説明

網体および網体の製造方法ならびにその装置

【課題】 異なる大きさの網目を備えた網体を簡単に製造できる方法およびその製造装置を提供することである。
【解決手段】 網体の製造方法は、複数の山形状列線27、28の屈曲部27a、28a同士が相互に重ね合わされて形成された大ループ状部30と小ループ状部29とにおける一つおきの小ループ状部29を、先送用挟持具4aで上下から挟んで捻ることにより小網目32を形成し、該小網目32を順次形成しながら山形状列線31を先送りした後、該先送りした箇所から山形状列線31を引き戻して残りの小ループ状部29を後戻用挟持具4bで上下から挟んで捻ることにより小網目32を順次形成することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は網体および網体の製造方法ならびにその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の網体の製造装置としては、例えば特開平5−169489号の発明が知られている。また網体としては、図16に示すような菱形金網38が知られている。この菱形金網38は山形状列線39の屈曲部40同士を絡み合わせて形成したものであり、網目41が全て同じ大きさになっている。
【特許文献1】特開平5−169489号(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような網体においては異なる大きさの網目を形成することができなかった。
【0004】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、異なる大きさの網目を備えた網体およびこの網体を簡単に製造できる方法およびその製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための網体は、複数の山形状列線の屈曲部同士が相互に重ね合わされて形成された小ループ状部が捻られて形成された小網目と大網目とからなる網体において、前記小網目は、山形状列線の先送りによる時計回りの捻りで形成された小網目の列と、山形状列線の引き戻しによる反時計回りの捻りで形成された小網目の列とが交互に形成されてなることを特徴とする。
また網体の製造方法は、複数の山形状列線の屈曲部同士が相互に重ね合わされて形成された大ループ状部と小ループ状部とにおける一つおきの小ループ状部を、先送用挟持具で上下から挟んで捻ることにより小網目を形成し、該小網目を順次形成しながら山形状列線を先送りした後、該先送りした箇所から山形状列線を引き戻して残りの小ループ状部を後戻用挟持具で上下から挟んで捻ることにより小網目を順次形成することを特徴とする。また小ループ状部は、先送用挟持具と後戻用挟持具とではそれぞれ反対方向に捻られることを含むものである。
また網体の製造装置は、複数の山形状列線の屈曲部同士が相互に重ね合わされて形成された小ループ状部を捻って小網目を形成する捻り用ピニオンと、該捻り用ピニオンに噛み合ったラックとからなる小網目形成装置がテーブル上に隣接して配設され、前記捻り用ピニオンは、上下に分割されてなる上部歯車と下部歯車とが合体した状態で、上部収納体と下部収納体とが合体してなる収納体内に回転自在に収納され、該収納体の底部に設けた開口部から捻り用ピニオンの歯が突出してラックの歯に噛み合わされ、上部収納体が上部歯車を収納した状態で、下部歯車を収納した下部収納体から分離可能であり、上部収納体と下部収納体との接合部には列線収納用孔が形成されたことを特徴とする。また小網目形成装置は、先送用挟持具と後戻用挟持具とから構成され、この先送用挟持具と後戻用挟持具とが交互に設置されたことを含むものである。
【発明の効果】
【0006】
重ね合わせた屈曲部同士で形成された小ループ状部を捻ると、大網目と小網目とが同時に形成されるので、大きさの異なる大網目と小網目とを備えた網体を簡単に製造することができる。また先送用挟持具で一つおきの小ループ状部に小網目を形成しながら山形状列線を先送りした後、該先送りした箇所から山形状列線を引き戻して後戻用挟持具で残りの小ループ状部に小網目を形成すると、大きさの異なる大網目と小網目とを備えた網体を簡単に製造することができる。また小網目が互いに異なった回転方向で捻られているため、いかなる方向にも反らない水平な網体を形成することができる。
【0007】
