搬出装置および被回収物質搬出装置が設置される網下気室型湿式比重選別機を模式的に示した図である。
【図2】被回収物質搬出装置を模式的に示した断面図である。
【図3】搬送ベルト、波形板、及び孔開き板によって構成される空間を示した部分斜視図である。
【図4】図4(a)は被回収物質搬出装置の下部分を選別機の底部の方向から見た部分斜視図、図4(b)は図4(a)の線4b−4bに沿って見た断面図、図4(c)はシールの別の例を示した拡大断面図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、被回収物質の飛散を防止するための手段を説明するための断面図である。
【図6】網下気室型湿式比重選別機の脈動室の底部に被回収物質搬出装置が設置されている状態を模式的に示した図である。
【図7】網下気室型湿式比重選別機の動作原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0024】
10 被回収物質搬出装置
12a〜12f ローラ
14 搬送ベルト
16 波形板
18 孔開き板
20 空間
22 ケーシング
24 ケース
26 パッキン
28 被回収物質の飛散を防止するための手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網下気室型湿式比重選別機に用いられる被回収物質搬出装置であって、
複数のローラと、前記ローラに掛け渡されるエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの進行方向と平行に延びるようにエンドレスベルト上に配置された一対の波形板と、前記エンドレスベルトの進行方向と直交するようにエンドレスベルト上に互いに所定間隔隔てて配置された複数の孔開き板と、前記ローラ、前記エンドレスベルト、前記波形板、及び前記孔開き板を収容するケーシングとを備え、
前記比重選別機の排出路の下端又は前記比重選別機の脈動室の底部と前記ケーシングの被回収物質搬入口とが連結し、被回収物質搬出口が前記ケーシングの上端近傍に設けられており、
前記被回収物質搬出口が、前記比重選別機の選別室内の選別媒体の液位よりも上方に位置決めされており、
前記排出路又は前記脈動室を介して前記エンドレスベルト上に載せられた被回収物質を、前記ローラを駆動させて前記エンドレスベルトを移動させることにより前記被回収物質搬出口から外部に排出するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ケーシングが水平面となす角度が、45°から90°の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ローラを回転支持するための軸受部が前記ケーシングの外側に位置するケース内に収納されており、前記ケースが、前記ケーシング内の選別媒体が流入しないようにシールされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記被回収物質搬入口に配置され、前記排出路から前記エンドレスベルト上に落下した被回収物質の飛散を防止するための手段を更に備え、前記飛散を防止するための手段が、前記孔開き板の前記配置間隔の少なくとも2倍の長さを有する板によって形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−174368(P2008−174368A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10964(P2007−10964)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(306031010)ジグ・エンジニアリング株式会社 (14)
【出願人】(505406464)株式会社アールアンドイー (11)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】