上部収納体が上部歯車を収納した状態で、下部歯車を収納した下部収納体から分離したときに、下部収納体上に小ループ状部が設置される。そして上部歯車を収納した上部収納体が下部収納体に合体して小ループ状部を上下から挟み付ける。この状態でラックがスライドして捻り用ピニオンを回転させると、多くの小網目が同時に形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の網体およびその製造方法ならびにその製造装置の実施の形態について説明する。はじめに網体の製造装置について説明し、その後に網体の製造方法について説明し、この製造法で製造された網体について説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0009】
網体の製造装置1は、図1〜図3に示すように、基台2のテーブル3上に隣接または適宜間隔をもって並列状に配設した多数の小網目形成装置4により構成されている。この小網目形成装置4は先送用挟持具4aと後戻用挟持具4bとから構成され、この先送用挟持具4aと後戻用挟持具4bとが前後にずれた状態で交互に設置されている。この先送用挟持具4aと後戻用挟持具4bとは捻り用ピニオン5と、この捻り用ピニオン5に噛み合ったラック6とから構成され、該ラック6が前後にスライドする水平スライドプレート7に取り付けられてシリンダー8で前後方向に移動できるようになっている。
【0010】
この捻り用ピニオン5は、図4〜図8に示すように、上下に分割された上部歯車9と下部歯車10とからなり、これらが合体して、上部収納体11と下部収納体12とが合体してなる収納体13内に収納されている。この上部収納体11と下部収納体12との接合部の両側面には、段差部11a、11bによって列線収納用孔12aが形成されている。
【0011】
また捻り用ピニオン5の側面に突出した環状突起14が、収納体13の内壁面における軸15に嵌め込まれ、この軸15を中心に捻り用ピニオン5が回転できるようになっている。また捻り用ピニオン5の歯16が、収納体13の底部の開口部17から突出して、ラックの歯16に噛み合わされ、該ラック6の前後方向への移動によって、捻り用ピニオン5が収納体13内で回転する。
【0012】
また捻り用ピニオン5は、図6に示すように、下部収納体12に下部歯車10が、上部収納体11に上部歯車9がそれぞれ収納された状態で分離できるが、この上部収納体11が分離した状態でも、上部歯車9が半割れの環状突起14が半割れの軸15に嵌め合わされ、かつロック装置9aのロックピン9bが歯に噛み合っているため落下することがない。
【0013】
また上部収納体11は、上下にスライドする垂直スライドプレート19に設置され、この垂直スライドプレート19が両側壁のスライド用のガイド21間に設置されている(図2参照)。したがって、天板23に設置されたシリンダー22で垂直スライドプレート19が上下動可能となり、これにより上部収納体11と下部収納体12とが合体または分離し、合体した状態で収納体13となる。
【0014】
以上のように上部収納体11が下部収納体12から分離すると、下部収納体12に山形状列線の屈曲部を載せることができ、この屈曲部の線体を入れる凹溝26が上下の収納体11、12に形成されている(図6参照)。また、上下の歯車9、10の一方側には、屈曲部の先端を入れる収納凹部24が形成され、歯車9、10の中央部には、小ループ状部の捻り部(図12の(2)参照)25を形成する半円形の凹部34が形成されている。そして、下部収納体12に、重ね合わせた山形状列線の屈曲部を載せた後、上部収納体を合体させると、重ね合わせた山形状列線が接合部の列線収納用孔12aに収納される。
【0015】
そして、この上部収納体11と下部収納体12とを合体させた状態で、ラックを前方に移動させると捻り用ピニオン5が時計回りに回転するとともに、前方に移動したラック6を後方に引き戻すと捻り用ピニオン5が反時計回りに回転する。
【0016】
また、この合体した上部収納体11と下部収納体12とを分離するには、下部歯車10が下部収納体12に、上部歯車9が上部収納体11に収納された状態でなければならないが、この状態はラック6の移動距離で調整する。すなわち、捻り用ピニオン5を360度、または720度回転させる場合は、その回転分のラックの移動幅を設定する。
【0017】
例えば、図6に示すように、上下の収納体11、12が分離できる状態を通常の状態とし、この状態から所定の幅だけラック6を前方に移動させると、捻り用ピニオン5が360度回転して、下部歯車10が下部収納体12に、上部歯車9が上部収納体11に収納されて、上部収納体11と下部収納体12とが分離可能になる。また捻り用ピニオン5を720度回転させる場合も、同じ操作を行うものとする。
【0018】
次に、上記の網体の製造装置1を使用した網体の製造方法を、図9〜図15に基づいて説明する。はじめに、図9に示すように、シリンダー22で垂直スライドプレート19を引き上げて、先送用挟持具4aと後戻用挟持具4bの上部収納体11と下部収納体12とを分離する。
【0019】
次に、上部収納体11が分離された先送用挟持具4aの下部収納体12の上に、図10に示すように、第1および第2の山形状列線27、28の屈曲部27a、28aを載せると、小ループ状部29、29間に大ループ状部30が形成される。
【0020】
このように先送用挟持具4aの下部収納体12に小ループ状部29を形成した後、シリンダー22で垂直スライドプレート19を引き下げて、上部収納体11を下部収納体12に合体させると、図11に示すように、収納体13内で上部歯車9と下部歯車10とが合体されて、小ループ状部29を挟み込んだ捻り用ピニオン5が形成される。そしてロックピン9bを引っ込めてロックを解除すると、捻り用ピニオン5の回転が可能になる。
【0021】
次に、水平スライドプレート7でラック6を所定の幅だけ前方に移動させると、捻り用ピニオン5が収納体13内で軸15を中心に時計回りの方向に360度回転する。この回転により小ループ状部29も一回転して、図12に示すような小網目32と大網目33とが同時に形成される。この小網目32の捻り部25は捻り用ピニオン5の中央部における凹部34内で形成される。
【0022】
このように捻り用ピニオン5を一回転させると、下部収納体12には下部歯車10が、上部収納体11には、上部歯車9がそれぞれ収納されて上下に分離可能となるので、ロックピン9bを突出させて上部歯車9をロックした後に、垂直スライドプレート19を引き上げて上部収納体11を下部収納体12から分離させる。
【0023】
次に、小網目32を下部収納体12から取り外すとともに、該小網目32が形成された山形状列線31を前方へ先送りする(順方向)。そして、先送用挟持具4aの下部収納体12の上に、第3および第4の山形状列線35、36の屈曲部35a、36aを載せて、前記と同じ小ループ状部29と大ループ状部30とを形成する。次に、上記と同じ操作により、小ループ状部29を回転させて、小網目32と大網目33とを形成し、これらを上記と同じように先送りする。このような操作を順次繰り返すと時計回りに捻られた小網目の列32aが一つおきに形成される(図13参照)。
【0024】
次に、この小網目の列32aが形成された山形状列線31の前方への先送りが完了すると、この山形状列線31を手前側に引き戻しながら(逆方向)後戻用挟持具4bで他の小網目32を形成する。この小網目32の形成は、はじめに前記の小網目の列32aの間に形成された小ループ状部29を、後戻用挟持具4bの下部収納体12の上に載置させた後、この下部収納体12に上部収納体11を合体させる。次に、前方に移動した水平スライドプレート7を後方に引き戻して、後戻用挟持具4bのラック6を所定の幅だけ後方に移動させると、小ループ状部29が前記とは反対方向の反時計回りに回転して、反時計回りに捻られた小網目32が形成される。
【0025】
次に、垂直スライドプレート19を引き上げて上部収納体11を下部収納体12から分離させるとともに、該下部収納体12から小網目32を取り外して引き戻す。次に、後戻用挟持具4bの下部収納体12の上に、次の小ループ状部29を載せて、上記と同じ操作により、反時計回りに捻られた小網目32を形成する。このような操作を順次繰り返すと反時計回りに捻られた小網目の列32bが、時計回りに捻られた小網目の列32aの間に形成される(図14参照)。
【0026】
このように水平スライドプレート7の前後の移動にともなう山形状列線31の先送りおよび引き戻しにより、時計回りと反時計回りに捻られた小網目の列32a、32bが交互に形成された網体37が製造される。
【0027】
上記の方法で製造された網体は、図15に示すように、小網目32と大網目33とからなり、この小網目32のうち先送りで形成された小網目の列32aと、引き戻しで形成された小網目の列32bとは互いに異なった方向、すなわち時計回りと、反時計回りとで形成されている。このように隣接した小網目32が互いに異なった方向で捻られて形成されているため、網体37はどの方向にも反らずに水平なのものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】網体の製造装置の側面図である。
【図2】網体の製造装置の正面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】小網目形成装置の斜視図である。
【図5】(1)および(2)は小網目形成装置の断面図である。
【図6】上下の収納体が分離した小網目形成装置の斜視図である。
【図7】下部収納体の斜視図である。
【図8】上部収納体の斜視図である。
【図9】上下の収納体が分離した網体の製造装置の正面図である。
【図10】(1)は山形状列線を下部収納体に載せた平面図、(2)は(1)の拡大平面図である。
【図11】(1)および(2)は山形状列線の屈曲部を挟んだ小網目形成装置の断面図である。
【図12】(1)は小網目を形成した網線を載せた下部収納体の平面図、(2)は同下部収納体の斜視図である。
【図13】小網目を形成した網線を先送りした下部収納体の平面図である。
【図14】小網目を形成した網線を引き戻した下部収納体の平面図である。
【図15】網体の平面図である。
【図16】従来の網体の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 網体の製造装置
2 基台
3 テーブル
4 小網目形成装置
4a 先送用挟持具
4b 後戻用挟持具
5 捻り用ピニオン
6 ラック
7 水平スライドプレート
8、22 シリンダ
9 上部歯車
9a ロック装置
9b ロックピン
10 下部歯車
11 上部収納体
12 下部収納体
13 収納体
14 環状突起
15 軸
16 捻り用ピニオンの歯
17 開口部
18 ラックの歯
19 垂直スライドプレート
20 側壁
21 スライド用のガイド
23 天板
24 収納凹部
25 捻り部
26 凹溝
27 第1の山形状列線
27a、28a、35a、36a、40 屈曲部
28 第2の山形状列線
29 小ループ状部
30 大ループ状部
31、39 山形状列線
32 小網目
32a、32b 小網目の列
33 大網目
34 凹部
35 第3の山形状列線
36 第4の山形状列線
37 網体
38 菱形金網
41 網目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の山形状列線の屈曲部同士が相互に重ね合わされて形成された小ループ状部が捻られて形成された小網目と大網目とからなる網体において、前記小網目は、山形状列線の先送りによる時計回りの捻りで形成された小網目の列と、山形状列線の引き戻しによる反時計回りの捻りで形成された小網目の列とが交互に形成されてなることを特徴とする網体。
【請求項2】
複数の山形状列線の屈曲部同士が相互に重ね合わされて形成された大ループ状部と小ループ状部とにおける一つおきの小ループ状部を、先送用挟持具で上下から挟んで捻ることにより小網目を形成し、該小網目を順次形成しながら山形状列線を先送りした後、該先送りした箇所から山形状列線を引き戻して残りの小ループ状部を後戻用挟持具で上下から挟んで捻ることにより小網目を順次形成することを特徴とする網体の製造方法。
【請求項3】
小ループ状部は、先送用挟持具と後戻用挟持具とではそれぞれ反対方向に捻られることを特徴とする請求項2に記載の網体の製造方法。
【請求項4】
複数の山形状列線の屈曲部同士が相互に重ね合わされて形成された小ループ状部を捻って小網目を形成する捻り用ピニオンと、該捻り用ピニオンに噛み合ったラックとからなる小網目形成装置がテーブル上に隣接して配設され、前記捻り用ピニオンは、上下に分割されてなる上部歯車と下部歯車とが合体した状態で、上部収納体と下部収納体とが合体してなる収納体内に回転自在に収納され、該収納体の底部に設けた開口部から捻り用ピニオンの歯が突出してラックの歯に噛み合わされ、上部収納体が上部歯車を収納した状態で、下部歯車を収納した下部収納体から分離可能であり、上部収納体と下部収納体との接合部には列線収納用孔が形成されたことを特徴とする網体の製造装置。
【請求項5】
小網目形成装置は、先送用挟持具と後戻用挟持具とから構成され、この先送用挟持具と後戻用挟持具とが交互に設置されたことを特徴とする請求項4に記載の網体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−7243(P2006−7243A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184893(P2004−184893)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(391052253)
【Fターム(参考)】